(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】住宅展示施設
(51)【国際特許分類】
G09B 25/04 20060101AFI20221101BHJP
G09F 5/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G09B25/04
G09F5/00 A
(21)【出願番号】P 2018131551
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-04-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔公開者〕 積水ハウス株式会社 〔展示日〕 平成30年4月28日 〔展示場所〕 西宮・酒蔵通り住宅公園 積水ハウス株式会社 西宮酒蔵通り展示場 〔公開者〕 積水ハウス株式会社 〔刊行物〕 配布チラシ 〔発行日〕 平成30年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】鷺原 正義
(72)【発明者】
【氏名】松原 みちよ
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-311126(JP,A)
【文献】特開2005-309175(JP,A)
【文献】特開2014-062419(JP,A)
【文献】特開2014-061198(JP,A)
【文献】実開平04-021658(JP,U)
【文献】吹き抜けを通して家族の気配を感じあうリビング階段の家,間取りプラン(WaybackMachine)[online],2017年12月01日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20171201113857/http://madori.archi21.co.jp/2011/07/047/>,[2022年 3月15日検索]
【文献】カーブ階段のある住宅展示場,協立エアテック[online],2016年09月29日,インターネット<URL:https://kankimaru.com/blog/kankimaru/curve-kaidan-tenjijo>,[2022年 3月15日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/00-29/14
G09F 1/00- 5/04
E04H 1/00- 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸建住宅を模して形成され、玄関ホールと階段室とを通路を通じて行き来可能に配置した複数階からなる住宅展示施設であって、
前記階段室は、平面視L形状に形成される階段と、前記階段の1階の入隅部側に形成され、ベンチを有する着座スペースと、を備え、
前記階段の昇降口及び前記着座スペースは、前記通路に面して形成され、
前記昇降口は、前記着座スペースよりも前記玄関ホールから離反する位置に形成され、
前記通路は、前記階段室に隣接する居室の一部であり、
前記着座スペースは、前記居室を挟んで屋外に面する開口部に対向し、
前記ベンチに着座すると、前記開口部を通して前記屋外に形成されたテラスを視認可能であ
り、
前記階段は、各段板の前記着座スペース側の縁端に沿って平面視L形状の側壁を設けられ、
前記側壁は、前記着座スペースを挟んで前記通路に面する第1側壁と、当該第1側壁に直交し、前記昇降口側に形成される腰壁の第2側壁と、からなり、
前記着座スペースは、前記側壁と、前記ベンチを挟んで前記第2側壁に対向する間仕切壁と、によって3方を囲われ、
前記第2側壁の上面は、1枚の前記段板を延設して形成されるものであり、
前記階段室及び前記通路は、前記間仕切壁を隔てて前記玄関ホールと隣接し、
前記玄関ホール及び前記通路は、前記間仕切壁に形成された出入口を通じて行き来可能であることを特徴とする住宅展示施設。
【請求項2】
1階は、前記階段室を中心に前記通路から1階各室を通って再び前記通路に帰順する回遊動線を形成されることを特徴とする請求項1に記載の住宅展示施設。
【請求項3】
前記居室は、リビング・ダイニングであることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の住宅展示施設。
【請求項4】
前記
ベンチは、前記
第1側壁に沿って配置されるとともに、前記第1側壁を背もたれとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の住宅展示施設。
【請求項5】
前記ベンチの先端は、前記着座スペースと前記通路との境界から一定距離離隔されていることを特徴とする請求項1から請求4のいずれかに記載の住宅展示施設。
【請求項6】
前記開口部は、前記居室の床面から略天井面までの高さを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の住宅展示施設。
【請求項7】
前記テラスは、上方に軒天井を有し、床面を前記居室の床面と略面一に形成されることを特徴とする請求項6に記載の住宅展示施設。
【請求項8】
前記
間仕切壁は、前記ベンチの先端よりも前記通路側へ突出して延設されることを特徴とする請求項
1から請求項7のいずれかに記載の住宅展示施設。
【請求項9】
前記第2側壁は、
壁体内に備品を収納する収納スペースを設けていることを特徴とする請求項
1から請求項8のいずれかに記載の住宅展示施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅を模して形成される住宅展示施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の住宅メーカーの住宅展示施設を展示する住宅展示場が知られている。住宅の購入を検討する来場者は、これら複数の住宅展示施設を順に見学するため、各社は来場者の印象に残りやすいよう、他社との差別化を図って自社の住宅展示施設の間取りや空間構成、来場者の動線に創意工夫を施している。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各社の営業担当者は、自社の住宅展示施設を訪れた来場者を案内する際に、名簿取得のための記名を来場者へ依頼する。その際、施設内のリビングに設置されたソファに着座を促すことが多いが、リビングのソファでは仰々しい印象を来場者に与えてしまい、来場者が着座することを躊躇してゆっくりと会話を行うことが難しい。また、複数階からなる住宅展示施設の階段室を玄関室に面して配置した場合、他階を案内された後に階段を降りてそのまま玄関室から帰る来場者も多く、次回のアポイントを取ることが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであって、来場者に抵抗感無く着座を促して折衝や商談を効果的に行うことができるとともに、来場者に対して強い印象を残す住宅展示施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の住宅展示施設は、戸建住宅を模して形成され、玄関ホールと階段室とを通路を通じて行き来可能に配置した複数階からなる住宅展示施設であって、前記階段室は、平面視L形状に形成される階段と、前記階段の1階の入隅部側に形成され、ベンチを有する着座スペースと、を備え、前記階段の昇降口及び前記着座スペースは、前記通路に面して形成され、前記昇降口は、前記着座スペースよりも前記玄関ホールから離反する位置に形成され、前記通路は、前記階段室に隣接する居室の一部であり、前記着座スペースは、前記居室を挟んで屋外に面する開口部に対向し、前記ベンチに着座すると、前記開口部を通して前記屋外に形成されたテラスを視認可能であり、前記階段は、各段板の前記着座スペース側の縁端に沿って平面視L形状の側壁を設けられ、前記側壁は、前記着座スペースを挟んで前記通路に面する第1側壁と、当該第1側壁に直交し、前記昇降口側に形成される腰壁の第2側壁と、からなり、前記着座スペースは、前記側壁と、前記ベンチを挟んで前記第2側壁に対向する間仕切壁と、によって3方を囲われ、前記第2側壁の上面は、1枚の前記段板を延設して形成されるものであり、前記階段室及び前記通路は、前記間仕切壁を隔てて前記玄関ホールと隣接し、前記玄関ホール及び前記通路は、前記間仕切壁に形成された出入口を通じて行き来可能であることを特徴ととしている。
【0007】
本発明の第2の住宅展示施設は、1階が、前記階段室を中心に前記通路から1階各室を通って再び前記通路に帰順する回遊動線を形成されることを特徴としている。
【0008】
本発明の第3の住宅展示施設は、前記居室が、リビング・ダイニングであることを特徴としている。
【0009】
本発明の第4の住宅展示施設は、前記ベンチが、前記第1側壁に沿って配置されるとともに、前記第1側壁を背もたれとすることを特徴としている。
【0010】
本発明の第5の住宅展示施設は、前記ベンチの先端が、前記着座スペースと前記通路との境界から一定距離離隔されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の第6の住宅展示施設は、前記開口部が、前記居室の床面から略天井面までの高さを有することを特徴としている。
【0012】
本発明の第7の住宅展示施設は、前記テラスが、上方に軒天井を有し、床面を前記居室の床面と略面一に形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明の第8の住宅展示施設は、前記間仕切壁が、前記ベンチの先端よりも前記通路側へ突出して延設されることを特徴としている。
【0014】
本発明の第9の住宅展示施設は、前記第2側壁が、壁体内に備品を収納する収納スペースを設けていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の住宅展示施設によると、玄関ホールと階段室とを結ぶ通路に面してベンチを有する着座スペースを設けているので、営業担当者は、玄関ホールから来場した来場者、又は他階から昇降してきた来場者に通過動線上のベンチへとさりげなく着座を促すことができる。また、階段の昇降口は、着座スペースよりも玄関ホールから離反する位置に形成されるので、玄関ホールと階段の昇降口とを行き来する際は必ず着座スペースの前を通ることになり、住宅展示施設の見学前後の来場者が、着座せずに玄関ホールから他階に昇降したり、他階から階段で1階に帰順した後にそのまま玄関ホールから帰ってしまうことを防止できる。そして、着座スペースにはソファのような仰々しい椅子ではなく身構えずに着座しやすいベンチを配置しているので、来場者の緊張感を和らげてアンケートの記名や次回のアポイントについて気軽に依頼することができる。さらに、通路は居室の一部であり、また、着座スペースは居室を挟んで開口部と対向するので、住宅展示施設の見学前後にベンチに着座する来場者は、隣接する居室の様子や開口部から覗く屋外のテラスを広く見渡すことができ、開放的な居室の印象を記憶に残しやすい。したがって、居室を特にアピールしたい部屋とした場合、来場者に対してその部屋の雰囲気を強く印象付けることができるため、他社の住宅展示施設との差別化を図ることができる。
【0016】
本発明の第2の住宅展示施設によると、1階に通路から1階の各室を通って再び通路に帰順する回遊動線を形成されるので、来場者が1階のみ見学する場合であっても、玄関ホールからそのまま帰ってしまうことを防止できる。また、来場者は1階見学後、他階に昇降する前に再び開放的な居室を眺めることになるので、居室の印象が記憶に残りやすい。したがって、来場者に対して居室の雰囲気を強く印象付けることができ、他社の住宅展示施設との差別化を図ることができる。
【0017】
本発明の第3の住宅展示施設によると、居室を住宅の中心的な存在であるリビング・ダイニングとしているので、見学前後に着座スペースに着座した来場者は、リビング・ダイニングを中心に住宅展示施設の全体的な雰囲気を記憶に残しやすい。したがって、来場者に対して住宅展示施設の雰囲気を強く印象付けることができ、他社の住宅展示施設との差別化を図ることができる。
【0018】
本発明の第4の住宅展示施設によると、ベンチは、ベンチを挟んで通路に面する第1側壁に沿って配置されるとともに第1側壁を背もたれとする簡素な造りの椅子であるため、来場者は、身構えることなく気軽に着座し、リラックスした状態で居室やテラスの景色を楽しむことができる。
【0019】
本発明の第5の住宅展示施設によると、ベンチの先端は、着座スペースと通路との境界から一定距離離隔されているので、ベンチに着座した来場者の脚が通路に入り込んで他の来場者の見学の妨げとなることを防止できる。
【0020】
本発明の第6の住宅展示施設によると、開口部は、居室の床面から略天井面までの高さを有するので、着座スペースに着座すると、居室やその奥に位置するテラスの様子を広く見渡すことができ、来場者に対して、明るく開放的な居室の印象を強く残すことができる。
【0021】
本発明の第7の住宅展示施設によると、テラスは、床面を居室の床面と略面一に形成されるので、リビング・ダイニングをテラスまで連続する1つの広い空間であるかのように感じる特徴的な空間とすることができる。
【0022】
本発明の第8の住宅展示施設によると、着座スペースは側壁と間仕切壁によって3方を囲われており、間仕切壁はベンチの先端よりも通路側へ突出して延設されるので、ベンチに着座する来場者は、階段を昇降する他の来場者や間仕切壁を挟んで隣接する部屋に滞在中の他の来場者を気にすることなく、落ち着いて着座することができる。
【0023】
本発明の第9の住宅展示施設によると、第2側壁には、壁体内に備品を収納する収納スペースを設けているので、着座スペースに着座する来場者に渡すパンフレットや案内を収納しておくことができ、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、住宅展示施設の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願の住宅展示施設1は、主に住宅展示場に建設され、戸建住宅を模して形成される展示施設であり、周囲には他の住宅メーカーの住宅展示施設が複数建ち並んでいる。
図1及び
図2は、本発明の住宅展示施設1の一例を示すもので、
図1は1階平面図、
図2は2階平面図をそれぞれ示している。ここでは、住宅展示施設1を地上2階建としているが、階数は3以上であってもよい。なお、本発明において「左」、「右」、「上」、「下」とは
図1及び
図2における左方向、右方向、上方向、下方向をそれぞれ指すものとする。
【0026】
まず住宅展示施設1の各階の平面構成について説明する。
図1に示すように、1階は、住宅展示施設1の略中央に配置される階段室2、階段室2の下側に配置されるリビング・ダイニング3、リビング・ダイニング3の右側に配置され、玄関ホール41を有する玄関室4、玄関室4の上側に配置され、営業担当者の事務所でもある和室兼事務所5、和室兼事務所5の左側且つ階段室2の上側に配置され、趣味に集中できる趣味コーナー6、趣味コーナー6の左側に配置される第1家事室7、第1家事室7の左側に配置されるキッチン8、そして、リビング・ダイニング3とキッチン8との左側、及びリビング・ダイニング3の下側にL形に形成される屋外のテラス9、によって構成されている。また図示するように、1階は階段室2を中心としてリビング・ダイニング3の階段室2側に形成される通路31から、キッチン8~第1家事室7~趣味コーナー6~玄関ホール41~通路31を一筆書きで回遊できる回遊動線Xを形成されている。
【0027】
図2に示すように、2階は、1階と同様に住宅展示施設1の略中央に配置される階段室2、階段室2の下側に配置されるリビング10、リビング10の左側に配置される寝室11、寝室11の上側に左右に並べて配置されるウォークインクローゼット11a及び浴室12、ウォークインクローゼット11a及び浴室12の上側に配置される洗面室13、洗面室13の右側に配置される第2家事室14、第2家事室14の右側に配置され、住宅展示施設1の構造や性能についての技術を紹介する技術コーナー15、技術コーナー15の右側に配置される書斎16、書斎16の下側に配置される第1子供室17、第1子供室17の左側に配置される廊下18、第1子供室17の下側に配置される第2子供室19、第2子供室19の左側に配置され、第2子供室19から利用可能な子供室用ウォークインクローゼット19a、によって屋内空間が構成される。そして、寝室11とリビング10との下側、及び寝室11の左側にはL形状の第1バルコニー20a、洗面室13の左側及び上側にはL形状の第2バルコニー20b、第2子供室19の下側及び右側にはL形状の第3バルコニー20c、がそれぞれ外壁から屋外側へ突出して形成されており、第1バルコニー20a及び第2バルコニー20bは、1階のテラス9の軒を兼ねている。また、2階は階段室2~廊下18~リビング10~寝室11~ウォークインクローゼット11a~洗面室13~第2家事室14~技術コーナー15~廊下18~階段室2を一筆書きで回遊できる回遊動線Yを形成されている。
【0028】
図1に示すように、リビング・ダイニング3と玄関ホール41とは、間仕切壁W3によって隔てられるとともに、間仕切壁W3に形成された第1出入口1Aによって行き来可能となっており、玄関ホール41と階段室2とは、通路31を通じて行き来可能となっている。
図3及び
図4に示すように、階段室2は、平面視略L形状に形成される階段21と、階段21の入隅部側に形成され、ベンチ2aを有する着座スペース22と、を備えている。階段21の昇降口21A及び着座スペース22は、リビング・ダイニング3の通過動線となる通路31に面しており、また、昇降口21Aは、着座スペース22よりも玄関ホール41から離反する位置に配置される。階段21は、1階と2階とを結んでおり、段板の着座スペース22側の縁端に沿って平面視L形の側壁Wを形成されている。側壁Wは、階段21の着座スペース22側の段板側面を被覆するために床面から上方へ延設される壁体であり、着座スペース22を挟んで通路31と対向する第1側壁W1と、第1側壁W1に直交し、昇降口21A側に形成される第2側壁W2と、を具備している。
【0029】
着座スペース22は、玄関ホール41から来場した来場者又は2階見学後の来場者が一時的に着座するためのスペースであり、ベンチ2aを有している。
図1及び
図3に示すように、着座スペース22は、側壁Wと、ベンチ2aを挟んで第2側壁W2と対向する間仕切壁W3と、によって通路31側を除く3方を囲まれており、また、第2側壁W2及び間仕切壁W3は、ベンチ2aの先端よりも通路31側へ突出して延設されている。したがって、ベンチ2aに着座する来場者は、階段21を昇降する他の来場者や玄関ホール41に滞在する他の来場者を気にすることなく、落ち着いて着座することができる。そして、
図3に示すベンチ2aの先端から着座スペース22と通路31との境界までの距離Lは250mm程度以上であり、来場者がベンチ2aに着座した際に来場者の脚が通路31内に入り込まないように考慮されている。このような寸法とすることで、ベンチ2aに着座する来場者が回遊動線Xを通過する他の来場者の見学の妨げとなることを防止している。
【0030】
図4に示すように、着座スペース22内に設けられたベンチ2aは、椅子自体に背もたれや手摺りを有しない横長の椅子で、第1側壁W1に沿って第2側壁W2から間仕切壁W3までの間に設置され、第1側壁W1を背もたれとしている。このように、ベンチ2aをソファのような仰々しい椅子としないことで、来場者は気負わずに着座することができる。また、ベンチ2aの寸法は特に限定されないが、ベンチ2aの奥行き寸法Dを400mm~550mm程度、床面からベンチ2aの座面までの高さ距離H1を390mm~450mm程度とすることが好ましい。
【0031】
なお、図示例ではベンチ2aを横長の板材のみで形成しているが、ベンチ2aは、横長の箱状椅子でもよく、また、1人掛けの板材及び箱状椅子を横並びに複数設置してもよい。ベンチ2aを横長の板材や横長の箱状椅子とした場合は、1人掛けの椅子と比較して着座できる人数が増えるため来場者の人数が多い場合でも対応しやすく、また、
図4に示すようなマットレス2bやクッション2cなどの備品を座面に配置して寛げる空間を演出しやすい。そして、ベンチ2aを箱状椅子とした場合は、パンフレットなどの備品を収納するための収納スペースを椅子内部に形成することができ、ベンチ2aを板材で形成した場合は、板材の裏側に間接照明を設けて着座スペース22の雰囲気に変化をつけることも可能である。
【0032】
また、第2側壁W2は、
図4に示すように、床面から上面までの高さ距離H2を750mm~1000mm程度で形成されており、第2側壁W2の上面に照明器具2dを設置して記名する来場者の手元を明るく照らしたり、第2側壁W2の上面を来場者が記名する際のカウンターとして利用してもよい。また、図示例に示すように、第2側壁W2の壁厚を厚くして壁体内に来場者へ渡すための備品を収納する収納スペース2eを設けて利便性を向上させてもよい。そして、
図3に示すように、昇降口21Aから踊り場23までの段を4段とし、階段21の蹴上げ寸法を150mm~200mm程度とすると、方向転換する5段目の段板24の高さと第2側壁W2の上面の高さとを略一致させることができる。したがって、段板24を通路31側に延設してそのまま第2側壁W2の上面とすれば、階段室2を階段21と着座スペース22とに区分しながらも一体感のある空間構成とすることができる。
【0033】
図1に示すように、リビング・ダイニング3は、リビングとダイニングを一体の空間として形成された部屋で、住宅展示施設1の中心となる居室である。リビング・ダイニング3の階段室2側に形成される通路31は、リビング・ダイニング3の通過動線であり、リビング・ダイニング3のソファやテーブルなどの家具を避けて配置されるとともに、第1出入口1Aに面して形成されている。したがって、玄関ホール41から第1出入口1Aを通ってリビング・ダイニング3に入室すると、目の前に着座スペース22のベンチ2aが現れることになる。また、リビング・ダイニング3の右下には、リビング・ダイニング3から使用可能なクローク32が形成されている。
【0034】
図1に示すように、リビング・ダイニング3は、室の下側及び左側に形成されるL形の開口部1Bを隔てて屋外と隣接している。開口部1Bは、リビング・ダイニング3を挟んで着座スペース22と対向する第1開口部1Cと、第1開口部1Cに直交するとともに第1開口部1Cと連続する第2開口部1Dと、によって構成されており、第1開口部1C及び第2開口部1Dともにリビング・ダイニング3の床面から略天井面までの高さを有し、透明ガラスが嵌め込まれている。なお、本実施形態において、「略天井面までの高さ」とは、人が屋外を行き来できる一般的な掃出し窓の上端からリビング・ダイニング3の天井面までの間の高さを指し、第1開口部1C及び第2開口部1Dの上端からリビング・ダイニング3の天井面までの距離は、500mm程度以内とすることが望ましい。また、図示するように、着座スペース22は、第1開口部1C及び第2開口部1Dによって形成される入隅部と斜め方向に対向しているので、ベンチ2aに着座すると、開口部1Bを通して屋外のテラス9の様子を広く見渡すことができるとともに、明るく開放的な雰囲気のリビング・ダイニング3を眺めることができる。なお、テラス9は、先述した第1バルコニー20a及び第2バルコニー20bの下部に形成される半屋外的な空間であり、床面がリビング・ダイニング3の床面と略面一に形成されている。したがって、リビング・ダイニング3を見渡すと、リビング・ダイニング3がテラス9まで連続する1つの広い空間であるかのように感じることができる。
【0035】
図1に示すように、玄関室4は住宅展示施設1の1階の右下側に配置され、来場者が施設内に入場するための第2出入口1Eを設けられた玄関土間40と、玄関土間40の上側に配置される玄関ホール41と、玄関土間40の左側に配置されるシューズクローク42と、を有している。玄関ホール41は、第1出入口1Aによってリビング・ダイニング3と行き来可能であるとともに、玄関ホール41の上側に位置する趣味コーナー6とも行き来可能に連通している。また、玄関ホール41の第1出入口1A付近にはパンフレットなどの備品を収納する収納棚4aが設けられている。
【0036】
次に、住宅展示施設1の動線について具体的に説明する。
図1に示す第2出入口1Eから来場した来場者は、玄関土間40から玄関ホール41に上がり、営業担当者の案内で第1出入口1Aから通路31を通って着座スペース22に誘導される。そして、営業担当者は、来場者に目の前のベンチ2aへの着座をさりげなく促してアンケートなどの記名を依頼する。先述したように、ベンチ2aは、リビング・ダイニング3に設置されるような仰々しいソファではなく、椅子自体に背もたれや手摺りを有しない簡素な造りの椅子であるため、来場者は身構えることなく気軽に着座しやすい。ベンチ2aに着座した来場者は、住宅の中心的存在であるリビング・ダイニング3及び開口部1Bを通じてテラス9を広く見渡すことができる。また先述したように、リビング・ダイニング3及びテラス9は一体的に続く空間であるかのように感じさせる特徴的な構成となっているので、来場者に対してこれから見学する住宅展示施設1への期待感を抱かせやすい。
【0037】
記名を終えた来場者は、営業担当者の案内に従い、通路31から回遊動線Xに沿って1階の各室を見学し、再び通路31に帰順する。このとき、来場者は再びリビング・ダイニング3の前を通過することになるので、来場者に対してリビング・ダイニング3を印象付けやすい。そして、階段21で2階へ上がり、
図2に示す回遊動線Yに沿って階段室2から各室を見学した来場者は再び階段室2に戻り、1階へ降りる。そして、営業担当者は来場者に対して再び階段21横の着座スペース22への着座をさりげなく促し、住宅展示施設1についての感想を来場者に聞いたり、次回のアポイントを約束したりする。このとき、来場者はリビング・ダイニング3のソファや別室の椅子などではなく、通過動線上に配置されたベンチ2aに着座を促されるので、商談や折衝に対する不安感や抵抗感が緩和されて営業担当者と気軽にコミュニケーションをとりやすい。そして、来場者は来場時と同様にリビング・ダイニング3及びテラス9を改めて見渡すこととなるため、住宅展示施設1の印象が残りやすく、帰った後も住宅展示施設1の記憶を思い起こしやすい。なお、着座スペース22に面する部屋は、必ずしもリビング・ダイニング3である必要はなく、来場者に特に印象付けたい部屋であれば他の部屋であってもよい。
【0038】
また、階段室2は玄関ホール41に面さず、階段21の昇降口21Aは着座スペース22よりも玄関ホール41から離反しているので、階段21を降りると、玄関ホール41に辿り着く前に必ず着座スペース22の前を通過することになる。したがって、2階見学後の来場者が階段21を降りて玄関ホール41からそのまま帰ってしまうことを防ぎ、営業担当者は来場者に対してさりげなく着座スペース22への着座を促すことができる。
【0039】
そして、先述したように、ベンチ2aや第2側壁W2にパンフレットなどの備品を収納する収納スペースを設けておけば、来場者に手早く備品を渡すことができ利便性を向上させることができる。また、階段室2にこうした収納スペースを設けない場合であっても、階段室2に近接して営業担当者の事務所である和室兼事務所5を配置するとともに、玄関ホール41の第1出入口1A付近に収納棚4aを設けているので、来場者へ渡す備品を手短に準備することができる。
【0040】
このように、住宅展示施設1は、着座スペース22を個室ではなく通路31の通過動線上に配置するとともに、着座スペース22から見渡す景色を印象的なものとしているので、来場者の抵抗感を緩和して折衝や商談を効果的に行うことができ、また、来場者に対して強い印象を残す施設とすることができる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る住宅展示施設は、住宅展示場に建設される住宅展示施設に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 住宅展示施設
2 階段室
21 階段
22 着座スペース
2a ベンチ
2e 収納スペース
3 リビング・ダイニング
31 通路
41 玄関ホール
9 テラス
1B 開口部
1C 第1開口部
1D 第2開口部
W 側壁
W1 第1側壁
W2 第2側壁
W3 間仕切壁
回遊動線 X、Y