(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】排水トラップ
(51)【国際特許分類】
E03C 1/284 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
E03C1/284
(21)【出願番号】P 2018155756
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】山本 正樹
【審査官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-098603(JP,A)
【文献】特開2011-169052(JP,A)
【文献】実開昭53-147570(JP,U)
【文献】特開2011-241593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/122-1/20
E03C 1/28 -1/298
F16L 55/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回り器具の底部に設けられた排水部の下流側に設けられ、下方側へ延設された部位と当該下方側へ延設された部位の下端から水平方向へ延設された部位とを有する略管状のトラップ本体部と、
前記トラップ本体部内の上壁に設けられ、先端部が他の部位よりも前記トラップ本体部の底壁に近づくように下方側へ向かって突出した凸部と、
前記トラップ本体部内における前記凸部より下流側の底壁に設けられ、先端部が他の部位よりも前記トラップ本体部の上壁に近づくように上方側へ向かって突出されかつ前記凸部の先端部より高い位置にある越流部と、
を有し、
前記トラップ本体部は、前記越流部の先端部と前記トラップ本体部の上壁との間の流路の幅が、前記排水部の幅より広く形成されている排水トラップ。
【請求項2】
前記トラップ本体部内における前記凸部と前記越流部との間は、前記トラップ本体部の水平方向に延設された部位の底壁に対し斜め上方側へ延設された傾斜部が設けられている、
請求項1記載の排水トラップ。
【請求項3】
前記トラップ本体部には、前記越流部より下流側にて通気管が略水平に接続されている、
請求項1又は請求項2に記載の排水トラップ。
【請求項4】
前記トラップ本体部は、前記凸部の先端部と前記トラップ本体部の底壁との間の流路の幅が、前記排水部の幅より広く形成されている、
請求項1~
請求項3のいずれか一項に記載の排水トラップ。
【請求項5】
前記凸部は、前記トラップ本体部における上流側から下流側へ向かうに連れて下方側への突出量が徐々に大きくなるように形成されている
請求項1~
請求項4のいずれか一項に記載の排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、排水構造、シャワー室の排水構造、洗濯機用防水パンの排水構造が開示されている。この排水構造では、排水トラップの上端より低い位置に洗い場の床面を配置している。これにより、洗い場の低床化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、更なる低床化を図る場合は、配管の径が従来の勾配配管よりも小さいサイホン排水管を適用することが考えられるが、サイホン排水管に従来の構造の排水トラップを適用しても、排水トラップ内に封水を溜めるためにはある程度の高さが必要であり、この高さに応じて床下空間を確保する必要がある。このため、更なる低床化が難しかった。
【0005】
本発明は、更なる低床化が可能な排水トラップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る排水トラップは、水回り器具の底部に設けられた排水部の下流側に設けられ、下方側へ延設された部位と当該下方側へ延設された部位の下端から水平方向へ延設された部位とを有する略管状のトラップ本体部と、前記トラップ本体部内の上壁に設けられ、先端部が他の部位よりも前記トラップ本体部の底壁に近づくように下方側へ向かって突出した凸部と、前記トラップ本体部内における前記凸部より下流側の底壁に設けられ、先端部が他の部位よりも前記トラップ本体部の上壁に近づくように上方側へ向かって突出されかつ前記凸部の先端部より高い位置にある越流部と、を有し、前記トラップ本体部は、前記越流部の先端部と前記トラップ本体部の上壁との間の流路の幅が、前記排水部の幅より広く形成されている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、排水トラップは、トラップ本体部及び凸部を有している。トラップ本体部は、略管状に形成され、水回り器具の底部に設けられた排水部の下流側に設けられかつ下方側へ延設された部位と当該下方側へ延設された部位の下端から水平方向に延設された部位とを有する構成とされている。凸部は、トラップ本体部内の上壁に設けられると共に、先端部が他の部位よりもトラップ本体部の底壁に近づくように下方側へ向かって突出されている。したがって、排水トラップは、凸部が下方側へ突出している分、内部に溜めた封水が破れ難くなる。つまり、排水トラップ自体の簡易な形状により排水トラップの内部に効果的に封水を溜めておくことができるので、排水トラップの構造を簡素化して排水トラップの設置に必要な空間を少なくすることができる。また、凸部は、底壁に近づくように突出している。つまり、トラップ本体部の底壁の下方側への突出が抑制される。したがって、トラップ本体部自体の上下方向の寸法を抑えることができるので、設置のために必要な床下空間を低くすることができる。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、越流部は、トラップ本体部内における凸部より下流側の底壁に設けられると共に、先端部が他の部位よりもトラップ本体部の上壁に近づくように上方側へ向かって突出され、凸部の先端部より高い位置にある。したがって、排水トラップは、越流部より下方側に位置する部位に封水を溜めておくことができると共に、凸部が下方側へ突出している分、封水が破れ難くなる。つまり、排水トラップ自体の簡易な形状により排水トラップの内部に効果的に封水を溜めておくことができるので、排水トラップの構造を簡素化して排水トラップの設置に必要な空間を少なくすることができる。また、越流部は、上壁に近づくように突出している。つまり、トラップ本体部の上壁の上方側への突出が抑制される。したがって、トラップ本体部自体の上下方向の寸法を抑えることができるので、設置のために必要な床下空間をさらに低くすることができる。
さらに請求項1に記載の発明によれば、トラップ本体部内における越流部の先端部と上壁との間の流路の幅が排水部の幅より広く形成されていることで、越流部が設けられた部位においても流量を確保することができる。したがって、排水をスムーズに行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る排水トラップは、請求項1に記載の発明において、前記トラップ本体部内における前記凸部と前記越流部との間は、前記トラップ本体部の水平方向に延設された部位の底壁に対し斜め上方側へ延設された傾斜部が設けられている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、トラップ本体部内における凸部と越流部との間には、トラップ本体部の水平方向に延設された部位の底壁に対し斜め上方へ延設された傾斜部が設けられていることから、この傾斜部も含めて封水を内部に溜める封水溜まりが形成される。これにより、排水トラップを大型化することなく封水量を確保できるので、排水トラップの設置に必要な空間をより少なくすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係る排水トラップは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記トラップ本体部には、前記越流部より下流側にて通気管が略水平に接続されている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、トラップ本体部には、越流部より下流側に通気管が接続されていることから、封水溜まりから離れた位置にて通気管が排水トラップに接続されている。つまり、床下空間における封水溜まりがある箇所以外の空間に余裕がある箇所にて通気管を排水トラップに接続することができる。また、通気管が略水平に接続されていることで、床下空間の高さをより小さくすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る排水トラップは、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記トラップ本体部は、前記凸部の先端部と前記トラップ本体部の底壁との間の流路の幅が、前記排水部の幅より広く形成されている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、トラップ本体部内における凸部の先端部と底壁との間の流路の幅が排水部の幅より広く形成されていることで、凸部が設けられた部位においても流量を確保することができる。したがって、排水をスムーズに行うことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る排水トラップは、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記凸部は、前記トラップ本体部における上流側から下流側へ向かうに連れて下方側への突出量が徐々に大きくなるように形成されている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、凸部は、トラップ本体部における上流側から下流側へ向かうに連れて下方側への突出量が徐々に大きくなるように設定されていることから、排水が流れる際に凸部に当たる排水をスムーズに凸部の先端部へと案内させることができる。つまり、排水時の抵抗を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る排水トラップによれば、更なる低床化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係るサイホン排水システムの概要を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る排水構造の概略を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る排水構造において、浴槽からの排水時の初期段階を示す断面図である。
【
図4】サイホン力発生後の排水状態を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る排水構造において、洗い場からの排水状態を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る排水構造の第1排水トラップを示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る排水構造の第1排水トラップを示す平面図である。
【
図8】第1実施形態における排水構造において、浴槽のエプロンを着脱可能とした構成を示す分解斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る排水構造の第1排水トラップを示す断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る排水構造の第1排水トラップを示す平面図である。
【
図11】第3実施形態に係る排水構造を模式的に示す斜視図である。
【
図12】第4実施形態に係る排水構造を模式的に示す斜視図である。
【
図13】第5実施形態に係る排水構造を模式的に示す斜視図である。
【
図14】参考例1に係る排水構造を模式的に示す斜視図である。
【
図15】参考例2に係る排水構造を模式的に示す斜視図である。
【
図16】第6実施形態に係る排水構造を示す断面図である。
【
図17】第7実施形態に係る排水構造を示す断面図である。
【
図18】第8実施形態に係る排水構造の第1排水トラップを示す断面図である。
【
図19】第9実施形態に係る排水構造の第1排水トラップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1において、本実施形態に係るサイホン排水システム10は、排水立て管14と、排水構造16とを有している。
【0024】
排水立て管14は、建物15の床スラブ24の貫通穴25を貫通している。この排水立て管14には、後述する竪管31B,32Bを連結する排水継手28が設けられており、上部の排水立て管14からの排水と、後述する浴槽11や洗い場12等の水廻り器具からの排水とを合流させるように構成されている。なお、以下の説明にて使用する各図では、配管構造を分かり易く説明するため、管継手等、各配管、各配管の接続部分の構成及び配管の方向等が適宜省略及び簡略化されて示されている。
【0025】
(排水構造)
排水構造16は、水廻り器具の一例たる浴槽11と、水廻り器具の一例たる洗い場12と、排水トラップとしての第1排水トラップ21と、第2排水トラップ22と、通気管としての第1バイパス管18と、第1サイホン排水管31と、第2サイホン排水管32とを有している。
【0026】
浴槽11は、水20を貯めて使用される第1の水廻り器具の一例であり、排水が、貯水後に排水される溜め流し排水となる。洗い場12は、第2の水廻り器具の一例であり、排水が、貯水のない連続排水となる。浴槽11と洗い場12は、間隙Sを空けて互いに隣り合っている。浴槽11と洗い場12とは、図示されるように互いに一体であってもよく、また互いに別体であってもよい。
【0027】
第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22は、汚臭やガス等の逆流を防止するためのいわゆる封水式トラップである。第1排水トラップ21は、浴槽11の排水部41に設けられている。第2排水トラップ22は、洗い場12の排水部42に設けられている。
【0028】
図2に示されるように、第1バイパス管18は、第1排水トラップ21の下流側部位の一例たる排水管51と、第2排水トラップ22の下流側部位の一例たる排水管52とを接続する管体である。第1バイパス管18は、浴槽11と洗い場12との間の間隙S(
図1参照)に、通常使用時に使用者からは見えないように設けられている。第1バイパス管18を間隙Sに設けることで、スペースを有効利用できる。なお、第1バイパス管18を、浴室と建物の壁との間等(図示せず)、他の部位に設けてもよい。
【0029】
図3に示されるように、第1バイパス管18における管路の少なくとも一部、例えば最上部18Hは、第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22の双方よりも上方に位置している。ここで、「第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22の双方よりも上方」とは、第1排水トラップ21の上面21Aより上方、かつ第2排水トラップ22の上面22Aより上方を意味する。第1バイパス管18は、例えば逆U字形に形成され、第1排水トラップ21側の縦管部18Aと、第2排水トラップ22側の縦管部18Bと、縦管部18A,18Bの接続部18Dとを有している。接続部18Dは、例えば水平方向に延びている。最上部18Hとは、この接続部18Dにおける管路の底面であり、該底面が、第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22の双方よりも上方に位置している。接続部18Dにおける管路の底面の高さが一定でない場合には、最も高い位置が最上部18Hとなる。なお、第1バイパス管18の管路の少なくとも一部として、最上部18Hを挙げたが、最上部18H以外の部位が、第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22の双方よりも上方に位置していてもよい。
【0030】
排水管51は、第1排水トラップ21から横方向に延び第1バイパス管18の縦管部18Aに合流する上横管部51Aと、縦管部18Aの下端から下方へ延びる縦管部51Bと、縦管部51Bの下端から横方向に延びる下横管部51Cとを有している。同様に、排水管52は、第2排水トラップ22から横方向に延び第1バイパス管18の縦管部18Bに合流する上横管部52Aと、縦管部18Bの下端から下方へ延びる縦管部52Bと、縦管部52Bの下端から横方向に延びる下横管部52Cとを有している。なお、排水管51,52の構成はこれに限られず、第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22からそれぞれ排水可能な構成であればよい。
【0031】
第1バイパス管18には、吸気弁30が設けられている。この吸気弁30は、外部からの空気を第1バイパス管18へ通過させると共に、第1バイパス管18から外部へ排水及び空気を通過させないための部品である。吸気弁30は、例えば縦管部18Aの延長部18Cの上端に設けられている。この延長部18Cを含めると、第1バイパス管18はh字を反転させた鏡文字の形に形成されているともいえる。第1バイパス管18を反対側から見ると、h字形となる。なお、吸気弁30は、第1バイパス管18における接続部18Dに設けられていてもよい。また、延長部18C及び吸気弁30を縦管部18Bの上方に設けてもよい。
【0032】
第1バイパス管18における管路の最上部18Hの高さ位置は、浴槽11に貯められた水20の標準的な水頭Hの高さ位置と同等以上であることが望ましい。水頭Hの基準は、例えば、浴槽11の底である。標準的な水頭Hとは、人の入浴時に浴槽11内に貯めるお湯の量に相当し、例えば人が浴槽11内で座ったときに浴槽11から溢れない程度のお湯の量に相当する。最上部18Hは、第1バイパス管18における縦管部18A,18B間で越流が生じない最大の高さであり、接続部18Dの底面の高さに相当する。
【0033】
図2において、第1サイホン排水管31は、第1排水トラップ21及び第1バイパス管18の下流側に接続されている。また、第2サイホン排水管32は、第2排水トラップ22及び第1バイパス管18の下流側に接続されている。
【0034】
具体的には、第1サイホン排水管31は、排水管51の下横管部51Cの末端に接続されている。また、
図1において、第1サイホン排水管31は、排水を横方向へ流す横引き管31Aと、排水立て管14に接続され横引き管31Aからの排水を下方へ流す竪管31Bとを有している。また、第2サイホン排水管32は、排水を横方向へ流す横引き管32Aと、排水立て管14に接続され横引き管32Aからの排水を下方へ流す竪管32Bとを有している。竪管31B,32Bの下端は、排水継手28に接続されている。なお、第1サイホン排水管31は、第2サイホン排水管32の奥側に並列に配置されている。
【0035】
図6に示されるように、第1排水トラップ21は、排水部41の下流側に設けられていると共に、管状に形成されたトラップ本体部21Bを有している。トラップ本体部21Bは、第1流路部21Cと、傾斜部としての第2流路部21Dと、第3流路部21Eと、第4流路部21Fとを有している。第1流路部21Cは、排水部41に対応した位置、すなわち排水部41の下方側に設けられていると共に、排水部41から下方側へ延設された部位21CCと、下方側へ延設された部位21CCの下端から水平方向に延設された部位21CBとを含んで構成されている。つまり、トラップ本体部21Bは、排水部41に対応した位置、すなわち排水部41の下方側に設けられていると共に、下方側へ延設された流路の途中で水平方向に折れ曲がっている。第1流路部21Cの水平方向に延設された部位21CBは、床スラブ24(
図1参照)上に載置されている。つまり、第1流路部21Cは、第1排水トラップ21における浴槽11側の端部21CAから、水平に延設された部位21CBと第2流路部21Dとの境界B1までの間の範囲とされている。
【0036】
第2流路部21Dは、第1流路部21Cの下流側に隣接して設けられており、第1流路部21Cの下流側端部(水平方向に延設された部位21CB)に対して斜め上方に延設されている。つまり、第2流路部21Dは、境界B1から、第2流路部21Dと第3流路部21Eとの境界B2までの間の範囲とされている。
【0037】
第3流路部21Eは、第2流路部21Dの下流側に隣接して設けられており、第2流路部21Dの下流側端部から斜め下方側、すなわち床スラブ24側へ向けて延設されている。つまり、第3流路部21Eは、境界B2から、第3流路部21Eと第4流路部21Fのとの境界B3までの範囲とされている。
【0038】
第4流路部21Fは、第3流路部21Eの下流側に隣接して設けられており、第3流路部21Eの下流側端部から水平方向に延設されて床スラブ24(
図1参照)上に載置されている。つまり、第4流路部21Fは、境界B3から、第1サイホン排水管31が接続された端部までの範囲とされている。また、第4流路部21Fと、第2流路部21Dとの下端は、同一の高さとされており、それぞれ床スラブ24上に載置されている。換言すると、第1排水トラップ21は、排水管51が一体となった構成とされている。なお、第4流路部21Fと、第2流路部21Dとの下端は、同一の高さとされているが、これに限らず、異なる高さとされかつ少なくとも第4流路部21Fの下端が床スラブ24上に載置されていればよい。
【0039】
第1排水トラップ21の浴槽11側の開口は、上方側(上流側)が下方側(下流側)に対して拡径されている。換言すると、第1排水トラップ21の浴槽11側の開口は、それ以外の部位に対して径方向外側へ張り出されている。
【0040】
トラップ本体部21B内には、凸部としての下側突出部23が設けられている。具体的には、下側突出部23は、第1流路部21Cの下方側へ延設された部位21CCの側壁及び水平に延設された部位21CBの上壁21BA側とで形成されると共に、先端部23Aがトラップ本体部21Bの第1流路部21Cにおける底壁21BBに近づくように下方側へ延設された部位21CCの側壁に沿って下方側へ突出されている。つまり、先端部23Aと底壁21BBとが対向されている。一方、第1流路部21Cにおける底壁21BBは、水平に延設されているため、換言すると下側突出部23が設けられた部位は、流路の高さが他の部位より低くされている。
【0041】
第1排水トラップ21における下側突出部23の下流側には、越流部としての上側突出部27が設けられている。上側突出部27は、トラップ本体部21Bの底壁21BBにおける第2流路部21Dと第3流路部21Eとの境界B2に設けられており、先端部27Aが上壁21BAに近づくように上方側へ向かって突出されかつ下側突出部23の先端部23Aより高い場所に位置している。つまり、先端部27Aと上壁21BAとが対向されている。一方、第2流路部21Dにおける上側突出部27に対応した部位の上壁21BAは、水平に延設されているため、換言すると上側突出部27が設けられた部位は、流路の高さが他の部位より高くされている。
【0042】
また、上側突出部27は、第1流路部21Cの水平方向に延設された部位21CBに対して斜め上方側に延設された第2流路部21Dの底壁21BBにおける頂点に設けられている。換言すると、下側突出部23と上側突出部27との間には、第1流路部21Cの水平方向に延設された部位21CBにおける底壁21BBに対し斜め上方側へ延設された傾斜部としての第2流路部21Dが設けられている。このトラップ本体部21Bの第1流路部21Cと第2流路部21Dとにおける上側突出部27より低い部位に封水溜まり21Gが形成される。なお、下側突出部23及び上側突出部27のそれぞれの突出量は、必要とする封水の量を確保できる程度に設定されている。
【0043】
第1排水トラップ21における下側突出部23と上側突出部27とに対応した部位には、
図7に示されるように、拡幅部29がそれぞれ形成されている。この拡幅部29は、平面視にて第1排水トラップ21の径方向外側に拡径された部位であり、下側突出部23と底壁21BBとの間の流路の幅及び上側突出部27と上壁21BA(
図6参照)との間の流路の幅が、排水部41(
図6参照)の幅(径)より広く形成されている。なお、下側突出部23と底壁21BBとの間の流路の断面積及び上側突出部27と上壁21BA(
図6参照)との間の流路の断面積は、排水部41(
図6参照)の断面積と同一又はそれ以上になるのが好適である。
【0044】
図6に示されるように、第1バイパス管18は、トラップ本体部21Bの第3流路部21Eにおける封水溜まり21Gより上方の部位に水平に接続されている。具体的には、第1バイパス管18は、第3流路部21Eの上方側から第1排水トラップ21の下流側へ向かって水平に延設された状態で接続されている。
【0045】
図8に示されるように、排水構造16においては、洗い場12の浴槽11側の側面を構成するエプロン40を着脱可能に構成してもよい。この場合、エプロン40を取り外すことにより、排水構造16のメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【0046】
(実施形態の作用・効果)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図3において、本実施形態に係る排水構造16では、浴槽11からの排水は、貯水後に排水される溜め流し排水となるため、洗い場12からの排水と比較して、多くの排水が一度に排水される。浴槽11からの排水は、第1排水トラップ21を通って排水管51の上横管部51A、縦管部51B、下横管部51Cを通じて、第1サイホン排水管31へ流れて行く(矢印A方向)。第1サイホン排水管31においてサイホン力が発生するまで、余剰の排水は第1バイパス管18に流入する(矢印B方向)。第1バイパス管18内の空気は、排水の流入に伴い第2排水トラップ22側へ押し出される(矢印C方向)。
【0047】
第1バイパス管18は逆U字形に形成されており、管路の最上部18Hが第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22の双方よりも上方に位置するので、第1バイパス管18に流入した排水は第2排水トラップ22側には流れ難い。特に、第1バイパス管18における管路の最上部18Hの高さ位置が、浴槽11に貯められた水の標準的な水頭Hの高さ位置と同等である場合には、縦管部18Aから縦管部18Bへの越流は生じ難い。なお、第2排水トラップ22の封水が破られない程度の越流は、生じてもよい。
【0048】
図4において、第1サイホン排水管31にサイホン力が発生すると、浴槽11からの排水及び第1バイパス管18に流入していた排水が、第1サイホン排水管31を通じて速やかに排出され(矢印A方向)、浴槽11の水位が低下して行く(矢印D方向)。このとき、吸気弁30から第1バイパス管18に外気が取り込まれるので(矢印E方向)、第2排水トラップ22側に負圧が作用することが抑制される。このため、第2排水トラップ22の封水が破られることはない。
【0049】
このように、排水構造16によれば、従来のような一時貯留槽を用いなくても、浴槽11からの溜め流し排水が洗い場12へ溢れることを抑制できる。
【0050】
一方、
図5において、洗い場12からの排水は、貯水のない連続排水となる。洗い場12からの排水は、第2排水トラップ22を通って排水管52の上横管部52A、縦管部52B、下横管部52Cを通じて、第2サイホン排水管32へ流れて行く(矢印F方向)。第1バイパス管18における管路内の空気は、第1バイパス管18を通じて第1排水トラップ21側へ押し出されるので(矢印G方向)、洗い場12からの排水がスムーズに行われる。連続排水の場合には水頭が殆どないため、第1バイパス管18の縦管部18Bに排水が流入しない。第2サイホン排水管32にサイホン力が発生すると、洗い場12からの排水が、第2サイホン排水管32を通じて速やかに排出される(矢印F方向)。このとき、洗い場12のみからの排水であれば、第1バイパス管18に負圧が生じることは殆どないが、浴槽11との同時排水時など、第1バイパス管18に負圧が生じた場合には、吸気弁30から外気が取り込まれるので、第1排水トラップ21及び第2排水トラップ22の封水が破られることはない。
【0051】
図1において、本実施形態に係るサイホン排水システム10では、第1サイホン排水管31が有する横引き管31A及び竪管31Bを通じて、浴槽11からの排水を排水立て管14へ流すことができる。また、このサイホン排水システム10では、第2サイホン排水管32が有する横引き管32A及び竪管32Bを通じて、洗い場12からの排水を排水立て管14へ流すことができる。
【0052】
図6に示されるように、第1排水トラップ21は、トラップ本体部21B、下側突出部23及び上側突出部27を有している。トラップ本体部21Bは、略管状に形成され、浴槽11の底部に設けられた排水部41の下流側に設けられかつ下方側へ延設された部位21CCと当該下方側へ延設された部位21CCの下端から水平方向に延設された部位21CBとを有する構成とされている。下側突出部23は、トラップ本体部21B内の上壁21BAに設けられると共に、先端部23Aが他の部位よりもトラップ本体部21Bの底壁21BBに近づくように下方側へ向かって突出されている。上側突出部27は、トラップ本体部21B内における下側突出部23より下流側の底壁21BBに設けられると共に、先端部27Aが他の部位よりもトラップ本体部21Bの上壁21BAに近づくように上方側へ向かって突出され、下側突出部23の先端部23Aより高い位置にある。したがって、第1排水トラップ21は、上側突出部27より下方側に位置する部位に封水を溜めておくことができると共に、下側突出部23が下方側へ突出している分、封水が破れ難くなる。つまり、第1排水トラップ21自体の簡易な形状により第1排水トラップ21の内部に効果的に封水を溜めておくことができるので、第1排水トラップ21の構造を簡素化して第1排水トラップ21の設置に必要な空間を少なくすることができる。また、下側突出部23は、底壁21BBに近づくように突出している。つまり、トラップ本体部21Bの底壁21BBの下方側への突出が抑制される。さらに、上側突出部27は、上壁21BAに近づくように突出している。つまり、トラップ本体部21Bの上壁21BAの上方側への突出が抑制される。したがって、トラップ本体部21B自体の上下方向の寸法を抑えることができるので、設置のために必要な床下空間を低くすることができる。これにより、更なる低床化を実現することができる。
【0053】
また、トラップ本体部21B内における下側突出部23と上側突出部27との間には、トラップ本体部21Bの水平方向に延設された部位21CBにおける底壁21BBに対し斜め上方へ延設された第2流路部21Dが設けられていることから、この第2流路部21Dも含めて封水を内部に溜める封水溜まり21Gが形成される。これにより、第1排水トラップ21を大型化することなく封水量を確保できるので、第1排水トラップ21の設置に必要な空間をより少なくすることができる。
【0054】
さらに、トラップ本体部21B内における下側突出部23の先端部23Aと底壁21BBとの間の流路の断面積が排水部41の断面積と同一又はそれ以上となるように形成されていることで、下側突出部23が設けられた部位においても流量を確保することができるという点でより好ましい。したがって、排水をスムーズに行うことができる。
【0055】
さらにまた、トラップ本体部21B内における上側突出部27の先端部27Aと上壁21BAとの間の流路の断面積が排水部41の断面積と同一又はそれ以上になるように形成されていることで、上側突出部27が設けられた部位においても流量を確保することができるという点でより好ましい。したがって、排水をスムーズに行うことができる。
【0056】
このように、本実施形態に係る排水構造16及びサイホン排水システム10によれば、従来のような一時貯留槽が不要となるので、溜め流し排水が行われる浴槽11等の設置場所の更なる低床化が可能となる。
【0057】
なお、上述した下側突出部23は、第1排水トラップ21に適用されているが、これに限らず、第2排水トラップ22も第1排水トラップ21と同一の構成としてもよい。
【0058】
また、第1排水トラップ21には、上側突出部27が設けられているが、これに限らず、上側突出部27が設けられずに下側突出部23のみが設けられた構成としてもよい。
【0059】
[第2実施形態]
図9に示されるように、本実施形態に係る排水構造60は、第1実施形態に対して第1第1排水トラップ62のトラップ本体部62A内部に設けられた凸部としての突出部64が第1第1排水トラップ62の上流側から下流側へ向かうに連れて下方側への突出量が徐々に大きくなるように形成されている。すなわち、突出部64は、第1流路部21Cの下方側へ延設された部位21CCの側壁及び水平に延設された部位21CBの上壁21BAとで形成されると共に、第1排水トラップ62の上流側から下流側に向かうに連れて底壁21BB側への突出量が大きくされた湾曲面64Aを有している。
【0060】
第1第1排水トラップ62における突出部64と上側突出部27との間の部位には、
図10に示されるように、拡幅部65が形成されている。この拡幅部65は、平面視にて突出部64と上側突出部27との間を略一定に第1第1排水トラップ62の径方向外側へ拡径させた部位であり、突出部64と底壁21BBとの間の流路の幅及び上側突出部27と上壁21BAとの間の流路の幅が、排水部41(
図9参照)の幅(径)より広く形成されている。なお、突出部64と底壁21BBとの間の流路の断面積及び上側突出部27と上壁21BAとの間の流路の断面積は、排水部41(
図9参照)の断面積と同一又はそれ以上になるのが好適である。
【0061】
本実施形態では、基本的な構成が第1実施形態と同一の構成とされているので、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、突出部64は、第1第1排水トラップ62における上流側から下流側へ向かうに連れて突出量が徐々に大きくなるように設定されていることから、排水が流れる際に突出部64に当たる排水をスムーズに突出部64の先端部64Bへと案内させることができる。つまり、排水時の抵抗を抑制することができる。
【0062】
さらに、拡幅部65が、平面視にて突出部64と上側突出部27との間を略一定に第1排水トラップ62の径方向外側へ拡径させるように形成されていることから、第1第1排水トラップ62内の封水の量を多くすることができる。これにより、排水の流れをスムーズにすることができる。
【0063】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
[第3実施形態]
図11において、本実施形態に係る排水構造26は、第1排水トラップ21の下流側部位及び第2排水トラップ22の下流側部位の少なくとも一方、例えば双方に、補助チャンバ71,72を有している。補助チャンバ71は、第1排水トラップ21の下流側部位に設けられている。補助チャンバ72は、第2排水トラップ22の下流側部位に設けられている。
【0065】
補助チャンバ71,72は、例えば排水管51,52にそれぞれ設けられた大径部(内径拡大部)である。補助チャンバ71,72の高さ寸法は、従来の一時貯留槽よりも小さく設定されており、第1排水トラップ21、第2排水トラップ22及び排水管51,52の配置に必要な空間内に配置可能な大きさとされる。したがって、補助チャンバ71,72の設置のために床下空間を余分に必要とすることはない。
【0066】
図示の例では、補助チャンバ71,72は何れも第1バイパス管18の上流側に配置されているが、補助チャンバ71,72の何れか一方又は双方が、第1バイパス管18の下流側に配置されていてもよい。
【0067】
この排水構造26では、補助チャンバ71,72により、第1バイパス管18の容量を超えた余剰の排水を受け入れることができる。浴槽11(
図1)から汲み上げた水を洗い場12(
図1)で使用した場合、通常時よりも大量の水が洗い場12から排出される。このような場合でも、補助チャンバ71,72で排水を受け入れることで、洗い場12からの排水が滞ることを抑制できる。また、浴槽11からの、より大量の溜め流し排水に対応することができる。
【0068】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0069】
[第4実施形態]
図12において、本実施形態に係る排水構造36では、第1バイパス管18に、吸気弁30(
図2)の代わりとなる通気管74が接続されている。通気管74は、例えば建物の屋外まで延び、末端74Aが大気に開放されている。
【0070】
この排水構造36では、吸気弁30(
図2)の代わりに通気管74が設けられているので、吸気弁30の配置スペースが不要となる。
【0071】
第1サイホン排水管31にサイホン力が発生した際、通気管74から第1バイパス管18に外気が取り込まれるので、第2排水トラップ22の封水が破られることはない。第2サイホン排水管32にサイホン力が発生した際にも、通気管74から第1バイパス管18に外気が取り込まれるので、第1排水トラップ21の封水が破られることはない。
【0072】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
[第5実施形態]
図13において、本実施形態に係る排水構造46は、他の排水トラップ83,84と、サイホン排水管93,94と、個別通気管103,104と、ヘッダ80と、合流通気管90とを有している。
【0074】
他の排水トラップ83は、他の水廻り器具の一例たる洗濯機の排水部(図示せず)に対して設けられる。他の排水トラップ84は、他の水廻り器具の一例たる洗面台に対して設けられる。他の排水トラップ83,84は、汚臭やガス等の逆流を防止するためのいわゆる封水式トラップである。
【0075】
他の排水トラップ83の下流側には、排水管113が接続されている。サイホン排水管93は、排水管113の下流側に接続されている。また、他の排水トラップ84の下流側には、排水管114が接続されている。サイホン排水管94は、排水管114の下流側に接続されている。
【0076】
個別通気管103は、一端が他の排水トラップ83の下流側部位(排水管113)に接続されている。また、個別通気管104は、一端が他の排水トラップ84の下流側部位(排水管114)に接続されている。個別通気管103,104の他端は、それぞれヘッダ80に接続されている。
【0077】
ヘッダ80は、通気管74及び個別通気管103,104が接続された管継手である。合流通気管90は、ヘッダ80に接続されると共に、大気に開放されている。具体的には、合流通気管90は、例えば建物の屋外まで延び、末端90Aが大気に開放されている。
【0078】
この排水構造46では、吸気弁30(
図2)の代わりに通気管74及び個別通気管103,104が設けられているので、吸気弁30の配置スペースが不要となる。また、通気管74及び個別通気管103,104をヘッダ80に集合させ、合流通気管90を通じて大気に開放する構成としている。したがって、通気管74や個別通気管103,104をそれぞれ屋外まで延ばす必要がない。これにより、一括で吸排気ができると共に、通気管74や個別通気管103,104を個々に大気に開放して配置する場合と比較して、部品点数を減らすことができる。
【0079】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
[参考例1]
図14において、本参考例に係る排水構造56では、第1排水トラップ21から延びる排水管51の下流側に、第1サイホン排水管31が接続されている。また、第2排水トラップ22から延びる排水管52の下流側に、第2サイホン排水管32が接続されている。つまり、第1排水トラップ21からの排水経路と、第2排水トラップ22からの排水経路とが、互いに独立している。
【0081】
したがって、第1排水トラップ21からの溜め流し排水が行われても、その排水が第2排水トラップ22側へ流入することはない。このため、浴槽11からの溜め流し排水が洗い場12へ溢れることを抑制できる。
【0082】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0083】
[参考例2]
図15において、本参考例に係る排水構造66は、参考例1において、吸気弁111,112が更に設けられている。排水管51には、上方に延びる分岐管121が接続されている。吸気弁111は、該分岐管121の上端に設けられている。また、排水管52には、上方に延びる分岐管122が接続されている。また、吸気弁112は、該分岐管122の上端に設けられている。吸気弁111,112の構成は、第1実施形態の吸気弁30と同様である。
【0084】
本参考例では、参考例1と同様に、第1排水トラップ21からの溜め流し排水が行われても、その排水が第2排水トラップ22側へ流入することはない。このため、浴槽11からの溜め流し排水が洗い場12へ溢れることを抑制できる。
【0085】
排水管51に吸気弁111が追加されているので、第1排水トラップ21からの排水時には、吸気弁111から外気が取り込まれる。また、排水管52に吸気弁112が追加されているので、第2排水トラップ22からの排水時には、吸気弁112から外気が取り込まれる。したがって、第1排水トラップ21からの排水、及び第2排水トラップ22からの排水が、何れも流れ易くなる。
【0086】
他の部分については、第1実施形態又は参考例1と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0087】
[第6実施形態]
図16において、本実施形態に係る排水構造86は、第2バイパス管218を有している。この第2バイパス管218は、第1バイパス管18の最上部より低い位置において第1バイパス管18における第1排水トラップ21側と第2排水トラップ22側とを接続している。第2バイパス管218における管路の底面は、第2排水トラップ22の上面22Aよりも低く配置されている。また、第2バイパス管218における管路の底面は、排水管52の上横管部52Aの底面52Dよりも高く配置されている。
【0088】
第2バイパス管218は、例えば横方向に延びている。なお、第2バイパス管218は、水平方向に対して傾斜したり、湾曲していたりしてもよい。このように、第2バイパス管218における管路の底面の高さが一定でない場合には、底面のうち最も高い位置が、第2排水トラップ22の上面22Aよりも低く、上横管部52Aの底面52Dよりも高く配置されている。
【0089】
第1バイパス管18における例えば接続部18Dには、第1逆止弁19が設けられている。第1逆止弁19は、第2排水トラップ22側から第1排水トラップ21側への流れを許容し、その反対側の流れを許容しないように構成されている。なお、第1逆止弁19の位置は接続部18Dに限られず、例えば縦管部18Bに設けられていてもよい。また、第1逆止弁19は、第1排水トラップ21側から第2排水トラップ22側への流れをある程度許容する構成であってもよい。
【0090】
第2バイパス管218には、第2逆止弁219が設けられている。第2逆止弁219は、第2排水トラップ22側から第1排水トラップ21側への流れを許容し、その反対側の流れを許容しないように構成されている。なお、第2逆止弁219は、第1排水トラップ21側から第2排水トラップ22側への流れをある程度許容する構成であってもよい。
【0091】
洗い場12からの排水が第2排水トラップ22に入りきらずに満水になるような場合でも、本実施形態によれば、余剰の排水は第2バイパス管218を通って排水管51の縦管部51B、下横管部51Cを通じて、第1サイホン排水管31(
図1)へ流れて行く(矢印H方向)。本実施形態では、第2バイパス管218における管路の底面が、排水管52の上横管部52Aの底面52Dよりも高く配置されている。したがって、洗い場12からの排水が常に第2バイパス管218へ流れることはなく、第2サイホン排水管32が速やかに満流になるので、サイホン起動が遅くなることはない。
【0092】
また、本実施形態では、第2バイパス管218における管路の底面が、第2排水トラップ22の上面22Aよりも低く配置されている。したがって、第2排水トラップ22から排水が溢れそうな場合に第2バイパス管218へ排水が流れるので、排水が第2排水トラップ22から溢れることを抑制できる。
【0093】
更に、第2バイパス管218に第2逆止弁219が設けられているので、第2バイパス管218を通じた第1排水トラップ21側から第2排水トラップ22側への流れが抑制される。また、第1バイパス管18の接続部18Dに第1逆止弁19が設けられているので、浴槽11からの排水時に、第1バイパス管18を通じた第1排水トラップ21側から第2排水トラップ22側への流れ、つまり縦管部18Aから縦管部18Bへの越流がより一層生じ難くなる。
【0094】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0095】
[第7実施形態]
図17において、本実施形態に係る排水構造76は、第6実施形態における第1バイパス管18の第1逆止弁19を省略した構成とされている。第1バイパス管18では、第1実施形態で述べたように、最上部18Hの高さの設定を適切に行うことにより、第1バイパス管18における縦管部18A,18B間で越流が生じないようにできる。したがって、本実施形態のように第1逆止弁19を省略することで、構成を簡素化し、低コスト化が可能となる。
【0096】
[第8実施形態]
図18において、本実施形態に係る排水構造130は、第1排水トラップ132を有している。第1排水トラップ132は、排水部41の下流側に設けられていると共に、管状に形成されたトラップ本体部132Aを有している。トラップ本体部132Aは、第1流路部132Cと、第2流路部132Dと、第3流路部132Eと、第4流路部132Fとを有している。第1流路部132Cは、排水部41に対応した位置、すなわち排水部41の下方側にて下方側へ向けて延設されていると共に、途中で水平方向に折れ曲がっている。具体的には、第1流路部132Cは、下方側へ延設された部位132CCと、下方側へ延設された部位132CCの下端から水平方向に延設された部位132CBとで構成されており、水平方向に延設された部位132CBは、床スラブ24(
図1参照)上に載置されている。つまり、第1流路部132Cは、第1排水トラップ132における浴槽11側の端部132CAから、水平方向に延設された部位132CBと第2流路部132Dとの境界B1までの間の範囲とされている。
【0097】
第2流路部132Dは、第1流路部132Cの下流側に隣接して設けられており、第1流路部132Cの下流側端部(水平方向に延設された部位132CB)に対して斜め上方に延設されている。つまり、第2流路部132Dは、境界B1から、斜め上方に延設された部位と第3流路部132Eの水平方向へ延設された部位との境界B2までの間の範囲とされている。
【0098】
第3流路部132Eは、第2流路部132Dの下流側に隣接して設けられており、水平方向に延設された部位132EAと、第2流路部132Dの下流側端部から延設された第3流路部132Eにおける水平方向に延設された部位132EAに対して斜め下方側へ延設された部位132EBとを有している。第3流路部132Eにおける水平方向に延設された部位132EAは、第2流路部132Dとの境界B2から水平方向に延設されており、床スラブ24(
図1参照)に対して離間されている。第3流路部132Eにおける斜め下方側へ延設された部位132EBは、水平方向に延設された部位132EAから斜め下方側、すなわち床スラブ24側へ向けて延設されている。つまり、第3流路部132Eは、境界B2から、斜め下方側へ延設された部位132EBと第4流路部132Fのとの境界B3までの範囲とされている。
【0099】
第4流路部132Fは、第3流路部132Eの下流側に隣接して設けられており、水平方向に延設されて床スラブ24(
図1参照)上に載置されている。つまり、第4流路部132Fは、境界B3から、第1サイホン排水管31が接続された端部までの範囲とされている。また、第4流路部132Fと、第2流路部132Dとの下端は、同一の高さとされており、それぞれ床スラブ24上に載置されている。換言すると、第1排水トラップ132は、排水管51が一体となった構成とされている。なお、第4流路部132Fと、第2流路部132Dとの下端は、同一の高さとされているが、これに限らず、異なる高さとされかつ少なくとも第4流路部132Fの下端が床スラブ24上に載置されていればよい。
【0100】
上述の構成により、第1排水トラップ132は、部分的に上方側へ向けた凸部134を有している。この凸部134内の第1流路部132C側に封水溜まり136が形成される。
【0101】
第1排水トラップ132における第1流路部132Cの浴槽11側の開口は、上方側(上流側)が下方側(下流側)に対して拡径されている。換言すると、第1排水トラップ132の浴槽11側の開口は、それ以外の部位に対して径方向外側へ張り出されている。
【0102】
第1排水トラップ132の凸部134における底壁132BBの上方へ延設された部位、すなわち第2流路部132Dの頂点に位置する第3流路部132Eの水平方向に延設された部位132EAにおける底壁132BBは、越流部としての第1トラップ壁132EDが形成されている。この第1トラップ壁132EDは、上流側から下流側へ向かう方向を板厚方向とすると共に、水平方向に延設された部位132EA内にて上方側へ向けて突出されている。
【0103】
一方、第1排水トラップ132の第1トラップ壁132EDより上流側の上壁132BAには、凸部としての第2トラップ壁132CDが形成されている。この第2トラップ壁132CDは、上流側から下流側へ向かう方向を板厚方向とすると共に、上部から下方側へ向けて突出されている。なお、第1トラップ壁132ED及び第2トラップ壁132CDのそれぞれの突出量は、必要とする封水の量を確保できる程度に設定されている。
【0104】
第1バイパス管18は、第1排水トラップ132の凸部134における封水溜まり136より上方の部位に接続されている。具体的には、第1排水トラップ132の凸部134における第3流路部132Eの斜め下方側へ延設された部位132EBの上方側に第1バイパス管18が略水平に接続されている。この第1バイパス管18は、第1排水トラップ132から離れるに連れて高くなるように緩やかに傾斜されているのが水抜きを行う観点でより好ましい。第1バイパス管18は、洗い場12と床スラブ24(
図1参照)との間を通り間隙S(
図1参照)へと配設されている。
【0105】
また、図示しないが、第1排水トラップ132の径は、一般的な排水管51よりも太く設定されているため、第2トラップ壁132CDが形成された部位における流路の面積と、第1トラップ壁132EDが形成された部位における流路の面積とを一般的な太さの配管における流路に比べて大きくできる。これにより、つまりを抑制することができる。
【0106】
本実施形態では、基本的な構成が第1実施形態と同一の構成とされているので、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0107】
[第9実施形態]
図19において、本実施形態に係る排水構造140は、第8実施形態における第1排水トラップ132の凸部134に接続された第1バイパス管18が、壁部12Aへ貫通された第4流路部132Fへ垂直に接続される構成とされている。本実施形態では、基本的な構成が第1実施形態と同一の構成とされているので、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、第1バイパス管18を壁部12A内に設けることで、より一層低床化を図ることができる。
【0108】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0109】
水廻り器具の一例として浴槽11を挙げたが、水廻り器具は、洗濯機等、排水が溜め流しとなる器具であってもよい。また、その他の廻り器具の一例として洗い場12を挙げたが、その他の水廻り器具は、洗面台、台所、食洗機等、排水が連続排水となる器具であってもよい。
【0110】
第1バイパス管18に吸気弁30が設けられるものとしたが、第1排水トラップ21や第2排水トラップ22の封水が破られることがなければ、吸気弁30を省略してもよい。
【符号の説明】
【0111】
11・・・浴槽(水回り器具)、12・・・洗い場(水回り器具)、18・・・第1バイパス管(通気管)、21・・・第1排水トラップ(排水トラップ)、21B・・・トラップ本体部、21BA・・・上壁、21BB・・・底壁、21CB・・・水平方向へ延設された部位、21CC・・・下方側へ延設された部位、21D・・・第2流路部(傾斜部)、22・・・第2排水トラップ、23・・・下側突出部(凸部)、23A・・・先端部、27・・・上側突出部(越流部)、27A・・・先端部、41・・・排水部、64・・・突出部、132ED・・・第1トラップ壁(越流部)、132CD・・・第2トラップ壁(凸部)