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特許7167525温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20221101BHJP
   F01K 9/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F01D25/00 V
F01D25/00 W
F01K9/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018143125
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020277
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】石原 誠也
(72)【発明者】
【氏名】奥田 貴弘
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031840(JP,A)
【文献】特開2010-024871(JP,A)
【文献】特開2016-200078(JP,A)
【文献】特開2016-017710(JP,A)
【文献】特開2014-227911(JP,A)
【文献】特開2013-209897(JP,A)
【文献】特開2012-112251(JP,A)
【文献】特開2012-057512(JP,A)
【文献】特開2011-002127(JP,A)
【文献】特開2010-121564(JP,A)
【文献】特開2010-026632(JP,A)
【文献】特開2008-292121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/00-17/26
F01D 25/00-25/36
F01K 9/00- 9/04
F28B 1/02
F28B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変更後の発電機出力値および当該変更後の発電機出力値で発電機を運転する運転時間の設定を受け付ける受付部と、
前記受付部によって受け付けられた変更後の発電機出力値および運転時間に基づいて、所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、当該所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間のうち当該運転時間以外の期間における発電機出力値を算出する出力値算出部と、
前記出力値算出部によって算出された算出結果を出力する出力部と、
前記所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された累計値と現在時刻とに基づいて、前記所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、前記所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値を算出する温度差算出部と、
を備え
前記出力値算出部は、前記温度差算出部によって算出された平均値と、現在時刻における発電機出力値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間における発電機出力値の平均値を算出することを特徴とする温度差管理支援装置。
【請求項2】
記運転時間以外の期間における発電機出力値は、前記受付部によって受け付けられた変更後の発電機出力値および運転時間と、前記目標値と、前記取得部によって取得された累計値と、現在時刻における発電機出力値と、現在時刻と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、下記数式によって算出された値であることを特徴とする請求項1に記載の温度差管理支援装置。
(Z1÷Z2-C)÷X+D
但し、Z1=E×24-A-{(DC-D)×X+C}×TC
Z2=24-B-TC
DC:変動後の発電機出力値
TC:運転時間
E:目標値
A:取放水口海水温度差のロギングデータの累計値
D:現在時刻における発電機出力値
X:単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率
C:現在の取放水口海水温度差の瞬時値
B:現在時刻
【請求項3】
前記受付部は、前記運転時間の開始時刻および終了時刻を受け付けることによって当該運転時間を受け付けることを特徴とする請求項1または2に記載の温度差管理支援装置。
【請求項4】
所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値を取得する取得部と、
変更後の発電機出力値の設定を受け付ける受付部と、
前記取得部によって取得された累計値と現在時刻とに基づいて、前記所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、前記所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値を算出する温度差算出部と、
前記受付部によって受け付けられた変更後の発電機出力値と、前記温度差算出部によって算出された平均値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間において前記変更後の発電機出力値で運転可能な運転時間を算出する運転時間算出部と、
前記運転時間算出部によって算出された算出結果を出力する出力部と、
前記温度差算出部によって算出された平均値と、現在時刻における発電機出力値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間における発電機出力値の平均値を算出する出力値算出部と、
を備え、
前記出力部は、前記出力値算出部によって算出された算出結果を出力することを特徴とする温度差管理支援装置。
【請求項5】
前記変化率は、第1の時刻における発電機出力値および取放水口海水温度差と、当該第1の時刻とは異なる第2の時刻における発電機出力値および取放水口海水温度差と、に基づいて、下記数式によって算出された値であることを特徴とする請求項1、2または4のいずれか一つに記載の温度差管理支援装置。
X=(Xt1-Xt2)/(Dt1-Dt2)
X:単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率
Dt1:第1の時刻t1における発電機出力値
Xt1:第1の時刻t1における取放水口海水温度差
Dt2:第2の時刻t2における発電機出力値(ただし、Dt2<Dt1)
Xt2:第2の時刻t2における取放水口海水温度差(ただし、Xt2<Xt1)
【請求項6】
前記温度差算出部は、前記取得部によって取得された累計値に基づいて、前記残余の期間において、現在時刻における発電機出力値と同じ発電機出力で発電した場合の取放水口海水温度差の第2の平均値を算出し、
前記出力部は、前記温度差算出部によって算出された第2の平均値と前記目標値との大小関係に関する情報を出力することを特徴とする請求項1、2または4のいずれか一つに記載の温度差管理支援装置。
【請求項7】
コンピュータに、
変更後の発電機出力値および当該変更後の発電機出力値で発電機を運転する運転時間の設定を受け付けさせる受付処理と
受け付けられた変更後の発電機出力値および運転時間に基づいて、所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、当該所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間のうち当該運転時間以外の期間における発電機出力値を算出させる出力値算出処理と
算出された算出結果を出力させる出力処理と、
前記所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値を取得させる取得処理と、
前記取得処理によって取得された累計値と現在時刻とに基づいて、前記所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、前記所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値を算出させる温度差算出処理と、
実行させ
前記出力値算出処理は、前記温度差算出処理によって算出された平均値と、現在時刻における発電機出力値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間における発電機出力値の平均値を算出させることを特徴とする温度差管理支援プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値を取得させる取得処理と
変更後の発電機出力値の設定を受け付けさせる受付処理と
取得された累計値と現在時刻とに基づいて、前記所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、前記所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値を算出させる温度差算出処理と
受け付けられた変更後の発電機出力値と、算出された平均値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間において前記変更後の発電機出力値で運転可能な運転時間を算出させる運転時間算出処理と
算出された算出結果を出力させる出力処理と
前記温度差算出処理によって算出された平均値と、現在時刻における発電機出力値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間における発電機出力値の平均値を算出させる出力値算出処理と、
を実行させ、
前記出力処理は、前記出力値算出処理によって算出された算出結果を出力させることを特徴とする温度差管理支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電に用いる冷却水の取水時の温度と放水時の温度との温度差の管理に供する温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電においては、石油、石炭、液化天然ガスなどの燃料を燃やして水を熱し、これによって発生する高温高圧の蒸気を用いてタービンを回し、当該タービンに連結されている発電機を回すことによって発電する。火力発電において、海水を冷却水として利用する場合、タービン蒸気と冷却水とが直接接触しない表面復水器が使用される。
【0003】
表面復水器における冷却に用いる海水に関しては、各自治体との協定などに基づいて、取放水の温度差が定められており、火力発電所はこれを順守する必要がある。具体的に、火力発電所は、たとえば、取水口海水温度と放水口海水温度との温度差(以下「取放水口海水温度差」という)を管理している。
【0004】
取放水口海水温度差は、発電機の出力が一定であっても、取水口海水温度の変化によって変動する。このため、火力発電所は、状況に応じて、発電機の出力を抑えることによって、取放水口海水温度差が定められた閾値以内になるように調整している。
【0005】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、取水温度と放水温度とを測定して算出した取放水口海水温度差に基づいて平均取放水口海水温度差を算出し、取水温度、取放水口海水温度差および平均取放水口海水温度差の少なくともいずれかが第1の条件を満たす通常制御時は所定の算出手法にしたがって算出した発電出力の制御量に基づいて発電出力を制御し、取水温度、取放水口海水温度差および平均取放水口海水温度差の少なくともいずれかが第2の条件を満たす緊急制御時は早見表にしたがって取得した発電出力の制御量に基づいて発電出力を制御するようにした取放水口海水温度差管理方法および取放水口海水温度差管理設備に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0006】
また、関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、取水温度および放水温度を測定するとともに取水温度を時系列に記憶し、同時に測定された放水温度と取水温度との温度差(瞬時温度差)を発電出力(負荷)をいくつ下げると取放水口海水温度差が何度減少するかを示す負荷抑制早見表に基づいて算出するとともに、放水温度と当該放水温度の測定時よりも所定時間前に測定された取水温度との温度差を管理用温度差として算出し、算出された瞬時温度差および管理用温度差を表示するようにした取放水口海水温度差管理システムおよび取放水口海水温度差管理方法に関する技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-31840号公報
【文献】特開2016-200078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1および2に記載された従来の技術は、いずれも、過去の実績値に基づいて作成された早見表に基づいて発電出力を制御しており、この早見表は「発電出力を25MW下げると取放水口海水温度差が何度減少するか」、「発電出力を50MW下げると取放水口海水温度差が何度減少するか」のように断続的なデータであるため、早見表に記載されている範囲のプロットの粗さでしか取放水口海水温度を管理することができず、取放水口海水温度を精密に管理することが難しいという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、取放水口海水温度を精密に管理することができる温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる温度差管理支援装置は、所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値を取得する取得部と、前記取得部によって取得された累計値と現在時刻とに基づいて、前記所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、前記所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値を算出する温度差算出部と、前記温度差算出部によって算出された平均値と、現在時刻における発電機出力値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間における発電機出力値の平均値を算出する出力値算出部と、前記出力値算出部によって算出された平均値を出力する出力部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる温度差管理支援装置は、上記の発明において、前記変化率が、第1の時刻における発電機出力値および取放水口海水温度差と、当該第1の時刻とは異なる第2の時刻における発電機出力値および取放水口海水温度差と、に基づいて、下記数式によって算出された値であることを特徴とする。
X=(Xt1-Xt2)/(Dt1-Dt2)
X:単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率
Dt1:第1の時刻t1における発電機出力値
Xt1:第1の時刻t1における取放水口海水温度差
Dt2:第2の時刻t2における発電機出力値(ただし、Dt2<Dt1)
Xt2:第2の時刻t2における取放水口海水温度差(ただし、Xt2<Xt1)
【0012】
また、この発明にかかる温度差管理支援装置は、上記の発明において、変更後の発電機出力値および当該変更後の発電機出力値で発電機を運転する運転時間の設定を受け付ける受付部を備え、前記出力値算出部が、前記受付部によって受け付けられた変更後の発電機出力値および運転時間に基づいて、前記所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、前記残余の期間のうち当該運転時間以外の期間における発電機出力値を算出することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる温度差管理支援装置は、上記の発明において、前記運転時間以外の期間における発電機出力値が、前記受付部によって受け付けられた変更後の発電機出力値および運転時間と、前記目標値と、前記取得部によって取得された累計値と、現在時刻における発電機出力値と、現在時刻と、前記変化率と、に基づいて、下記数式によって算出された値であることを特徴とする。
(Z1÷Z2-C)÷X+D
但し、Z1=E×24-A-{(DC-D)×X+C}×TC
Z2=24-B-TC
DC:変動後の発電機出力値
TC:運転時間
E:目標値
A:取放水口海水温度差のロギングデータの累計値
D:現在時刻における発電機出力値
X:単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率
C:現在の取放水口海水温度差の瞬時値
B:現在時刻
【0014】
また、この発明にかかる温度差管理支援装置は、上記の発明において、前記受付部が、前記運転時間の開始時刻および終了時刻を受け付けることによって当該運転時間を受け付けることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる温度差管理支援装置は、上記の発明において、変更後の発電機出力値の設定を受け付ける受付部と、前記受付部によって受け付けられた変更後の発電機出力値と、前記温度差算出部によって算出された平均値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間において前記変更後の発電機出力値で運転可能な運転時間を算出する運転時間算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる温度差管理支援装置は、上記の発明において、前記温度差算出部が、前記取得部によって取得された累計値に基づいて、前記残余の時間において、現在の発電機出力値と同じ発電機出力で発電した場合の取放水口海水温度差の第2の平均値を算出し、前記出力部が、前記温度差算出部によって算出された第2の平均値と前記目標値との大小関係に関する情報を出力することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる温度差管理プログラムは、コンピュータに、所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値を取得させ、取得された累計値と現在時刻とに基づいて、前記所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、前記所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値を算出させ、算出された平均値と、現在の発電機出力値と、発電機における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、前記残余の期間における発電機出力値の平均値を算出させ、算出された平均値を出力させる、処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラムによれば、取放水口海水温度を精密に管理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】火力発電所の概略構成を示す説明図である。
図2】この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置のハードウエア構成を示す説明図である。
図3】この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置の出力例を示す説明図である。
図4】この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置の機能的構成を示すブロック図である。
図5】この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
(火力発電所の概略構成)
まず、火力発電所の概略構成について説明する。図1は、火力発電所の概略構成を示す説明図である。図1において、火力発電所100は、ボイラー101と、タービン102と、発電機103と、復水器104と、を備えている。
【0022】
ボイラー101は、燃焼室105と熱交換装置106とを備えている。燃焼室105は、燃料タンク105aから供給される燃料を燃焼させる。燃料は、具体的には、たとえば、石油、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)、石炭などを用いることができる。熱交換装置106は、鋼製の密閉した容器を備え、当該容器内において燃焼室105における燃料の燃焼によって得られる熱を水に伝えて水蒸気を生成する。
【0023】
タービン102は、流体エネルギーを受ける羽根107と、駆動力を伝える軸108と、を備えている。タービン102は、ボイラー101によって生成された水蒸気の熱エネルギーを羽根107によって受けることにより軸108を回転させ、軸108の回転から動力を取り出す。
【0024】
発電機103は、タービン102の軸108に連結される回転子、鉄心やコイルを備えた固定子、固定子を支持する固定子フレーム(いずれも図示を省略する)などを備え、タービン102の軸の回転によって回転子を回転させることによって発電する。発電機103は、発電機103における現在の発電量(以下「発電機出力値」という)を出力する。
【0025】
発電機出力値は、発電機103からの電力の出力位置である発電端における値でもよく、火力発電所100から送配電ネットワークへの電力の出力位置である送電端における値でもよい。発電機103は、たとえば、火力発電所100の制御コンピュータ装置(図示を省略する)に対して、発電機出力値を出力する。
【0026】
また、発電機103は、火力発電所100を含む複数の発電所の発電量を監視する電力会社の中央給電指令所の制御コンピュータ装置に対して、発電機出力値を出力してもよい。この場合、発電機出力値は、たとえば、中央給電指令所の制御コンピュータ装置に対して直接出力してもよく、発電所の制御コンピュータ装置などを介して出力されるものであってもよい。
【0027】
復水器104は、タービン102の回転に用いた蒸気を水に戻す。復水器104は、取水口109から取水した海水を通す伝熱管110に通す海水によって、タービン102の回転に用いた蒸気を冷却して水に戻し、冷却に用いた海水を放水口111から海に放水する。復水器104は、タービン102の回転に用いた蒸気を水にして体積を減らすことによって高い真空状態を生成するとともに、蒸気の流れを向上させ、タービン102の効率を向上させる。
【0028】
取水口109の近傍には、取水口109から取水する海水温度を計測する取水温度センサ112が設けられている。放水口111の近傍には、放水口111から放水する海水温度を計測する放水温度センサ113が設けられている。取水温度センサ112や放水温度センサ113の出力値は、たとえば、発電所の制御コンピュータ装置などに出力される。
【0029】
発電所の制御コンピュータ装置は、取水温度センサ112や放水温度センサ113および発電機103からの出力値の入力を受け付け、受け付けた各出力値を、当該出力値が計測された時刻と対応づけて記憶している。また、発電所の制御コンピュータ装置は、取水温度センサ112および放水温度センサ113からの出力値に基づいて、同時刻における取水口海水温度と放水口海水温度との温度差である取放水口海水温度差を、時間経過に沿って定期的に記録したロギングデータを記憶している。
【0030】
発電所の制御コンピュータ装置は、たとえば、「30秒」や「1分」などの所定のサンプリング時間ごとのロギングデータを記憶している。発電所の制御コンピュータ装置が記憶するロギングデータのサンプリング時間は、1分に限るものではなく、「5分」や「10分」などのように「1分」よりも長い時間であってもよく、「1分」よりも短い時間であってもよい。
【0031】
(温度差管理支援装置のハードウエア構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置のハードウエア構成について説明する。図2は、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置のハードウエア構成を示す説明図である。
【0032】
温度差管理支援装置は、たとえば、取水口109における海水温度と放水口111における海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の監視対象となる発電所に設置することができる。この場合、温度差管理支援装置は、独立したコンピュータ装置として設置してもよく、発電所の制御コンピュータ装置によって実現してもよい。また、温度差管理支援装置は、たとえば、中央給電指令所に設置されていてもよい。この場合も、温度差管理支援装置は、独立したコンピュータ装置として設置してもよく、中央給電指令所の制御コンピュータ装置によって実現してもよい。
【0033】
図2において、温度差管理支援装置200は、CPU(Central Processing Unit)201と、メモリ202と、入出力I/F(InterFace)203と、を備えている。温度差管理支援装置200が備える各部201~203は、それぞれ、バス204によって接続されている。
【0034】
CPU201は、温度差管理支援装置200の全体の制御をつかさどる。メモリ202は、ブートプログラムなどのプログラムや各種のデータベースを構成するデータなどを記憶している。また、メモリ202は、たとえば、この発明にかかる実施の形態の温度差監視プログラムを記憶している。CPU201は、温度差監視プログラムを実行することにより、温度差管理支援装置200による取放水口海水温度差の監視にかかる各値(図3を参照)を取得したり算出したりする。
【0035】
また、具体的に、メモリ202は、たとえば、ロギングデータを記憶している。温度差管理支援装置200が複数の発電所の温度差監視をおこなう場合、温度差管理支援装置200のメモリ202は、発電所ごとにロギングデータを記憶する。また、1つの発電所において複数の発電機103を備える場合、温度差管理支援装置200のメモリ202は、発電機103ごとにロギングデータを記憶する。
【0036】
また、メモリ202は、CPU201のワークエリアとして使用される。メモリ202は、たとえば、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、NANDメモリとNANDメモリの制御をおこなうNANDメモリコントローラとによって構成されるSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disc Drive)などによって実現することができる。
【0037】
入出力I/F203は、温度差管理支援装置200の内部と外部装置とのインターフェイスをつかさどる。具体的に、入出力I/F203は、たとえば、取水温度センサ112や放水温度センサ113および発電機103とのインターフェイスをつかさどり、取水温度センサ112や放水温度センサ113および発電機103からの出力値の入力を受け付ける。入出力I/F203は、取水温度センサ112や放水温度センサ113および発電機103からの出力値の入力を直接受け付けてもよく、発電所の制御コンピュータ装置などを介して受け付けてもよい。
【0038】
また、具体的に、入出力I/F203は、表示画面を備えた表示装置とのインターフェイスをつかさどり、表示装置に対して、各種の表示情報を出力する。表示情報は、温度差管理支援装置200による取放水口海水温度差の監視にかかる情報を、表示装置の表示画面に表示させる情報であって、具体的には、各種の取得(計測)値や、任意に設定された閾値、および、これらの取得値や閾値に基づく算出結果などの各種の値と、当該値を表示装置の表示画面に表示させるコマンドなどを含んでいる。
【0039】
また、具体的に、入出力I/F203は、マウスやタッチパッドなどのポインティングデバイス、キーボード、テンキーなどの入力デバイスとのインターフェイスをつかさどり、入力デバイスからの入力信号を受け付ける。入力デバイスは、たとえば、温度差管理支援装置200に対する、発電機出力値の算出指示の入力に用いられる(図5を参照)。
【0040】
また、温度差管理支援装置200と火力発電所100の制御コンピュータとを別体で構成する場合、入出力I/F203は、インターネットなどのネットワークに接続され、当該ネットワークを介して温度差管理支援装置200の内部と外部装置とのインターフェイスをつかさどるものであってもよい。
【0041】
この場合、具体的に、入出力I/F203は、たとえば、取水温度センサ112や放水温度センサ113および発電機103からの出力値の入力を受け付ける火力発電所100の制御コンピュータや中央給電指令所の制御コンピュータ装置などとの間でネットワークを介した通信をおこなうことによって、取水温度センサ112や放水温度センサ113および発電機103からの出力値の入力を受け付けることができる。
【0042】
(温度差管理支援装置200の出力例)
つぎに、温度差管理支援装置200の出力例について説明する。図3は、温度差管理支援装置200の出力例を示す説明図である。図3に示すように、温度差管理支援装置200は、温度差管理支援プログラムを実行することにより、表示装置に対して、表示画面300を表示させる表示情報を出力する。表示画面300は、値A~Mを表示する。
【0043】
値Aは、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値を示す。この実施の形態において、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aは、この発明にかかる「取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値」に相当する。
【0044】
取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aは、基準となる時間範囲における、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値を示す。具体的に、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aは、たとえば、毎日、0時00分(午前0時00分)~24時00分の24時間における取放水口海水温度差のロギングデータの累計値を示す。この実施の形態においては、24時間(1日間)が、この発明にかかる「所定期間」に相当する。
【0045】
この実施の形態において、温度差管理支援装置200は、たとえば、「午前1時00分」、「午後1時00分」などのように、「毎正時」が到来するごとに、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値を取得する。温度差管理支援装置200は、「毎正時」が到来するごとに、発電所の制御コンピュータ装置から、当日の0時00分からの当日分のすべてのロギングデータを取得して、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値を算出する。あるいは、温度差管理支援装置200は、「毎正時」が到来するごとに、最新の(未取得の)ロギングデータのみを取得して、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値を算出してもよい。
【0046】
具体的には、たとえば、3時00分(午前3時00分)に取放水口海水温度差のロギングデータの取得をおこない、1時における取放水口海水温度差のロギングデータが7.1℃、2時における取放水口海水温度差のロギングデータが6.5℃、3時における取放水口海水温度差のロギングデータが5.4℃であれば、ロギングデータの累計値は「19(℃)」となる。
【0047】
値Bは、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aを取得した時点における時刻(現在時刻)を示す。表示画面300において、現在時刻Bは、正時を示す整数で表示される。具体的には、現在時刻Bは、表示画面300において、たとえば、「午前1時00分」であれば「1」、「午後3時00分」であれば「15」のように表示される。
【0048】
ロギングデータは時刻情報を含んでいるため、複数のロギングデータを取得した場合、その中で直近に取得されたロギングデータに含まれる時刻情報が、現在時刻として表示される。なお、温度差管理支援装置200が、当日の0時00分からの当日分の現在時刻までのすべてのロギングデータを取得する場合、取得したロギングデータの数に基づいて、現在時刻を表示してもよい。たとえば、3時00分(午前3時00分)に取得されるロギングデータの数は3つであるため、このロギングデータの数に基づいて、現在時刻を表示してもよい。
【0049】
値Cは、現在の取放水口海水温度差の瞬時値を示す。刻々と変化する取放水口海水温度差のうち、取放水口海水温度差が安定している場合の値を、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cとして取得する。このため、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cが計測された時刻と、現在時刻Bと、が一致しない場合も存在するが、便宜上、現在の取放水口海水温度差の瞬時値とする。
【0050】
具体的には、たとえば、ロギングデータのサンプリング時間が「30秒」である場合、5分間などの所定長さの時間、連続して安定している取放水口海水温度差を、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cとして取得する。この場合、さらに、取放水口海水温度差の変動幅が、所定長さの時間、連続して所定の閾値範囲内に収まる時点における取放水口海水温度差の平均値を、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cとして取得するようにしてもよい。
【0051】
安定している取放水口海水温度差は、たとえば、ロギングデータに基づいて、横軸を時間とし縦軸を取放水口海水温度差とするグラフを生成した場合に、当該グラフにおいて横軸に対して平行に近くなる部分が所定長さ以上出現する位置によって特定することができる。
【0052】
値Dは、現在の発電機出力値を示す。この実施の形態において、現在の発電機出力値Dは、この発明にかかる「現在時刻における発電機出力値」に相当する。冷却に用いられる海水は、取水口109から取水されて復水器104に導入され、蒸気との熱交換に供された後に、放水口111を介して放水される。このため、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cを取得した時点における海水が復水器104において蒸気との熱交換に供された時点は、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cを取得した時点よりも前になる。すなわち、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cを取得した時点は、海水が復水器104において蒸気との熱交換に供された時点よりも遅れている。
【0053】
現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cを取得した時点の、海水が復水器104において蒸気との熱交換に供された時点からの遅れを考慮し、現在の発電機出力値Dは、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cが計測された時刻より、所定時刻遡った時刻における発電機出力値を示す。所定時刻は、復水器104から放水口111までの距離やポンプの能力などに基づいて、温度差管理支援装置200の管理者などが適宜設定することができる。
【0054】
値Eは、温度差日平均値の目標値を示す。温度差日平均値の目標値Eは、1日を通して、守りたい取放水口海水温度差の平均値であって、たとえば、各自治体との協定などに基づいて定められる上限値に基づき、当該上限値よりも低い値に設定される。具体的に、たとえば、上限値が7.0℃である場合、温度差日平均値の目標値は、末端桁を四捨五入しても7.0℃にならない6.84℃に設定することができる。
【0055】
温度差日平均値の目標値Eをこのようにして設定することにより、仮に、気象などに起因して、実際の取放水口海水温度差が予測した取放水口海水温度差と異なった場合にも、余裕をもって対応することができる。温度差日平均値の目標値Eは、温度差管理支援装置200の管理者などが適宜設定することができる。
【0056】
値Fは、温度差日平均の予測値を示す。この実施の形態において、温度差日平均の予測値Fは、この発明にかかる「第2の平均値」に相当する。温度差日平均の予測値Fは、現在の発電機出力値Dのまま、当日の24時までの残余の時間、発電機103の運転を継続しておこなった場合における、1日(24時間)における平均の取放水口海水温度差の予測値を示す。温度差日平均の予測値Fは、たとえば、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値A、現在時刻B、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cに基づいて、下記数式(1)を演算することによって算出することができる。
【0057】
F=(A+C(24-B))/24 ・・・(1)
F:温度差日平均値の予測値
A:取放水口海水温度差のロギングデータの累計値
C:現在の取放水口海水温度差の瞬時値
【0058】
値Gは、残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値を示す。この実施の形態において、残り時間は、この発明にかかる「所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間」に相当し、残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gは、この発明にかかる「所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値」に相当する。
【0059】
残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gは、温度差日平均値の目標値Eを達成するために、残り時間運転する必要がある取放水口海水温度差の平均値を示す。残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gは、たとえば、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値A、現在時刻B、温度差日平均値の目標値Eに基づいて、下記数式(2)を演算することによって算出することができる。
【0060】
G=(E×24-A)/(24-B) ・・・(2)
G:残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値
E:温度差日平均値の目標値
A:取放水口海水温度差のロギングデータの累計値
B:現在時刻
【0061】
値Hは、残り時間運転可能な出力平均値を示す。この実施の形態において、残り時間運転可能な出力平均値Hは、この発明にかかる「残余の期間における発電機出力値の平均値」に相当する。残り時間運転可能な出力平均値Hは、温度差日平均値の目標値Eを達成するために、残り時間運転する必要がある発電機出力値の平均値を示す。
【0062】
残り時間運転可能な出力平均値Hは、たとえば、現在の取放水口海水温度差の瞬時値C、現在の発電機出力値D、残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値G、および、1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率Xに基づいて、下記数式(3)を演算することによって算出することができる。
【0063】
H=D+(G-C)/X ・・・(3)
H:残り時間運転可能な出力平均値
D:現在の発電機出力値
G:残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値
C:現在の取放水口海水温度差の瞬時値
X:1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率
【0064】
1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率Xは、この発明にかかる「発電機103における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率」に相当し、実績を基に算出することができる。1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率Xの算出においては、発電機出力値が変化する際に、海水流量と熱交換される蒸気温度が一定であることを前提条件としている。
【0065】
この前提条件に基づき、1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率Xは、第1の時刻t1における発電機出力値Dt1および取放水口海水温度差Xt1と、当該第1の時刻t1とは異なる第2の時刻t2における発電機出力値Dt2(ただし、Dt2<Dt1)および取放水口海水温度差Xt2(ただし、Xt2<Xt1)と、に基づいて、下記数式(4)を演算することによって算出することができる。
【0066】
X=(Xt1-Xt2)/(Dt1-Dt2) ・・・(4)
【0067】
具体的には、たとえば、発電機出力値Dt1が300MWのときの取放水口海水温度差Xt1が7.0℃、発電機出力値Dt2が200MWのときの取放水口海水温度差Xt2が5.0℃の場合、下記のように、1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率Xを算出することができる。
【0068】
X=(7.0℃-5.0℃)/(300MW-200MW)
=0.02℃/MW
【0069】
このように、発電機出力値が変化する際に海水流量と熱交換される蒸気温度が一定であるという前提条件に基づき、1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率Xは、任意の2つの時点(時刻)における発電機出力値および取放水口海水温度差がわかれば、事前にあるいは温度差監視にかかる実行時に求めることができる。
【0070】
値Iは、発電機103を定格出力値で運転した場合の取放水口海水温度差の予測値を示す。定発電機103を定格出力値で運転した場合取放水口海水温度差の予測値Iは、現在時刻Bから当日の24時までの残余の時間、発電機出力値を定格出力値にして発電機103の運転を継続しておこなった場合における、1日(24時間)における平均の取放水口海水温度差の予測値の平均値を示す。
【0071】
定発電機103を定格出力値で運転した場合取放水口海水温度差の予測値Iは、たとえば、現在の発電機出力値D、現在の取放水口海水温度差の瞬時値C、1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率X、および、既知の発電機103の定格出力値に基づいて、下記数式(5)を演算することによって算出することができる。
【0072】
I=C+(Y-D)×X ・・・(5)
I:定格出力の場合の取放水口海水温度差の予測値
C:現在の取放水口海水温度差の瞬時値
D:現在の発電機出力値
X:1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率
Y:発電機103の定格出力値
【0073】
値Jは、発電機出力値の可否についての判断結果を示す。発電機出力値の可否についての判断結果Jは、現在の発電機出力値のまま発電機103の運転を継続した場合に、温度差日平均値の目標値Eを達成可能か不可能かについての判断結果を示す。発電機出力値の可否についての判断結果Jは、具体的には、たとえば、「現在の出力なら大丈夫」や「負荷抑制が必要」などのように文章(テキストデータ)によって実現することができる。あるいは、値Jは、「○」、「×」などの記号によって実現してもよい。
【0074】
値Kは、値Jに基づいて変更が必要になったことにより変更した、変更後の発電機出力値を示す。値Lは、変更後の発電機出力値Kで発電機103を運転する運転時間を示す。変更後の発電機出力値Kや運転時間Lは、それぞれ、変更の必要が生じた場合に、温度差管理支援装置200の管理者などによって任意の値が設定される。温度差管理支援装置200の管理者などは、現在の発電機出力値のままでは継続した運転が不可能と判断される場合に変更後の発電機出力値Kや運転時間Lの設定をおこなう。
【0075】
値Mは、運転時間L以外の期間における発電機出力値を示す。この実施の形態において、運転時間L以外の期間における発電機出力値Mは、この発明にかかる「残余の期間のうち当該運転時間L以外の期間における発電機出力値」に相当する。
【0076】
運転時間L以外の期間における発電機出力値Mは、発電機出力値Kや運転時間Lに基づく演算をおこなった時点から当日の24時までの残余の時間において、発電機出力値Kで、かつ、運転時間Lの間、発電機103を運転した場合に、温度差日平均値の目標値Eを達成するために必要な発電機出力値を示す。すなわち、運転時間L以外の期間における発電機出力値Mが正の値であれば、発電機出力値Kや運転時間Lの少なくとも一方を増加し、発電機出力値を増やすことができる。
【0077】
具体的に、運転時間L以外の期間における発電機出力値Mは、発電機出力値K、運転時間L、温度差日平均値の目標値Eと、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aと、現在の発電機出力値Dと、現在時刻Bと、1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率Xと、に基づいて、下記数式(6)を演算することにより算出することができる。
【0078】
M=
(Z1÷Z2-C)÷X+D ・・・(6)
但し、Z1=E×24-A-{(DC-D)×X+C}×TC
Z2=24-B-TC
DC:変動後の発電機出力値
TC:運転時間
E:目標値
A:取放水口海水温度差のロギングデータの累計値
D:現在時刻における発電機出力値
X:単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率
C:現在の取放水口海水温度差の瞬時値
B:現在時刻
【0079】
(温度差管理支援装置200の機能的構成)
つぎに、温度差管理支援装置200の機能的構成について説明する。図4は、温度差管理支援装置200の機能的構成を示すブロック図である。図4において、温度差管理支援装置200の機能は、取得部401と、記憶部402と、温度差算出部403と、受付部404と、出力値算出部405と、出力部406と、によって実現される。
【0080】
取得部401は、所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値を取得する。すなわち、取得部401は、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aを取得する。この実施の形態において、取得部401は、上記のCPU201や入出力I/F203によって実現することができる。
【0081】
記憶部402は、取得部401によって取得された累計値を記憶する。具体的に、記憶部402は、累計値に含まれるロギングデータ、および、当該ロギングデータが計測された日時に関する情報を関連づけて記憶している。この実施の形態において、記憶部402は、上記のメモリ202によって実現することができる。
【0082】
温度差算出部403は、取得部401によって取得された取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aと、現在時刻Bとに基づいて、所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、所定期間のうちの現在時刻以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値を算出する。
【0083】
具体的に、温度差算出部403は、たとえば、上記数式(2)を演算して、残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gを、残余の期間における取放水口海水温度差の平均値として算出する。この実施の形態において、温度差算出部403は、上記のCPU201やメモリ202によって実現することができる。記憶部402は、温度差算出部403によって算出された残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gを累積して記憶してもよい。
【0084】
受付部404は、変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lの設定を受け付ける。受付部404は、運転時間Lの開始時刻および終了時刻を受け付けることによって当該運転時間Lを受け付けてもよい。記憶部402は、受付部404によって変更後の発電機出力値Kや運転時間Lを記憶してもよい。
【0085】
出力値算出部405は、温度差算出部403によって算出された残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gと、現在の発電機出力値Dと、発電機103における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、残余の期間における発電機出力値の平均値を算出する。具体的に、出力値算出部405は、たとえば、上記数式()を演算することによって、残り時間運転可能な出力平均値Hを算出する。
【0086】
出力値算出部405は、受付部404によって変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lが受け付けられた場合、さらに、値K、Lに基づいて、所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、残り時間のうち当該運転時間L以外の期間における発電機出力値を算出する。
【0087】
出力値算出部405は、たとえば、上記数式(6)を演算することによって、残余の期間のうち当該運転時間L以外の期間における発電機出力値、すなわち、残り時間運転可能な出力平均値Hを算出する。この実施の形態において、出力値算出部405は、上記のCPU201やメモリ202によって実現することができる。記憶部402は、出力値算出部405によって算出された残り時間運転可能な出力平均値Hを累積して記憶してもよい。
【0088】
温度差算出部403は、取得部401によって取得された累計値に基づいて、残り時間において、現在の発電機出力値Dと同じ発電機出力値で発電した場合の取放水口海水温度差の第2の平均値である温度差日平均の予測値Fを算出してもよい。これにより、現在の発電機出力値と同じ発電機出力値での発電機103の運転を継続できるかどうかを判断することができる。
【0089】
出力部406は、出力値算出部405によって算出された平均値を出力する。出力部406は、たとえば、表示装置に対して、当該表示装置の表示画面300において出力値算出部405によって算出された平均値を含む値A~値Mを表示させる表示情報を出力する。また、温度差算出部403によって第2の平均値が算出された場合、出力部406は当該第2の平均値を含む表示情報を出力してもよい。この実施の形態において、出力部406は、上記のCPU201や入出力I/F203によって実現することができる。
【0090】
上述した実施の形態においては、受付部404が、変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lの両方を受け付けるようにしたが、これに限るものではない。受付部404は、変更後の発電機出力値Kのみを受け付けてもよい。この場合、機能ブロックとして、図示を省略する運転時間算出部(図示を省略する)を設け、当該運転時間算出部において、残余の期間において変更後の発電機出力値で運転可能な運転時間を算出するようにしてもよい。
【0091】
具体的に、残り期間において変更後の発電機出力値Kで運転可能な運転時間L’は、たとえば、受付部404によって受け付けられた変更後の発電機出力値Kと、温度差算出部403によって算出された平均値と、発電機103における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率(変化率X)と、に基づいて算出することができる。運転時間算出部は、たとえば、上記のCPU201やメモリ202によって実現することができる。
【0092】
(温度差管理支援装置200の処理手順)
つぎに、温度差管理支援装置200の処理手順について説明する。図5は、温度差管理支援装置200の処理手順を示すフローチャートである。図5のフローチャートにおいて、まず、温度差計算のタイミングが到来するまで待機する(ステップS501:No)。ステップS501においては、たとえば、「午前1時00分」、「午後1時00分」などのように「毎正時」が到来したか否かを判断する。
【0093】
ステップS501において、温度差計算のタイミングが到来した場合(ステップS501:Yes)、現在時刻Bを取得する(ステップS502)。ステップS502においては、たとえば、60分を一単位として現在時刻Bを取得する。具体的には、「午前1時00分」であれば「1時」を現在時刻として取得し、「午後1時00分」であれば「13時」を現在時刻として取得する。
【0094】
また、ステップS502において取得した現在時刻Bにおける、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aを取得する(ステップS503)。ステップS503においては、たとえば、1時における取放水口海水温度差が7.1℃であれば、ステップS503においては「7.1(℃)」という累計値が取得される。
【0095】
また、ステップS503においては、たとえば、ステップS502において取得された現在時刻が午前3時00分(3時00分)であれば、3つのロギングデータが取得され、当該3つのロギングデータの合計値が、取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aとして取得される。具体的には、たとえば、1時における取放水口海水温度差が7.1℃、2時における取放水口海水温度差が6.5℃、3時における取放水口海水温度差が5.4℃であれば、「19(℃)」という累計値が取得される。
【0096】
また、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cを取得する(ステップS504)。ステップS504においては、上記のように、5分間などの所定期間連続して安定している取放水口海水温度差(または、当該所定期間における平均値)を、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cとして取得する。
【0097】
また、ステップS504において取得した現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cが計測された時点から所定時間遡った時点における発電機出力値を、現在の発電機出力値Dとして取得する(ステップS505)。これにより、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cを取得した時点の、海水が復水器104において蒸気との熱交換に供された時点からの遅れを考慮した発電機出力値を取得することができる。すなわち、ステップS504において取得した現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cが計測された時点における発電機出力値を取得することができる。
【0098】
さらに、温度差日平均値の目標値Eを取得する(ステップS506)。上記のように、温度差日平均値の目標値Eは、各自治体との協定などに基づいて定められる上限値よりも低い値が設定されている。ステップS502~ステップS506の処理は、ステップS507以降の処理に進む前におこなわれていればよく、いずれの処理を先におこなってもよく、順序は問わない。
【0099】
つぎに、温度差日平均値の予測値Fを算出する(ステップS507)。ステップS507においては、ステップS505において取得された現在の発電機出力値Dのまま、ステップS502において取得した現在時刻Bを含む当日の24時までの残余の時間、発電機103の運転を継続しておこなった場合における、1日(24時間)における平均の取放水口海水温度差の予測値を算出する。具体的に、ステップS507においては、上記数式(1)を演算することによって、温度差日平均値の予測値Fを算出する。
【0100】
また、温度差日平均値の目標値Eを達成するために、残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gを算出する(ステップS508)。具体的に、ステップS508においては、ステップS506において取得された温度差日平均値の目標値E、ステップS502において取得された現在時刻B、および、ステップS503において取得された取放水口海水温度差のロギングデータの累計値Aに基づいて、上記数式(2)を演算することによって、残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値Gを算出する。
【0101】
また、温度差日平均値の目標値Eを達成するために、残り時間運転可能な出力平均値Hを算出する(ステップS509)。具体的に、ステップS509においては、ステップS505において取得された現在の発電機出力値D、ステップS507において算出された残り時間運転可能な取放水口海水温度差の平均値G、ステップS503において取得された現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cに基づいて、上記数式(3)を演算することによって、残り時間運転可能な出力平均値Hを算出する。
【0102】
つぎに、発電機出力値が定格出力値となった場合における、取放水口海水温度差の予測値Iを算出する(ステップS510)。具体的に、ステップS510においては、ステップS505において取得された現在の発電機出力値D、ステップS504において取得された現在の取放水口海水温度差の瞬時値C、1MW当たりの取放水口海水温度差の変化率X、および、既知の発電機103の定格出力値に基づいて、上記数式(5)を演算することによって取放水口海水温度差の予測値Iを算出する。
【0103】
そして、現在の発電機出力値で運転を継続した場合、目標とする1日平均の取放水口海水温度差が達成可能かを判断する(ステップS511)。ステップS511においては、ステップS507において算出された残り時間運転する必要がある取放水口海水温度差の平均値Gと、ステップS504において取得された現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cと、を比較し、いずれの値が大きいかに基づいて達成可能かを判断する。
【0104】
具体的には、たとえば、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cよりも、残り時間運転する必要がある取放水口海水温度差の平均値Gが大きい場合は、達成可能であると判断する。また、具体的には、たとえば、現在の取放水口海水温度差の瞬時値Cよりも、残り時間運転する必要がある取放水口海水温度差の平均値Gが小さい場合は、達成不可能であると判断する。
【0105】
なお、ステップS506~ステップS511の処理は、ステップS506以降であってステップS512以降の処理に進む前におこなわれていればよく、いずれの処理を先におこなってもよい。ステップS506~ステップS511の処理については、それぞれの順序は問わない。
【0106】
ステップS511において達成可能であると判断した場合(ステップS511:Yes)、ステップS502~ステップS505において取得した各値A~E、ステップS506~ステップS510において算出された各値F~I、および、ステップS511における判断結果(値J)を出力して(ステップS512)、一連の処理を終了する。ステップS512においては、具体的には、各値A~I、および、現在の発電機出力値を変更することなく発電機103の運転が可能であること(値J)、を表示させる表示情報を、表示装置に対して出力する。
【0107】
これにより、表示装置は、温度差管理支援装置200からの表示情報に基づいて表示画面300を制御して表示画面300を表示する。このときの表示画面300における値Jは、たとえば、「現在の出力なら大丈夫」などの文字によって示される。温度差管理支援装置200の管理者などは、値Jに基づき、発電機出力値の変更が不要であることを容易かつ確実に把握することができる。
【0108】
一方、ステップS511において、達成不可能であると判断した場合(ステップS511:No)、ステップS502~ステップS506において取得した各値A~E、ステップS507~ステップS510において算出された各値F~I、および、ステップS511における判断結果(値J)を出力する(ステップS513)。ステップS513においては、具体的には、各値A~I、および、現在の発電機出力値の変更が必要であること(値J)、を表示させる表示情報を、表示装置に対して出力する。
【0109】
これにより、表示装置は、温度差管理支援装置200からの表示情報に基づいて表示画面300を制御して、図3に示すような表示画面300を表示する。このときの表示画面300における値Jは、たとえば、「負荷抑制が必要」などの文字によって示される。温度差管理支援装置200の管理者などは、値Jに基づき、発電機出力値の変更が必要であることを容易かつ確実に把握することができる。
【0110】
発電所の運用上、温度差管理支援装置200によって発電機出力値の変更が必要であることが示された場合、温度差管理支援装置200に対して発電機出力値の算出指示を入力する。発電機出力値の算出指示は、たとえば、ステップS513により出力した表示情報に基づき表示された表示画面300における値K、L欄に、変更後の具体的な数値を入力し、「実行」などの指示操作をおこなうことによって実現することができる。
【0111】
温度差管理支援装置200は、ステップS513において表示情報を出力した後、発電機出力値の算出指示を受け付けるまで待機する(ステップS514:No)。ステップS514においては、具体的には、たとえば、入力デバイスからの入力信号に基づいて、発電機出力値の算出を指示する指示操作を受け付けたか否かを判断する。
【0112】
ステップS514において、発電機出力値の算出指示を受け付けた場合(ステップS514:Yes)、変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lが設定されているかを判断する(ステップS515)。ステップS515において、発電機出力値の算出指示を受け付けても、変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lが設定されていない場合(ステップS515:No)、変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lが設定された状態で、発電機出力値の算出指示を受け付けるまで待機する。
【0113】
ステップS514において、変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lが設定された状態で、発電機出力値の算出指示を受け付けた場合(ステップS515:Yes)、設定された変更後の発電機出力値Kおよび運転時間Lに基づいて、発電機出力値を算出する(ステップS516)。ステップS516においては、設定された値K、Lに基づく演算をおこなった時点から当日の24時までの残余の時間において、変更後の発電機出力値Kで、かつ、運転時間Lの間、発電機103を運転した場合に、温度差日平均値の目標値Eを達成するために必要な発電機出力値を算出する。
【0114】
その後、ステップS516において算出された発電機出力値を表示させる表示情報を、表示装置に対して出力して(ステップS517)、一連の処理を終了する。表示装置は、温度差管理支援装置200からの表示情報に基づいて表示画面300を制御して、図3に示す表示画面300を表示する。このとき、表示画面300においては、ステップS513において表示した値A~Jに加えて、値K~Mの具体的な数値を表示する。これにより、温度差管理支援装置200の管理者などは、運転時間L以外の期間における発電機出力値Mに基づき、設定した変更後の発電機出力値Kおよび運転時間L以外での運転が必要な発電機出力値を、容易かつ確実に把握することができる。
【0115】
上述した実施の形態においては、現在の発電機出力値で運転を継続した場合、目標とする1日平均の取放水口海水温度差が達成不可能である場合に、変更後の発電機出力値Kや運転時間Lの入力を受け付け、入力を受け付けた値K、Lに基づいて運転時間L以外の期間における発電機出力値Mを算出するようにしたが、これに限るものではない。発電機出力値の算出は、現在の発電機出力値で運転を継続した場合、目標とする1日平均の取放水口海水温度差が達成可能である場合にもおこなうことができるようにしてもよい。
【0116】
これにより、たとえば、発電機出力値が定格出力値よりも小さい場合に、定格出力値に近づけるような運用をおこなうことができる。そして、これによって、効率よく発電をおこなうことができる。
【0117】
また、上述した実施の形態においては、1組の取水口109と放水口111とに対して1基の発電機103および復水器104を備えた火力発電所100における取放水海水温度差を温度差管理支援装置200の管理対象とした例について説明したが、これに限るものではない。たとえば、1組の取水口109と放水口111とに対して複数基の発電機103および復水器104を備えた火力発電所100における取放水海水温度差を温度差管理支援装置200の管理対象としてもよい。
【0118】
たとえば、1組の取水口109と放水口111とに対して、2基の発電機103および各発電機103に対応する2基の復水器104を備えた火力発電所100における取放水海水温度差を温度差管理支援装置200の管理対象とする場合、各値A~C、Eについては、上記と同様にして取得することができる。現在の発電機出力値Dは、2基の発電機103の現在の発電機出力値をそれぞれ取得し、合算した値を用いる。これにより、これらの値A~Eを用いて、上記と同様にして値F~Iを算出することができる。
【0119】
変更後の発電機出力値Kは、いずれか一方の発電機103のみについて設定してもよく、両方の発電機について設定してもよい。複数基の発電機103を備えた火力発電所における取放水海水温度差を温度差管理支援装置200の管理対象とする場合、さらに、定格出力値で運転したい時間を設定する。これにより、定格出力値で運転する発電機103を確保し、複数基の発電機103のそれぞれの発電機出力値を調整することによって取放水口海水温度差を調整する場合よりも、火力発電所全体における発電効率の向上を図ることができる。
【0120】
複数基の発電機103を備えた火力発電所における取放水海水温度差を温度差管理支援装置200の管理対象とする場合は、さらに、定格出力値で運転した分を除いた、残り時間運転可能な出力平均値Hを出力する。この場合の残り時間運転可能な出力平均値Hは、いずれか1基の発電機103に関する値を示す。
【0121】
また、複数基の発電機103を備えた火力発電所における取放水海水温度差を温度差管理支援装置200の管理対象とする場合は、負荷抑制が必要な時間や、取放水口海水温度差が、火力発電所全体として、温度差日平均値の目標値Eを達成することができるかどうかについての判断結果を出力してもよい。
【0122】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200は、所定期間の開始時刻から現在時刻までの、取水口海水温度と放水口海水温度との差分を示す取放水口海水温度差の累計値Aと現在時刻Bとに基づいて、所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値E以下となるように、所定期間のうちの現在時刻B以降の残余の期間における取放水口海水温度差の平均値Gを算出する。そして、算出された平均値Gと、現在の発電機出力値Dと、発電機103における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率Xと、に基づいて、残余の期間における発電機出力値の平均値Hを算出し、算出された平均値Hを出力するようにしたことを特徴としている。
【0123】
この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、発電機103における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率を加味して発電機出力値の平均値を算出することにより、たとえば、1MW単位などの単位出力の単位で、取放水口海水温度差を管理することができる。これにより、取放水口海水温度差を精密に管理することができる。
【0124】
そして、このように取放水口海水温度差を精密に管理することにより、取放水口海水温度差を0.1℃単位などの細かい単位で管理しつつ、給電の要求に対して1MW単位などの単位出力の単位で対応することができる。これにより、各自治体との協定などに基づいて定められる取放水の温度差を順守しつつ、給電の要求に対してきめ細やかに対応することができる。
【0125】
このように、取放水口海水温度差を精密に管理できるため、発電機103の出力を急激に低下させたりすることなく、発電機103を運転することができる。これにより、発電の効率化を図り、これにより、各自治体との協定などに基づいて定められる取放水の温度差を順守しつつ、給電の要求に対してきめ細やかに対応することができる。
【0126】
また、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、作業者の経験などに左右されることなく、取放水口海水温度差を精密に管理することができる。これにより、作業者の負担軽減を図るとともに、作業効率の向上を図ることができる。
【0127】
また、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200は、第1の時刻における発電機出力値および取放水口海水温度差と、当該第1の時刻とは異なる第2の時刻における発電機出力値および取放水口海水温度差と、に基づいて、上記数式(4)によって算出された値を変化率Xとすることを特徴としている。
【0128】
この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、海水流量と熱交換される蒸気温度が一定であることを前提条件とすることで、発電機103における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率を容易に算出することができる。これにより、変化率の算出にかかる温度差管理支援装置200の負荷軽減、あるいは作業者の負担軽減を図り、取放水口海水温度差を精密に管理することができる。
【0129】
また、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200は、変更後の発電機出力値および当該変更後の発電機出力値で発電機103を運転する運転時間の設定を受け付けた場合は、当該変更後の発電機出力値および運転時間に基づいて、所定期間における取放水口海水温度差の平均値が目標値以下となるように、残余の期間のうち当該運転時間L以外の期間における発電機出力値を算出することを特徴としている。
【0130】
この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、残余の期間において、設定された任意の運転時間の間、設定された任意の発電機出力値で発電機103を運転することができる。これにより、各自治体との協定などに基づいて定められる取放水の温度差を順守しつつ、給電の要求に対して一層きめ細やかに対応することができる。
【0131】
また、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200は、運転時間L以外の期間における発電機出力値を、上記数式(6)によって算出するようにしたことを特徴としている。
【0132】
この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、運転時間L以外の期間における発電機出力値を容易に算出することができる。
【0133】
また、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200は、運転時間の開始時刻および終了時刻を受け付けることによって当該運転時間を受け付けることを特徴としている。
【0134】
この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、残余の期間において、設定された任意の時間帯において、設定された任意の発電機出力値で発電機103を運転することができる。これにより、各自治体との協定などに基づいて定められる取放水の温度差を順守しつつ、給電の要求に対して一層きめ細やかに対応することができる。
【0135】
また、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200は、変更後の発電機出力値の設定のみを受け付けた場合は、当該変更後の発電機出力値と、温度差算出部403によって算出された平均値と、発電機103における単位出力当たりの取放水口海水温度差の変化率と、に基づいて、残余の期間において変更後の発電機出力値で運転可能な運転時間を算出するようにしたことを特徴としている。
【0136】
この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、残余の期間において、設定された任意の発電機出力値で発電機103を運転することができる運転時間を算出することができる。これにより、各自治体との協定などに基づいて定められる取放水の温度差を順守しつつ、給電の要求に対応することができる。
【0137】
また、この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200は、ロギングデータの累計値に基づいて、残余の時間において、現在の発電機出力値と同じ発電機出力値で発電した場合の取放水口海水温度差の第2の平均値を算出し、出力するようにしたことを特徴としている。
【0138】
この発明にかかる実施の形態の温度差管理支援装置200によれば、現在の発電機出力値と同じ発電機出力値で、継続して発電することができるかどうかを、現在時刻の時点において把握することができる。これにより、発電機出力値の調整を早期におこなうことができ、各自治体との協定などに基づいて定められる取放水の温度差を順守しつつ、給電の要求に対してきめ細やかに対応することができる。
【0139】
なお、上記の各実施の形態で説明した温度差管理支援方法は、あらかじめ用意された温度差管理支援プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、CD-ROM、DVD、SSDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこの温度差管理支援プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上のように、この発明にかかる温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラムは、発電に用いる冷却水の取水時の温度と放水時の温度との温度差の管理に供する温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラムに有用であり、特に、火力発電に用いる冷却用の海水の取水時の温度と放水時の温度との温度差の管理に供する温度差管理支援装置および温度差管理支援プログラムに適している。
【符号の説明】
【0141】
100 火力発電所
101 ボイラー
102 タービン
103 発電機
104 復水器
109 取水口
111 放水口
401 取得部
402 記憶部
403 温度差算出部
404 受付部
405 出力値算出部
406 出力部
図1
図2
図3
図4
図5