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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】チャックの部品交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/39 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B23B31/39
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018077828
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2018176419
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2017083079
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】永翁 博
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-099503(JP,A)
【文献】特開昭60-228007(JP,A)
【文献】特開平4-115809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のチャックの前面に設けた半径方向の取付溝に、部品を着脱するためのチャックの部品交換装置であって、
前記取付溝の外側延長上に位置して前記取付溝に対する前記部品の出し入れを案内可能なガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記取付溝の後側内面の延長上に位置して前記部品を前後方向で位置決めする後ガイド面と、前記取付溝の左右内面の延長上に位置して前記部品を左右方向で位置決めする左右一対の横ガイド面とを含み、
前記横ガイド面は、互いに、前記部品の出し入れ方向で前記ガイド部における前記取付溝寄りの同じ位置に同じ形状で部分的に配置されていることを特徴とするチャックの部品交換装置。
【請求項2】
前記横ガイド面の上下に、前記横ガイド面間の間隔を上下に拡開させる上傾斜面と下傾斜面とがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチャックの部品交換装置。
【請求項3】
少なくとも前記後ガイド面と前記下傾斜面とには、圧流体の噴出口が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のチャックの部品交換装置。
【請求項4】
前記ガイド部を、前記取付溝の外側延長上となる交換位置と、前記チャックから離間する退避位置との間で移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のチャックの部品交換装置。
【請求項5】
前記移動手段は、基端が前記工作機械の機体へ回転可能に連結され、先端に前記ガイド部を設けた旋回アームであることを特徴とする請求項4に記載のチャックの部品交換装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記チャックが取り付けられる主軸の外周へ軸受を介して基端部が回転可能に連結され、前記基端部から半径方向外側へ突出する先端部に前記ガイド部が設けられた旋回盤と、前記旋回盤を回転動作させる回転制御機構とを含んでなることを特徴とする請求項4に記載のチャックの部品交換装置。
【請求項7】
前記ガイド部に、前記取付溝に出し入れされる前記部品を検出する検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のチャックの部品交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に用いられるチャックの爪等の部品を自動交換するためのチャックの部品交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に用いられるチャックにおいて、例えばワークを把持する爪は、ワークの形状や大きさに応じて部品として複数準備されており、ワークに応じて爪を交換する必要が生じた場合には、爪交換装置によって自動交換される。この爪交換装置として、例えば特許文献1には、工作機械の基部でチャックの上部に、ジョー(爪)を着脱可能に固定するジョーホルダーが位置決め可能な位置決めプレートを設け、ジョーをチャックへ固定する際には、ロボットアームで位置決めプレートへジョーホルダーを取り付けて位置決めした後、ジョーホルダーでのジョーの保持状態を解除すると共に、チャック側のロック機構を解除した状態で、ジョーをジョーホルダーに設けたスライドレールに沿ってチャックの取付溝へ移動させ、ロック機構によってジョーをチャックに固定するようにしたジョー自動交換装置の発明が開示されている。
また、特許文献2には、このような位置決めプレートを用いずに、ロボットアームの先端へ選択的に装備されるナットランナーハンドとジョーハンドとを用い、工具主軸にジョー用工具を装備させて、ロボットアームと工具主軸とで共同して爪を交換するようにした自動交換システムの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-237212号公報
【文献】特許第4955522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の交換装置においては、チャックの上部に位置決めプレートが常に位置しているため、工具が干渉するおそれがある上、切粉が付着してジョーホルダーの位置決めが円滑に行えないおそれも生じる。また、ジョーホルダーを位置決めプレートに固定した上で、ジョーホルダーに設けたスライドレールにジョーをスライドさせてチャックの取付溝に対して着脱を行うため、爪の交換に時間が掛かってしまう。
一方、特許文献2の交換システムのように位置決めプレートを設けなければ干渉や時間のロスは生じないが、チャックの取付溝に爪を正確に位置決めして直線移動させるためには高い精度が必要となり、取付溝への挿入時にこじれが生じたり、切粉によって挿入できなかったりするおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、爪等の部品を短時間で正確且つ確実にチャックに対して着脱することができるチャックの部品交換装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工作機械のチャックの前面に設けた半径方向の取付溝に、部品を着脱するためのチャックの部品交換装置であって、取付溝の外側延長上に位置して取付溝に対する部品の出し入れを案内可能なガイド部を備え、ガイド部は、取付溝の後側内面の延長上に位置して部品を前後方向で位置決めする後ガイド面と、取付溝の左右内面の延長上に位置して部品を左右方向で位置決めする左右一対の横ガイド面とを含み、横ガイド面は、互いに、部品の出し入れ方向でガイド部における取付溝寄りの同じ位置に同じ形状で部分的に配置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、横ガイド面の上下に、横ガイド面間の間隔を上下に拡開させる上傾斜面と下傾斜面とがそれぞれ形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、少なくとも後ガイド面と下傾斜面とには、圧流体の噴出口が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、ガイド部を、取付溝の外側延長上となる交換位置と、チャックから離間する退避位置との間で移動させる移動手段を備えたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4の構成において、移動手段は、基端が工作機械の機体へ回転可能に連結され、先端にガイド部を設けた旋回アームであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4の構成において、移動手段は、チャックが取り付けられる主軸の外周へ軸受を介して基端部が回転可能に連結され、基端部から半径方向外側へ突出する先端部にガイド部が設けられた旋回盤と、旋回盤を回転動作させる回転制御機構とを含んでなることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかの構成において、ガイド部に、取付溝に出し入れされる部品を検出する検出手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、横ガイド面と後ガイド面とで取付溝に対する部品の案内を確保しつつ、ガイド部における取付溝寄りの同じ位置へ同じ形状で部分的に配置される左右一対の横ガイド面により、部品の出し入れのストロークを短くすることができる。よって、部品を短時間で正確且つ確実にチャックに対して着脱することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、横ガイド面の上下に上傾斜面と下傾斜面とをそれぞれ形成したことで、部品が横ガイド面間に進入する際に多少の誤差があっても上傾斜面又は下傾斜面で修正でき、横ガイド面で確実にガイドすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、後ガイド面と下傾斜面とに圧流体の噴出口を設けたことで、部品を交換する際に噴出口から吹き出す圧流体により、部品に付着した切粉等を除去することができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、ガイド部を、取付溝の外側延長上となる交換位置と、チャックから離間する退避位置との間で移動させる移動手段を備えたことで、ガイド部が工具と干渉したり、切粉が付着したりするおそれが低減される。
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加えて、移動手段を旋回アームとしているので、省スペースで移動手段が形成できると共に、ガイド部を大きく離間させることができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項4の効果に加えて、移動手段を、主軸の外周へ軸受を介して連結される旋回盤と回転制御機構とを含んでなる構成としているので、移動手段を機体内で省スペースでコンパクトに形成することができる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の何れかの効果に加えて、ガイド部に部品を検出する検出手段を設けたことで、部品の着脱の際に部品の有無が確認でき、着脱を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】機体内でチャックを正面から見た説明図である(爪交換アームは退避位置)。
図2】チャックの平面図である(爪交換アームは退避位置)。
図3】(A)は爪交換アームを交換位置としたチャックの平面図、(B)はその正面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】ガイド片を示す斜視図である。
図6】爪を取り出す際のロック機構の状態を示す説明図である。
図7】爪を取り出す際のガイド部との関係を示す説明図で、(A)は上方への爪のスライド状態、(B)は前方への爪の取り外し状態である。
図8】爪を取り付ける際のチャックの正面図である。
図9】爪を取り付ける際のロック機構の状態を示す説明図である。
図10】爪を取り付ける際のロック機構の状態を示す説明図である。
図11】ガイド片の変更例を示す説明図である。
図12】ガイド片の変更例を示す説明図である。
図13】後ガイド面の変更例を示す説明図である。
図14】変更例の爪交換装置の説明図で、(A)は旋回盤を交換位置としたチャックの平面を、(B)はその正面をそれぞれ示す。
図15】旋回盤を退避位置としたチャックの正面図である。
図16図14(B)のガイド部のA矢視図である。
図17】ストッパ交換アーム及びチャックの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、NC旋盤等の工作機械の機体内において、チャックを正面から見た説明図、図2はチャックの平面図、図3は爪交換時のチャックの平面図である。図1において、1は機体、2はワークを把持するチャック、3は加工空間を仕切るカバー、4は部品交換装置としての爪交換アームである。
まず,チャック2は、図4にも示すように、機体1内に設けた図示しない主軸の先端に設けられ、正面視が円形状のベース5と、そのベース5内へ放射状に設けられ、軸心に設けたプランジャ6の進退動によって放射方向へ移動する3つのマスタジョー7,7・・と、各マスタジョー7の前側(図4の左側)でチャック2の前面に設けられてベース5の周面に開口する3つの取付溝8,8・・と、各取付溝8に取り付けられる部品としての3つの爪9,9・・とを備えている。
【0010】
爪9は、横断面形状が取付溝8と同形のベースジョー10と、ベースジョー10の前面にボルトで固定されるトップジョー11とからなり、取付溝8に嵌合挿入されたベースジョー10が、マスタジョー7内に設けられたロック機構12にロックされることで、マスタジョー7に固定される。
ここではプランジャ6が後退すると、各マスタジョー7が軸心側へ移動して爪9を一体に移動させてワークの外径を把持でき、プランジャ6が前進すると、各マスタジョー7が外周側へ移動してワークをアンクランプする。
【0011】
ロック機構12は、前面にラック14を備えた係合ブロック13と、係合ブロック13の前側上方に設けられるロックピン15と、係合ブロック13の後側側方に設けられるロック解除ピン16とを備えてなる。
係合ブロック13は、マスタジョー7内に設けられて前端が取付溝8と連通する前後方向の収容室17内で、ラック14が取付溝8内に突出する前進位置と、ラック14が取付溝8内から退避する後退位置との間で前後移動可能に収容されている。係合ブロック13の上面には、ロックピン15の下方に位置する擂り鉢状の係止凹部18が形成され、後部には、後面から前下がり傾斜する傾斜溝19が形成されている。
【0012】
ロックピン15の下端は、係止凹部18の形状に合わせた先細り形状に形成され、ロックピン15の前面には、マスタジョー7に前面から螺合されるストッパネジ20が係止する上下方向の凹部21が形成されている。よって、ロックピン15は、マスタジョー7から抜け止めされた状態で上下移動可能となっている。
このロックピン15は、係合ブロック13の前進位置では、係止凹部18が真下に位置することで、下端が係止凹部18に係止するロック位置まで下降できる。このときロックピン15の上端はマスタジョー7の上面と略面一となる。逆に、係合ブロック13の後退位置では、係止凹部18が真下からやや後方にずれて、先端を係止凹部18に係止させたロック解除位置となる。このときロックピン15の上端は、マスタジョー7の上面から突出する。
【0013】
ロック解除ピン16は、収容室17に連通して上下方向に形成された有底孔22内で上下動可能に収容されて、上端を、有底孔22の上部に形成された大径部23内に露出させている。ロック解除ピン16の側面には、係合ブロック13の傾斜溝19へ横向きに挿通されるガイドピン24が設けられている。また、マスタジョー7の上面には、大径部23に隣接して位置決め凹部25(図2)が形成されている。
よって、ロック解除ピン16が下降すると、ガイドピン24が相対的に傾斜溝19に沿って下降することで、係合ブロック13を後退位置まで後退させる。このロック解除位置では、ロック解除ピン16の上端は、マスタジョー7の上面よりも下方にあって大径部23内に没入している。逆に係合ブロック13が前進位置まで前進すると、ガイドピン24が相対的に傾斜溝19に沿って上昇することで、ロック解除ピン16を上昇させる。このロック位置では、ロック解除ピン16の上端は、マスタジョー7の上面と略面一となる。
【0014】
そして、爪交換アーム4は、機体1に下端が回転可能に連結される移動手段としての円弧状の旋回アーム30と、旋回アーム30の上端に連結されるガイド部31とを備えている。
まず旋回アーム30は、機体1内に設けた図示しない回転制御機構によって、図1に示すようにガイド部31がカバー3の外に位置する退避位置と、図3に示すように、カバー3内の加工空間内に進入したガイド部31がチャック2の上方に非接触状態で位置する交換位置との間で回転可能となっている。旋回アーム30内には、ガイド部31へ圧縮空気を供給する図示しないエア供給路が設けられている。
【0015】
ガイド部31は、図4にも示すように、四角ブロック状の本体32の前面に、左右一対のガイド片33,33を突設してなり、本体32内には、前後にロック用シリンダ34とロック解除用シリンダ35とが設けられている。
まず、前側のロック用シリンダ34は、交換位置でロック機構12のロックピン15の軸線上の上方に位置するエアシリンダで、シリンダ室36内のピストン37と、ピストン37の上下に設けられて本体32を貫通する上側ロッド38と下側ロッド39とを備えている。ピストン37は、シリンダ室36内への圧縮空気の供給により、下側ロッド39がマスタジョー7の上面に当接する下死点と、下側ロッド39がマスタジョー7の上面から上方に離れる上死点との間を移動するようになっている。上側ロッド38の上端には、被検知体40が取り付けられて、本体32の上面に設けた上下の近接センサ41,41によって被検知体40を検知することで、上死点と下死点とが検知可能となっている。
【0016】
後側のロック解除用シリンダ35は、交換位置でマスタジョー7の上面中央よりも後方に位置するエアシリンダで、シリンダ室42内のピストン43と、ピストン43の下側に設けられて本体32を貫通する押圧ロッド44とを備えている。押圧ロッド44の下端には、本体32の下面に設けたガイド凹部45内で上下移動可能な押圧ブロック46が、ボルト47で連結されている。ピストン43は、シリンダ室42内への圧縮空気の供給により、押圧ブロック46が本体32の下面から突出する下死点と、押圧ブロック46がガイド凹部45内へ没入する上死点との間を移動するようになっている。
この押圧ブロック46は、前部がマスタジョー7の上面にオーバーラップしており、その下面には、マスタジョー7の有底孔22に対応する押圧突起48と、位置決め凹部25に対応する位置決め突起49とが左右に並設されている。
【0017】
押圧突起48と位置決め突起49とは、押圧ブロック46の下死点で有底孔22の大径部23と位置決め凹部25とにそれぞれ進入するものであるが、ここでは位置決め突起49の方が押圧突起48よりも下方に長く形成されている。すなわち、押圧ブロック46が上死点から下降する際、先に位置決め突起49が位置決め凹部25に進入してガイド部31に対してマスタジョー7を位置決めした後、押圧突起48が大径部23に進入するようになっている。位置決め突起49の下端は、先細りのテーパ状となっている。
【0018】
そして、ガイド片33,33は、内法がベースジョー10の左右幅よりも広い間隔となるように形成されているが、内面下部には、図5にも示すように、互いの対向側へ突出するガイド突起50,50が形成されて、ガイド突起50,50に、ベースジョー10の左右幅に合わせて内法を設定した矩形状の横ガイド面51,51が形成されている。各ガイド突起50の上側には、下方へ行くに従って徐々に内側へ突出して横ガイド面51と連続する上傾斜面52が形成され、各ガイド突起50の下側には、上方へ行くに従って徐々に内側へ突出して横ガイド面51と連続する下傾斜面53が形成されている。この左右の上傾斜面52,52により、横ガイド面51,51間の間隔が上方へ拡開し、左右の下傾斜面53,53により、横ガイド面51,51間の間隔が下方へ拡開するようになっている。
【0019】
また、ガイド片33,33の前端内側には、前方へ行くに従って内法が拡開する一対の前テーパ面54,54が形成されて、ガイド片33,33の根元内側には、横ガイド面51と直交してガイド片33の全長に亘る後ガイド面56,56をそれぞれ上下方向に備えた一対の段部55,55が形成されている。
ここでの横ガイド面51,51は、後ガイド面56,56の上下方向の中間位置よりも下方にあって、各横ガイド面51の上下長さは、後ガイド面56の上下長さの半分以下となっている。
【0020】
以上の如く構成された工作機械において、まず、チャック2から爪9を取り外す際には、爪交換アーム4を退避位置から図3,4の交換位置に移動させた後、図6に示すように、ロック解除用シリンダ35側のピストン43を上死点から下降させて押圧ロッド44と共に押圧ブロック46を下降させる。すると、前述のように先に位置決め突起49が位置決め凹部25に挿入されてマスタジョー7をガイド部31に対して位置決めした上で、下死点で押圧突起48が大径部23に進入してロック解除ピン16をロック解除位置まで押し込む。これにより、ガイドピン24が傾斜溝19を下降して係合ブロック13を後退位置へ後退させ、ラック14をベースジョー10の背面に設けたラック10aから離間させる。この係合ブロック13の後退と共に係止凹部18が後退することで、ロックピン15は、係止凹部18のガイドにより、上端が突出するロック解除位置へ移動する。
【0021】
この状態で、図示しないロボットアームにより、トップジョー11を把持して爪9を取付溝8に沿って上方へスライドさせる。すると、図7(A)に示すように、取付溝8から突出したベースジョー10が、ガイド突起50,50の間に嵌合して左右の側面を横ガイド面51,51の間に当接させると共に、後面の両側を後ガイド面56,56に当接させる。よって、爪9は、ベースジョー10が横ガイド面51,51と後ガイド面56,56とにガイドされて取付溝8からこじれることなく一直線上に引き出される。なお、ベースジョー10が横ガイド面51,51の間に入り込む際、左右に多少の誤差があっても、下傾斜面53,53によって位置の修正がなされる。
【0022】
そして、ベースジョー10が横ガイド面51,51を越えると、それよりも広いガイド片33,33の間に達するため、そのまま図6の矢印及び図7(B)に示すように、ガイド片33,33の間からベースジョー10を前方へ抜き取ることができる。よって、ガイド片33,33の間よりも上方へ爪9を移動させる必要がなくなり、短いストロークで爪9を取り外すことができる。
【0023】
一方、新たな爪9を取り付ける際、図8に示すように、ロボットアームにより、トップジョー11を把持した爪9を、ベースジョー10を後にして、横ガイド面51,51の上側でガイド片33,33の間に前方から進入させて、ベースジョー10の後面両側を後ガイド面56,56に当接させる。そして、そのまま爪9を下方へスライドさせると、ベースジョー10が、ガイド突起50,50の間に嵌合して左右の側面を横ガイド面51,51の間に当接させる。よって、爪9は、図9に示すように、ベースジョー10が横ガイド面51,51と後ガイド面56,56とにガイドされてこじれることなく一直線上に下降して取付溝8内へ導かれる。なお、ベースジョー10が横ガイド面51,51の間に入り込む際、左右に多少の誤差があっても、上傾斜面52,52によって位置の修正がなされる。
【0024】
ベースジョー10が取付溝8内へ進入した後、図10に示すように、ロック用シリンダ34側のピストン37を上死点から下降させて、下方へ突出した下側ロッド39によってロックピン15をマスタジョー7内のロック位置まで押し込む。すると、ロックピン15の下端が係止凹部18に係止することで係合ブロック13が係止凹部18の形状に沿って前進位置まで移動し、ラック14をベースジョー10のラック10aに係合させる。このとき、ロック解除用シリンダ35ではピストン43を上死点に引き上げて押圧ロッド44と共に押圧ブロック46を上死点に退避させておく。よって、係合ブロック13の前進に伴い、傾斜溝19内をガイドピン24が上昇することでロック解除ピン16がロック位置に復帰することになる。
以上の手順を、チャック2を回転させて取付溝8を順番にガイド部31の下方へ割り出して繰り返すことで、全ての爪9の交換が可能となる。
【0025】
このように、上記形態の爪交換アーム4によれば、取付溝8の外側延長上に位置して取付溝8に対する爪9の出し入れを案内可能なガイド部31を備え、ガイド部31は、取付溝8の後側内面の延長上に位置して爪9を前後方向で位置決めする後ガイド面56と、取付溝8の左右内面の延長上に位置して爪9を左右方向で位置決めする左右一対の横ガイド面51,51とを含み、横ガイド面51は、爪9の出し入れ方向でガイド部31における取付溝8寄りの位置へ部分的に配置されていることで、横ガイド面51と後ガイド面56とで取付溝8に対する爪9の案内を確保しつつ、爪9の出し入れのストロークを短くすることができる。よって、爪9を短時間で正確且つ確実にチャック2に対して着脱することができる。
【0026】
特にここでは、横ガイド面51の長さを、後ガイド面56の長さの半分以下としているので、爪9の出し入れのストロークをより短くすることができる。
また、横ガイド面51の上下に、横ガイド面51,51間の間隔を上下に拡開させる上傾斜面52と下傾斜面53とをそれぞれ形成しているので、爪9が横ガイド面51,51間に進入する際に多少の誤差があっても上傾斜面52又は下傾斜面53で修正でき、横ガイド面51,51で確実にガイドすることができる。
【0027】
そして、ガイド部31を、取付溝8の外側延長上となる交換位置と、チャック2から離間する退避位置との間で移動させる移動手段(旋回アーム30)を備えたことで、ガイド部31が工具と干渉したり、切粉が付着したりするおそれが解消される。
また、ガイド部31の移動手段として、基端が機体1へ回転可能に連結され、先端にガイド部31を設けた旋回アーム30としているので、省スペースで移動手段が形成できると共に、ガイド部31を大きく離間させることができる。
【0028】
なお、爪の出し入れ方向での横ガイド面の長さは、上記形態に限らず、後ガイド面の長さの半分以下であれば増減して差し支えない。また、一平面で横ガイド面を形成する形態に限らず、出し入れ方向に複数の横ガイド面を断続的に配置することも可能である。後ガイド面も同様である。さらに、上下傾斜面は何れか一方のみとしてもよいし、両方とも省略してもよい。
【0029】
そして、図11に示すガイド部31のように、各ガイド突起50における上傾斜面52及び下傾斜面53に、前後方向に複数の空気の噴出口57,57・・を形成して、後ガイド面56,56を含む本体32の前面にも、上下方向に複数の空気の噴出口58,58・・を、上下に複数並べて形成することもできる。これらの噴出口57,58から、旋回アーム30及びガイド部31内に設けた図示しないエア供給路を介して圧縮空気を、ベースジョー10が横ガイド面51,51に到達する前のタイミングから吹き出させるようにすればよい。
このように、後ガイド面56と上下傾斜面52,53とに、圧流体としての空気の噴出口57,58を設ければ、爪9を取付溝8に対して出し入れする際に噴出口57,58から吹き出す空気により、爪9に付着した切粉等を除去することができる。なお、噴出口の位置や数は適宜変更可能で、上傾斜面52側の噴出口57は省略してもよい。また、圧流体としてはクーラント等も採用できる。
【0030】
また、上記形態ではガイド片をガイド部の本体の全長に亘って設けているが、これに限らず、図12に示すように、ガイド突起50,50の部分のみにガイド片33,33を設けて短く形成することもできる。
このようにすればガイド片33,33自体の上下寸法を短くでき、ガイド片33,33間に対する爪9の出し入れの方向に自由度が増す。
さらに、後ガイド面56,56は、ガイド部31の本体32の全長に亘って設ける必要はなく、例えば図13に示すように、本体32の前面において、ガイド片33,33よりも上側に段部55,55を部分的に設けて、段部55,55の前面のみを後ガイド面56,56とすることもできる。この段部55は、本体32の下端まで長く形成してもよい。
【0031】
一方、ガイド部の本体内の構造も、チャック側のロック機構に合わせて適宜変更可能で、旋回アームも、円弧状でなくL字状や直線状としたりできる。勿論移動手段としてはこのような旋回アームに限らず、ボールねじ等のアクチュエータを用いてガイド部を交換位置と退避位置との間で直線移動させることも可能である。
また、ガイド部の退避位置も機体の外部に限らず、工具との干渉等のおそれがなければ機体の内部に設定してもよい。
【0032】
図14は、退避位置を機体内とした爪交換装置65の一例を示すもので、(A)が平面、(B)が正面をそれぞれ示している。
この爪交換装置65では、移動手段として、旋回盤66と、回転制御機構としてのエアシリンダ67とが用いられる。まず旋回盤66は、リング状の基端部68が、チャック2が取り付けられる主軸60の先端外周に軸受61を介して回転可能に装着されて、回転中心から半径方向へ突出する先端部69の前面にガイド部31が設けられている。また、基端部68において、回転中心を挟んで先端部69との反対側の外周には、半径方向で外側へ突出する突片70が形成されている。
さらに、機体内には、エアシリンダ67のシリンダ71の基端が回転可能に連結されて、シリンダ71から突出するピストンロッド72の先端は、突片70の前面へ回転可能に連結されている。但し、回転制御機構としてはエアシリンダに限らず、油圧シリンダやボールねじ等のアクチュエータの他、歯車やカム機構等を用いてもよい。
【0033】
ここではエアシリンダ67のピストンロッド72が伸長動作すると、図14に示すように、旋回盤66は、先端部69に設けたガイド部31が上側の取付溝8の上側延長上となる交換位置に旋回し、ピストンロッド72が収縮動作すると、図15に示すように、ガイド部31が当該取付溝8の上側延長上から離間する退避位置に旋回するようになっている。
また、ガイド部31の本体32の下面には、図16に示すように、倒L字状のブラケット73がボルト74で固定されており、ブラケット73の下端には、検出手段としてのセンサ75が、検出面を前向きにした姿勢で取り付けられている。このセンサ75は、旋回盤66の交換位置では、取付溝8の後面延長上に検出面を位置させて、取付溝8に出し入れされる爪9のベースジョー10の移動を検出するもので(なお、図14(B)ではセンサ75を示すためトップジョー11の一部を図面上切り欠いている。)、例えばボールプランジャスイッチ等の接触式のものが使用されるが、非接触式であってもよい。
【0034】
よって、この爪交換装置65において、チャック2から爪9を取り外す際には、エアシリンダ67のピストンロッド72を伸長動作させて旋回盤66を図15の退避位置から図14の交換位置に移動させる。
次に、先の形態と同様に、ガイド部31でロック解除用シリンダ35側のピストン43を上死点から下降させてロックピン15をロック解除位置へ移動させて、図示しないロボットアームにより、前述のようにトップジョー11を把持して爪9を取付溝8に沿って上方へスライドさせ、ガイド片33,33の間から前方へ抜き取ることで爪9を取り外すことができる。このとき、センサ75によってベースジョー10の移動を検出することで、爪9の取り出しが確認できる。
【0035】
一方、新たな爪9を取り付ける際は、ロボットアームにより、トップジョー11を把持した爪9を、ベースジョー10を後にして、ガイド片33,33の間に前方から進入させて、ベースジョー10の後面両側を後ガイド面56,56に当接させた後、爪9を下方へスライドさせると、爪9は一直線上に下降して取付溝8内へ導かれる。ここでもセンサ75によってベースジョー10の移動を検出することで、爪9の挿入が確認できる。
その後、ロック用シリンダ34側のピストン37を上死点から下降させて、ロックピン15をマスタジョー7内のロック位置まで押し込むと、係合ブロック13が前進して爪9がロックされる。
以上の手順を、チャック2を回転させて取付溝8を順番にガイド部31の下方へ割り出して繰り返すことで、全ての爪9の交換が可能となる。
【0036】
このように、変更例の爪交換装置65においても、爪9を短時間で正確且つ確実にチャック2に対して着脱することができる。
特にここでは、移動手段を、チャック2が取り付けられる主軸60の外周へ軸受61を介して基端部68が回転可能に連結され、基端部68から半径方向外側へ突出する先端部69にガイド部31が設けられた旋回盤66と、旋回盤66を回転動作させるエアシリンダ67とを含んでなるものとしているので、移動手段を機体内で省スペースでコンパクトに形成することができる。
また、ガイド部31に、取付溝8に出し入れされる爪9を検出するセンサ75を設けているので、爪9の着脱の際に爪9の有無が確認でき、着脱を確実に行うことができる。
なお、検出手段としてはセンサに限らずマイクロスイッチ等も採用できるし、検出手段による爪の検出は、爪交換アームを用いた先の形態においても行うことができる。但し、検出手段は省略することもできる。
【0037】
さらに、上記形態や変更例では、取付溝を上側に割り出して爪の交換を行っているが、移動手段の形態等によっては上側に限らず、チャックの横側や下側をガイド部の交換位置としても同様に爪の交換は可能である。
加えて、上記形態では、チャックに対する爪の取り外しと取り付けとを一つずつ順番に行っているが、最初に爪交換アームや爪交換装置を用いずにロボットアームによってチャックから全ての爪を取り外した後、爪交換アームや爪交換装置を用いて爪の取り付けを連続して行う手順としても差し支えない。
【0038】
そして、チャックには、図17に示すように、チャック2Aの前面に設けた半径方向の取付溝8a,8a・・に対し、爪9a,9a・・ではなく、ワークWをチャック2Aの前面で位置決めするための位置決め凸部81をそれぞれ前面に備えた部品としてのストッパ80,80・・が、着脱可能に設けられている場合がある。
このようなチャック2Aに対しても、ストッパ80の後面及び左右の側面に合わせて、後ガイド面56,56と部分的な横ガイド面51,51とを有するガイド部31を備えたストッパ交換アーム4Aを用いれば、爪の場合と同様にストッパ80の交換が可能である。すなわち、横ガイド面51と後ガイド面56とで取付溝8aに対するストッパ80の案内を確保しつつ、ストッパ80の出し入れのストロークを短くすることができ、ストッパ80を短時間で正確且つ確実にチャック2Aに対して着脱することができる。
なお、このような爪以外の部品の交換に際しても検出手段の採用による部品の有無は確認可能である。
【符号の説明】
【0039】
1・・機体、2,2A・・チャック、3・・カバー、4・・爪交換アーム、4A・・ストッパ交換アーム、5・・ベース、6・・プランジャ、7・・マスタジョー、8,8a・・取付溝、9・・爪、10・・ベースジョー、11・・トップジョー、12・・ロック機構、13・・係合ブロック、14・・ラック、15・・ロックピン、16・・ロック解除ピン、18・・係止凹部、19・・傾斜溝、22・・有底孔、23・・大径部、24・・ガイドピン、25・・位置決め凹部、30・・旋回アーム、31・・ガイド部、32・・本体、33・・ガイド片、34・・ロック用シリンダ、35・・ロック解除用シリンダ、36,42・・シリンダ室、37,43・・ピストン、38・・上側ロッド、39・・下側ロッド、44・・押圧ロッド、45・・ガイド凹部、46・・押圧ブロック、48・・押圧突起、49・・位置決め突起、50・・ガイド突起、51・・横ガイド面、52・・上傾斜面、53・・下傾斜面、55・・段部、56・・後ガイド面、57,58・・噴出口、60・・主軸、61・・軸受、65・・爪交換装置、66・・旋回盤、67・・エアシリンダ、68・・基端部、69・・先端部、72・・ピストンロッド、73・・ブラケット、75・・センサ、80・・ストッパ、81・・位置決め凸部。
図1
図2
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図17