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特許7167415温度推定モデル決定方法および装置、温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システム
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  • 特許-温度推定モデル決定方法および装置、温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】温度推定モデル決定方法および装置、温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20221101BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20221101BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H01M10/48 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021520343
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2020011375
(87)【国際公開番号】W WO2021040396
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0106742
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ボヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミンヒー
【審査官】羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/038658(WO,A1)
【文献】特許第6555440(JP,B1)
【文献】特表2014-524629(JP,A)
【文献】特開2012-103220(JP,A)
【文献】米国特許第06076964(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102494778(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109987000(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/04
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュール内の温度を推定する温度推定モデルを決定する温度推定モデル決定方法であって、
温度推定のために選択されたモデル種類によるn個(nは自然数)のパラメータおよび前記n個のパラメータそれぞれの各パラメータ範囲区間数に基づいてすべてのパラメータセットを計算する段階と、
温度推定に用いられる入力データと、前記バッテリモジュール内の測定温度とを含み、前記温度推定モデルの予備検証に用いられる予備検証プロファイルを取得する段階と、
温度推定に用いられる入力データと、前記バッテリモジュール内の測定温度とを含み、前記温度推定モデルの再検証に用いられる再検証プロファイルを取得する段階と、
すべての前記パラメータセットのそれぞれに対応するモデルに、前記予備検証プロファイルの前記入力データを代入して温度を推定する段階と、
すべての前記パラメータセットのそれぞれに対して、前記予備検証プロファイルの前記温度と、前記推定された温度との差による第1誤差を算出する段階と、
すべての前記パラメータセットに対する第1誤差のそれぞれと、第1臨界値とを比較する段階と、
前記第1誤差のうち、前記第1臨界値より小さい第1誤差に対応するパラメータセットを第1パラメータセットとして抽出する段階と、
前記第1パラメータセットに対応するモデルを用いて前記予備検証プロファイルの時系列的に変わる入力データにより推定された温度と、前記予備検証プロファイルの前記温度との差のうちの最も大きい差である最大誤差を算出する段階と、
前記最大誤差と第2臨界値とを比較する段階と、
前記第2臨界値より小さい前記最大誤差に対応する加重値を乗じた値と、前記第1パラメータセットに応じた第1誤差に対応する加重値を乗じた値を足した結果に基づいて第2パラメータセットを抽出する段階と、
前記第2パラメータセットに対応するモデルに、前記再検証プロファイルの前記入力データを代入して温度を推定する段階と、
前記再検証プロファイルの前記温度と、前記推定された温度との差による第2誤差を算出する段階と、
前記第2誤差が第3臨界値より小さい場合、前記第2パラメータセットに対応するモデルを前記温度推定モデルに決定する段階と、を含む、
温度推定モデル決定方法。
【請求項2】
前記予備検証プロファイルおよび前記再検証プロファイルは、
少なくとも時系列的に変わる温度センサの温度値、バッテリ電流、冷却水温度値、および空気温度値を前記入力データとして含む、請求項1に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項3】
前記推定された温度は、推定された前記バッテリモジュールの最高温度または最低温度を含み、
前記測温度は、測定された前記バッテリモジュールの最高温度または最低温度を含む、請求項1または2に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項4】
前記第1誤差および前記第2誤差のうちの少なくとも一つは、二乗平均平方根誤差である、請求項1から3のいずれか一項に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項5】
前記第1誤差がすべて前記第1臨界値以上であれば、基準プロファイルを変更する段階をさらに含み、
前記基準プロファイルは、前記温度推定モデルをビルドアップするための初期値として、温度推定に必要な因子および測定された温度を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項6】
前記第1パラメータセットすべての前記最大誤差が前記第2臨界値以上であれば、前記基準プロファイルを変更する段階をさらに含む、請求項5に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項7】
前記第2パラメータセットすべての前記第2誤差が前記第3臨界値以上であれば、前記基準プロファイルを変更する段階をさらに含む、請求項6に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項8】
前記第1パラメータセットを抽出する段階は、
前記第1誤差のうちの小さい順に上位i個に属する第1誤差に対応するパラメータセットを前記第1パラメータセットとして抽出する段階を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項9】
前記第2パラメータセットを抽出する段階は、
前記足した結果が小さい順に上位j個(jは自然数)に属する足した結果に対応するパラメータセットを前記第2パラメータセットとして抽出する段階を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の温度推定モデル決定方法。
【請求項10】
バッテリモジュール内の温度を推定する温度推定モデルを決定する温度推定モデル決定装置であって、
温度推定のために選択されたモデル種類によるn個(nは自然数)のパラメータおよび前記n個のパラメータのそれぞれの各パラメータ範囲区間数に基づいてすべてのパラメータセットを計算するパラメータセット生成部であって温度推定に用いられる入力データと、前記バッテリモジュール内の測定温度とを含み、前記温度推定モデルの予備検証に用いられる予備検証プロファイルを取得し、温度推定に用いられる入力データと、前記バッテリモジュール内の測定温度とを含み、前記温度推定モデルの再検証に用いられる再検証プロファイルを取得する、パラメータ生成部と、
すべての前記パラメータセットのそれぞれに対応するモデルに予備検証プロファイルの前記入力データを代入して温度を推定するモデリング部と、
すべての前記パラメータセットのそれぞれに対して、前記予備検証プロファイルの前記温度と、前記推定された温度との差による第1誤差を算出する誤差計算部と、を含み、
前記モデリング部は、
すべての前記パラメータセットに対する第1誤差のそれぞれと、第1臨界値とを比較し、前記第1誤差のうちの前記第1臨界値より小さい第1誤差に対応するパラメータセットを第1パラメータセットとして抽出し、
前記第1パラメータセットに対応するモデルを用いて前記予備検証プロファイルの時系列的に変わる入力データにより推定された温度と、前記予備検証プロファイルの前記温度との差のうちの最も大きい差である最大誤差を算出し、前記最大誤差と、第2臨界値とを比較し、前記第2臨界値より小さい前記最大誤差に対応する加重値を乗じた値と、前記第1パラメータセットに応じた第1誤差に対応する加重値を乗じた値を足した結果に基づいて第2パラメータセットを抽出する最大誤差計算部と、
前記第2パラメータセットに対応するモデルに、前記再検証プロファイルの前記入力データを代入して温度を推定し、前記再検証プロファイルの前記温度と、前記推定された温度との差による第2誤差を算出し、前記第2誤差が第3臨界値より小さい場合、前記第2パラメータセットに対応するモデルを前記温度推定モデルに決定する最終モデル決定部と、を有する、温度推定モデル決定装置。
【請求項11】
前記予備検証プロファイルおよび前記再検証プロファイルは、
少なくとも時系列的に変わる温度センサの温度値、バッテリ電流、冷却水温度値、および空気温度値を入力データとして含む、請求項10に記載の温度推定モデル決定装置。
【請求項12】
前記推定された温度は、推定された前記バッテリモジュールの最高温度または最低温度を含み、
前記測温度は、測定された前記バッテリモジュールの最高温度または最低温度を含む、請求項10または11に記載の温度推定モデル決定装置。
【請求項13】
前記第1誤差および前記第2誤差のうちの少なくとも一つは、二乗平均平方根誤差である、請求項10から12のいずれか一項に記載の温度推定モデル決定装置。
【請求項14】
バッテリモジュール内の温度を推定する温度推定モデル決定方法によって決定された温度推定モデルを有し、
前記温度推定モデル決定方法は、
温度推定のために選択されたモデル種類によるn個(nは自然数)のパラメータおよび前記n個のパラメータのそれぞれの各パラメータ範囲区間数に基づいてすべてのパラメータセットを計算する段階と、
温度推定に用いられる入力データと、前記バッテリモジュール内の測定温度とを含み、前記温度推定モデルの予備検証に用いられる予備検証プロファイルを取得する段階と
温度推定に用いられる入力データと、前記バッテリモジュール内の測定温度とを含み、前記温度推定モデルの再検証に用いられる再検証プロファイルを取得する段階と
すべての前記パラメータセットのそれぞれに対応するモデルに前記予備検証プロファイルの前記入力データを代入して温度を推定する段階と、
すべての前記パラメータセットのそれぞれに対して、前記予備検証プロファイルの前記温度と、前記推定された温度との差による第1誤差を算出する段階と、
すべての前記パラメータセットに対する第1誤差のそれぞれと、第1臨界値とを比較する段階と、
前記第1誤差のうちの前記第1臨界値より小さい第1誤差に対応するパラメータセットを第1パラメータセットとして抽出する段階と、
前記第1パラメータセットに対応するモデルを用いて前記予備検証プロファイルの時系列的に変わる入力データにより推定された温度と、前記予備検証プロファイルの前記温度との差のうちの最も大きい差である最大誤差を算出する段階と、
前記最大誤差と、第2臨界値とを比較する段階と、
前記第2臨界値より小さい前記最大誤差に対応する加重値を乗じた値と、前記第1パラメータセットに応じた第1誤差に対応する加重値を乗じた値を足した結果に基づいて第2パラメータセットを抽出する段階と、
前記第2パラメータセットに対応するモデルに、前記再検証プロファイルの前記入力データを代入して温度を推定する段階と、
前記再検証プロファイルの前記温度と、前記推定された温度との差による第2誤差を算出する段階と、
前記第2誤差が第3臨界値より小さい場合、前記第2パラメータセットに対応するモデルを前記温度推定モデルに決定する段階と、を含む、
バッテリ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2019年8月29日付韓国特許出願第10-2019-0106742号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本開示は温度推定モデル決定方法および装置、温度推定モデル決定方法によって決定された温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システムに関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリモジュールの充電時間を短縮するためには、バッテリモジュールを構成する複数のバッテリセル間の温度偏差をバッテリ管理システム(Battery Management System)で正確に感知し、感知した温度に基づいてバッテリモジュールに対する充電制御が行われなければならない。
【0004】
しかし、バッテリ生産工程および費用の限界により、バッテリモジュール内には1-2個の温度センサのみが設けられ、バッテリモジュール内で最高温度および最低温度の地点を正確に検出できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施形態によりバッテリの最高温度および最低温度の指定を推定できる温度推定モデル決定方法および装置、温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一特徴によるバッテリモジュール内の温度を推定する温度推定モデルを決定する方法は、温度推定のために選択されたモデル種類によるn個のパラメータおよびn個のパラメータそれぞれの区間数に基づいてすべてのパラメータセットを計算する段階、すべてのパラメータセットそれぞれに基づいたモデルに予備検証プロファイルの入力データを代入して温度を推定する段階、すべてのパラメータセットそれぞれに対して、予備検証プロファイルの測定された温度と推定された温度の間の差による第1誤差を算出する段階、すべてのパラメータセットに対する第1誤差それぞれが第1臨界値より小さいかを比較する段階、比較結果第1誤差のうちの第1臨界値より小さい第1誤差に対応するパラメータセットを第1パラメータセットとして抽出する段階、第1パラメータセットに基づいたモデルを用いて予備検証プロファイルの時系列的に変わる入力データにより推定された温度と予備検証プロファイルの測定された温度の間の誤差のうちの最も大きい誤差である最大誤差を算出する段階、最大誤差が第2臨界値より小さいかを比較する段階、比較結果第2臨界値より小さい最大誤差に対応する加重値を乗じた値と第1誤差のうちの第1パラメータセットに対応する第1誤差に対応する加重値を乗じた値を足した結果に基づいて第2パラメータセットを抽出する段階、第2パラメータセットに再検証プロファイルの入力データにより温度を推定する段階、再検証プロファイルの測定された温度と推定された温度の間の差による第2誤差を算出する段階、および第2誤差が第3臨界値より小さいと、第2パラメータセットに基づいたモデルを温度推定モデルに決定する段階を含み得る。
【0007】
予備検証プロファイルおよび再検証プロファイルは、少なくとも時系列的に変わる温度センサの温度値、バッテリ電流、冷却水温度値、および空気温度値を入力データとして含み得る。
【0008】
推定された温度は、推定されたバッテリモジュールの最高温度または最低温度を含み、測定された温度は、測定されたバッテリモジュールの最高温度または最低温度を含み得る。
【0009】
第1誤差および第2誤差のうちの少なくとも一つは、二乗平均平方根誤差(Root Mean Square Error,RMSE)であり得る。
【0010】
温度推定モデル決定方法は、第1誤差がすべて第1臨界値以上であれば、基準プロファイルを変更する段階をさらに含み、基準プロファイルは、温度推定モデルをビルドアップするための初期値として、温度推定に必要な因子および測定された温度を含み得る。
【0011】
温度推定モデル決定方法は、第1パラメータセットすべての最大誤差が第2臨界値以上であれば、基準プロファイルを変更する段階をさらに含み得る。
【0012】
温度推定モデル決定方法は、第2パラメータセットすべての第2誤差が第3臨界値以上であれば、基準プロファイルを変更する段階をさらに含み得る。
【0013】
第1パラメータセットを抽出する段階は、第1誤差のうちの小さい順に上位i個に属する第1誤差に対応するパラメータセットを第1パラメータセットとして抽出する段階を含み得る。
【0014】
第2パラメータセットを抽出する段階は、足した結果が小さい順に上位j個に属する足した結果に対応するパラメータセットを第2パラメータセットとして抽出する段階を含み得る。
【0015】
本発明の他の特徴によるバッテリ管理システムは、温度推定モデル決定方法によって決定された温度推定モデルを含み得る。
【0016】
本発明のまた他の特徴によるバッテリモジュール内の温度を推定する温度推定モデルを決定する装置は、温度推定のために選択されたモデル種類によるn個のパラメータおよびn個のパラメータそれぞれの区間数に基づいてすべてのパラメータセットを計算するパラメータセット生成部、すべてのパラメータセットそれぞれに基づいたモデルに予備検証プロファイルの入力データを代入して温度を推定するモデリング部、およびすべてのパラメータセットそれぞれに対して、予備検証プロファイルの測定された温度と推定された温度の間の差による第1誤差を算出する誤差計算部を含む。
【0017】
モデリング部は、すべてのパラメータセットに対する第1誤差それぞれが第1臨界値より小さいかを比較し、比較結果第1誤差のうちの第1臨界値より小さい第1誤差に対応するパラメータセットを第1パラメータセットとして抽出する。
【0018】
温度推定モデル決定装置は、第1パラメータセットに基づいたモデルを用いて予備検証プロファイルの時系列的に変わる入力データにより推定された温度と予備検証プロファイルの測定された温度の間の誤差のうちの最も大きい誤差である最大誤差を算出し、最大誤差が第2臨界値より小さいかを比較し、比較結果第2臨界値より小さい最大誤差に対応する加重値を乗じた値と第1誤差のうちの第1パラメータセットに対応する第1誤差に対応する加重値を乗じた値を足した結果に基づいて第2パラメータセットを抽出する最大誤差計算部、および第2パラメータセットに再検証プロファイルの入力データにより温度を推定し、再検証プロファイルの測定された温度と推定された温度の間の差による第2誤差を算出し、第2誤差が第3臨界値より小さいと、第2パラメータセットに基づいたモデルを温度推定モデルに決定する最終モデル決定部をさらに含み得る。
【0019】
予備検証プロファイルおよび再検証プロファイルは、少なくとも時系列的に変わる温度センサの温度値、バッテリ電流、冷却水温度値、および空気温度値を入力データとして含み得る。
【0020】
推定された温度は、推定されたバッテリモジュールの最高温度または最低温度を含み、測定された温度は、測定されたバッテリモジュールの最高温度または最低温度を含み得る。
【0021】
第1誤差および第2誤差のうちの少なくとも一つは、二乗平均平方根誤差(Root Mean Square Error,RMSE)であり得る。
【発明の効果】
【0022】
本開示の実施形態によりバッテリの最高温度および最低温度の指定を推定できる温度推定モデル決定方法および装置、温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態による温度推定モデル決定装置を示す図である。
図2】一実施形態による温度推定モデル決定方法を示すフローチャートである。
図3】一実施形態による最高温度推定モデル決定方法を示すフローチャートである。
図4】一実施形態による最低温度推定モデル決定方法を示すフローチャートである。
図5】一実施形態による温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システムを含むバッテリシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の実施形態はシステム識別(system identification)方法に基づいてサーミスタ(thermistor)測定値、バッテリモジュールに流れる電流、冷却水および外気温度値を用いて実際のバッテリモジュール内の最高温度および最低温度を推定するロジックを導き出して最終的にサーミスタの限界を改善することができる。バッテリモジュール内の最高温度および最低温度推定によりバッテリ管理システムはより精巧な充電制御が可能である。
【0025】
サーミスタ(thermistor)の温度値、バッテリ電流、冷却水温度値、および外気温度値に基づいたバッテリモジュール内の最高/最低温度の間の相関関係を推定する温度推定モデルを決定する方法およびそれを実現した装置に関する。
【0026】
以下、添付する図面を参照して本明細書に開示された実施形態を詳細に説明するが、同一または似の構成要素は同一、類似の図面符号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。以下の説明で使われる構成要素に対する接尾辞の「モジュール」および/または「部」は明細書作成の容易さだけを考慮して付与されたり混用されたりするものであり、それ自体が互いに区別される意味または役割を有するものではない。また、本明細書に開示された実施形態を説明することにおいて関連する公知技術に対する具体的な説明が本明細書に開示された実施形態の要旨を曖昧にすると判断される場合はその詳細な説明を省略する。また、添付する図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解できるようにするためのものであり、本明細書に開示された技術的思想は添付する図面によって制限されるものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0027】
第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために使われるが、構成要素は用語によって限定されない。用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別するための目的にのみ使用される。
【0028】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるか、または「接続されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接連結されているかまたは接続されていてもよいが、中間に他の構成要素が存在し得ると理解されなければならない。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるか、「直接接続されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならない。
【0029】
本出願で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0030】
図1は一実施形態による温度推定モデル決定装置を示す図である。
【0031】
図1に示すように、温度推定モデル決定装置1は、パラメータセット生成部10、モデリング部20、誤差計算部30、最大誤差計算部40、および最終モデル決定部50を含む。
【0032】
図1に示す各構成は最高温度および最低温度推定モデル決定装置の構成を説明するための一例として、少なくとも二つの構成が合わさるか、一つの構成が少なくとも二つの構成に分離されるか、または追加的な構成が付加されるなどの変更が可能であり、図1に示す実施形態が発明を制限しない。
【0033】
図2は一実施形態による温度推定モデル決定方法を示すフローチャートである。
【0034】
図3は一実施形態による最高温度推定モデル決定方法を示すフローチャートである。
【0035】
図4は一実施形態による最低温度推定モデル決定方法を示すフローチャートである。
【0036】
以下、図1から図4を参照して一実施形態による温度推定モデル決定装置および方法について説明する。
【0037】
先に、パラメータセット生成部10は実験データの入力を受け、基準プロファイル、予備検証プロファイル、および再検証プロファイルを選択する(S1)。基準プロファイルは温度推定モデルをビルドアップ(bulid)するために必要な初期値として、温度推定に必要な因子を含む入力データおよび測定された温度である出力データを含み得る。予備検証プロファイルは温度推定に必要なパラメータ個数とパラメータ範囲により決定されるすべてのパラメータセットのうちの温度推定モデルとして適したパラメータセットを決定するために利用されるデータを提供する。再検証プロファイルは温度推定モデルを最終的に検証するためのデータを提供する。
【0038】
基準プロファイル、予備検証プロファイル、および再検証プロファイルそれぞれは時系列的に区分されて羅列された少なくともサーミスタの温度値、バッテリ電流、バッテリモジュールの冷却水温度値、バッテリモジュールの外気温度値、バッテリモジュール内の最高/最低温度に関するデータを含み得る。この時、サーミスタの温度値、バッテリ電流、バッテリモジュールの冷却水温度値、およびバッテリモジュールの外気温度値は温度推定モデルの入力データであり、バッテリモジュール内の最高温度または最低温度は温度推定モデルの出力データであり得る。
【0039】
先に、温度推定モデル決定装置1は最高温度を推定するのか、最低温度を推定するのかを選択し(S2)、最高温度推定の場合、最高温度推定モデルを設定し(S3)、最低温度推定の場合、最低温度推定モデルを設定する(S4)。最高温度推定と最低温度推定それぞれのためのモデル設定は同様の方法により行われるので、以下、図3および図4に示す各段階を共に説明する。
【0040】
パラメータセット生成部10は最高温度または最低温度推定のためのモデルの種類を選択し、選択されたモデル種類によるパラメータ個数および各パラメータの範囲区間数を乗じたn個のすべてのパラメータセットを計算する(S301,S401)。温度推定のためのモデルの種類はARXモデル(Auto Regressive eXternal model)および伝達関数モデル(transfer function model)などがあり得る。
【0041】
パラメータセット生成部10で計算されたすべてのパラメータセットは予備検証プロファイルと共にモデリング部20に伝達され、モデリング部20はすべてのパラメータセットそれぞれに基づいたモデルに予備検証プロファイルの入力データを代入して最高温度または最低温度を推定する(S302,S402)。
【0042】
誤差計算部30は予備検証プロファイルの出力データである最高温度または最低温度とモデリング部20の出力(OUT1~OUTn)である推定された最高温度または最低温度の間の二乗平均平方根誤差(Root Mean Square Error,RMSE)を算出する(S303,S403)。出力(OUT1-OUTn)それぞれは一つのパラメータセットによって定義されたモデルに対して、予備検証プロファイルに含まれた時系列的に区分されて羅列されたサーミスタの温度値、バッテリ電流、バッテリモジュールの冷却水温度値、およびバッテリモジュールの外気温度値それぞれを、入力をした時の推定された最高温度または最低温度を含み、誤差計算部30は予備検証プロファイルで入力データに対応する出力データと推定された最高温度または最低温度の間の差を二乗平均した結果を平方根処理して二乗平均平方根誤差(RMSE)を算出することができる。RMSEは推定結果と実際の測定結果の間の誤差を算出するための一例として、発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
モデリング部20は誤差計算部30からRMSEを受信し、最高温度または最低温度それぞれに対する臨界値TH2よりRMSEが小さいかを比較する(S304,S404)。
【0044】
モデリング部20はRMSEが臨界値TH2より小さいパラメータセットとRMSEを保存し(S305,S405)、すべてのパラメータセットに対する段階S304または段階S404を完了した後、保存されたRMSEのうちの小さい順に上位i個に対応するi個の第1パラメータセットを抽出する(S307,S407)。i個は最大個数として、段階S304または段階S404で臨界値TH2よりRMSEが小さいパラメータセットの個数がi個以下である場合、該当パラメータセットを第1パラメータセットとして抽出する。
【0045】
モデリング部20は段階S304および段階S404を満足するパラメータセットがないと判断すると(S306,S406)、パラメータセット生成部10に失敗信号(FS1)を伝送してこれを知らせ、パラメータセット生成部10は段階S1により基準プロファイルを変更する。この時、基準プロファイルの変更に応じて予備検証プロファイルおよび再検証プロファイルのうちの少なくとも一つが共に変更され得る。第1パラメータセットは予備検証プロファイルと共に最大誤差計算部40に伝送される。
【0046】
最大誤差計算部40はi個の第1パラメータセットそれぞれに基づいたモデルを用いて時系列的に変わる推定最高温度または推定最低温度と予備検証プロファイルでの出力データの測定された最高温度または最低温度の間の最大誤差を算出する(S308,S408)。上で言及したように、予備検証プロファイルは時系列的に区分されて羅列された入力データおよび出力データを含み、最大誤差は時系列的に変わる入力データにより推定された最高温度または最低温度と入力データに対応する出力データすなわち、測定された最高温度または最低温度の間の誤差のうちの最も大きい誤差を意味する。
【0047】
最大誤差計算部40は第1パラメータセットそれぞれの最大誤差と臨界値TH3より小さいかを比較する(S309,S409)。最大誤差計算部40は比較結果最大誤差が臨界値TH3より小さいパラメータセットに対して、誤差計算部30により段階S303またはS403で算出されたRMSEに対応する加重値を乗じた結果と最大誤差に対応する加重値を乗じた結果を足して加重誤差を算出してこれを保存する(S310,S410)。
【0048】
最大誤差計算部40は段階S309および段階S408を満足するパラメータセットがないと判断すると(S311,S411)、パラメータセット生成部10に失敗信号(FS2)を伝送してこれを知らせ、パラメータセット生成部10は段階S1により基準プロファイルを変更する。この時、基準プロファイルの変更に応じて予備検証プロファイルおよび再検証プロファイルのうちの少なくとも一つが共に変更され得る。
【0049】
最大誤差計算部40は段階S310またはS410で保存された加重誤差のうちの小さい順にj個に対応する第2パラメータセットを抽出する(S312,S412)。j個は最大個数として、段階S309または段階S409で臨界値TH3より最大誤差が小さいパラメータセットの個数がj個以下である場合、該当パラメータセットを第2パラメータセットとして抽出する。第2パラメータセットは再検証プロファイルと共に最終モデル決定部50に伝送される。
【0050】
最終モデル決定部50は再検証プロファイルの入力データにより最高温度または最低温度を推定し、再検証プロファイルの出力データである測定された最高温度または最低温度と推定最高温度または推定最低温度の間のRMSEを算出する(S5)。
【0051】
最終モデル決定部50はRMSEが臨界値TH1より小さいかを比較する(S6)。
【0052】
段階S6で比較結果、RMSEが臨界値TH1より小さい時、最終モデル決定部50は該当パラメータセットに基づいたモデルを最終モデル(FOUT)に決定し得る。もし、j個の第2パラメータセットの少なくとも二つの第2パラメータセットに対するRMSEが臨界値TH1より小さい時、最も小さいRMSEに対応する第2パラメータセットを選択し得る。
【0053】
最終モデル(FOUT)は最高温度に対する最高温度推定モデルおよび最低温度については最低温度推定モデルに区分され、バッテリ管理システム(Battery Management System)に挿入され得る(S7)。
【0054】
図5は一実施形態による温度推定モデルが適用されたバッテリ管理システムを含むバッテリシステムを示す図である。
【0055】
図5に示すように、バッテリシステム2は、バッテリ管理システム(Battery Management System,BMS,100)、バッテリモジュール200、少なくとも二つの温度センサ300,500、電流センサ400、および冷却部600を含む。
【0056】
BMS100は先立って図1から図4で説明した実施形態によって決定された温度推定モデル110を含む。温度推定モデル110はバッテリモジュール200の最高温度および最低温度のうちの少なくとも一つを推定し得る。
【0057】
バッテリモジュール200は複数のバッテリセルが直列/並列連結されて必要な電源を供給し得る。図5では、バッテリモジュール200が直列連結されている複数のバッテリセル(C1-Cn)を含み、バッテリシステム2の二つの出力端(+、-)の間に連結されていることを示しているが、図5に示す構成および構成間の連結関係は一例であり、発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
温度センサ300はバッテリモジュール200の温度を測定し、測定された温度を指示する情報をBMS100に伝送する。温度センサ300はサーミスタとして具現され得、サーミスタによって測定された値が測定された温度を指示する情報であり得る。図5ではバッテリモジュール200に付着した一つの温度センサ300が示されているが、発明はこれに限定されず、二つ以上の温度センサがバッテリモジュール200に付着してもよい。
【0059】
電流センサ400はバッテリモジュール200の正極と出力端(+)の間に直列連結され、バッテリモジュール200に流れる電流を測定し、測定された電流を指示する情報をBMS100に伝送する。
【0060】
温度センサ500は外気温度を測定し、測定された外気温度を指示する情報をBMS100に伝送する。
【0061】
冷却部600はバッテリモジュール200の少なくとも一面に接触して位置し、バッテリモジュール200の温度を低くし得る。冷却部600の内部には冷却水があり、冷却部600は冷却水の温度を測定し、測定された冷却水温度を指示する情報をBMS100に伝送する。
【0062】
BMS100に伝送されたサーミスタ測定値、バッテリに流れる電流、外気温度値、および冷却水温度値は温度推定モデル110に入力され、温度推定モデル110はバッテリモジュール200の最高温度および最低温度のうちの少なくとも一つを推定し得る。
【0063】
上記実施形態により、バッテリモジュール内の最高温度および最低温度を正確に推定することができ、サーミスタの測定値にのみ依存してバッテリモジュールの温度を測定する従来技術の問題を克服することができる。
【0064】
また、バッテリモジュール内の最高温度および最低温度を正確に推定することができ、バッテリモジュールの出力制御をより精巧に遂行できるバッテリ管理システムが提供される。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲がこれに限定されるのではなく、本発明の属する分野における通常の知識を持った者が様々に変形および改良した形態も本発明の権利範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5