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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】酸化チタン膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/047 20060101AFI20221101BHJP
   B01J 31/38 20060101ALI20221101BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20221101BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221101BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221101BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C01G23/047
B01J31/38 M
B01J35/02 J
B01J37/02 301Z
B01J37/08
C01G23/04 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018010752
(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2019126785
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】竹内 栄
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 保伸
(72)【発明者】
【氏名】岩永 猛
(72)【発明者】
【氏名】奥野 広良
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/169660(WO,A1)
【文献】特開2003-181299(JP,A)
【文献】国際公開第02/034301(WO,A1)
【文献】特開2001-214150(JP,A)
【文献】国際公開第2007/080804(WO,A1)
【文献】特開平10-231146(JP,A)
【文献】特開平05-096679(JP,A)
【文献】特開2005-224727(JP,A)
【文献】特開2005-125756(JP,A)
【文献】特開2002-292288(JP,A)
【文献】特開2017-159293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00 - 23/08
B01J 21/00 - 38/74
B32B 1/00 - 43/00
C08J 7/04 - 7/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、粒子状又は粉末状の酸化チタンが連続している酸化チタン層であって、粒子状又は粉末状の酸化チタンが酸化チタン以外の成分によって結着されてはいない酸化チタン層を形成する工程と、
前記酸化チタン層を、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理する工程と、
前記表面処理する工程中又は後に、前記金属化合物により表面処理された酸化チタン層を温度180℃以上500℃以下で加熱処理する工程と、を含
前記基材上に前記酸化チタン層を形成する工程が、チタンアルコキシドとアルコールと酸とを混合してなるチタニアゾルを前記基材上に塗布すること、及び、前記基材上で前記チタニアゾルを焼成することを含む、
酸化チタン膜の製造方法。
【請求項2】
前記基材が、ガラス、セラミックス、金属及び耐熱樹脂からなる群から選ばれる材料を含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン膜、酸化チタン膜の製造方法、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上または蒸着中の酸化チタンの蒸気流にイオンビームを照射しながら、基板上に酸化チタン膜を成膜することを含む、光触媒性能を有するアモルファス酸化チタン薄膜の形成方法が開示されている。
特許文献2には、有機溶媒水溶液中にチタニウムブトキシトを混合し、150~220℃に加熱してチタニウムブトキシトを加水分解し、これを乾燥させて中間生成物を得る第1ステップと、中間生成物を150~300℃で焼成する第2ステップとを含む、光触媒の製造方法が開示されている。
特許文献3には、炭化水素基を有する金属含有化合物により表面処理され、可視吸収スペクトルにおける450nm及び750nmに吸収を持ち、かつ赤外吸収スペクトルにおける2700cm-1~3000cm-1に吸収ピークを持つ酸化チタン粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-104541号公報
【文献】特開2014-128768号公報
【文献】特開2017-159293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている方法により形成される酸化チタン膜は、紫外光応答型の光触媒膜であり、可視光応答性を有しない。
特許文献2又は特許文献3に開示されている光触媒は、可視光応答性を有するが、形状が粒子状又は粉末状である。粒子状又は粉末状の光触媒を用いて光触媒膜を得るためには、一般的にはバインダで光触媒を結着させて光触媒膜を形成する。このような光触媒膜は、光触媒機能を有しないバインダが存在することにより、膜の表面全体が光触媒機能を発現するものではない。また、このような光触媒膜は、粒子状又は粉末状の光触媒の形状に基づく微細な凹凸が膜の表面に存在する。
【0005】
本開示は、上記状況のもとになされた。
本開示は、可視光応答型の酸化チタン粒子がバインダで結着された酸化チタン膜に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐汚染性とに優れる酸化チタン膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0007】
[1]
酸化チタンが連続している酸化チタン膜であって、
金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が表面に結合しており、
可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ、酸化チタン膜。
【0008】
[2]
酸化チタンが連続している酸化チタン膜であって、
赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm-1以上3000cm-1以下の範囲に吸収ピークを持ち、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ、酸化チタン膜。
【0009】
[3]
表面粗さが0μm以上0.1μm以下である、[1]又は[2]に記載の酸化チタン膜。
【0010】
[4]
水の接触角が90度以上180度以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の酸化チタン膜。
【0011】
[5]
可視吸収スペクトルにおいて波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を持つ、[1]~[4]のいずれか1項に記載の酸化チタン膜。
【0012】
[6]
金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が酸素原子を介して表面に結合している、[1]~[5]のいずれか1項に記載の酸化チタン膜。
【0013】
[7]
前記金属原子がケイ素原子である、[6]に記載の酸化チタン膜。
【0014】
[8]
前記炭化水素基が、炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である、[6]又は[7]に記載の酸化チタン膜。
【0015】
[9]
前記炭化水素基が、炭素数4以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基である、[8]に記載の酸化チタン膜。
【0016】
[10]
単位面積当たりの質量が0.04g/m以上20g/m以下である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の酸化チタン膜。
【0017】
[11]
基材上に、酸化チタンが連続している酸化チタン層を形成する工程と、
前記酸化チタン層を、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理する工程と、
前記表面処理する工程中又は後に、前記金属化合物により表面処理された酸化チタン層を加熱処理する工程と、
を含む、[1]~[10]のいずれか1項に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【0018】
[12]
前記基材が、ガラス、セラミックス、金属及び耐熱樹脂からなる群から選ばれる材料を含む、[11]に記載の製造方法。
【0019】
[13]
基材と、
前記基材上に配置された、[1]~[10]のいずれか1項に記載の酸化チタン膜と、
を有する構造体。
【0020】
[14]
前記基材が、ガラス、セラミックス、金属及び耐熱樹脂からなる群から選ばれる材料を含む、[13]に記載の構造体。
【発明の効果】
【0021】
[1]、[2]、[5]、[6]、[8]又は[9]に係る発明によれば、可視光応答型の酸化チタン粒子がバインダで結着された酸化チタン膜に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐汚染性とに優れる酸化チタン膜が提供される。
【0022】
[3]に係る発明によれば、表面粗さが0.1μm超である酸化チタン膜に比べて、耐汚染性に優れる酸化チタン膜が提供される。
【0023】
[4]に係る発明によれば、水の接触角が90度未満である酸化チタン膜に比べて、耐汚染性に優れる酸化チタン膜が提供される。
【0024】
[7]に係る発明によれば、金属化合物の金属原子がアルミニウム原子又はチタン原子である場合に比べて、可視光応答型の光触媒機能に優れる酸化チタン膜が提供される。
【0025】
[10]に係る発明によれば、単位面積当たりの質量が0.04g/m未満である酸化チタン膜に比べて、可視光応答型の光触媒機能に優れる酸化チタン膜が提供される。
【0026】
[11]又は[12]に係る発明によれば、可視光応答型の酸化チタン粒子をバインダで結着して酸化チタン膜を製造する製造方法に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐汚染性とに優れる酸化チタン膜を製造する製造方法が提供される。
【0027】
[13]又は[14]に係る発明によれば、可視光応答型の酸化チタン粒子がバインダで結着された酸化チタン膜を備えた構造体に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐汚染性とに優れる酸化チタン膜を備えた構造体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0029】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0030】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0031】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0032】
<酸化チタン膜>
第一の本実施形態に係る酸化チタン膜は、酸化チタンが連続している酸化チタン膜であって、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が表面に結合しており、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ。本開示において、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物を「有機金属化合物」ともいう。
【0033】
第二の本実施形態に係る酸化チタン膜は、酸化チタンが連続している酸化チタン膜であって、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm-1以上3000cm-1以下の範囲に吸収ピークを持ち、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ。
【0034】
第一の本実施形態のごとく、酸化チタン膜の表面に有機金属化合物が結合していることにより、第二の本実施形態のごとく、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm-1以上3000cm-1以下の範囲に吸収ピークを持つことが実現されやすい。換言すれば、酸化チタン膜が赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm-1以上3000cm-1以下の範囲に吸収ピークを持つことは、酸化チタン膜が表面改質されており、有機金属化合物が表面に結合していることの指標である。
【0035】
第一の本実施形態に係る酸化チタン膜は、詳細な機序は不明であるが、有機金属化合物が膜の表面に結合しており、有機金属化合物の炭化水素基が適度に炭化又は酸化されていることにより、膜の表面が波長450nm及び750nmに光吸収性を示し、可視光応答型の光触媒機能を発現すると推測される。
また、第二の本実施形態に係る酸化チタン膜は、詳細な機序は不明であるが、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm-1以上3000cm-1以下の範囲に吸収ピークを持つように表面改質されていることにより、膜の表面が波長450nm及び750nmに光吸収性を示し、可視光応答型の光触媒機能を発現すると推測される。
【0036】
第一及び第二の本実施形態に係る酸化チタン膜は、可視光応答型の酸化チタン粒子がバインダで結着された酸化チタン膜に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐汚染性とに優れる光触媒膜を形成しうる。この機序は、次のように推測される。以下、第一の本実施形態と第二の本実施形態とに共通する事項については、本実施形態と総称して説明する。
【0037】
本実施形態に係る酸化チタン膜は、酸化チタンが連続していることにより、表面全体で光触媒機能を発現し、また、酸化チタンが連続していることにより表面の平滑性が高いので、耐汚染性に優れると推測される。加えて、本実施形態に係る酸化チタン膜は、表面に炭化水素基を有することにより疎水性に優れ、水滴が付着しにくく、耐汚染性に優れると推測される。
その結果、本実施形態に係る酸化チタン膜は、可視光応答型の酸化チタン粒子がバインダで結着された酸化チタン膜に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐汚染性とに優れると推測される。
【0038】
以下、本実施形態に係る酸化チタン膜の特性について説明する。
【0039】
[酸化チタン膜の特性]
本実施形態において「酸化チタンが連続している酸化チタン膜」とは、粒子状又は粉末状の酸化チタンが酸化チタン以外の成分によって結着された膜ではないこと意味する。酸化チタンが連続していることは、透過型電子顕微鏡にて膜の表面を観察したとき、一般的な酸化チタン粒子の凝集粒子の大きさ(一般的には、マイクロメートルオーダー)を超えて酸化チタンが連続していることと、酸化チタン膜の組成分析とによって確認できる。
本実施形態において酸化チタン膜は、膜があらゆる方向に隙間なく連続していることが望ましいが、本実施形態の効果を損なわない範囲において、一部に隙間があってもよい。
【0040】
本実施形態に係る酸化チタン膜は、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ。
【0041】
本実施形態に係る酸化チタン膜は、可視光応答型の光触媒機能に優れる観点から、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm、600nm及び750nmに吸収を持つことが好ましく、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm以上750nm以下の全範囲に吸収を持つことがより好ましく、可視吸収スペクトルにおいて波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を持つことが特に好ましい。
【0042】
本実施形態に係る酸化チタン膜は、可視光応答型の光触媒機能に優れる観点から、紫外可視吸収スペクトルにおいて、波長350nmの吸光度を1としたとき、波長450nmの吸光度が0.02以上(より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上)であることが好ましく、波長600nmの吸光度が0.02以上(より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上)であることが好ましく、波長750nmの吸光度が0.02以上(より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上)であることが好ましい。
【0043】
酸化チタン膜の紫外可視吸収スペクトルは、酸化チタン膜を測定対象とし、拡散反射配置で、波長200nm以上900nm以下の範囲の拡散反射スペクトルを測定し、拡散反射スペクトルからKubelka-Munk変換により理論的に各波長における吸光度を求めて得る。
【0044】
第二の本実施形態に係る酸化チタン膜は、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm-1以上3000cm-1以下の範囲に吸収ピークを少なくとも一つ持つ。
第一の本実施形態に係る酸化チタン膜は、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm-1以上3000cm-1以下の範囲に吸収ピークを少なくとも一つ持つことが好ましい。
本実施形態において赤外吸収スペクトルの吸収ピークとは、吸収強度(吸光度)0.022(透過率で5%)以上の吸収を意味する。
【0045】
酸化チタン膜の赤外吸収スペクトルは、酸化チタン膜を測定対象とし、赤外分光光度計にて分光結晶にダイヤモンドを用い、全反射測定法により、積算回数300回、分解能4cm-1の条件で、波数650cm-1以上4000cm-1以下の範囲を測定して得る。
【0046】
本実施形態に係る酸化チタン膜は、耐汚染性に優れる観点から、表面粗さが0μm以上0.1μm以下であることが好ましく、0μm以上0.08μm以下であることがより好ましく、0μm以上0.05μm以下であることが更に好ましい。本実施形態に係る酸化チタン膜の表面粗さは、例えば、酸化チタン膜の成膜方法によって制御しうる。
【0047】
本実施形態において、酸化チタン膜の表面粗さは、RzJIS(十点平均粗さ)である。表面粗さは、次のとおり測定する。
表面粗さ形状測定器を用い、JIS B0601(2013)に準じて、測定長さ2.5mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.60mm/sの条件で、測定対象となる酸化チタン膜の表面を任意に4箇所(幅方向2箇所×長さ方向2箇所)測定し、その平均値を表面粗さRzJISとする。
【0048】
本実施形態に係る酸化チタン膜は、耐汚染性に優れる観点から、水の接触角が90度以上180度以下であることが好ましく、115度以上180度以下であることがより好ましく、130度以上180度以下であることが更に好ましい。本実施形態に係る酸化チタン膜上における水の接触角は、例えば、表面改質に用いる有機金属化合物の種類又は量によって制御しうる。
【0049】
酸化チタン膜の水の接触角は、次のとおり測定する。酸化チタン膜を、温度25℃/相対湿度60%の環境に24時間以上放置して調湿した後、同じ温度及び湿度の環境下にて、酸化チタン膜の表面に注射器で2μLのイオン交換水の水滴を落とし、接触角計を用いてθ/2法により30秒後の接触角を測定する。
【0050】
本実施形態に係る酸化チタン膜の膜厚は、光触媒活性及び耐久性の観点からは、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましく、剥離、割れ又は反りを抑制する観点からは、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。
【0051】
本実施形態に係る酸化チタン膜の単位面積当たりの質量は、光触媒活性及び耐久性の観点からは、0.04g/m以上が好ましく、0.12g/m以上がより好ましく、0.2g/m以上が更に好ましく、剥離、割れ又は反りを抑制する観点からは、20g/m以下が好ましく、12g/m以下がより好ましく、5g/m以下が更に好ましい。
【0052】
以下、本実施形態に係る酸化チタン膜の構成について説明する。
【0053】
本実施形態に係る酸化チタン膜は、表面改質された酸化チタン膜である。本実施形態に係る酸化チタン膜は、未処理の酸化チタン膜を、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物(有機金属化合物)により表面処理し、加熱処理により前記炭化水素基の一部を炭化又は酸化してなる酸化チタン膜であることが好ましい。本開示において、未処理の酸化チタン膜を「原膜」ともいう。
【0054】
[未処理の酸化チタン膜(原膜)]
原膜は、酸化チタンが連続している酸化チタン膜である。原膜は、後述する、本実施形態に係る酸化チタン膜の製造方法において、酸化チタン層に相当する。
【0055】
本実施形態において原膜には、酸化チタンを気相成長させてなる酸化チタン膜、酸化チタンの材料物質を化学反応させてなる酸化チタン膜、粒子状又は粉末状の酸化チタン又はメタチタン酸を焼成してなる酸化チタン膜、酸化チタンと酸化チタン以外の成分とを含む組成物を焼成し酸化チタン以外の成分を除去してなる酸化チタン膜などが含まれる。
【0056】
原膜は、非晶質でもよく結晶質でもよく、光触媒活性の高さの観点からは、結晶質であることが好ましい。即ち、原膜は、酸化チタンの結晶が連続している酸化チタン膜であることが好ましい。原膜が結晶質の場合、その結晶構造は、ブルッカイト型、アナターゼ型又はルチル型の単結晶構造でもよく、これら結晶が共存する混晶構造でもよい。原膜は、光触媒活性の高さの観点からは、酸化チタンのアナターゼ型結晶が連続している酸化チタン膜であることが好ましい。
【0057】
原膜の膜厚は、光触媒活性及び耐久性の観点からは、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましく、剥離、割れ又は反りを抑制する観点からは、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。
【0058】
[金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物(有機金属化合物)]
本実施形態に係る酸化チタン膜の表面に結合している有機金属化合物は、原膜の表面処理に用いられた有機金属化合物に由来する。
【0059】
本実施形態に係る酸化チタン膜において、有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、金属原子、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなる金属化合物であることが好ましい。
【0060】
有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、酸化チタン膜の表面に酸素原子を介して結合していることが好ましい。有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、該有機金属化合物中の金属原子Mに直接結合した酸素原子Oを介して酸化チタン膜の表面に結合していること、即ち、M-O-Tiなる共有結合によって酸化チタン膜の表面に結合していることが好ましい。
【0061】
有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、金属原子Mと金属原子Mに直接結合した炭化水素基とを有する有機金属化合物であることが好ましい。該有機金属化合物は、該有機金属化合物中の金属原子Mに直接結合した酸素原子Oを介して酸化チタン膜の表面に結合していることが好ましい。即ち、酸化チタン膜の表面には、可視光応答性をより発現しやすい観点から、炭化水素基と、金属原子Mと、酸素原子Oと、チタン原子Tiとが共有結合で順に連なった構造(炭化水素基-M-O-Ti)が存在することが好ましい。
【0062】
有機金属化合物を構成する金属原子としては、可視光応答性をより発現しやすい観点から、ケイ素、アルミニウム又はチタンが好ましく、ケイ素又はアルミニウムがより好ましく、ケイ素が特に好ましい。
【0063】
有機金属化合物が有する炭化水素基としては、炭素数1以上40以下(好ましくは炭素数1以上20以下、より好ましくは炭素数1以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、更に好ましくは炭素数4以上10以下)の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上27以下(好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下)の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0064】
有機金属化合物が有する炭化水素基は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、疎水性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上20以下が好ましく、1以上18以下がより好ましく、4以上12以下が更に好ましく、4以上10以下が更に好ましい。
【0065】
有機金属化合物が有する炭化水素基の詳細は、後述する表面処理工程において使用する有機金属化合物における炭化水素基と同様であり、好ましい形態も同様である。
【0066】
<酸化チタン膜の製造方法>
本実施形態に係る酸化チタン膜の製造方法は、
基材上に、酸化チタンが連続している酸化チタン層を形成する工程と、酸化チタン層を、有機金属化合物により表面処理する工程(表面処理工程)と、表面処理する工程中又は後に、有機金属化合物により表面処理された酸化チタン層を加熱処理する工程(加熱処理工程)と、を含むことが好ましい。
【0067】
[酸化チタン層の形成工程]
基材上に酸化チタン層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、プラズマアシスト蒸着法、化学的蒸着法、反応性スパッタリング法、チタンアルコキシドを材料に用いたゾルゲル法、酸化チタン粒子又はメタチタン酸粒子を材料にして膜状に焼成する方法などが挙げられる。
【0068】
酸化チタン層の形成方法としては、表面平滑性に優れた酸化チタン層が得られる観点から、チタンアルコキシドを材料に用いたゾルゲル法が好ましい。以下に、チタンアルコキシドを用いたゾルゲル法について説明する。
【0069】
チタンアルコキシドを材料に用いたゾルゲル法は、基材上に塗布したチタニアゾルを焼成して酸化チタン層を形成する方法である。
【0070】
チタニアゾルは、チタンアルコキシドとアルコールと酸とを混合してなるゾル状の液体組成物である。チタニアゾル中には、チタンアルコキシドの反応(加水分解及び縮合)により生成した酸化チタンが含まれる。チタニアゾルは、例えば、チタンアルコキシドとアルコールと酸とを混合した後、温度25℃乃至55℃下に30分間乃至120分間置き、チタンアルコキシドの反応を進行させることで得られる。
【0071】
チタニアゾルの調製に用いるチタンアルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム等のアルコキシ基の一部をキレート化したアルコキシチタンキレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
チタニアゾルの調製に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
チタニアゾルの調製に用いる酸としては、シュウ酸、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらは、一般的には、酸水溶液としてチタンアルコキシド及びアルコールと混合する。
【0074】
チタニアゾルは、固形分濃度が1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0075】
チタニアゾルを基材上に塗布する方法としては、ナイフコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、スピンコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。中でも、均一性の高い薄膜を形成する観点から、ワイヤーバーコート法又はインクジェット法が好ましい。
【0076】
チタニアゾルを基材上で焼成するための加熱方法は、特に限定されず、例えば、電気炉、焼成炉(ローラーハースキルン、シャトルキルン等)、輻射式加熱炉等による加熱;レーザー光、赤外線、UV、マイクロ波等による加熱;など公知の加熱方法を適用する。
【0077】
酸化チタンの結晶構造は、焼成温度の高さに従い、非晶質、ブルッカイト型結晶、アナターゼ型結晶、ルチル型結晶と変化するので、焼成温度の高低を調整することにより目的の結晶質の酸化チタン層が得られる。結晶質の酸化チタン層を得る観点から、焼成温度は200℃以上800℃以下が好ましく、400℃以上600℃以下がより好ましい。
【0078】
上記の焼成温度を実現する観点から、チタニアゾルを付与する基材は、耐熱性を有することが好ましい。基材としては、耐熱性の観点から、ガラス、セラミックス、金属及び耐熱樹脂からなる群から選ばれる材料を含む基材が好ましく、ガラス、セラミックス、金属及び耐熱樹脂からなる群から選ばれる材料からなる基材がより好ましい。金属としては、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄等が挙げられる。耐熱樹脂としては、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、セルロース、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0079】
[表面処理工程]
表面処理工程は、有機金属化合物と酸化チタン層の表面とを反応させる工程である。表面処理工程において、有機金属化合物中の反応性基(例えば、ハロゲノ基、アルコキシ基等の加水分解性基)と、酸化チタン層の表面に存在する反応性基(例えば、水酸基)とが反応し、酸化チタン層の表面処理がなされる。
【0080】
表面処理方法としては、特に制限はないが、例えば、有機金属化合物自体を直接、酸化チタン層に接触させる方法;溶媒に有機金属化合物を溶解させた処理液を、酸化チタン層に接触させる方法;が挙げられる。具体的には、例えば、酸化チタン層に、有機金属化合物自体又は処理液を滴下、噴霧、塗布する方法が挙げられる。
【0081】
表面処理に用いる有機金属化合物としては、金属原子と該金属原子に直接結合した炭化水素基とを有する有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物が複数個の炭化水素基を有する場合、少なくとも1個の炭化水素基が、該有機金属化合物中の金属原子に直接結合していることが好ましい。
【0082】
有機金属化合物の金属原子としては、ケイ素、アルミニウム又はチタンが好ましく、ケイ素又はアルミニウムがより好ましく、ケイ素が特に好ましい。
【0083】
有機金属化合物が有する炭化水素基としては、炭素数1以上40以下(好ましくは炭素数1以上20以下、より好ましくは炭素数1以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、更に好ましくは炭素数4以上10以下)の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上27以下(好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下)の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0084】
有機金属化合物が有する炭化水素基は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、疎水性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上20以下が好ましく、1以上18以下がより好ましく、4以上12以下が更に好ましく、4以上10以下が更に好ましい。
【0085】
有機金属化合物としては、炭化水素基を有するシラン化合物が特に好ましい。炭化水素基を有するシラン化合物としては、例えば、クロロシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物(ヘキサメチルジシラザン等)などが挙げられる。
【0086】
表面処理に用いる炭化水素基を有するシラン化合物としては、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、式(1):R SiR で表される化合物が好ましい。
【0087】
式(1):R SiR において、Rは炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を表し、Rはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上3以下の整数を表し、但しn+m=4である。nが2又は3の整数である場合、複数のRは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。mが2又は3の整数である場合、複数のRは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。
【0088】
で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、疎水性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、炭素数1以上20以下が好ましく、炭素数1以上18以下がより好ましく、炭素数4以上12以下が更に好ましく、炭素数4以上10以下が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよいが、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0089】
飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等)、環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)などが挙げられる。
【0090】
不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ドデセニル基、ペンテニル基等)、アルキニル基(エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、3-ヘキシニル基、2-ドデシニル基等)などが挙げられる。
【0091】
脂肪族炭化水素基は、置換された脂肪族炭化水素基も含む。脂肪族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0092】
で表される芳香族炭化水素基は、炭素数6以上20以下が好ましく、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下である。
【0093】
芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基等が挙げられる。
【0094】
芳香族炭化水素基は、置換された芳香族炭化水素基も含む。芳香族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
【0095】
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましい。
【0096】
で表されるアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上8以下、より好ましくは3以上8以下)のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、n-ブトキシ基、n-ヘキシロキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、置換されたアルコキシ基も含む。アルコキシ基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アミド基、カルボニル基等が挙げられる。
【0097】
式(1):R SiR で表される化合物は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、Rが飽和脂肪族炭化水素基である化合物が好ましい。特に、式(1):R SiR で表される化合物は、Rが炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基であり、Rがハロゲン原子又はアルコキシ基であり、nが1以上3以下の整数であり、mが1以上3以下の整数であり、但しn+m=4であることが好ましい。
【0098】
式(1):R SiR で表される化合物として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、デシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン(以上、n=1、m=3);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジクロロジフェニルシラン(以上、n=2、m=2);
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、デシルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン(以上、n=3、m=1);
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(以上、Rが、置換された脂肪族炭化水素基又は置換された芳香族炭化水素基である化合物);
などのシラン化合物が挙げられる。シラン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0099】
式(1)で表されるシラン化合物における炭化水素基は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。上記シラン化合物における炭化水素基は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族炭化水素基が更に好ましく、炭素数4以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
【0100】
有機金属化合物の金属原子がアルミニウムである化合物としては、例えば、ジ-i-プロポキシアルミニウム・エチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤;などが挙げられる。
【0101】
有機金属化合物の金属原子がチタンである化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタネート系カップリング剤;ジ-i-プロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ-i-プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ-i-プロポキシビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジ-i-プロポキシチタンジアセテート、ジ-i-プロポキシチタンジプロピオネート等のチタニウムキレート;などが挙げられる
【0102】
有機金属化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
有機金属化合物と溶媒とを混合してなる処理液を用いる場合、処理液の調製に用いる溶媒としては、有機金属化合物と相溶性のある化学物質であれば特に制限されない。処理液の調製に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、酢酸エチル、アセトンなどの有機溶剤が好ましい。
【0104】
前記処理液において、有機金属化合物の量は、溶媒100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下が好ましく、20質量部以上180質量部以下がより好ましく、50質量部以上150質量部以下が更に好ましい。
【0105】
表面処理に用いる有機金属化合物の量は、酸化チタン層1mに対して、0.004g以上20g以下が好ましく、0.01g以上15g以下がより好ましく0.04g以上10g以下が更に好ましい。有機金属化合物の量を0.004g以上にすると、可視光応答性が発現しやすく、また、疎水性も高まる。有機金属化合物の量を20g以下にすると、酸化チタン膜の表面に存在する、有機金属化合物に由来する炭素量が過剰になることを抑え、余剰の炭素による光触媒機能の低下が抑制される。
【0106】
表面処理に用いる有機金属化合物の量は、酸化チタン層の厚さにもよるが、酸化チタン層の量に対して、10質量%以上100質量%以下が好ましく、20質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上50質量%以下が更に好ましい。
【0107】
有機金属化合物による酸化チタン層の表面処理温度は、15℃以上150℃以下が好ましく、20℃以上100℃以下がより好ましい。表面処理時間は、10分間以上120分間以下が好ましく、30分間以上90分間以下がより好ましい。
【0108】
表面処理後は、余剰の有機金属化合物や前記処理液の溶媒等の残渣を除去する目的で乾燥処理を行うことがよい。乾燥温度は、20℃以上150℃以下が好ましい。
【0109】
[加熱処理工程]
加熱処理は、酸化チタン層を表面処理する工程中、又は、酸化チタン層を表面処理する工程後に実施する。
【0110】
加熱処理は、有機金属化合物により酸化チタン層を表面処理するとき;表面処理後の乾燥処理をするとき;又は、乾燥処理後に別途、実施することができる。加熱処理する前に酸化チタン層表面と有機金属化合物とを十分に反応させる観点から、表面処理後の乾燥処理をするとき、又は、乾燥処理後に別途、実施することが好ましく、乾燥処理を適切に実施する観点から、乾燥処理後に別途実施することがより好ましい。
【0111】
加熱処理の温度は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、180℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上450℃以下がより好ましく、250℃以上400℃以下が更に好ましい。加熱処理の時間は、可視光応答性の発現及び疎水性の観点から、10分間以上300分間以下が好ましく、30分間以上120分間以下がより好ましい。酸化チタン層を表面処理する工程中に加熱処理を行う場合は、先ず前記表面処理の温度で有機金属化合物を十分に反応させた後に前記加熱処理の温度で加熱処理を実施することが好ましい。表面処理後の乾燥処理において加熱処理を行う場合は、前記乾燥処理の温度は、加熱処理温度として実施する。
【0112】
加熱処理の温度を180℃以上500℃以下とすることにより、可視光応答性を有する酸化チタン膜が効率的に得られる。180℃以上500℃以下で加熱処理すると、酸化チタン膜の表面に存在する金属化合物由来の炭化水素基が適度に炭化又は酸化すると推測される。
【0113】
上記の温度を実現する観点から、酸化チタン膜の製造に使用する基材は、耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を有する基材の詳細は、前述のとおりである。
【0114】
加熱処理は、酸素濃度(体積%)が1%以上21%以下の雰囲気で行われることが好ましい。この酸素雰囲気で加熱処理を行うことにより、酸化チタン膜の表面に存在する金属化合物由来の炭化水素基の炭化又は酸化を、適度に且つ効率よく行うことができる。酸素濃度(体積%)は、3%以上21%以下がより好ましく、5%以上21%以下が更に好ましい。
【0115】
加熱処理の方法は、特に限定されず、例えば、電気炉、焼成炉(ローラーハースキルン、シャトルキルン等)、輻射式加熱炉等による加熱;レーザー光、赤外線、UV、マイクロ波等による加熱;など公知の加熱方法を適用する。
【0116】
以上の工程を経て、本実施形態に係る酸化チタン膜が得られる。
【0117】
<構造体>
本実施形態に係る構造体は、基材と、基材上に配置された本実施形態に係る酸化チタン膜と、を有する。本実施形態に係る構造体は、基材表面の少なくとも一部に本実施形態に係る酸化チタン膜を有する。
【0118】
基材としては、無機材料、有機材料を問わず種々の材料が挙げられ、その形状も限定されない。基材の好ましい例としては、ガラス、セラミックス、金属(アルミニウム、ステンレス鋼、鉄等)、耐熱樹脂(全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、セルロース、ポリフッ化ビニリデン等)、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、木、紙、これらの組合せ、これらの積層体、これらの表面に少なくとも一層の被膜を有する物品が挙げられる。
【0119】
用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、外装材、窓枠、窓ガラス、鏡、テーブル、食器、カーテン、レンズ、プリズム、乗物の外装及び塗装、機械装置の外装、物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ポリマーフィルム、ポリマーシート、フィルター、屋内看板、屋外看板、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、空気清浄器、浄水器、医療用器具、介護用品などが挙げられる。
【0120】
基材としては、本実施形態に係る酸化チタン膜を前記製造方法により基材上に設ける観点から、耐熱性を有することが好ましい。基材としては、耐熱性の観点から、ガラス、セラミックス、金属及び耐熱樹脂からなる群から選ばれる材料を含む基材が好ましく、ガラス、セラミックス、金属及び耐熱樹脂からなる群から選ばれる材料からなる基材がより好ましい。
【0121】
基材と光触媒膜との間には、中間層が配置されていてもよい。中間層は、例えば、光触媒膜の光励起による基材の損傷を抑制する目的、光触媒膜の剥離、割れ又は反りを抑制する目的で設けられる。
【0122】
中間層としては、例えば、クロム、アルミニウム、チタン、鉄等の金属又はこれらの合金;ケイ素、アルミニウム、タンタル、セリウム、インジウム、スズ等の金属酸化物;カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属フッ化物;からなる膜が挙げられる。中間層は、基材上に単層で積層しても、2層以上を積層させてもよい。中間層に、導電性材料、発熱材料などを含有させて機能化させてもよい。
【実施例
【0123】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて質量基準である。
【0124】
<酸化チタン膜の製造>
[実施例1]
85質量%のチタンテトライソプロポキシドのイソプロパノール溶液15mLを75mLの水に加え、硝酸0.5mLを触媒として添加して加水分解した後、温度40℃下に60分間置き、チタニアゾルを得た。次いで、ガラス板(5cm四方)の表面にチタニアゾル0.7g(固形分換算10g/m)を滴下した後、直径20μmのステンレス製ワイヤーを巻いた直径10mmのステンレスロールを用いて塗り広げた。次いで、ガラス板の塗布面を乾燥した後、焼成炉で450℃、0.5時間加熱して酸化チタン層を得た。
【0125】
ガラス板上の酸化チタン層に、メタノールにて20倍に希釈したイソブチルトリメトキシシラン溶液を0.15g(1mあたり溶液60g、酸化チタン層の量に対して有機金属化合物30質量%、酸化チタン層の表面積1mに対して有機金属化合物3g)塗布し、30分間放置したのち乾燥した。次いで、電気炉で400℃、1時間の加熱処理を行い、目的とする酸化チタン膜を得た。
【0126】
[実施例2~3]
ガラス板上のチタニアゾルを焼成して酸化チタン層を形成するための焼成温度を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0127】
[実施例4~5]
酸化チタン層をイソブチルトリメトキシシランで表面処理した後の加熱処理温度を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0128】
[実施例6~7]
イソブチルトリメトキシシランの塗布量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0129】
[実施例8~10]
チタニアゾルの塗布量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0130】
[比較例A]
市販のアナターゼ型酸化チタン粒子(体積平均粒径80nm)をトルエンに分散した分散液に、酸化チタン粒子100部に対して30部のイソブチルトリメトキシシランを滴下し、40℃で1時間反応させた後、出口温度120℃で噴霧乾燥して乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体に対し、電気炉で400℃、1時間の加熱処理を行い、表面改質した酸化チタン粒子を得た。
【0131】
表面改質した酸化チタン粒子を2部、バインダであるシリコーン(信越シリコーン社製:KR-400)を8部、及び溶剤であるトルエン(和光純薬社製:試薬)を90部混合し、分散処理して、光触媒膜形成用の塗布液を得た。塗布液をガラス板(5cm四方)の一主面の全面に塗布し、乾燥させ、光触媒膜を形成した。
【0132】
[比較例1]
酸化チタン層をイソブチルトリメトキシシランで表面処理せずに加熱処理した以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0133】
[比較例2]
酸化チタン層をイソブチルトリメトキシシランで表面処理した後、加熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0134】
[比較例3~4]
酸化チタン層をイソブチルトリメトキシシランで表面処理した後の加熱処理温度を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0135】
[比較例5~6]
イソブチルトリメトキシシランの塗布量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0136】
[比較例7]
チタニアゾルの塗布量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0137】
[実施例11~17]
イソブチルトリメトキシシランを他のシラン化合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0138】
[実施例18]
イソブチルトリメトキシシランを1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0139】
[実施例19]
イソブチルトリメトキシシランをアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(味の素、プレンアクトAL-M)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0140】
[実施例20]
イソブチルトリメトキシシランをイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(味の素、プレンアクトTTS)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0141】
[実施例21]
酸化チタン層の形成に用いるチタンアルコキシドをチタンテトライソプロポキシドからテトラブトキシチタンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0142】
[比較例21]
酸化チタン層をイソブチルトリメトキシシランで表面処理せずに加熱処理した以外は、実施例21と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0143】
[実施例31]
ガラス板をステンレス板(5cm四方)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0144】
[実施例32]
ガラス板をポリイミドフィルム(5cm四方)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして酸化チタン膜を得た。
【0145】
<酸化チタン膜の物性の測定>
[紫外可視吸収スペクトル]
基材上の酸化チタン膜を測定対象とし、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製:U-4100)を使用し、スキャンスピード:600nm、スリット幅:2nm、サンプリング間隔:1nmに設定して、拡散反射配置で、波長200nm以上900nm以下の範囲の拡散反射スペクトルを測定した。拡散反射スペクトルから、Kubelka-Munk変換により理論的に各波長での吸光度を求め、紫外可視吸収スペクトルを得た。
表1中の「UV-Vis特性」は、波長350nmの吸光度を1としたときの、波長450nm、波長600nm及び波長750nmそれぞれの吸光度である。
【0146】
実施例1~21、31及び32の酸化チタン膜は、波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を有していた。
【0147】
[赤外吸収スペクトル]
基材上の酸化チタン膜を測定対象とし、赤外分光光度計(日本分光株式会社製:FT-IR-410)を使用し、分光結晶にダイヤモンドを用い、全反射測定法により、積算回数300回、分解能4cm-1の条件で、波数650cm-1以上4000cm-1以下の範囲を測定し、赤外吸収スペクトルを得た。
【0148】
[表面粗さ]
基材上の酸化チタン膜を測定対象とし、表面粗さ形状測定器(東京精密社製:サーフコム1400Aシリーズ)を使用し、測定長さ2.5mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.60mm/sの条件で、膜の表面を任意に4箇所(幅方向2箇所×長さ方向2箇所)測定し、その平均値を膜の表面粗さRzJIS(十点平均粗さ)とした(JIS B0601(2013)に準拠)。
【0149】
[水の接触角]
接触角計として協和界面科学社製の型番CA-XPを用い、既述の方法にて測定した。
【0150】
<酸化チタン膜の性能評価>
[光触媒膜の光触媒活性(メチレンブルーの分解性)]
メチレンブルー濃度が20ppm(質量基準)であるメチレンブルー水溶液100mLを直径10cmのガラスシャーレに入れ、そこに、酸化チタン膜(下面に基材を備える。)をメチレンブルー水溶液に浸して置いた。この試料を2つ準備した。以下、試料1、試料2という。
【0151】
メチレンブルーの吸収波長領域(波長550nm以上800nm以下)から外れる波長400nm以上550nm以下の可視光を照射する発光ダイオードを使用し、試料1に可視光を試料作製直後から7時間連続照射した。試料2を、試料作製直後から暗所に7時間保管した。
【0152】
試料1の試料作製直後、試料1の可視光連続照射後、試料2の試料作製直後、及び試料2の暗所保管後においてそれぞれ、ガラスシャーレ中のメチレンブルー水溶液を一部採取し、波長650nmの透過率を、分光光度計(オプティマ社、型番SP-300)を用いて測定した。酸化チタン膜の光触媒活性によってメチレンブルーが分解されるほど、波長650nmの透過率は高くなる。下記の式に基づき、光触媒活性の指標である透過率変動値ΔTを求め、下記A~Eのとおり分類した。
【0153】
透過率変動値ΔT=ΔT1-ΔT2
ΔT1=試料1の可視光連続照射後の透過率-試料1の試料作製直後の透過率
ΔT2=試料2の暗所保管後の透過率-試料2の試料作製直後の透過率
【0154】
A(◎):25%≦ΔT
B(○):15%≦ΔT<25%
C(△):6%≦ΔT<15%
D(△):4%≦ΔT<6%
E(×):ΔT<4%
【0155】
[光触媒膜の耐汚染性]
汚染性物質として、カーボン粉末5部と水40部とエタノール45部とを混合した懸濁液を用意した。酸化チタン膜(下面に基材を備える。)に対して、25±1mm×40±1mmの範囲に、懸濁液を5g塗布し、温度40℃の雰囲気下に1時間保存後、50質量%エタノール水溶液50gにて塗布部位を洗浄した。塗布部位を目視で観察し、下記A~Eのとおり分類した。
【0156】
A(◎):汚染性物質の未塗布部位と見分けがつかず、汚れの痕跡が認められない。
B(○):汚れの痕跡が認められ、汚れの痕跡の面積が汚染性物質の塗布面積に対して5%未満である。
C(△):汚れの痕跡が認められ、汚れの痕跡の面積が汚染性物質の塗布面積に対して5%以上20%未満である。
D(△):汚れの痕跡が認められ、汚れの痕跡の面積が汚染性物質の塗布面積に対して20%以上30%未満である。
E(×):汚れの痕跡が認められ、汚れの痕跡の面積が汚染性物質の塗布面積に対して30%以上である。
【0157】
【表1】