(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20221101BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H02J1/00 306F
H02J1/00 306G
H02J13/00 301A
H02J13/00 311E
(21)【出願番号】P 2018161492
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】澤野 峻一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅幸
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0080130(US,A1)
【文献】特開2008-290705(JP,A)
【文献】特開2019-097124(JP,A)
【文献】特開2014-094666(JP,A)
【文献】特開2008-306809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0057247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J1/00-1/16
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
B60R16/00-17/02
G01R19/00-19/32
G05F1/00-1/10
G06F1/26-1/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチを介した負荷への給電を制御する給電制御装置であって、
前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え部と、
前記切替え部が前記スイッチをオフからオンに切替えた場合に、前記負荷に流れる電流の電流波形に関する
複数の波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定する決定部と
を備え、
前記切替え部は前記スイッチを一定時間、オンに維持した後に前記スイッチを一定時間、オフに維持し、
前記決定部は、前記切替え部がオンの維持を開始してからオフの維持を終了するまでの前記電流波形の
複数の波形値に基づいて前記給電制御条件を決定する
給電制御装置。
【請求項2】
前記スイッチを介して流れる電流の電流経路に配置され、前記負荷が着脱可能に接続されるコネクタと、
前記コネクタへの前記負荷の接続を検知する接続検知部と
を備え、
前記切替え部は、前記接続検知部が前記接続を検知した場合に前記スイッチをオフからオンに切替える
請求項1に記載の給電制御装置。
【請求項3】
前記切替え部は、前記負荷に流れる電流の電流値が電流閾値以上となった場合、前記スイッチをオフに切替え、
前記給電制御条件には前記電流閾値が含まれる
請求項1又は請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項4】
前記負荷に印加される電圧の電圧値を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路が検出した電圧値に基づいて前記
複数の波形値を補正する補正部と
を備える請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の給電制御装置。
【請求項5】
前記負荷の周囲温度を推定する温度推定部と、
前記温度推定部が推定した周囲温度に基づいて、前記
複数の波形値を補正する第2の補正部と
を備える請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の給電制御装置。
【請求項6】
前記
複数の波形値に基づいて前記負荷の種類を特定する特定部を備え、
前記決定部は、前記給電制御条件を、前記特定部が特定した種類に対応する給電制御の条件に決定する
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の給電制御装置。
【請求項7】
スイッチをオン又はオフに切替えるステップと、
前記スイッチがオフからオンに切替わった場合に、負荷に流れる電流の電流波形に関する
複数の波形値を取得するステップと、
取得した
前記複数の波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定するステップと、
前記スイッチを一定時間、オンに維持するステップと、
前記スイッチを一定時間、オンに維持した後に前記スイッチを一定時間、オフに維持するステップと
を含み、
前記
複数の波形値は、オンの維持が開始されてからオフの維持が終了するまでに取得される
給電制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
スイッチのオン又はオフへの切替えを指示するステップと、
前記スイッチがオフからオンに切替わった場合に、負荷に流れる電流の電流波形に関する
複数の波形値を取得するステップと、
取得した
前記複数の波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定するステップと、
前記スイッチを一定時間、オンに維持するステップと、
前記スイッチを一定時間、オンに維持した後に前記スイッチを一定時間、オフに維持するステップと
を実行させるために用いられ、
前記
複数の波形値は、オンの維持が開始されてからオフの維持が終了するまでに取得される
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、電源から負荷への給電を制御する給電制御装置(例えば、特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1に記載の給電制御装置では、スイッチを介して電源から負荷に電力が供給される。スイッチをオン又はオフに切替えることによって負荷への給電を制御する。
【0003】
特許文献1に記載の給電制御装置には、負荷の動作仕様を示すカスタマイズ情報が記憶されている。カスタマイズ情報が示す動作仕様に応じて、給電制御に関する給電制御条件を決定する。給電制御条件には、例えば、スイッチについて、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行うか否かが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の給電制御装置は、接続端子を有し、この接続端子に負荷が接続されている。電流は、電源、スイッチ、接続端子及び負荷の順に流れ、負荷に電力が供給される。接続端子に接続する負荷を変更することができる。接続端子に接続する負荷を変更した場合、給電制御条件を、変更した負荷に対応する条件に更新する必要である。
【0006】
特許文献1に記載の給電制御装置では、他の装置から、変更した負荷に対応するカスタマイズ情報を受信し、受信したカスタマイズ情報に基づいて給電制御条件を更新する。この場合、負荷が変更する都度、他の装置からカスタマイズ情報を送信する必要があるため、給電制御条件の更新に必要な時間が長いという問題がある。
【0007】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、給電制御条件の更新に必要な時間が短い給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る給電制御装置は、スイッチを介した負荷への給電を制御する給電制御装置であって、前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え部と、前記切替え部が前記スイッチをオフからオンに切替えた場合に、前記負荷に流れる電流の電流波形に関する波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定する決定部とを備え、前記切替え部は前記スイッチを一定時間、オンに維持した後に前記スイッチを一定時間、オフに維持し、前記決定部は、前記切替え部がオンの維持を開始してからオフの維持を終了するまでの前記電流波形の波形値に基づいて前記給電制御条件を決定する。
【0009】
本開示の一態様に係る給電制御方法は、スイッチをオン又はオフに切替えるステップと、前記スイッチがオフからオンに切替わった場合に、負荷に流れる電流の電流波形に関する波形値を取得するステップと、取得した波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定するステップと、前記スイッチを一定時間、オンに維持するステップと、前記スイッチを一定時間、オンに維持した後に前記スイッチを一定時間、オフに維持するステップとを含み、前記波形値は、オンの維持が開始されてからオフの維持が終了するまでに取得される。
【0010】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、スイッチのオン又はオフへの切替えを指示するステップと、前記スイッチがオフからオンに切替わった場合に、負荷に流れる電流の電流波形に関する波形値を取得するステップと、取得した波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定するステップと、前記スイッチを一定時間、オンに維持するステップと、前記スイッチを一定時間、オンに維持した後に前記スイッチを一定時間、オフに維持するステップとを実行させるために用いられ、前記波形値は、オンの維持が開始されてからオフの維持が終了するまでに取得される。
【0011】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える給電制御装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする給電制御方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、給電制御装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、給電制御装置を含む電源システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、給電制御条件の変更に必要な時間が短い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態における電源システムの要部構成示すブロック図である。
【
図4】マイコンの要部構成を示すブロック図である。
【
図7】給電制御処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】電線保護処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】接続検知処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】更新処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】更新処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0015】
(1)本開示の一態様に係る給電制御装置は、スイッチを介した負荷への給電を制御する給電制御装置であって、前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え部と、前記切替え部が前記スイッチをオフからオンに切替えた場合に、前記負荷に流れる電流の電流波形に関する波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定する決定部とを備える。
【0016】
(2)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記スイッチを介して流れる電流の電流経路に配置され、前記負荷が着脱可能に接続されるコネクタと、前記コネクタへの前記負荷の接続を検知する接続検知部とを備え、前記切替え部は、前記接続検知部が前記接続を検知した場合に前記スイッチをオフからオンに切替える。
【0017】
(3)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記切替え部は、前記負荷に流れる電流の電流値が電流閾値以上となった場合、前記スイッチをオフに切替え、前記給電制御条件には前記電流閾値が含まれる。
【0018】
(4)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記負荷に印加される電圧の電圧値を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路が検出した電圧値に基づいて前記波形値を補正する補正部とを備える。
【0019】
(5)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記負荷の周囲温度を推定する温度推定部と、前記温度推定部が推定した周囲温度に基づいて、前記波形値を補正する第2の補正部とを備える。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る給電制御装置は、前記波形値に基づいて前記負荷の種類を特定する特定部を備え、前記決定部は、前記給電制御条件を、前記特定部が特定した種類に対応する給電制御の条件に決定する。
【0021】
(7)本開示の一態様に係る給電制御方法は、スイッチをオン又はオフに切替えるステップと、前記スイッチがオフからオンに切替わった場合に、負荷に流れる電流の電流波形に関する波形値を取得するステップと、取得した波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定するステップとを含む。
【0022】
(8)本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、スイッチのオン又はオフへの切替えを指示するステップと、前記スイッチがオフからオンに切替わった場合に、負荷に流れる電流の電流波形に関する波形値を取得するステップと、取得した波形値に基づいて、前記負荷への給電制御に関する給電制御条件を決定するステップとを実行させる。
【0023】
上記の一態様に係る給電制御装置、給電制御方法及びコンピュータプログラムにあっては、スイッチをオフからオンに切替えた場合における電流波形に関する波形値に基づいて、給電制御条件を決定する。従って、スイッチを介して電力を供給する負荷が変更した場合、電流波形、即ち、波形値が変わるので、給電制御条件が即時に更新される。このため、給電制御条件の変更に必要な時間は短い。波形値は、突入電流値、定常電流値又は電流値の上昇速度等である。給電制御条件には、スイッチのオン及びオフについて、PWM制御を行うか否か、又は、PWM信号のデューティ等が含まれる。
【0024】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、負荷がコネクタに接続された場合、この接続を検知し、スイッチをオフからオンに切替える。その後、電流波形に関する波形値に基づいて給電制御条件が決定される。
【0025】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、負荷に流れる電流の電流値が電流閾値以上となった場合、スイッチをオフに切替える。この電流閾値は、電流波形に関する波形値に基づいて決定される。
【0026】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、負荷に印加される電圧の電圧値、例えば、バッテリの電圧値に基づいて、波形値を補正する。例えば、取得した波形値を、負荷に印加される電圧の電圧値が所定電圧値である場合における波形値に補正する。
【0027】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、推定した負荷の周囲温度に基づいて波形値を補正する。例えば、取得した波形値を、負荷の周囲温度が所定温度である場合における波形値に補正する。
【0028】
上記の一態様に係る給電制御装置にあっては、波形値に基づいて負荷の種類を特定し、給電制御条件を、特定した種類に対応する給電制御の条件に決定する。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
図1は、本実施形態における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は、車両に好適に搭載され、バッテリ10、負荷11、給電制御装置12及び外側コネクタA1,A2,A3を備える。給電制御装置12は、制御機20、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)21及び内側コネクタB1,B2,B3を有する。
【0031】
バッテリ10の正極は外側コネクタA1に接続されている。バッテリ10の負極は接地されている。負荷11の一端は外側コネクタA2に接続されている。負荷11の他端は外側コネクタA3に接続されている。
【0032】
給電制御装置12内では、電線Wの一端が内側コネクタB1に接続されている。電線Wの他端は内側コネクタB2に接続されている。電線Wの中途に制御機20が配置されている。制御機20はマイコン21に接続されている。内側コネクタB3は接地されている。
【0033】
外側コネクタA1,A2,A3夫々は、内側コネクタB1,B2,B3に着脱可能に接続される。外側コネクタA2,A3夫々が内側コネクタB2,B3に接続された場合、負荷11は内側コネクタB2,B3に接続される。外側コネクタA1,A2,A3夫々は、内側コネクタB1,B2,B3に接続された場合、バッテリ10の正極、及び、負荷11の一端が制御機20に接続され、負荷11の他端は接地される。
【0034】
マイコン21は、制御機20に、ハイレベル電圧、ローレベル電圧又はPWM信号を出力する。PWM信号はハイレベル電圧及びローレベル電圧によって構成される。PWM信号では、ローレベル電圧からハイレベル電圧への切替え、又は、ハイレベル電圧からローレベル電圧への切替えが周期的に行われる。PWM信号のデューティは、1周期の中でPWM信号がハイレベル電圧を示す期間の割合である。PWM信号のデューティの単位はパーセントである。
【0035】
制御機20は、後述するように、給電スイッチ30(
図2参照)を有する。制御機20は、マイコン21から入力されている電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、給電スイッチ30をオフからオンに切替える。これにより、電流は、バッテリ10の正極から、給電スイッチ30及び負荷11の順に流れ、バッテリ10から負荷11に電力が供給される。また、制御機20は、マイコン21から入力されている電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、給電スイッチ30をオンからオフに切替える。これにより、バッテリ10から負荷11への給電が停止する。
【0036】
制御機20は、マイコン21からPWM信号が入力されている場合において、PWM信号が示す電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わったとき、給電スイッチ30をオフからオンに切替える。これにより、バッテリ10から負荷11に電力が供給される。制御機20は、同様の場合において、PWM信号が示す電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わったとき、給電スイッチ30をオンからオフに切替える。これにより、バッテリ10から負荷11への給電が停止する。
【0037】
マイコン21がPWM信号を制御機20に出力している場合、PWM信号のデューティに応じた電力が負荷11に供給される。PWM信号のデューティが大きい程、負荷11に供給される電力の平均値は大きい。
以上のように、制御機20は、給電スイッチ30を介したバッテリ10から負荷11への給電を制御する。
【0038】
負荷11は、車両に搭載される電気機器である。負荷11は、バッテリ10から供給された電力を用いて作動する。ユーザは、負荷11を取り換える場合、外側コネクタA2及び内側コネクタB2の接続と、外側コネクタA3及び内側コネクタB3の接続とを外し、新たな負荷11に接続されている外側コネクタA2,A3を内側コネクタB2,B3に接続する。これにより、新たな負荷11が給電制御装置12の内側コネクタB2,B3に接続される。
【0039】
図2は制御機20の要部構成を示すブロック図である。制御機20は、給電スイッチ30に加えて、電流出力回路31、電圧検出回路32、還流ダイオード33、駆動回路34、AND回路35、可変抵抗36、コンパレータ37、直流電源38、ラッチ回路39、反転器40、フィルタ回路41、波形値検出部42、調整部43、分圧抵抗44、検知スイッチ45、切替え部46及び温度推定部47を有する。
【0040】
給電スイッチ30は、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。AND回路35は、2つの入力端と、1つの出力端とを有する。コンパレータ37は、プラス端、マイナス端及び出力端を有する。反転器40は、入力端及び出力端を有する。
【0041】
電線Wの中途に、給電スイッチ30及び電流出力回路31が配置されている。給電スイッチ30のドレインは内側コネクタB1に接続されている。前述したように、内側コネクタB1は外側コネクタA1に接続され、外側コネクタA1はバッテリ10の正極に接続されている。給電スイッチ30のソースは電流出力回路31に接続されている。電流出力回路31は、更に、内側コネクタB2に接続されている。内側コネクタB2は、外側コネクタA2に接続され、外側コネクタA2は負荷11の一端に接続されている。
【0042】
電圧検出回路32、還流ダイオード33のカソード及びマイコン21は、電線Wの中途に接続されている。電圧検出回路32は、給電スイッチ30のドレイン及びマイコン21に接続されている。還流ダイオード33のカソードは、給電スイッチ30のソース及び電流出力回路31間の接続ノードに接続されている。還流ダイオード33のアノードは接地されている。マイコン21は、電流出力回路31及び内側コネクタB2間の接続ノードに接続されている。
【0043】
給電スイッチ30のゲートは駆動回路34に接続されている。駆動回路34はAND回路35の出力端に接続されている。電流出力回路31は、可変抵抗36の一端に接続されている。可変抵抗36の他端は接地されている。電流出力回路31及び可変抵抗36間の接続ノードは、コンパレータ37のプラス端に接続されている。コンパレータ37のマイナス端は、直流電源38の正極に接続されている。直流電源38の負極は接地されている。
【0044】
コンパレータ37の出力端は、ラッチ回路39に接続されている。ラッチ回路39は、更に、反転器40の入力端に接続されている。AND回路35の一方の入力端は、マイコン21に接続されている。AND回路35の他方の入力端は反転器40の出力端に接続されている。
【0045】
電流出力回路31及び可変抵抗36間の接続ノードは、更に、フィルタ回路41に接続されている。フィルタ回路41は、更に、波形値検出部42に接続されている。波形値検出部42はマイコン21に接続されている。
【0046】
分圧抵抗44の一端には抵抗電圧が印加されている。抵抗電圧の電圧値である抵抗電圧値Vccは、一定値であり、例えば、5Vである。分圧抵抗44の他端は、検知スイッチ45の一端に接続されている。検知スイッチ45の他端は、マイコン21と、電流出力回路31及び内側コネクタB2間の接続ノードとに接続されている。マイコン21には、更に、調整部43、切替え部46及び温度推定部47が接続されている。マイコン21及び調整部43間の接続ノードは波形値検出部42に接続されている。
【0047】
給電スイッチ30について、ソースの電位を基準としたゲートの電圧値が一定の電圧値以上である場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることが可能である。このとき、給電スイッチ30はオンである。給電スイッチ30について、ソースの電位を基準としたゲートの電圧値が一定の電圧値未満である場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることはない。このとき、給電スイッチ30はオフである。
【0048】
マイコン21は、AND回路35に、ハイレベル電圧、ローレベル電圧又はPWM信号を出力する。反転器40は、AND回路35に、ハイレベル電圧又はローレベル電圧を出力する。
【0049】
反転器40がハイレベル電圧を出力している場合において、マイコン21がAND回路35にハイレベル電圧を出力しているとき、AND回路35はハイレベル電圧を駆動回路34に出力する。同様の場合において、マイコン21がAND回路35にローレベル電圧を出力しているとき、AND回路35はローレベル電圧を駆動回路34に出力する。同様の場合において、マイコン21がAND回路35にPWM信号を出力しているとき、AND回路35は、PWM信号が示す電圧を駆動回路34に出力する。
【0050】
AND回路35が出力している電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、給電スイッチ30において、駆動回路34は、接地電位を基準としたゲートの電圧値を上昇させる。これにより、給電スイッチ30では、ソースの電位を基準としたゲートの電圧値が一定の電圧値以上となり、給電スイッチ30はオンに切替わる。
【0051】
AND回路35が出力している電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、給電スイッチ30において、駆動回路34は、接地電位を基準としたゲートの電圧値を低下させる。これにより、給電スイッチ30では、ソースの電位を基準としたゲートの電圧値が一定の電圧値未満となり、給電スイッチ30はオフに切替わる。駆動回路34は切替え部として機能する。
【0052】
駆動回路34が給電スイッチ30をオンに切替えた場合、バッテリ10の正極から、電流が外側コネクタA1、内側コネクタB1、給電スイッチ30、電流出力回路31、内側コネクタB2、外側コネクタA2、負荷11、外側コネクタA3及び内側コネクタB3の順に流れ、負荷11に電力が供給される。従って、内側コネクタB2,B3は、給電スイッチ30を介いて流れる電流の電流経路に配置されている。駆動回路34が給電スイッチ30をオフに切替えた場合、バッテリ10から負荷11への給電が停止する。
【0053】
負荷11が、コイルを有する誘導性負荷であると仮定する。この場合、バッテリ10から負荷11に電力が供給されている間、負荷11のコイルにエネルギーが蓄積される。給電スイッチ30がオフに切替わった場合、負荷11の外側コネクタA3側の一端から、電流が還流ダイオード33、電流出力回路31及び負荷11の順に流れ、負荷11のコイルはエネルギーを放出する。
【0054】
負荷11がエネルギーを放出している間、還流ダイオード33を介して流れる電流の電流値は一定の傾きで低下する。還流ダイオード33は、負荷11のエネルギーを放出させるためのダイオードである。負荷11が誘導性負荷ではない場合、還流ダイオード33を介して電流が流れることはない。
【0055】
以下では、接地電位を基準としたバッテリ10の正極の電圧値をバッテリ電圧値と記載し、電線Wを介して負荷11に流れる電流の電流値を負荷電流値と記載する。バッテリ電圧値は、内側コネクタB2,B3に負荷11が接続された場合において、給電スイッチ30がオンであるとき、負荷11に印加される電圧の電圧値である。
【0056】
電圧検出回路32は、バッテリ電圧値を検出する。電圧検出回路32は、検出したバッテリ電圧値を示すアナログの電圧情報をマイコン21に出力する。例えば、電圧検出回路32は、2つの抵抗を有する。この場合、2つの抵抗は、バッテリ10の電圧を分圧し、分圧した電圧の電圧値を電圧情報としてマイコン21に出力する。
【0057】
電流出力回路31は、例えば、カレントミラー回路を用いて構成され、電流を可変抵抗36に出力する。電流出力回路31から可変抵抗36に出力される電流の電流値は、負荷電流値を所定数で除算することによって算出される値である。負荷電流値、所定数及び可変抵抗36の可変抵抗値夫々をIc、N及びRvと記載する。可変抵抗36の両端間の電圧値はIc・Rv/Nで表される。「・」は積を表す。以下では、可変抵抗36の両端間の電圧値を両端電圧値と記載する。
【0058】
接地電位を基準とした直流電源38の正極の電圧値である電源電圧値をVdと記載する。コンパレータ37は、電源電圧値Vdと、可変抵抗36の両端電圧値Vb(=Ic・Rv/N)とを比較する。Ic・Rv/N<Vdが満たされる場合、即ち、Ic<N・Vd/Rvが満たされる場合、コンパレータ37は、ローレベル電圧をラッチ回路39に出力する。
【0059】
Ic・Rv/N≧Vdが満たされた場合、即ち、Ic≧N・Vd/Rvが満たされた場合、コンパレータ37は、ハイレベル電圧をラッチ回路39に出力する。負荷電流値Icの電流閾値Ithは、N・Vd/Rvによって表される。所定数N及び電源電圧値Vdは一定値である。このため、電流閾値Ithは、可変抵抗値Rvに応じて変動する。可変抵抗値Rvが大きい程、電流閾値Ithは小さい。
【0060】
マイコン21は、波形値検出部42及び調整部43に、抵抗値を示す抵抗値信号を出力する。調整部43は、マイコン21から抵抗値信号が入力された場合、可変抵抗の可変抵抗値を、入力されて抵抗値信号が示す抵抗値に調整する。従って、可変抵抗値、即ち、電流閾値は、マイコン21によって調整される。マイコン21が抵抗値信号を出力することによって、波形値検出部42には、可変抵抗値が通知される。
【0061】
ラッチ回路39は、コンパレータ37がローレベル電圧を出力している間、即ち、負荷電流値が電流閾値未満である間、ラッチ回路39はローレベル電圧を反転器40に出力する。反転器40は、ラッチ回路39がローレベル電圧を出力している場合、ハイレベル電圧を出力する。前述したように、反転器40がハイレベル電圧を出力している場合、AND回路35は、マイコン21が出力した電圧、又は、PWM信号が示す電圧を駆動回路34に出力し、駆動回路34は、マイコン21の指示に従って、給電スイッチ30をオン又はオフに切替える。
【0062】
コンパレータ37に出力している電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、即ち、負荷電流値が電流閾値以上となった場合、ラッチ回路39は反転器40に出力している電圧を、ローレベル電圧からハイレベル電圧に切替える。これにより、反転器40は、AND回路35に出力している電圧を、ハイレベル電圧からローレベル電圧に切替える。反転器40が出力している電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、AND回路35が出力している電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わり、駆動回路34は、マイコン21からAND回路35への出力に無関係に給電スイッチ30をオフに切替える。
【0063】
ラッチ回路39は、反転器40に出力している電圧をハイレベル電圧に切替えた後においては、コンパレータ37が出力している電圧に無関係に、反転器40にハイレベル電圧を出力し続ける。従って、負荷電流値が電流閾値以上となった後、駆動回路34は、給電スイッチ30をオフに維持する。
【0064】
フィルタ回路41には、可変抵抗36の両端電圧値が入力される。フィルタ回路41は、入力されたアナログの両端電圧値からノイズを除去する。フィルタ回路41は、ノイズが除去されたアナログの両端電圧値を波形値検出部42に出力する。フィルタ回路41は、例えば、抵抗及びキャパシタを用いて構成される。波形値検出部42は、アナログの両端電圧値をデジタルの両端電圧値に周期的に変換し、変換したデジタルの両端電圧値を取得する。
【0065】
両端電圧値VbはIc・Rv/Nで表されるので、負荷電流値IcはN・Vb/Rvで表される。前述したように、可変抵抗値Rvは、マイコン21から波形値検出部42に通知される。波形値検出部42は、周期的に取得した複数の両端電圧値Vb、即ち、複数の負荷電流値Icに基づいて、負荷電流値Icが描く電流波形に関する複数の波形値を検出し、検出した複数の波形値をマイコン21に通知する。
【0066】
図3は複数の波形値の説明図である。
図3には、給電スイッチ30のオン及びオフに係る推移と、負荷電流値の推移とが示されている。これらの推移の横軸は時間を表す。負荷11は抵抗成分を有する。このため、負荷11に電流が流れた場合、負荷11の温度は上昇し、負荷11への通電が停止した場合、負荷11の温度は低下する。負荷11の温度が低いと仮定する。給電スイッチ30がオフからオンに切替わった場合、
図3に示すように、負荷電流値は、ゼロAから急速に上昇し、その後、急速低下する。電流値が急速に上昇して急速に低下する電流は突入電流である。突入電流に係る負荷電流値の上昇速度は、1つの波形値である。
【0067】
突入電流に係る負荷電流値のピーク値が突入電流値である。給電スイッチ30がオフからオンに切替わってから、負荷電流値が突入電流値の(1-(1/e))(=0.632)倍(e:自然対数)に到達するまでの時間が突入電流の時定数である。
【0068】
負荷電流値は、時間の経過とともに安定する。安定した負荷電流値の平均値が定常電流値である。負荷電流値は細かく振動している。この振動幅はリップル電流値である。この振動に係る周期がリップル電流周期である。突入電流値、突入電流の時定数、定常電流値、リップル電流値及びリップル電流周期夫々も1つの波形値である。
【0069】
負荷11が誘導性負荷である場合において、給電スイッチ30をオンからオフに切替えたとき、負荷11はエネルギーを放出し、還流ダイオード33を介して、負荷11に電流が流れる。負荷11がエネルギーを放出している間、負荷電流値は、一定の傾きでゼロAまで減少する。給電スイッチ30がオフに切替わってから、負荷電流値がゼロAに到達するまでの時間が還流時間である。還流時間も1つの波形値である。負荷11が誘導性負荷ではない場合、還流時間はゼロ秒である。突入電流が発生した回数である突入電流回数も1つの波形値である。
【0070】
波形値検出部42は、複数の波形値として、定常電流値、突入電流値、突入電流の時定数、突入電流回数、突入電流の上昇速度、リップル電流値、リップル電流周期及び還流時間をマイコン21に出力する。これらの値はデジタル値である。波形値検出部42は、更に、デジタルの負荷電流値もマイコン21に出力する。
【0071】
図2に示す切替え部46には、検知スイッチ45のオンへの切替えを指示するオン信号と、検知スイッチ45のオフへの切替えを示すオフ信号とがマイコン21から入力される。切替え部46は、オン信号が入力された場合、検知スイッチ45をオンに切替え、オフ信号が入力された場合、検知スイッチ45をオフに切替える。従って、切替え部46は、マイコン21の指示に従って、検知スイッチ45をオン又はオフに切替える。
【0072】
マイコン21には、接地電位を基準とした内側コネクタB2の電圧値が入力される。以下、接地電位を基準とした内側コネクタB2の電圧値をコネクタ電圧値と記載する。マイコン21には、アナログのコネクタ電圧値が入力される。マイコン21は、給電スイッチ30及び検知スイッチ45夫々がオフ及びオンである場合におけるコネクタ電圧値に基づいて、内側コネクタB2,B3への負荷11の接続を検知する。分圧抵抗44の抵抗値は、内側コネクタB2,B3に接続される可能性がある負荷11の抵抗値よりも十分に大きい。
【0073】
給電スイッチ30及び検知スイッチ45夫々がオフ及びオンである場合において、負荷11が接続しているとき、電流が分圧抵抗44及び負荷11の順に流れ、分圧抵抗44及び負荷11によって、分圧抵抗44の一端に印加されている抵抗電圧が分圧される。結果、コネクタ電圧値は、抵抗電圧値Vccよりも十分に低く、基準電圧値未満である。基準電圧値は、一定値であり、予め設定されている。給電スイッチ30及び検知スイッチ45夫々がオフ及びオンである場合において、負荷11の接続が外されているとき、分圧抵抗44に電流が流れることはない。このため、コネクタ電圧値は、抵抗電圧値Vccと略一致し、基準電圧値よりも高い。
【0074】
なお、給電スイッチ30及び検知スイッチ45夫々がオフ及びオンである場合において、負荷11が接続しているとき、負荷11に電圧が印加される。しかしながら、負荷11に印加される電圧の電圧値は十分に低いため、負荷11が作動することはない。
【0075】
温度推定部47は、負荷11の周囲温度である環境温度を推定し、推定した環境温度を示すアナログの温度情報をマイコン21に出力する。温度推定部47は、例えば、推定した環境温度に応じたアナログの電圧値を、アナログの温度情報として、マイコン21に出力する。温度推定部47が推定した環境温度は、車両内の環境温度であり、負荷11の周囲温度だけではなく、例えば、電線Wの周囲温度にも相当する。
【0076】
図4はマイコン21の要部構成を示すブロック図である。マイコン21は、入力部50,51,52,53、出力部54,55,56、A/D変換部57,58,59、タイマ60、記憶部61及び制御部62を有する。入力部50,51,52夫々は、A/D変換部57,58,59に接続されている。入力部53、出力部54,55,56、A/D変換部57,58,59、タイマ60、記憶部61及び制御部62は、内部バス63に接続されている。
【0077】
入力部50は、更に、電圧検出回路32に接続されている。入力部51は、更に、電線Wの中途に接続されている。入力部52は、更に、温度推定部47に接続されている。入力部53は、更に、波形値検出部42に接続されている。出力部54は、更に、AND回路35の一方の入力端に接続されている。出力部55は、更に、波形値検出部42及び調整部43に接続されている。出力部56は、更に、切替え部46に接続されている。
【0078】
電圧検出回路32から入力部50にアナログの電圧情報が入力される。入力部50は、電圧検出回路32から入力されたアナログの電圧情報をA/D変換部57に出力する。A/D変換部57は、入力部50から入力されたアナログの電圧情報をデジタルの電圧情報に変換する。制御部62は、デジタルの電圧情報を、A/D変換部57から取得する。
【0079】
出力部54は、制御部62の指示に従って、ハイレベル電圧、ローレベル電圧又はPWM信号をAND回路35に出力する。制御部62は、PWM信号のデューティも出力部54に指示する。
波形値検出部42は、複数の波形値として、定常電流値、突入電流値、突入電流の時定数、突入電流回数、突入電流の上昇速度、リップル電流値、リップル電流周期及び還流時間を入力部53に出力する。制御部62は、これらの波形値を入力部53から取得する。波形値検出部42は、負荷電流値も入力部53に出力し、制御部62は、負荷電流値を入力部53から取得する。
【0080】
出力部55は、制御部62の指示に従って、抵抗値を示す抵抗値信号を波形値検出部42及び調整部43に出力する。これにより、調整部43は、可変抵抗36の可変抵抗値を、抵抗値信号の抵抗値に調整し、波形値検出部42に可変抵抗値が通知される。
【0081】
出力部56は、制御部62の指示に従って、オン信号及びオフ信号を切替え部46に出力する。前述したように、切替え部46は、オン信号が入力された場合、検知スイッチ45をオンに切替え、オフ信号が入力された場合、検知スイッチ45をオフに切替える。
【0082】
入力部51には、アナログのコネクタ電圧値が入力される。入力部51は、入力されたアナログのコネクタ電圧値をA/D変換部58に出力する。A/D変換部58は、入力部51から入力されたアナログのコネクタ電圧値を、デジタルのコネクタ電圧値に変換する。制御部62は、デジタルのコネクタ電圧値をA/D変換部58から取得する。
【0083】
温度推定部47から入力部52にアナログの温度情報が入力される。入力部52は、温度推定部47から入力されたアナログの温度情報をA/D変換部59に出力する。A/D変換部57は、入力部52から入力されたアナログの温度情報をデジタルの温度情報に変換する。制御部62は、デジタルの温度情報をA/D変換部59から取得する。
【0084】
タイマ60は、制御部62の指示に従って、計時の開始及び終了を行う。タイマ60が計時している計時時間は、制御部62によって、タイマ60から読み出される。
【0085】
記憶部61は不揮発性メモリである。記憶部61には、コンピュータプログラム70、給電制御テーブル71及び波形値テーブル72が記憶されている。
【0086】
制御部62は、処理を実行する処理素子を有する。処理素子は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部62が有する処理素子は、コンピュータプログラム70を実行することによって、負荷11の給電を制御する給電制御処理と、電線Wを異常な温度から保護する電線保護処理と、内側コネクタB2,B3への負荷11の接続を検知する接続検知処理とを実行する。コンピュータプログラム70は、制御部62の処理素子(コンピュータ)に、給電制御処理、電線保護処理及び接続検知処理を実行させるために用いられる。
なお、制御部62が有する処理素子の数は2以上であってもよい。この場合、複数の処理素子が給電制御処理、電線保護処理及び接続検知処理夫々を協同で実行してもよい。
【0087】
また、コンピュータプログラム70は、制御部62の処理素子が読み取り可能に、記憶媒体Eに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Eから読み出されたコンピュータプログラム70が記憶部61に記憶される。記憶媒体Eは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラム70をダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラム70を記憶部61に記憶してもよい。
【0088】
図5は給電制御テーブル71を示す図表である。給電制御テーブル71では、給電フラグフィールド、接続フラグフィールド、種類フィールド、可変抵抗値フィールド、電流閾値フィールド、PWMフラグフィールド、デューティフィールド、禁止フラグフィールド、先行温度差フィールド及び温度閾値フィールドが設けられている。
【0089】
給電フラグフィールドには、給電フラグの値が記憶されている。給電フラグの値は、制御部62によって、ゼロ又は1に設定される。給電フラグの値がゼロであることは、給電スイッチ30がオフであって、負荷11への給電が行われていないことを意味する。給電フラグの値が1であることは、給電スイッチ30がオンであって、負荷11への給電が行われていることを意味する。
【0090】
接続フラグフィールドには、接続フラグの値が記憶されている。接続フラグの値は、制御部62によって、ゼロ又は1に設定される。接続フラグの値がゼロであることは、内側コネクタB2,B3に負荷11が接続されていないことを意味する。接続フラグの値が1であることは、内側コネクタB2,B3に負荷11が接続されていることを意味する。
【0091】
種類フィールドには、負荷11の種類が記憶されている。負荷11の種類として、バルブ、ブラシ付きモータ又はマグネットクラッチ等が挙げられる。負荷11の種類は、制御部62によって更新される。
可変抵抗値フィールドには、可変抵抗36の可変抵抗値が記憶されている。可変抵抗値フィールドに記憶されている可変抵抗値は、制御部62によって更新される。
【0092】
電流閾値フィールドには、電流閾値が記憶されている。電流閾値フィールドに記憶されている電流閾値は、制御部62によって更新される。前述したように、電流閾値Ithは、N・Vd/Rvによって表される。N、Vd及びRv夫々は所定数、電源電圧値及び可変抵抗値である。所定数N及び電源電圧値Vdは定数であるので、電流閾値Ithの決定は、可変抵抗値Rvの決定と等価である。
【0093】
PWMフラグフィールドには、PWMフラグの値が記憶されている。PWMフラグの値は、制御部62によって、ゼロ又は1に設定される。PWMフラグの値がゼロであることは、給電スイッチ30のオン及びオフについてPWM制御を行わないことを意味する。PWMフラグの値が1であることは、給電スイッチ30のオン及びオフについてPWM制御を行うことを意味する。
デューティフィールドには、PWM信号のデューティの値が記憶されている。デューティの値は、制御部62によって更新される。
【0094】
禁止フラグフィールドには、禁止フラグの値が記憶されている。禁止フラグの値は、制御部62によって、ゼロ又は1に設定される。禁止フラグの値がゼロであることは、電線Wを介した給電が許可されていることを意味する。禁止フラグの値が1であることは、電線Wを介した給電が禁止されていることを意味する。
【0095】
制御部62は電線保護処理を繰り返し実行する。制御部62は、電線保護処理では、環境温度と、電線Wの温度との温度差を繰り返し算出する。以下では、電線Wの温度を電線温度と記載する。先行温度差フィールドは、制御部62が先行して算出した温度差が記憶されている。先行温度差は、制御部62によって更新される。
温度閾値フィールドには、電線保護に係る温度閾値が記憶されている。電線保護処理では、電線温度が温度閾値を超えることを防止する。
【0096】
図6は波形値テーブルを示す図表である。制御部62は、接続検知処理において、波形値検出部42から入力部53に入力された各波形値を、バッテリ電圧値が所定電圧値であり、かつ、環境温度が所定温度である場合における波形値に補正する。所定電圧値は例えば12Vである。
【0097】
波形値テーブルには、バッテリ電圧値フィールド、環境温度フィールド、定常電流値フィールド、突入電流値フィールド、時定数フィールド、突入電流回数フィールド、上昇速度フィールド、リップル電流値フィールド、リップル電流周期フィールド及び還流時間フィールドが設けられている。
【0098】
バッテリ電圧値フィールドには、バッテリ電圧値が記憶されている。バッテリ電圧値フィールドのバッテリ電圧値は、制御部62によって更新される。前述したように、制御部62は、A/D変換部57から、バッテリ電圧値を示す電圧情報を取得する。
環境温度フィールドには、環境温度が記憶されている。環境温度フィールドの環境温度は、制御部62によって更新される。前述したように、制御部62は、A/D変換部57から、環境温度を示す温度情報を取得する。
【0099】
定常電流値フィールド、突入電流値フィールド、時定数フィールド、突入電流回数フィールド、上昇速度フィールド、リップル電流値フィールド、リップル電流周期フィールド及び還流時間フィールド夫々には、補正前及び補正後の定常電流値、突入電流値、時定数、突入電流回数、上昇速度、リップル電流値、リップル電流周期及び還流時間が記憶されている。これらのフィールドにおける補正前及び補正後の値は、制御部62によって更新される。
【0100】
図7は給電制御処理の手順を示すフローチャートである。制御部62は、給電制御処理を周期的に実行する。給電制御処理の説明では、反転器40がハイレベル電圧を出力している、即ち、負荷電流値が電流閾値未満であると仮定する。反転器40がローレベル電圧を出力している場合、出力部54の出力に無関係に、駆動回路34は給電スイッチ30をオフに維持する。
【0101】
制御部62は、給電制御テーブル71の禁止フラグの値がゼロであるか否かを判定する(ステップS1)。制御部62は、禁止フラグの値がゼロである、即ち、電線Wを介した給電が許可されていると判定した場合(S1:YES)、接続フラグの値が1であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0102】
制御部62は、禁止フラグの値がゼロではない、即ち、禁止フラグの値が1であると判定した場合(S1:NO)、又は、接続フラグの値が1ではない、即ち、接続フラグの値がゼロであると判定した場合(S2:NO)、給電制御処理を終了する。前述したように、禁止フラグの値が1であることは、電線Wを介した給電が禁止されていることを意味する。接続フラグの値がゼロであることは、内側コネクタB2,B3に負荷11が接続されていないことを意味する。
【0103】
制御部62は、接続フラグの値が1である、即ち、内側コネクタB2,B3に負荷11が接続されていると判定した場合(S2:YES)、負荷11への給電を開始するか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3では、制御部62は、例えば、図示しない入力部に、給電の開始を指示する開始信号が入力された場合、給電を開始すると判定し、入力部に開始信号が入力されていない場合、給電を開始しないと判定する。
【0104】
制御部62は、給電を開始しないと判定した場合(S3:NO)、負荷11への給電を終了するか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、制御部62は、例えば、図示しない入力部に、給電の終了を指示する終了信号が入力された場合、給電を終了すると判定し、入力部に終了信号が入力されていない場合、給電を終了しないと判定する。制御部62は、給電を終了しないと判定した場合(S4:NO)、給電制御処理を終了する。
【0105】
制御部62は、給電を終了すると判定した場合(S4:YES)、給電制御テーブル71の給電フラグの値をゼロに設定し(ステップS5)、出力部54に指示してAND回路35にローレベル電圧を出力させる(ステップS6)。これにより、AND回路35は駆動回路34にローレベル電圧を出力し、駆動回路34は給電スイッチ30をオフに切替える。出力部54にローレベル電圧の出力を指示することは、駆動回路34に給電スイッチ30のオンへの切替えを指示することに相当する。制御部62は、ステップS6を実行した後、給電制御処理を終了する。
【0106】
制御部62は、給電を開始すると判定した場合(S3:YES)、給電制御テーブル71の給電フラグの値を1に設定し(ステップS7)、出力部55に指示して、抵抗値が給電制御テーブル71の可変抵抗値である抵抗値信号を出力させる(ステップS8)。これにより、調整部43は、可変抵抗36の可変抵抗値を、給電制御テーブル71で示されている可変抵抗値に調整する。結果、電流閾値は、給電制御テーブル71で示されている電流閾値に変更される。前述したように、給電制御テーブル71の可変抵抗値は波形値検出部42に通知される。
【0107】
制御部62は、ステップS8を実行した後、給電制御テーブル71のPWMフラグの値がゼロであるか否かを判定する(ステップS9)。制御部62は、PWMフラグの値がゼロである、即ち、PWM制御を行わないと判定した場合(S9:YES)、出力部54に指示して、AND回路35にハイレベル電圧を出力させる(ステップS10)。これにより、AND回路35が駆動回路34に出力している電圧がハイレベル電圧に切替わり、駆動回路34は給電スイッチ30をオンに切替える。結果、負荷11に電力が供給される。出力部54にハイレベル電圧の出力を指示することは、駆動回路34に給電スイッチ30のオンへの切替えを指示することに相当する。
【0108】
制御部62は、PWMフラグの値がゼロではない、即ち、PWMフラグの値が1であると判定した場合(S9:NO)、出力部54に指示して、AND回路35にPWM信号を出力させる(ステップS11)。これにより、AND回路35はPWM信号が示す電圧を駆動回路34に出力し、駆動回路34は、PWM信号が示す電圧に従って、給電スイッチ30のオン及びオフへの切替えを交互に行う。これにより、負荷11に電力が供給される。PWM信号のデューティは、給電制御テーブル71に記憶されているデューティに調整される。
【0109】
出力部54にPWM信号の出力を指示することは、駆動回路34に給電スイッチ30のオン及びオフへの切替えを交互に指示することに相当する。前述したように、PWMフラグの値が1であることは、PWM制御を行うことを意味する。
制御部62は、ステップS10,S11の一方を実行した後、給電制御処理を終了する。
【0110】
以上のように、給電制御処理では、マイコン21の制御部62は、給電制御テーブル71に示す給電制御条件に応じた給電制御を行う。給電制御条件は、負荷11への給電制御に関する条件であり、具体的には、可変抵抗値(電流閾値)、PWMフラグの値及びPWM信号のデューティを含む。給電制御条件は、接続検知処理において適宜変更される。
【0111】
図8は、電線保護処理の手順を示すフローチャートである。制御部62は、電線保護処理を周期的に実行する。電線保護処理では、制御部62は、まず、入力部53から負荷電流値を取得し(ステップS21)、A/D変換部57から温度情報を取得する(ステップS22)。次に、制御部62は、給電制御テーブル71に記憶されている先行温度差を読み出す(ステップS23)。
【0112】
次に、制御部62は、ステップS21で取得した負荷電流値と、ステップS22で取得した温度情報が示す環境温度と、ステップS23で読み出した先行温度差とに基づいて、電線Wの電線温度と、車両内の環境温度との温度差を算出する(ステップS24)。ステップS23で読み出す先行温度差は、前回の電線保護処理で算出した温度差である。次に、制御部62は、ステップS24で算出した温度差にステップS22で取得した環境温度を加算することによって、電線温度を算出する(ステップS25)。
【0113】
次に、制御部62は、ステップS25で算出した電線温度が給電制御テーブル71の温度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS26)。制御部62は、電線温度が温度閾値以上であると判定した場合(S26:YES)、禁止フラグの値を1に設定し(ステップS27)、給電フラグの値をゼロに設定し(ステップS28)、出力部54に指示して、AND回路35にローレベル電圧を出力させる(ステップS29)。
【0114】
これにより、AND回路35は、駆動回路34に出力している電圧をローレベル電圧に切替え、駆動回路34は給電スイッチ30をオフに切替える。結果、負荷11への給電が停止する。駆動回路34が給電スイッチ30をオフに切替えた後、禁止フラグの値は1に設定されているため、給電制御処理で給電スイッチ30がオンに切替えられることはない。
【0115】
制御部62は、電線温度が温度閾値未満であると判定した場合(S26:NO)、又は、ステップS29を実行した後、給電制御テーブル71の先行温度差を、ステップS24で算出した温度差に更新し(ステップS30)、電線保護処理を終了する。
【0116】
以上のように、電線温度が温度閾値以上となった場合、駆動回路34は給電スイッチ30をオフに切替え、給電スイッチ30のオフを維持する。このため、電線温度が温度閾値を超えることはない。
なお、先行温度差は、先行して算出した温度差であればよいので、前回の電線保護処理で算出した温度差に限定されない。先行温度差は、前々回の電線保護処理で算出した温度差であってもよい。
【0117】
図9は、接続検知処理の手順を示すフローチャートである。制御部62は接続検知処理を周期的に実行する。制御部62は、給電制御テーブル71の禁止フラグの値がゼロであるか否かを判定する(ステップS41)。制御部62は、禁止フラグの値がゼロである、即ち、負荷11への給電が許可されていると判定した場合(S41:YES)、給電フラグの値がゼロであるか否かを判定する(ステップS42)。
【0118】
制御部62は、禁止フラグの値がゼロではない、即ち、禁止フラグの値が1であると判定した場合(S41:NO)、又は、給電フラグの値がゼロではない、即ち、給電フラグの値が1であると判定した場合(S42:NO)、接続検知処理を終了する。従って、負荷11への給電が禁止されている場合、又は、給電スイッチ30がオンである場合、接続検知処理を終了する。
【0119】
制御部62は、給電フラグの値がゼロである、即ち、給電スイッチ30がオフであると判定した場合(S42:YES)、出力部55に指示して、切替え部46にオン信号を出力させる(ステップS43)。これにより、切替え部46は検知スイッチ45をオンに切替え、分圧抵抗44及び負荷11が分圧した電圧の電圧値がアナログのコネクタ電圧値として入力部51に出力される。入力部51に入力されたアナログのコネクタ電圧値は、A/D変換部58によってデジタルのコネクタ電圧値に変換される。
【0120】
制御部62は、ステップS43を実行した後、コネクタ電圧値をA/D変換部58から取得し(ステップS44)、出力部56に指示して、切替え部46にオフ信号を出力させる(ステップS45)。これにより、切替え部46は検知スイッチ45をオフに切替える。
【0121】
次に、制御部62は、ステップS44で取得したコネクタ電圧値に基づいて、内側コネクタB2,B3に負荷11が接続されているか否かを判定する(ステップS46)。ステップS46では、制御部62は、コネクタ電圧値が基準電圧値未満である場合、負荷11が接続されていると判定する。制御部62は、コネクタ電圧値が基準電圧値以上である場合、負荷11が接続されていないと判定する。制御部62は、ステップS46を実行することによって、内側コネクタB2,B3への負荷11の接続を検知する。制御部62は接続検知部として機能する。
【0122】
制御部62は、負荷11が接続されていないと判定した場合(S46:NO)、給電制御テーブル71の接続フラグの値が1であるか否かを判定する(ステップS47)。ここで、接続フラグの値が1であることは、前回の接続検知処理が終了した時点では負荷11が接続されていたことを意味する。
【0123】
制御部62は、接続フラグの値が1ではない、即ち、接続フラグの値がゼロであると判定した場合(S47:NO)、接続検知処理を終了する。制御部62は、接続フラグの値が1であると判定した場合(S47:YES)、接続フラグの値をゼロに設定し(ステップS48)、接続検知処理を終了する。
【0124】
制御部62は、負荷11が接続されていると判定した場合、即ち、負荷11の接続を検知した場合(S46:YES)、給電制御テーブル71の接続フラグの値がゼロであるか否かを判定する(ステップS49)。ここで、接続フラグの値がゼロであることは、前回の接続検知処理が終了した時点では、負荷11が接続されていなかったことを意味する。
【0125】
制御部62は、接続フラグの値がゼロではない、即ち、接続フラグの値が1であると判定した場合(S49:NO)、接続検知処理を終了する。制御部62は、接続フラグの値がゼロであると判定した場合(S49:YES)、接続フラグの値を1に設定し(ステップS50)、波形値テーブル72に記憶される複数の波形値を更新する更新処理を実行し(ステップS51)、接続検知処理を終了する。
【0126】
図10及び
図11は更新処理の手順を示すフローチャートである。更新処理の説明では、反転器40がハイレベル電圧を出力している、即ち、負荷電流値が電流閾値未満であると仮定する。前述したように、反転器40がローレベル電圧を出力している場合、出力部54の出力に無関係に、駆動回路34は給電スイッチ30をオフに維持する。
【0127】
更新処理では、制御部62は、まず、出力部54に指示して、AND回路35にハイレベル電圧を出力させる(ステップS61)。これにより、AND回路35は駆動回路34にハイレベル電圧を出力し、駆動回路34は給電スイッチ30をオフからオンに切替え、電流がバッテリ10から負荷11に流れる。
【0128】
次に、制御部62は、タイマ60に指示して計時を開始させ(ステップS62)、タイマ60が計時している計時時間がオン時間以上であるか否かを判定する(ステップS63)。オン時間は、一定値であり、予め設定されている。制御部62は、計時時間がオン時間未満であると判定した場合(S63:NO)、ステップS63を再び実行し、計時時間がオン時間以上となるまで待機する。制御部62は、計時時間がオン時間以上であると判定した場合(S63:YES)、タイマ60に指示して計時を終了させる(ステップS64)。
【0129】
次に、制御部62は、出力部54に指示して、AND回路35にローレベル電圧を出力させる(ステップS65)。これにより、AND回路35は駆動回路34にローレベル電圧を出力し、駆動回路34は給電スイッチ30をオンからオフに切替え、バッテリ10から負荷11への給電が停止する。
【0130】
次に、制御部62は、タイマ60に指示して、再び、計時を開始させ(ステップS66)、タイマ60が計時している計時時間がオフ時間以上であるか否かを判定する(ステップS67)。オフ時間も、一定値であり、予め設定されている。制御部62は、計時時間がオフ時間未満であると判定した場合(S67:NO)、ステップS67を再び実行し、計時時間がオフ時間以上となるまで待機する。制御部62は、計時時間がオフ時間以上であると判定した場合(S67:YES)、タイマ60に指示して計時を終了させる(ステップS68)。
【0131】
以上のように、更新処理が開始されてからオン時間が経過するまで、給電スイッチ30はオンに維持され、その後、オフ時間が経過するまで給電スイッチ30はオフに維持される。これにより、負荷電流値は、
図3に示すような電流波形を描く。前述したように、波形値検出部42は、複数の波形値を検出し、検出した複数の波形値を入力部53に出力する。
【0132】
制御部62は、ステップS68を実行した後、入力部53から複数の波形値を取得する(ステップS69)。ステップS69で取得される複数の波形値は、定常電流値、突入電流値、突入電流の時定数、突入電流回数、突入電流の上昇速度、リップル電流値、リップル電流周期及び還流時間である。次に、制御部62は、A/D変換部57から電圧情報を取得し(ステップS70)、A/D変換部59から温度情報を取得する(ステップS71)。次に、制御部62は、給電制御テーブル71の補正前の複数の波形値、バッテリ電圧値及び環境温度を更新する(ステップS72)。
【0133】
具体的には、制御部62は、補正前の複数の波形値を、ステップS69で取得した複数の波形値に更新する。制御部62は、給電制御テーブル71のバッテリ電圧値を、ステップS70で取得した電圧情報が示すバッテリ電圧値に更新し、給電制御テーブル71の環境温度を、ステップS71で取得した温度情報が示す環境温度に更新する。
【0134】
次に、制御部62は、波形値テーブル72に記憶されているバッテリ電圧値及び環境温度に基づいて、波形値テーブル72の補正前の複数の波形値を、バッテリ電圧値が所定電圧値であり、かつ、環境温度が所定温度である場合における複数の波形値に補正する(ステップS73)。制御部62は、補正部及び第2の補正部としても機能する。次に、制御部62は、波形値テーブル72における補正後の複数の波形値をステップS73で補正した複数の波形値に更新する(ステップS74)。
【0135】
次に、制御部62は、波形値テーブル72における補正後の複数の波形値に基づいて、負荷11の種類を特定する(ステップS75)。一例として、負荷11に係る複数の種類について、各種類に対応する複数の波形値が記憶部61に予め記憶されている。ステップS75では、制御部62は、各種類に対応する複数の波形値について、波形値テーブル72に係る補正後の複数の波形値との相関値を算出する。制御部62は、負荷11の種類を、前述した複数の種類の中で、算出した相関値が示す類似度が最も高い種類に特定する。
【0136】
もう1つの例として、複数の波形値と負荷11の種類との関係を学習した学習モデルを用いて負荷11の種類を特定する。学習モデルは、例えば、ニュートラルネットワークによって構成され、入力層、複数の中間層及び出力層によって構成される。各層のノードは隣接する層のノードと接続されている。波形値データ及び種類データを含む複数の教師データを用いて、複数の波形値と負荷11の種類との関係を予め学習モデルに学習させておく。ステップS75では、制御部62は、波形値テーブル72における補正後の複数の波形値を示す波形値データを学習モデルの入力層に入力し、学習モデルの出力層から出力された出力値に基づいて、負荷11の種類を特定する。出力層の出力値は、複数の種類夫々について、実際の負荷11の種類に該当する確率を示す。制御部62は特定部としても機能する。
次に、給電制御テーブル71に記憶されている負荷11の種類をステップS75で特定した種類に更新する(ステップS76)。
【0137】
次に、制御部62は、給電制御テーブル71における種類と、波形値テーブル72における補正後の複数の波形値とに基づいて、給電制御条件を決定する(ステップS77)。給電制御条件は、具体的には、可変抵抗値、電流閾値、PWMフラグの値及びPWM信号のデューティを含む。制御部62は決定部としても機能する。
例えば、負荷11に係る複数の種類夫々について、給電制御に関する条件が記憶部61に予め記憶されている。制御部62は、ステップS77において、給電制御条件を、ステップS75で特定した負荷11の種類に対応する条件に決定する。
【0138】
前述したように、電流閾値Ith及び可変抵抗値Rvは、Ith=N・Vd/Rvの関係を満たす。N及びVd夫々は、所定数及び電源電圧値であり、一定値である。PWMフラグの値を決定することは、給電スイッチ30のオン及びオフについて、PWM制御を行うか否かを決定することに相当する。
【0139】
次に、制御部62は、給電制御テーブル71の給電制御条件を、ステップS77で決定した給電制御条件に更新する(ステップS78)。制御部62は、ステップS78を実行した後、更新処理を終了し、処理を接続検知処理に戻す。前述したように、制御部62は、更新処理を終了した場合、接続検知処理も終了する。
【0140】
以上のように、接続検知処理では、制御部62は、内側コネクタB2,B3に負荷11が接続された場合、この接続を検知し、更新処理を実行する。更新処理では、制御部62は、駆動回路34に給電スイッチ30をオフからオンに切替えさせ、その後、駆動回路34に給電スイッチ30をオンからオフに切替えさせる。これによって得られた複数の波形値に基づいて、制御部62は、給電制御条件を決定し、給電制御テーブル71の給電制御条件を更新する。
【0141】
このため、内側コネクタB2,B3に接続される負荷11が変更された場合、負荷電流値の電流波形が変わるので、給電制御テーブル71の給電制御条件が即時に更新される。このため、給電制御条件の変更に必要な時間は短い。
【0142】
なお、給電制御条件の決定に用いる複数の波形値、即ち、波形値テーブル72に記憶されている複数の波形値は、定常電流値、突入電流値、突入電流の時定数、突入電流回数、負荷電流値の上昇速度、リップル電流値、リップル電流周期及び還流時間に限定されない。また、複数の波形値には、定常電流値、突入電流値、突入電流の時定数、突入電流回数、負荷電流値の上昇速度、リップル電流値、リップル電流周期及び還流時間の全てが含まれていなくてもよい。更に、波形値の数は、7に限定されず、1~6のいずれか、又は、8以上であってもよい。
【0143】
また、給電制御条件に含まれる項目は、可変抵抗値、電流閾値、PWMフラグの値及びデューティに限定されない。例えば、温度閾値が給電制御条件の項目として含まれてもよい。更に、温度推定部47ではなく、マイコン21の制御部62が、負荷11に関する種々のパラメータの値に基づいて、負荷11の周囲温度である環境温度を推定してもよい。
【0144】
また、波形値テーブル72に記憶されている複数の波形値の中に、環境温度に依存する波形値、例えば、突入電流値が含まれていない場合、環境温度に基づく補正は不要である。更に、波形値テーブル72に記憶されている複数の波形値の中に、バッテリ電圧値に依存する波形値が含まれていない場合、バッテリ電圧値に基づく補正は不要である。
【0145】
また、給電スイッチ30は、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFET、バイポーラトランジスタ又はリレー接点等であってもよい。
【0146】
開示された本実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0147】
1 電源システム
10 バッテリ
11 負荷
12 給電制御装置
20 制御機
21 マイコン
30 給電スイッチ
31 電流出力回路
32 電圧検出回路
33 還流ダイオード
34 駆動回路(切替え部)
35 AND回路
36 可変抵抗
37 コンパレータ
38 直流電源
39 ラッチ回路
40 反転器
41 フィルタ回路
42 波形値検出部
43 調整部
44 分圧抵抗
45 検知スイッチ
46 切替え部
47 温度推定部
50,51,52,53 入力部
54,55,56 出力部
57,58,59 変換部
60 タイマ
61 記憶部
62 制御部(決定部、接続検知部、補正部、第2の補正部、特定部)
63 内部バス
70 コンピュータプログラム
71 給電制御テーブル
72 波形値テーブル
A1,A2,A3 外側コネクタ
B1,B2,B3 内側コネクタ
E 記憶媒体
W 電線