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特許7167375補修用モルタル及びコンクリートの補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-28
(45)【発行日】2022-11-08
(54)【発明の名称】補修用モルタル及びコンクリートの補修方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20221031BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20221031BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20221031BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20221031BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20221031BHJP
   C04B 14/10 20060101ALN20221031BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/38 B
C04B24/02
C04B24/26 F
C04B24/26 C
C04B24/24 A
C04B14/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022043416
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2022-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210687
【氏名又は名称】秩父コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 景隆
(72)【発明者】
【氏名】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田口 勝貴
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102216(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111533517(CN,A)
【文献】特開2003-120009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C04B 40/00 - 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、細骨材、セメント用ポリマー、有機系増粘剤、無機系増粘剤、セメント分散剤、及び水を含み、
「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定されたモルタルフロー値が160~250mmであり、
上記セメント100質量部に対して、上記有機系増粘剤の量が0.20~0.60質量部で、かつ、上記無機系増粘剤の量が0.150~5.0質量部であり、
上記有機系増粘剤がメチルセルロースであり、上記無機系増粘剤がベントナイトであることを特徴とする補修用モルタル。
【請求項2】
上記セメント100質量部に対して、上記セメント用ポリマーの量が1~20質量部で、かつ、上記セメント分散剤の量が0.01~3.0質量部であり、
上記セメント用ポリマーが、「JIS A 6203:2015(セメント混和用ポリマーディスパ―ジョン及び再乳化形粉末樹脂)」に規定されているポリマーであり、上記セメント分散剤が、高性能減水剤である請求項に記載の補修用モルタル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の補修用モルタルを用いたコンクリートの補修方法であって、
コンクリートの表面に、ローラーのみを用いて上記補修用モルタルを塗布して、上記コンクリートの補修を行う補修工程を含むことを特徴とするコンクリートの補修方法。
【請求項4】
上記ローラーが砂骨ローラーである請求項に記載のコンクリートの補修方法。
【請求項5】
上記コンクリートの表面が、該コンクリートの鉛直面である請求項3又は4に記載のコンクリートの補修方法。
【請求項6】
上記補修工程の後に、補修されたコンクリートの表面に、ローラーのみを用いて仕上げ材を塗布する仕上げ工程を含む請求項3~5のいずれか1項に記載のコンクリートの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修用モルタル及びコンクリートの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅のコンクリートの基礎等のコンクリートの保護(例えば、コンクリートの中性化及びクラック発生の抑制等)及び意匠性等の向上を目的として、型枠脱型したコンクリートの表面に、コテ等を用いて補修用モルタルを塗布し、平滑にした後、弾性を有するポリマーセメント、又は、該ポリマーセメント及び高弾性塗料を塗布する方法が知られている。
補修用モルタルとして、例えば、特許文献1には、(A)セメント100質量部、(B)メタカオリン1~20質量部、(C)石灰石及び/又は炭酸カルシウムの微粉10~30質量部、(D)膨張材1~5質量部、及び(E)細骨材100~300質量部を含有し、セメント用ポリマー及び繊維を含まないことを特徴とする補修用モルタル組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-112583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
型枠脱型したコンクリートの表面には、ピンホール、ジャンカ、及び段差等が存在するため、補修用モルタルを用いたコンクリートの補修が行われ、該補修には、通常、コテを用いてその表面を平滑にしなければならず、そのためには熟練の職人の技術が必要である。
コテを使用せずに、ローラーを用いて補修用モルタルを塗布する方法もあるが、該方法では、コンクリート表面のピンホールを確実になくすことはできない。また、コンクリートにジャンカや段差がある場合には、ローラーのみを用いて表面を平滑にすることは難しく、事前にコテ用いて補修する必要がある。
本発明の目的は、ジャンカや段差があっても、ローラーのみを用いて、コンクリートの表面を補修することができ、コンクリート表面のピンホールをなくすことができる補修用モルタルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント、細骨材、セメント用ポリマー、有機系増粘剤、無機系増粘剤、セメント分散剤、及び水を含み、モルタルフロー値が130~250mmである補修用モルタルによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供するものである。
[1] セメント、細骨材、セメント用ポリマー、有機系増粘剤、無機系増粘剤、セメント分散剤、及び水を含み、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定されたモルタルフロー値が130~250mmであることを特徴とする補修用モルタル。
[2] 上記セメント100質量部に対して、上記有機系増粘剤の量が0.10~3.00質量部で、かつ、上記無機系増粘剤の量が0.010~20.0質量部である前記[1]に記載の補修用モルタル。
[3] 上記セメント100質量部に対して、上記セメント用ポリマーの量が1~20質量部で、かつ、上記セメント分散剤の量が0.01~3.0質量部である前記[1]又は[2]に記載の補修用モルタル。
【0006】
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の補修用モルタルを用いたコンクリートの補修方法であって、コンクリートの表面に、ローラーのみを用いて上記補修用モルタルを塗布して、上記コンクリートの補修を行う補修工程を含むことを特徴とするコンクリートの補修方法。
[5] 上記ローラーが砂骨ローラーである前記[4]に記載のコンクリートの補修方法。
[6] 上記コンクリートの表面が、該コンクリートの鉛直面である前記[4]又は[5]に記載のコンクリートの補修方法。
[7] 上記補修工程の後に、補修されたコンクリートの表面に、ローラーのみを用いて仕上げ材を塗布する仕上げ工程を含む前記[4]~[6]のいずれかに記載のコンクリートの補修方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の補修用モルタルによれば、ジャンカや段差があっても、ローラーのみを用いて、コンクリートの表面を補修することができ、コンクリート表面のピンホールをなくすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の補修用モルタルは、セメント、細骨材、セメント用ポリマー、有機系増粘剤、無機系増粘剤、セメント分散剤、及び水を含み、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定されたモルタルフロー値が130~250mmであるものである。以下、詳しく説明する。
セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、ジェットセメント等の超速硬セメント等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
細骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
細骨材の量は、特に限定されるものではなく、モルタルにおける一般的な量であればよい。例えば、セメント100質量部に対して、好ましくは50~500質量部、より好ましくは80~300質量部、特に好ましくは100~200質量部である。
また、細骨材は、作業性等の観点から、粒度が0.10~1.0mm(好ましくは0.15~0.6mm)である粒子を、好ましくは80質量%以上(より好ましくは90質量%以上)の割合で含むものが好ましい。なお、本明細書中、細骨材の粒度とは、ふるいの目開き寸法に対応する大きさを意味する。
【0010】
セメント用ポリマーとしては、例えば、「JIS A 6203:2015(セメント混和用ポリマーディスパ―ジョン及び再乳化形粉末樹脂)」に規定されているポリマーを用いることができる。
上記ポリマーの例としては、ポリマーディスパージョン、再乳化形粉末樹脂等が挙げられる。
ポリマーディスパージョンとしては、(i)スチレンブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴム系、天然ゴム系、及びゴムアスファルト系等のセメント混和用ゴムラテックス、(ii)エチレン酢酸ビニル系、アクリル酸エステル系、樹脂アスファルト系等のセメント混和用樹脂エマルション等が挙げられる。
再乳化形粉末樹脂は、ゴムラテックス及び樹脂エマルション等を乾燥してなる再乳化可能な粉末状樹脂である。例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴム系、アクリル酸エステル系、エチレン酢酸ビニル系、及び酢酸ビニルビニルバーサテート系等の再乳化形粉末樹脂等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、取り扱いの容易性等の観点から、再乳化形粉末樹脂が好ましく、アクリル酸エステル系の再乳化形粉末樹脂がより好ましい。
【0011】
セメント100質量部に対して、セメント用ポリマーの量は、固形分換算で、好ましくは1~20質量部、より好ましくは3~15質量部、特に好ましくは5~10質量部である。上記量が1質量部以上であれば、コンクリート表面のピンホールをより確実になくすことができ、補修後の表面の意匠性をより向上することができる。上記量が20質量部以下であれば、作業性がより向上する。
【0012】
有機系増粘剤の例としては、(i)メチルセルロース、スターチエーテル、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース等の増粘多糖類、(ii)PEG(ポリエチレングリコール)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル等のポリオキシエチレン系増粘剤、(iii)プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、入手の容易性や、コンクリート表面のピンホールをより確実になくすことができ、補修後の表面の意匠性をより向上することができる観点等から、増粘多糖類が好ましく、メチルセルロースがより好ましい。
【0013】
セメント100質量部に対して、有機系増粘剤の量は、好ましくは0.05~3.00質量部、より好ましくは0.10~2.00質量部、より好ましくは0.15~1.50質量部、さらに好ましくは0.15~1.00質量部、特に好ましくは0.20~0.60質量部である。上記量が0.05質量部以上であれば、コンクリート表面のピンホールをより確実になくすことができ、補修後の表面の意匠性をより向上することができる。上記量が3.00質量部以下であれば、作業性をより向上することができる。また、材料にかかるコストをより低減することができる。
【0014】
無機系増粘剤の例としては、セピオライト、ベントナイト等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、入手の容易性や、コンクリート表面のピンホールをより確実になくすことができる観点等からベントナイトが好ましい。
セメント100質量部に対して、無機系増粘剤の量は、好ましくは0.010~20.0質量部、より好ましくは0.050~15.0質量部、より好ましくは0.150~10.0質量部、より好ましくは0.300~8.0質量部、さらに好ましくは0.400~6.0質量部、特に好ましくは0.800~5.0質量部である。上記量が0.010質量部以上であれば、作業性をより向上することができる。上記量が20.00質量部以下であれば、モルタルの硬化後の強度をより大きくすることができる。また、材料にかかるコストをより低減することができる。
【0015】
セメント分散剤としては、例えば、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、及び高性能AE減水剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメント100質量部に対して、セメント分散剤の量は、好ましくは0.01~3.0質量部、より好ましくは0.05~1.0質量部、さらに好ましくは0.08~0.8質量部、特に好ましくは0.10~0.5質量部である。上記量が0.01質量部以上であれば、作業性がより向上する。上記量が3.0質量部以下であれば、セメント分散剤にかかるコストをより低減することができる。
【0016】
水としては、特に限定されるものではなく、水道水、「JIS A 5308:2019(レディーミクストコンクリート)」に規定される回収水等が挙げられる。
セメント100質量部に対して、水の量は、好ましくは30~100質量部、より好ましくは40~90質量部、特に好ましくは50~85質量部である。上記量が30質量部以上であれば、モルタルフロー値が大きくなり、コンクリート表面のピンホールをより確実になくすことができ、かつ、作業性をより向上することができる。上記量が100質量部以下であれば、コンクリートの鉛直面に塗布した場合に、ダレが生じにくくなる。
また、補修用モルタルは、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲内で必要に応じて、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等の各種混和剤、AE剤等の各種混和剤を含んでいてもよい。
【0017】
補修用モルタルの「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定されたモルタルフロー値は、130~250mm、好ましくは145~240mm、より好ましくは155~230mm、さらに好ましくは175~220mm、さらに好ましくは185~210mm、特に好ましくは195~205mmである。上記値が130mm以上であれば、コンクリート表面のピンホールをより確実になくすことができ、かつ、作業性をより向上することができる。上記値が250mm以下であれば、補修用モルタルをコンクリートの鉛直面に塗布した場合に、ダレが生じにくくなる。
本発明の補修用モルタルは、補修の対象となるコンクリートの表面が、該コンクリートの鉛直面であっても、補修の際にだれにくいことから、コンクリートの鉛直面のピンホールを容易になくすことができる。
【0018】
本発明の補修用モルタルを用いたコンクリートの補修方法の例としては、コンクリートの表面に、ローラーのみを用いて補修用モルタルを塗布して、コンクリートの補修を行う補修工程を含む方法が挙げられる。
上記方法によれば、ローラーのみを用いてコンクリートの補修を行うことができるため、コテを使用する場合と比較して、熟練した技術が不要である。また、補修後の表面は、ローラーの形状に基づく凹凸が形成されることで、意匠性に優れたものとなる。
また、コテを用いて表面を平滑にしていないにもかかわらず、仕上げ工程(後述)を行う際の仕上げ性が向上し、仕上げ材の塗布による、コンクリート表面の保護性能、及び、意匠性を向上することができる。
【0019】
補修の対象となるコンクリートとしては、特に限定されるものではないが、型枠脱型をしたコンクリートであって、その表面にピンホール、ジャンカ、及び段差の少なくとも一つ以上が存在するコンクリートが好ましい。上記コンクリートの例としては、戸建住宅のコンクリート基礎等が挙げられる。また、コンクリートの表面に、長径が約20mm、深さが約3mmであるジャンカや、型枠のずれによって生じた約3mmの段差があっても、上記方法によれば、ジャンカや段差を視覚的にわからなくすることができる。
また、上記方法によれば、コテを用いてその表面を平滑にしなくても(ジャンカや段差を事前に補修しなくても)、補修できることから、作業時間を短縮することができる。
【0020】
塗布に使用するローラーとしては、特に限定されるものではないが、砂骨ローラー、ウールローラー等が挙げられる。中でも、作業の容易性、及び、コンクリート表面の意匠性の向上の観点から、砂骨ローラーが好ましい。
砂骨ローラーの種類としては、極細、細目、標準目、粗目等が挙げられる。中でも、作業の容易性、及び、コンクリート表面の意匠性の向上の観点から、細目、標準目、又は粗目の砂骨ローラーが好ましく、標準目の砂骨ローラーがより好ましい。
ウールローラーの種類としては、短毛、中毛、長毛等が挙げられる。中でも、作業の容易性、及び、コンクリート表面の意匠性の向上の観点から、中毛のウールローラーが好ましい。
【0021】
塗布される補修モルタルの量は、好ましくは0.5~5kg/m、より好ましくは1.0~4kg/mである。上記量が0.5kg/m以上であれば、コンクリートの表面にジャンカ、段差があっても、補修後の表面の意匠性をより向上する(ジャンカ、段差の跡を視覚的に目立たなくする)ことができる。上記量が5kg/m以下であれば、材料に係るコストを低減することができる。
塗布された補修用モルタルからなる層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.1~2.0cm、より好ましくは0.3~1.5cm、特に好ましくは0.5~1.0cmである。上記厚さが0.2cm以上であれば、コンクリートの表面にジャンカ、段差があっても、補修後の表面の意匠性をより向上する(ジャンカ、段差の跡を視覚的に目立たなくする)ことができる。上記厚さが2.0cm以下であれば、材料に係るコストを低減することができる。
【0022】
補修工程において、ローラーのみを用いて補修用モルタルを塗布した後、意匠性の観点から、コンクリートの表面に平滑性が求められる場合や、後述の仕上げ工程における仕上げ材の塗布性を向上させる等の観点から、塗布された補修用モルタルの平滑性をより向上させてもよい。
塗布された補修用モルタルの平滑性をより向上させる方法としては、ローラー以外の手段(例えば、地ベラ等)を用いて、ローラーを用いて塗布された補修用モルタルの表面を平滑化する方法等が挙げられる。
【0023】
補修工程の後に、補修されたコンクリートの表面(コンクリートの上面に形成された補修用モルタルからなる層の上面)に、ローラーのみを用いて仕上げ材を塗布する仕上げ工程を行ってもよい。仕上げ工程を行うことで、コンクリートの表面を、中性化やクラックの発生から保護するとともに、意匠性をより向上することができる。
仕上げ材としては、コンクリートの表面仕上げに一般的に用いらえるものであればよく、例えば、弾性ポリマーセメント、高弾性塗料等の塗料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2種以上の仕上げ材を用いる場合の例としては、補修されたコンクリートの表面に、ローラーのみを用いて弾性ポリマーセメントを塗布した後、さらに、高弾性塗料をコンクリートの表面(弾性ポリマーセメントを塗布した面の上面)に塗布する方法等が挙げられる。
【実施例
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1) セメント;普通ポルトランドセメント
(2) 細骨材;珪砂、粒度0.15~0.6mm
(3) セメント用ポリマー(表1、3中「ポリマー」と示す。);アクリル酸エステル系の再乳化形粉末樹脂
(4) 有機系増粘剤;メチルセルロース
(5) 無機系増粘剤;ベントナイト
(6) セメント分散剤(表1、3中「減水剤」と示す。);高性能減水剤、花王株式会社、商品名「マイテイ 100」
【0025】
[実施例1~10]
表1に示す量となるセメント、細骨材、セメント用ポリマー、減水剤、有機系増粘剤、無機系増粘剤を、リボンミキサを用いて混合した後、表1に示す量の水を予め混合してなる混合物に投入してハンドミキサーを用いて混合し、補修用モルタルを製造した。
補修用モルタルのモルタルフロー値を、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定した。
次いで、標準目の砂骨ローラー(大塚刷毛製、6インチ)のみを用いて、得られた補修用モルタルをコンクリート供試体(30cm×60cm×5cm)の鉛直面(30cm×60cmの面)に塗布した。なお、塗布された補修用モルタルの厚さは、0.8~1.0cmであった。
なお、コンクリートの供試体は、直径が2mm以下であるピンホールを10個以上、長さが10~30mm、深さが1~5mmであるジャンカを有するコンクリート供試体A(30cm×60cm×5cm)と、3mmの段差を有するコンクリート供試体B(30cm×60cm×5cm)の二種類を作製した。
結果を表2に示す。
【0026】
砂骨ローラーのみを用いて、塗布量が1~3kg/mとなる量の補修用モルタルをコンクリート供試体Aの鉛直面に一回のみの塗布を行った場合の塗布性、ピンホールの有無、ジャンカの跡の有無、及び平滑性を以下の基準に従って評価した。
[塗布性]
補修用モルタルを塗布する際のローラーへの抵抗性が少なく、均一な厚さで塗布することができ、かつ、塗布後の補修用モルタルにダレがない場合を「〇」、ダレがある場合を「×」として評価した。
[ピンホールの有無]
コンクリート供試体Aの表面に存在するピンホールの中の空気が補修用モルタルに置換され、かつ、その後、ピンホール内の補修モルタルが、下方に垂れずにピンホール内に留まり続けることができるか(すなわち、ピンホールが目視によって確認できるかどうか)を評価した。
評価は、補修モルタルの表面に、ピンホールが全く見られないものを「〇」、ピンホールが1~2個見られるものを「△」、ピンホールが3個以上見られるものを「×」とした。
【0027】
[ジャンカの跡の有無(表2,4中、「ジャンカ」と示す。)]
コンクリート供試体Aの表面に存在するジャンカの中の空気が補修用モルタルに置換され、かつ、その後、ジャンカ内の補修モルタルが、下方に垂れずにジャンカ内に留まり続けることができるか(すなわち、ジャンカが目視によって確認できるかどうか)を評価した。
評価は、補修モルタルの表面に、ジャンカの跡が全く見られないものを「〇」、ジャンカの跡が少し見られるものを「△」、ジャンカの跡が多く見られるものを「×」とした。
[平滑性]
塗布性、ピンホールの有無、ジャンカの跡の有無を確認した後、供試体Aに塗布された補修用モルタルの表面を、地ベラを用いて一定方向に軽くなぞり、表面を均一かつ平滑にすることができた場合を「〇」、できない場合を「×」と評価した。
[段差の跡の有無(表2,4中、「段差」と示す。)]
砂骨ローラーのみを用いて、塗布量が1~3kg/mとなる量の補修用モルタルをコンクリート供試体Bの鉛直面に一回のみの塗布を行った後、24時間静置し、次いで、段差の跡の有無を目視によって評価した。
評価は、補修モルタルの表面に、段差の跡が全く見られないものを「〇」、段差の跡が少し見られるものを「△」、段差の跡が多く見られるものを「×」と評価した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
[比較例1~11]
各材料を表3に示す量で使用する以外は、実施例1と同様にして補修用モルタルを製造し、該補修用モルタルをコンクリート供試体(30cm×60cm×5cm)の鉛直面に塗布した。
実施例1と同様にして、補修用モルタルのモルタルフロー値の測定等を行った。
結果を表4に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表2の実施例1~10から、本発明の補修用モルタルは塗布性に優れており、該補修用モルタルによれば、補修後の表面のピンホールを少なくすることができる。特に、実施例4~10では、補修後の表面にピンホール、ジャンカ、段差は見られなかった。また、平滑性に優れたものであった。
一方、表4の比較例1~11では、補修後の表面にピンホール、ジャンカ、段差が見られた。
【要約】
【課題】ジャンカや段差があっても、ローラーのみを用いて、コンクリートの表面を補修することができ、コンクリート表面のピンホールをなくすことができる補修用モルタルを提供する。
【解決手段】セメント、細骨材、セメント用ポリマー、有機系増粘剤、無機系増粘剤、セメント分散剤、及び水を含み、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して測定されたモルタルフロー値が130~250mmである補修用モルタル。
【選択図】なし