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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】塩素含有樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/04 20060101AFI20221101BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20221101BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08L27/04
C08K3/24
C08K5/098
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018148364
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020023611
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】西井 俊博
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-216174(JP,A)
【文献】特開昭58-173159(JP,A)
【文献】特表2012-526860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有樹脂と
塩素含有樹脂100質量部に対して0.5~1.5質量部の鉛系安定剤と
塩素含有樹脂100質量部に対して過塩素酸のアルカリ金属塩換算で0.02~0.1質量部の過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液とを含むことを特徴とする塩素含有樹脂組成物。
【請求項2】
前記過塩素酸のアルカリ金属塩は、過塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の塩素含有樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塩素含有樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素含有樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニルに代表される塩素含有樹脂は、柔軟性が高く加工しやすいうえ、機械的強度等の物性にも優れるため、管路材料(単に管材ともいう)の他、種々様々な用途に広く使用されている。だが一方で、塩素含有樹脂は耐熱性(熱安定性ともいう)に課題があり、加工時や使用時の熱に不安定で加熱により分解が生じるため、耐熱性や加工性向上の観点から、塩素含有樹脂とともに安定剤が併用されるのが通常である。
【0003】
塩素含有樹脂の安定剤としては、鉛系安定剤が代表的である。また、鉛系安定剤と過塩素酸系化合物とを組み合わせた塩素含有重合体用安定剤やそのような安定剤を含む樹脂組成物も開示されている(特許文献1~7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-028340号公報
【文献】特開2004-059603号公報
【文献】特開平05-339451号公報
【文献】特開昭62-079249号公報
【文献】国際公開第03/010091号公報
【文献】特開2012-140638号公報
【文献】特開平02-182741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種々の用途に使用される塩素含有樹脂の中でも管材用の塩素含有樹脂には、ステアリン酸鉛を主成分とする鉛系安定剤が使用されることが多い。近年、塩素含有樹脂組成物に求められる耐熱性の水準が高くなっており、それに合わせて鉛系安定剤の添加量は増加傾向にある。しかし、ステアリン酸鉛の使用量が増加するにつれて塩素含有樹脂組成物から成形体を生産する際のプレートアウトの発生が増加し、成形体の外観性低下や物性低下が生じるという課題がある。更に、プレートアウト物を取り除くために金型を洗浄する必要があるため、生産効率の低下や作業面でも課題がある。
耐熱性を高くする別の方法として、鉛系安定剤の一部を、スズ系化合物やハイドロタルサイト、多価アルコール化合物に置き換える、あるいは置き換えずに追加で添加する方法もあるが、これら添加剤の変更や増減は加工性に及ぼす影響が大きく、都度滑剤などの添加剤を増減して加工性を調整し、成形品に及ぼす影響を最小限に抑える必要があるため、煩雑な操作が必要となるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、加工性の調整の必要がなく、耐熱性に優れ、かつプレートアウトの発生も抑制された塩素含有樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、加工性を調整することなく耐熱性に優れ、かつプレートアウトの発生も抑制された塩素含有樹脂組成物について検討したところ、塩素含有樹脂に鉛系安定剤と過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液とを添加すると、塩素含有樹脂組成物の耐熱性を大幅に向上させることができることを見出した。これにより、鉛系安定剤の使用量を変えないあるいは加工性の影響が出ない範囲で添加量を削減した上で耐熱性を向上させることができることから、加工性の調整も必要なくなるうえ、鉛系安定剤の使用量を抑えることでプレートアウトの発生も抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、塩素含有樹脂と鉛系安定剤と過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液とを含むことを特徴とする塩素含有樹脂組成物である。
【0009】
上記塩素含有樹脂組成物は、過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液を塩素含有樹脂100質量部に対して、過塩素酸のアルカリ金属塩換算で0.01~0.5質量部含むことが好ましい。
【0010】
上記過塩素酸のアルカリ金属塩は、過塩素酸ナトリウムであることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、本発明の塩素含有樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塩素含有樹脂組成物は、鉛系安定剤を使用しながら耐熱性に優れ、かつ成形体加工時の鉛系安定剤のプレートアウトも抑制されたものであり、加工性の調整も必要ないことから、管材の原料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0014】
1.塩素含有樹脂組成物
本発明の塩素含有樹脂組成物は、塩素含有樹脂と鉛系安定剤と過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液とを含むことを特徴とする。本発明の塩素含有樹脂組成物は、塩素含有樹脂、鉛系安定剤及び過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液をそれぞれ1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、これら以外のその他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0015】
本発明の塩素含有樹脂組成物における過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液の含有量は特に制限されないが、塩素含有樹脂100質量部に対して、過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液を過塩素酸のアルカリ金属塩換算で0.01~0.5質量部含むことが好ましい。このような割合で含むことで、少量の鉛系安定剤の使用でも塩素含有樹脂組成物を耐熱性に優れるものとすることができ、また、既存の安定剤を使用している場合は、安定剤の変更に伴う加工性の調整を不要とするか、最小限にとどめることが可能となる。過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液の含有量は、より好ましくは、塩素含有樹脂100質量部に対して、過塩素酸のアルカリ金属塩換算で0.01~0.4質量部であり、更に好ましくは、0.02~0.35質量部である。
【0016】
本発明の塩素含有樹脂組成物における鉛系安定剤の含有量は、塩素含有樹脂100質量部に対して、0.5~3質量部であることが好ましい。鉛系安定剤の含有量がこのような割合であることで、塩素含有樹脂組成物を耐熱性に優れたものとしつつ、塩素含有樹脂組成物を成形加工する際のプレートアウトの発生をより十分に抑制することができる。鉛系安定剤の含有量は、より好ましくは、塩素含有樹脂100質量部に対して、0.7~2.0質量部であり、更に好ましくは、0.9~1.5質量部である。
【0017】
1)塩素含有樹脂
本発明の塩素含有樹脂組成物が含む塩素含有樹脂としては、塩素原子を含む樹脂(重合体)である限り特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂が好ましい。これにより、柔軟性や難燃性に優れる成形体が得られる。
【0018】
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン等の単独重合体;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-ウレタン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-マレイミド共重合体等の共重合体;等が挙げられる。
なお、塩素含有樹脂と塩素非含有樹脂とのブレンド品を使用してもよいし、また塩化ビニル系樹脂を得るための重合方法は特に限定されない。
【0019】
2)鉛系安定剤
本発明の塩素含有樹脂組成物が含む鉛系安定剤としては、成形品の用途に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、シリカゲル共沈硅酸鉛、ステアリン酸鉛、安息香酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。中でも、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜硫酸鉛及び二塩基性ステアリン酸鉛が好ましい。
【0020】
3)過塩素酸のアルカリ金属塩
上記過塩素酸のアルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビシウム等のいずれのアルカリ金属の塩であってもよく、これらの1種又は2種以上を用いることができるが、ナトリウム塩が好ましい。すなわち過塩素酸のアルカリ金属塩は、過塩素酸ナトリウムであることが好ましい。過塩素酸ナトリウムを使用することで、塩素含有樹脂組成物が上述した効果をより十分に発揮することができる。
【0021】
上記過塩素酸のアルカリ金属塩は、有機溶媒中に0.1質量%~60質量%含有されることが好ましい。0.1質量%を下回ると有機溶媒が多すぎて塩素含有樹脂組成物の成形体の軟化温度が低下する恐れがあり、60質量%を超えると、過塩素酸のアルカリ金属塩が有機溶媒に溶解しにくくなり、アルカリ金属塩が塩素含有樹脂中で十分に分散しない恐れがある。過塩素酸のアルカリ金属塩の含有量は、有機溶媒中に1質量%~50質量%含有されることがより好ましく、有機溶媒中に10質量%~30質量%含有されることが更に好ましい。
【0022】
上記過塩素酸のアルカリ金属塩の有機溶媒溶液を調製する際に使用する有機溶媒としては、iPG(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル)、BG(エチレングリコールモノブチルエーテル)、iBDG(ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル)等のエチレングリコール系エーテル;MFDG(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、PFG(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)、PFDG(ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル)等のプロピレングリコール系エーテル;DMTG(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、MEDG(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル),DEDG(ジエチレングリコールジエチルエーテル)、DMFDG(ジプロピレングリコールジメチルエーテル)等のジアルキル系エーテル;や、BC(ブチルカルビトール)、BCA(ブチルカルビトールアセテート)等が挙げられる。
【0023】
4)他の成分
本発明の塩素含有樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。例えば、金属石鹸、加工助剤、強化剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、耐熱助剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0024】
その他の成分の量は、塩素含有樹脂組成物全体100重量部に対して、それぞれ15重量部以下であることが好ましい。より好ましくは、10重量部以下であり、更に好ましくは、5重量部以下である。
【0025】
各種添加剤はそれぞれ特に限定されないが、例えば、金属石鹸としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは熱安定性を付与することが出来る。
【0026】
加工助剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体等のアクリル系加工助剤が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。アクリル系加工助剤は、上記のアクリル酸及び/又はそのエステルや、メタクリル酸及び/又はそのエステルそれぞれの単独の重合体であっても2種以上の共重合体であってもよい。重合体の重量平均分子量は20万~700万であることが好ましい。
上記アクリル系加工助剤の市販品としては、例えば、三菱レイヨン製のメタブレンPタイプ、カネカ製のカネエースPAシリーズ、ローム・アンド・ハース製のパラロイドKシリーズ等が挙げられる。
【0027】
強化剤としては、例えば、MBS(メチルメタクリレート-ブタジエンスチレン共重合体)等のブタジエン系強化剤、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0028】
滑剤としては、例えば、流動パラフィン、工業用白色鉱油、合成パラフィン、石油系ワックス、ペトロラタム;無臭軽質炭化水素、シリコーンオルガノポリシロキサン、脂肪酸、脂肪族アルコール、高級脂肪酸、動物又は植物油脂から得られた脂肪酸及びそれらの脂肪酸を水素添加したもので、炭素数が8~22のもの;ヒドロキシステアリン酸等の直鎖ヒドロキシ脂肪酸;動物、植物油脂又はそれらの脂肪酸エステルを還元又は天然ロウを分解蒸留して得られる炭素数4以上のもの;トリデシルアルコール、ポリエチレングリコールで分子量200~9500のもの;ポリプロピレングリコールで分子量1000以上のもの;ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン-ブロック重合体で分子量1900~9000のもの;の他、オレイルパルミトアマイド、ステアリルエルカ酸アマイド、2ステアロアミドエチルステアレート、エチレンビス脂肪酸アマイド、N,N’-オレオイルステアリルエチレンジアミン、N,N’ -ビス(2ヒドロキシエチル)アルキル(C12~C18)アマイド、N,N’ビス(ヒドロキシエチル)ラウロアマイド、N-アルキル(C16~C18)トリメチレンジアミンと反応したオレイン酸脂肪酸ジエタノールアミン、ジ(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミンモノアセテートのジステアリン酸エステル、ステアリン酸n-ブチル水添ロジンメチルエステル、セバチン酸ジn-ブチル、セバチン酸ジイソブチル、セバチン酸ジ2エチルヘキシル、セバチン酸ジn-オクチル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンラクトステアリル、ペンタエリスリトールステアリン酸モノエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸ジエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステル、ペンタエリスリトールステアリン酸テトラエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールヤシ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールトール油脂肪酸エステル、エタンジオールモンタン酸エステル、1,3ブタンジオールモンタン酸エステル、ジエチレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、トリグリセライド、アマニ油、パーム油、12-ヒドロオキシステアリン酸のグリセリンエステル、水添魚油、牛脂、スパームアセチワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、密蝋、木蝋、硬化鯨油ラウリルステアレート、ステアリルステアレートなど一価脂肪族アルコールの脂肪族飽和酸エステル、ラノリン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど高級脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、フッ素系樹脂、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン/6フッ化プロピレン共重合体、ポリ塩化3フッ化エチレン、ポリフッ化ビニル、その他プロピレングリコールアルギネート、ジアルキルケトン、アクリルコポリマー(例えばAllnex製モダフロー等)が挙げられる。
【0029】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第三ブチルフェノール)、2,2-メチレンビス(4-エチル-6-第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第二ブチル-6-第三ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}〕エチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0030】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及び、ペンタエリスリトールテトラ(β-ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0031】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノ(ジノニルフェニル)ビス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(C12-15混合アルキル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)(オクチル)ホスファイト等が挙げられる。
【0032】
着色剤としては、例えば、TiO、酸化ジルコニウム、BaSO、酸化亜鉛(亜鉛華)リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムとの混合物)、カーボンブラック、カーボンブラックと二酸化チタンの混合物、酸化鉄、Sb、Cr、コバルトブルー、コバルトグリーン等のスピネル、ウルトラマリンブルー等の無機顔料や、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、アントラキノン顔料等の有機顔料が挙げられる。更に、上記顔料を複合した複合顔料も挙げられる。
【0033】
耐熱助剤としては、例えば、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ジペンタエリスルトールとアジピン酸との部分エステル、ポリオール類及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0034】
本発明の塩素含有樹脂組成物の用途は特に制限されず、塩素含有樹脂を原料とする種々の用途に使用することができるが、少量の鉛系安定剤の配合量であっても耐熱性に優れることを特徴とするため、鉛系安定剤が使用され、かつ、耐熱性が要求される管材用途に使用されること、すなわち、本発明の塩素含有樹脂組成物が管材用の塩素含有樹脂組成物であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
【0035】
2.成形体
本発明はまた、上述した本発明の塩素含有樹脂組成物を用いてなる成形体、すなわち本発明の塩素含有樹脂組成物から形成される成形体でもある。このような成形体は、耐熱性に優れることから、各種用途に有用である。
【0036】
上記成形体を得るための成形方法(成型方法)は特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、ロール成形、ディップ成形、ブロー成形等が挙げられる。上述したように本発明の樹脂組成物は耐熱性に特に優れることから、高温成形に特に有用である。特に、成形温度が200℃以上の成形時に好ましく用いることができる。
【0037】
上記成形体として更に好ましくは、管、継手である。特に継手は通常、複雑な形状からなるため、高温で成形されるのが通常である。また、加工成型機としては射出成形機が用いられるが、射出成型は、溶融した塩素含有樹脂組成物をノズルから高圧で金型に一気に射出して成型する方法であることから、樹脂組成物とノズルとの摩擦又は樹脂組成物同士の摩擦のため、加工温度より数十度樹脂組成物の温度が上昇する。それゆえ、極めて高レベルの耐熱性が要求されるが、本発明の樹脂組成物はこのような要求に充分に応えることができるものである。このように上記成形体が継手である形態は、本発明の好適な形態の1つであり、成形体が大型の継手である形態にも好適である。
ここで、大型の継手とは、口径が30mm以上であるパイプを繋ぐための継手を指す。大型の継手はかなり重く、土中深くに埋設されるため、小型の継手よりはるかに大きな強度、特に耐衝撃性強度が要求される。そこで、通常は強化剤を添加して強度を向上させているが、強化剤は樹脂組成物の溶融粘度を大きくするため加工成型時の温度をことさら高くする必要があり、耐熱性が更に要求される。
【実施例
【0038】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。
【0039】
実施例1~4、比較例1
塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)社製TK-1000)100重量部に、表1に記載のように各添加剤を配合し、得られた塩素含有樹脂組成物をロール表面温度170℃に調整した8インチロール機(KANSAI ROLL社製)にて5分間混練し、厚さ0.3mmのロールシートを作成した。このロールシートを用い、以下それぞれの試験を行った。結果を表1に示す。なお、表1の添加剤を配合のうち、過塩素酸Na溶液CX-1については、過塩素酸Na溶液中に含まれる過塩素酸Naの量を記載した。
【0040】
プレス色相
上記で作成したロールシートを7枚重ねてプレス表面温度180℃のプレス機(TOYOSEIKI MINI TEST PRESS-10)を用い、厚さ2mmになるように100kg/cmにて10分間保持した。プレス後のシートの色相を色差計(日本電色工業製、同時測光方式分光式色差計 SQ-2000)にて測定し、比較例1の組成物の色相を基準として、ΔEを求めた。
なお、ΔEが1以上では、成型した製品の外観で問題が起こるとされる。
【0041】
プレス耐熱性
上記で作成したシートロールを7枚重ねてプレス表面温度180℃のプレス機(TOYOSEIKI MINI TEST PRESS-10)を用い、厚さ2mmになるように100kg/cmにて30分間保持した。プレス後のシートの色相を上述の色差計にて測定し、比較例1で作成したプレスシート(温度180℃、保持時間10分)の色相を基準として、ΔEを求めた。
なお、ΔEが13以下では、色調が良好であり問題が発生する可能性は低く、ΔEが13以上では成型加工機の故障等のトラブルが発生するおそれがあるとされる。
【0042】
オーブン耐熱性
上記で作成したシートを180℃のESPEC社製ギアオーブンに入れて40分間保持した。保持する前後のシートを用い上述の色差計にて色相を測定し、比較例1の組成物のプレス色相を基準として、ΔEを求めた。
なお、40分間保持した時点でΔEが13以下では、色調が良好であり問題が発生する可能性が低く、ΔEが13以上では、成型加工機の故障等のトラブルが発生するおそれがあるとされる。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に記載の塩化ビニル樹脂以外の各成分はそれぞれ以下のものである。
炭酸カルシウム SCP-E#110:三共製粉株式会社製
ステアリン酸鉛 SL-1000:堺化学工業株式会社製
エステル系WAX リケスターSG22:理研ビタミン株式会社製
顔料 グレーD-13833:レジノカラー工業株式会社製
過塩素酸ナトリウムのブチルカルビトール(過塩素酸ナトリウム含有量15質量%)溶液 CX-1:共同薬品株式会社製
【0045】
実施例5~8、比較例2
塩化ビニル樹脂(信越化学工業(株)社製TK-1000)3kgに対し、各添加剤を表2に記載の比率となるように計量した。計量した材料を、20Lヘンシェルミキサー(日本コークス工業製)を用い、ヘンシェルミキサーの羽根を2000rpmで回転させ、混合物の温度が100℃になるまで混合し、100℃になった時点でヘンシェルミキサーから排出して塩素含有樹脂組成物を作製した。
得られた塩素含有樹脂組成物を用いて、以下の方法により、プレートアウト試験を行った。結果を表2に示す。なお、表2に記載の各成分は表1のものと同じであり、過塩素酸Na溶液CX-1については、過塩素酸Na溶液中に含まれる過塩素酸Naの量を記載した。
【0046】
プレートアウト試験
下記成形加工方法によるパイプ成型中及び成型が終了した後、金型及びサイジングへのプレートアウト発生状況(すなわち、金型やサイジングへの付着物の発生状況)を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
◎:金型及びサイジングへの付着物は確認されなかった。
〇:成形途中には確認されなかったが、成型終了時には金型及びサイジングに少量の付着物が確認された。
△:成型途中から金型及びサイジングに付着物が確認されたが、成型したパイプには異常が見られなかった。
×:成型途中から金型及びサイジング全面に付着物があり、金型またはサイジングから剥がれた付着物が成型したパイプに付着していた。
[成形加工方法]
冷却機能を備えた吸引サイジング(成形品の表面性を平滑にする装置)を有するラボ押出機(東洋精機製、コニカル2D20C型、押出条件:C1 175℃、C2 180℃、C3 185℃、AD 185℃、D1 180℃、D2 205℃、金型:パイプ用)にて塩素含有樹脂組成物を使用し、5時間かけてパイプを成型した。
【0047】
【表2】
【0048】
表1、2の結果から、塩化ビニル樹脂に対して、ステアリン酸鉛とともに過塩素酸ナトリウムを使用した実施例1~4の組成物では、ステアリン酸鉛の添加量が少量でもプレス色相、プレス耐熱性及びオーブン耐熱性のいずれにも優れ、また、プレートアウトの発生も抑制されていたのに対し、過塩素酸ナトリウムを使用しなかった比較例1の組成物では、プレス耐熱性及びオーブン耐熱性のいずれにも劣り、また、プレートアウトも多く発生する結果となった。
これらより、鉛系安定剤と過塩素酸のアルカリ金属塩とを併用することで、鉛系安定剤の使用量が少量で加工性の調整が必要なく、かつ、耐熱性に優れ、かつプレートアウトの発生も抑制された塩素含有樹脂組成物が得られることが確認された。