IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

特許7167430ねじ状砥石のツルーイング装置及びツルーイング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ねじ状砥石のツルーイング装置及びツルーイング方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/085 20060101AFI20221101BHJP
   B24B 49/03 20060101ALI20221101BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B24B53/085
B24B49/03 Z
B23Q17/22 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017218789
(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公開番号】P2019089154
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】疋田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-000770(JP,A)
【文献】米国特許第06290574(US,B1)
【文献】特開2016-078186(JP,A)
【文献】特開2010-030022(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0238185(US,A1)
【文献】特開昭53-060790(JP,A)
【文献】実開平03-047757(JP,U)
【文献】米国特許第05076020(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/085
B24B 49/03
B23Q 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒の外周に所定のねじれ角を有して形成された螺旋状の歯筋を備えるねじ状砥石を第一軸線周りに回転自在に支持する第一回転軸と、
第二軸線周りに回転自在に支持され、前記第二軸線方向及び前記第二軸線と直交する方向に相対移動し、回転する前記ねじ状砥石の前記歯筋の外周面又は歯面に対してツルーイングを行なうツルアと、
前記ツルアが移動して前記歯筋に接近し前記外周面又は前記歯面に接触した場合に接触検知信号を出力する接触検知部と、
前記ツルア及び前記ねじ状砥石の少なくとも一方を所望の位置に移動させ、且つ回転を制御して前記ツルーイングを実施する制御装置と、
を備える、ねじ状砥石のツルーイング装置であって、
前記制御装置は、
前記ねじ状砥石を連続回転させるとともに、前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の歯溝内の空間に進入させる歯溝進入処理部と、
前記ねじ状砥石と前記ツルアとの前記第一軸線方向の相対移動速度に基づき設定された所定の回転速度以上で前記ねじ状砥石を連続回転させた状態において、前記歯溝に対し前記歯溝内に進入させた前記ツルアを前記第一軸線方向の少なくとも一方に相対移動させて前記歯面に接触させ、前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させる接触処理部と、
前記ツルアが前記歯面に接触し前記接触検知信号が出力された時点における前記ツルアの位置である接触位置を記憶する接触位置記憶部と、
前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定処理部と、
前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング処理部と、
を備え、
前記所定の回転速度は、前記接触処理部による処理において、前記ツルアが前記ねじ状砥石の前記歯面におけるうねりの底部には接触しない速度であって前記底部以外に接触することを可能とする速度である、ねじ状砥石のツルーイング装置。
【請求項2】
前記接触処理部は、
前記歯溝内の空間に進入させた前記ツルアを前記歯溝に対し前記第一軸線方向の一方に相対移動させ、前記歯面である第一歯面に接触させたのち、
前記ツルアを、前記第一軸線方向の他方に相対移動させ、前記歯溝内において前記第一歯面と対向する前記歯面である第二歯面に接触させる、請求項1に記載のねじ状砥石のツルーイング装置。
【請求項3】
円筒の外周に所定のねじれ角を有して形成された螺旋状の歯筋を備えるねじ状砥石を第一軸線周りに回転自在に支持する第一回転軸と、
第二軸線周りに回転自在に支持され、前記第二軸線方向及び前記第二軸線と直交する方向に相対移動し、回転する前記ねじ状砥石の前記歯筋の外周面又は歯面に対してツルーイングを行なうツルアと、
前記ツルアが移動して前記歯筋に接近し前記外周面又は前記歯面に接触した場合に接触検知信号を出力する接触検知部と、
前記ツルア及び前記ねじ状砥石の少なくとも一方を所望の位置に移動させ、且つ回転を制御して前記ツルーイングを実施する制御装置と、
を備える、ねじ状砥石のツルーイング装置であって、
前記制御装置は、
前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の歯溝内の空間に進入させる歯溝進入処理部と、
前記ねじ状砥石を所定の回転速度で連続回転させるとともに、前記歯溝内の空間に進入させた前記ツルアを前記歯面の所定位相の位置との間に0を超える所定の隙間を有した状態とした上で、前記ツルアが前記歯面の回転と同期して移動するよう前記ツルアを前記第一軸線方向に相対移動させながら、前記歯面の前記所定位相とは異なる位相における被接触部と接触させ前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させ、前記ツルアを前記第一軸線方向に移動させて前記ツルアと前記歯面の前記被接触部との間に0を越える前記所定の隙間を有した状態とする処理を、前記歯面の歯筋方向における所定の位相範囲内において、前記接触検知信号が出力されるたびに繰り返し行なう接触処理部と、
前記接触処理部において、最後に前記接触検知信号が出力された時点における前記ツルアの位置である接触位置を記憶する接触位置記憶部と、
前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定処理部と、
前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング処理部と、
を備え、
前記歯面の前記被接触部は、前記歯面の前記所定位相の位置よりも前記歯面のうねり高さの高い位置である、ねじ状砥石のツルーイング装置。
【請求項4】
前記接触処理部は、
前記歯溝内の空間に進入させた前記ツルアを、前記歯溝に対し前記第一軸線方向の少なくとも一方に相対移動させて前記歯面の前記被接触部と接触させ前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させる第一接触処理部と、
前記第一接触処理部によって、前記ツルアが前記被接触部と接触したのち、前記被接触部との間に0を超える前記所定の隙間を有するよう、前記ツルアを前記被接触部から離間する方向に相対移動させる第二接触処理部と、
前記ツルアが前記被接触部との間に前記所定の隙間を有した状態で前記歯面の回転と同期して移動するよう前記ツルアを前記第一軸線方向に相対移動させ、前記歯面の前記歯筋方向における前記所定の位相範囲内において、前記被接触部よりも歯厚の被接触部が存在する場合に、前記歯厚の被接触部に接触させ、前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させる第三接触処理部と、
前記第三接触処理部において、前記歯厚の被接触部が存在した場合に、前記第二接触処理部における処理と前記第三接触処理部における処理と、を前記所定の位相範囲内において、繰り返し実施する第四接触処理部と、
を備える、請求項3に記載のねじ状砥石のツルーイング装置。
【請求項5】
前記接触検知部は、AEセンサを備え、前記AEセンサが前記ツルアと前記ねじ状砥石との接触を検知し前記接触検知信号を出力する、請求項1-4の何れか1項に記載のねじ状砥石のツルーイング装置。
【請求項6】
請求項1に記載のツルーイング装置を利用したねじ状砥石のツルーイング方法であって、
前記ねじ状砥石を連続回転させるとともに、前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の前記歯溝内の空間に進入させる歯溝進入工程と、
前記ねじ状砥石と前記ツルアとの前記第一軸線方向の相対移動速度に基づき設定された所定の回転速度以上で前記ねじ状砥石を連続回転させた状態において、前記歯溝に対し前記歯溝内に進入させた前記ツルアを前記第一軸線方向の少なくとも一方に相対移動させて前記歯面に接触させ、前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させるとともに前記接触検知信号が出力された時点における前記ツルアの位置である前記接触位置を前記接触位置記憶部に記憶させる接触工程と、
前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときの前記ツルーイング開始位置を設定する開始位置設定工程と、
前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング工程と、
を備え、
前記所定の回転速度は、前記接触処理部による処理において、前記ツルアが前記ねじ状砥石の前記歯面におけるうねりの底部には接触しない速度であって前記底部以外に接触することを可能とする速度である、ねじ状砥石のツルーイング方法。
【請求項7】
請求項3に記載のツルーイング装置を利用したねじ状砥石のツルーイング方法であって、
前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の前記歯溝内の空間に進入させる歯溝進入工程と、
前記ねじ状砥石を前記所定の回転速度で連続回転させるとともに、前記歯溝内の空間に進入させた前記ツルアを前記歯面の所定位相の位置との間に0を超える前記所定の隙間を有した状態とした上で、前記ツルアが前記歯面の回転と同期して移動するよう前記ツルアを前記第一軸線方向に相対移動させながら、前記歯面の前記所定位相とは異なる位相における被接触部と接触させ前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させ、前記ツルアを前記第一軸線方向に移動させて前記ツルアと前記歯面の前記被接触部との間に0を越える前記所定の隙間を有した状態とする処理を前記歯面の前記歯筋方向における前記所定の位相範囲内において、前記接触検知信号が出力されるたびに繰り返し行なうとともに、前記接触検知信号が最後に出力された時点における前記ツルアの位置である前記接触位置を前記接触位置記憶部に記憶させる接触工程と、
前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときの前記ツルーイング開始位置を設定する開始位置設定工程と、
前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング工程と、
を備え、
前記歯面の前記被接触部は、前記歯面の前記所定位相の位置よりも前記歯面のうねり高さの高い位置である、ねじ状砥石のツルーイング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ状砥石のツルーイング装置及びツルーイング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじ状砥石を用いて各種歯車を加工する歯車研削盤においては、加工精度を高めるため、ツルーイング(又はドレッシング)によってねじ状砥石の歯面の修正が行なわれる(例えば、特許文献1-3参照)。ツルーイング(ドレッシング)は、例えば、円盤状のツルアを用いて行なわれる。通常、このような、ツルーイング(ドレッシング)を行なう際には、ねじ状砥石が停止した状態において、作業者がツルアの先端をねじ状砥石の歯面に接触させ、制御装置が接触した位置をツルーイング(ドレッシング)の開始点として記憶する。そして、制御装置が、ツルアを記憶した開始点まで移動させ開始点から予め設定した所定の深さだけ歯面の深さ方向(厚さ方向)に切り込ませて歯面のツルーイング(ドレッシング)を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-78186号公報
【文献】特許第4099258号公報
【文献】特許第4741544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ねじ状砥石の歯面は、周方向及び径方向において、うねり(振れ)を有している場合がある。このため、作業者がツルアの先端を停止したねじ状砥石の歯面に接触させた場合、接触した部分が、歯面のうねりの底部である場合もある。この場合、ツルーイング(ドレッシング)の開始点は、底部となり、ツルーイング(ドレッシング)を行なう際には、歯面の底部から開始することになる。このため、ツルアを所定量切り込んだときには、歯面の深さ方向に必要以上の深さ分、切り込んでしまい、ねじ状砥石の寿命を短くしてしまう虞がある。また、作業者が、自らの手によってツルアの先端をねじ状砥石の歯面に接触させ開始位置を検出する方法では、時間がかかりすぎる。
【0005】
本発明は、ツルーイング量を抑制し高寿命なねじ状砥石を得るとともに、ツルーイングにおける作業時間の短縮が可能なねじ状砥石のツルーイング装置及びツルーイング装置を用いたツルーイング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1.ツルーイング装置の第一の態様)
第一の態様に係るねじ状砥石のツルーイング装置は、円筒の外周に所定のねじれ角を有して形成された螺旋状の歯筋を備えるねじ状砥石を第一軸線周りに回転自在に支持する第一回転軸と、第二軸線周りに回転自在に支持され、前記第二軸線方向及び前記第二軸線と直交する方向に相対移動し、回転する前記ねじ状砥石の前記歯筋の外周面又は歯面に対してツルーイングを行なうツルアと、前記ツルアが移動して前記歯筋に接近し前記外周面又は前記歯面に接触した場合に接触検知信号を出力する接触検知部と、前記ツルア及び前記ねじ状砥石の少なくとも一方を所望の位置に移動させ、且つ回転を制御して前記ツルーイングを実施する制御装置と、を備える。
【0007】
そして、前記制御装置は、前記ねじ状砥石を連続回転させるとともに、前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の歯溝内の空間に進入させる歯溝進入処理部と、前記ねじ状砥石と前記ツルアとの前記第一軸線方向の相対移動速度に基づき設定された所定の回転速度以上で前記ねじ状砥石を連続回転させた状態において、前記歯溝に対し前記歯溝内に進入させた前記ツルアを前記第一軸線方向の少なくとも一方に相対移動させて前記歯面に接触させ、前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させる接触処理部と、前記ツルアが前記歯面に接触し前記接触検知信号が出力された時点における前記ツルアの位置である接触位置を記憶する接触位置記憶部と、前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定処理部と、前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング処理部と、を備え、前記所定の回転速度は、前記接触処理部による処理において、前記ツルアが前記ねじ状砥石の前記歯面におけるうねりの底部には接触しない速度であって前記底部以外に接触することを可能とする速度である。
【0008】
このように、接触処理部において、ねじ状砥石を所定の回転速度以上で連続回転させた状態で、ツルアを歯面に接近させやがて接触させる。このとき、ねじ状砥石の回転速度を所定の回転速度以上とすることで、ツルアが歯面に接触する際に、歯面が有するうねりのうちの底部ではなく、底部よりうねりの頂点に近い斜面の何れかの位置にツルアを接触させることができる。その後、ツルーイング処理部によって、ツルアが接触した歯面の位置(ツルーイング開始位置)からツルーイングを開始することで、底部からツルーイングを開始した場合と比べ、歯面におけるツルーイング量を少なくすることが出来る。これにより、ねじ状砥石は高寿命化する。また、制御装置の制御によってねじ状砥石の歯面におけるツルーイング開始位置を自動で検出するので、ツルーイング作業に要する時間が短縮できる。
【0009】
(2.ツルーイング装置の第二の態様)
また、第二の態様に係るねじ状砥石のツルーイング装置は、円筒の外周に所定のねじれ角を有して形成された螺旋状の歯筋を備えるねじ状砥石を第一軸線周りに回転自在に支持する第一回転軸と、第二軸線周りに回転自在に支持され、前記第二軸線方向及び前記第二軸線と直交する方向に相対移動し、回転する前記ねじ状砥石の前記歯筋の外周面又は歯面に対してツルーイングを行なうツルアと、前記ツルアが移動して前記歯筋に接近し前記外周面又は前記歯面に接触した場合に接触検知信号を出力する接触検知部と、前記ツルア及び前記ねじ状砥石の少なくとも一方を所望の位置に移動させ、且つ回転を制御して前記ツルーイングを実施する制御装置と、を備える。
【0010】
そして、前記制御装置は、前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の歯溝内の空間に進入させる歯溝進入処理部と、前記ねじ状砥石を所定の回転速度で連続回転させるとともに、前記歯溝内の空間に進入させた前記ツルアを前記歯面の所定位相の位置との間に0を超える所定の隙間を有した状態とした上で、前記ツルアが前記歯面の回転と同期して移動するよう前記ツルアを前記第一軸線方向に相対移動させながら、前記歯面の前記所定位相とは異なる位相における被接触部と接触させ前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させ、前記ツルアを前記第一軸線方向に移動させて前記ツルアと前記歯面の前記被接触部との間に0を越える前記所定の隙間を有した状態とする処理を、前記歯面の歯筋方向における所定の位相範囲内において、前記接触検知信号が出力されるたびに繰り返し行なう接触処理部と、前記接触処理部において、最後に前記接触検知信号が出力された時点における前記ツルアの位置である接触位置を記憶する接触位置記憶部と、前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定処理部と、前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング処理部と、を備え、前記歯面の前記被接触部は、前記歯面の前記所定位相の位置よりも前記歯面のうねり高さの高い位置である。
【0011】
このように、接触処理部において、ねじ状砥石を所定の回転速度で連続回転させるとともに、前記歯溝内の空間に進入させた前記ツルアを前記歯面との間に0を超える所定の隙間を有した状態とした上で、ツルアが歯面の回転と同期して移動するようツルアを第一軸線方向に相対移動させながら、歯面の被接触部と接触させ接触検知部によって接触検知信号を出力させ、前記ツルアを前記第一軸線方向に移動させて前記ツルアと前記歯面との間に0を越える前記所定の隙間を有した状態とする。そして、このような処理を、歯面の歯筋方向における所定の位相範囲内において、接触検知信号が出力されるたびに繰り返し行ない、所定の位相範囲内における歯面のうねりのうち最も高い位置を探索する。その後、ツルーイング処理部によって、ツルアが接触した歯面の位置のうちの一つをツルーイング開始位置として設定し、ツルーイング開始位置からツルーイングを開始することで、底部からツルーイングを開始した場合と比べ、歯面におけるツルーイング量を少なくすることが出来る。これにより、ねじ状砥石は高寿命化する。また、制御装置の制御によってねじ状砥石の歯面におけるツルーイング開始位置を自動で検出できるので、ツルーイング作業に要する時間が短縮できる。
【0012】
(3.ツルーイング方法の第一の態様)
また、ツルーイング方法の第一の態様は、上記第一の態様に記載のツルーイング装置を利用したねじ状砥石のツルーイング方法であって、前記ねじ状砥石を連続回転させるとともに、前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の前記歯溝内の空間に進入させる歯溝進入工程と、前記ねじ状砥石と前記ツルアとの前記第一軸線方向の相対移動速度に基づき設定された所定の回転速度以上で前記ねじ状砥石を連続回転させた状態において、前記歯溝に対し前記歯溝内に進入させた前記ツルアを前記第一軸線方向の少なくとも一方に相対移動させて前記歯面に接触させ、前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させるとともに前記接触検知信号が出力された時点における前記ツルアの位置である接触位置を前記接触位置記憶部に記憶させる接触工程と、前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定工程と、前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング工程と、を備え、前記所定の回転速度は、前記接触処理部による処理において、前記ツルアが前記ねじ状砥石の前記歯面におけるうねりの底部には接触しない速度であって前記底部以外に接触することを可能とする速度である。これにより、ツルーイング装置の第一の態様で得られた効果と同様の効果が得られる。
【0013】
(4.ツルーイング方法の第二の態様)
また、ツルーイング方法の第二の態様は、上記第二の態様に記載のツルーイング装置を利用したねじ状砥石のツルーイング方法であって、前記ツルアを前記第一軸線方向で隣接する前記ねじ状砥石の前記歯筋の間の前記歯溝内の空間に進入させる歯溝進入工程と、前記ねじ状砥石を前記所定の回転速度で連続回転させるとともに、前記歯溝内の空間に進入させた前記ツルアを前記歯面の所定位相の位置との間に0を超える前記所定の隙間を有した状態とした上で、前記ツルアが前記歯面の回転と同期して移動するよう前記ツルアを前記第一軸線方向に相対移動させながら、前記歯面の前記所定位相とは異なる位相における被接触部と接触させ前記接触検知部によって前記接触検知信号を出力させ、前記ツルアを前記第一軸線方向に移動させて前記ツルアと前記歯面の前記被接触部との間に0を越える前記所定の隙間を有した状態とする処理を前記歯面の前記歯筋方向における前記所定の位相範囲内において、前記接触検知信号が出力されるたびに繰り返し行なうとともに、前記接触検知信号が最後に出力された時点における前記ツルアの位置である接触位置を前記接触位置記憶部に記憶させる接触工程と、前記接触位置記憶部に記憶された前記接触位置に基づき、前記ツルアにより前記ツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定処理工程と、前記ツルーイングの実行時において、前記ツルアを前記ツルーイング開始位置に移動させたのち前記ツルーイングを実行するツルーイング工程と、を備え、前記歯面の前記被接触部は、前記歯面の前記所定位相の位置よりも前記歯面のうねり高さの高い位置である。これにより、ツルーイング装置の第二の態様で得られた効果と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態である歯車研削盤の概略図の正面図である。
図2図1の歯車研削盤の側面図である。
図3図1の歯車研削盤においてツルーイング行なう際の状態を示した正面図である。
図4図3において、ツルア52とねじ状砥石とを重ねた状態の拡大図である。
図5】第一実施形態に係るツルーイング装置の構成図である。
図6】外径検出工程を説明する図である。
図7】歯溝位置検出工程を説明する図である。
図8A】歯溝進入工程を説明する図である。
図8B】接触処理工程を説明する第一の図である。
図8C】接触処理工程を説明する第二の図である。
図9】接触処理工程におけるツルアの移動状態をツルアの軸方向位置と位相とのグラフによって示した図である。
図10】ツルーイングの全体工程のフローチャート1である。
図11】外径検出工程のフローチャート2である。
図12】歯溝位置検出工程のフローチャート3である。
図13】歯溝進入工程、接触工程、開始位置設定工程、ツルーイング工程のフローチャート4である。
図14】第二実施形態に係るツルーイング装置の構成図である。
図15A】第二実施形態に係る接触工程を説明する第一の図である。
図15B】第二実施形態に係る接触工程を説明する第二の図である。
図15C】第二実施形態に係る接触工程を説明する第三の図である。
図16】第二実施形態において第一実施形態と異なる部分である接触工程等のフローチャート5である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.第一実施形態>
(1-1.歯車研削盤10の構成)
本発明の第一実施形態に係るツルーイング装置50を備える歯車研削盤10の一例を図面に基づいて説明する。歯車研削盤10は、ベッド11と、可動テーブル12と、ボールシャフト13と、ボールナット14と、モータ15と、主軸台16と、心押台17と、ツルーイング装置50と、制御装置90と、を備える。
【0016】
図1の正面図に示すように、可動テーブル12は、ベッド11上に水平方向に移動可能に載置される。この可動テーブル12の下面にはボールナット14が固定される。ボールナット14はベッド11内に挿通されたボールシャフト13に螺合する。
【0017】
制御装置90が、ベッド11の一端に取付けられたモータ15を回転制御してボールシャフト13を正逆回転させる。これにより、可動テーブル12がボールナット14と共にベッド11上を図中左右方向(X方向)に進退移動する。可動テーブル12上には、主軸台16と心押台17とが対向するように、かつ可動テーブル12上を図中左右方向に移動可能に載置される。
【0018】
図2の側面図に示すように、可動テーブル12の後方(図中右方)には、コラム23が立設される。コラム23の前面には、回転台18が、水平軸44により回転可能に支持される。回転台18の前面には砥石台19が支持される。回転台18の背面には、コラム23に固定されたモータ45により軸線周りに回転するシャフト20が図2において上下方向に設けられる。
【0019】
シャフト20には、シャフト20と一体回転するウォーム21が固定される。ウォーム21は、水平軸44の外周に設けられるウォームホイル22と噛合する。これにより、モータ45を作動させ、ウォーム21を正逆回転させると、回転台18は水平軸44を回転中心として回動する。
【0020】
また、コラム23の下部には、ベッド11に固定されたモータ46により回転するボールシャフト47と、コラム23に固定されボールシャフト47と螺合するボールナット48とが設けられる。このような構成により制御装置90が、モータ46を作動させると、ボールシャフト47が回転し、コラム23が水平軸44と平行な前後方向(図2中、左右方向)に進退移動する。
【0021】
回転台18には、制御装置90が、回転台18に固定されるモータ41を回転制御することにより正逆回転するボールシャフト42と、砥石台19に固定されボールシャフト42と螺合するボールナット43が設けられる。このような構成により、制御装置90の制御によってボールシャフト42が回転されると砥石台19が上下方向(Y方向)に移動する。
【0022】
そして、上記の構成を有する歯車研削盤10により研削加工を行なう場合には、まず、図1に示すように、主軸台16のチャック28と心押台17との間に被研削物30(ワーク)の軸を水平に支持する。そして、制御装置90が、モータ15,モータ41及びモータ46を制御し、ねじ状砥石27と被研削物30とを相対移動させ、砥石台19のスピンドル26に装着されたねじ状砥石27を用いて被研削物30の研削加工を行なう。
【0023】
このとき、被研削物30が、ウォーム歯車である場合には、ねじ状砥石27の第一軸線51aは鉛直方向に向いている。そして、ねじ状砥石27とウォーム歯車(被研削物30)と、をウォーム歯車と噛合する相手歯車との関係と同一の関係となるように回転させることにより、ウォーム歯車の研削加工を行なう。なお、図4に示すように、本実施形態におけるねじ状砥石27は、円筒の外周に所定のねじれ角γ°を有して形成された螺旋状の歯筋27aを備える。
【0024】
なお、上記において、各モータはそれぞれエンコーダを備え、各モータが制御する可動テーブル12,コラム23,回転台18,砥石台19及びねじ状砥石27等の絶対位置を検出する。検出される各絶対位置及び絶対位相(角度)は、それぞれ制御装置90に送信され記憶装置56に各時刻毎に対応付けて記憶される。
【0025】
(1-2.ツルーイング装置50)
ツルーイング装置50について、主に図5に示す模式図に基づき説明する。ツルーイング装置50は、ねじ状砥石27の歯筋27aの外周面27a1(歯先)及び歯面27a2をツルーイングする装置である(図5参照)。
【0026】
図5に示すように、ツルーイング装置50は、第一回転軸51と、ツルア52と、AEセンサ53(接触検知部に相当)と、制御装置54と、回転駆動装置と、を備える。制御装置54は、制御装置90の一部である。また、制御装置54は、各駆動回路を制御する処理装置55と、記憶装置56及び図略の表示装置,入力装置等を備える。
【0027】
記憶装置56には、被研削物30の研削プログラム,ねじ状砥石27のツルーイングプログラム等が記憶されている。記憶装置56は、図示しないが各処理部,AEセンサ53等に接続されている。また、記憶装置56には、入力装置(図略)によって種々のデータが入力されるようになっている。入力装置には、データの入力等を行なうためのキーボード、データの表示を行なうCRT等の表示装置が備えられる。
【0028】
回転駆動装置は、駆動回路及びモータ511,57からなり、第一回転軸51及びツルア52を、各モータ511,57を回転させることにより各軸線周りに回転駆動させる。回転駆動装置は、処理装置55の各処理部によって制御される。また、モータ511はエンコーダ512を備え、モータ511が制御する第一回転軸51の絶対角度を検出する。検出される各絶対位置及び絶対位相(角度)は、それぞれ記憶装置56に送信され、記憶装置56に時間毎に対応付けて記憶される。
【0029】
本実施形態において、第一回転軸51は、上述した砥石台19のスピンドル26である。第一回転軸51(スピンドル26)は、砥石台19の上面に固定されたモータ511によって回転駆動される。また、第一回転軸51は、ねじ状砥石27を第一回転軸51の軸線である第一軸線51a周りに回転自在に支持する。そして、図1において、第一回転軸51は、鉛直方向に向いて配置されている。
【0030】
しかし、ツルーイング装置50が作動され、ツルア52によって、ねじ状砥石27の歯面27a2がツルーイングされる際には、処理装置55の制御によって、モータ45(図2参照)が作動され、ウォーム21及びウォームホイル22を介して、回転台18が水平軸44を回転中心として回動する。これにより、第一回転軸51は、図3に示すように、第一軸線51aが、鉛直方向に対し傾斜角γ°を有した状態で配置される。
【0031】
ツルア52は、可動テーブル12の後部上面において、鉛直方向に立設された長尺状の支持部材521に回転自在に支持される。具体的には、ツルア52は、支持部材521の上端から突出し回転自在に設けられた第二回転軸522に回転自在に支持される。第二回転軸522は、軸線である第二軸線522aが鉛直方向に向くよう配置される。そして、第二回転軸522に、支持部材521に内蔵されるモータ57が連結され、モータ57の回転作動によって、ツルア52が回転する。モータ57は、処理装置55と、駆動回路を介して接続され、処理装置55によって回転制御される。
【0032】
上記より、第二回転軸522は、ツルーイング時において、第一軸線51aに対しねじ状砥石27の歯筋27aが有する所定のねじれ角γ°と等しい角度であるγ°だけ相対的に傾斜する(図3参照)。これにより、第二回転軸522の第二軸線522aとねじ状砥石27の歯筋27aとはツルア52とねじ状砥石27とが接触する箇所において、ほぼ直交する(図4参照)。ただし、上記態様に限らず、第一軸線51aに対する第二軸線522aの相対傾斜角度は、歯筋27aのねじれ角γ°と等しくなくても良い。相対傾斜角度は、ねじれ角γ°を中心として、任意にγ°±α°で設定してもよい。また、ねじれ角γ°とは関係なく任意の値で設定してもよい。
【0033】
また、ツルア52は、円盤状の部材である。ツルア52は、第二軸線522a周りに水平面内で回転するよう、第二軸線522aを備える第二回転軸522に回転自在に支持される。ツルア52の回転軸と第二軸線522aとは同軸に配置される。
【0034】
図4に示すように、円盤状に形成されるツルア52の歯先523の断面形状は鋭角であり、上下面には、ねじ状砥石27の歯面27a2と接触する接触部524が形成される。歯先523と接触部524の全表面には、ダイヤモンド細粒が均一に付着されている。そして、ねじ状砥石27の歯筋27aの外周面27a1(歯先)又は歯面27a2に対してツルア52がツルーイングを行なう際、ツルア52は、ねじ状砥石27に対し、第二軸線522a方向及び第二軸線522aと直交する方向の成分を有して相対移動しながら、ねじ状砥石27の歯面27a2に対しツルーイングを行なう。
【0035】
実際には、本実施形態では、ねじ状砥石27が、図2における左右方向(前後方向(Z方向))及び上下方向(Y方向)に移動するとともに、ツルア52が図1における左右方向(X方向)に移動可能である。これにより、ツルア52と、ねじ状砥石27とが第一軸線51aとZ方向に平行な線上を相対移動し、ツルア52がねじ状砥石27の歯面27a2に対し所望のツルーイングを行なう。
【0036】
図1に示すように、AEセンサ53(接触検知部)は、ツルア52の支持部材521の一部に固定される。AEセンサ53は、ねじ状砥石27に対してツルア52が相対移動し、ねじ状砥石27の歯筋27aの外周面27a1又は歯面27a2に接触した場合に接触を検知する。そして、AEセンサ53は、接触検知信号S1を出力し、処理装置55(制御装置54)に送信する。なお、AEセンサ53は、ねじ状砥石27側に固定してもよい。
【0037】
AEセンサ53は、ツルア52とねじ状砥石27とが接触した際に発生するねじ状砥石27の破壊音波等の弾性波(アコースティック・エミッション(AE))を検知する公知のセンサである。公知であるため、これ以上の詳細な説明については省略する。
【0038】
上述したように、制御装置54は、処理装置55と記憶装置56(接触位置記憶部55E)を備える。そして、処理装置55が、外径検出処理部55Aと、歯溝位置検出処理部55Bと、歯溝進入処理部55Cと、接触処理部55Dと、開始位置設定処理部55Fと、ツルーイング処理部55Gと、を備える。なお、本実施形態では、主に歯溝進入処理部55C,接触処理部55D,及び開始位置設定処理部55Fの処理によって、ツルーイング開始時における、ねじ状砥石27の歯面27a2上のツルーイング開始位置を設定するものである。
【0039】
外径検出処理部55Aは、自動でねじ状砥石27の外周面27a1の外径のうち最大径φDmaxを検出する処理部である。詳細については後に述べるが、外径検出処理部55Aは、ねじ状砥石27を、所定の回転速度で第一軸線51a周りに回転させながら、ツルア52に向かう方向である前後方向(Z方向)に移動させる。そして、第一軸線51aとZ方向に平行な線上でツルア52の歯先523又は接触部524をねじ状砥石27の外周面27a1に接触させ、外周面27a1の最大径φDmaxを検出する。このとき所定の回転速度は、ツルア52が外周面27a1に向かってZ方向に相対移動する際の速度に基づき設定される。つまり、所定の回転速度は、外周面27a1がツルア52に接近していくときに、外周面27a1のうち最大外径部(近傍含む)が最初にツルア52と接触することを可能とする回転速度に設定される。
【0040】
歯溝位置検出処理部55Bは、ねじ状砥石27の歯溝27cの位置を大まかに検出する処理部である。ここでいう歯溝27cとは、第一軸線51a方向で隣接するねじ状砥石27の二つの歯筋27aの間の空間のことをいう。従って、歯溝27cの第一軸線51a方向両側には、二つの歯面27a2(第一歯面),27a2(第二歯面)が、対向して配置されるとともに、底部には、歯底27a3を備える。第一歯面27a2及び第二歯面27a2は、後の作動の説明において使用する。
【0041】
なお、本実施形態では、ねじ状砥石27の歯筋27aは、一条の歯筋によって形成されているものとする。図3では、三条の各歯筋27aA,27aB,27aCによって形成されているものとする。このように形成されるねじ状砥石27に対し、歯溝27cの位置を大まかに求めるためには、公知の方法として、以下に示す方法がある。その方法では、ねじ状砥石27を軸線方向から見た図7に示すように、連続回転していないねじ状砥石27に対し、回転方向Bにおける三箇所の回転位相D,E,Fに対して、ツルア52をそれぞれ同じ基準位置から歯溝27cに接近させる。そして、各位相毎に接触したツルア52の位置を記憶し、最も基準位置からの接触タイミング(接触までの時間)が遅かった位相、つまり、ツルア52が最も深く入り込んだ位相の位置を歯溝とするものである。
【0042】
このとき、三箇所の各回転位相D,E,Fにおいて、回転方向Bにおける回転位相Dと回転位相Eとの間の角度、及び回転位相Eと回転位相Fとの間の角度は、歯筋が三条である場合、それぞれ、少なくとも360°/条数/3で計算した40°あればよい。つまり、歯筋が三条である場合、各位相間の角度が40°であれば、大まかな歯溝の位置は求められる。また、歯筋が一条である場合、各位相間の角度が120°であれば、大まかな歯溝の位置は求められる。例えば、図7においては、回転位相Fにおいて最もツルア52の接触タイミングが遅くなる。そこで、回転位相Fの位置に歯溝27cの中心があると仮定して以降の処理を進めるものである。
【0043】
なお、上記の態様に限らず、さらに精度よく歯溝27cの中心を求めたい場合には次に示す方法を用いてもよい。つまり、上記で測定されたねじ状砥石27の回転位相Fにおいて、ねじ状砥石27をツルア52に接近させ、ツルア52をねじ状砥石27の歯溝27c内に進入させる。その後、ねじ状砥石27を、第一軸線51aを中心として順方向に回転させ、ツルア52が一方の歯面27a2(第一歯面)に接触したときの回転角度θ1(図略)を記憶する。
【0044】
次いで、ねじ状砥石27を、第一軸線51aを中心として逆方向に回転させ、ツルア52が他方の歯面27a2(第二歯面)に接触したときの回転角度θ2(図略)を記憶する。この回転角度θ1と回転角度θ2との平均値θm(θm=(θ1+θ2)/2)を求め、ねじ状砥石27における歯溝27cの中心位置としてもよい。これにより、高い精度で歯溝27cの位置が求められるので、下記で説明する歯溝進入処理部55Cにおいて、ツルア52を歯溝27c内の空間に進入させる際、ツルア52が歯溝27cの歯面27a2に衝突し、その後の処理が出来なくなる虞はなくなる。
【0045】
歯溝進入処理部55Cは、ねじ状砥石27を所定の回転速度以上の速度である回転速度Vθ1で連続回転させながら、相対的にツルア52を歯溝27c内の空間に進入させる処理部である。このとき、歯溝27cの位置は、歯溝位置検出処理部55Bにおいて歯溝27cの中心があると仮定した位置データ(回転位相F)に基づく。また、径方向において歯溝27c内に進入させる深さは、ツルア52の歯先523がねじ状砥石27のPCD(基準ピッチ円径)位置に達するまでとする(図8A、二点鎖線参照)。なお、PCDは、外径検出処理部55Aによって検出した最大径φDmaxを基準として求める。ただし、これはあくまで一態様を示したものであり、ツルア52を歯溝27c内に進入させる深さは、任意に設定しても良い。また、PCDについては、公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
接触処理部55Dは、ねじ状砥石27を回転速度Vθ1で連続回転させた状態において、歯溝27c内に進入させたツルア52を、歯溝27cに対し第一軸線51a方向の少なくとも一方に相対移動させて歯面27a2に接触させ、AEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させる処理部である(図8B参照)。本実施形態では、ツルア52を図8B図8Cに示すように、ツルア52とねじ状砥石27とを相対的にY方向に移動させることにより、第一軸線51a方向の両側に相対移動させる態様にて説明する。
【0047】
なお、ねじ状砥石27の回転速度Vθ1を決定するとき、基準となる「所定の回転速度」とは、ツルア52が歯面27a2に向かって相対移動する際の速度に基づき設定される。つまり、所定の回転速度は、ツルア52が歯面27a2に相対的に接近していくときに、歯面27a2が有するうねり(図8B図8Cに示す頂点a,中間位置b,底部c参照)のうちの頂点a(近傍含む)が最初にツルア52と接触し、少なくともうねりの底部cには接触しないことを可能とする回転速度である。
【0048】
また、上記において、歯溝27cに対し、ツルア52を第一軸線51a方向に相対移動させるには、「ねじ状砥石27に対するツルアの相対送り速度Vy/ねじ状砥石27の回転速度Vθ」を、ツルア52と歯溝27cとが同期して移動している状態に対し、少し大きくするか少し小さくするよう制御すればよい。これにより、図9のグラフに示すように、ツルア52は、歯溝27cに対し、第一軸線51a方向に相対移動し、やがて歯面27a2に接触する(点j、点k参照)。
【0049】
なお、図9のグラフは、歯溝27c及び各歯面27a2を展開した模式図である。図9のグラフは、横軸を歯溝27cの位相とし、縦軸をツルア52の第一軸線方向位置としたものである。正の傾斜を有する図9のM部に示すように、Vy/Vθを大きくするとツルア52は、上方に示す歯溝27cの歯面27a2に接近しやがてj点で接触する。また、負の傾斜を有するN部に示すように、j点で接触したのちVy/Vθを小さくすると、ツルア52は、下方に示す歯面27a2に接近しやがてk点で接触する。なお、グラフ中の破線は、ツルア52と歯溝27cとが同期して移動している状態を示している。
【0050】
接触位置記憶部55Eは、ツルア52がねじ状砥石27に対し、第一軸線51a方向に相対移動して歯面27a2に接触し、接触検知信号S1が出力された時点におけるねじ状砥石27の回転位相θ、ねじ状砥石27の第一軸線51a方向(Y方向)における位置、及び前後方向(Z方向)における位置等を、ツルア52の接触位置Poとして記憶する記憶部である。
【0051】
開始位置設定処理部55Fは、接触位置記憶部55Eに記憶された接触位置Poに基づき、ツルア52によりツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置P1を設定する処理部である。つまり、ツルーイング開始位置P1は、歯面27a2が有するうねりのうちの頂点a(近傍含む)位置に相当する位置である。
ツルーイング処理部55Gは、ツルア52をツルーイング開始位置P1に移動させたのちツルーイングを実行する処理部である。詳細については、作動(方法)の説明において行なう。
【0052】
(1-3.ツルーイングの方法)
次に、ツルーイングの方法について、主に図10図13のフローチャート1~4に基づき説明する。ツルーイングを実行するため、まず、図3に示すように、回転台18を回動させ、ねじ状砥石27の第一軸線51aを、鉛直方向に配置されたツルア52の第二軸線522aを含む一平面(本実施形態では、紙面に垂直な面とする)に対してねじ状砥石27の歯筋27aのねじれ角γだけ傾ける。このようにねじ状砥石27の第一軸線51aを傾けることにより、第一軸線51aとZ方向に平行な線状において、ねじ状砥石27の歯筋27aは水平面に対して平行となる。
【0053】
この状態で、可動テーブル12を図2のX方向における右方へ移動させるとともに、ねじ状砥石27を前方に移動させ、ツルア52がねじ状砥石27の歯溝27cに当たる直前で停止させる。このときのねじ状砥石27とツルア52の位置関係を正面から見た状態を図4に示す。図4に示すように、ツルア52の第二軸線522aに対して、ねじ状砥石27の第一軸線51aは、ねじ状砥石27の歯筋27aのねじれ角γだけ傾斜している。
【0054】
このような状態で、ツルーイングを開始する。ツルーイングの全体工程としては、図10のフローチャート1に示すように、外径検出工程S10と、歯溝位置検出工程S20と、歯溝進入工程S30と、接触工程S40と、開始位置設定工程S50と、ツルーイング工程S60と、を備える。
【0055】
(1-3-1.外径検出工程S10)
まず、外径検出処理部55Aによって処理される外径検出工程S10について、図11のフローチャート2に基づき説明する。外径検出工程S10は、上述したとおり、自動でねじ状砥石27の外周面27a1の外径のうち最大径φDmaxを検出する工程である。外径検出工程S10は、工程S101~工程S107を備える。
【0056】
工程S101では、ねじ状砥石27を所定の回転速度Vθ2で第一軸線51a周りに回転させる。このとき、所定の回転速度Vθ2は、ツルア52が外周面27a1に接近していくときに、外周面27a1(歯先)のうち最大外径部(近傍含む)が最初にツルア52と接触することを可能とする回転速度である。
【0057】
工程S102では、コラム23、即ちねじ状砥石27を予め設定した所定の速度でツルア52の方向(前後方向(Z方向)における前方向)に前進させる。つまり、ツルア52が、ねじ状砥石27に対して所定の前進速度で相対移動し接近する(図6参照)。このとき、所定の前進速度は、ねじ状砥石27の所定の回転速度Vθ2に対応する速度であり、外周面27a1(歯先)のうち最大外径部(近傍含む)と最初に接触可能な速度である。最大外径部に接触するには、回転速度Vθを大きくし、前進速度を小さくする。
【0058】
次に、工程S103では、ツルア52が、外周面27a1(歯先)の最大外径部に接触し、AEセンサ53が接触検知信号S1を出力したか否かの判定が行われる。接触検知信号S1が出力され、処理装置55(制御装置54)に送信されれば工程S104に移動する。接触検知信号S1が出力されていなければ、工程S103において接触検知信号S1の出力が確認されるまで、工程S102及び工程S103の処理を繰り返し実行する。
【0059】
工程S104では、図略の表示装置に表示されたねじ状砥石27の絶対位置を図略の入力装置を用いて入力し記憶装置56に記憶させる。工程S105(外径検出工程S10)では、ねじ状砥石27の各絶対位置及び記憶部が有するツルア52の直径(半径)データに基づいて、接触検知信号S1が検出された時点における外周面27a1(歯先)の外径(最大径φDmax)が演算される。
【0060】
工程S106では、ねじ状砥石27が、ツルア52と完全に離間する位置まで、図2における右方向に移動(後退)する。
その後、工程S107(外径検出工程S10)で、ねじ状砥石27の回転が停止される。
【0061】
(1-3-2.歯溝位置検出工程S20)
次に、歯溝位置検出処理部55Bにより処理される歯溝位置検出工程S20について説明する。歯溝位置検出工程S20は、ねじ状砥石27の歯溝27cの位相の位置を大まかに検出する工程である。内容については、上記で説明したとおりである。歯溝位置検出工程S20は、工程S201~工程S216を備える。
【0062】
工程S201では、ねじ状砥石27を第一軸線51a周りに回転させ、回転位相がDとなる位置に位置決めする(図7参照)。
工程S202では、ねじ状砥石27をツルア52の方向に前進させる。
【0063】
工程S203では、ツルア52が、歯溝27c内の何れかの部位に接触したことにより、AEセンサ53が接触検知信号S1を出力したか否かの判定が行われる。接触検知信号S1が出力され、処理装置55(制御装置54)に送信されれば工程S204に移動する。接触検知信号S1が出力されていなければ、工程S203において接触検知信号S1の出力が確認されるまで、工程S202及び工程S203の処理が繰り返し実行される。
【0064】
工程S204では、接触検知信号S1が出力された時点において図略の表示装置に表示されたねじ状砥石27の絶対位置Zaが記憶装置56に入力され記憶される。このとき、絶対位置Zaは、基準位置からのねじ状砥石27の移動距離が大きくなるほど大きくなる値である。つまり、ツルア52が歯溝27c内に深く進入するほど大きくなる値である。以降で説明する絶対位置Zb,Zcも同様である。
工程S205では、ねじ状砥石27が後退して後方に移動し、ツルア52を歯溝27cから離間させる。
【0065】
次に、工程S206~工程S210(歯溝位置検出工程S20)の処理を行なう。工程S206~工程S210は、工程S201~工程S205にそれぞれ整列順に対応し、同様の処理を行なうものである。工程S201~工程S205と異なる点としては、工程S201においては、ねじ状砥石27を回転位相Dに位置決めしたが、工程S206では、ねじ状砥石27を回転位相Eに位置決めする。また、工程S204においては、ねじ状砥石27の絶対位置Zaが記憶装置56に入力され記憶されたが、工程S204に対応する工程S209においては、回転位相Eにおけるねじ状砥石27の絶対位置Zbが記憶装置56に入力され記憶される。
【0066】
さらに、次に、工程S211~工程S215の処理を行なう。工程S211~工程S215は、(工程S201~工程S205)及び(工程S206~工程S210)にそれぞれ整列順に対応し、同様の処理を行なうものである。
【0067】
工程S201,S206においては、ねじ状砥石27を回転位相D,Eに位置決めしたが、工程S211では、ねじ状砥石27を回転位相Fに位置決めする点が異なる。また、工程S204,S209においては、ねじ状砥石27の絶対位置Za,Zbが記憶装置56に入力され記憶されたが、工程S204,S209に対応する工程S214においては、回転位相Fにおけるねじ状砥石27の絶対位置Zcが記憶装置56に入力され記憶される。
【0068】
工程S216では、記憶装置56に記憶された絶対位置Za,Zb,Zcのうち、最も大きな値を選択し、記憶装置56に記憶させる。本実施形態においては、回転位相Fにおける絶対位置Zcが選択される。つまり、歯溝27cは、回転位相Fの位置に歯底27a3又は歯底27a3近傍の歯面27a2を有するものと仮定する。
【0069】
(1-3-3.歯溝進入工程S30)
次に、図13のフローチャート4に基づき、歯溝進入工程S30,接触工程S40,開始位置設定工程S50及びツルーイング工程S60について説明する。歯溝進入処理部55Cにより処理される歯溝進入工程S30は、上述した様に、ねじ状砥石27に対してツルア52を相対移動させ、ツルア52を歯溝27c内の空間に進入させる工程である。詳細には、ツルア52の歯先523が、ねじ状砥石27のピッチ円径(PCD)R1のピッチ円上に位置するよう歯溝27c内に進入させる工程である。歯溝進入工程S30は、工程S301及び工程S302を備える。
【0070】
工程S301(歯溝進入工程S30)では、ねじ状砥石27を回転速度Vθ1で連続回転させる。そして、ねじ状砥石27を上下方向に移動速度Vy1で移動させるとともに、所定の移動速度Vz1で前進させる。これにより、ツルア52を第一軸線51a方向で隣接するねじ状砥石27の歯筋27aの間の歯溝27c内の空間に進入させる(図8A参照)。このとき、ツルア52を進入させる歯溝27cの位置は、歯溝位置検出処理部55Bにおいて歯溝27cの中心があるとされた回転位相Fの位置である。
【0071】
工程S302(歯溝進入工程S30)では、ねじ状砥石27の前方(図2において左方向)への移動速度Vz1をツルア52の歯先523がPCDに到達した位置で0にする。これにより、ツルア52の歯先523が歯溝27c内においてPCD上に位置する。
【0072】
(1-3-4.接触工程S40)
接触処理部55Dにより処理される接触工程S40は、ねじ状砥石27を所定の回転速度以上の回転速度である回転速度Vθ1で連続回転させた状態において、歯溝27c内に歯先を進入させたツルア52を歯溝27cに対し第一軸線51a方向の少なくとも一方に相対移動させて歯面27a2に接触させ、AEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号を出力させる工程である。接触工程S40は、工程S401~工程S407を備える。
【0073】
工程S401では、上下方向へのねじ状砥石27の移動速度Vy1を一定にした状態で、ねじ状砥石27の回転速度Vθ1を回転速度Vθ1より小さな回転速度Vθ2(Vθ2<Vθ1)に減速する。これにより、上述したように、ツルア52は、歯溝27cに対し、第一軸線51a方向に相対移動し、やがて歯面27a2に接触する(図9、点j参照)。なお、このとき、ねじ状砥石27の回転速度Vθ1及び移動速度Vy1という条件の下において、歯溝27c内に進入した当初においてツルア52は、第一軸線51a方向において歯溝27cと同期しているものとする。
【0074】
つまり、歯溝27c内に進入した当初、ツルア52は、進入した歯溝27c内において対向する歯面27a2(第一歯面)及び歯面27a2(第二歯面)と接触することなく第一軸線51a方向において相対移動する。そして、回転速度Vθ1を回転速度Vθ1より小さな回転速度Vθ2(Vθ2<Vθ1)に減速することにより、歯溝27c内のツルア52は、歯溝27cに対して第一軸線51a方向における一方側に向かって相対移動する。ただし、この態様に限らず、歯溝27cに進入した当初から同期していなくても良い。
【0075】
工程S402(接触工程S40)では、ツルア52が、歯面27a2(第一歯面)に接触し、AEセンサ53が接触検知信号S1を出力したか否かの判定が行われる。接触検知信号S1が出力され、処理装置55(制御装置54)に送信されれば工程S402に移動する。接触検知信号S1が出力されていなければ、工程S402において接触検知信号S1の出力が確認されるまで、工程S401及び工程S402の処理が繰り返し実行される。
【0076】
工程S403(接触工程S40)では、ツルア52が一方の歯面27a2に接触して接触検知信号S1が出力された時点におけるねじ状砥石27の位置である接触位置Poを接触位置記憶部55E(記憶装置56)に記憶させる。接触位置Poとして、歯高さ方向における接触位置と、歯厚方向における接触位置の二つがある。
【0077】
工程S404(接触工程S40)では、上下方向への移動速度Vy1を一定にした状態で、ねじ状砥石27の回転速度Vθ2を回転速度Vθ1より大きな回転速度Vθ3(Vθ2<Vθ1<Vθ3)に増速する。これにより、歯溝27c内のツルア52は、歯溝27cに対して第一軸線51a方向における他方側に向かって相対移動を開始する(図8C参照)。そして、ツルア52は、やがて他方側の歯面27a2に接触する(図9、点k参照)。
【0078】
工程S405(接触工程S40)では、ツルア52が、歯面27a2(第二歯面)に接触してAEセンサ53が接触検知信号S1を出力したか否かの判定が行われる。接触検知信号S1が出力され、処理装置55(制御装置54)に送信されれば工程S406に移動する。接触検知信号S1が出力されていなければ、工程S405において接触検知信号S1の出力が確認されるまで、工程S404及び工程S405の処理が繰り返し実行される。
【0079】
工程S406(接触工程S40)では、ツルア52が他方の歯面27a2に接触して接触検知信号S1が出力された時点におけるねじ状砥石27の位置である接触位置Poを接触位置記憶部55Eに記憶する。接触位置Poとして、歯高さ方向における接触位置と、歯厚方向における接触位置の二つがある。
【0080】
工程S407(接触工程S40)では、再び、ねじ状砥石27の回転速度Vθ3をVθ3より小さな回転速度とし、ツルア52を歯面27a2(第二歯面)から相対的に離間させたのち、ねじ状砥石27を後退させて、ツルア52を歯溝27cから相対的に離間させる。
【0081】
(1-3-5.開始位置設定工程S50)
開始位置設定工程S50(開始位置設定処理部55F)では、歯面27a2の理論的な断面形状データ(複数の歯高さ方向の位置と歯厚方向の位置とのペア(対)で表される)と、接触位置記憶部55Eに記憶された一方の歯面27a2の接触位置Po及び他方の歯面27a2の接触位置Poに基づき、ツルア52によりツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を対向する二つの歯面27a2,27a2(第一,第二歯面)に対して設定する。接触位置Poの歯厚方向の接触位置が、理論的な断面形状データの歯厚方向の位置に比べて歯溝側にあるときは、歯面27a2の理論的な断面形状データは、ねじ状砥石27の外径側に設定され、逆に歯溝と反対側にあるときは、ねじ状砥石27の内径側に設定される。
【0082】
(1-3-6.ツルーイング工程S60)
そして、ツルーイング工程S60では、対向する二つの歯面27a2,27a2(第一,第二歯面)に対してねじ状砥石27及びツルア52をツルーイング開始位置に相対移動させたのちツルーイングを順次実行する。ツルーイングは、歯高さ方向の位置を変えて繰り返し行われる。歯高さ方向の位置を変えてツルーイングするときは、接触位置Poに応じて径方向に設定した歯面27a2の理論的な断面形状データが用いられる。このとき、ツルーイング開始位置においては、ツルア52の歯先523が当たる歯面27a2の位置は、歯面27a2が有するうねりにおいて、底部とは異なる何れかの位置である。このため、歯面27a2に対し、うねりの底部からツルーイングを開始した場合と比べ、歯面27a2におけるツルーイングによる除去量を抑制することが出来る。また、本実施形態では、制御装置54の制御によってねじ状砥石27の歯面27a2をツルーイングするためのツルーイング開始位置を自動で設定するので、ツルーイング作業に要する時間が短縮できる。
【0083】
なお、上記実施形態においては、接触工程S40~ツルーイング工程S60において、ツルア52は、歯面27a2(第一歯面)及び対向する歯面27a2(第二歯面)の両方の歯面27a2に対して発明を適用しツルーイングを実行するものとした。しかしながら、この態様には限らない。接触工程S40~ツルーイング工程S60においては、歯面27a2(第一歯面)及び対向する歯面27a2(第二歯面)のうち少なくとも一方の歯面27a2に対して、発明を適用するだけでも良い。このとき、他方の歯面27a2に対するツルーイングについては、発明を適用した一方の歯面27a2のデータに基づいて、歯面27a2のうねりの深さのレベルを予測し、予測したうねりの頂点位置をツルーイング開始位置として設定し、ツルーイングを実施しても良い。このとき、歯面27a2の理論的な断面形状データ(複数の歯高さ方向の位置と歯厚方向の位置のペアで表される)を用いる。
【0084】
<2.第二実施形態>
(2-1.歯車研削盤110の構成)
次に、第二実施形態に係るツルーイング装置150(図1図3参照)を備える歯車研削盤110の一例を図に基づいて説明する。ただし、歯車研削盤110は、第一実施形態の歯車研削盤10に対して、ツルーイング装置150の制御装置154のみが異なる。よって異なる部分についてのみ詳細に説明し、同様部分については説明を省略する。
【0085】
図14に示すように、ツルーイング装置150の制御装置154は処理装置155と記憶装置156(接触位置記憶部155E)と、を備える。そして、処理装置155が、外径検出処理部55Aと、歯溝位置検出処理部55Bと、歯溝進入処理部55Cと、接触処理部155Dと、開始位置設定処理部155Fと、ツルーイング処理部55Gと、を備える。なお、本実施形態では、歯溝進入処理部55C,接触処理部155D,及び開始位置設定処理部155Fの処理によって、ツルーイング開始時における、ねじ状砥石27の歯面27a2上のツルーイング開始位置を設定する。
【0086】
処理装置155において、接触処理部155Dは、ねじ状砥石27を所定の回転速度で連続回転させるとともに、歯溝27c内の空間に進入させたツルア52を歯面27a2との間に0を超える所定の隙間d1(後に説明する)を有した状態とする。そして、その状態で、ツルア52が歯面27a2の回転と同期して移動するようツルア52を第一軸線51a方向に相対移動させながら、歯面27a2の被接触部と接触させAEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させ、ツルア52を第一軸線51a方向に移動させてツルア52を歯面27a2との間に所定の隙間d1を有した状態とする処理を、歯面27a2の前記歯筋方向における所定の位相範囲内において、接触検知信号S1が出力されるたびに繰り返し行なう。
【0087】
詳細には、接触処理部155Dは、第一接触処理部D1,第二接触処理部D2,第三接触処理部D3,及び第四接触処理部D4を備える。第一接触処理部D1は、図15Aに示すように、歯溝27c内の空間に進入させたツルア52を、歯溝27cに対し第一軸線51a方向の少なくとも一方に相対移動させて歯面27a2の被接触部Q1と接触させAEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させる処理を行なう。
【0088】
第二接触処理部D2は、第一接触処理部D1によって、ツルア52が被接触部Q1と接触したのち、被接触部Q1との間に0を超える所定の隙間d1を有するよう、ツルア52を被接触部Q1から離間する第一軸線51a方向に相対移動させる処理を行なう(図15B参照)。
【0089】
第三接触処理部D3は、ツルア52が被接触部Q1との間に所定の隙間d1を有した状態で歯面27a2の回転と同期して移動するようツルア52を第一軸線51a方向に相対移動させ(図15C参照)、歯面27a2の歯筋27a方向における所定の位相範囲内において、被接触部Q1よりも歯厚の被接触部Q2(図略)が存在する場合に、歯厚の被接触部Q2に接触させ、AEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させる処理を行なう。
【0090】
第四接触処理部D4は、第三接触処理部D3において、歯厚の被接触部Q2が存在した場合に、第二接触処理部D2における処理と第三接触処理部D3における処理と、を所定の位相範囲内において、繰り返し実施する処理部である。以降の説明からは図16のフローチャートを用いて説明する。なお、外径検出工程S10,歯溝位置検出工程S20及び歯溝進入工程S30は、図11図12図13のフローチャート2,フローチャート3及びフローチャート4の工程S301,S302と同様であるので、説明は省略する。
【0091】
(2-2.ツルーイング方法)
ツルア52が歯溝27c内に進入した状態からのツルーイング方法の作用について、フローチャート5に基づき説明する。第一接触処理部D1により処理される第一接触工程S141(接触工程S140)における工程S141A(フローチャート4の工程S401に相当)では、ねじ状砥石27の回転速度Vθ1を回転速度Vθ1より小さな回転速度Vθ2(Vθ2<Vθ1)に減速する。
【0092】
第一接触工程S141(接触工程S140)における工程S141B(フローチャート4の工程S402に相当)では、ツルア52が、歯面27a2(第一歯面)の被接触部Q1に接触し(図15A参照)、AEセンサ53が接触検知信号S1を出力したか否かの判定が行われる。接触検知信号S1が出力され、処理装置155(制御装置154)に送信されれば工程S141C(フローチャート4の工程S403に相当)に移動する。接触検知信号S1が出力されていなければ、工程S141B(フローチャート4の工程S402に相当)において接触検知信号S1の出力が確認されるまで、工程S141A及び工程S141Bの処理が繰り返し実行される。
【0093】
第一接触工程S141(接触工程S140)における工程S141C(フローチャート4の工程S403に相当)では、接触検知信号S1が出力された時点におけるねじ状砥石27の位置である接触位置Poを接触位置記憶部155Eに記憶する。
【0094】
第二接触処理部D2により処理される第二接触工程S142(接触工程S140)では、ねじ状砥石27の上下方向への移動速度Vy1を一定にした状態で、ねじ状砥石27の回転速度Vθ2を回転速度Vθ1より大きな回転速度Vθ3に増速する。これにより、歯溝27c内のツルア52を、歯溝27cに対して第一軸線51a方向における他方側に向かって、歯面27a2との間に隙間d1を有するまで相対移動させる(図15B参照)。なお、所定の隙間d1は、任意に設定可能であるが、数ミクロン程度であることが好ましい。
【0095】
第三接触処理部D3により処理される第三接触工程S143(接触工程S140)における工程S143Aでは、ツルア52と歯面27a2との間に所定の隙間d1を有した状態で、ねじ状砥石27の回転速度Vθ3を再び減速する。このとき減速させる回転速度は、ツルア52と、歯溝27c(つまり、歯面27a2)と、が同期して移動可能な回転速度である。
【0096】
第三接触工程S143(接触工程S140)における工程S143Bでは、歯面27a2の歯筋27a方向における所定の位相範囲内において、ツルア52が、歯面27a2(第一歯面)に接触し、AEセンサ53が接触検知信号S1を出力したか否かの判定が行われる。接触検知信号S1が出力され、処理装置155(制御装置154)に送信されれば、工程S143Cに移動し、その都度、接触検知信号S1が出力された時点におけるツルア52の位置である接触位置Poを接触位置記憶部155Eに記憶する。接触位置Poとして、歯高さ方向における接触位置と、歯厚方向における接触位置の二つがある。
【0097】
工程S143Dでは、ツルア52の位相が所定の位相範囲内にあるか否かを判定する。所定の位相範囲内にあれば、工程S142に戻り、工程S143Dにおいて、所定の位相範囲内にないとの判定がでるまで、処理を繰返す。また、工程S143Dにおいて、所定の位相範囲内にないと判定されれば、工程S143Eにおいて、これまで接触位置記憶部155Eに記憶された接触位置Poのうち最後に記憶された接触位置Poを選択する。
【0098】
このとき、工程S142から工程S143Dまでの処理工程を第四接触工程S144(接触工程S140)とする。工程S143Dにおいて、所定の位相範囲内にツルア52がなければ開始位置設定工程S150に移動する。なお、上記工程は、対向する二つの歯面27a2,27a2(第一,第二歯面)に対してそれぞれ処理される。
【0099】
開始位置設定工程S150(開始位置設定処理部155F)では、歯面27a2の理論的な断面形状データ(複数の歯高さ方向の位置と歯厚方向の位置のペアで表される)と、接触位置記憶部155Eに最後に記憶された一方の歯面27a2の接触位置Po及び他方の歯面27a2の接触位置Poに基づき、ツルア52によりツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を、対向する二つの歯面27a2,27a2(第一,第二歯面)に対して設定する。接触位置Poの歯厚方向の接触位置が、歯面27a2の理論的な断面形状データの歯厚方向の位置に比べて歯溝側に有るときは、歯面27a2の理論的な断面形状データは、ねじ状砥石27の外径側に設定され、逆に歯溝と反対側にあるときは、歯面27a2の理論的な形状データは、ねじ状砥石27の内径側に設定される。
【0100】
そして、ツルーイング工程S160では、対向する二つの歯面27a2,27a2(第一,第二歯面)に対してねじ状砥石27及びツルア52をツルーイング開始位置に相対移動させたのちツルーイングを順次実行する。ツルーイングは、歯高さ方向の位置を変えて繰り返し行われる。歯高さ方向の位置を変えてツルーイングするときは、接触位置Poに応じて径方向に設定した歯面27a2の理論的な断面形状データが用いられる。これにより,上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
なお、上記実施形態によれば、接触工程S40,S140において、ツルア52を対向する二つの歯面27a2,27a2(第一,第二歯面)の両方に接触させる態様としたが、この態様には限らない。接触工程S40,S140において、ツルア52は、一方の歯面27a2のみに接触させて形状を求め、対向するもう一方の歯面27a2の形状については、接触して求めた歯面27a2に形状に基づいて計算によって求めても良い。このとき、歯面27a2の理論的な断面形状データ(複数の歯高さ方向の位置と歯厚方向の位置のペアで表される)を用いる。
【0102】
(3.実施形態による効果)
上記実施形態に係るねじ状砥石のツルーイング装置50において、制御装置54は、ねじ状砥石27を所定の回転速度以上で連続回転させるとともに、ツルア52を第一軸線51a方向で隣接するねじ状砥石27の歯筋27aの間の歯溝27c内の空間に進入させる歯溝進入処理部55Cと、ねじ状砥石27を所定の回転速度以上で連続回転させた状態において、歯溝27cに対し歯溝27c内に進入させたツルア52を第一軸線51a方向の少なくとも一方に相対移動させて歯面に接触させ、AEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させる接触処理部55Dと、ツルア52が歯面27a2に接触し接触検知信号S1が出力された時点におけるツルア52の位置である接触位置Poを記憶する接触位置記憶部55Eと、接触位置記憶部55Eに記憶された接触位置Poに基づき、ツルア52によりツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定処理部55Fと、ツルーイングの実行時において、ツルア52をツルーイング開始位置に移動させたのちツルーイングを実行するツルーイング処理部55Gと、を備える。
【0103】
このように、接触処理部55Dにおいて、ねじ状砥石27を所定の回転速度以上で連続回転させた状態で、ツルア52を歯面27a2に接近させやがて接触させる。このとき、ねじ状砥石27の回転速度Vθを所定の回転速度以上とすることで、ツルア52が歯面27a2に接触する際に、歯面27a2が有するうねりのうちの底部ではなく、底部よりうねりの頂点に近い斜面の何れかの位置にツルア52を接触させることができる。その後、ツルーイング処理部55Gによって、ツルア52が接触した歯面27a2の位置(ツルーイング開始位置)からツルーイングを開始することで、底部からツルーイングを開始した場合と比べ、歯面27a2におけるツルーイング量を少なくすることが出来る。これにより、ねじ状砥石27は高寿命化する。また、制御装置54の制御によってねじ状砥石27の歯面27a2におけるツルーイング開始位置を自動で検出するので、ツルーイング作業に要する時間が短縮できる。
【0104】
また、上記実施形態によれば、接触処理部55Dは、歯溝27c内の空間に進入させたツルア52を歯溝27cに対し第一軸線51a方向の一方に相対移動させ、歯面27a2である第一歯面に接触させたのち、ツルア52を、第一軸線51a方向の他方に相対移動させ、歯溝27c内において第一歯面と対向する歯面である第二歯面に接触させる。このように、対向する両方の歯面27a2に対してツルーイング開始位置を求めるため、一方の歯面27a2に対してのみツルーイング開始位置を求める場合よりもより高い効果が期待出来る。
【0105】
また、上記実施形態に係るねじ状砥石のツルーイング装置150において、制御装置154は、ツルア52を第一軸線51a方向で隣接するねじ状砥石27の歯筋27aの間の歯溝27c内の空間に進入させる歯溝進入処理部55Cと、ねじ状砥石27を所定の回転速度で連続回転させるとともに、歯溝27c内の空間に進入させたツルア52を歯面27a2との間に0を超える所定の隙間d1を有した状態とした上で、ツルア52が歯面27a2の回転と同期して移動するようツルア52を第一軸線51a方向に相対移動させながら、歯面27a2の被接触部Q1と接触させAEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させ、ツルア52を第一軸線51a方向に移動させてツルア52と歯面27a2との間に0を越える所定の隙間d1を有した状態とする処理を、歯面27a2の歯筋27a方向における所定の位相範囲内において、接触検知信号S1が出力されるたびに繰り返し行なう接触処理部155Dと、接触処理部155Dにおいて、最後に接触検知信号S1が出力された時点におけるツルア52の位置である接触位置Poを記憶する接触位置記憶部155Eと、接触位置記憶部155Eに記憶された接触位置Poに基づき、ツルア52によりツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定処理部155Fと、ツルーイングの実行時において、ツルア52をツルーイング開始位置に移動させたのちツルーイングを実行するツルーイング処理部55Gと、を備える。
【0106】
このように、歯面27a2において、より高い被接触部Qを探索し、検出した最後の接触位置Poをツルーイング開始位置とするので、歯面27a2のうねりのうち、頂点に近い位置を高精度に検出できる。これにより、さらに、うねりの底部からツルーイングを開始した場合と比べ、歯面27a2におけるツルーイング量を少なくすることが出来る。これにより、ねじ状砥石27はさらに高寿命化する。
【0107】
また、上記実施形態に係るツルーイング装置150が備える制御装置154の接触処理部155Dは、歯溝27c内の空間に進入させたツルア52を、歯溝27cに対し第一軸線51a方向の少なくとも一方に相対移動させて歯面27a2の被接触部Q1と接触させAEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させる第一接触処理部D1と、第一接触処理部D1によって、ツルア52が被接触部Q1と接触したのち、被接触部Q1との間に0を超える所定の隙間d1を有するよう、ツルア52を被接触部から離間する方向に相対移動させる第二接触処理部D2と、ツルア52が被接触部Q1との間に所定の隙間d1を有した状態で歯面27a2の回転と同期して移動するようツルア52を第一軸線51a方向に相対移動させ、歯面27a2の歯筋27a方向における所定の位相範囲内において、被接触部Q1よりも歯厚の被接触部Q2が存在する場合に、歯厚の被接触部Q2に接触させ、AEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させる第三接触処理部D3と、第三接触処理部D3において、歯厚の被接触部Q2が存在した場合に、第二接触処理部D2における処理と第三接触処理部D3における処理と、を所定の位相範囲内において、繰り返し実施する第四接触処理部D4と、を備える。このように、被接触部Q1に接触させたのち、より高い被接触部Q2を探索するので、最低でも被接触部Q1は、得ることができ効率的である。
【0108】
また、上記実施形態において、接触検知部は、AEセンサを備え、AEセンサがツルア52とねじ状砥石27との接触を検知し接触検知信号S1を出力する。これにより、低コストで且つ精度よくツルア52とねじ状砥石27との接触を検知できる。
【0109】
また、上記実施形態に係るツルーイング装置50のツルーイング方法は、ねじ状砥石27を所定の回転速度以上で連続回転させるとともに、ツルア52を第一軸線51a方向で隣接するねじ状砥石27の歯筋27aの間の歯溝27c内の空間に進入させる歯溝進入工程S30と、ねじ状砥石27を所定の回転速度以上で連続回転させた状態において、歯溝27cに対し歯溝27c内に進入させたツルア52を第一軸線51a方向の少なくとも一方に相対移動させて歯面27a2に接触させ、AEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させるとともに接触検知信号S1が出力された時点におけるツルアの位置である接触位置Poを接触位置記憶部55Eに記憶させる接触工程S40と、接触位置記憶部55Eに記憶された接触位置Poに基づき、ツルア52によりツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定工程S50と、ツルーイングの実行時において、ツルア52をツルーイング開始位置に移動させたのちツルーイングを実行するツルーイング工程S60と、を備える。これにより、ツルーイング装置50によるツルーイングで得られる効果と同様の効果を奏するツルーイングが行える。
【0110】
また、上記実施形態に係るツルーイング装置150のツルーイング方法は、ツルア52を第一軸線51a方向で隣接するねじ状砥石27の歯筋27aの間の歯溝27c内の空間に進入させる歯溝進入工程S30と、ねじ状砥石27を所定の回転速度で連続回転させるとともに、歯溝27c内の空間に進入させたツルア52を歯面27a2との間に0を超える所定の隙間d1を有した状態とした上で、ツルアが歯面27a2の回転と同期して移動するようツルア52を第一軸線51a方向に相対移動させながら、歯面27a2の被接触部Q1と接触させAEセンサ53(接触検知部)によって接触検知信号S1を出力させ、ツルア52を第一軸線51a方向に移動させてツルア52と歯面27a2との間に0を越える所定の隙間d1を有した状態とする処理を歯面27a2の歯筋27a方向における所定の位相範囲内において、接触検知信号S1が出力されるたびに繰り返し行なうとともに、接触検知信号S1が最後に出力された時点におけるツルア52の位置である接触位置Poを接触位置記憶部155Eに記憶させる接触工程S40と、接触位置記憶部155Eに記憶された接触位置Poに基づき、ツルア52によりツルーイングを開始するときのツルーイング開始位置を設定する開始位置設定工程S150と、ツルーイングの実行時において、ツルア52をツルーイング開始位置に移動させたのちツルーイングを実行するツルーイング工程S160と、を備える。これにより、ツルーイング装置150によるツルーイングで得られる効果と同様の効果を奏するツルーイングが行える。
【0111】
なお、本実施形態では、接触検知の手段としてAEセンサ53を用いたものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、ツルア52,ねじ状砥石27の回転トルクや回転速度等の変化を検知することでツルア52の歯面27a2への接触を検知するようなものでも良く、これによっても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0112】
10,110;歯車研削盤 、27;ねじ状砥石 、27a;歯筋 、27a1;外周面 、27a2;歯面(第一歯面,第二歯面) 、27a3;歯底 、27c;歯溝 、50,150;ツルーイング装置 、51;第一回転軸(スピンドル26) 、51a;第一軸線 、52;ツルア 、53;AEセンサ(接触検知部) 、54,154;制御装置 、55A;外径検出処理部 、55B;歯溝位置検出処理部 、55C;歯溝進入処理部 、55D,155D;接触処理部 、55E,155E;接触位置記憶部 、55F,155F;開始位置設定処理部 、55G;ツルーイング処理部 、56,156;記憶装置 、522;第二回転軸 、522a;第二軸線 、d1;隙間 、P1;ツルーイング開始位置 、Po;接触位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16