(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電気泳動分離データ解析装置、電気泳動分離データ解析方法及びその解析方法をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
G01N27/447 325D
(21)【出願番号】P 2018146355
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英郷
(72)【発明者】
【氏名】原田 亨
(72)【発明者】
【氏名】荻野 康太
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111209(WO,A1)
【文献】実開昭57-094849(JP,U)
【文献】特開2000-163591(JP,A)
【文献】特開平02-107962(JP,A)
【文献】米国特許第04592089(US,A)
【文献】特開2002-340857(JP,A)
【文献】特開2017-201894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
G01N 30/00-30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動分離により得られた分離データの解析を行なうための解析装置であって、
前記分離データにおいて解析対象に加えるべき少なくとも1つの解析対象ピークを特定するために必要な解析対象ピーク情報をユーザに任意に入力させ、ユーザによって任意に入力された解析対象ピーク情報に基づいて前記少なくとも1つの解析対象ピークを特定するように構成された解析対象ピーク特定部と、
前記少なくとも1つの解析対象ピークのうち存在率を算出すべき着目ピークを特定するために必要な着目ピーク情報をユーザに任意に入力させ、ユーザによって任意に入力された着目ピーク情報に基づいて前記着目ピークを特定するように構成された着目ピーク特定部と、
前記解析対象ピーク特定部及び前記着目ピーク特定部によって前記少なくとも1つの解析対象ピーク及び前記着目ピークが特定されたときに、前記少なくとも1つの解析対象ピークのピーク面積の合計値と前記着目ピークのピーク面積値に基づき、すべての前記解析対象ピーク中における前記着目ピークの存在率を求めるように構成された存在率算出部と、を備えた電気泳動分離データ解析装置。
【請求項2】
前記存在率算出部は、前記少なくとも1つの解析対象ピーク及び前記着目ピークが特定されたときに、即時に前記着目ピークの存在率を算出するように構成されている、請求項1に記載の電気泳動分離データ解析装置。
【請求項3】
前記存在率算出部により算出された前記着目ピークの存在率を表示装置に表示するように構成された存在率表示部を備えている、請求項1又は2に記載の電気泳動分離データ解析装置。
【請求項4】
前記解析対象ピーク特定部がユーザに入力させる前記解析対象ピーク情報は、解析対象に加えるピークを含む解析対象範囲、及び前記解析対象範囲の中で解析対象から除外するピークを含む解析除外範囲であり、前記解析対象ピーク特定部は、前記解析除外範囲内のピークを除く前記解析対象範囲内のピークを前記少なくとも1つの解析対象ピークとして特定するように構成されており、
前記着目ピーク特定部がユーザに入力させる前記着目ピーク情報は、着目するピークを含む着目範囲であり、前記着目ピーク特定部は、前記着目範囲内のピークを前記着目ピークとして特定するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動分離データ解析装置。
【請求項5】
前記分離データとしてエレクトロフェログラムを作成するエレクトロフェログラム作成部を備え、
前記解析対象ピーク特定部は、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させるように構成され、
前記着目ピーク特定部は、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記着目範囲を指定させるように構成されている、請求項4に記載の電気泳動分離データ解析装置。
【請求項6】
前記分離データとして電気泳動流路上におけるピークの分離イメージを作成する分離イメージ作成部を備え、
前記解析対象ピーク特定部は、ユーザに前記分離イメージ上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させるように構成されている、請求項4に記載の電気泳動分離データ解析装置。
【請求項7】
電気泳動分離により得られた分離データの解析方法であって、
前記分離データにおいて解析対象に加えるべき少なくとも1つの解析対象ピークを特定するために必要な解析対象ピーク情報をユーザに任意に入力させ、ユーザによって任意に入力された解析対象ピーク情報に基づいて前記少なくとも1つの解析対象ピークを特定する解析対象ピーク特定ステップと、
前記少なくとも1つの解析対象ピークのうち存在率を算出すべき着目ピークを特定するために必要な着目ピーク情報をユーザに任意に入力させ、ユーザによって任意に入力された着目ピーク情報に基づいて前記着目ピークを特定する着目ピーク特定ステップと、
前記解析対象ピーク特定
ステップ及び前記着目ピーク特定
ステップによって前記少なくとも1つの解析対象ピーク及び前記着目ピークが特定されたときに、前記少なくとも1つの解析対象ピークのピーク面積の合計値と前記着目ピークのピーク面積値に基づき、すべての前記解析対象ピーク中における前記着目ピークの存在率を自動的に求める存在率算出ステップと、を備えた電気泳動分離データ解析方法。
【請求項8】
前記存在率算出ステップは、前記少なくとも1つの解析対象ピーク及び前記着目ピークが特定された直後に実行する、請求項7に記載の電気泳動分離データ解析方法。
【請求項9】
前記存在率算出ステップで算出された前記着目ピークの存在率を表示装置に表示する存在率表示ステップを備えている、請求項7又は8に記載の電気泳動分離データ解析方法。
【請求項10】
前記解析対象ピーク特定ステップにおいてユーザに入力させる前記解析対象ピーク情報は、解析対象に加えるピークを含む解析対象範囲、及び前記解析対象範囲の中で解析対象から除外するピークを含む解析除外範囲であり、
前記着目ピーク特定ステップにおいてユーザに入力させる前記着目ピーク情報は、着目するピークを含む着目範囲であり、
前記解析対象ピーク特定ステップでは、前記解析除外範囲内のピークを除く前記解析対象範囲内のピークを前記少なくとも1つの解析対象ピークとして特定し、前記着目ピーク特定ステップでは、前記着目範囲内のピークを前記着目ピークとして特定する、請求項7から9のいずれか一項に記載の電気泳動分離データ解析方法。
【請求項11】
前記分離データとしてエレクトロフェログラムを作成するエレクトロフェログラム作成ステップを備え、
前記解析対象ピーク特定ステップでは、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させ、
前記着目ピーク特定ステップでは、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記着目範囲を指定させる、請求項10に記載の電気泳動分離データ解析方法。
【請求項12】
前記分離データとして電気泳動流路上におけるピークの分離イメージを作成する分離イメージ作成ステップを備え、
前記解析対象ピーク特定ステップでは、ユーザに前記分離イメージ上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させ、
前記着目ピーク特定ステップでは、ユーザに前記分離イメージ上で前記着目範囲を指定させる、請求項10又は11に記載の電気泳動分離データ解析方法。
【請求項13】
コンピュータ上で実行されることにより、請求項7から12のいずれか一項に記載の電気泳動分離データ解析方法を実施するように構成されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動分離により取得された分離データを解析するための電気泳動分離データ解析装置、電気泳動分離データ解析方法及びその解析方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野では、電気泳動分離で得られた分離データに基づき、試料中に混在する類似分子の中で着目する分子(核酸やタンパク)の存在率を求めて、試料の解析に利用する場合がある(特許文献1参照。)。例えば、細胞集団中における野生型遺伝子細胞と変異型遺伝子細胞の存在率を求める場合や、発現解析においてコントロール遺伝子の発現量に対する着目遺伝子の発現量を比較評価する場合などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、着目分子の存在率を求める方法として、アガロースゲル電気泳動やポリアクリルアミドゲル電気泳動により試料を分離した後のゲルのデジタル画像を取得し、そのデジタル画像中における各分画の輝度から各分画の濃度を求め、求めた各分画の濃度から着目分子の存在率を計算するという方法がある。また、近年の毛細管や微細流路デバイスを用いた電気泳動の解析装置では、電気泳動で分離された各分画の濃度がエレクトロフェログラムに現れる各ピークの面積から自動的に算出されるため、算出された各分画の濃度を用いて手計算や計算ツールで着目するピーク(分画)の存在率を求めることもできる。
【0005】
上記のいずれの方法においても、着目する分画の存在率は手計算や計算ツールを用いた計算によって求める必要があり、存在率に関するデータを容易かつ迅速に取得することができない。
【0006】
そこで、本発明は、電気泳動で分離された分画のうち着目する任意の分画の存在率を容易かつ迅速に取得できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気泳動分離データ解析装置は、電気泳動分離により得られた分離データのうち解析対象に加える解析対象ピークに関する解析対象ピーク情報をユーザに入力させ、その解析対象ピーク情報に基づいて少なくとも1つの前記解析対象ピークを特定するように構成された解析対象ピーク特定部と、前記解析対象ピーク中における着目ピークに関する着目ピーク情報をユーザに入力させ、その着目ピーク情報に基づいて前記着目ピークを特定するように構成された着目ピーク特定部と、前記解析対象ピークのピーク面積の合計値と前記着目ピークのピーク面積値に基づき、すべての前記解析対象ピーク中における前記着目ピークの存在率を求めるように構成された存在率算出部と、を備えている。ここで、「ピーク」とは電気泳動により分離されたそれぞれの分画に相当するものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る電気泳動分離データ解析装置は、ユーザが解析対象ピークに関する解析対象ピーク情報と着目ピークに関する着目ピーク情報を入力するだけで、解析対象ピーク中における着目ピークの存在率が自動的に求められるように構成されている。
【0009】
本発明に係る電気泳動分離データ解析装置において、前記存在率算出部は、前記解析対象ピーク及び前記着目ピークが特定されたときに、即時に前記着目ピークの存在率を算出するように構成されていることが好ましい。そうすれば、ユーザが解析対象ピークに関する解析対象ピーク情報と着目ピークに関する着目ピーク情報を入力するだけで、即時に着目ピークの存在率が求められるので、ユーザは着目ピークの存在率を迅速に入手することができる。
【0010】
本発明に係る電気泳動分離データ解析装置は、前記存在率算出部により算出された前記着目ピークの存在率を表示装置に表示する存在率表示部を備えていることが好ましい。そうすれば、着目ピークの存在率をユーザが容易に認識することができる。
【0011】
本発明に係る電気泳動分離データ解析装置において、前記解析対象ピーク特定部がユーザに入力させる前記解析対象ピーク情報は、解析対象に加えるピークを含む解析対象範囲、及び前記解析対象範囲の中で解析対象から除外するピークを含む解析除外範囲であってもよい。その場合、前記解析除外範囲内のピークを除く前記解析対象範囲内のピークを前記解析対象ピークとして特定するように、前記解析対象ピーク特定部を構成することができる。さらに、前記着目ピーク特定部がユーザに入力させる前記着目ピーク情報は、着目するピークを含む着目範囲であってもよい。その場合、前記着目ピーク特定部は、前記着目範囲内のピークを前記着目ピークとして特定するように構成することができる。
【0012】
本発明に係る電気泳動分離データ解析装置は、前記分離データとしてエレクトロフェログラムを作成するエレクトロフェログラム作成部を備えていてもよい。その場合、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させるように、前記解析対象ピーク特定部を構成することができ、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記着目範囲を指定させるように、前記着目ピーク特定部を構成することができる。
【0013】
本発明に係る電気泳動分離データ解析装置は、前記分離データとして電気泳動流路上におけるピークの分離イメージを作成する分離イメージ作成部を備えていてもよい。その場合、ユーザに前記分離イメージ上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させるように、前記解析対象ピーク特定部を構成することができ、前記分離イメージ上で前記着目範囲を指定させるように、前記着目ピーク特定部を構成することができる。
【0014】
本発明に係る電気泳動分離データ解析方法は、分離データにおいて解析対象に加える解析対象ピークに関する解析対象ピーク情報をユーザに入力させ、その解析対象ピーク情報に基づいて少なくとも1つの前記解析対象ピークを特定する解析対象ピーク特定ステップと、前記解析対象ピーク中における着目ピークに関する着目ピーク情報をユーザに入力させ、その着目ピーク情報に基づいて前記着目ピークを特定する着目ピーク特定ステップと、前記解析対象ピークのピーク面積の合計値と前記着目ピークのピーク面積値に基づき、すべての前記解析対象ピーク中における前記着目ピークの存在率を自動的に求める存在率算出ステップと、を備えている。
【0015】
本発明に係る電気泳動分離データ解析方法では、前記存在率算出ステップを、前記解析対象ピーク及び前記着目ピークが特定された直後に実行することができる。
【0016】
本発明に係る電気泳動分離データ解析方法は、前記存在率算出ステップで算出された前記着目ピークの存在率を表示装置に表示する存在率表示ステップを備えることができる。
【0017】
前記解析対象ピーク特定ステップにおいてユーザに入力させる前記解析対象ピーク情報を、解析対象に加えるピークを含む解析対象範囲、及び前記解析対象範囲の中で解析対象から除外するピークを含む解析除外範囲とすることができ、前記着目ピーク特定ステップにおいてユーザに入力させる前記着目ピーク情報を、着目するピークを含む着目範囲とすることができる。この場合、前記解析対象ピーク特定ステップでは、前記解析除外範囲内のピークを除く前記解析対象範囲内のピークを前記解析対象ピークとして特定することができ、前記着目ピーク特定ステップでは、前記着目範囲内のピークを前記着目ピークとして特定することができる。
【0018】
本発明に係る電気泳動分離データ解析方法では、前記分離データとしてエレクトロフェログラムを作成するエレクトロフェログラム作成ステップを備えることができる。その場合、前記解析対象ピーク特定ステップでは、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させることができ、前記着目ピーク特定ステップでは、ユーザに前記エレクトロフェログラム上で前記着目範囲を指定させることができる。
【0019】
本発明に係る電気泳動分離データ解析方法では、前記分離データとして電気泳動流路上におけるピークの分離イメージを作成する分離イメージ作成ステップを備えることもできる。その場合、前記解析対象ピーク特定ステップでは、ユーザに前記分離イメージ上で前記解析対象範囲及び前記解析除外範囲を指定させることができ、前記着目ピーク特定ステップでは、ユーザに前記分離イメージ上で前記着目範囲を指定させることができる。
【0020】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されることにより、上記の電気泳動分離データ解析方法を実施するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電気泳動分離データ解析装置は、ユーザが解析対象ピークに関する解析対象ピーク情報と着目ピークに関する着目ピーク情報を入力するだけで、解析対象としたピーク中における着目ピークの存在率が自動的に求められるように構成されているので、ユーザは、着目ピークの存在率を容易かつ迅速に入手することができる。
【0022】
本発明に係る電気泳動分離データ解析方法は、ユーザが解析対象ピークに関する解析対象ピーク情報と着目ピークに関する着目ピーク情報を入力するだけで、すべての解析対象ピーク中における着目ピークの存在率を自動的に求めるので、着目ピークの存在率を容易かつ迅速に入手することができる。
【0023】
本発明に係るコンピュータプログラムは、上記の電気泳動分離データ解析方法を実行するように構成されているので、コンピュータにこのコンピュータプログラムを導入するだけで、そのコンピュータを本発明に係る電気泳動分離データ解析装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】電気泳動データ解析装置の一実施例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】同実施例において作成されるエレクトロフェログラムの一例である。
【
図3】同実施例において作成される分離イメージの一例である。
【
図4】同実施例の動作を示すフローチャートである。
【
図5】解析対象ピークを特定する動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】着目ピークを特定する動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】エレクトロフェログラム上での解析対象範囲、解析除外範囲、着目範囲の指定方法を説明するための図である。
【
図8】分離イメージ上での解析対象範囲、解析除外範囲、着目範囲の指定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、電気泳動分離データ解析方法、その解析方法を実施する電気泳動分離データ解析装置の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に示されているように、電気泳動分離データ解析装置2(以下、解析装置2)は、電気泳動による試料の分離を実施する電気泳動装置4で取得された試料の分離データを用いてデータ解析処理を実施し、解析結果を表示装置6に表示する。
【0027】
解析装置2は、エレクトロフェルグラム作成部8、分離イメージ作成部10、解析対象ピーク特定部12、着目ピーク特定部14、存在率算出部16及び存在率表示部18を備えている。エレクトロフェルグラム作成部8、分離イメージ作成部10、解析対象ピーク特定部12、着目ピーク特定部14、存在率算出部16及び存在率表示部18は、解析装置2内において演算素子が所定のプログラムを実行することによって得られる機能である。すなわち、解析装置2は、エレクトロフェルグラム作成部8、分離イメージ作成部10、解析対象ピーク特定部12、着目ピーク特定部14、存在率算出部16及び存在率表示部18の機能を実現させるためのコンピュータプログラムが導入されたコンピュータによって実現されるものである。表示装置6は解析装置2に電気的に接続された液晶ディスプレイ等によって実現される。
【0028】
エレクトロフェログラム作成部8は、電気泳動装置4からの分離データに基づいてエレクトロフェログラムを作成するように構成されている。試料がDNAであり、電気泳動装置4がゲル電気泳動を実施するものである場合には、
図2に示されているような、横軸をDNA断片のサイズやタンパクの分子量、縦軸を信号強度とするエレクトロフェログラムが作成される。
図2のエレクトロフェログラムでは、電気泳動により分離された各分画がピーク(1)~(9)として現れている。各分画の濃度はそれぞれ、ピーク(1)~(9)の面積から求めることができる。
【0029】
分離イメージ作成部10は、電気泳動装置4からの分離データに基づいて、
図3に示されているような、電気泳動装置4の電気泳動流路上において分離された分画のイメージ(分離イメージ)を作成するように構成されている。
図3の分離イメージは
図2のエレクトロフェログラムに対応している。
【0030】
エレクトロフェログラム作成部8により作成されたエレクトロフェログラム、分離イメージ作成部10により作成された分離イメージは表示装置6に表示される。
【0031】
解析対象ピーク特定部12、着目ピーク特定部14、存在率算出部16及び存在率表示部18は、
図4のフローチャートに示されているように、解析対象ピークを特定するステップS1、着目ピークを特定するステップS2、着目ピークの存在率を算出するステップS3、及び算出された存在率を即時に表示するステップS4を備えた分離データ解析方法を解析装置2に実施させるための機能である。なお、
図4では、着目ピークの特定を解析対象ピークの特定の後で行なうようになっているが、着目ピークの特定を解析対象ピークの特定の前に行なってもよい。
【0032】
解析対象ピーク特定部12は、存在率の計算の対象としたい解析対象ピークに関する解析対象ピーク情報をユーザに入力させ、その解析対象ピーク情報に基づいて解析対象ピークを特定するように構成されている。
【0033】
ユーザに入力させる解析対象ピーク情報としては、存在率の計算に加えたい解析対象範囲、存在率の計算の対象から除外したい解析除外範囲が挙げられる。その場合、解析対象ピーク特定部12は、
図5に示されているように、ユーザに、解析対象範囲と解析除外範囲を入力させ(ステップS11、S12)、解析除外範囲内のピークを除く解析対象範囲内のピークを解析対象ピークとして特定する。解析対象範囲、解析除外範囲とは、電気泳動により分離された核酸のサイズやタンパクの分子量の範囲である。なお、解析対象ピーク特定部12は、解析対象ピーク情報として、存在率の計算に加えたい解析対象ピークそのものをユーザに入力させるように構成されていてもよい。
【0034】
着目ピーク特定部14は、存在率を計算したいピークに関する着目ピーク情報をユーザに入力させ、その着目ピーク情報に基づいて着目ピークを特定するように構成されている。
【0035】
ユーザに入力させる着目ピーク情報としては、存在率を計算したいピークを含む着目範囲が挙げられる。その場合、着目ピーク特定部14は、
図6に示されているように、ユーザに着目範囲を入力させ(ステップS21)、その着目範囲内のピークを着目ピークとして特定する(ステップS22)。なお、着目ピーク特定部14は、着目ピーク情報として、存在率を計算したいピークそのものをユーザに入力させるように構成されていてもよい。
【0036】
図7に示されているように、解析対象ピーク特定部12、着目ピーク特定部14は、解析対象範囲、解析除外範囲、着目範囲のそれぞれを、エレクトロフェログラム上においてユーザに指定させることができる。
【0037】
また、
図8に示されているように、解析対象ピーク特定部12、着目ピーク特定部14は、解析対象範囲、解析除外範囲、着目範囲のそれぞれを、分離イメージ上においてユーザに指定させることができる。
【0038】
なお、
図7及び
図8では、1つの解析除外範囲が指定されているが、2つ以上の解析対象範囲を指定することもできる。
【0039】
また、解析対象ピーク特定部12、着目ピーク特定部14は、解析対象範囲、解析除外範囲、着目範囲のそれぞれを、ユーザに数値によって指定させることもできる。
【0040】
図7及び
図8では、ユーザによって指定された解析対象範囲に(2)~(9)のピーク、解析除外範囲に(4)のピーク、着目範囲に(5)及び(6)のピークがそれぞれ含まれている。したがって、解析対象ピーク特定部12は、解析対象範囲に含まれる(2)~(9)のピークから解析除外範囲内にある(4)のピークを除外し、(2)、(3)、(5)~(9)のピークを解析対象ピークとして特定する。着目ピーク特定部14は、着目範囲内にある(5)及び(6)のピークを着目ピークとして特定する。
【0041】
図1に戻って、存在率算出部16は、解析対象ピーク特定部12と着目ピーク特定部14により解析対象ピーク及び着目ピークが特定されたときに、解析対象ピーク中における着目ピークの存在率を求めるように構成されている。着目ピークの存在率の算出のタイミングについて特に限定されないが、解析対象ピーク及び着目ピークが特定された後、即時に存在率の算出がなされるようになっていることが好ましい。
【0042】
着目ピークの存在率は、次式によって求めることができる。
着目ピークの存在率=
着目ピークの分画の濃度/解析対象ピークの分画の濃度の合計値×100
図7及び
図8の例で説明すると、着目ピーク(5)及び(6)の存在率は、着目ピーク(5)、(6)の合計濃度を解析対象ピーク(2)、(3)、(5)~(9)の合計濃度で除したものに100をかけることによって求めることができる。なお、「濃度」は「モル濃度」であってもよいし「質量濃度」であってもよい。
【0043】
また、存在率算出部16は、着目ピークの存在率以外に、各解析対象ピークの個別の存在率や、着目ピーク以外の解析対象ピークの合計の存在率を計算によって求めるように構成されていてもよい。
【0044】
存在率表示部18は、存在率算出部16により算出された着目ピークの存在率を表示装置6に表示するように構成されている。これにより、ユーザが解析対象の範囲、解析対象から除外する範囲、着目範囲(若しくは着目ピーク)を指定するだけで、着目ピークの存在率が自動的に算出され、表示装置6に表示されるので、ユーザは、着目する分画の存在率を容易かつ迅速に取得することができる。
【0045】
さらに、解析対象ピーク及び着目ピークが特定された後で即時に存在率を算出するように存在率算出部16が構成されている場合には、着目ピークの存在率が表示装置6に即時に表示されるので、ユーザは、着目する分画の存在率をリアルタイムで認識することができる。
【符号の説明】
【0046】
2 電気泳動分離データ解析装置
4 電気泳動装置
6 表示装置
8 エレクトロフェログラム作成部
10 分離イメージ作成部
12 解析対象ピーク特定部
14 着目ピーク特定部
16 存在率算出部
18 存在率表示部