(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】眼底撮影装置および眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A61B3/10 300
(21)【出願番号】P 2017069318
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2020-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】松延 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 譲治
(72)【発明者】
【氏名】羽根渕 昌明
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033423(JP,A)
【文献】特表2015-534482(JP,A)
【文献】特表2009-543585(JP,A)
【文献】特開平11-160650(JP,A)
【文献】特表2010-512877(JP,A)
【文献】特開2008-286888(JP,A)
【文献】特開2006-313365(JP,A)
【文献】特開2016-195724(JP,A)
【文献】特開2016-104105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/12
3/13- 3/16
G02B 17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全角100°以上の範囲で眼底を走査して当該走査範囲内の画像を得る眼底撮影装置であって、
物体側にテレセントリックな眼底撮影光学系であって、第1光源からの光を被検眼の眼底上で走査する第1光スキャナを有し、前記第1光源からの光による前記眼底の正面画像を得るための眼底撮影光学系と、
物体側にテレセントリックなOCT光学系であって、第2光源からの光を被検眼の眼底上で2次元的に走査する第2光スキャナであって、前記第1光スキャナとは独立な第2光スキャナを有し、光干渉の原理を用いて前記眼底の断層画像を得るためのOCT光学系と、
前記眼底撮影光学系と前記OCT光学系のそれぞれがテレセントリックとなっている箇所に配置されており、前記眼底撮影光学系と前記OCT光学系との光路を結合する光路結合部材と、
前記光路結合部材と前記被検眼との間に配置され、互いに独立な前記第1光スキャナおよび前記第2光スキャナのそれぞれからの光を前記眼底に導くための対物光学系と、を有し、前記正面画像および前記断層画像を形成する眼底撮影装置であって、
前記対物光学系は、
放物面鏡あるいはそれをベースとした自由曲面鏡又は奇数次非球面鏡である第1ミラーであって、前記第1光スキャナおよび前記第2光スキャナのそれぞれからの前記光
による平行な光線が凸面に入射して反射することによって、前記第1光スキャナおよび前記第2光スキャナの動作に伴って前記光が旋回される第1旋回点を
焦点に形成する第1ミラーと、
回転楕円鏡あるいはそれをベースとした、2つの焦点を持つ自由曲面鏡又は奇数次非球面鏡である第2ミラーであって、前記第1ミラーによって反射された前記光を更に反射することによって、前記被検眼に出射される前記光が旋回される第2旋回点を形成する第2ミラーと、を含み、
前記第1旋回点が前記第2ミラーの一方の焦点に一致し、被検眼の前眼部に前記第2ミラーの他方の焦点が被検眼の前眼部に配置されており、前記第2旋回点における前記光の振り角に対し、前記第1ミラーに入射される光の振り角が小さい、眼底撮影装置。
【請求項2】
前記光スキャナと前記第1ミラーとの間に配置され、前記対物光学系における偏心収差を補正する第3ミラーを、更に備える請求項
1記載の眼底撮影装置。
【請求項3】
前記第1ミラーは、前記第2ミラーによって生じる非対称な像面歪曲を補正する請求項1
又は2記載の眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底撮影装置および眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、眼底撮影装置として、被検眼の眼底に対し、光スキャナを用いて光を走査することによって、眼底の画像を得る装置が知られている。例えば、走査型レーザー検眼鏡(SLO:Scanning laser ophthalmoscope)は、眼底上での走査の結果として、眼底の正面画像を得る。
【0003】
このような眼底撮影装置においては、眼底の広範囲を撮影することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、走査によって眼底の広範囲を撮影する装置の光学系には、改善の余地がある。例えば、走査位置毎の収差の違いが画像に影響を与えやすい。また、特許文献1のように、走査範囲を広角化するための対物光学系が、レンズ系で構成されていると、レンズの面からの反射が、画像に影響してしまう場合が考えられる。
【0006】
本開示は、従来技術の問題点の少なくとも一つに鑑み、眼底の広範囲を良好に撮影等できる新たな光学系を備える眼底撮影装置および眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る眼底撮影装置は、全角100°以上の範囲で眼底を走査して当該走査範囲内の画像を得る眼底撮影装置であって、物体側にテレセントリックな眼底撮影光学系であって、第1光源からの光を被検眼の眼底上で走査する第1光スキャナを有し、前記第1光源からの光による前記眼底の正面画像を得るための眼底撮影光学系と、物体側にテレセントリックなOCT光学系であって、第2光源からの光を被検眼の眼底上で2次元的に走査する第2光スキャナであって、前記第1光スキャナとは独立な第2光スキャナを有し、光干渉の原理を用いて前記眼底の断層画像を得るためのOCT光学系と、前記眼底撮影光学系と前記OCT光学系のそれぞれがテレセントリックとなっている箇所に配置されており、前記眼底撮影光学系と前記OCT光学系との光路を結合する光路結合部材と、
前記光路結合部材と前記被検眼との間に配置され、互いに独立な前記第1光スキャナおよび前記第2光スキャナのそれぞれからの光を前記眼底に導くための対物光学系と、を有し、前記正面画像および前記断層画像を形成する眼底撮影装置であって、前記対物光学系は、放物面鏡あるいはそれをベースとした自由曲面鏡又は奇数次非球面鏡である第1ミラーであって、前記第1光スキャナおよび前記第2光スキャナのそれぞれからの前記光による平行な光線が凸面に入射して反射することによって、前記第1光スキャナおよび前記第2光スキャナの動作に伴って前記光が旋回される第1旋回点を焦点に形成する第1ミラーと、回転楕円鏡あるいはそれをベースとした、2つの焦点を持つ自由曲面鏡又は奇数次非球面鏡である第2ミラーであって、前記第1ミラーによって反射された前記光を更に反射することによって、前記被検眼に出射される前記光が旋回される第2旋回点を形成する第2ミラーと、を含み、前記第1旋回点が前記第2ミラーの一方の焦点に一致し、被検眼の前眼部に前記第2ミラーの他方の焦点が被検眼の前眼部に配置されており、前記第2旋回点における前記光の振り角に対し、前記第1ミラーに入射される光の振り角が小さい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、眼底の広範囲を良好に撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の眼底撮影装置における光学系の概略構成を示す図である。
【
図2】第1実施例に係る対物光学系を示した図である。
【
図4】第1実施例に係る眼底撮影装置の電気的構成を示したブロック図である。
【
図5】第2実施例に係る対物光学系を示した図である。
【
図6】第3実施例に係る対物光学系を示した図である。
【
図8】第4実施例における自由曲面鏡の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示における典型的な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
まず、
図1および
図2を参照して、本開示に係る眼底撮影装置(以下、「撮影装置」と省 略する)の概要を説明する。撮影装置100は、被検眼Eの眼底上で光を走査することによって、眼底の画像を得る。眼底の画像は、正面画像であってもよいし、断層画像であってもよい。本開示の撮影装置100では、眼底における光の走査範囲が広範囲であってもよい。例えば、全角100°以上の範囲で光が走査され、その走査範囲内の画像が得られてもよい。
【0015】
図1に示すように、撮影装置100は、走査光学系1と、対物光学系2と、を有する。また、撮影装置100は、受光光学系10a,20aを有する。走査光学系1は、光源からの光を眼底Er上で走査するために、光の進行方向を変える光スキャナ15,27を有する。また、対物光学系2は、走査光学系1(より詳細には、光スキャナ15,27)と被検眼Eとの間に配置される。対物光学系2は、光スキャナ15,27からの光を眼底Erに導くために利用される。対物光学系2によって眼底Erに導かれた光は、眼底Erで反射・散乱されることによって、瞳孔から出射される。瞳孔から出射された光は、受光光学系10a,20aが有する検出器18,31によって受光される。その結果として、検出器18,31から出力される受光信号に基づいて、眼底の画像が形成される。なお、検出器18,31は、例えば、走査光学系1に設けられていてもよい。
【0016】
走査光学系1は、SLO光学系10、OCT光学系20と、の1つを有してもよい。また、
図1に示すように、両方を有してもよい。SLO光学系10は、光スキャナ15を有し、眼底Erの正面画像を得るために利用される。SLO光学系10は、ライン状の光束を、光スキャナ15で少なくとも1方向に走査することによって眼底Erを走査するラインスキャンSLO光学系であってもよいし、点状の光束を、光スキャナ15で二次元的に走査するポイントスキャンSLO光学系であってもよい。また、OCT光学系20は、光スキャナ27を有し、光スキャナ27を用いて測定光を眼底Er上で走査することによって、眼底Erの断層画像を光干渉の技術を用いて非侵襲で得る。本実施形態において、光スキャナ15,27は、対物光学系2に関して被検眼Eの前眼部(より好ましくは、瞳孔)と共役な位置関係である。なお、本開示において、「共役」は、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではない。本開示において、「共役」な関係は、完全な共役関係のほか、許容される精度の範囲で完全な共役関係からずれた位置関係であってもよい。
【0017】
SLO光学系10またはOCT光学系20のいずれかが、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを持ち、2つの光スキャナによって光を二次元的に走査する場合において、2つの光スキャナのうち少なくとも1つが、瞳共役位置に配置されていてもよい。一方の光スキャナが、瞳孔と共役な位置に配置されてもよい。また、瞳共役位置が、リレー光学系によってリレーされ、2つ以上の位置に形成される場合、互いに異なる2つの瞳共役位置に、各1つの光スキャナが配置されてもよい。
【0018】
図1に示すように、走査光学系1にSLO光学系10と、OCT光学系20との両方を含む構成においては、走査光学系1は、SLO光学系10の光路と、OCT光学系20の光路とを結合する光路結合部材40を有してもよい。SLO光学系10の光源11から出射される光の波長と、OCT光学系20の光源21から出射される光の波長とが、互いに異なり、かつ、光路結合部材40としては、波長選択的に光路を結合するダイクロイックミラーが用いられることが、好ましい。但し必ずしもこれに限られるものではなく、ハーフミラー等の他の光路結合部材であってもよい。
図1において、光路結合部材40は、SLO光学系10とOCT光学系20との光路を、それぞれの光学系が持つ光スキャナと、対物光学系2との間において結合する。このように、本実施形態では、SLO光学系10とOCT光学系20とに個別に光スキャナが設けられている。その結果、例えば、正面画像の取得と並行して、任意の位置の断層画像を得ることが容易となる。
なお、受光光学系10aは、SLO光学系10から照射される光の眼底反射光が、検出器18によって受光される。また、受光光学系20aは、OCT光学系20によって照射される光(測定光)の眼底反射光が、参照光と合成されたうえで、検出器31に受光される。
【0019】
対物光学系2は、被検眼Eの前眼部(例えば、瞳孔領域)に、光スキャナ15,27の動作に伴って、光スキャナ15,27を介した光が旋回される旋回点(本実施形態における第2旋回点)を形成する。
図2に示すように、対物光学系2は、レンズ要素を含まないミラー系であってもよい。この場合、眼底の画像に対する、対物光学系2によるノイズ(例えば、正面画像におけるフレア)等の影響を抑制できる。
【0020】
対物光学系2は、少なくとも、第1ミラー50と、第2ミラー60と、を含む。
図2に示すように、本実施形態における対物光学系2は、第1ミラー50および第2ミラー60の他にもミラー等の光学部材を有していてもよい。
【0021】
本実施形態において、第1ミラー50は、走査光学系1と第2ミラー60との間に配置される。第1ミラー50は、光スキャナ15,27からの光が入射され、入射された光を第2ミラー60に中継する。
【0022】
本実施形態において、第1ミラー50は、光スキャナ15,27からの光を反射することによって、光スキャナ15,27の動作に伴って光(詳細には、第1ミラーによる反射光)が旋回される第1旋回点(
図2において符号r1で示す)を形成する。
【0023】
本実施形態において、第1ミラー50は、焦点を有するミラーであり、プラス又はマイナスのパワーを持っている。第1ミラー50は、第1旋回点を、第1ミラー50の焦点に形成する。
【0024】
このような第1ミラー50は、鏡面が2次曲面で形成される非球面鏡であってもよい。特に断りが無い限り、以下の説明において、「非球面鏡」は、曲線を対称軸周りに回転させた軌跡からなる曲面によって鏡面が形成されたミラーを指す。2次曲面は、2次曲線(円錐曲線ともいう)を対称軸周りに回転させた軌跡からなる。2次曲面からなる第1ミラー50としては、例えば、非球面鏡は、例えば、放物面鏡、双面鏡、楕円面鏡の少なくとも何れかであってもよい。但し、第1ミラー50における鏡面の形状は、これに限定されるものではない。例えば、第1ミラー50は、球面ミラーであってもよい。また、第1ミラー50は、鏡面が奇数次非球面で形成された奇数次非球面鏡であってもよい。この場合、第1ミラー50の鏡面形状を表す関数は、奇数次の非球面係数を持つ。また、第1ミラー50は、鏡面が自由曲面で形成された自由曲面鏡であってもよい。
【0025】
なお、本開示において、自由曲面鏡は、xy多項式面であってもよい。また、本開示において、いわゆる非対称非球面鏡については、自由曲面鏡の一種とする。また、本実施形態における第1ミラー50は、1枚のミラーであるが、複数枚のミラーの組合せで置き換えられてもよい。
【0026】
第2ミラー60は、正のパワーを持つ。第2ミラー60は、第1ミラー50によって反射された光を更に反射することによって、対物光学系2から被検眼Eに出射される光が旋回される第2旋回点を形成する。
【0027】
本実施形態において、第2ミラー60は、2つの焦点r1,r2を有する被検眼Eは、このうち一方の焦点r2に配置される。より詳細には、前眼部(例えば、瞳孔位置)が、焦点r2に位置するように配置される。また、第2ミラー60の他方の焦点r1に、第1ミラー50によって形成される第1旋回点が一致するようにして、第1ミラー50と第2ミラー60とが配置されている。本実施形態では、その結果として、焦点r2に、対物光学系2から眼底Erに向かう光が旋回される第2旋回点r2が形成される。
【0028】
図2に示す第2ミラー60は、回転楕円鏡(楕円面鏡)である。回転楕円鏡は、
図3に示すようなトロイダル楕円鏡であってもよい。即ち、y方向に長径2a、z方向に短径2bとした扁平楕円を、長径を回転軸として回転させることにより形成される楕円面によって、鏡面が形成されてもよい。この場合、焦点r1を経由して回転楕円鏡の鏡面で反射される光が、焦点r2を必ず通過する。これにより、焦点r2に配置される被検眼Eへ照射される光が、瞳孔においてケラレにくくなる。また、回転楕円鏡の場合は、上記のような焦点r2が、反射側に形成されるので、視軸に対して急角度で、光を入射させることが容易である。結果、広画角での眼底撮影が可能となる。
【0029】
なお、第2ミラー60として、回転楕円鏡以外の曲面鏡が適用されてもよい。曲面鏡は、例えば、回転楕円鏡と同様、二次曲面の鏡面を持つ非球面鏡であってもよい(具体例としては、放物面鏡、一対の双面鏡、等)。また、これ以外の形状を持つ非球面鏡であってもよい。例えば、第2ミラー60は、鏡面が奇数次非球面で形成された奇数次非球面鏡であってもよい。また、第2ミラー60は、鏡面が自由曲面で形成された自由曲面鏡であってもよい。このとき、奇数次非球面または自由曲面は、回転楕円鏡(トロイダル楕円鏡)をベース面としていてもよい。ベース面の詳細説明については、後述する。
【0030】
また、本実施形態における第2ミラー60は、1枚のミラーであるが、複数枚のミラーの組合せで置き換えられてもよい。第2ミラー60の形状、大きさは、撮影する画角に応じて適宜設定される。例えば、本実施形態では、全角120°程度の撮影が可能な形状および大きさで形成されてもよい。
【0031】
このようなミラー構成により、本実施形態の対物光学系2は、第2旋回点r2における振り角に対し、光スキャナ15,22を経て第1ミラー50に入射される光の振り角を小さくする。このとき、第1ミラー50のパワーが、第2ミラー60に対して大きくてもよい。
【0032】
ここで、本実施形態では、第1ミラー50と、第2ミラー60との一方または両方によって、撮影範囲が所期する画角となるように広角化される。
図2の例のように、少なくとも第1ミラー50が、第1旋回点r1から第2ミラー60へ向かう光の振り角を、光スキャナ15,22を経て第1ミラー50に入射される光の振り角(より好ましくは、対物光学系2へ入射するときの光の振り角)に対して増大させ、これにより画角が広角化されてもよい。このような第2ミラー60の形状および配置は、例えば、光線追跡法によるシミュレーション等によって求めることができる。
【0033】
第1ミラー50と第2ミラー60は、共に偏心した反射面を持つ(換言すれば、対物光学系2は、偏心反射光学系である)ので、回転対称な収差の他に、偏心収差が発生する。自由曲面や奇数次非球面を用いると、一般の球面や非球面では補正できなかった偏心収差の補正が可能となる。
【0034】
そこで、例えば、第1ミラー50、および、第2ミラー60とは別に、奇数次非球面鏡または自由曲面鏡である第3ミラーが、撮影装置100(つまり、走査光学系1、または、対物光学系2)に設けられていてもよい。第3ミラーは、例えば、第1ミラー50と光スキャナ15,27との間に、配置されてもよい。第3ミラーは、対物光学系2が偏心光学系であることによって生じる偏心収差を補正する。
【0035】
この場合、奇数次非球面鏡、又は、自由曲面鏡は、二次曲面を鏡面のベース面とすることが好ましい。つまり、奇数次非球面鏡、または、自由曲面鏡は、ベース面とした二次曲面による非球面鏡の少なくとも一方の焦点位置と旋回点が略一致する(詳細は後述する)。このとき、前眼部と光スキャナ15,22との共役関係と、偏心収差の軽減効果とを満足する範囲において、両者における上記各点がズレている場合については、両者の各点が略一致するものとして許容される。
【0036】
但し、第3ミラーは、必ずしも自由曲面または奇数次非球面が適用される必要はなく、二次曲面であっても、一定の収差軽減効果を享受できる。つまり、対物光学系2が偏心光学系であることによって生じる偏心収差を補正する二次曲面鏡を、第3ミラーとして有していてもよい。例えば、
図7では、第1ミラー50と光スキャナとの間に、双曲面鏡211,221が、第3ミラーとして配置されている。
【0037】
また、第1ミラー50、および、第2ミラー60のうち少なくとも一方を、奇数次非球面鏡、又は、自由曲面鏡によって形成してもよい。これにより、対物光学系2で発生する偏心収差が軽減されてもよい。
【0038】
第1ミラー50および第2ミラー60の一方、または、第1ミラー50、第2ミラー60、および第3ミラー、のいずれかに対して奇数次非球面鏡または自由曲面鏡が適用される場合、少なくとも最もパワーの弱いミラーが、奇数次非球面鏡または自由曲面鏡であってもよい。これにより、奇数次非球面鏡または自由曲面鏡において、偏心収差を抑制するための形状自由度を確保しやすくなる。特に、第3ミラーを設ける場合には、第3ミラーが、第1ミラー50,第2ミラー60に比べてパワーが弱く、奇数次非球面鏡または自由曲面鏡として形成されることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態において、いずれかのミラーに奇数次非球面鏡、または、自由曲面鏡が適用される場合、そのベース面は、必ずしも二次曲面(非球面)である必要はなく、球面または平面がベース面であってもよい。
【0040】
ところで、仮に、第1ミラー50が無く、第2ミラー60の一方の焦点r1に、SLO光学系10とOCT光学系20とのうち一方の光スキャナ15,27が配置され、その光スキャナから、第2ミラー60へ直接光を導く構成であったとした場合、次のような問題が生じる。すなわち、光スキャナと第2ミラー60との間のスペースを十分確保することは難しい。また、眼底上の広範囲において光を走査するためには、光スキャナの振り角を大きくする必要があり、この場合、光スキャナと第2ミラー60との間のスペースに対し、光路結合部材40を適正に配置することがいっそう難しくなる。また、光路結合部材40には、入射角依存性を持つものがある。例えば、光路結合部材40の一例であるダイクロイックミラーは、設計値からの誤差が大きい入射角で入射される光に対しては、適正に透過又は反射することができない場合がある。このため、仮に、第2ミラー60と、焦点r1の位置に配置される光スキャナとの間に、ダイクロイックミラーのような光路結合部材を配置できたとしても、この場合は、眼底画像の一部の画角(広角側)において画質が悪くなる。このため、SLO光学系とOCT光学系の一方または両方において、眼底の広範囲を撮影することが実質的に難しくなってしまう。
【0041】
これに対し、本実施形態では、各光スキャナ15,27から第2ミラー60までの間に、第1ミラー50が挟まれている。そして、第1ミラー50が設けられた結果として、対物光学系2は、走査光学系1から対物光学系2へ入射するときの光の振り角に対して大きな振り角で、第1旋回点r1において光を旋回する。換言すれば、第1旋回点r1における振り角に対し、光スキャナ15,22を経て第1ミラー50に入射される光の振り角を小さくできる。換言すれば、第2ミラー50よりも光源側の位置において、第2ミラー50へ入射する光の振り角よりも、光の振り角が小さな領域を形成できる。結果、第2ミラー50へ入射する光の振り角よりも、光の振り角が小さな領域に、光路結合部材40を配置するスペースを容易に確保できる。また、光結合部材40がこの領域に配置されることで、光路結合部材40の入射角依存性の問題を軽減できる。例えば、
図1に示すように、SLO光学系10の光スキャナ15と第1ミラー50との間であり、且つ、OCT光学系20の光スキャナ27と第1ミラー50との間に光路結合部材40を配置することで、SLO光学系10の光路とOCT光学系20の光路とを、良好に結合できる。その結果として、正面画像と、断層画像とのそれぞれを、良好に取得することが可能となる。
【0042】
なお、SLO光学系10と、OCT光学系20とのそれぞれは、
図1に示すように、物体側テレセントリックであってもよい。この場合、光路結合部材40への入射角度が、走査位置によらず一定であるので、光路結合による光量損失を良好に抑制でき、良好な眼底の画像を得ることができる。
【0043】
また、
図2に示すように、第2ミラー60として、回転楕円鏡が用いられる場合は、第2ミラー60によって、非対称な像面歪曲(例えば、台形歪み)が生じてしまう。なお、第2ミラー60に、回転楕円鏡以外の形状が採用される場合にも、このような像面歪曲が生じる場合があると考えられる。
【0044】
第2ミラー60によって生じる像面歪曲は、第1ミラー50によって補正されてもよい。例えば、第1ミラー50が第2ミラー60に対して傾斜して配置されることによって、上記の像面歪曲が補正されてもよい。ここでいう傾斜とは、例えば、第1ミラー50と、第2ミラー60との間における光路の中心を通過する光線(主に、被検眼Eの眼軸を通過する光線)に対し、第1ミラー50が、その軸(例えば、非球面鏡の鏡面を形成する2次曲線における対称軸)を傾斜させて配置されることをいう。傾斜量は、少なくとも像面歪曲の非対称成分が打ち消される程度であることが望ましい。つまり、残存する像面歪曲が軸対称となるような傾斜量が、採用されてもよい。
【0045】
また、
図2の例では、第2ミラー60に回転楕円鏡を用いる結果として、眼底反射光による中間像Ic2等の中間像の像面が、光学系の光軸に対して斜めに傾いてしまうことが考えられる。なお、第2ミラー60に、回転楕円鏡以外の形状が採用される場合にも、このような像面の傾きが生じる場合があると考えられる。
【0046】
これに対し、本実施形態の撮影装置100には、眼底反射光が第1ミラー50と第2ミラー60とによって反射されることによって生じる像面の傾きを補正する光学部材が設けられていてもよい。
【0047】
例えば、像面の傾きを補正する光学部材は、光源11,21からの光が、被検眼Eに導かれるまでの投光光路と,眼底反射光が、検出器18,31に導かれるまでの受光光路と、の共通光路に配置されていてもよい。また、投光光路および受光光路のそれぞれにおける独立光路に、それぞれ配置されてもよい。
【0048】
共通光路に配置される場合の具体例として、眼底反射光における像面の傾きを補正する補正ミラー系71,72,300が、光学部材として、第1ミラー50と光スキャナ15,27との間に設けられていてもよい。補正ミラー系71,72,300は、第1ミラー50および第2ミラー60による(つまり、対物光学系2によって生じる)像面の傾きを相殺(軽減)するように、像面を更に傾ける。結果、
図2,
図9に示すように、補正ミラー系71,72,300を経て形成される眼底反射光の中間像(例えば、
図2の中間像Ic1)において、像面の傾きが軽減される。
【0049】
上記の像面の傾きを補正する補正ミラー系の少なくとも一部のミラーは、奇数次非球面鏡であってもよいし、自由曲面鏡であってもよい。一例として、
図8に、補正ミラー系のそれぞれのミラーに対して自由曲面鏡を適用した光学系を示す(詳細は後述する)。
【0050】
別の具体例として、共通光路中に、光軸に対して傾けられたレンズが配置されることによって、像面の傾きが補正されてもよい。例えば、
図1の例では、スキャンレンズ16,29が傾斜配置されてもよい。
【0051】
また、光学部材が、投光光路および受光光路のそれぞれの独立光路に配置される場合において、少なくともSLO光学系10の検出器18が、光学部材の1つとして利用されてもよい。例えば、SLO光学系10がラインスキャンSLO光学系である場合は、検出器18としてラインセンサ又はエリアセンサが用いられる。この場合は、検出器18を受光光学系10aの光軸に対して傾けることによって、像面の傾きを補正できる。検出器18の傾斜量は、眼底Erおよび対物光学系2と、シャインプルーフの関係となるように調整されることが望ましい。また、併せて、SLO光学系10における投光光学系10aの独立光路に、光軸に対して傾斜配置されるレンズ等の光学部材を有してもよい。
【0052】
なお、SLO光学系10が、ポイントスキャンSLO光学系である場合には、検出器から被検眼Eまでの受光光路上に、検出器とは別体に光学部材(例えば、傾斜配置されたレンズ、補正ミラー系等)が設けられることが望ましい。これにより、像面の傾きを抑制することで、光スキャナ15による走査位置の変化に応じて眼底Erの共焦点位置が動いてしまうことが抑制される。結果、光学部材と検出器18との間に、静止した眼底共役点を形成できる。このため、有害光を除去するためのアパーチャを、静止した共焦点位置に配置することができ、良好な正面画像を得ることができる。
【0053】
<実施例>
図1を参照して、第1実施例における撮影装置100を説明する。第1実施例における撮影装置100は、
図1に示す走査光学系1と、
図2に示す対物光学系2と、を有する。走査光学系1は、SLO光学系10と、OCT光学系20と、ダイクロイックミラー40(第1実施例における光路結合部材)と、を含む。
【0054】
<SLO光学系>
まず、SLO光学系10について説明する。SLO光学系10は、主に、光源から発せられた光(照明光)を眼底上で二次元的に走査する光スキャナ15と、検出器18を含み,眼底Erの共焦点を通過する(照明光の)眼底反射光を検出器に受光させる受光光学系10aと、を持つ。また、第1実施例において、SLO光学系10は、ラインスキャンタイプであり、検出器18にはラインセンサが利用される。この場合、SLO光学系10は、光スキャナ15と検出器18と、の他に、光源11と、コリメートレンズ12と、円柱レンズ13と、穴開きミラー14と、スキャンレンズ16と、集光レンズ17と、を有してもよい。このうち、光スキャナ15と、スキャンレンズ16と、集光レンズ17と、ラインセンサ(検出器)18とは、第1実施例におけるSLO光学系10の受光光学系10aを構成する。
【0055】
第1実施例において、光源11は、例えば、赤外域の波長の光(例えば、レーザー光)を発する。光源11としては、例えば、LED光源、およびSLD光源、等が用いられてもよい。光源11からの光は、コリメートレンズ12でコリメートされた後、円柱レンズ13によって集光される。その後、穴開きミラー14の開口を通過して光スキャナ15に導かれる。なお、光源11から出射される光は、必ずしも赤外光に限られるものではない。例えば、白色光であってもよいし、2色以上の光(例えば、赤、青、緑)などの光が合成された、合成光であってもよい。
【0056】
第1実施例において、光スキャナ15には、ガルバノミラーが用いられてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、反射ミラーを動作させる他の光スキャナ(例えば、レゾナントミラー,ポリゴンミラー等)、および、音響光学素子等のいずれかに置き換えられてもよい。光スキャナ15は、被検眼Eの瞳孔と共役な位置に配置される。
【0057】
光スキャナ15を経た光は、スキャンレンズ16によって、走査光学系1の光軸L1に対して、平行な光線(つまり、テレセントリックな光線)にされる。つまり、第1実施例において、スキャンレンズ16は、その焦点が光スキャナ15(光スキャナ15の旋回点r3)と一致するようにして配置されている。これにより、第1実施例におけるSLO光学系10は、物体側テレセントリックとなる。スキャンレンズ16を通過した光は、ダイクロイックミラー40を更に通過して、対物光学系2へ入射される。なお、第1実施例においてダイクロイックミラー40は、SLO光学系10からの光を透過し、OCT光学系20からの光を反射する分光特性を持つ。なお、物体側テレセントリックは、光源11,22側から見て、被検眼E側にテレセントリックな状態を意味する。
【0058】
SLO光学系10からの光は、対物光学系2によって眼底Erに導かれることによって、眼底Erで散乱・反射される。その結果として、眼底反射光として、瞳孔から出射され、投光時と逆の光路を辿る。そして、眼底反射光は、対物光学系2から走査光学系1へ向けて出射されることによって、ダイクロイックミラー40を通過して、SLO光学系10の受光光学系10aへ入射する。受光光学系10aにおいて、眼底反射光は、スキャンレンズ16を通過し、光スキャナ15で反射されて、穴開きミラー14へ向かう。その後、穴開きミラー14で反射された眼底反射光が、集光レンズ17で集光されて、検出器18に受光される。本実施形態では、光スキャナ15による1フレーム分の光走査に基づいて検出器18から出力される信号に基づいて、眼底の正面画像が形成される。
【0059】
<OCT光学系>
次に、OCT光学系20について説明する。OCT光学系20は、例えば、光源21と、光分割部(
図1の例では、カップラ)23と、光スキャナ27と、検出器31と、を有してもよい。OCT光学系20は、更に、スキャンレンズ29と、参照光学系25と、を有してもよい。
【0060】
このようなOCT光学系20としては、SS-OCT(Swept Source-OCT)方式、SD-OCT(Spectral domain-OCT)方式等のフーリエドメイン方式が用いられてもよい。
ここでは、一例として、SS-OCT(Swept Source-OCT)方式が用いられるものとして説明する。
【0061】
光源21は、出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)である。光源21は、出射光の波長を変化させる。検出器31は、例えば、受光素子からなる平衡検出器であってもよい。
【0062】
OCT光学系20は、光源21から出射された光をカップラ(スプリッタ)23によって測定光と参照光に分割する。
【0063】
OCT光学系20は、測定光を、光スキャナ27を介して、対物光学系2へ導く。また、参照光を参照光学系25に導く。光スキャナ27は、眼底Er上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させる。光スキャナ27は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が図示無き駆動機構によって任意に調整されてもよい。また、ガルバノミラーに代えて、反射ミラーを動作させる他の光スキャナ(例えば、レゾナントミラー,ポリゴンミラー、MEMSミラー等)、および、音響光学素子等が用いられてもよい。
【0064】
光スキャナ27を経た光は、スキャンレンズ29によって、走査光学系1の光軸に対して、平行な光線(つまり、テレセントリックな光線)にされる。つまり、第1実施例において、スキャンレンズ29は、その焦点が光スキャナ27(例えば、X走査用の光スキャナとY走査用の光スキャナとの中間点r4)と一致するようにして配置されている。これにより、本実施形態におけるOCT光学系20は、物体側テレセントリックとなる。スキャンレンズ29を通過した光は、ダイクロイックミラー40によって反射されることにより、対物光学系2へ入射される。
【0065】
SLO光学系10からの光と同様、OCT光学系20からの光は、対物光学系2によって眼底Erに導かれることによって、眼底で散乱・反射される。その結果として、測定光の眼底反射光が、対物光学系2を投光時とは逆に辿って、走査光学系1へ向けて出射される。その結果、測定光の眼底反射光は、ダイクロイックミラー40で反射されて、OCT光学系20の検出光学系20a(OCT光学系20の受光光学系)へ入射する。即ち、眼底反射光は、スキャンレンズ29を通過し、光スキャナ27を経て、カップラ(スプリッタ)23へ入射される。その後、測定光の反射光は、光結合部(カップラ)23によって参照光と合波されて干渉する。
【0066】
参照光学系25は、眼底Erでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系25は、例えば、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。
図1において、参照光学系25は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラ23からの光を反射光学系により反射することにより、参照光を検出器31へ導く。他の例としては、参照光学系25は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラ23からの光を戻さず透過させることにより検出光学系31へと導いてもよい。
【0067】
撮影装置100は、測定光と参照光との光路長差を調整するためにOCT光学系20に配置された光学部材の少なくとも一部を光軸方向に移動させる。例えば、参照光学系25は、参照光路中の光学部材(例えば、図示無き参照ミラー)を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を調整する構成を有する。例えば、駆動機構25aの駆動によって参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光の光路中に配置されてもよい。つまり、測定光の光路長を変更することによって、測定光と参照光との光路長差が調整されてもよい。
【0068】
測定光と参照光とが合成された干渉信号光は、検出器31によって受光される。検出器31は、干渉信号光を検出する。ここで、光源21により出射波長が変化されると、これに対応する干渉信号光が検出器31によって受光され、結果的に、スペクトル干渉信号光として検出器31に受光される。検出器31から出力されたスペクトル干渉信号に基づいて、眼底上の一点における深さプロファイル(Aスキャン,または,OCTデータともいう)が形成される。深さプロファイルは、眼底の深さ方向に関する測定光の反射強度分布である。この深さプロファイル(OCTデータ)が、並べられることによって、二次元OCTデータ(例えば、眼底の断層画像、およびOCTアンジオグラフィー等)が形成される。
【0069】
<対物光学系>
次に、
図2を参照して、第1実施形態における対物光学系2を説明する。
図2の例では、第2ミラー60は、1枚の回転楕円鏡である。第2ミラー60は、2つの焦点r1,r2を有する。被検眼Eは、このうち一方の焦点r2に配置される。
【0070】
第1実施例において、第1ミラー50は、放物面鏡である。第1実施例において、放物面鏡である第1ミラ-50の焦点と、回転楕円鏡である第2ミラー60の2つの焦点のうち1つ(焦点r1)と、が一致するように、第1ミラ-50および第2ミラー60は配置される。また、第2ミラー60の2つの焦点のうち残り1つ(焦点r2)が被検眼Eの前眼部に配置される。なお、この場合、第1ミラー50の凸面,および,第2ミラー60の凹面が、それぞれの反射面として用いられる。ここで、放物面鏡は、対称軸Z2に対して平行に入射される光を、みかけ上、焦点r1から発せられる光に変換する。また、第1ミラー50は、更に、一方の焦点r1から発せられた光を、もう1つの焦点r2に集光させる。このため、第1実施例では、物体側テレセントリックなSLO光学系10,OCT光学系20からの光が、第1ミラー50の対称軸に対する平行光として第1ミラー50へ入射されることで、SLO光学系10からの光、および、OCT光学系20からの光を、被検眼Eの前眼部に位置する焦点r2を旋回点として旋回させることができる。このように、対物光学系2における第1ミラー50と第2対物ミラー60とが上記の形状、配置で設けられることによって、光スキャナ15,22を経て第1ミラー50へ入射される光の振り角を抑制しつつ、眼底の広範囲を走査することが可能となる。
【0071】
なお、第1ミラー50が放物面鏡である場合について説明したが、第1ミラー50は、撮影画角を広角化するための非球面鏡についての具体例の一つであって、放物面鏡以外の非球面鏡が第1ミラー50として適用されてもよい。
【0072】
また、第1実施例では、第1ミラー50と、第2ミラー60との他に、補正ミラー系71,72が対物光学系2に設けられている。第1実施例において、補正ミラー系71,72は、放物面鏡71と平面鏡72とによって構成される。第1ミラー50である放物面鏡と第2ミラー60である回転楕円鏡とによって眼底反射光が反射されることによって生じる像面の傾きが、補正ミラー系71,72によって補正される。また、第1実施例では、物体側テレセントリックなSLO光学系10,OCT光学系20からの光を、対称軸Z2に対して平行な光として、第1ミラ-50へ入射させる。
【0073】
第1実施例において、放物面鏡71は、対称軸z1を挟んで対称に形成された凹面を持つ。走査光学系1からの光は、対称軸z1に対して平行に入射される。また、平面鏡72は、放物面鏡71の焦点位置r5において、放物面鏡71と正対して配置されている。このような補正ミラー系71,72に対し、走査光学系1からの光が入射すると、放物面鏡71→平面鏡72(つまり、放物面鏡の焦点r5)→放物面鏡71の順で反射され、対称軸z1と平行に出射される。このため、補正ミラー系71,72の両側で、光束はテレセントリックになる。また、補正ミラー系71,72での反射によって、像面が傾斜される(
図2の中間像Ic2を参照)。この傾斜は、第1ミラー50と第2ミラー60とによって生じる像面の傾斜を、打ち消す方向に行われる。なお、
図2に示すように、第1ミラー50と第2ミラー60とによって生じる傾斜が、非線形なものである場合、補正ミラー系71,72は、少なくともこの傾斜の非線形成分を打ち消すことが望ましい。
【0074】
第1実施例における第1ミラー50は、放物面鏡71、および第2ミラー60に対して凸面を向ける凸面鏡である。つまり、第1ミラー50は、マイナスのパワーを持つ。第1ミラー50は、放物面鏡71に対して偏心して(軸外しで)配置されている。つまり、第1ミラー50の鏡面の対称軸(つまり、放物面の対象軸)である対称軸z2は、放物面鏡71の対称軸z1に対し、間隔を開けて平行となっている。このため、第1ミラー50には、対称軸z2と平行な光線が、放物面鏡71から照射される。また、第1ミラー50は、回転楕円鏡である第2ミラー60が有する2つの焦点r1,r2うち、一方の焦点r1に、第1ミラー50の焦点を一致させて配置されている。このため、放物面鏡71から第1ミラー50のある位置に光が照射された場合、その照射位置と、焦点r1とを結ぶ直線上に光は反射される。つまり、第1ミラー50から第2ミラー60へ向かう光は、光スキャナ15(或いは、光スキャナ27)の駆動に伴って、第2ミラーである回転楕円鏡の焦点r1を中心にして旋回する。換言すれば、第1ミラー50によって、光スキャナ15(或いは、光スキャナ27)を経て第2ミラー60に向かう光の旋回点が、焦点r1に形成される。第1実施例では、第1ミラー50の鏡面で光が反射されることによって、第1旋回点r1から第2ミラーへ向かう光の振り角が、走査光学系1から第1ミラー50に入射する光の振り角に対し、増大される。このため、第1実施例では、第1ミラー50に対して入射する光の振り角が、第2ミラー60へ入射する光の振り角よりも抑制される。一例として、
図1に示すように、テレセントリックな光を入射することもできる。この場合の振り角=0として考えるものとする。
【0075】
また、第2ミラー60である回転楕円鏡の一般的な特性により、焦点r1を通過し、且つ、回転楕円鏡の鏡面で反射された光は、他方の焦点r2に導かれる。このため、他方の焦点r2(つまり、被検眼Eの前眼部の位置)に、第2ミラー60で反射された光の旋回点(第2旋回点)が形成される。この旋回点(焦点r2)における光の振り角は、焦点r1での振り角と、第2ミラー60における鏡面の形状と、によって定められる。第2ミラー60は、焦点r2での振り角を、焦点r1での振り角に対して大きくさせる形状であってもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではない。
【0076】
このように、第1実施例では、走査光学系1から対物光学系2(より詳細には、放物面鏡71)に対して、テレセントリック(振り角=0)で光を入射させて、眼底Erの広範囲を撮影することが可能となる。第1実施例では、SLO光学系10とOCT光学系20との光路を結合するための光結合部材40(ダイクロイックミラー40)が、SLO光学系10とOCT光学系20とのそれぞれがテレセントリックとなっている箇所に配置されるので、広画角の正面画像と断層画像とを、良好に得ることができる。
【0077】
ここで、第2ミラー60は、回転楕円鏡であるので、眼底反射光に非対称な像面歪曲(例えば、台形歪み)を生じさせてしまう。これに対し、本実施例では、第1ミラー50を第2ミラー60に対して傾けて配置することによって、像面歪曲が抑制される。即ち、第1ミラー50と第2ミラー60との間における光路の中心を通過する光線に対して傾斜して第1ミラー50が配置される。第1ミラー50の傾斜量に応じて、像面歪曲の補正量が変化する。第1ミラー50の傾斜量は、例えば、残存する像面歪曲が軸対称となるように設定されてもよい。
【0078】
<制御系>
次に、
図4を参照して、撮影装置100の制御系について説明する。制御部70は、撮影装置100の装置全体の制御を行うプロセッサ(例えば、CPU)である。
【0079】
第1実施例において、制御部70には、メモリ72、モニタ75、等が電気的に接続される。また、制御部70には、光源11,21,光スキャナ15,27,検出器18,31,駆動機構25a等が電気的に接続される。
【0080】
メモリ72は、各種の制御プログラムおよび固定データを格納する。また、メモリ72には、撮影装置100によって撮影された画像、一時データ等が記憶されてもよい。
【0081】
本実施形態では、制御部70が画像処理部を兼用する。例えば、検出器18および検出器31からの受光信号は、それぞれ制御部70に入力される。制御部70は、検出器18からの信号に基づいて眼底Erの正面画像を形成する。また、制御部70は、検出器31からの信号に基づいて、眼底Erの断層画像を形成する。このとき、制御部70は、光源11からの光と光源21からの光とを、光スキャナ15と光スキャナ27とを同時に、且つ、独立して駆動することにより、正面画像と、断層画像とを、並行して取得してもよい。同時に得た正面画像と断層画像とを、モニタ75に対して、同時に動画として表示させてもよい。第1実施例では、SLO光学系10の光スキャナ15と、OCT光学系20の光スキャナ27とが独立に設けられているので、制御部70は、正面画像と、断層画像とを、互いに異なるフレームレートで取得してもよい。
【0082】
<第2実施例>
次に、
図5を参照して、第2実施例を説明する。第2実施例において、第1実施例と同様の構成については、第1実施例と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0083】
第2実施例は、走査光学系1および対物光学系2の一部が、第1実施例に対して相違している。例えば、第1実施例において、SLO光学系10およびOCT光学系20のそれぞれは、物体側にテレセントリックであったが、第2実施例では、走査光学系1(より詳細には、SLO光学系10およびOCT光学系20)から、対物光学系2へ入射する光が、対物光学系2から有限遠の旋回点を中心として、旋回されている。第2実施例では、説明の便宜上、対物光学系2へ入射するときのSLO光学系10からの光は、旋回点r3を中心として旋回されており、対物光学系2へ入射するときのOCT光学系20からの光は、旋回点r4を中心として旋回されているものとする。
【0084】
第2実施例の対物光学系2は、第1ミラー50と光スキャナ15,27との間に、第3ミラーとして、放物面鏡171を有する。放物面鏡171は、その焦点が、旋回点r3,r4と一致するように配置された凹面鏡である。このため、放物面鏡171の物体側では、光束はテレセントリックになる。さらに、第2実施例では、放物面鏡171における鏡面の対象軸(つまり、放物面の対称軸、図示せず)が、第1ミラー50における鏡面の対称軸z2と平行になるように配置されている。このため、第1実施例と同様、第1ミラー50には、対称軸z2と平行な光線が、光スキャナ15,27側から(つまり、放物面鏡171)から照射される。結果、第1ミラー50の焦点と第2ミラー60との焦点とが重なる位置である第1旋回点r1を中心として、第1ミラー50から第2ミラー60へ向かう光が旋回される。そして、更に、第2ミラー60で光が反射されることによって、その光が、回転楕円鏡のもう1つの焦点r2を旋回点として旋回される。このようにして、第2実施例においても、走査光学系1から対物光学系2(より詳細には、放物面鏡171)に対して入射する光の振り角を抑制しつつ、眼底Erの広範囲において、光を良好に走査することが可能となる。結果、光結合部材40(ダイクロイックミラー40)の入射角依存性によって、眼底の画像の画質が部分的に悪くなってしまうことが抑制される。
【0085】
所期する画角で眼底画像を撮影する場合に、放物面鏡171における焦点距離が長いほど、光スキャナ15,27における光の振り角を抑制できる。このため、許容される装置サイズとなる範囲で、より長い焦点距離を持つ放物面鏡171が適用されることが好ましい。これにより、光路結合部材40の入射角依存性の問題をより効果的に軽減できると考えられる。
【0086】
なお、本件の発明者によれば、第1実施例の光学系と、第2実施例の光学系とを、それぞれある条件で設計した場合において、第2実施例のほうが、より高い結像性能を奏することが確認された。
【0087】
ところで、第1実施例の補正光学系71,72の代わりに設けられている放物面鏡171は、像面の傾斜を補正しない。これに対し、第2実施例では、少なくともSLO光学系10における像面の傾斜を抑制するために、少なくとも、受光光学系10aの光軸に対して傾斜配置される検出器18が設けられていてもよい。なお、併せて、SLO光学系10におけるレンズ12又はレンズ13のいずれかが光軸に対して傾斜配置されていてもよい。このような第2実施例において、検出器18の傾斜量は、眼底Erおよび対物光学系2と、シャインプルーフの関係となるように調整される。結果、像面の傾きによって(つまり、フォーカスが、走査位置によって異なることによって)画質が悪くなってしまうことが抑制される。
【0088】
<第3実施例>
次に、
図6を参照して、第3実施例を説明する。第3実施例において、第1実施例と同様の構成については、第1実施例と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。第3実施例は、主に、第1ミラー50の形状が、第1実施例および第2実施例と相違する。また、第3実施例では、第1ミラー50と、走査光学系1との間に、ミラー系を含まない。第3実施例において、走査光学系1および対物光学系2の一部が、第1実施例に対して相違している。例えば、第1実施例において、SLO光学系10およびOCT光学系20のそれぞれは、物体側にテレセントリックであったが、第3実施例では、第2実施例と同様、走査光学系1(より詳細には、SLO光学系10およびOCT光学系20)から対物光学系2へ入射する光が、対物光学系2から有限遠の旋回点を中心として、旋回される。
【0089】
第3実施例において、第1ミラー50は、1つの双曲面鏡(1対の双曲面の一方)である。双曲面鏡は、第3実施例において、広角化に寄与する非球面鏡である。第2ミラー60は、第1実施例と同様に、回転楕円鏡であってもよい。第1ミラー50である双曲面鏡は、虚像側の焦点(凸面側にある焦点)が旋回点r3,r4と一致するように配置される。また、第1ミラー50は、実像側の焦点(凹面側にある焦点)が、第2ミラー60の一方の焦点と一致するように配置される。つまり、第1ミラー50には、虚像側(第1ミラー50と対になる双曲面側)の焦点から出射される光が照射される。その結果、双曲面鏡の一般的な特性により、第1ミラー50で反射された反射光は、光スキャナ15(或いは、光スキャナ27)の駆動に伴って、第1ミラー50の実像側の焦点r1を中心として旋回する。ここで、焦点r1は、回転楕円鏡である第2ミラー60の焦点でもあるので、第1ミラー50の配置によって、第1ミラー50で反射される光の旋回点が、回転楕円鏡の焦点r1に形成される。第3実施例では、第1ミラー50の鏡面で光が反射されることによって、第1旋回点r1から第2ミラー60へ向かう光の振り角は、走査光学系1から第1ミラー50に入射する光の振り角に対し、増大される。そして、第2ミラー60で反射された光が、第2ミラー60が持つもう1つの焦点r2を旋回点として旋回される。このようにして、第3実施例においても、走査光学系1から対物光学系2(より詳細には、第1ミラー50)に対して入射する光の振り角を抑制しつつ、眼底Erの広範囲において、光を良好に走査することが可能となる。
【0090】
なお、第3実施例における第1ミラー50は、双曲面鏡(離心率>1)であり、双曲面の離心率が1に近づくほど、つまり、ミラー形状が第1実施例で示した放物面形状に近づく。このため、双曲面の離心率が1に近づくほど、虚像側の焦点(凸面側にある焦点)がミラー面から遠くなり、無限大に近づく。このため、所期する画角で眼底画像を撮影する場合に、第1ミラー50における離心率が1に近いほど、光スキャナ15,27における光の振り角を抑制できる。このため、許容される装置サイズとなる範囲で、より1に近い離心率を持つ双曲面鏡が、第1ミラー50に適用されることが好ましい。これにより、光路結合部材40の入射角依存性の問題をより効果的に軽減できると考えられる。
【0091】
なお、
図6に示すように、第1ミラー50は、第2ミラー60に対して傾斜して配置されてもよい。この場合に生じる像面の傾きを補正するために、例えば、SLO光学系10の検出器18等が、光軸に対して傾けて配置されてもよい。
【0092】
<第4実施例>
次に、
図7および
図8を参照して、第4実施例を説明する。第4実施例は、第3実施例に対し、更に、第3ミラー211,221が、撮影装置100に設けられている。第3ミラー211,222は、対物光学系2による偏心収差を補正するために利用される。
図7では、SLO光学系10とOCT光学系20とのそれぞれに1つずつ第3ミラーが設けられている。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、第3ミラーは、第1ミラー50および第2ミラー60と同様に、SLO光学系10とOCT光学系20との間で共用されてもよい。以下、第3実施例と同様の構成については、第3実施例と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0093】
第1ミラー50(双曲面鏡)と光スキャナ15との間、および、第1ミラー50と光スキャナ27との間、のそれぞれに、第3ミラー211,221のうち1つが配置される。このため、
図7では、光スキャナ15,27からの光は、一旦、第3ミラー211,221によって反射され、第1ミラー50へ入射される。
【0094】
図7において、第3ミラー211,221は、双曲面鏡であってもよい。この場合、第1ミラー50(双曲面鏡),第2ミラー60(楕円鏡),第3ミラー211,221(双曲面鏡)は、いずれも二次曲面で形成されるので、比較的低コストで、撮影装置100の光学系を形成できる。なお、
図7では、第1ミラー50が凸面を反射面とするのに対し、第3ミラー211,221は、凹面を反射面としている。
【0095】
各第3ミラー211,221は、凸面側の焦点を、第1ミラー50の凸面側の焦点と一致させて配置される。また、第3ミラー211の焦点と光スキャナ15は、第3ミラー211に関して共役であり、第3ミラー221の焦点と光スキャナ127は、第3ミラー221に関して共役である。これにより、光スキャナ15,27と、前眼部との共役関係を、良好に実現できる。また、光スキャナ15,27の動作に伴い、上記の焦点を、旋回点として光が旋回される。
【0096】
第1ミラー50と第2ミラー60との偏心配置によって生じる像面の傾斜を、第3ミラー211,221によって補正できる。
【0097】
<第3ミラーに対する奇数次非球面鏡または自由曲面鏡の適用例>
ここで、第4実施例における第3ミラー211,221に対して、ベース面を双曲面とする奇数次非球面鏡および自由曲面鏡を、適用する場合を説明する。
【0098】
自由曲面鏡が適用された第3ミラー211の拡大図を、
図8に示す。
図8では、第3ミラー211の鏡面を、実線で示し、第3ミラー211のベース面となる双曲面Mを、一点鎖線で示している。
【0099】
ベース面となる双曲面Mは、第1ミラー50の凸面側に位置する。また、双曲面Mにおける凸面側の焦点の位置が、第1ミラー50の凸面側の焦点と一致される。また、双曲面Mにおけるもう1つの焦点(またはその共役位置)に、光スキャナ15,27が置かれる。
【0100】
また、双曲面Mとの間で、虚物点(P2)の位置が一致するような鏡面形状に、第3ミラー211は形成されている。さらに、双曲面Mとの間で、面頂点(P1)の位置が一致するような鏡面形状に、第3ミラー211は形成されている。つまり、
図8に示すように、第3ミラー211と双曲面Mとの間で、虚物点および面頂点の位置が、それぞれ一致され、実像の位置がわずかにズレる(P3とP4) 。
【0101】
このような鏡面形状が、第3ミラー211において適用されると、旋回位置の共役関係が保たれやすくなる。このとき、実像(P3:双曲面Mによる実像)に対して、実像(P4:実際の鏡面による実像)が、より鏡面の近くに形成されるような鏡面形状が、第3ミラー211に適用されることが望ましい。より詳細には、次の式で、自由曲面の形状が表現されてもよい。
【0102】
【0103】
ここで、zは、z軸(光軸)に平行なサグ量である。cは、面頂点での曲率である。kは、コーニック定数である。rは、曲率半径である。cjは、xmyn項の定数である。なお、本実施例において、コーニック定数および曲率半径はベース面とした二次曲面(ここでは、双曲面)と同じ値(第1項が共通となる)が用いられることにより、瞳結像関係と、収差の低減とを両立することができる。
【0104】
第3ミラー211と同様に、第3ミラー212にける鏡面形状についても、同様の式で表現することができる。
【0105】
以上では、一例として、第3ミラー211,221に対して自由曲面鏡が適用される場合について述べた。一方で、第3ミラー211,221に対して奇数次非球面鏡が適用された場合においても、ベース面とした双曲面との間で、虚物点および面頂点の位置が一致する鏡面形状が、第3ミラー211,221において採用されることが好ましい。この場合、例えば、次の式によって鏡面形状が表現されてもよい。
【0106】
【0107】
ここで、zは、z軸(光軸)に平行なサグ量である。cは、面頂点での曲率である。kは、コーニック定数である。rは、曲率半径である。ARnは、係数である。自由曲面の場合と同様、コーニック定数および曲率半径はベース面とした双曲面と同じ値が用いられてもよい。
【0108】
第3ミラー211,221と、眼底反射光を受光する検出器(例えば、検出器18)との間に、偏心収差を補正する光学素子が配置されていてもよい。例えば、
図8の配置では、集光レンズ17(図示なし)が、受光光学系10aの光軸に対して一方向に偏心配置されることによって、回転非対称な偏心収差が補正される。但し、偏心収差を補正する光学素子は、偏心配置された集光レンズ17に限定されるものではない。
【0109】
<第5実施例>
次に、
図9を参照して、第5実施例を説明する。
図9では、被検眼Eと中間像との間に設けられた光学系を示す。第5実施例は、第2実施例における放物面鏡171と、眼底反射光を受光する検出器(検出器18)との間に、更に、偏心収差を補正する光学系300(「第2補正ミラー系」と称する)を、更に有している。つまり、第5実施例では、2次曲面からなる鏡面形状をそれぞれ持つ、対物光学系2(第1ミラー50(放物面鏡)、第2ミラー60(楕円鏡)、および、第3ミラー(放物面鏡171)を有する。
【0110】
第5実施例に示す光学系は、対物光学系2を小型化する場合において、偏心収差の影響を良好に抑制しやすい。即ち、小型化する際、対物光学系2における各反射面の屈折力を強くすることが求められる。しかしながら、反射面の屈折力が強くなるほど、偏心収差の発生量は大きくなる。そこで、自由曲面鏡を含む第2補正ミラー系300によってこれらの小型化による偏心収差を補正する。なお、第2補正ミラー系300は、自由曲面鏡に代えて、奇数次非球面鏡を含み、これにより、偏心収差を補正してもよい。
【0111】
また、第5実施例では、この第2補正ミラー系300によって、第1ミラー50(放物面鏡)と第2ミラー60との偏心配置によって生じる像面の傾斜も補正される。つまり、「補正ミラー系」を兼用する。
【0112】
本実施形態において第2補正ミラー系300は、一例として、3枚のミラー301,302,303を含む。放物面171側から検出器18へ向かって、凹面ミラー301、凸面ミラー302、凹面ミラー303の順、で配列されている。第2補正ミラー系300に含まれるミラーのうち、少なくともいずれかが、自由曲面鏡であってもよい。このとき、第2補正ミラー系300に含まれるミラーのうち、最もパワーの大きなミラーが、自由曲面鏡であってもよい。例えば、
図9の場合、301と302は球面ミラーとして、中間像Ic1の直前の凹面ミラー303のみ自由曲面としてもよい。第2補正ミラー系300に含まれるミラーのうち、自由曲面鏡の枚数がより少ないほど、コスト面、精度面で有利である。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、第2補正ミラー系300に含まれるミラーのうち、2枚以上が、自由曲面鏡であってもよい。自由曲面鏡に代えて、又は共に、奇数次非球面鏡が用いられる場合においても同様である。
【0113】
また、各自由曲面の形状および配置については、光学シミュレーション等を用いて適宜設定してもよい。
【0114】
<断層画像取得時における装置の動作>
上記各実施例の対物光学系2は、被検眼Eと光スキャナ27との間に配置されるミラー系(例えば、第1ミラー50および第2ミラー60等)を介して、被検眼Eの前眼部(例えば、瞳孔位置)に光スキャナ27の動作に伴って旋回される旋回点(上記各実施例においては、旋回点r2)を形成する対物ミラー系である。対物光学系2は、例えば、上記各実施例では、被検眼Eの直前の第2ミラー60は、回転楕円鏡であり、この回転楕円鏡が持つ2つの焦点r1,r2のうち1つに、旋回点r2は形成される。回転楕円鏡における2つの焦点のうち、一方から鏡面に向けて入射して、他方の焦点に導かれる光は、2つの焦点の間における光路長が常に一定となる。しかし、上記各実施例では、光スキャナ27と第2ミラー60との間に、第1ミラー50等のミラーが配置されていることによって、光スキャナ27から第2旋回点r2までの測定光の距離が、光スキャナ27の走査位置に応じて異なりうる。
【0115】
また、上記各実施例において、第2旋回点r2(瞳孔位置)から眼底Erの表面までの測定光の光路長も走査位置毎に異なっている。つまり、眼底の湾曲によって、第2旋回点r2から眼底Erまでの測定光の距離が、光スキャナ27の走査位置に応じて異なりうる。
【0116】
このように、光スキャナ27から被検眼Eまでの測定光の距離が、光スキャナ27の各走査位置で異なることが考えられる。つまり、前記光スキャナ27の各走査位置での光スキャナ27から被検眼Eまでの測定光の距離による測定光と参照光との光路長差に変化が生じることが考えられる。
【0117】
この状態で、検出器31からの信号に基づいて深さプロファイル(OCTデータ)を得る場合、被検眼Eにおいて深さプロファイル(OCTデータ)が取得される領域の深さ位置が、光スキャナ27の走査位置毎に異なってしまうことが考えられる。また、走査位置によっては、光路長差が大きいことによって、検出器31の感度が高い範囲と、測定光と参照光との干渉が生じる範囲とが、比較的大きくずれてしまう場合が考えられる。
【0118】
これに対し、制御部70は、光スキャナ27の各走査位置での光スキャナ27から被検眼Eまでの測定光の距離による測定光と参照光との光路長差の変化を補正する。
【0119】
ここで、測定光と参照光との光路長差の変化は、データ上(OCTデータの処理によって)で補正されてもよい。例えば、制御部30は、検出器31からの信号に基づいて制御部30がOCTデータを取得する際に、そのOCTデータの深さ方向の位置情報を補正してもよい。
【0120】
また、制御部30は、複数のOCTデータを並べて二次元OCTデータを形成する際に,各走査位置のOCTデータ間における相対的な深さ位置を補正してもよい。
【0121】
このような処理が行われた結果として、OCTデータ(或いは、二次元OCTデータ)を良好に得ることができる。
【0122】
また、参照光と測定光との光路長差の変化は、光学的に補正されてもよい。例えば、補正は、光スキャナ27の走査位置に応じて光路長調整機構25a(駆動機構)を駆動制御することによって行われてもよい。駆動機構25aは、前述したように、参照光の光路(又は、測定光の光路)上に配置された光学部材(例えば、ミラー)を変位させることによって、測定光と参照光との光路長差を調整してもよい。例えば、本実施例では、光スキャナ27の動作に伴う測定光の光路長の変化に合わせて、参照光の光路長が駆動機構25aによって変化される。その結果、検出器31の感度が高い範囲において測定光と参照光との干渉に基づく信号が検出されやすくなり、OCTデータ(或いは、二次元OCTデータ)を良好に得ることができる。なお、この場合、走査位置によらずに、測定光と参照光との干渉に基づく信号が検出器31の感度が比較的高い範囲において検出されるように、光路長差が変化する範囲を抑制できればよく、必ずしも、測定光と参照光との光路長差が各走査位置において一定(例えば、ゼロ)となるように駆動機構25aが駆動制御される必要はない。
【0123】
ここで、制御部70は、少なくとも光スキャナ27から第2旋回点r2までの測定光の距離(光路長)の変化を考慮して、測定光と参照光との光路長差の変化を補正する。また、制御部70は、眼底の湾曲による各走査位置での測定光の光路長の変化(つまり、第2旋回点r2から眼底Erまでの測定光の光路長の変化)を更に考慮して、補正を行ってもよい。ここで、光スキャナ27から第2旋回点r2までの測定光の光路長と、光スキャナ27の各走査位置と、の対応関係は、光学系の設計によって定まっている。また、第2旋回点から眼底Erまで,の測定光の光路長と、光スキャナ27の各走査位置と、の対応関係も光学系の設計(主に第2旋回点での振り角)によっておおよそ定まる。
【0124】
そこで、例えば、光路長差の変化を補正するための補正量(例えば、光路長の変化量,或いは,OCTデータにおける深さ方向の位置情報の補正量)が光スキャナ27の各走査位置と対応づけられた補正テーブルが、メモリ72に予め用意されていてもよい。そして、制御部70は、この補正テーブルを用いて、光路長差の変化の補正処理を行ってもよい。このようなテーブルにおける補正量は、少なくとも光スキャナ27から第2旋回点r2まで,の測定光の光路長の変化が考慮された値である。さらに、第2旋回点r2から眼底E2までの光路長の変化が考慮された値であってもよい。このような光路長差と補正量との対応関係(換言すれば、走査位置と補正量との対応関係)は、例えば、シミュレーションおよびキャリブレーション等によって予め求められてもよい。
【0125】
なお、上記実施例では、光スキャナ27は、2つの光スキャナを含んでいる。つまり、測定光の主走査を行う第1光スキャナ(例えば、Xガルバノスキャナ)と、主走査の方向とは交差する方向に測定光の副走査を行う第2光スキャナ(例えば、)と、が含まれている。主走査が、各図の紙面奥行き方向に行われ、副走査が、紙面奥行き方向に対し、交差する方向に行われる場合、副走査の位置のみに応じて、測定光における光路長の変化(より詳細には、光スキャナ27から第2旋回点r2までの光路長の変化)が生じるような、対物光学系2を採用することが可能である。例えば、本実施形態のように、回転楕円鏡および回転放物面鏡等の回転曲面から形成される凹面鏡および凸面鏡を用いることで、上記のような対物光学系2を実現し得る。
【0126】
このような対物光学系2に対し、制御部30は、測定光をラスタースキャンすることで、複数のスキャンラインにおける二次元OCTデータを取得してもよい。つまり、制御部30は、光スキャナ27を駆動制御することで、主走査によって取得される二次元OCTデータを,副走査の方向の異なるスキャンラインにおいて複数取得する。そして、第2スキャナの走査位置に応じて駆動機構25aを駆動制御してもよい。つまり、第2スキャナの走査位置に応じて駆動機構2を駆動することで、参照光と測定光との光路長差の変化を補正してもよい。
【0127】
この場合において、副走査に伴って、測定光と参照光との光路長差に変化が生じ得るが、主走査と比べて、副走査のスピードは遅い。このため、光路長差の時間的な変化を抑制できる。よって、参照光と測定光との光路長差の変化がより確実に補正されるように、駆動機構25aを駆動させることができる。結果、複数の二次元OCTデータを良好に取得することができる。
【0128】
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が行われてもよい。
【0129】
例えば、第1実施例ないし第5実施例では、対物光学系2における第2ミラー60は回転楕円鏡であり、これと組み合わせて用いる第1ミラー50は、放物面鏡または双曲面鏡であった。換言すれば、第1実施例ないし第5実施例において、第1ミラー50は、離心率≧1となる2次曲線を対称軸周りに回転させた軌跡によって形成される曲面であった。しかし、前述したように、第1ミラー50、および、第2ミラー60の曲面形状は、それぞれ種々の二次曲面、非球面、または、自由曲面から適宜選択されてもよい。なお、第1ミラー50および第2ミラー60を、奇数次非球面、または、自由曲面で形成する場合は、第3実施例で示した数式を援用して、鏡面形状を表現することができる。つまり、いずれかの2次曲面をベース面とし、その2次曲面のコーニック定数と、曲率半径を用いて表現される鏡面形状を、第1ミラー50および第2ミラー60へ適用し得る。
【0130】
また、例えば、上記実施形態において、走査光学系1は、それぞれに光スキャナを持つ,2つの撮影光学系(上記実施形態では、SLO光学系10と、OCT光学系20)の光路が、光路結合部40によって結合される場合を説明した。しかし、かならずしもこれに限られるものではなく、走査光学系1は、撮影光学系と、治療用または刺激用の光を発する照射光学系と、の光路が、光路結合部40によって結合されてもよい。ここでいう、撮影光学系は、撮影用の第1光源からの光を第1光スキャナを駆動することで、眼底上で走査させると共に、第1光源からの光の眼底反射光を受光する検出器と、を備えていてもよい。この場合、例えば、上記実施形態におけるSLO光学系10およびOCT光学系20のいずれかが撮影光学系として利用されてもよい。一方、照射光学系によって、被検眼Eに対して照射される光は、例えば、眼底で光凝固を行うための治療用レーザであってもよい。また、視野検査用の刺激光であってもよい。勿論、治療用または刺激用の光としては、これに限定されるものではない。このような照射光学系は、治療用又は刺激用の光を出射する第2光源からの光を偏向することで、眼底上における前記光の照射位置を定める第2光スキャナを少なくとも有してもよい。このような照射光学系は、上記実施形態におけるSLO光学系10およびOCT光学系20のいずれと置き換えられてよく、第2光スキャナは、上記実施形態における何れかの光スキャナ15,27に置き換えられて、配置されてもよい。
【0131】
また、特に、第5実施例に示した光学系は、ヘッドマウント型等のウェアラブルタイプの装置における投光系へ適用されてもよい。一例として、網膜走査型のディスプレイとして利用されてもよい。下記の参考文献1にあるように、SLO光学系におけるレーザ走査をビデオ信号に合わせて行うことにより、網膜走査ディスプレイ用光学系に転用可能である。また、近年、網膜走査ディスプレイを視野計に応用することが提案されている。しかし、参考文献2等の従来技術では、スキャンできる角度が小さいことが問題であり、スキャン角度を拡大する提案はされていない。これに対し、本実施例の光学系を用いれば、超広視野の視野検査をヘッドマウント型の装置で行うことが可能となる。
【0132】
この場合、ウェアラブルタイプの視野計であってもよい。例えば、
図9における第2補正ミラー系300を挟んで被検眼Eと反対側に位置する眼底共役面に、表示素子(例えば、LCD等)を配置することで、表示素子から網膜へ刺激視標を投影してもよい。
【0133】
<参考文献一覧>
参考文献1:Flying spot TV ophthalmoscope_Applied optics 19(17)2991-2997,1980
参考文献2:特開平10-272098
<前眼部OCT撮影>
また、例えば、上記実施形態における眼底撮影装置1は、眼底のOCTデータ(例えば、断層画像、OCTアンジオグラフィー等)を取得可能であったが、更に、前眼部のOCTデータを取得可能であってもよい。このとき、眼底のOCTデータを取得する眼底撮影モードと、前眼部のOCTデータを取得する前眼部撮影モードと、撮影モードが切換られてもよい。撮影モードの切換の前後において、制御部70は、例えば、OCT光学系20の視度、測定光路と参照光路との光路長差の少なくとも一方を変更する。
【0134】
なお、前眼部のOCTデータを取得する場合、対物光学系2によって形成される旋回点r2(
図5,6,7,9参照)は、角膜における曲率中心の位置に形成されることが好ましい。この場合、測定光が角膜の表面に対して垂直に入射されやすくなるので、測定光の向きが、角膜によって変化し難くなる。また、上記実施形態のような、画角の広い対物光学系が適用されることで、角間の広域においてOCTデータを取得しやすくなる。結果、角膜についての良好なOCTデータが得られやすくなる。
【0135】
また、前眼部のOCTデータを取得する場合は、測定光が前眼部で合焦するように、OCT光学系20における視度補正部(図示せず)が調整されてもよい。このときの測定光の合焦位置は、例えば、角膜表面から水晶体後面までの範囲内で、適宜設定されてもよい。視度補正部は、OCT光学系20の測定光路上に設けられた周知のフォーカス調整機構であってもよい。
【0136】
また、更に、前眼部のOCTデータを取得する場合は、測定光路と参照光路との光路長差がゼロとなるゼロディレイ位置が、前眼部の近傍となるように、測定光路と参照光路との光路長差が調整されてもよい。
【0137】
眼底撮影モードから前眼部撮影モードへ切り替えられた場合に、制御部70によって、上記した少なくとも1つの調整動作が実行されてもよい。調整動作の結果、スムーズに前眼部のOCTデータの取得を開始することができる。
【0138】
<眼底カメラへの適用例>
例えば、本開示は、光スキャナを持つ眼底撮影装置に限定されるものではなく、眼底カメラへ適用されてもよい。この場合、SLO光学系10およびOCT光学系20のうち少なくとも一方の代わりに、眼底カメラ光学系を有してもよい。眼底カメラ光学系は、更に、投光光学系および撮像光学系を有してもよい。このとき、投光光学系および撮像光学系は、対物光学系を共用してもよい。
【0139】
投光光学系は、対物光学系2を介して眼底へ光(照明光)を照射する。投光光学系における見掛け上の光源の位置が、上記実施形態における光スキャナ15,27の位置に配置されるように、光源およびアパーチャが配置されていてもよい。また、撮像光学系は、眼底共役位置に、撮像素子(二次元受光素子)を有していてもよい。
【0140】
この場合、見掛け上の光源の位置が、上記実施例における各旋回点r1,r2の位置にリレーされ、光源からの光が眼底へ照射される。そして、眼底反射光が、撮像素子において結像され、眼底画像が撮像される。
【0141】
第1ミラー50および第2ミラー60は、それぞれ、光源からの照明光を反射することによって、見かけ上の光源を前眼部へリレーする。また、第1ミラー50と、眼底カメラ光学系との間に、第3ミラーが設けられ、この第3ミラーによって、第1ミラー50および第2ミラー60による偏心収差が軽減されてもよい。
【0142】
このような眼底カメラは、次のように表すことができる。即ち、偏心配置された複数のミラーによって形成された対物光学系と、光源からの照明光を前記対物光学系を介して眼底へ照射する投光光学系、および、眼底反射光に基づいて眼底画像を撮影する撮像光学系、を含む眼底カメラ光学系と、を有し、更に、前記複数のミラーの偏心配置によって生じる偏心収差を補正する補正ミラーを、前記対物光学系、または、前記対物光学系と前記眼底カメラ光学系の間に、有する眼底カメラ。補正ミラーは、上述の第1乃至第3ミラーのいずれかであってもよい。
<ラインスキャンSLOに関する特徴>
また、本開示には、ラインスキャンSLOで広角撮影を行う際に生じる種々の問題点への解決手段として、以下のような眼底撮影装置が、更に、開示されている。
【0143】
(第1の眼底撮影装置)
光源から導かれたライン状の光を走査する光スキャナと、眼底反射光を受光するためのラインセンサ又はエリアセンサと、を持つラインスキャンSLO光学系と、前記光スキャナと前記被検眼との間に配置される対物光学系であって、被検眼が焦点に置かれる曲面鏡と、前記曲面鏡に前記光スキャナからの光を導くと共に、前記曲面鏡に起因する像面歪曲を打ち消す歪曲補正光学系と、を有する対物光学系と、を持つ眼底撮影装置。
【0144】
上記実施形態では、第2ミラー60(「曲面鏡」の一例)によって生じる像面歪曲が、第2ミラー60と光スキャナ15,27との間に配置されるミラー(第1ミラー50と補正ミラー系71,72との組み合わせ,または、第1ミラー50と補正ミラー171との組み合わせ)によって打ち消された(換言すれば、軽減された)。但し、歪曲補正光学系は、必ずしもミラーのような反射要素のみで形成される必要はない。例えば、一部または全部に、レンズのような屈折要素が含まれていてもよい。屈折要素は、「曲面鏡」で生じる像面歪曲を軽減するものであればよい。具体的には、光軸に対して偏心配置されたレンズであってもよいし、非球面レンズであってもよいし、その他の構成であってもよい。
【0145】
(第2の眼底撮影装置)
第1の眼底撮影装置において、前記曲面鏡は、第1の焦点および第2の焦点を持ち、前記第1の焦点の共役位置に前記光スキャナが、前記第2の焦点に被検眼が、それぞれ配置される楕円鏡であり、前記歪曲補正光学系は、前記光スキャナと第1の焦点との間、又は、前記第1の焦点と前記第2の焦点との間に配置される。
【0146】
第2の眼底撮影装置において、光スキャナと第1の焦点との間に、歪曲補正光学系が配置される場合は、光スキャナが第1の焦点に配置されていてもよい。
【0147】
(第3の眼底撮影装置)
第1または第2の眼底撮影装置において、眼底および対物光学系とシャインプルーフの関係となるようにラインセンサ又はエリアセンサが傾斜配置される、又は、眼底反射光が前記対物光学系を経由することによって生じる像面の傾きを補正する光学部材を有する。
【0148】
(第4の眼底撮影装置)
光源から導かれたライン状の光を走査する光スキャナと、眼底反射光を受光するためのラインセンサ又はエリアセンサと、を持つラインスキャンSLO光学系と、前記光スキャナと前記被検眼との間に配置される対物光学系であって、少なくとも1つの曲面鏡を持ち、光スキャナから導かれる光源からの光を、曲面鏡で反射することによって、前記曲面鏡の焦点に形成される前記光の旋回点を経由させて前記光を眼底に導く対物光学系と、を持ち、更に、眼底および対物光学系とシャインプルーフの関係となるようにラインセンサ又はエリアセンサが傾斜配置される、又は、眼底反射光が前記曲面鏡によって反射されることによって生じる像面の傾きを補正する光学部材を有する、眼底撮影装置。
【0149】
(第5の眼底撮影装置)
第4の眼底撮影装置において、前記曲面鏡は、第1の焦点および第2の焦点を持ち、前記第1の焦点の共役位置に前記光スキャナが、前記第2の焦点に被検眼が、それぞれ配置される楕円鏡である。
【0150】
(第6の眼底撮影装置)
第5の眼底撮影装置において、前記対物光学系は、更に、前記曲面鏡に前記光スキャナからの光を導くと共に、前記曲面鏡に起因する像面歪曲を打ち消す歪曲補正光学系を持つ。
【0151】
(第7の眼底撮影装置)
第6の眼底撮影装置において、前記歪曲補正光学系は、前記光スキャナと第1の焦点との間、又は、前記第1の焦点と前記第2の焦点との間に配置される。
【0152】
(第8の眼底撮影装置)
第3または第4の眼底撮影装置において、ラインスキャンSLO光学系における光スキャナとラインセンサ又はエリアセンサとの間の眼底反射光の受光光路上であって、光源からの光の投光光路とは独立した光路上に、光学部材は配置される。
【符号の説明】
【0153】
1 走査光学系
2 対物光学系
10 SLO光学系
20 OCT光学系
11,21 光源
15,27 光スキャナ
18 検出器
40 光路結合部材
50 第1ミラー
60 第2ミラー
71,72 補正ミラー系
100 眼底撮影装置
211,221 第3ミラー
r1 第1旋回点
r2 第2旋回点
E 被検眼
Er 眼底