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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】動作支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221101BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B25J11/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018076141
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019185432
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 学
(72)【発明者】
【氏名】竹内 真司
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-113465(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093038(WO,A1)
【文献】特開2011-36374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシスト対象作業を行う複数のアシスト対象者のそれぞれに装着され、前記アシスト対象者のアシスト対象身体部の動作を支援する複数のアシスト装置と、
前記複数のアシスト装置を管理する管理装置とを備え、
前記アシスト装置は、前記アシスト対象身体部の動作を支援する動力を発生する動力部と、前記管理装置と通信可能な通信部と、前記通信部を介して前記動力部の動作情報を前記管理装置に送信する動作情報送信部とを有し、
前記管理装置は、前記複数のアシスト装置から得られた前記動作情報に基づいて前記複数のアシスト対象者の作業状態を統括する統括情報を生成し、前記統括情報の少なくとも一部を前記アシスト対象者又は管理者に提示し、
前記統括情報は、前記アシスト対象作業の進捗情報を含み、
前記管理装置は、少なくとも、前記アシスト対象者が前記アシスト対象作業を行った回数、及び前記アシスト対象作業の回数の目標値を基に、前記アシスト対象作業の進捗状況を推定する進捗状況推定部を有する、
動作支援システム。
【請求項2】
前記進捗状況推定部は、予め設定された目標作業回数に対する前記アシスト対象作業を行った回数の比率を前記アシスト対象者毎に演算する、
請求項1に記載の動作支援システム。
【請求項3】
前記進捗状況推定部は、前記複数のアシスト装置から受信した前記アシスト対象作業を行った回数の合計値を演算し、予め設定された目標総作業回数に対する前記アシスト対象作業を行った回数の合計値の比率を演算する、
請求項1に記載の動作支援システム。
【請求項4】
前記アシスト装置は、前記アシスト対象作業を行った回数をカウントする作業回数カウント部を有し、
前記動作情報送信部は、前記作業回数カウント部がカウントしたアシスト対象作業を行った回数を、前記動作情報として前記管理装置に送信する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の動作支援システム。
【請求項5】
前記アシスト装置は、前記動力部に供給される駆動電流を測定する電流測定部を有し、
前記動作情報送信部は、前記電流測定部が測定した前記駆動電流の値を前記動作情報として前記管理装置に送信する、
請求項1乃至の何れか1項に記載の動作支援システム。
【請求項6】
前記管理装置は、受信した前記駆動電流の電流波形を予め取得した基準電流波形と比較することで、前記アシスト対象者の作業姿勢の評価を行う作業姿勢評価部を有する、
請求項に記載の動作支援システム。
【請求項7】
前記管理装置は、受信した前記動作情報を基に、前記アシスト対象者の疲労度を推定する疲労度推定部を有する、
請求項1乃至の何れか1項に記載の動作支援システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記アシスト装置に警告または指示のためのアラート信号を送信可能に構成され、
前記アシスト装置は、前記アラート信号を受信したとき、当該アラート信号を受信したことを前記アシスト対象者に通知する通知部を有する、
請求項1乃至の何れか1項に記載の動作支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場等で用いられる動作支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重作業を行う際の作業者の腰等の負担を軽減するアシスト装置が用いられてきている。アシスト装置は、パワーアシストスーツあるいはパワードスーツとも呼称され、アシスト対象者の身体に装着されてアシスト対象者のアシスト対象身体部(腰や腕など)の動作を支援する。
【0003】
特許文献1では、アシスト装置が自身の動作履歴情報を管理者側に送信すると共に、管理者側から装着者の動作に伴う運動機能の状態に対応した更新情報を受信し、この更新情報に基づいて最適なアシスト動作を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5493142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば工場において、アシスト装置は、製品あるいは部品の積み降ろしや重量物の運搬等、製造ライン外での複数の作業者による作業で用いられることが多い。製造ラインの稼働状況は、例えば工場内の通信ネットワークにより集中管理することが行われつつあるが、製造ライン外での複数の作業者による作業状況を管理することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、複数のアシスト装置を用いた作業の作業状況を容易に管理することが可能な動作支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、アシスト対象作業を行う複数のアシスト対象者のそれぞれに装着され、前記アシスト対象者のアシスト対象身体部の動作を支援する複数のアシスト装置と、前記複数のアシスト装置を管理する管理装置とを備え、前記アシスト装置は、前記アシスト対象身体部の動作を支援する動力を発生する動力部と、前記管理装置と通信可能な通信部と、前記通信部を介して前記動力部の動作情報を前記管理装置に送信する動作情報送信部とを有し、前記管理装置は、前記複数のアシスト装置から得られた前記動作情報に基づいて前記複数のアシスト対象者の作業状態を統括する統括情報を生成し、前記統括情報の少なくとも一部を前記アシスト対象者又は管理者に提示し、前記統括情報は、前記アシスト対象作業の進捗情報を含み、前記管理装置は、少なくとも、前記アシスト対象者が前記アシスト対象作業を行った回数、及び前記アシスト対象作業の回数の目標値を基に、前記アシスト対象作業の進捗状況を推定する進捗状況推定部を有する、動作支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る動作支援システムによれば、アシスト装置を用いた複数のアシスト対象者の作業状況を容易に管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態にかかる動作支援システムで用いるアシスト装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はアシスト機構の分解斜視図である。
図2】アシスト装置の使用状態を示す模式図である。
図3】制御装置の入出力を説明する説明図である。
図4】動作支援システムの概略構成図である。
図5】工場に動作支援システムを適用した場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(アシスト装置の説明)
まず、本実施の形態にかかる動作支援システムで用いるアシスト装置について説明する。図1は、アシスト装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はアシスト機構の分解斜視図である。図2は、アシスト装置の使用状態を示す模式図である。図3は、アシスト装置における制御装置の入出力を説明する説明図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、アシスト装置10は、アシスト対象作業を行うアシスト対象者11に装着され、アシスト対象者11のアシスト対象身体部の動作を支援する。ここでは、アシスト装置10が、アシスト対象者11の腰の動作を支援する場合を説明するが、アシスト対象身体部はこれに限らず、例えば腕や膝であってもよい。また、アシスト対象身体部は、1箇所に限らず、複数箇所(例えば腰及び膝)であってもよい。
【0013】
アシスト装置10は、アシスト対象者11の腰部から背中にかけて装着される装身具12と、装身具12の下部に儲けられた支持架台部13とを備えている。支持架台部13は、アシスト対象者11の腰部の背面を覆うように配置される背面部13aと、アシスト対象者11の腰部の両側面を覆うように配置される側面部13b,13bとを一体に有している。側面視でアシスト対象者11の股関節と重なる位置の側面部13b,13bには、軸受穴13cが形成されている。
【0014】
装身具12は、支持架台部13の背面部13aから上方に延びるように設けられ、装身具12の上部と支持架台部13の側面部13b,13bとをそれぞれ連結するように肩掛けベルト14,14が設けられている。また、支持架台部13の側面部13b,13bの前方の端部同士を連結するように、前側ベルト15が設けられている。肩掛けベルト14,14をアシスト対象者11の肩にかけ、前側ベルト15をアシスト対象者11の腹部の前側で締めることで、装身具12と支持架台部13とがアシスト対象者11に固定される。
【0015】
支持架台部13の側面部13b,13bには、アシスト機構16が設けられている。アシスト機構16は、側面部13b,13bの外側に固定された電動モータからなる動力部としてのアクチュエータ161と、アクチュエータ161の回転軸161aに相対回転不能に連結された入力部材162と、減速機164と、入力部材162と減速機164との間に介在する渦巻バネ163と、減速機164に連結された出力リンク165とを有している。入力部材162,渦巻バネ163、減速機164、及び出力リンク165は、側面部13b,13bの内側に配置される。
【0016】
アクチュエータ161は、駆動電流の供給を受け、アシスト対象者11のアシスト対象身体部の動作を支援する動力(トルク)を発生する。アクチュエータ161の動力出力部材である回転軸161aは、軸受穴13cに挿通されており、軸受穴13c内で入力部材162と連結されている。アクチュエータ161には、回転軸161aの回転角度を検出するモータエンコーダ等のモータ回転角度検出手段161bが設けられている。
【0017】
入力部材162は、アクチュエータ161の動力を渦巻バネ163に伝達する。入力部材162は、その回転軸に対して偏心した位置において軸方向に延びるように設けられ、渦巻バネ163の外側端部163aに相対回転不能に連結された伝達軸162aを有している。渦巻バネ163は、帯状の板ばねを渦巻状に成形してなり、アクチュエータ161から入力部材162を介して伝達された回転量をアシストトルクに変換する。
【0018】
減速機164は、渦巻バネ163の内側端部163bに相対回転不能に連結された入力回転部164aと、出力リンク165に相対回転不能に連結された出力回転部164bと、入力回転部164aと出力回転部164b間に設けられた不図示のギア機構とを有し、渦巻バネ163から伝達されたアシストトルクによる回転量を減量して出力リンク165に伝達する。
【0019】
出力リンク165は、アシスト対象者11の大腿部の外側面に沿って配置される棒状の部材である。出力リンク165の一端部は、減速機164の出力回転部164bに相対回転不能に連結されている。出力リンク165の他端部には、アシスト対象者11の大腿部に装着される装着具165aが設けられている。出力リンク165には、出力リンク165の回転角度を検出するエンコーダやポテンショメータ等の出力リンク回転角度検出部165bが設けられている。
【0020】
一方の肩掛けベルト14には、当該肩掛けベルト14に対して着脱可能に指示端末18が取り付けられている。指示端末18は、管理者からのアラートの通知を行ったり、アシスト制御の微調整を行ったりするためのものである。指示端末18の詳細については後述する。
【0021】
装身具12の背面には、制御ボックス17が設けられている。図3に示すように、制御ボックス17には、電源ユニット171、制御装置172、ドライバ173、及び通信部174が収納されている。電源ユニット171は、例えばリチウム電池等の二次電池を用いたバッテリユニットからなり、制御装置172、ドライバ173、及び通信部174に電源を供給する。
【0022】
制御装置172は、出力リンク回転角度検出部165bで検出した出力リンク165の回転角度、モータ回転角度検出手段161bで検出したアクチュエータ161の回転角度、及びアクチュエータ161の駆動電流を基に、ドライバ173を介してアクチュエータ161を制御する。ドライバ173は、制御装置172からの制御信号に基づき、アクチュエータ161に駆動電流を供給するモータ用のドライバ回路である。ドライバ173には、アクチュエータ161の駆動電流を測定する電流測定部173aが設けられている。
【0023】
通信部174は、後述する管理装置20との通信、及び指示端末18との通信をおこなう無線通信装置である。通信部174における通信方式は特に限定するものではないが、例えばWi-Fi(登録商標)に代表される無線通信の国際規格であるIEEE802.23規格に準拠した方式や、Bluetooth(登録商標)に代表される無線通信の国際規格であるIEEE802.15.1規格に準拠した方式等を用いることができる。
【0024】
指示端末18は、アシスト対象者11を特定するための作業者コードを入力可能な入力装置18aを有する。指示端末18で入力された作業者コードは、通信部174を介して制御装置172に出力される。入力装置18aは、アシスト制御の微調整を行えるように構成されていてもよく、またアシスト制御におけるアシスト強度を入力可能に構成されていてもよい。指示端末18で入力されたアシスト強度は、通信部174を介して制御装置172に出力され、制御装置172にて受信されたアシスト強度に応じたアシスト制御がなされる。
【0025】
また、指示端末18は、制御装置172からアラートを通知する通知信号を受信した際に、アラートの受信をアシスト対象者11に通知する通知装置18bを有している。通知装置18bは、ブザーを用いた音による通知、発光ダイオード等の発光装置を用いた光による通知、バイブレータによる振動、ディスプレイ等の表示器を用いたアラート内容の表示、あるいはこれらの組み合わせにより、アシスト対象者11にアラート信号の受信を通知する。
【0026】
(動作支援システムの説明)
図4は、動作支援システムの概略構成図である。図4に示すように、動作支援システム1は、複数のアシスト装置10と、複数のアシスト装置10を管理する管理装置20とを備えている。
【0027】
複数のアシスト装置10は、管理装置20と通信可能な通信部174をそれぞれ備えており、ネットワーク30を介して管理装置20と通信可能に構成されている。ネットワーク30は、例えば工場等に設定されたイントラネット等のプライベートネットワークである。なお、これに限らず、管理装置20と個々のアシスト装置10とが直接通信可能に構成されていてもよい。
【0028】
各アシスト装置10は、動作情報送信部19aと、作業回数カウント部19bと、通知部19cとを有している。動作情報送信部19a、作業回数カウント部19b、及び通知部19cは、制御装置172に搭載されており、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等のメモリ、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現されている。
【0029】
動作情報送信部19aは、通信部174を介して、アシスト装置10のアクチュエータ161の動作情報を管理装置20に送信する。本実施の形態では、動作情報送信部19aが、アシスト対象者11がアシスト対象作業を行った回数、電流測定部173aが測定したアクチュエータ161の駆動電流の値、指示端末18の入力装置18aで入力された作業者コード等を、動作情報として管理装置20に送信する。
【0030】
作業回数カウント部19bは、アシスト対象者11がアシスト対象作業を行った回数をカウントする。作業回数カウント部19bは、例えばアクチュエータ161の駆動電流の波形を基に、アシスト対象者11が運搬作業等のアシスト対象作業を行った回数をカウントする。作業回数カウント部19bがカウントしたアシスト対象作業の回数は、動作情報送信部19aに出力され、通信部174を介して管理装置20に送信される。
【0031】
通知部19cは、管理装置20から通信部174を介してアラート信号を受信したとき、当該アラート信号を受信したことをアシスト対象者11に通知する。本実施の形態では、通知部19cは、アラート信号を受信したとき、当該アラート信号の内容に応じた通知信号を通信部174を介して指示端末18に送信する。指示端末18の通知装置18bは、受信した通知信号に応じて、音や光や振動を発したり、あるいは表示器への表示によって、アラート信号を受信したことをアシスト対象者11に通知する。
【0032】
なお、図示はしていないが、動作支援システム1は、アシスト対象者11の心拍数等の生理情報(バイタルデータ)を取得し、取得した生理情報を管理装置20に送信可能な生理情報取得手段をさらに備えてもよい。生理情報取得手段は、各アシスト装置10に搭載されていてもよく、アシスト装置10とは別体に設けられていてもよい。
【0033】
管理装置20は、複数のアシスト装置10から得られた動作情報に基づいて複数のアシスト対象者11の作業状態を統括する統括情報を生成し、この統括情報の少なくとも一部をアシスト対象者11又は管理者に提示する。本実施の形態では、管理装置20にディスプレイ40が接続されており、生成した統括情報を管理装置20がディスプレイ40に表示することで、統括情報を管理者に提示するように構成されている。ここでいう統括情報とは、アシスト対象作業の進捗情報、各アシスト対象者11の作業姿勢の情報、及び各アシスト対象者11の疲労度等の情報を含んでいる。
【0034】
管理装置20は、進捗状況推定部21と、作業姿勢評価部22と、疲労度推定部23とを有している。これら進捗状況推定部21、作業姿勢評価部22、及び疲労度推定部23は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等のメモリ、ソフトウェア、ストレージ、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現されている。
【0035】
進捗状況推定部21は、管理装置20が各アシスト装置10から受信した動作情報のうち、アシスト対象者11がアシスト対象作業を行った回数を基に、アシスト対象作業(例えば製品あるいは部品の積み降ろし)の進捗状況を推定する。進捗状況推定部21は、例えば予め設定された目標作業回数に対するアシスト対象作業を行った回数の比率をアシスト対象者11毎に演算する。また、進捗状況推定部21は、例えば各アシスト装置10から受信したアシスト対象作業を行った回数の合計値を演算し、予め設定された目標総作業回数に対するアシスト対象作業を行った回数の合計値の比率を演算する。これらの演算結果はディスプレイ40に表示される。
【0036】
これにより、管理者は、複数のアシスト対象者11によって行われるアシスト対象作業の全体の進捗状況を知ることができる。この進捗状況を知ることで、例えば進捗が遅いアシスト対象者11に対して急いで作業を行うように指示したり、当該アシスト対象者11の作業エリアに比較的進捗の速い他の作業エリアから作業者を派遣したりすることが可能になる。
【0037】
また、動作支援システム1が製造ラインを有する工場に適用される場合には、工場の製造ラインにおける稼働状況も管理装置20に入力し、製造ラインとライン外の作業を含む工場全体での進捗状況を管理装置20で管理できるようにしてもよい。
【0038】
またさらに、本実施の形態では、アシスト装置10が、アシスト対象作業を行った回数をカウントする機能(作業回数カウント部19b)を有する場合について説明しているが、アシスト対象作業を行った回数をカウントする機能は、管理装置20側に搭載されていてもよい。つまり、管理装置20は、例えばアシスト装置10から受信したアクチュエータ161の駆動電流の波形を基に、運搬作業等のアシスト対象作業を行った回数をカウントする機能を有していてもよい。
【0039】
作業姿勢評価部22は、管理装置20が各アシスト装置10から受信した動作情報のうち、アクチュエータ161の駆動電流の値を基に、各アシスト対象者11の作業姿勢を評価する。より具体的には、受信したアクチュエータ161の駆動電流の電流波形を予め取得した基準電流波形と比較することで、作業姿勢評価部22がアシスト対象者11の作業姿勢の評価を行う。基準電流波形は、例えばアシスト対象者11毎に予め正しい姿勢で作業を行ったときの駆動電流の波形を取得しておき、アシスト対象者11の作業者コードと紐付けて記憶しておくとよい。
【0040】
この場合、作業姿勢評価部22は、アシスト装置10を使用しているアシスト対象者11の作業者コードに紐付けて記憶されている基準電流波形を用い、当該基準電流波形と現在の電流波形との乖離が所定よりも大きい場合に作業姿勢が悪化していると判定し、その旨をディスプレイ40に表示する。これにより、管理者は、アシスト対象者11が正しい姿勢でアシスト対象作業を行っているか否かを知ることができる。また、作業姿勢評価部22は、作業姿勢が悪化していると判定された場合に、そのアシスト装置10にアラート信号を送信し、作業姿勢が悪化していることをアシスト対象者11に通知してもよい。これにより、アシスト対象者11の腰痛災害の発生等を抑制し、アシスト対象者11の離脱による作業効率の悪化を抑制可能となる。
【0041】
また、作業姿勢評価部22は、同様のアシスト対象作業を行う複数のアシスト対象者11について、それぞれの駆動電流の電流波形を比較することで、所定のアシスト対象作業を行う際の作業姿勢のばらつきを評価できるように構成されてもよい。さらに、作業姿勢評価部22は、アシスト対象者11ごとに、正しい作業姿勢でアシスト対象作業を行った回数と、正しくない作業姿勢でアシスト対象作業を行った回数の比率を演算し、当該比率を基に、所定のアシスト対象作業への熟練度(技量)を評価できるように構成してもよい。アシスト対象者11の熟練度(技量)を評価することで、そのアシスト対象者11に適した作業を判断することができ、適材適所の人員配置を行うことが可能になる。
【0042】
疲労度推定部23は、各アシスト装置10から受信した動作情報を基に、アシスト装置10を使用しているアシスト対象者11それぞれの疲労度を推定する。疲労度推定部23は、例えばアシスト対象作業を行った回数や作業時間等を基に、アシスト対象者11の疲労度を推定する。動作支援システム1が生理情報取得手段を備えている場合には、疲労度推定部23は、さらに、生理情報取得手段で取得したアシスト対象者の心拍数等の生理情報(バイタルデータ)を考慮し、疲労度を推定するように構成されてもよい。
【0043】
また、疲労度推定部23は、疲労度が所定以上となった場合に、休憩を促すアラート信号をアシスト装置10に送信したり、休憩が必要であることをディスプレイ40に表示したりするように構成されてもよい。適切なタイミングで休憩を促すことで、アシスト対象作業の作業効率を向上させることが可能になる。
【0044】
管理装置20は、管理者の操作によって、警告又は指示のためのアラート信号を任意のアシスト装置10に随時送信可能に構成されることが望ましい。アラート信号については、上述の休憩を促すアラート信号や、作業姿勢の悪化を通知するアラート信号の他、作業の具体的な指示を行う信号、危険作業時に警告を行う信号、及び安全上の理由等により作業の即時停止を促す信号等を含むとよい。
【0045】
また、図4には図示していないが、動作支援システム1は、アシスト装置10の位置情報を取得する位置情報取得手段を有していてもよい。位置情報取得手段としては、例えばアシスト装置10に位置情報取得用の信号を出力する位置情報取得用信号出力部を設けると共に、工場等の所定の作業場所の近傍に離間して複数のアンテナを設け、複数のアンテナで受信した位置情報取得用の信号の受信強度を比較することにより、アシスト装置10の位置を特定するもの等を用いることができる。アシスト装置10の位置情報を取得することで、アシスト対象者11の位置をリアルタイムで特定することが可能となり、工場内での動線の整理や、人員配置の最適化等に寄与する。
【0046】
(動作支援システム1の適用例)
図5は、工場に動作支援システム1を適用した場合の模式図である。図5に示す工場50は、ベアリング等の製品を製造する製造ライン51と、製造ライン51で製造された製品が箱詰めされたケース54を保管する倉庫52と、管理者が使用する管理室53とを有している。工場50の四隅には、位置情報取得手段として用いられるアンテナ57がそれぞれ配置されている。管理室53には、管理装置20及びディスプレイ40が配置されており、管理者による作業状況の管理が行われる。この工場50では、製造ライン51で製造された製品を箱詰めしたケース54を台車55に積み込み、ケース54を積み込んだ台車55を倉庫52まで運搬した後に、倉庫52内で台車55から輸送用のパレット56へとケース54を積み替える作業が行われる。このうち、ケース54を台車55に積み込む作業と、台車55からパレット56へのケース54の積み替え作業が、アシスト装置10を用いて行われるアシスト対象作業となる。パレット56に積み替えられたケース54は、図示しないフォークリフトによりトラックに積み込まれて倉庫52から出荷される。
【0047】
この工場50では、動作支援システム1を適用することにより、管理者が、アシスト対象作業であるケース54を台車55に積み込む作業、及び台車55からパレット56へのケース54の積み替え作業について、作業状況(作業の進捗状況や、各アシスト対象者11の作業姿勢、疲労度、位置情報等)を把握することが可能になる。また、管理装置20で製造ライン51の稼働状況も一括して管理することで、工場50全体の生産管理を行うことが可能になる。
【0048】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、管理装置20において複数のアシスト装置10から得られた動作情報に基づいて複数のアシスト対象者11の作業状態を統括する統括情報を生成し、統括情報の少なくとも一部をアシスト対象者11又は管理者に提示することで、アシスト対象者11又は管理者がアシスト対象作業の作業状況を把握することができ、アシスト対象作業の作業状況を容易に管理することが可能になる。これにより、生産性の向上を実現し得る。
【0049】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0050】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば上記実施の形態で説明したアシスト装置10はあくまで一例であり、アシスト装置10の具体的構成はこれに限定されない。また、上記実施の形態では、アシスト装置10を主に工場で用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば流通用の倉庫での作業、建設現場での作業など、様々な重作業の現場に動作支援システム1を適用可能である。
【0051】
また、上記実施の形態では、アシスト装置10が指示端末18を有する場合について説明したが、指示端末18は必須ではなく、入力装置18aや通知装置18bを、支持架台部13や制御ボックス17に設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…動作支援システム 10…アシスト装置
11…アシスト対象者 161…アクチュエータ(動力部)
173a…電流測定部 174…通信部
19a…動作情報送信部 19b…作業回数カウント部
19c…通知部 20…管理装置
21…進捗状況推定部 22…作業姿勢評価部
23…疲労度推定部
図1
図2
図3
図4
図5