(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20221101BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20221101BHJP
F01P 7/10 20060101ALI20221101BHJP
F01P 11/16 20060101ALI20221101BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F01P7/16 502A
B60K11/04 J
F01P7/10 Z
F01P11/16 E
F02D45/00
(21)【出願番号】P 2018120091
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】古田 賢寛
(72)【発明者】
【氏名】松永 英雄
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-219755(JP,A)
【文献】特開2017-136899(JP,A)
【文献】特開2012-121514(JP,A)
【文献】特開2015-145157(JP,A)
【文献】特開2014-020346(JP,A)
【文献】特開2017-171138(JP,A)
【文献】特開2017-137814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0144218(US,A1)
【文献】特開2015-129460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
B60K 11/04
F01P 7/10
F01P 11/16
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの冷却水を冷却するためのラジエータと、
前記ラジエータの前方に配置されて、前記車両に配置されたグリルを開閉するグリルシャッターと、
前記ラジエータを経由する流路と前記ラジエータを経由しない流路とに前記冷却水の流路を切り替えるサーモスタットと、
前記冷却水の実温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された前記実温度の変化に基づいて前記サーモスタットの故障判定を実施する故障判定手段と、を有し、
前記車両の走行中に前記エンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカットを行う車両であって、
前記故障判定手段は、
前記フューエルカット中に前記グリルシャッターを閉状態に保持するとともに、当該フューエルカットの継続中に前記サーモスタットの故障判定を行
い、
前記実温度が前記サーモスタットの開弁温度以上の状態で前記フューエルカットが行われた場合に前記故障判定を実施することを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記故障判定手段は、予め設定された前記冷却水の推定温度が
前記サーモスタットの開弁温度以下となった際に、前記冷却水の実温度と前記推定温度とに基づいて前記故障判定を実施することを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両であって、
前記故障判定手段は、前記推定温度が所定値以下となった以降所定時間内に実施する前記サーモスタットの故障判定を一次故障判定とし、前記フューエルカットが終了して前記推定温度が所定値以上となった際に実施する前記サーモスタットの故障判定を二次故障判定とすることを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両であって、
前記フューエルカットが終了した際に前記グリルシャッターを開状態とすることを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車両であって、
前記故障判定手段は、前記一次故障判定において前記冷却水の前記実温度と前記推定温度との差が所定値以上の場合には、前記二次故障判定を省略することを特徴とする車両。
【請求項6】
車両に搭載されたエンジンの冷却水を冷却するためのラジエータと、
前記ラジエータの前方に配置されて、前記車両に配置されたグリルを開閉するグリルシャッターと、
前記ラジエータを経由する流路と前記ラジエータを経由しない流路とに前記冷却水の流路を切り替えるサーモスタットと、
前記冷却水の実温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって検出された前記実温度の変化に基づいて前記サーモスタットの故障判定を実施する故障判定手段と、を有し、
前記車両の走行中に前記エンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカットを行う車両であって、
前記故障判定手段は、
前記フューエルカット中に前記グリルシャッターを閉状態に保持するとともに、当該フューエルカットの継続中に前記サーモスタットの故障判定を行い、
予め設定された前記冷却水の推定温度が所定値以下となった際に、前記冷却水の実温度と前記推定温度とに基づいて前記故障判定を実施することを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項6に記載の車両であって、
前記故障判定手段は、前記推定温度が所定値以下となった以降所定時間内に実施する前記サーモスタットの故障判定を一次故障判定とし、前記フューエルカットが終了して前記推定温度が所定値以上となった際に実施する前記サーモスタットの故障判定を二次故障判定とすることを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項7に記載の車両であって、
前記フューエルカットが終了した際に前記グリルシャッターを開状態とすることを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項7または8に記載の車両であって、
前記故障判定手段は、前記一次故障判定において前記冷却水の前記実温度と前記推定温度との差が所定値以上の場合には、前記二次故障判定を省略することを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車をはじめとする車両には、エンジンなどの動力源の冷却のために、サーモスタットやラジエータ等を有する冷却システムが知られている。
かかる冷却システムにおいては、一般に動力源を冷却する冷却水の温度を調整するために、サーモスタットを用いてラジエータ内に冷却水を流すかどうかを制御しているが、かかるサーモスタットが故障してしまうと、温度制御が上手くいかない場合が考えられる。
そのため、冷却システム内に流れる冷却水の水温を用いてサーモスタットの故障診断を行う故障診断手段を設ける構成が知られている(例えば特許文献1、2等参照)。
【0003】
また一方、ラジエータ内を流れる冷却水の温度を調整するために、車両前方側に開閉可能なグリルシャッターを設けて、開閉状態を制御する構成が知られている(例えば特許文献1~3等参照)。
ところで、特にエンジンを搭載する車両には、エンジンの停止時に燃料供給を中止して燃費の向上を図る所謂フューエルカットと呼ばれる制御処理を行う構成が知られている。このようなフューエルカット中には、冷却水は徐々に温度が下がっていく傾向にあるが、サーモスタットの故障によってラジエータ側に冷却水が流れてしまうと、冷却水温度が下がりすぎてしまうという問題が生じる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-171138号公報
【文献】特開2015-129460号公報
【文献】特開2017-137814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような課題に基づきなされたものであり、グリルシャッターを併用した時にも検知精度の高いサーモスタット故障診断手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の請求項1にかかる車両は、車両に搭載されたエンジンの冷却水を冷却するためのラジエータと、前記ラジエータの前方に配置されて、前記車両に配置されたグリルを開閉するグリルシャッターと、前記ラジエータを経由する流路と前記ラジエータを経由しない流路とに前記冷却水の流路を切り替えるサーモスタットと、前記冷却水の実温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出された前記実温度の変化に基づいて前記サーモスタットの故障判定を実施する故障判定手段と、を有し、前記車両の走行中に前記エンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカットを行う車両であって、前記故障判定手段は、前記フューエルカット中に前記グリルシャッターを閉状態に保持するとともに、当該フューエルカットの継続中に前記サーモスタットの故障判定を行い、前記実温度が前記サーモスタットの開弁温度以上の状態で前記フューエルカットが行われた場合に前記故障判定を実施する。
【0007】
本願発明の請求項2にかかる車両は、請求項1に記載の車両であって、前記故障判定手段は、予め設定された前記冷却水の推定温度が所定値以下となった際に、前記冷却水の実温度と前記推定温度とに基づいて前記故障判定を実施することを特徴とする。
【0008】
本願発明の請求項3にかかる車両は、請求項1又は2に記載の車両であって、前記故障判定手段は、前記推定温度が所定値以下となった以降所定時間内に実施する前記サーモスタットの故障判定を一次故障判定とし、前記フューエルカットが終了して前記推定温度が所定値以上となった際に実施する前記サーモスタットの故障判定を二次故障判定とすることを特徴とする。
【0009】
本願発明の請求項4にかかる車両は、請求項3に記載の車両であって、前記フューエルカットが終了した際に前記グリルシャッターを開状態とすることを特徴とする。
【0010】
本願発明の請求項5にかかる車両は、請求項3または4に記載の車両であって、前記故障判定手段は、前記一次故障判定において前記冷却水の前記実温度と前記推定温度との差が所定値以上の場合には、前記二次故障判定を省略することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グリルシャッターを併用した時にも検知精度の高いサーモスタット故障診断手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態としての車両の構成の一部の例を示す図である。
【
図2】
図1に示した制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】サーモスタットを用いた冷却水の温度制御の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態における温度制御及びグリルシャッター制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態として、サーモスタット20の故障診断手段30を備えた車両100について説明する。
なお、本実施形態において、車両の内燃機関やステアリング、その他各種の本発明と直接的に関係のない部分の詳細な機能、動作については、説明を適宜省略する。また、本実施形態では、駆動源に水冷式のエンジンを用いる場合について特に述べるが、かかる構成に限定するものではなく、サーモスタットを用いて水その他の冷媒の温度制御を行う構成であっても良い。
【0014】
車両100は、
図1に示すように、駆動源たるエンジン11と、エンジン11を冷却するための冷却水Qが流れる流路12と、冷却水Qを通過させることで冷却水Qの冷却を行うラジエータ13と、を有している。
車両100はまた、ラジエータ13より前方の車両前部にグリルを開閉するグリルシャッター21と、冷却水Qの流路12をラジエータ13に経由する流路12aとラジエータ13に経由しない流路12bとに切り替えるサーモスタット20と、を有している。グリルシャッター21は、開閉することでラジエータに供給される走行風を調整して、ラジエータの温度調整に寄与する。
車両100はまた、車速センサ80と、エンジン11からの動力をタイヤ14へと伝達するための自動変速機15と、流路12内に冷却水Qを循環させるための循環器たるポンプ16と、車両100の各部分の制御を行う制御部たるECU90と、を有している。
【0015】
ECU90は、車両100の制御を行うための制御部としての機能を有しており、CPUを中心とするマイクロコンピュータである。
ECU90は、
図2に示すように、自動変速機15やエンジン11の動作を制御する駆動制御部91と、後述するグリルシャッター21の開閉動作を制御するグリルシャッター制御部92と、サーモスタット20の故障判定を行う故障判定手段30と、を有している。
また、ECU90の機能はかかる構成に限定されるものではなく、例えばエンジン11の回転制御や、ラジエータ13に取り付けられたファンの制御などを行うとしても良い。
【0016】
サーモスタット20は、流路12a、12bの合流部に設けられており、流路12aと流路12bとを切り替える流路切替手段として機能する。
具体的にはサーモスタット20は、冷却水Qの実温度あるいは水温推定値が所定のサーモスタット開弁温度T1になったことを条件として、流路12a側を開弁してラジエータ13に冷却水Qが流入するように制御を行う。
ここでいう水温推定値とは、エンジン発熱量と放熱量から推定される水温である。故障判定手段30は、かかる水温推定値が所定値、例えばサーモスタット開弁温度T1に到達した時刻t0あるいは当該時刻t0から所定時間Δtだけ後の時刻において、実水温が所定値に到達しているか否かを参照して仮故障判定を行う。すなわち、水温推定値と実水温との偏差が大きい場合には故障判定を行い、水温推定値と実水温との偏差が小さい場合に正常判定する。なお、冷却水の実温度は温度検出手段、具体的には温度センサに基づいて検出する。
本実施形態では特に、故障判定のトリガーを「水温推定値がサーモスタット開弁温度T1に到達したとき」としているので、実水温と水温推定値との偏差ΔTの大小によって判定することは、故障判定時刻における実水温が所定値に到達しているかどうかを見ることと同義であるが、かかる構成に限定されるものではない。
なお、サーモスタット開弁温度T1は、設計上の任意の温度であって良いが、例えば77℃などであっても良い。
【0017】
ラジエータ13は、内部を冷却水Qが流れることで冷却水Qの熱がラジエータ13表面を介して外気と熱交換する熱交換器である。
本実施形態においては、グリルシャッター21が開状態の場合にはラジエータ13表面に当たる空気の流量が増大することによって、冷却性能が上昇する。
他方、グリルシャッター21が閉状態の場合には、ラジエータ13表面に当たる空気の流量が減少するから、冷却性能は開状態の場合と比べて低減される。
【0018】
グリルシャッター21は、通常状態では車速に応じて開閉を行い、冷却水Qの温度調整を行うとともに、車両100の空気抵抗を低減して燃費の向上に寄与している。
具体的には、閉状態の場合には車両100の空力特性が向上し、開状態の場合には車両100の空気抵抗が増大する一方でラジエータ13の冷却性能が向上する。
【0019】
本実施形態では、駆動制御部91は、通常状態の走行中においてエンジン11の回転が必要とされていないとき、すなわちアクセルが踏まれていないときにはエンジン11への燃料の供給を停止する、所謂フューエルカットを行う。
かかるフューエルカット中においては、エンジン11の回転が停止するため冷却水Qの温度は
図3に示すように徐々に低下する。
フューエルカットは、例えば車両100の走行状態において、下り坂などでアクセルから足が離れたときに開始され、車両100のアクセルが踏まれるなどの運転者の操作によって、任意の時間に終了することができる。かかるフューエルカットをどのようなトリガー条件で行うかは設計によって適宜変更して良いが、一般的にはエンジン11の回転数とアクセル操作の有無とによって判定される。
【0020】
かかるフューエルカット中においては、グリルシャッター21が閉状態となっていることがより望ましい。これは冷却水Qの温度が過度に低下してしまうと、アクセルが踏まれエンジン11が再度暖機運転を行うまでの時間が長くなってしまうためである。
そこで、本実施形態においては、フューエルカット中にはグリルシャッター制御部92がグリルシャッター21を強制的に閉状態とすることで、冷却水Qの温度低下を抑制するとともに、空力特性を改善するように制御を行う。
【0021】
さて、何れの機器も正常に動作している通常状態においては、例えば
図4に示すようにECU90が水温推定値あるいは実水温に基づいて、グリルシャッター21と、サーモスタット20との開閉を制御している。かかるグリルシャッター21とサーモスタット20との開閉により冷却水Qの水温が制御されている。
【0022】
このような場合において、車両100がフューエルカットに入った状態における故障判定手段30が故障を判定する方法について、
図4、
図5を用いて説明する。
【0023】
さて、車両100がフューエルカットに移行するときは必ず、エンジン11が回転して冷却水Qの温度が所定値以上に維持されている状態からスタートすると考えられる。
そこで
図4では説明の簡単化のために、車両100が走行状態であって冷却水Qの水温推定値、実水温何れも高い走行状態からスタートし、冷却水Qの温度が下降していく区間(
図4でいうA区間)、冷却水Qの水温推定値が所定値以下となってからアクセルが踏まれてフューエルカットが終了するまでの区間(同B区間)、冷却水Qの水温推定値が上昇して再度所定値に到達するまでの区間(同C区間)、通常走行に戻った区間(同D区間)、のA~Dの区間を遷移するような車両100の運転状態について説明するが、かかる動作に限定されるものではない。
【0024】
初期状態において、車両100は走行状態であり、冷却水Qの実水温は十分高いためにサーモスタット20は開状態である。かかる冷却水Qの実水温は、フューエルカット中には既に述べたようにエンジン11が停止しているから、徐々に下降していく(特に
図4のA区間参照)。
ECU90は水温推定値がサーモスタット開弁温度T1を下回ったことを検知する(ステップS101)と、サーモスタット20の閉弁を指示する(ステップS102)。
【0025】
また、ステップS102においてサーモスタット20の閉弁が指示されると略同時に、グリルシャッター21を強制的に閉状態に遷移させる(ステップS103)。これは、サーモスタット20の閉状態においては、グリルシャッター21を開閉する必要がなくなると同時に、グリルシャッター21を閉状態にすることで車両100の空力特性が改善されるためである。
【0026】
さて、サーモスタット20が正常に動作している場合には、ステップS102において閉弁を指示されたあとは水温推定値及び実水温は正常時として一点鎖線で示すように推移すると考えられる。
しかしながら、サーモスタット20の開固着故障が生じている場合には、本来は流れないはずのラジエータ13に冷却水Qが流入するから、
図5に破線と実線とで示すように、水温推定値と実水温との偏差ΔTが徐々に広がっていく(特に
図5のB区間参照)。
そこで、故障判定手段30は、冷却水Qの水温推定値がサーモスタット開弁温度T1以下となってから、所定時間Δtだけ後の一次故障判定時刻t1において故障判定手段30が仮故障判定として、一次故障判定を行う(ステップS104)。
かかる一次故障判定時刻t1のステップS104において、実水温と水温推定値との偏差ΔTが所定値以上の場合には、サーモスタット20が開固着状態になっていると判定する。かかる所定値である偏差ΔTは、冷却水Qの量やエンジン11から生じる熱量等に応じて種々の設計値をとることができる。ここでは、実水温と水温推定値との偏差ΔTを考慮してサーモスタット20の故障診断を実施する方法を説明したが、実水温だけの温度変化を計測し、その温度変化の挙動を測定することでサーモスタットの異常診断を実施してもよい。具体的には、サーモスタットが通常時の場合の実水温の挙動を記憶しておき、通常時の温度変化の挙動から大きくずれる場合に、サーモスタットに故障があると判断する。
なお、ステップS104において、実水温と水温推定値との偏差ΔTが所定値よりも小さい場合には、故障判定手段30はサーモスタット20が正常に動作していると判断して通常状態の処理・制御を継続する(ステップS201)。
【0027】
かかるステップS104の一次故障判定においては、
図4からも明らかなように、一次故障判定時刻t1よりも前の時間において、グリルシャッター21が閉状態を維持された状態での故障判定が行われる。
すなわち本実施形態の故障判定手段30は、フューエルカット中においてグリルシャッター21を閉状態とするとともに、当該フューエルカットの継続中に冷却水Qの水温推定値が所定値たるサーモスタット開弁温度T1以下となった場合にサーモスタット20の故障判定を行う。
かかる構成により、グリルシャッター21をラジエータ13に併用した時にも検知精度の高いサーモスタット20の故障診断手段30を提供することができる。
【0028】
ステップS104において、サーモスタット20が故障していると故障判定手段30が判断したとき、すなわちステップS104の分岐においてNoである場合には、故障判定を確定させるために、ステップS105へと進む。
具体的には次にアクセルが踏まれてエンジン11の回転が上昇(ステップS105)すると、グリルシャッター制御部91は、グリルシャッター21を開状態に遷移させる(ステップS106)。
エンジン11の回転数が上昇し、冷却水Qの水温推定値が再度サーモスタット開弁温度T1を超えたときには、故障判定手段30が二次故障判定を行う(ステップS107)。なお、かかる二次故障判定を行う時刻t2を二次故障判定時刻とし、グリルシャッター21を開状態に遷移させるシャッター開弁時刻t3は、かかる二次故障判定時刻t2よりも所定時間Δt’だけ前の時刻である。
【0029】
このように、ステップS106においてグリルシャッター21を開状態にすることで、ステップS107における二次故障判定時刻t2においては、グリルシャッター21が開状態であった場合を含む水温推定値で二次故障判定を行うことができる。
すなわち、本実施形態の故障判定手段30は、一次故障判定と二次故障判定とで、グリルシャッター21の開閉状態を逆転させて、2度の故障判定を行うのでより精度良く故障判定を行うことができる。
【0030】
ステップS107において、冷却水Qの実水温と水温推定値との間の偏差ΔTが所定値よりも小さいときには、故障判定手段30はサーモスタット20が正常に動作していると判断して通常状態の処理・制御を継続する(ステップS201)。
ステップS107において、冷却水Qの実水温と水温推定値との間の偏差ΔTが所定値以上であるときには、故障判定手段30がサーモスタット20が故障していると判断する(ステップS108)。
ステップS108において故障判定が確定したときには、ECU90が運転者に表示器などを点灯させることでサーモスタット20が故障状態であることを知らせる等しても良い(ステップS109)。
かかる故障判定の結果は、車両100に搭載された非図示の表示器等によって運転者に通知されるとしても良いし、故障通知をネットワーク経由等で連絡するとしても良い。
かかる故障判定処理が終わると、ECU90はグリルシャッター21の制御を通常の制御状態へと戻す(
図4のD区間参照)とともに、故障判定処理を終了する。
【0031】
さて、一次故障判定時刻t1から二次故障判定時刻t2までに要する時間は、本実施形態では二次故障判定を水温推定値が所定値に到達したことを条件として行ったが、一次故障判定時刻t1における水温推定値と実水温との偏差ΔTによって決定されるとしても良い。なお、かかる所定時間Δtの基準となる値は、サーモスタット20やラジエータ13の構成に応じて、任意の値に設定することとしても良い。
ここで、一次故障判定時刻t1における水温推定値と実水温との差が大きい場合とは、すなわち一次故障判定時刻t1において、水温を正しく推定できていないと言えるから、より故障の可能性が高い、言い換えると温度制御が上手くいっていない場合であると考えられる。
そのため、偏差ΔTが大きい場合には、一次故障判定の診断確度が高いと考えられるから、
図6に示すように、二次故障判定を省略しても良い。かかる構成によれば、グリルシャッター21が通常制御に戻るまでの時間が短くなるから、車両100の空力特性が改善されて燃費などの向上に寄与する。
【0032】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、本実施形態ではエンジンを有する車両の場合についてのみ述べたが、その他、モーターとエンジンとを駆動源として用いたハイブリッド車等に用いたとしても良い。
【0033】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
11…エンジン、12…流路、12a…ラジエータを経由する流路、12b…ラジエータを経由しない流路、20…サーモスタット、21…グリルシャッター、30…故障判定手段、100…車両