(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/26 20060101AFI20221101BHJP
A61M 39/10 20060101ALI20221101BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61M39/26
A61M39/10
A61M5/14 510
(21)【出願番号】P 2019012538
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八島 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】間中 勇輝
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043504(WO,A1)
【文献】特開2005-224537(JP,A)
【文献】特開2012-24565(JP,A)
【文献】特開2008-55056(JP,A)
【文献】特開2016-147077(JP,A)
【文献】国際公開第2004/062721(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0185628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/26
A61M 39/10
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ラインの途中に接続されて該輸液ラインに対する混注に用いられるコネクタであって、
該輸液ラインから液体が流入する流入口と、液体が該輸液ラインに流出する流出口と、該流入口と該流出口とを接続する接続空間部と、該接続空間部の底面の中央に直立する錐状突起部材とを備えるコネクタ本体と、
円盤状部材と、該円盤状部材の中央に直立する円柱状部材と、該円柱状部材の軸方向に沿って形成され該円柱状部材が注射筒の先端部により該接続空間部方向に押圧されたときに該錐状突起部材が挿入されることにより該接続空間部に連通する混注口とを備える可撓性弁体と、
該可撓性弁体を覆って該コネクタ本体に固定するカバー部材とを備え、
該可撓性弁体は該円柱状部材が注射筒の先端部により該接続空間部方向に押圧されたときに屈曲して該円盤状部材と該円柱状部材との境界部で該錐状突起部材の外周面に密着し、
該錐状突起部材は外周面に軸方向に沿う複数の溝部を備え、該溝部により該円盤状部材と該円柱状部材との境界部に対して間隙を形成することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、前記可撓性弁体は前記円柱状部材が注射筒の先端部により前記接続空間部方向に押圧されたときに屈曲して前記円盤状部材の一部で該接続空間部の底面の一部に接触し、
該接続空間部の底面は、該円盤状部材の非接触部分と、前記錐状突起部材の外周面の溝部とを連通する複数の凹部を備えることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ラインに対する混注に用いられるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液ラインの途中に接続されて該輸液ラインに対する薬液等の混注に用いられるコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記コネクタは、輸液ラインから輸液等の液体が流入する流入口と、該液体が該輸液ラインに流出する流出口と、該流入口と該流出口とを接続する接続空間部とを備えるコネクタ本体と、コネクタ本体に接続されて輸液ラインに対する混注に用いられる混注路を形成する可撓性の有底筒状部材と、該有底筒状部材を覆って該コネクタ本体に固定するカバー部材とを備える。
【0004】
前記有底筒状部材は、内部に接続空間部に連通する空洞部を備え、底面が接続空間部から離間する方向に位置するように、倒立状態で前記コネクタ本体に接続される。また、前記有底筒状部材は底面に混注口を備えており、該混注口は混注に用いられる注射筒の先端部により接続空間部方向に押圧されたときに開口して空洞部に連通する。この結果、混注口と空洞部とにより、注射筒から混注される薬液等を接続空間部に案内する混注路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の前記コネクタでは、混注を行うとき以外は、輸液ラインから流入口を介して流入した輸液等の液体はそのまま接続空間部から流出口を介して輸液ラインに流出する。
【0007】
しかしながら、前記空洞部は流入口から流出口に至る液体の流れに影響を受けない死空間となるので、前記輸液等の液体は一旦空洞部に流入するとそのまま該空洞部に滞留することになるという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、前記輸液等の液体が滞留する死空間の無いコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のコネクタは、輸液ラインの途中に接続されて該輸液ラインに対する混注に用いられるコネクタであって、該輸液ラインから液体が流入する流入口と、液体が該輸液ラインに流出する流出口と、該流入口と該流出口とを接続する接続空間部と、該接続空間部の底面の中央に直立する錐状突起部材とを備えるコネクタ本体と、円盤状部材と、該円盤状部材の中央に直立する円柱状部材と、該円柱状部材の軸方向に沿って形成され該円柱状部材が注射筒の先端部により該接続空間部方向に押圧されたときに該錐状突起部材が挿入されることにより該接続空間部に連通する混注口とを備える可撓性弁体と、該可撓性弁体を覆って該コネクタ本体に固定するカバー部材とを備え、該可撓性弁体は該円柱状部材が注射筒の先端部により該接続空間部方向に押圧されたときに屈曲して該円盤状部材と該円柱状部材との境界部で該錐状突起部材の外周面に密着し、該錐状突起部材は外周面に軸方向に沿う複数の溝部を備え、該溝部により該円盤状部材と該円柱状部材との境界部に対して間隙を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明のコネクタでは、前記可撓性弁体が前記円盤状部材と、該円盤状部材の中央に直立する前記円柱状部材とからなるので、該円柱状部材が注射筒の先端部により該接続空間部方向に押圧されていない状態では、前記コネクタ本体の接続空間部との間に、前記輸液等の液体が滞留する死空間となる空洞部を無くすことができる。
【0011】
また、前記円柱状部材が注射筒の先端部により前記接続空間部方向に押圧されると、前記可撓性弁体は屈曲して前記円盤状部材と該円柱状部材との境界部が前記錐状突起部材の外周面に密着することにより死空間を無くすことができる。一方、前記円盤状部材と前記円柱状部材との境界部が前記円錐状突起部材の外周面に密着すると、前記混注口から供給される薬液等の液体が該接続空間部に流入できなくなることが懸念される。
【0012】
しかし、本発明のコネクタでは、前記混注口に挿入される前記錐状突起部材が外周面に軸方向に沿う複数の溝部を備え、該溝部により前記円盤状部材と前記円柱状部材との境界部に対して間隙を形成する。そこで、前記混注口から供給される薬液等の液体は、前記錐状突起部材の溝部を介して該接続空間部に流入することができる。
【0013】
また、本発明のコネクタでは、前述のように前記円柱状部材が注射筒の先端部により前記接続空間部方向に押圧され、前記可撓性弁体が屈曲したときに、前記円盤状部材の一部が前記接続空間部の底面に接触することがある。前記円盤状部材の一部が前記接続空間部の底面に接触すると、錐状突起部材の溝部の出口が該円盤状部材により閉塞され、前記混注口から供給される薬液等の液体が該接続空間部に流入できなくなることが懸念される。
【0014】
そこで、本発明のコネクタにおいて、前記可撓性弁体は前記円柱状部材が注射筒の先端部により前記接続空間部方向に押圧されたときに屈曲して前記円盤状部材の一部で該接続空間部の底面の一部に接触し、該接続空間部の底面は、該円盤状部材の非接触部分と、前記錐状突起部材の外周面の溝部とを連通する複数の凹部を備えることが好ましい。
【0015】
本発明のコネクタは、前記接続空間部が底面に前記複数の凹部を備えていることにより、前記可撓性弁体が屈曲して前記円盤状部材の一部で該接続空間部の底面の一部に接触したときには、前記混注口から供給される薬液等の液体は、前記錐状突起部材の溝部から前記接続空間部の底面の凹部を介して該接続空間部に流入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】円柱状部材が注射筒の先端部により接続空間部方向に押圧された状態を示す説明的断面図。
【
図5】本発明のコネクタの他の構成例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のコネクタ1は、図示しない輸液ラインの途中に接続されて該輸液ラインに対する薬液等の混注に用いられる医療用器具であり、円盤状のコネクタ本体2と、可撓性弁体3と、可撓性弁体3を覆ってコネクタ本体2に固定するカバー部材4とからなる。
【0019】
コネクタ本体2は、図示しない輸液ラインから液体が流入する流入口21と、該液体が該輸液ラインに流出する流出口22と、流入口21と流出口22とを接続する接続空間部23とを備えている。流入口21はコネクタ本体2の側面から円盤の法線方向に形成されており、流出口22は、流入口21に対して対称となるコネクタ本体2の側面から円盤の法線方向に形成されている。また、接続空間部23はコネクタ本体2のほぼ中央に円筒状空間として形成されており、底面の中央部に可撓性弁体3方向に直立する円錐状突起部材24を備えている。円錐状突起部材24はその側面に軸方向に沿う複数の溝部25を備えており、溝部25は接続空間部23の底面に形成された凹部26に連通している。
【0020】
可撓性弁体3は、接続空間部23の上部を閉蓋する円盤状部材31と、円盤状部材31の中央部に直立する円柱状部材32とを備えている。円盤状部材31はコネクタ本体2の外周縁に沿って形成された環状壁部27の内部に嵌着される一方、円盤状部材31の底面に接続空間部23の外周縁に沿って形成された環状突起28が圧入されている。この結果、円盤状部材31は、カバー部材4(円盤状カバー部41)と環状突起28とにより確実に挟持されている。
【0021】
また、円柱状部材32はその軸方向に沿って混注口33を備えている。混注口33は、混注に用いられる注射筒の先端部5(
図4参照)により接続空間部23方向に押圧されたときに、円錐状突起部材24が挿入される。そこで、円盤状部材31は混注口33の直下に円錐状突起部材24を案内する案内凹部34を備えている。混注口33は、通常は閉じていて、案内凹部34に案内された円錐状突起部材24が挿入される際に接続空間部23に連通して混注路を形成する。
【0022】
カバー部材4は、底面を除いて可撓性弁体3を覆っており、円盤状部材31に対応する円盤状カバー部41と、円柱状部材32に対応する円柱状カバー部42とを備えている。また、円柱状カバー部42の外周面に注射筒5のロック筒(図示せず)が螺合される雄ねじ部43を備えている。
【0023】
また、円盤状カバー部41は外周縁から垂下するスカート部44を備え、円盤状カバー部41の底面に設けられた係合突起45が円柱状部材32の上面に設けられた係合凹部に係合される一方、スカート部44の内周面に形成された環状突起46が環状壁部27の外周面に設けられた環状凹部に係合されている。この結果、可撓性弁体3はコネクタ本体2の接続空間部23を閉蓋する状態でカバー部材4により固定される一方、カバー部材4自体もコネクタ本体2に固定されている。
【0024】
本実施形態のコネクタ1は、図示しない輸液ラインの途中に接続されたときに、可撓性弁体3の円柱状部材32が注射筒の先端部5により接続空間部23方向に押圧されていない状態では、該輸液ラインから流入口21を介して流入した輸液等の液体は、
図3に矢示するように、接続空間部23内で円錐状突起部材24の両側を通って流出口22から該輸液ラインに流出する。このとき、接続空間部23は、
図2に示すように、可撓性弁体3の円盤状部材31により閉蓋されており、円盤状部材31と接続空間部23との間に、前記輸液等の液体が滞留する死空間となる空洞部が無いので前記輸液等の液体を滞留させることなく、前記輸液ラインに流出させることができる。
【0025】
輸液ラインに接続したコネクタ1を用いて混注を行うときには、
図4に示すように、混注する薬液等が収容された注射筒の先端部5を可撓性弁体3の円柱状部材32に当接し、円柱状部材32を接続空間部23方向に押圧する。このようにすると、可撓性弁体3がW字状に屈曲する一方、円錐状突起部材24が混注口33に挿入されることにより混注口33が接続空間部23に連通して混注路を形成する。
【0026】
このとき、注射筒の先端部5は外周面に円柱状カバー部42の内周面が密着することにより、円柱状カバー部42に支持される。また、前記注射筒が先端部5の外周側に設けられた外套筒であって内周面に雌ねじ部が形成されているロック筒(図示せず)を備えるときには、該ロック筒の雌ねじ部を円柱状カバー部42の外周面に形成された雄ねじ部43に螺合することができる。前記ロック筒の雌ねじ部を雄ねじ部43に螺合することにより、注射筒の先端部5により円柱状部材31を接続空間部23方向に押圧する動作を容易かつ確実に行うことができる。
【0027】
そして、注射筒のプランジャーをシリンダーに押し込むことにより、該注射筒に収容されている薬液等が矢示するように該注射筒の先端部5から混注口33に注入される。
【0028】
また、可撓性弁体3は前述のように断面視W字状に屈曲された結果、円盤状部材31と円柱状部材32との境界部が、円錐状突起部材24の外周面に密着している。このとき、円錐状突起部材24は外周面に軸方向に沿う複数の溝部25を備えているので、溝部25により円盤状部材31と円柱状部材32との境界部に対して間隙を形成することができる。そこで、混注口33に注入された薬液等の液体は、円錐状突起部材24の溝部25を介して接続空間部23に流入することができる。
【0029】
可撓性弁体3は、屈曲して円盤状部材31と円柱状部材32との境界部が、円錐状突起部材24の外周面に密着したときに、
図4に示すように、さらに円盤状部材31の一部が接続空間部23の底面に接触することがある。円盤状部材31の一部が接続空間部23の底面に接触すると、円錐状突起部材24の溝部25の出口が円盤状部材31により閉塞され、混注口33から供給される薬液等の液体が接続空間部23に流入できなくなることが懸念される。
【0030】
しかし、本実施形態のコネクタ1は、接続空間部23の底面に形成された凹部26が、円盤状部材31が接触していない部分(円盤状部材31の非接触部分)と、円錐状突起部材24の溝部25とを連通するようにされていることにより、混注口33から供給される薬液等の液体が円錐状突起部材24の溝部25から接続空間部23の凹部26を介して接続空間部23に流入することができる。
【0031】
一方、輸液ラインから流入口21を介して接続空間部23に流入した輸液等の液体は、屈曲した円盤状部材31の外周面と接続空間部23との間に形成された間隙29を円盤状部材31の外周面に沿って流れることができ、このとき溝部25を介して、又は溝部25から凹部26を介して接続空間部23に流入する薬液等の液体と混合され、流出口22から該輸液ラインに流出する。
【0032】
従って、本実施形態のコネクタ1では、円盤状部材31と接続空間部23との間に、前記輸液等の液体が滞留する死空間となる空洞部が無いので、前記輸液等の液体及び混注口33から供給される薬液等の液体を滞留させることなく、前記輸液ラインに流出させることができる。
【0033】
本実施形態のコネクタ1では、カバー部材4はスカート部44の内周面に形成された環状突起46が環状壁部27の外周面に設けられた環状凹部に係合されることによりコネクタ本体2に固定されている。しかし、カバー部材4は、
図5に示すようにスカート部44の下端縁からさらに下方に延出された複数の爪部材47を備え、爪部材47をコネクタ本体2の側面及び底面に形成された溝部20に係合させることによりコネクタ本体2に固定されるようにされていてもよい。
【0034】
また、本実施形態のコネクタ1では、接続空間部23の底面の中央部に円錐状突起部材24を備えているが、円錐状突起部材24に代えて、三角錐状、四角錐状等の多角錐状の錐状突起部材を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…コネクタ、 2…コネクタ本体、 3…可撓性弁体、 4…カバー部材、 5…注射筒の先端部、 21…流入口、 22…流出口、 23…接続空間部、 24…円錐状突起部材、 25…溝部、 26…凹部、 31…円盤状部材、 32…円柱状部材、 33…混注口。