(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】積層体およびそれを備える包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20221101BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221101BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/36
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2018028058
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017116259
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】杉 山 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】田 中 大 介
(72)【発明者】
【氏名】駒 形 徳 子
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-036208(JP,A)
【文献】特開2017-056741(JP,A)
【文献】特開2015-168150(JP,A)
【文献】特開2016-172440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層は、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材層は、ポリアミド又はポリブチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層は、単層であり、
前記シーラント層は、ポリエチレンと、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、を含み、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率が80質量%以上であり、
前記積層体は、前記第1基材層と前記第2基材層との間、又は前記第2基材層と前記シーラント層との間に位置し、無機物を含むバリア層を更に備え
、
前記バリア層は、金属箔を含む、積層体。
【請求項2】
少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層は、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材層は、ポリアミド又はポリブチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層は、単層であり、
前記シーラント層は、ポリエチレンと、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、を含み、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率が80質量%以上であり、
前記シーラント層は、さらに熱可塑性エラストマーを含み、
前記積層体は、前記第1基材層と前記第2基材層との間、又は前記第2基材層と前記シーラント層との間に位置し、無機物を含むバリア層を更に備え
、
前記バリア層は、金属箔を含む、積層体。
【請求項3】
少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層は、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材層は、ポリアミド又はポリブチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層は、ポリエチレンと、プロピレン・エチレンブロック共重合体と、を含み、
前記シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率が80質量%以上であり、
前記積層体は、前記第1基材層と前記第2基材層との間、又は前記第2基材層と前記シーラント層との間に位置し、無機物を含むバリア層を更に備え、
前記バリア層は、金属箔を含む、積層体。
【請求項4】
前記金属箔は、前記第2基材層と前記シーラント層との間に位置し、
前記積層体は、前記第2基材層と前記金属箔との間、及び前記金属箔と前記シーラント層との間に接着剤層を備える、請求項
3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体に関する。さらには、該積層体を備える包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、医薬品、化学品、化粧品、その他等の種々の物品を充填包装するために、種々の包装用材料が開発され、提案されている。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。上記したような包装用材料においてもバイオマス材料を採用する試みがなされており、例えば、特許文献1は、バイオマスポリエステルとバイオマスポリオレフィンとを用いた積層体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層体の製造にバイオマス由来の原料を用いることにより、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、前記第1基材層は、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記第2基材層は、ポリアミド又はポリブチレンテレフタレートを含む、積層体である。
【0008】
本発明による積層体において、前記シーラント層は、ポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0009】
本発明による積層体は、前記第1基材層と前記第2基材層との間、又は前記第2基材層と前記シーラント層との間に位置し、無機物を含むバリア層を更に備えていてもよい。
【0010】
本発明による積層体において、前記バリア層は、金属箔を含んでいてもよい。
【0011】
本発明による積層体において、前記金属箔は、前記第2基材層と前記シーラント層との間に位置し、前記積層体は、前記第2基材層と前記金属箔との間、及び前記金属箔と前記シーラント層との間に接着剤層を備えていてもよい。
【0012】
本発明による積層体において、前記バリア層は、蒸着層を含んでいてもよい。
【0013】
本発明による積層体は、少なくとも、前記第1基材層と、前記蒸着層と、印刷層と、接着剤層と、前記第2基材層と、前記シーラント層とをこの順に備え、前記蒸着層が透明蒸着膜であってもよい。
【0014】
本発明による積層体は、前記蒸着層の面上にガスバリア性塗布膜を備えていてもよい。
【0015】
本発明は、上記記載の積層体を備える、包装袋である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、環境負荷を低減することができる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施の形態による積層体の一例を示す模式断面図である。
【
図2】第1の実施の形態による積層体の一例を示す模式断面図である。
【
図3】第1の実施の形態による積層体の一例を示す模式断面図である。
【
図4】第1の実施の形態による積層体の一例を示す模式断面図である。
【
図5】第1の実施の形態による積層体の第1基材層の一例を示す模式断面図である。
【
図6】第1の実施の形態による包装袋の一例を示す模式正面図である。
【
図7】実施例1~6及び比較例1~2の積層体の評価結果を示す図。
【
図8】第2の実施の形態による積層体の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
まず、本実施の形態が解決しようとする課題について説明する。
従来、飲食品、医薬品、化学品、化粧品、その他等の種々の物品を充填包装するために、種々の包装用材料が開発され、提案されている。そのような包装用材料においては、包装目的、充填する内容物、包装製品の貯蔵・流通、その他等によって異なるが、包装用材料として、種々の物性が要求される。
【0019】
従来から、酸素および水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性材料が、種々、開発され、提案されている。例えば、アルミニウム箔、あるいは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のコーティング膜を有するナイロンフィルムあるいはポリエチレンテレフタレ-トフィルム、ポリビニルアルコ-ルフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化物フィルム、ポリアクリロニトリル系樹脂フィルム等のガスバリア性材料が、開発され、提案されている。
【0020】
更に、近年、プラスチック製の基材の上に、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着層を設けた構成からなる透明バリア性フィルム、あるいは、アルミニウム等の金属の蒸着層を設けたバリア性フィルム等も提案されている。例えば、特開2007-303000号公報は、ナイロンフィルム上に無機酸化物の蒸着層を形成することによってバリア性フィルムを作製することを提案している。
【0021】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれている。例えば、積層体の製造にバイオマス由来の原料を用いることにより、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。
【0022】
本実施の形態は、このような課題を効果的に解決し得る積層体を提供することを目的とする。
【0023】
<積層体>
続いて、本実施の形態による積層体について説明する。
本実施の形態による積層体は、少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備え、且つ、第1基材層と第2基材層との間、又は第2基材層とシーラント層との間に位置し、無機物を含むバリア層を更に備える。積層体は、更に、接着剤層、印刷層や他の層等を備えてもよい。積層体が接着剤層や他の層を2層以上備える場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0024】
本実施の形態による積層体について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による積層体の模式断面図の例を
図1~
図4に示す。
図1及び
図2に示した積層体10においては、バリア層14が少なくとも金属箔141を含む。
図3及び
図4に示した積層体20においては、バリア層24が少なくとも蒸着層241を含む。バリア層は、ガスバリア性塗布膜を更に含んでいてもよい。
【0025】
図1に示した積層体10は、第1基材層11と、印刷層15と、接着剤層16と、第2基材層12と、接着剤層17と、バリア層14を構成する金属箔141と、接着剤層18と、シーラント層13とをこの順に備える。積層体10を備える包装袋においては、シーラント層13が内面側に位置する。
【0026】
図2に示した積層体10は、第1基材層11と、印刷層15と、接着剤層16と、バリア層14を構成する金属箔141と、接着剤層17と、第2基材層12と、接着剤層18と、シーラント層13とをこの順に備える。積層体10を備える包装袋においては、シーラント層13が内面側に位置する。
【0027】
図3に示した積層体20は、第1基材層21と、バリア層24を構成する蒸着層241と、バリア層24を構成するガスバリア性塗布膜242と、印刷層25と、接着剤層26と、第2基材層22と、接着剤層27と、シーラント層23とをこの順に備える。積層体20を備える包装袋においては、シーラント層23が内面側に位置する。
【0028】
図4に示した積層体20は、第1基材層21と、印刷層25と、接着剤層26と、バリア層24を構成するガスバリア性塗布膜242と、バリア層24を構成する蒸着層241と、第2基材層22と、接着剤層27と、シーラント層23とをこの順に備える。積層体20を備える包装袋においては、シーラント層23が内面側に位置する。
【0029】
以下、積層体を構成する各層について説明する。
【0030】
[基材層]
本実施の形態による積層体は、第1基材層と、第1基材層よりも積層体の内面側に位置する第2基材層とを少なくとも備える。基材層を少なくとも2層備えることで、包装袋を製造した際に、手切れ性や強度を向上させることができる。
【0031】
[第1基材層]
第1基材層は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)を含む。バイオマス由来のPETとは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするPETである。第1基材層は、化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、化石燃料由来のPETをさらに含んでもよい。第1基材層全体として、下記のバイオマス度を実現できればよい。本実施の形態においては、第1基材層がバイオマス由来のPETを含むことで、従来に比べて化石燃料由来のPETの量を削減し環境負荷を減らすことができる。
【0032】
本実施の形態において、第1基材層の「バイオマス度」(バイオマス由来の炭素濃度)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、PET中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本実施の形態においては、PET中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
【0033】
PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、PET中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。本実施の形態においては、バイオマス由来のPET中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10%以上20%以下であることが好ましく、10%以上19%以下であってもよい。バイオマス由来のPET中のバイオマス由来の炭素の含有量が10%以上であると、カーボンオフセット材料として好適である。また、化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸とを用いて製造した化石燃料由来のPET中のバイオマス由来の炭素の含有量は0%であり、化石燃料由来のPETのバイオマス度は0%となる。
【0034】
本実施の形態において、第1基材層のバイオマス度は、5%以上であり、好ましくは10%以上であり、より好ましくは13%以上である。第1基材層のバイオマス度が5%以上であれば、従来に比べて化石燃料由来のPETの量を削減し環境負荷を減らすことができる。
【0035】
第1基材層が延伸されたPETフィルムである場合、第1基材層に用いるPETフィルムは、引張強度が、MD方向で、好ましくは150MPa以上300MPa以下、より好ましくは200MPa以上300MPa以下、TD方向で、好ましくは150MPa以上300MPa以下、より好ましくは150MPa以上300MPa以下であり、また、引張伸度が、MD方向で、好ましくは50%以上250%以下、より好ましくは70%以上200%以下であり、TD方向で好ましくは50%以上250%以下、より好ましくは60%以上200%以下である。引張強度および引張伸度は、JIS K 7127に準拠して測定することができる。
【0036】
第1基材層は、好ましくは5μm以上40μm以下、より好ましくは8μm以上25μm以下の厚さを有する。第1基材層の厚さが上記範囲程度であれば、成形加工が容易であり、また包装材料として好適に用いることができる。
【0037】
[第2基材層]
(第2基材層の第1の構成)
第1の構成に係る第2基材層は、ナイロン等のポリアミドを含む樹脂層である。第2基材層は延伸されていることが好ましく、2軸延伸されていることがより好ましい。
【0038】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXD6等が挙げられる。耐水性に劣るポリアミド樹脂層を積層体の外側ではなく内部に備えることで、耐水性を損なわずに包装袋に要求される強度を向上させることができる。
【0039】
第2基材層が延伸されたナイロンフィルムである場合、第2基材層に用いるナイロンフィルムは、引張強度が、MD方向で、好ましくは150MPa以上350MPa以下、より好ましくは200MPa以上300MPa以下、TD方向で、好ましくは150MPa以上400MPa以下、より好ましくは200MPa以上350MPa以下であり、また、引張伸度が、MD方向で、好ましくは50%以上200%以下、より好ましくは70%以上150%以下であり、TD方向で好ましくは30%以上200%以下、より好ましくは50%以上150%以下である。
【0040】
(第2基材層の第2の構成)
第1の構成に係る第2基材層は、主成分としてポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも記す)を含む。例えば、第2基材層は、51質量%以上のPBTを含む。
【0041】
第2の構成に係る第2基材層におけるPBTの含有率は、51質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、さらには70質量%以上、特には75質量%以上が好ましく、最も好ましくは80質量%以上である。PBTの含有率を51質量%以上にすることにより、第2基材層に優れたインパクト強度および耐ピンホール性を持たせることができる。
【0042】
主たる構成成分として用いるPBTは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4-ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは、重合時に1,4-ブタンジオールのエーテル結合により生成する副生成物以外は含まれないことである。
【0043】
第2基材層は、PBT以外のポリエステル樹脂を含んでいてもよい。これにより、例えばフィルム状の基材1を二軸延伸させる場合の成膜性や第2基材層の力学特性を調整することができる。PBT以外のポリエステル樹脂の添加量は、40質量%以下が好ましい。
【0044】
第2の構成に係るフィルム状の第2基材層は、例えばキャスト法によって作製され得る。
図5は、第2基材層の層構成の一例を示す断面図である。樹脂を多層化してキャストすることによって第2基材層が作製される場合、
図5に示すように、第2基材層は、複数の層31を含む多層構造部からなる。複数の層31はそれぞれ、主成分としてPBTを含む。例えば、複数の層31はそれぞれ、51質量%以上のPBTを含む。なお、複数の層31においては、n番目の層31の上にn+1番目の層31が直接積層されている。すなわち、複数の層31の間には、接着剤層や接着層が介在されていない。第2基材層は、少なくとも10層以上、好ましくは60層以上、より好ましくは250層以上、更に好ましくは1000層以上の層31を含む多層構造部からなる。層31の厚さは、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。また、層31の厚さは、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
【0045】
第2の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第2の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。第2基材層の厚さを9μm以上にすることにより、基材1が十分な強度を有するようになる。また、第2基材層の厚さを25μm以下にすることにより、第2基材層が優れた成形性を示すようになる。このため、第2基材層を含む積層体を加工して包装袋を製造する工程を効率的に実施することができる。
【0046】
(第2基材層の第3の構成)
第3の構成に係る第2基材層は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを含む。例えば、第2基材層は、グリコール成分としての1,4-ブタンジオール、又はそのエステル形成性誘導体と、二塩基酸成分としてのテレフタル酸、又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、それらを縮合して得られるホモ、またはコポリマータイプのポリエステルを含む。第3の構成に係る第2基材層におけるPBTの含有率は、51質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、さらには80質量%以上が好ましく、最も好ましくは90質量%以上である。また、第3の構成に係る第2基材層は、ポリブチレンテレフタレートと添加剤のみで構成されていることが好ましい。
【0047】
第2基材層に機械的強度を付与するためには、PBTのうち、融点が200℃以上且つ250℃以下、IV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下のものが好ましい。さらには、融点が215℃以上且つ225℃以下、IV値が1.15dl/g以上且つ1.30dl/g以下のものが特に好ましい。これらのIV値は、第2基材層を構成する材料全体によって満たされていてもよい。IV値は、JIS K 7367-5:2000に基づいて算出され得る。
【0048】
第3の構成に係る第2基材層は、PETなどPBT以外のポリエステル樹脂を30質量%以下の範囲で含んでいてもよい。第2基材層がPBTに加えてPETを含むことにより、PBT結晶化を抑制することができ、PBTフィルムの延伸加工性を向上させることができる。
【0049】
第3の構成に係るフィルム状の第2基材層を作製する方法としては、例えば、未延伸原反を延伸させて延伸フィルムを得る二軸延伸法を採用することができる。二軸延伸法は、特には限定されない。例えば、チューブラー法又はテンター法により、縦方向及び横方向を同時に延伸してもよく、若しくは、縦方向及び横方向を逐次延伸してもよい。このうち、チューブラー法は、周方向の物性バランスが良好な延伸フィルムを得ることができ、特に好ましく採用される。
【0050】
第2基材層は、例えば、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを含む単一の層によって構成されている。上述のチューブラー法によれば、高い冷却速度で未延伸原反を成膜するので、未延伸原反が単一の層によって構成される場合であっても、低い結晶状態を保つことができ、このため、安定して未延伸原反を延伸することができる。
【0051】
第2基材層にPBTを主成分として含ませることにより、積層体の耐熱性を高くすることができる。例えば、積層体の引張弾性率を十分に高くすることができる。特に、高温の雰囲気下、例えば100℃の雰囲気下における積層体の引張弾性率(以下、熱間引張弾性率とも記す)を十分に高くすることができる。
【0052】
以下、上述の第2の構成及び第3の構成のように第2基材層がPBTを主成分として含むことの利点について説明する。
【0053】
PBTは、耐熱性に優れる。このため、食品などの内容物を収容する包装袋にボイル処理やレトルト処理を施す際に第2基材層が変形したり第2基材層の強度が低下したりすることを抑制することができる。レトルト処理とは、内容物を包装袋に充填して包装袋を密封した後、包装袋を加圧状態で加熱する処理である。レトルト処理の温度は、例えば120℃以上である。ボイル処理とは、内容物を包装袋に充填して包装袋を密封した後、包装袋を大気圧下で湯煎する処理である。ボイル処理の温度は、例えば60℃以上且つ100℃以下である。
また、第2基材層は、高い強度を有する。このため、包装袋を構成する包装用材料8がナイロンを含む場合と同様に、包装袋に耐突き刺し性を持たせることができる。
【0054】
[シーラント層]
シーラント層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンから選択される1種または2種以上の樹脂を含む。シーラント層は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、シーラント層は、好ましくは無延伸のフィルムからなる。
【0055】
シーラント層を構成する材料の融点は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。シーラント層の融点を高くすることにより、包装袋のレトルト処理を高温で実施することが可能になり、このため、レトルト処理に要する時間を短くすることができる。なお、シーラント層を構成する材料の融点は、第1基材層や第2基材層などの基材層を構成する樹脂の融点より低い。
【0056】
好ましくは、シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む。例えば、シーラント層を構成するフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする無延伸フィルムである。プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることにより、シーラント層の耐衝撃性を高めることができ、これにより、落下時の衝撃により包装袋が破袋してしまうことを抑制することができる。また、積層体の耐突き刺し性を高めることができる。
【0057】
また、シーラント層は、熱可塑性エラストマーを更に含んでいてもよい。熱可塑性エラストマーを用いることにより、シーラント層の耐衝撃性や耐突き刺し性を更に高めることができる。
【0058】
熱可塑性エラストマーは、例えば水添スチレン系熱可塑性エラストマーである。水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBからなる構造を有する。また、熱可塑性エラストマーは、エチレン・α-オレフィンエラストマーであってもよい。エチレン・α-オレフィンエラストマーは、低結晶性もしくは非晶性の共重合体エラストマーであり、主成分としての50~90質量%のエチレンと共重合モノマーとしてのα-オレフィンとのランダム共重合体である。
【0059】
シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、例えば80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。
【0060】
プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法としては、触媒を用いて原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。触媒としては、チーグラー・ナッタ型やメタロセン触媒などを用いることができる。
【0061】
シーラント層の厚さは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上である。また、シーラント層の厚さは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
【0062】
[バリア層]
次に、バリア層について説明する。
【0063】
(金属箔)
図1及び
図2に示す積層体のバリア層を構成する金属箔としては、従来公知の金属箔を用いることができる。酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性や、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性の点からは、アルミニウム箔が好ましい。金属箔の厚さは、例えば5μm以上且つ15μm以下である。
【0064】
(蒸着層)
図3及び
図4に示す積層体のバリア層を構成する蒸着層は、従来公知の方法により形成することができる蒸着膜からなる層である。蒸着層を備えることで、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性を、付与ないし向上させることができる。なお、バリア層は、蒸着層を2層以上備えてもよい。蒸着層を2層以上備える場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0065】
蒸着膜は、金属の蒸着膜からなる金属蒸着膜であってもよく、無機酸化物の蒸着膜からなる透明蒸着膜であってもよい。蒸着膜が金属蒸着膜である場合、蒸着膜からなる蒸着層は、
図4に示すように第2基材層に設けられる。これにより、印刷層25が第1基材層側から視認可能になる。蒸着膜が透明蒸着膜である場合、蒸着膜からなる蒸着層は、
図3に示すように第1基材層に設けられてもよく、
図4に示すように第2基材層に設けられてもよい。
【0066】
バリア層が金属蒸着膜を含む場合、上述のガスバリア性に加えて、可視光および紫外線等の透過を阻止する遮光性を、付与ないし向上させることができる。また、包装袋に金属光沢を付与することができるため、意匠性を向上させることができる。
バリア層が透明蒸着膜を含む場合、内容物の透過性を保ちながら、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性を付与ないし向上させることができる。
【0067】
金属蒸着膜としては、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、金(Au)、クロム(Cr)等の金属蒸着膜を使用することができる。特に、包装袋用としては、アルミニウムの蒸着膜を備えることが好ましい。
【0068】
金属蒸着膜の膜厚としては、使用する金属の種類等によって異なるが、例えば、50Å以上2000Å以下、好ましくは、100Å以上1000Å以下の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。更に具体的に説明すると、アルミニウムの蒸着膜の場合には、膜厚50Å以上600Å以下、更に、好ましくは、100Å以上450Å以下が望ましい。
【0069】
透明蒸着膜としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物の蒸着膜を使用することができる。特に、包装袋用としては、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素の蒸着膜を備えることが好ましい。
【0070】
無機酸化物の表記は、例えば、SiOX、AlOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、無機元素を表し、Xの値は、無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1.5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~2、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。包装用材料には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0071】
透明蒸着膜の膜厚としては、使用する無機酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50Å以上2000Å以下、好ましくは、100Å以上1000Å以下の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。例えば、酸化アルミニウムあるいは酸化ケイ素の蒸着膜の場合には、膜厚50Å以上500Å以下、更に、好ましくは、100Å以上300Å以下が望ましいものである。
【0072】
蒸着膜は、基材層などに以下の形成方法を用いて形成することができる。蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0073】
(ガスバリア性塗布膜)
必要に応じて、上記の蒸着層の上にガスバリア性塗布膜を設けてもよい。ガスバリア性塗布膜は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を抑制する層として機能する塗膜である。ガスバリア性塗布膜は、一般式R1
nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物により得られる。
【0074】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解の縮合物の少なくとも一種以上を使用することができる。また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよい。アルコキシドの加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2~6量体のものを使用される。
【0075】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他などを使用することができる。本実施形態において、好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタンなどを挙げることができる。また、本実施の形態において、アルコキシドの用い方としては、単独または二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0076】
また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、その他などのアルキル基を挙げることができる。また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、その他などを挙げることができる。なお、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0077】
上記のガスバリア性組成物を調製する際、例えば、シランカップリング剤などを添加してもよい。上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。本実施形態においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。上記のようなシランカップリング剤は、一種または二種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
[印刷層]
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、必要に応じて設けることができ、例えば、第1基材層と金属蒸着層の間に設けることができる。印刷層は、第1基材層の全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。
【0079】
印刷層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚さを有するものである。
【0080】
(接着剤層)
接着剤層は、ドライラミネート法により2層を接着する場合、積層される側の層の表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成することができる。接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。2液硬化型の接着剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
【0081】
[他の層]
本実施の形態による積層体は、他の層として、熱可塑性樹脂層等をさらに備えていてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、または環状ポリオレフィン系樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)などを用いることができる。
【0082】
<積層体の製造方法>
本実施の形態による積層体の製造方法は特に限定されず、ドライラミネート法等の従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0083】
本実施の形態による積層体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。また、本実施の形態による積層体に、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施して、成型品を製造することもできる。
【0084】
次に、本実施の形態による積層体の効果について説明する。
本実施の形態によれば、ガスバリア性を有し、且つ環境負荷を低減することができる積層体を提供することができる。
【0085】
<包装袋>
本実施の形態による包装袋は、上記積層体を備えるものであり、レトルト殺菌用又はボイル殺菌用として好適に使用することができる。例えば、上記積層体を使用し、これを二つ折にするか、又は該積層体を2枚用意し、表側の積層体のシーラント層の面と裏側の積層体のシーラント層の面とを対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装袋を製造することができる。また、表側の積層体と裏側の積層体との間に、折り返された状態の積層体を挿入した状態でヒートシールを行い、ガセット型の包装袋を製造することもできる。なお、包装袋を構成する積層体の全てが、本実施の形態による上記積層体でなくてもよい。すなわち、包装袋を構成する積層体の少なくとも一部分が、バイオマス由来のPETを含む第1基材層を有する積層体であればよく、包装袋を構成する積層体のその他の部分が、化石燃料由来のPETからなる第1基材層を含む積層体であってもよい。
【0086】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0087】
包装袋は、高いバイオマス度を示しながらも、優れた耐突き刺し性及びガスバリア性を有し、さらにはレトルト殺菌に耐える耐熱性を有することができる。このため、包装袋を、例えば、飲食品、果汁、ジュ-ス、飲料水、酒、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、肉製品、煮物、餅、液体ス-プ、調味料等の各種の飲食料品、液体洗剤、化粧品、および化成品等の包装として好適に使用することができる。
【0088】
本実施の形態による包装袋について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるスタンディングパウチの模式正面図の一例を
図6に示す。
図6に示したスタンディングパウチ50においては、パウチ50の底部52を、上記積層体からなる表面フィルム54及び裏面フィルム55の下部の間に底面フィルム56(表面フィルム及び裏面フィルムと同じてあっても異なっていてもよい)を内側に折り返し部561まで挿入してなるガセット部を有する形式で形成する。また、内側に折り込まれた底面フィルム56の両側下端近傍には、半円形の切り欠き部561を設ける。そして、ガセット部を、内側が両側から中央部にかけて湾曲線状に凹状となる船底形の底部シール部521でヒートシールして形成する。また、パウチの胴部は、表面フィルム54及び裏面フィルム55の両側の側部53を側部シール部531でヒートシールして形成する。また、パウチ50の上部51は、上部シール部511でヒートシールするが、この部分は内容物58の充填口に使用するため、内容物58の充填前は未シールの開口部とし、内容物58の充填後にヒートシールするものである。なお、上述の例では、表面フィルム54、裏面フィルム55及び底面フィルム56という3枚の積層体を用いてスタンディングパウチ50を構成する例について説明したが、スタンディングパウチ50を構成する積層体の枚数は特には限定されない。
【0089】
さらに、スタンディングパウチ50には、表面フィルム54及び裏面フィルム55を引き裂いてパウチ50を開封するための易開封性手段59が設けられていてもよい。例えば
図6に示すように、易開封性手段59は、側部シール部531に形成された、引き裂きの起点となるノッチ591を含んでいてもよい。また、パウチ50を引き裂く際の経路となる部分には、易開封性手段59として、レーザー加工やカッターなどで形成されたハーフカット線が設けられていてもよい。
【0090】
(第2の実施の形態)
上述の第1の実施の形態においては、積層体がバリア層を備える構成について示した。本実施の形態においては、積層体がバリア層を備えない例について説明する。
図8は、第2の実施の形態に係る積層体20の一例を示す模式断面図である。
図8に示す積層体20は、積層体20がバリア層24を備えない点が異なるのみであり、その他の点は、
図3に示す上述の第1の実施の形態に係る積層体と略同一である。本実施の形態において、
図3に示す上述の第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、第1の実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0091】
図8に示した積層体20は、第1基材層21と、印刷層25と、接着剤層26と、第2基材層22と、接着剤層27と、シーラント層23とをこの順に備える。積層体20を備える包装袋においては、シーラント層23が内面側に位置する。
【0092】
次に、第1基材層について説明する。第2の実施の形態においても、上述の第1の実施の形態の場合と同様に、第1基材層が、バイオマス由来のPETを含む。このため、従来に比べて化石燃料由来のPETの量を削減し環境負荷をより減らすことができる。
【0093】
第1基材層の「バイオマス度」は、第1の実施の形態の場合と同様に、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値で示してもよい。若しくは、第1基材層の「バイオマス度」は、バイオマス由来成分の重量比率で示してもよい。
【0094】
バイオマス由来成分の重量比率で第1基材層の「バイオマス度」を表す場合、以下のように「バイオマス度」を求めることができる。PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は約30%であるため、バイオマス度は約30%となる。また、化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸とを用いて製造した化石燃料由来のポリエステル中のバイオマス由来成分の重量比率は0%であり、化石燃料由来のポリエステルのバイオマス度は0%となる。
なお、上述の第1の実施の形態に係る積層体10の第1基材層11、及び積層体20の第1基材層21の「バイオマス度」も、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値ではなく、バイオマス由来成分の重量比率で示されてもよい。
【0095】
第2の実施の形態における第1基材層においては、第1の実施の形態の場合と同様に、バイオマス由来のPET中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10%以上20%以下であることが好ましく、10%以上19%以下であってもよい。
これらのバイオマス度の値をバイオマス由来成分の重量比率に基づいて示すと以下の通りである。
第1の実施の形態の第1基材層、及び第2の実施の形態の第1基材層のいずれにおいても、バイオマス由来成分の重量比率に基づくバイオマス度が、15%以上32%以下であることが好ましく、15%以上30%以下であってもよい。
【0096】
次に、印刷層について説明する。印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含んでいてもよい。この場合、印刷層は、バイオマス由来成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。バイオマス由来成分を含む材料によりポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含む印刷層を形成する場合、印刷層は、主剤としてのポリオールと硬化剤としてのイソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む硬化物を用いて形成することができる。また、バイオマス由来成分を含まない材料により印刷層を形成する場合、印刷層は、従来公知の化石燃料由来成分からなるポリオールと化石燃料由来成分からなるイソシアネート化合物とを用いて形成することができる。ポリオールとしては、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物であるポリエステルポリオール、または、多官能アルコールと多官能イソシアネートとの反応物であるポリエーテルポリオールを用いることができる。
【0097】
〔ポリエステルポリオール〕
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコールおよび多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物
【0098】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、およびサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0099】
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。
【0100】
化石燃料由来の多官能アルコールとしては、1分子中に2個以上、好ましくは2~8個の水酸基を有する化合物を用いることができる。具体的には、化石燃料由来の多官能アルコールとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコールの他、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0101】
バイオマス由来の多官能カルボン酸としては、再生産可能な大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油、ひまし油等の植物由来の油、及びそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油等の植物原料から得られる脂肪族多官能カルボン酸を用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、例えば、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、ダイマー酸等が挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。本実施の形態では、特に、バイオマス由来のコハク酸又はバイオマス由来のセバシン酸を用いることが好ましい。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0102】
化石燃料由来の多官能カルボン酸としては、脂肪族多官能カルボン酸や芳香族多官能カルボン酸を用いることができる。化石燃料由来の脂肪族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、アジピン酸、ドデカン二酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、およびダイマー酸、ならびにそれらのエステル化合物等が挙げられる。また、化石燃料由来の芳香族多官能カルボン酸としては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、およびピロメリット酸、ならびにそれらのエステル化合物等を用いることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0103】
〔ポリエーテルポリオール〕
ポリエーテルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコールおよび多官能イソシアネートの少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエーテルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能イソシアネートとの反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能イソシアネートとの反応物
【0104】
バイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールとしては、上述のポリエステルポリオールにおいて説明したバイオマス由来の多官能アルコール及び化石燃料由来の多官能アルコールを用いることができる。
【0105】
バイオマス由来の多官能イソシアネートとしては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化し、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られたものを用いることができる。バイオマス由来の多官能イソシアネートは、例えば、バイオマス由来のジイソシアネートである。バイオマス由来のジイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のジイソシアネートを得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0106】
1,5-ペンタメチレンジイソシアネートの他の合成方法としては、ホスゲン化法やカルバメート化法が挙げられる。より具体的には、ホスゲン化方法は、1,5-ペンタメチレンジアミンまたはその塩を直接ホスゲンと反応させる方法や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法により、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。また、カルバメート化法は、まず、1,5-ペンタメチレンジアミンまたはその塩をカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させた後、熱分解することにより、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートを合成するものである。本実施の形態において、好適に使用されるポリイソシアネートとしては、三井化学株式会社製の1,5-ペンタメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(商品名:スタビオ(登録商標))が挙げられる。
【0107】
化石燃料由来の多官能イソシアネートとしては、特に限定されず従来公知の物を使用することができ、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-クロル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o-ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、メチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添XDI等の脂環式ジイソシアネート等も挙げられる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0108】
〔着色剤〕
着色剤としては、特に限定されず、従来公知の顔料や染料を用いることができる。
【0109】
印刷層がバイオマス由来成分を含む場合、印刷層は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下の、重量比率に基づくバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0110】
印刷層の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上5g/m2以下、さらに好ましくは1g/m2以上3g/m2以下である。
【0111】
なお、第2の実施の形態において上述した印刷層は、上述の第1の実施の形態に係る積層体10の印刷層15、及び積層体20の印刷層25にも適用され得る。例えば、第1の実施の形態に係る積層体10の印刷層15、及び積層体20の印刷層25も、本実施の形態の場合と同様に、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。
【0112】
また、図示はしないが、第1の実施の形態に係る積層体、及び第2の実施の形態に係る積層体のいずれも、印刷層を備えていなくてもよい。
【0113】
次に、接着剤層について説明する。接着剤層は、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含んでいてもよい。この場合、接着剤層のうち少なくとも1つが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。例えば、
図8に示す積層体20において、接着剤層26、27のいずれか1つのみが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。若しくは、接着剤層26、27のいずれもが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。バイオマス由来成分を含む接着剤層においては、ポリオールまたは上記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含む。若しくは、接着剤層26、27のいずれもが、バイオマス由来成分を含んでいなくてもよい。
【0114】
接着剤層において、バイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物としては、上記の印刷層と同様のバイオマス由来成分を含むイソシアネート化合物を用いることができる。また、接着剤層において、バイオマス由来成分を含むポリオールとしては、上記の印刷層と同様のポリオールを用いることができる。印刷層と接着剤層の両方を、バイオマス由来成分を含む硬化物を用いて形成する場合、印刷層中の硬化物と接着剤層中の硬化物は、同様の組成でも良いし、異なる組成でも良い。
【0115】
接着剤層がバイオマス由来成分を含む場合、接着剤層は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは30%以上50%以下の、重量比率に基づくバイオマス度を有する。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0116】
接着剤層の乾燥後の重量は、好ましくは0.1g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上6g/m2以下、さらに好ましくは2g/m2以上5g/m2以下である。
【0117】
接着剤層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上6μm以下、さらに好ましくは2μm以上5μm以下の厚さを有する。
【0118】
なお第2の実施の形態において上述した接着剤層は、上述の第1の実施の形態に係る積層体10の接着剤層16、17、18、及び積層体20の接着剤層26、27にも適用され得る。
例えば、
図1または
図2に示す積層体10において、接着剤層16、17、18のいずれか1つのみが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。若しくは、接着剤層16、17、18のうちの2つが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。若しくは、接着剤層16、17、18の全てが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。若しくは、接着剤層16、17、18の全てが、バイオマス由来成分を含んでいなくてもよい。
または、
図3または
図4に示す積層体20において、接着剤層26、27のいずれか1つのみが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。若しくは、接着剤層26、27のいずれもが、バイオマス由来成分を含んでいてもよい。若しくは、接着剤層26、27のいずれもが、バイオマス由来成分を含んでいなくてもよい。
【実施例】
【0119】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0120】
[実施例1]
第1基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコール(バイオマスポリエステル)を用いて製膜した、二軸延伸されたPETフィルム(放射性炭素(C14)測定に基づくバイオマス度:13%、厚さ12μm)を準備した。続いて、PETフィルムのうち包装袋を構成する際に内面側に位置する面に、グラビア印刷により印刷層を形成した。また、第2基材層として、上述の第1の構成で説明した、2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)を準備した。また、バリア層として、アルミニウム箔(東洋アルミニウム製、厚さ7μm)を準備した。また、シーラント層として、無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工製、ZK-100、厚さ70μm)を準備した。
【0121】
続いて、PETフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、アルミニウム箔、無延伸ポリプロピレンフィルムをこの順で、ドライラミネート法により積層して、
図1に示す積層体10を作製した。この積層体10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/印/DL/ONy/DL/ALM/DL/CPP
「/」は層と層の境界を表している。左端の層が、積層体の外面を構成する層であり、右端の層が、積層体の内面を構成する層である。
「バイオPET」は、バイオマス由来のPETを意味する。「印」は、印刷層を意味する。「DL」は、接着剤を含む接着剤層を意味する。「ONy」は、ナイロンを意味する。「ALM」は、アルミニウム箔を意味する。「CPP」は、無延伸ポリプロピレンフィルムを意味する。
【0122】
PETフィルムと2軸延伸ナイロンフィルムとの間の接着剤層は、2液硬化型接着剤(ロックペイント(株)製、主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を含む。2軸延伸ナイロンフィルムとアルミニウム箔との間の接着剤層は、2液硬化型接着剤(ロックペイント(株)製、主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を含む。アルミニウム箔と無延伸ポリプロピレンフィルムとの間の接着剤層は、2液硬化型接着剤(ロックペイント(株)製、主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を含む。
【0123】
[実施例2]
第2基材層として、上述の第2の構成で説明した、主成分としてPBTを含む複数の層31を有するPBTフィルムを用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、
図1に示す積層体10を作製した。各層31におけるPBTの含有率は80%であり、層31の層数は1024であり、第2基材層の厚さは15μmであった。積層体10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/印/DL/PBT(第2の構成)/DL/ALM/DL/CPP
【0124】
[実施例3]
第2基材層として、上述の第3の構成で説明した、51質量%のPBTを含み、PBTの融点が224℃、IV値が1.26dl/gであり、チューブラー法で作製された単層のPBTフィルムを用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、
図1に示す積層体10を作製した。第2基材層はPBT及び添加剤のみで構成される単層のフィルムであり、第2基材層の厚さは15μmであった。積層体10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/印/DL/PBT(第3の構成)/DL/ALM/DL/CPP
【0125】
[比較例1]
第1基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸と化石燃料由来のエチレングリコールを用いて製膜した、二軸延伸されたPETフィルム(バイオマス度:0%、東洋紡製、E5102、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、
図1に示す積層体10を作製した。積層体10の層構成は、以下のように表現される。
化石PET/印/DL/ONy/DL/ALM/DL/CPP
「化石PET」は、化石燃料由来のPETを意味する。
【0126】
[実施例4]
第1基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコール(バイオマスポリエステル)を用いて製膜した、二軸延伸されたPETフィルム(放射性炭素(C14)測定に基づくバイオマス度:13%、厚さ12μm)を準備した。続いて、PETフィルムのうち包装袋を構成する際に内面側に位置する面に、厚さ170Åの酸化アルミニウムの蒸着層を形成した。続いて、蒸着層の上に、乾燥状態で厚さが0.3μmのガスバリア性塗布膜を形成した。続いて、ガスバリア性塗布膜の上に、グラビア印刷により印刷層を形成した。このようにして、蒸着層、ガスバリア性塗布膜及び印刷層がこの順で内面側に形成されたPETフィルムを得た。
【0127】
また、第2基材層として、上述の第1の構成で説明した、2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)を準備した。また、シーラント層として、無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工製、ZK-207、厚さ70μm)を準備した。
【0128】
続いて、PETフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムをこの順で、ドライラミネート法により積層して、
図3に示す積層体20を作製した。この積層体20の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/蒸着層/塗布膜/印/DL/ONy/DL/CPP
【0129】
[実施例5]
第2基材層として、上述の第2の構成で説明した、主成分としてPBTを含む複数の層31を有するPBTフィルムを用いたこと以外は、実施例4の場合と同様にして、
図3に示す積層体20を作製した。各層31におけるPBTの含有率は80%であり、層31の層数は1024であり、第2基材層の厚さは15μmであった。積層体20の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/蒸着層/塗布膜/印/DL/PBT(第2の構成)/DL/CPP
【0130】
[実施例6]
第2基材層として、上述の第3の構成で説明した、51質量%のPBTを含み、PBTの融点が224℃、IV値が1.26dl/gであり、チューブラー法で作製された単層のPBTフィルムを用いたこと以外は、実施例4の場合と同様にして、
図3に示す積層体20を作製した。第2基材層はPBT及び添加剤のみで構成される単層のフィルムであり、第2基材層の厚さは15μmであった。積層体20の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/蒸着層/塗布膜/印/DL/PBT(第3の構成)/DL/CPP
【0131】
[比較例2]
第1基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸と化石燃料由来のエチレングリコールを用いて製膜した、二軸延伸されたPETフィルム(バイオマス度:0%、東洋紡製、E5102、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例4の場合と同様にして、
図3に示す積層体20を作製した。積層体20の層構成は、以下のように表現される。
化石PET/蒸着層/塗布膜/印/DL/ONy/DL/CPP
【0132】
(耐突き刺し性の評価)
実施例1~6及び比較例1~2の積層体の突き刺し強度を、JIS Z1707 7.4に準拠して測定した。測定器は、A&D製のテンシロン万能材料試験機RTC-1310を用いた。具体的には、固定されている状態の積層体の試験片に対して、外面側(第1基材層側)から、直径1.0mm、先端形状が半径0.5mmの半球形の針を、50mm/分(1分あたり50mm)の速度で突き刺し、針が積層体を貫通するまでの応力の最大値を測定した。5個以上の試験片について、応力の最大値を測定し、その平均値を積層体の突き刺し強度とした。測定時の環境は、温度23℃、相対湿度50%とした。結果を
図7に示す。
【0133】
(ガスバリア性の評価)
実施例1~6及び比較例1~2の積層体の酸素透過度を、JISK7126-1に準拠した23℃×90%RH環境下でMOCON法を用いて測定した。また、実施例1~6及び比較例1~2の積層体の水蒸気透過度を、JISK7129Bに準拠した40℃×90%RH環境下でMOCON法を用いて測定した。結果を
図7に示す。
【0134】
(シール強度の評価)
実施例1~6及び比較例1~2の積層体をそれぞれ2枚準備し、2枚の積層体の内面同士を部分的にヒートシールした。その後、23℃の雰囲気下において、15mm幅における積層体間のシール強度を、JIS 1707 7.5に準拠して測定した。結果を
図7に示す。
【0135】
(耐熱性の評価)
実施例1~6及び比較例1~2の積層体を用いてスタンディングパウチを作製した。内容物としては、水を充填した。続いて、スタンディングパウチを121℃で40分加熱するレトルト殺菌処理を施した。その後、スタンディングパウチの外観に白化が見られるかどうかを確認した。結果を
図7に示す。
図7において、「good」は、目視にて白化が確認されなかったことを意味する。また、「bad」は、目視にて白化が確認されたことを意味する。
【0136】
[実施例7]
蒸着層及び塗布膜からなるバリア層、及び印刷層を設けなかったこと、並びに、シーラント層として、無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工製、ZK-500、厚さ60μm)を用いたこと以外は、実施例4の場合と同様にして、積層体を作製した。積層体の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/DL/ONy/DL/CPP
【0137】
[実施例8]
シーラント層として、ポリエチレンフィルム(厚さ50μm)を準備したこと以外は、実施例7の場合と同様にして、積層体を作製した。ポリエチレンフィルムとしては、下記のように作製されるものを用いた。まず、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.918g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度:0%)90質量部と、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(密度:0.924g/cm3、MFR:2.0g/10分、バイオマス度:0%)10質量部とを溶融混練して、樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成膜して、シーラント層用の単層のポリエチレンフィルム(バイオマス度:0%)を得た。
積層体の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/DL/ONy/DL/PE
「PE」は、ポリエチレンフィルムを意味する。
【符号の説明】
【0138】
10、20 積層体
11、21 第1基材層
12、22 第2基材層
13、23 シーラント層
14、24 バリア層
141 金属箔
241 蒸着層
242 ガスバリア性塗布膜
15、25 印刷層
16、17、18、26、27 接着剤層
50 スタンディングパウチ