(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】熱交換器および温水装置
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20221101BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20221101BHJP
F24H 9/40 20220101ALI20221101BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F24H1/14 C
F24H9/40
(21)【出願番号】P 2018121017
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】今藤 正樹
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0007933(KR,A)
【文献】特開2017-116203(JP,A)
【文献】実開昭61-204109(JP,U)
【文献】国際公開第2017/110019(WO,A1)
【文献】特開2016-169934(JP,A)
【文献】特開平05-118665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0185712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 1/14
F24H 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体が内部に供給される缶体と、
伝熱管に接合され、かつ前記缶体内に配されている吸熱用の複数のフィンと、
前記缶体内のうち、前記複数のフィンよりも前記加熱用気体の流れ方向上流側に配され、かつ前記缶体の側壁部の内面に接触して設けられた胴パイプと、
を備えている、熱交換器であって、
前記胴パイプのうち、少なくとも前記複数のフィンに接近した部分の内周側面を覆う胴パイプカバー部を有する遮熱部材を、さらに備えており、
この遮熱部材は、前記胴パイプと前記複数のフィンとの相互間に形成されている第1の隙間の少なくとも一部を塞ぐように、前記胴パイプカバー部から前記複数のフィンに向けて延びる第1の延設部を有して
おり、
前記遮熱部材は、前記胴パイプカバー部が前記胴パイプにロウ付けされ、かつ前記第1の延設部に繋がった第2の延設部を備えており、
この第2の延設部は、前記第1の延設部の先端部から前記缶体の前記側壁部側に延びて前記胴パイプの下方に位置しており、前記第2の延設部と前記胴パイプとの相互間には空間部が形成されていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記胴パイプは、前記缶体の前記側壁部にロウ付けされており、
前記遮熱部材は、前記胴パイプの下方において、前記側壁部の内面に面接触する第3の延設部を備えている、熱交換器。
【請求項3】
請求項
2に記載の熱交換器であって、
前記第3の延設部は、前記側壁部に溶接されている、熱交換器。
【請求項4】
請求項
1ないし3のいずれかに記載の熱交換器であって、
前記缶体は、前記側壁部として、互いに交差して繋がったコーナ部を有する複数の側壁部を備えており、
前記胴パイプは、前記複数の側壁部の内面に沿って延びる直状管体部と、前記コーナ部の内側に位置する曲げ部とを有し、かつこの曲げ部と前記コーナ部の内面との相互間には、第2の隙間が形成されており、
前記遮熱部材は、前記第2の隙間を塞ぐ隙間カバー部を有している、熱交換器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器
と、
この熱交換器の前記缶体内に、前記加熱用気体としての燃焼ガスを供給するバーナと、
を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用気体から熱回収を行なうタイプの熱交換器、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水装置の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の温水装置は、バーナと、熱交換器とを備えており、熱交換器は、バーナにより発生された燃焼ガスが内部に供給される缶体と、この缶体内に配された複数のフィン付きの伝熱管と、胴パイプとを備えている。胴パイプは、缶体内のうち、伝熱管および複数のフィンよりも燃焼ガス流れ方向の上流側に位置して缶体の側壁部に接触しており、缶体の側壁部を冷却し、側壁部が熱損傷することを防止する。この胴パイプおよび前記伝熱管内を流れる湯水は、前記燃焼ガスによって加熱され、温水として生成される。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、バーナとしては、火力が強いものが用いられ、胴パイプが火焔に直接晒されるなどして、かなりの高温に加熱されるため、このこと自体によって胴パイプがダメージを受け易い。また、缶体内においては、燃焼ガスが冷却されることに起因して強酸性の凝縮水が発生し、この凝縮水が胴パイプに付着する場合がある。この凝縮水は、燃焼ガスによって熱されることにより、胴パイプの表面において濃縮される場合がある。このようなことから、従来においては、胴パイプが腐食し易くなっている。
【0005】
一方、伝熱管に接合されている複数のフィンは、吸熱量をできる限り多くできるように設けられることが望まれる。そのためには、複数のフィンと缶体の側壁部との相互間の隙間に、多くの燃焼ガスが通過しないようにする必要があるが、従来においては、そのような手段は講じられておらず、熱効率を高める上で改善の余地がある。なお、複数のフィンと缶体の側壁部とを接合すれば、それらの相互間に隙間が発生しないようにし、燃焼ガスが隙間内を無駄に通過することを阻止することは可能であるが、このような手段を採用すると、複数のフィンの熱膨張時に各部に大きな応力が発生する不具合を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、胴パイプが腐食し易くなる不具合を解消し得るとともに、熱効率を向上させることが可能な熱交換器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体が内部に供給される缶体と、伝熱管に接合され、かつ前記缶体内に配されている吸熱用の複数のフィンと、前記缶体内のうち、前記複数のフィンよりも前記加熱用気体の流れ方向上流側に配され、かつ前記缶体の側壁部の内面に接触して設けられた胴パイプと、を備えている、熱交換器であって、前記胴パイプのうち、少なくとも前記複数のフィンに接近した部分の内周側面を覆う胴パイプカバー部を有する遮熱部材を、さらに備えており、この遮熱部材は、前記胴パイプと前記複数のフィンとの相互間に形成されている第1の隙間の少なくとも一部を塞ぐように、前記胴パイプカバー部から前記複数のフィンに向けて延びる第1の延設部を有しており、前記遮熱部材は、前記胴パイプカバー部が前記胴パイプにロウ付けされ、かつ前記第1の延設部に繋がった第2の延設部を備えており、この第2の延設部は、前記第1の延設部の先端部から前記缶体の前記側壁部側に延びて前記胴パイプの下方に位置しており、前記第2の延設部と前記胴パイプとの相互間には空間部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、胴パイプのうち、少なくとも遮熱部材の胴パイプカバー部によって覆われた部分は、加熱用気体に直接晒されることはなく、保護される。また、強酸性の凝縮水が、胴パイプに直接付着することも防止される他、遮熱部材の表面温度を胴パイプの表面温度よりも高温部分とし、遮熱部材の表面に強酸性の凝縮水を発生し難くすることもできる。このようなことから、胴パイプのうち、遮熱部材によって覆われた部分を腐食し難くすることができる。
第2に、遮熱部材の第1の延設部は、胴パイプと複数のフィンとの相互間に形成されている第1の隙間の少なくとも一部を塞ぐため、加熱用気体が第1の隙間を通過して缶体の側壁部側に向けて進行することは抑制される。このことにより、缶体の側壁部が熱ダメージを受けることが防止できる他、缶体の側壁部と複数のフィンとの相互間に形成されている隙間に向けて、多くの加熱用気体が無駄に進行しないようにすることができる。第1の延設部に当たった加熱用気体については、複数のフィンの配置箇所に向けて進行させることが可能である。その結果、複数のフィンによる吸熱量を多くし、熱効率を高めることができる。
【0012】
さらに、このような構成によれば、ロウ付けにより、胴パイプに遮熱部材を確実かつ強固に取付けることができることに加え、次のような効果がさらに得られる。
第1に、胴パイプに遮熱部材の胴パイプカバー部がロウ付けされているため、胴パイプと胴パイプカバー部との相互間に、凝縮水が進入する隙間が生じないようにし、胴パイプが凝縮水に起因して腐食することが、一層適切に防止される。
第2に、胴パイプに遮熱部材の胴パイプカバー部をロウ付けする工程において、胴パイプカバー部と胴パイプとの相互間の微小隙間を溶融ロウ材が通過してそれらの下方に流れいくと、この溶融ロウ材は、第2の延設部によって受けられる。前記空間部は、溶融ロウ材を溜めておくための部分としての役割を果たす。このため、溶融ロウ材が、遮熱部材から複数のフィン上に不当に流れ落ちるといったことを適切に防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記胴パイプは、前記缶体の前記側壁部にロウ付けされており、前記遮熱部材は、前記胴パイプの下方において、前記側壁部の内面に面接触する第3の延設部を備えている。
【0014】
このような構成によれば、ロウ付けにより、胴パイプを缶体の側壁部に確実かつ強固に取付けることができることに加え、次のような効果がさらに得られる。
すなわち、前記ロウ付けの工程において、溶融ロウ材が胴パイプと缶体の側壁部との相互間の微小隙間を通過し、前記側壁部の内面を伝ってさらに下方に流れたとしても、側壁部の内面と第3の延設部とが面接触している部分において、溶融ロウ材の流れが止められる。したがって、前記溶融ロウ材が過度に下方に流れ、たとえばフィンと側壁部とが不当
にロウ付けされるといった不具合を生じないようにすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記第3の延設部は、前記側壁部に溶接されている。
【0016】
このような構成によれば、第3の延設部と側壁部との面接触状態を確実化して、それらの相互間に隙間を生じ難くすることができる。したがって、胴パイプを缶体の側壁部にロウ付けする際に、溶融ロウ材が第3の延設部と側壁部との相互間を不当に通過しないようにすることがより確実化される。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記缶体は、前記側壁部として、互いに交差して繋がったコーナ部を有する複数の側壁部を備えており、前記胴パイプは、前記複数の側壁部の内面に沿って延びる直状管体部と、前記コーナ部の内側に位置する曲げ部とを有し、かつこの曲げ部と前記コーナ部の内面との相互間には、第2の隙間が形成されており、前記遮熱部材は、前記第2の隙間を塞ぐ隙間カバー部を有している。
【0018】
このような構成によれば、前記第2の隙間を、多くの加熱用気体が通過する無駄をなくし、または少なくすることができる。したがって、その分だけ熱効率を高めることができる。また、第2の隙間を塞ぐための手段として、遮熱部材とは別の部材を用いる必要がないため、部品点数を少なくし、組み立て作業の容易化や、製造コストの上昇防止を図ることもできる。
【0019】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器と、この熱交換器の前記缶体内に、前記加熱用気体としての燃焼ガスを供給するバーナと、を備えていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す熱交換器とバーナとを組み合わせた温水装置の一例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図2に示す温水装置WHは、熱交換器HEと、仮想線で一部分が示されたバーナ1とを具備している。熱交換器HEの下方に追加の熱交換器(2次熱交換器)をさらに設けた構成とすることもできる。
【0025】
バーナ1は、たとえば特許文献1に記載されたものなど、従来既知のものが用いられている。このバーナ1においては、不図示のファンから吐出される燃焼用空気に燃料ガスが混合され、この混合気は、熱交換器HEの缶体2の上部開口部から下向きに臨むように設けられた通気性を有する混合気噴射部材10を介して缶体2内に噴射される。混合気には点火がなされ、缶体2内には加熱用気体としての燃焼ガスが供給される。
【0026】
図1および
図2において、熱交換器HEは、前記した缶体2に加え、伝熱管3、プレート状の複数のフィン4、複数の胴パイプ5、および遮熱部材8(8a,8b)を備えている。これら各部は、たとえばステンレス製であるが、その具体的な材質は限定されない。
【0027】
伝熱管3および複数のフィン4は、缶体2内の下部寄り領域に配されている。伝熱管3は、複数の直状管体部30が缶体2の外部において略U字状のベンド管31を介して一連に接続された構成である。この熱交換器HEにおいては、胴パイプ5の入水口59に供給され、かつ胴パイプ5を通過した湯水が、伝熱管3に送り込まれて加熱され、その出湯口39から出湯するように構成されている。複数のフィン4は、吸熱用であり、直状管体部30の軸長方向に適当な間隔で並んで接合されている。各フィン4は、熱回収量を多くすることを目的として、
図2に示すように、缶体2の後述する第1および第2の側壁部22a,22bに対してできる限り接近するように設定されている。
【0028】
缶体2は、上下両面部が開口した略矩形筒状であり、
図3によく表れているように、缶体本体部20と、補助部材21とを組み合わせて構成されている。缶体本体部20は、平面断面視略コ字状であり、第1ないし第3の側壁部22a~22cがコーナ部23を介して繋がり、かつ一側面部に開口部24が形成された構成である。補助部材21は、缶体本体部20に設けられたフランジ部25に当接して接合され、缶体本体部20の一側面部の開口部24を塞ぐ第4の側壁部22dを有している。
【0029】
胴パイプ5は、湯水加熱に利用されるとともに、缶体2の第1ないし第3の側壁部22a~22cを冷却してその熱損傷を防止するための部材であり、平面視略コ字状であり、第1ないし第3の直状管体部50a~50cが曲げ部51を介して繋がっている。第4の側壁部22dは、後述するヘッダ部6内の湯水により冷却されるため、胴パイプ5による冷却は省略されている。複数の胴パイプ5は、複数のフィン4および伝熱管3よりも上方に位置し、かつ缶体2の第1ないし第3の側壁部22a~22cに接触するようにして上下複数段に設けられている。第1ないし第3の側壁部22a~22cには、第1ないし第3の直状管体部50a~50cの外周面部の一部が嵌入し、これらの接触面積(伝熱面積)を良好にするための複数の凹溝26が設けられている。第1ないし第3の直状管体部50a~50cのそれぞれは、凹溝26の内面にロウ付けされている。
【0030】
補助部材21は、複数の胴パイプ5の相互間で湯水を流通させるための複数のヘッダ部6(6a,6b)を備えている。各ヘッダ部6は、
図3にその一部の断面が示されているように、第4の側壁部22dの外面に接合されたベース部材60に、カバー部材61が接合され、かつこれらの内側にチャンバ62が形成された構成である。複数の胴パイプ5の両端部(第1および第2の直状管体部50a,50bの外側の端部)は、第4の側壁部22dを貫通しており、チャンバ62に連通した状態、入水口59が設けられた構成、あるいはベンド管32を介して伝熱管3に接続された構成とされている。
【0031】
複数の胴パイプ5による湯水経路は、次のようになっている。
すなわち、最上段の胴パイプ5aの一端部の入水口59に供給された湯水は、この胴パイプ5aを通過して上段のヘッダ部6aに流入する。その後は、2段目の胴パイプ5bに流入して通過した後に、下段のヘッダ部6bに流入し、さらに3段目の胴パイプ5cに流入する。この胴パイプ5cを通過した湯水は、ベンド管32を介して伝熱管3に流入し、その後出湯口39に到達する。湯水は、前記した過程において、燃焼ガスにより加熱される。
【0032】
遮熱部材8は、複数の胴パイプ5のうち、最下段の胴パイプ5(5c)の第1および第2の直状管体部50a,50bを保護するための部材である。本実施形態においては、バ
ーナ1の特性により、複数の胴パイプ5のうち、前記した部分が最も高温に加熱され易く、かつ強酸性の凝縮水が付着し易い部分となっている。このため、前記した部分以外には、遮熱部材8は設けられていない。ただし、本発明においては、前記した部分以外にも遮熱部材8を適宜設けた構成とすることが可能である。
【0033】
図2(b)によく表れているように、遮熱部材8(8a)は、胴パイプカバー部80、および第1ないし第3の延設部81~83を備えている。また、遮熱部材8は、第1の直状管体部50aの長手方向に延びており、その一端部には、隙間カバー部84も備えている(
図3および
図4を参照)。
【0034】
胴パイプカバー部80は、胴パイプ5の第1の直状管体部50aの内周側面(缶体2内の中央側の面)を覆うための部分であり、前記内周側面に嵌合する側面視円弧状である。この胴パイプカバー部80は、第1の直状管体部50aにロウ付けされているが、このロウ付けがなされる前段階において、スポット溶接などの第1の溶接部W1を介して第1の直状管体部50aに仮接合されている。
【0035】
第1の延設部81は、胴パイプカバー部80の下端部から複数のフィン4に向かう下向きに延びた部分であり、第1の直状管体部50aと複数のフィン4との相互間に形成されている第1の隙間C1の少なくとも一部を塞いでいる。第1の延設部81の下端と各フィン4との相互間の隙間寸法Laは、できる限り小さくされ、矢印Naで示すように、缶体2の中央側から進行してくる燃焼ガスが第1の隙間C1を通過することを防止または抑制する構成とされている。
【0036】
第2の延設部82は、第1の延設部81の先端部から第1の側壁部22aに向けて略水平に延びた部分であり、第1の直状管体部50aとの間に空間部90を形成するように、第1の直状管体部50aの下方に位置している。
【0037】
第3の延設部83は、第2の延設部82の先端部に繋がった部位であり、第1の側壁部22aの内面に面接触し、フィン4との干渉を生じないように下向きに延びている。この第3の延設部83と第1の側壁部22aとは、スポット溶接などの第2の溶接部W2を介して接合されている。
【0038】
図3および
図4において、缶体2のコーナ部23と、胴パイプ5の曲げ部51との相互間には、第2の隙間C2が形成されている。遮熱部材8の隙間カバー部84は、胴パイプ5の下方に位置して第2の隙間C2を塞ぐように設けられている。
【0039】
他方の遮熱部材8bは、第2の直状管体部50bの保護などを図るためのものであり、その詳細な説明は省略するが、前記した遮熱部材8aと同様な構成である。
【0040】
次に、前記した熱交換器HEおよびこれを備えた温水装置WHの作用について説明する。
【0041】
まず、最下段の胴パイプ5(5c)の第1および第2の直状管体部50a,50bのそれぞれは、遮熱部材8の胴パイプカバー部80によって覆われているため、高温の燃焼ガス(火焔を含む)に直接晒されることはなく、大きな熱的ダメージを受けないように保護される。また、胴パイプ5の表面に強酸性の凝縮水が発生する雰囲気となった場合であっても、この凝縮水が第1および第2の直状管体部50a,50bの内周側面に直接付着することも防止される。また、遮熱部材8の胴パイプカバー部80の表面温度は、胴パイプ5自体の表面温度よりも高温となるため(遮熱部材8の表面は湯水による冷却度合いが低い)、遮熱部材8の表面に凝縮水を発生し難くする効果も期待できる。したがって、第1
および第2の直状管体部50a,50bのうち、胴パイプカバー部80によって覆われている部分を腐食し難くすることが可能である。
【0042】
遮熱部材8の第1の延設部81は、既述したように、矢印Naで示すように進行してくる燃焼ガスの多くが第1の隙間C1を通過することを阻止する。このため、第1の側壁部22aのうち、
図2(b)の符号Ncで示す箇所に高温の燃焼ガスが集中して当たるといったことをなくし、同所が大きな熱ダメージを受けることも解消される。また、好ましい効果として、多くの燃焼ガスが、第1の隙間C1を通過してフィン4と第1の側壁部22aとの相互間に進入することも防止される。フィン4と第1の側壁部22aとの相互間に多くの燃焼ガスが進入すると、フィン4や伝熱管3による燃焼ガスからの熱回収量が少なくなるが、本実施形態によれば、そのようなことを解消し、熱効率を高めることも可能である。
【0043】
胴パイプ5を第1の側壁部22aにロウ付けする場合には、
図2(b)に示すように、ロウ材Bを、第1の直状管体部50aの上面部に塗布し、これを加熱溶融させる。このことにより、溶融ロウ材の一部は、第1の直状管体部50aと溝部26との嵌合部分に進入し、これらを適切にロウ付けすることができる。ただし、その際、前記嵌合部分に進入した溶融ロウ材の余剰分が、矢印Nbで示すように、第1の側壁部22aの内面を伝って第1の直状管体部50aよりもさらに下方に流れる場合がある。すると、この溶融ロウ材は、第1の側壁部22aと第3の延設部83とが面接触している部分に到達する。このため、前記溶融ロウ材は、前記の面接触部分において塞き止められることとなり、それよりも下方にさらに流れることは適切に防止される。溶融ロウ材がフィン4と第1の側壁部22aとの相互間に流れ込み、これらが接合されると、フィン4の熱膨張時に不当な応力が各部に発生するが、このようなことも適切に防止される。第1の側壁部22aと第3の延設部83とは、第2の溶接部W2を介して予め仮接合されており、これら第1の側壁部22aと第3の延設部83との間に隙間を生じないようにすることができるため、溶融ロウ材が下方に流れることを、より確実に防止することが可能である。
【0044】
第1の直状管体部50aに対する遮熱部材8のロウ付けは、前記したロウ材Bの一部の溶融ロウ材が、遮熱部材8の胴パイプカバー部80と第1の直状管体部50aとの相互間領域に進入することによりなされる。この場合、溶融ロウ材が、前記相互間領域から流出し、第1の延設部81を伝って下向きに流れる虞がある。これに対し、本実施形態においては、そのような溶融ロウ材は、第2の延設部82の上面部に到達し、空間部90において溜められる。したがって、前記溶融ロウ材が遮熱部材8の下方に垂れ流れて、フィン4に付着するといった不具合を生じないようにすることが可能である。
【0045】
図3および
図4で示したように、遮熱部材8の隙間カバー部84は、缶体2のコーナ部23の内側に生じている第2の隙間C2を塞ぐ。このため、この第2の隙間C2を無駄に通過する燃焼ガスの量を少なくし、熱効率をより高めることが可能である。第2の隙間C2を塞ぐ手段として、遮熱部材8を有効に利用しており、部品点数を少なくすることができるため、合理的である。
前記した一連の作用は、第2の直状管体部50b側に設けられた遮熱部材8(8b)においても同様に得られる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0047】
上述の実施形態においては、上下複数段の胴パイプのうち、最下段の胴パイプの一部分のみに遮熱部材が設けられているが、最下段の胴パイプの他の部分にさらに設けてもよい他、最下段の胴パイプ以外の胴パイプにもさらに設けられた構成とすることができる。
本発明の遮熱部材は、胴パイプのうち、少なくとも複数のフィンに接近した部分の内周側面を覆う胴パイプカバー部を有する他、胴パイプと複数のフィンとの相互間に形成されている第1の隙間の少なくとも一部を塞ぐ第1の延設部、およびこれに繋がった所定の第2の延設部を具備すればよく、第3の延設部を具備しない構成とすることもできる。また、遮熱部材は、胴パイプにロウ付けすることが好ましいが、たとえば溶接のみによって胴パイプに接合させた構成とすることも可能である。
【0048】
缶体や胴パイプの具体的な形状なども限定されない。胴パイプは、たとえば平面視略矩形の螺旋状パイプとすることもできる。
ロウ材の具体的な材質なども限定されない。
上述の実施形態においては、熱交換器の上側にバーナを配置した逆燃式であるが、これに限定されず、たとえば熱交換器の下側にバーナを配置した正燃式とすることもできる。加熱用気体は、燃焼ガスに限定されず、たとえばコージェネレーションシステムにおいて発生する高温の排ガスなどとすることもできる。
本発明でいう温水装置は、湯水を加熱して温水を生成する機能を備えたものであり、一般的な給湯装置の他、たとえば風呂給湯装置、暖房用温水装置、融雪用の温水装置なども含む。
【符号の説明】
【0049】
WH 温水装置
HE 熱交換器
C1,C2 第1および第2の隙間
1 バーナ
2 缶体
22a~22d 第1ないし第4の側壁部(缶体の側壁部)
23 コーナ部
26 凹溝
3 伝熱管
4 フィン
5 胴パイプ
50a~50c 第1ないし第3の直状管体部
51 曲げ部
8 遮熱部材
80 胴パイプカバー部
81~83 第1ないし第3の延設部
84 隙間カバー部
90 空間部