(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】商品精算システム,買い物バッグおよび精算支援端末
(51)【国際特許分類】
G07G 1/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
G07G1/00 311D
(21)【出願番号】P 2018112717
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】緒方 哲治
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-163359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07G 1/00 - 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFタグを付した商品と,精算対象になる前記商品の収容に用いる買い物バッグと,前記買い物バッグに収容されて利用される精算支援端末を含み,
前記RFタグは,前記RFタグが付された前記商品に係る商品情報を記憶し,
前記買い物バッグは,電波遮蔽機能を有する素材で周壁が覆われている収容空間と,電波遮蔽機能を有しない素材を用いて前記収容空間の周壁に形成された内ポケットを備え,
前記精算支援端末は,前記RFタグと短距離無線通信を行うタグ通信部と,無線ネットワーク通信を行う無線ネットワーク通信部と,前記無線ネットワーク通信部が受信する電波の電波強度を監視し,前記買い物バッグの前記内ポケットに前記精算支援端末が収容されて前記電波強度が予め設定された閾値より下になると,前記タグ通信部を作動させて,前記RFタグから商品情報を読み取って記憶する処理を実行し,前記買い物バッグの外に前記精算支援端末が取り出されて前記電波強度が前記閾値を超えると,前記タグ通信部を停止させた後,前記無線ネットワーク通信部を利用して,この時点で記憶している前記商品情報を送信する処理を実行する制御部を備える,
ことを特徴とする商品精算システム。
【請求項2】
前記精算支援端末から前記商品情報が送信される自動精算装置と,前記精算支援端末と前記自動精算装置との間の無線ネットワーク通信を中継する無線中継機を含み,
前記精算支援端末の前記制御部は,前記電波強度が前記閾値を超えると,前記無線ネットワーク通信部を利用して,前記無線中継機を中継して前記自動精算装置に接続要求を送信した後,前記自動精算装置と接続すると,この時点で記憶している前記商品情報すべてを前記自動精算装置へ送信する処理を行い,前記自動精算装置は,前記精算支援端末から接続要求が送信されると,前記精算支援端末との間で接続処理を実行した後,前記精算支援端末から送信された前記商品情報を利用して精算金額を算出する処理を行う自動精算部を備える,
ことを特徴とする請求項1に記載した商品精算システム。
【請求項3】
前記自動精算装置
と接続する装置として, 前記商品の精算を行う顧客を検知する人体検知センサと,前記顧客にガイダンスを提示するガイダンス装置を備え
,前記自動精算装置の前記自動精算部は,前記人体検知センサが前記顧客を検知してから所定時間の間だけ前記精算支援端末の接続要求を受付け,所定時間の間,前記精算支援端末の接続要求がない場合,警報に係るガイダンスを前記ガイダンス装置に出力させる処理を実行する,
ことを特徴とする請求項2に記載した商品精算システム。
【請求項4】
商品に付されたRFタグと短距離無線通信を行うタグ通信部と,無線ネットワーク通信を行う無線ネットワーク通信部と,前記無線ネットワーク通信部が受信する電波の電波強度を監視し,前記電波強度が予め設定された閾値より下になると,前記タグ通信部を作動させて,前記RFタグから商品情報を読み取って記憶する処理を実行し,前記電波強度が前記閾値を超えると,前記タグ通信部を停止させた後,前記無線ネットワーク通信部を利用して,この時点で記憶している前記商品情報を送信する処理を実行する制御部を備えたことを特徴とする精算支援端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,RFタグを用いて,精算レジを無人化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
流通業界では,地方での人手不足解消や精算待ち時間の短縮などを目的とし,精算レジの無人化がすすめられている。精算レジの無人化には,顧客が購入する商品の自動認識が必要で,RF(Radio Frequency)タグを用いて,顧客が購入する商品の自動認識することが主流になっている。
【0003】
RFタグとは,無線による個体識別(RFID: Radio Frequency IDentification)で利用される媒体である。精算レジの無人化にRFタグを利用する従来技術では,実店舗で販売している商品それぞれにRFタグを付し,実店舗には,RFタグに対応するリーダライタを備えた自動精算装置が設置される。自動精算装置は,顧客が買い物カゴに入れた商品に付されたRFタグを一括して検出することで,顧客が購入する商品すべてを自動認識する。例えば,特許文献1では,RFタグと無線で交信するリーダライタをレジ台に備えたRFIDタグ読み取り装置が開示され,特許文献1で開示されているRFIDタグ読み取り装置はキャッシュレジスタの形態をなしている。
【0004】
特許文献1で開示されているように,RFタグと無線で交信するリーダライタをレジ台に設けると,リーダライタの電波がレジ台の外部に漏えいし,レジ台に置かれた買い物カゴにない商品までもリーダライタが検出してしまう可能性がある。特許文献2で開示されている読取装置は,商品の出入口となる開口部を開閉する開閉フタと,その内部に商品を収容するための空間を有する筐体と,空間内に設けられたアンテナなどを備え,電波の漏えい・混入を防ぐため,少なくとも筐体および開閉フタを,電波を反射する部材(電波反射材)又は電波を吸収する部材(電波吸収材)で形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-251629号公報
【文献】特開2017-228140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2で開示されている発明でも,RFタグとの通信で用いる電波の漏えい・混入を防ぐことができるが,特許文献2で開示されている発明では,精算待ち時間の短縮効果に改善する余地があると考えられる。特許文献2にて開示されている発明では,商品を入れた買い物カゴを読取装置の筐体内部に収容して,読取装置の筐体が有する開閉フタを閉じる作業に要する時間と,読取装置の筐体が有する筐体の開閉フタを開け,読取装置の筐体内部から商品を入れた買い物カゴを取り出す作業に要する時間が少なくとも必要になってしまう。
【0007】
顧客が精算を行う前に,顧客が購入する商品を特定しておけば,顧客が商品の購入代金を精算するときに,購入する商品を特定するための顧客の作業が不必要になるため,精算待ち時間の短縮効果は向上すると考えられる。
【0008】
そこで,本発明は,RFタグとの通信で用いる電波の漏えい・混入を防ぎつつ,顧客が精算を行う前に,顧客が購入する商品を特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決する第1発明は,RFタグを付した商品と,精算対象になる前記商品の収容に用いる買い物バッグと,前記買い物バッグに収容されて利用される精算支援端末を含む商品精算システムである。
前記RFタグは,前記RFタグが付された前記商品に係る商品情報を記憶する。
前記買い物バッグは,電波遮蔽機能を有する素材で周壁が覆われている収容空間と,電波遮蔽機能を有しない素材を用いて前記収容空間の周壁に形成された内ポケットを備える。
前記精算支援端末は,前記RFタグと短距離無線通信を行うタグ通信部と,無線ネットワーク通信を行う無線ネットワーク通信部と,前記無線ネットワーク通信部が受信する電波の電波強度を監視し,前記買い物バッグの前記内ポケットに前記精算支援端末が収容されて前記電波強度が予め設定された閾値より下になると,前記タグ通信部を作動させて,前記RFタグから商品情報を読み取って記憶する処理を実行し,前記買い物バッグの外に前記精算支援端末が取り出されて前記電波強度が前記閾値を超えると,前記タグ通信部を停止させた後,前記無線ネットワーク通信部を利用して,この時点で記憶している前記商品情報を送信する処理を実行する制御部を備える。
第1発明に係る商品精算システムによれば,顧客が購入する前記商品に付された前記RFタグから商品情報を読み取る処理は,精算対象になる前記商品の収容に用いる前記買い物バッグの内部で行われるため,顧客が精算を行う前に,顧客が購入する前記商品を特定できる。また,前記買い物バッグの内部は電波を遮蔽する素材で覆われているため,前記RFタグの誤検出による精算ミスを防ぐことができる。
【0010】
更に,第2発明は,第1発明に記載した商品精算システムにおいて,前記精算支援端末から前記商品情報が送信される自動精算装置と,前記精算支援端末と前記自動精算装置との間の無線ネットワーク通信を中継する無線中継機を含むように構成される。前記精算支援端末の前記制御部は,前記電波強度が前記閾値を超えると,前記無線ネットワーク通信部を利用して,前記無線中継機を中継して前記自動精算装置に接続要求を送信した後,前記自動精算装置と接続すると,この時点で記憶している前記商品情報すべてを前記自動精算装置へ送信する処理を行い,前記自動精算装置は,前記精算支援端末から接続要求が送信されると,前記精算支援端末との間で接続処理を実行した後,前記精算支援端末から送信された前記商品情報を利用して精算金額を算出する処理を行う自動精算部を備える。
第2発明に係る商品精算システムによれば,顧客が前記精算支援端末を前記買い物バッグの外に取り出すだけで,顧客が購入する前記商品に係る精算を歩行しながら行えるので,精算待ち時間の短縮効果をさらに向上できる。
【0011】
更に,第3発明は,第2発明に記載した商品精算システムにおいて,前記自動精算装置と接続する装置として, 前記商品の精算を行う顧客を検知する人体検知センサと,前記顧客にガイダンスを提示するガイダンス装置を備え,前記自動精算装置の前記自動精算部は,前記人体検知センサが前記顧客を検知してから所定時間の間だけ前記精算支援端末の接続要求を受付け,所定時間の間,前記精算支援端末の接続要求がない場合,警報に係るガイダンスを前記ガイダンス装置に出力させる処理を実行する。
前記精算支援端末の接続要求がないことは,顧客が前記買い物バッグから前記精算支援端末を取り出していないことを意味するため,第3発明に係る商品精算システムによれば,前記買い物バッグから前記精算支援端末を取り出さない顧客がいる場合,このことを周囲に周知できる。
【0013】
更に,第4発明は,商品に付されたRFタグと短距離無線通信を行うタグ通信部と,無線ネットワーク通信を行う無線ネットワーク通信部と,前記無線ネットワーク通信部が受信する電波の電波強度を監視し,前記電波強度が予め設定された閾値より下になると,前記タグ通信部を作動させて,前記RFタグから商品情報を読み取って記憶する処理を実行し,前記電波強度が前記閾値を超えると,前記タグ通信部を停止させた後,前記無線ネットワーク通信部を利用して,この時点で記憶している前記商品情報を送信する処理を実行する制御部を備えたことを特徴とする精算支援端末である。第4発明は,本発明に必要な精算支援端末に係る発明である。
【発明の効果】
【0014】
顧客が精算を行う前に,顧客が購入する商品を特定できていれば,顧客が商品の購入代金を精算するときに,顧客が購入する商品を特定するための作業が必要なくなるため,精算待ち時間の短縮効果は向上すると考えられる。
【0015】
そこで,本発明は,RFタグの誤検出による精算ミスを防ぎつつ,顧客が精算を行う前に,顧客が購入する商品を特定できるようにすることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る商品精算システムの構成を説明する図。
【
図5】第2実施形態に係る商品精算システムの構成を説明する図。
【
図6】無線中継機,ガイダンス装置および人体検知センサを説明する図。
【
図7】無線中継機が放射する電波の到達範囲を説明する図。
【
図9】自動精算装置が備える自動精算部の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここから,本発明の好適な実施形態を記載する。なお,以下の記載は本発明の技術的範囲を束縛するものでなく,理解を助けるために記述するものである。
【0018】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る商品精算システム1について説明する。
図1は,第1実施形態に係る商品精算システム1の構成を説明する図である。
図1で図示した第1実施形態に係る商品精算システム1は,RFタグ11の誤検出による精算ミスを防ぎつつ,顧客3が精算を行う前に,顧客3が購入する商品10を特定できるように発案されたシステムで,RFタグ11を付した商品10と,精算対象になる商品10の収容に用いる買い物バッグ12と,買い物バッグ12に収容されて利用される精算支援端末13を含む。
【0019】
第1実施形態に係る商品精算システム1では,買い物バッグ12に収容して利用する精算支援端末13に,RFタグ11と無線で通信する機能を少なくとも備えさせることで,顧客3が買い物バッグ12に収容した商品10に付されたRFタグ11を精算支援端末13が検出できるようにし,金属箔など電波を遮蔽する素材で買い物バッグ12の内部を覆うことで,RFタグ11との通信で用いる電波の漏えい・混入を防いでいる。
【0020】
まず,第1実施形態に係る商品精算システム1を構成する買い物バッグ12について説明する。
図2は,買い物バッグ12の構造を説明する図である。買い物バッグ12とは,顧客3が商品10の持ち運びに利用する袋物を意味する。
図1で図示した買い物バッグ12は,トートバッグのように角張り,2本の把手123が付いた手提げカゴの形態をなしているが,買い物バッグ12の形態はポーチなど他の形態でもよい。
【0021】
図2で図示したように,買い物バッグ12の生地は,外面生地12aと内面生地12bの2層構造になっている。内面生地12bによって形成される周壁で囲まれた空間が,商品10を収容する収容空間120になり,外面生地12aは,内面生地12bの外側を覆うように縫製されている。外面生地12aには,紙,布,皮,プラスチックフィルムなどの絶縁素材が用いられる。電磁波を遮蔽する素材で収容空間120の周壁を覆るように,内面生地12bには,金属箔など電波を遮蔽する素材が用いられる。RFタグ11の誤検出による精算ミスを防ぐことを考慮すると,買い物バッグ12の外部に漏えいする電波の電波強度が18dBmより下になることが必要になる。
【0022】
買い物バッグ12の口部122はゴム口で,商品10を入れるときに,買い物バッグ12の口部122が広がるようになっている。買い物バッグ12の上面も口部122を除いて,絶縁素材が用いられる外面生地12aと,電波を遮蔽する素材が用いられる内面生地12bの2層構造になっている。電波の漏えい・混入防止の観点からすると,買い物バッグ12の口部122は商品10を入れないとき閉じていることが望ましいが,電波の漏えい・混入防止に問題が生じない範囲で,買い物バッグ12の口部122は商品10を入れないときに完全に閉じていなくてよい。
【0023】
上述したように,RFタグ11を検出する機能を有する精算支援端末13を買い物バッグ12に収容するので,電波遮蔽機能を有しない素材を用いて買い物バッグ12の収容空間120の周壁に内ポケット121が形成されている。内ポケット121の形成に電波遮蔽機能を有する素材を用いると,精算支援端末13が発する電波が収容空間120に放射されないので,内ポケット121の形成には外面生地12aと同じく絶縁素材を用いている。
【0024】
次に,商品10に付されるRFタグ11について説明する。買い物バッグ12の内部に形成された収容空間120に収容する商品10,すなわち,店舗で販売されている商品10には,商品10の特定に利用される商品情報を記憶したRFタグ11が付されている。RFタグ11とは,無線による個体識別で利用される媒体で,RFタグ11には,短距離無線通信で用いるタグアンテナ110とこれに接続するICチップ111が内蔵されている。短距離無線通信とは,通信距離が最大で数m程度の無線通信を意味し,短距離無線通信で用いる周波数帯には13.56MHzもあるが,本実施形態で使用する短距離無線通信の周波数帯はUHF帯で,
図1で図示したRFタグ11のタグアンテナ110はダイポールアンテナの形態をなしている。
【0025】
次に,第1実施形態に係る商品精算システム1を構成する精算支援端末13について説明する。買い物バッグ12の内部に収容される精算支援端末13は,短距離無線通信を利用して,買い物バッグ12に収容されている商品10,すなわち,顧客3が購入する商品10に付されたRFタグ11を検出し,検出したRFタグ11に記憶されている商品情報を読み取る処理と,無線ネットワーク通信を利用して,RFタグ11から読み取った商品情報すべてを,商品10の購入代金を決済する装置へ送信する処理を行う端末装置である。なお,無線ネットワーク通信とは,無線PAN(Personal Area Network),無線LAN(Local Area Network),無線MAN(Metropolitan Area Network)および無線WAN(Wide Area Network)などの無線ネットワークを利用するための無線通信を意味し,具体的には,Bluetooth(登録商標),Wifiや移動体通信などである。
【0026】
図3は,精算支援端末13の概略ブロック図で,
図4は,精算支援端末13の動作を説明する図である。
図3で図示したように,精算支援端末13は,タグ用アンテナ131aを利用して商品10に付されたRFタグ11と短距離無線通信を行うタグ通信部131と,ネットワーク用アンテナ132aを利用して,無線ネットワーク通信を行う無線ネットワーク通信部132と,RFタグ11から読み取った商品情報の記憶に用いる記憶部133と,精算支援端末13を制御する制御部130を備える。
【0027】
精算支援端末13のタグ通信部131は,タグ用アンテナ131aに加え,RFタグ11との無線通信に対応した送受信回路を有する。精算支援端末13の無線ネットワーク通信部132は,ネットワーク用アンテナ132aに加え,無線ネットワーク通信に対応する送受信回路を有する。精算支援端末13の記憶部133は,フラッシュメモリやEEPROMなどのNVM(Non-volatile memory)である。
【0028】
精算支援端末13の制御部130は,プロセッサが実装された回路基板で実現され,
図4で図示した手順を実行するコンピュータプログラムを記憶する。
図4を参照しながら,精算支援端末13の動作について説明する。
【0029】
精算支援端末13の制御部130は,精算支援端末13の電源がONになると(S1),無線ネットワーク通信部132を起動させてから(S2),無線ネットワーク通信の電波強度,すなわち,無線ネットワーク通信部132が受信する電波の電波強度を監視する処理を開始する(S3)。
【0030】
精算支援端末13の制御部130には,精算支援端末13が買い物バッグ12の内部に収容されているときの電波強度,すなわち,無線ネットワーク通信の電波が買い物バッグ12の内面生地12bで遮蔽された時の電波強度が閾値として登録されている。精算支援端末13の制御部130は,監視している無線ネットワーク通信の電波強度が閾値より下(以下)になると(S4),タグ通信部131を作動させて(S5),RFタグ11を検出し,検出したRFタグ11から商品情報を読み取って記憶部133に保存する処理を繰り返し実行する(S6)。無線ネットワーク通信の電波強度が閾値より下になることは,精算支援端末13が買い物バッグ12の内部に収納されている状態を意味するため,精算支援端末13の制御部130が商品情報を読み取るRFタグ11は,買い物バッグ12の収容空間120にある商品10に付されたRFタグ11,すなわち,顧客3が購入する商品10に付されたRFタグ11なる。また,同一のRFタグ11から商品情報を複数回読み取ることを防ぐため,これまでに検出したRFタグ11から商品情報を読み取らない工夫が精算支援端末13の制御部130に必要になる。これまでに検出したRFタグ11であるか否かは,RFタグ11毎に固有な情報になるタグ識別子から判断できる。
【0031】
RFタグ11を検出し,検出したRFタグ11から商品情報を読み取って記憶部133に保存する処理を繰り返し実行しているときに,無線ネットワーク通信の電波強度が閾値を超えると(S7),精算支援端末13の制御部130は,上述の処理を中断してから(S8),タグ通信部131を停止させる(S9)。無線ネットワーク通信で用いる電波の受信強度が閾値を超えることは,精算支援端末13が買い物バッグ12の外部にある状態を意味するため,精算支援端末13の制御部130は,RFタグ11の誤検出を防止するために,RFタグ11から商品情報を読み取る処理を中止してからタグ通信部131を停止させる。
【0032】
精算支援端末13の制御部130は,タグ通信部131を停止させると,無線ネットワーク通信を利用して,RFタグ11から読み取った商品情報を送信する処理(S10)を行い,
図4で図示した手順は終了する。
【0033】
第1実施形態に係る商品精算システム1によれば,顧客3が購入する商品10に付されたRFタグ11から商品情報を読み取る処理は,精算対象になる商品10の収容に用いる買い物バッグ12の内部で行われるため,顧客3が精算を行う前に,顧客3が購入する商品10を特定できる。また,買い物バッグ12の内部は電波を遮蔽する素材で覆われているため,RFタグ11の誤検出による精算ミスを防ぐことができる。
【0034】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る商品精算システム2について説明する。
図5は,第2実施形態に係る商品精算システム2の構成を説明する図である。なお,
図5では,第1実施形態に係る商品精算システム1と同じ要素には同じ符号を付している。
【0035】
図5で図示した第2実施形態に係る商品精算システム2は,RFタグ11を付した商品10と,精算対象になる商品10の収容に用いる買い物バッグ12と,買い物バッグ12に収容されて利用される精算支援端末13に加えて,買い物バッグ12から取り出された精算支援端末13と無線ネットワーク通信して,買い物バッグ12の内部に収容されている商品10の商品情報を精算支援端末13から取得し,買い物バッグ12の内部に収容されている商品10の購入に係る精算金額を算出する処理を少なくとも行う自動精算装置20と,精算支援端末13と自動精算装置20の間の無線ネットワーク通信を中継する無線中継機21を含んでいる。
【0036】
図5では,顧客3の進路を定める会計レーン24が店舗に設けられている。自動精算装置20は,会計レーン24の出口脇に設置され,自動精算装置20は,会計レーン24に進入する顧客3を検知する人体検知センサ22と,会計レーン24に進入した顧客3に精算処理に係るガイダンスを提示するガイダンス装置23が自動精算装置20に接続されている。
【0037】
図5において,自動精算装置20と接続している無線中継機21は,ポール25を利用して会計レーン24の上方に設置されている。また,ガイダンス装置23は,会計レーン24を進む顧客3にガイダンスを提示できるように,会計レーン24を挟んで自動精算装置20と対向した状態で,会計レーン24の出口脇に設置されている。更に,自動精算装置20と接続している人体検知センサ22は,会計レーン24に進入する顧客3を検知できるように,会計レーン24の入口に設置されている。なお,
図5では,自動精算装置20は,会計レーン24の出口脇に設置されているが,無線WANなどの無線ネットワークに自動精算装置20を接続させた構成にすることもできる。
【0038】
図6は,無線中継機21,ガイダンス装置23および人体検知センサ22を説明する図で,
図6(a)は,無線中継機21を説明する図,
図6(b)は,ガイダンス装置23を説明する図,そして,
図6(c)は,人体検知センサ22を説明する図である。
【0039】
無線中継機21は,精算支援端末13との無線ネットワーク通信に対応する市販品などを利用でき,無線ネットワーク通信に移動体通信を用いる場合,移動体通信の基地局を無線中継機21に利用できる。
図6(a)では,無線中継機21の概略ブロック図を図示している。
図6(a)で図示したように,無線中継機21は,精算支援端末13との通信で用いる周波数帯に対応した無線ネットワーク通信に係る処理を行う電気回路で構成され,この周波数帯に対応した無線用アンテナ211aが接続している無線ネットワーク通信部211と,ネットワークに接続するためのポートである接続ポート213と,ファームウェアなどを記憶するメモリ212と,無線ネットワーク通信部211を利用した通信(精算支援端末13との通信になる)と接続ポート213を利用した通信(自動精算装置20との通信になる)を中継する処理を行う通信中継部210を備える。
【0040】
図7は,自動精算装置20と接続している無線中継機21が放射する電波の到達範囲を説明する図である。会計レーン24を歩行する顧客3が買い物バッグ12から取り出した精算支援端末13と無線ネットワーク通信できるように,自動精算装置20と接続している無線中継機21が備える無線用アンテナ211aは指向性を有し,無線用アンテナ211aが放射する電波の到達範囲は,会計レーン24の入口から出口の手前までをカバーするように設定されている。自動精算装置20に無線ネットワーク通信機能を備えさせることも考えられるが,本実施形態では,電波の到達範囲を設定できるように,自動精算装置20に無線ネットワーク通信機能をあえて備えさせていない。
【0041】
図6(b)では,ガイダンスの提示に用いるデバイスを説明するために,顧客3に対してガイダンスを提示するガイダンス装置23の外観を図示している。
図6(b)に図示したように,ガイダンス装置23は,ガイダンスの提示に用いるデバイスとして,ディスプレイ230,スピーカ231および警報灯232を備える。スピーカ231は,音声ガイダンスを顧客3に提示するためのデバイスで,ディスプレイ230および警報灯232は,視覚ガイダンスを顧客3に提示するためのデバイスである。ガイダンス装置23は,自動精算装置20から指示されたガイダンスを,ガイダンスに対応するデバイスを利用して出力する処理を行う。
【0042】
図6(c)は,人体検知センサ22の方式を説明するために,人体検知センサ22の外観を図示している。本実施形態の人体検知センサ22は,会計レーン24に進入した顧客3のみを確実に検出できるように,複数の投光軸を有する投光器220と,投光器220が投光する光を受光する受光器221とからなるセイフティライトカーテンの形態をなしている。
【0043】
図8は,第2実施形態に係る商品精算システム2を構成する自動精算装置20のブロック図である。第2実施形態に係る商品精算システム2を構成する自動精算装置20は,汎用のサーバを利用して実現される装置であるため,自動精算装置20のハードウェア構成については省略するが,
図8で図示したように,自動精算装置20は,自動精算部200と商品DB201(DataBase)と,通信部202を備えている。自動精算装置20が備える商品DB201は,ハードディスクなどのストレージを利用して構築されたDBで,商品情報に関連付けた状態で,商品情報に対応する商品10の販売価格を少なくとも記憶する。自動精算装置20が備える通信部202は,無線中継機21と自動精算装置20との間の通信を行う回路である。
【0044】
図9は,自動精算装置20が備える自動精算部200の動作を説明する図である。自動精算装置20が備える自動精算部200は,コンピュータプログラムを利用して実現される機能で,
図9で図示した手順を実行する。
【0045】
商品10の決済を行う顧客3が会計レーン24の入口まで来ると,会計レーン24の入口脇に設置している人体検知センサ22が会計レーン24に進入する顧客3を検知し,人体を検知したことを示す信号が人体検知センサ22から自動精算装置20に出力される(S20)。自動精算装置20の自動精算部200は,人体を検知したことを示す信号が人体検知センサ22から出力されると,精算支援端末13から買い物バッグ12から取り出す動作を行うことを顧客3に提示するガイダンスをガイダンス装置23に出力させる(S21)。
【0046】
精算支援端末13を買い物バッグ12から取り出す動作を行うことを顧客3に提示するガイダンスをガイダンス装置23に出力させると,自動精算装置20が備える自動精算部200は,所定時間の間だけ,精算支援端末13からの接続要求を受付ける処理を開始する(S22)。
【0047】
所定時間の間,精算支援端末13から接続要求が送信されない場合,会計レーン24を歩行する顧客3が精算支援端末13を買い物バッグ12から取り出していないことになるため,自動精算装置20が備える自動精算部200は,精算を行わない顧客3が会計レーン24を通過しようとしていることを周囲に周知させる警報に係るガイダンスをガイダンス装置23に出力させて(S29),
図9の手順は終了する。
【0048】
買い物バッグ12から取り出す動作を行うガイダンスを受けた顧客3が,買い物バッグ12の外に精算支援端末13を取り出すと,精算支援端末13の無線ネットワーク通信部132が受信する電波強度が閾値を超え,精算支援端末13の制御部130は,無線ネットワーク通信部132を利用して,無線中継機を中継して接続要求を自動精算装置20へ送信する(S23)。所定時間の間に,精算支援端末13からの接続要求が送信されると,自動精算装置20と精算支援端末13との間で接続処理が実行され,自動精算装置20は,接続要求を送信した精算支援端末13と接続する(S24)。
【0049】
自動精算装置20が備える自動精算部200は,接続要求を送信した精算支援端末13と接続すると,商品情報の送信要求を精算支援端末13へ送信し(S25),精算支援端末13の制御部130は,この時点で記憶部133に記憶している商品情報すべてを自動精算装置20へ送信する(S26)。
【0050】
自動精算装置20の自動精算部200は,商品情報の送信要求を送信した精算支援端末13から商品情報が送信されると,精算支援端末13から送信された商品情報に対応する金額を商品DB201から取得することで,会計レーン24を歩行する顧客3に対応する精算金額を算出した後(S27),会計レーン24を歩行する顧客3に対応する精算金額に係る決済処理を実行して(S28),
図9の手順は終了する。精算金額を決済する手法は,例えば,現金,電子マネー,クレジット決済などの任意の手法でよい。また,
図9のS23,S24およびS26が,
図4のS10で精算支援端末13が実行する処理になる。
【0051】
第2実施形態に係る商品精算システム2によれば,顧客3が精算支援端末13を買い物バッグ12の外に取り出すだけで,顧客3が購入する商品10に係る精算を歩行しながら行えるので,精算待ち時間の短縮効果をさらに向上できる。
【符号の説明】
【0052】
1 第1実施形態に係る商品精算システム
11 RFタグ
10 商品
12 買い物バッグ
12a 外面生地
12b 内面生地
120 収容空間
121 内ポケット
13 精算支援端末
130 制御部
131 タグ通信部
132 無線ネットワーク通信部
133 記憶部
2 第2実施形態に係る商品精算システム
20 自動精算装置
200 自動精算部
201 商品DB
202 通信部
21 無線中継機
211a 無線用アンテナ
22 人体検知センサ
23 ガイダンス装置
24 会計レーン