(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】X線撮影装置およびX線撮影装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A61B6/00 331E
A61B6/00 350S
A61B6/00 360B
(21)【出願番号】P 2018166137
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴則
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524458(JP,A)
【文献】特開2005-319207(JP,A)
【文献】特開2013-192569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0051648(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0206808(US,A1)
【文献】特表2013-505766(JP,A)
【文献】特開2018-129738(JP,A)
【文献】特開2015-009126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線発生部と、前記被検体を透過した前記X線発生部からのX線を検出するX線検出部とを含み、前記被検体のX線画像を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影され前記被検体を透視する前記X線画像であるとともに、特徴点画像を含む透視画像を取得する透視画像取得部と、
前記透視画像と、前記透視画像が撮影された時点よりも前に撮影され、前記透視画像に合成される前記X線画像である合成対象画像とを合成して合成画像を生成する画像合成部と、
前記特徴点画像を含み、前記透視画像が撮影される時点よりも前に撮影された前記X線画像を基準画像として取得する基準画像取得部と、
前記基準画像および前記透視画像の各々から前記特徴点画像を抽出するとともに、抽出された前記基準画像の前記特徴点画像から、抽出された前記透視画像の前記特徴点画像への移動量に基づく特徴点の移動情報を取得し、
前記特徴点の移動情報に基づいて補正された前記基準画像
と、前記透視画像
とに基づいて、
補正された前記基準画像に属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動方向および移動量を取得し、取得した前記移動方向および前記移動量を平滑化した情報を前記画素の移動情報として取得する移動情報取得部とを備え、
前記画像合成部は、前記特徴点の移動情報と前記画素の移動情報とに基づいて、前記合成対象画像もしくは前記透視画像を補正するとともに、補正された前記合成対象画像と前記透視画像とを合成もしくは前記合成対象画像と補正された前記透視画像とを合成して前記合成画像を生成するように構成されている、X線撮影装置。
【請求項2】
前記透視画像取得部は、前記透視画像をリアルタイムで逐次的に生成されるライブ画像として取得するように構成されており、
前記画像合成部は、前記特徴点の移動情報と前記画素の移動情報とに基づいて、前記合成対象画像もしくは前記ライブ画像を補正するとともに、前記補正された合成対象画像と前記ライブ画像とを合成もしくは前記合成対象画像と補正された前記ライブ画像とを合成して前記合成画像を生成するように構成されている、請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記画像合成部は、前記ライブ画像が前記透視画像取得部により取得される度に、前記特徴点の移動情報と前記画素の移動情報とに基づいて、前記合成対象画像もしくは前記ライブ画像を補正して、補正された前記合成対象画像と前記ライブ画像とを合成もしくは前記合成対象画像と補正された前記ライブ画像とを合成して前記合成画像を生成するように構成されている、請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記画像合成部は、前記被検体の下肢の血管に造影剤を投与した状態の前記X線画像である造影画像と、前記被検体の血管に造影剤を投与しない状態の前記X線画像である非造影画像との差分画像を、前記合成対象画像として取得するとともに、前記特徴点の移動情報と前記画素の移動情報とに基づいて、前記差分画像もしくは前記ライブ画像を補正して、補正された前記差分画像と前記ライブ画像とを合成もしくは前記差分画像と補正された前記ライブ画像とを合成して前記合成画像を生成するように構成されている、請求項2または3に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記画像合成部は、前記補正された差分画像の少なくとも一部を白黒反転処理した反転画像と前記ライブ画像とを合成するか、もしくは、前記差分画像の少なくとも一部を白黒反転処理した反転画像と、前記補正されたライブ画像とを合成して前記合成画像を生成するように構成されている、請求項4に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記画像合成部は、前記反転画像と、前記被検体内に挿入されたカテーテル、ステントまたはガイドワイヤの少なくとも1つが映し出された画像を含む前記ライブ画像とを合成して前記合成画像を生成するように構成されている、請求項5に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記基準画像取得部は、前記合成対象画像の撮影位置と略同一の撮影位置において、前記透視画像よりも前に撮影された前記ライブ画像を前記基準画像として取得するように構成されている、請求項4~6のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記基準画像取得部は、前記造影画像を前記基準画像として取得するように構成されている、請求項4~6のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記基準画像取得部は、前記非造影画像を前記基準画像として取得するように構成されている、請求項4~6のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項10】
前記移動情報取得部は、前記基準画像の前記特徴点画像からの前記透視画像の前記特徴点画像への移動量が、移動量しきい値を超えた場合に、前記特徴点の移動情報に基づいて、前記基準画像を補正するとともに、補正された前記基準画像および前記透視画像に基づいて、前記画素の移動情報を取得するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項11】
前記移動情報取得部は、前記基準画像から複数の前記特徴点画像を抽出するとともに、前記透視画像から複数の前記特徴点画像を抽出し、前記基準画像の前記特徴点画像からの前記透視画像の前記特徴点画像への移動量の平均値分、前記基準画像を移動させるように補正するとともに、補正された前記基準画像および前記透視画像に基づいて、前記画素の移動情報を取得するように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項12】
前記移動情報取得部は、
前記特徴点の移動情報に基づいて補正された前記基準画像
と、前記透視画像
とに基づいて、
補正された前記基準画像に属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動方向および移動量を表す移動マップを取得するとともに、前記移動マップの空間方向の高周波成分が抑制された平滑化移動マップを前記画素の移動情報として取得するように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項13】
被検体を透視するX線画像であり、かつ、特徴点画像を含む透視画像を取得するとともに、前記透視画像が撮影される時点よりも前に撮影されたX線画像であり、前記特徴点画像を含む基準画像を取得し、
前記基準画像および前記透視画像の各々から前記特徴点画像を抽出し、
抽出された前記基準画像の前記特徴点画像から、抽出された前記透視画像の前記特徴点画像への移動量に基づく特徴点の移動情報を取得するとともに、
前記特徴点の移動情報に基づいて補正された前記基準画像
と、前記透視画像
とに基づいて、
補正された前記基準画像に属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動方向および移動量を取得し、取得した前記移動方向および前記移動量を平滑化した情報を前記画素の移動情報として取得し、
前記特徴点の移動情報と前記画素の移動情報とに基づいて、前記被検体のX線画像である合成対象画像もしくは前記透視画像を補正し、
補正された前記合成対象画像と前記透視画像とを合成もしくは前記合成対象画像と補正された前記透視画像とを合成して合成画像を生成する、X線撮影装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置およびX線撮影装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成対象画像と透視画像とを合成して合成画像を生成するX線撮影装置およびX線画像処理方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ロードマップデータ(合成対象画像)と透視画像データ(透視画像)とを重畳表示するX線画像診断装置が開示されている。このX線画像診断装置では、透視画像データを撮像した撮像系の位置と、透視画像データに重畳表示されるロードマップデータを撮像した撮像系の位置との位置ずれを抑制するために、透視画像データを撮像した撮像系の位置に最も近い撮像系の位置で撮像されたロードマップデータが、複数の参照画像データのうちから抽出される。詳細には、このX線画像診断装置には、位置検出手段と、移動判定手段と、ロードマップデータ検索手段と、表示手段とが設けられている。位置検出手段は、撮像系の位置情報を検出するように構成されている。移動判定手段は、透視画像データの収集の際に、位置検出手段が検出した位置情報に基づいて、撮像系の移動が停止されている状態を示す移動停止状態を判定するように構成されている。ロードマップデータ検索手段は、複数の参照画像データのうちから、移動停止状態であると判定された時点における撮影系の位置情報に最も近い位置情報を有する参照画像データをロードマップデータとして抽出するように構成されている。そして、表示手段は、ロードマップデータと透視画像データとを重畳表示(合成画像を表示)するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているようなX線画像診断装置では、複数のX線画像を撮影している間に、被検体が撮像系に対して移動する(体動する)場合がある。このため、上記特許文献1に記載のX線画像診断装置では、移動停止状態であると判定された時点の透視画像データに映された被検体の撮像系に対する位置と、ロードマップデータが撮影された時のロードマップデータに映された被検体の撮像系に対する位置とが、被検体の移動に起因してずれる(被検体と撮像系との位置ずれが発生する)場合があると考えられる。この場合、合成画像を構成する画像として、透視画像データの撮像系の位置に最も近いロードマップデータを抽出した場合でも、被検体の移動に起因して、互いにずれた被検体のX線画像同士が重畳されて表示されてしまうと考えられる。この場合、ロードマップデータ(X線画像)を再び撮影し直す作業が必要となり、被検体に対するX線の被ばく量が増大する。また、造影剤を用いる場合には造影剤の使用量が増大する。したがって、上記特許文献1に記載されているような従来のX線画像診断装置では、互いに異なる時点で撮影された合成対象画像と透視画像とを合成して合成画像を生成する場合に、適切に合成画像を生成することができず、被検体に対するX線の被ばく量が増大する場合があるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、互いに異なる時点で撮影された合成対象画像と透視画像とを合成して合成画像を生成する際に被検体が合成対象画像の撮影後に動いた場合にも、適切に合成画像を生成することにより、被検体に対するX線の被ばく量の増大を抑制することが可能なX線撮影装置およびX線撮影装置の作動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるX線撮影装置は、被検体にX線を照射するX線発生部と、被検体を透過したX線発生部からのX線を検出するX線検出部とを含み、被検体のX線画像を撮影する撮影部と、撮影部により撮影され被検体を透視するX線画像であるとともに、特徴点画像を含む透視画像を取得する透視画像取得部と、透視画像と、透視画像が撮影された時点よりも前に撮影され、透視画像に合成されるX線画像である合成対象画像とを合成して合成画像を生成する画像合成部と、特徴点画像を含み、透視画像が撮影される時点よりも前に撮影されたX線画像を基準画像として取得する基準画像取得部と、基準画像および透視画像の各々から特徴点画像を抽出するとともに、抽出された基準画像の特徴点画像から、抽出された透視画像の特徴点画像への移動量に基づく特徴点の移動情報を取得し、特徴点の移動情報に基づいて補正された基準画像と、透視画像とに基づいて、補正された基準画像に属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動方向および移動量を取得し、取得した移動方向および移動量を平滑化した情報を画素の移動情報として取得する移動情報取得部とを備え、画像合成部は、特徴点の移動情報と画素の移動情報とに基づいて、合成対象画像もしくは透視画像を補正するとともに、補正された合成対象画像と透視画像とを合成もしくは合成対象画像と補正された透視画像とを合成して合成画像を生成するように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるX線撮影装置では、上記のように、移動情報取得部を、透視画像が撮影される時点よりも前に撮影されたX線画像である基準画像の特徴点画像、および、透視画像の特徴点画像に基づいて、特徴点の移動情報を取得するとともに、画素の移動情報を取得するように構成する。そして、画像合成部を、特徴点の移動情報と画素の移動情報とに基づいて、合成対象画像もしくは透視画像を補正するとともに、補正された合成対象画像と透視画像とを合成もしくは合成対象画像と補正された透視画像とを合成して合成画像を生成するように構成する。これにより、合成対象画像および基準画像が撮影された後に、被検体が撮影部に対して移動した場合でも、被検体の移動に対応するように合成対象画像もしくは透視画像を補正することができる。このため、被検体の特徴点の位置が互いにずれたX線画像同士(合成対象画像と透視画像と)が合成されるのを抑制することができる。この結果、互いに異なる時点で撮影された合成対象画像と透視画像(X線画像)とを合成して合成画像を生成する際に被検体が合成対象画像の撮影後に動いた場合にも、適切に(画像同士の位置ずれが抑制された)合成画像を生成することができる。これにより、合成対象画像を再び撮影し直す場合が少なくなるので、被検体に対するX線の被ばく量が増大するのを抑制することができる。
【0009】
ここで、被検体の比較的大きな移動(特徴点自体の移動)に対する補正のみでは、比較的細かい被検体の動きに追従するのは容易ではなく、被検体の比較的小さな移動(画素単位の移動)に対する補正のみでは、被検体の特徴点自体の大きな移動に対応するのは容易ではない。これに対して、本発明では、上記のように、移動情報取得部を、合成対象画像を補正するための情報として、特徴点の移動情報と、画素の移動情報とを取得するように構成する。これにより、基準画像および透視画像における比較的広範囲(マクロ)な移動情報として、特徴点の移動情報を取得するので、比較的広範囲な被検体の移動(比較的大きな移動)に対する補正を行うことができる。そして、基準画像および透視画像における比較的狭い範囲(ミクロ)の移動情報として、画素の移動情報を取得するので、比較的狭い範囲の被検体の移動(比較的小さな移動)に対する補正を行うことができる。これらの結果、相互に利点・欠点を補完し合う、被検体の比較的大きな移動に対する補正と、被検体の比較的小さな移動に対する補正との両方を行うことによって、より一層適切に合成対象画像を補正することができる。したがって、互いに異なる時点で撮影された合成対象画像とX線画像とを合成して合成画像を生成する場合にも、より一層適切に(画像同士の位置ずれがより一層抑制された)合成画像を生成することができる。
【0010】
上記第1の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、透視画像取得部は、透視画像をリアルタイムで逐次的に生成されるライブ画像として取得するように構成されており、画像合成部は、特徴点の移動情報と画素の移動情報とに基づいて、合成対象画像もしくはライブ画像を補正するとともに、補正された合成対象画像とライブ画像とを合成もしくは合成対象画像と補正されたライブ画像とを合成して合成画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、ライブ画像の変化に対応させて、合成対象画像もしくはライブ画像を補正することができるので、リアルタイムで表示され逐次的に変化するライブ画像と、合成対象画像とを合成する場合でも、適切に合成画像を生成することができる。なお、本願明細書では、「リアルタイム」とは、即時または同時を意味するのみならず、術者(操作者)がX線撮影装置を使用している期間(操作または撮影されたX線画像を視認可能な状態)を意味するものとする。また、「逐次的に生成されるライブ画像」とは、たとえば、連続して取得される複数のX線画像(たとえば、動画)のうちの1つのフレームごとに更新されながら表示されるX線画像を意味するものとして記載している。
【0011】
この場合、好ましくは、画像合成部は、ライブ画像が透視画像取得部により取得される度に、特徴点の移動情報と画素の移動情報とに基づいて、合成対象画像もしくはライブ画像を補正して、補正された合成対象画像とライブ画像とを合成もしくは合成対象画像と補正されたライブ画像とを合成して合成画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、更新されるライブ画像に対応させて合成対象画像もしくはライブ画像を逐次的に更新するように補正することができる。このため、逐次的に変化するライブ画像(たとえば、動画)と合成対象画像とを合成する場合でも、より一層適切に(画像同士の位置ずれが抑制された)合成画像を生成することができる。この結果、術者が動画として表示される合成画像を視認しながら、被検体の治療を行う場合にも、より効果的に位置ずれが抑制された合成画像を生成することができる。
【0012】
上記合成対象画像とライブ画像とを合成して合成画像を生成するX線撮影装置において、好ましくは、画像合成部は、被検体の下肢の血管に造影剤を投与した状態のX線画像である造影画像と、被検体の血管に造影剤を投与しない状態のX線画像である非造影画像との差分画像を、合成対象画像として取得するとともに、特徴点の移動情報と画素の移動情報とに基づいて、差分画像もしくはライブ画像を補正して、補正された差分画像とライブ画像とを合成もしくは差分画像と補正されたライブ画像とを合成して合成画像を生成するように構成されている。ここで、合成対象画像とライブ画像とを合成して合成画像を生成するX線撮影装置では、術者がこの合成画像を視認しながら、被検体の下肢の血管にカテーテルを挿入することにより各種の治療を行うことが可能となる。この場合、血管を示す画像のみにより構成される差分画像(造影画像と非造影画像との差分画像)が、合成対象画像として用いられる。この点を考慮して、本発明では、画像合成部を、差分画像もしくはライブ画像を補正して、補正された差分画像とライブ画像とを合成もしくは差分画像と補正されたライブ画像とを合成して合成画像を生成するように構成する。これにより、術者が被検体の下肢の血管にカテーテルを挿入することにより各種の治療を行う際に、画像同士の位置ずれが効果的に抑制された合成画像を生成することが可能なX線撮影装置を提供することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、画像合成部は、補正された差分画像の少なくとも一部を白黒反転処理した反転画像とライブ画像とを合成するか、もしくは、差分画像の少なくとも一部を白黒反転処理した反転画像と、補正されたライブ画像とを合成して合成画像を生成するように構成されている。ここで、たとえば、合成対象画像における造影された血管の画像が黒色であり、ライブ画像における治療器具の画像が血管の画像と同一の黒色である場合、合成画像において、造影された血管の画像と治療器具の画像とが区別しにくくなる場合があると考えられる。これに対して、本発明では、上記のように構成することにより、差分画像において略黒色の画像(たとえば、造影された血管の画像)が、略白色の画像(たとえば、略背景色の画像)に変換された状態で、ライブ画像に合成されるので、ライブ画像における血管に対応する部分における治療器具(たとえば、カテーテル、ステントまたはガイドワイヤ等)を黒色(血管の画像と異なる色)により表示させることができる。この結果、ライブ画像における血管に対応する部分(治療器具)の視認性を向上させながら、適切に造影された血管の画像を術者に視認させることができる。なお、本願明細書では、「黒色」とは、たとえば、画像(画素)における比較的低い輝度値を有することを意味するものとし、「白色」とは、たとえば、画像(画素)における比較的高い輝度値を有することを意味するものとする。
【0014】
上記反転画像とライブ画像とを合成して合成画像を生成するX線撮影装置において、好ましくは、画像合成部は、反転画像と、被検体内に挿入されたカテーテル、ステントまたはガイドワイヤの少なくとも1つが映し出された画像を含むライブ画像とを合成して合成画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、反転画像により、略背景色として映し出される造影された血管の画像と、被検体内に挿入されたカテーテル、ステントまたはガイドワイヤの少なくとも1つが映し出された画像とを、区別がより一層容易な態様で、術者に視認させることができる。
【0015】
上記差分画像とライブ画像とを合成して合成画像を生成するX線撮影装置において、好ましくは、基準画像取得部は、合成対象画像の撮影位置と略同一の撮影位置において、透視画像よりも前に撮影されたライブ画像を基準画像として取得するように構成されている。ここで、合成対象画像(造影画像および非造影画像)と、ライブ画像(たとえば、透視画像)とは、互いに撮影される際に照射されるX線量が異なる場合がある。この場合、合成対象画像(差分画像)を基準画像とし、ライブ画像を透視画像とした場合には、同一の特徴点画像であっても、照射するX線量の差異に起因して輝度が異なる。したがって、基準画像の特徴点画像と、透視画像の特徴点画像とを対応付ける(マッチングする)際に、輝度の補正を行う必要があると考えられる。これに対して、本発明では、基準画像取得部を、透視画像よりも前に撮影されたライブ画像を基準画像として取得するように構成することにより、X線の照射量が互いに略等しいライブ画像同士で、基準画像(ライブ画像)の特徴点画像と、透視画像(ライブ画像)の特徴点画像とを対応付けることができる。これにより、輝度を補正する制御処理が不要な分、対応付ける際の制御処理が複雑化するのを抑制しながら、合成対象画像を補正することができる。
【0016】
上記差分画像とライブ画像とを合成して合成画像を生成するX線撮影装置において、好ましくは、基準画像取得部は、造影画像を基準画像として取得するように構成されている。このように構成すれば、差分画像(合成対象画像)に残存する造影された血管の画像を含む画像である造影画像と、合成対象画像の血管の画像とは、同一の時点で撮影されたものとなるので、造影画像よりも後の時点で撮影されるライブ画像を基準画像として取得する場合に比べて、合成対象画像をより正確に補正することができる。
【0017】
上記差分画像とライブ画像とを合成して合成画像を生成するX線撮影装置において、好ましくは、基準画像取得部は、非造影画像を基準画像として取得するように構成されている。ここで、造影画像における造影された血管の画像は、比較的特徴的な画像であるため、造影画像を基準画像とした場合、特徴点として血管の画像が抽出される可能性がある。一方、ライブ画像(透視画像)では血管が造影されておらず血管が特徴点として抽出される可能性は低い。この場合、基準画像と透視画像とで互いに異なる特徴点が抽出される場合があると考えられる。これに対して、本発明では、基準画像取得部を、非造影画像を基準画像として取得するように構成することにより、造影された血管の画像を含まない非造影画像が基準画像として構成されるので、基準画像と透視画像とで互いに異なる特徴点が抽出されることを抑制することができる。この結果、特徴点同士を容易に対応付けることができるので、特徴点の移動情報を容易に取得することができる。また、ライブ画像を基準画像として取得する場合に比べて、非造影画像はX線の照射量を多くすることができるので、基準画像を比較的鮮明な画像として構成することができる。
【0018】
上記第1の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、移動情報取得部は、基準画像の特徴点画像からの透視画像の特徴点画像への移動量が、移動量しきい値を超えた場合に、特徴点の移動情報に基づいて、基準画像を補正するとともに、補正された基準画像および透視画像に基づいて、画素の移動情報を取得するように構成されている。このように構成すれば、被検体が比較的大きく移動することにより、特徴点の位置が撮影部に対して比較的大きく移動した場合(移動量が移動量しきい値を超えた場合)に、基準画像を特徴点の移動情報に基づいて補正することができる。たとえば、被検体の移動が比較的小さい場合(移動量が移動量しきい値を超えない場合)は、基準画像を補正する制御処理を行うことなく、画素の移動情報に基づいて合成対象画像を補正すれば(被検体の比較的小さい移動に対する補正のみを行えば)、画像合成部の制御負担を軽減しながら、適切に合成画像を生成することができる。
【0019】
上記第1の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、移動情報取得部は、基準画像から複数の特徴点画像を抽出するとともに、透視画像から複数の特徴点画像を抽出し、基準画像の特徴点画像からの透視画像の特徴点画像への移動量の平均値分、基準画像を移動させるように補正するとともに、補正された基準画像および透視画像に基づいて、画素の移動情報を取得するように構成されている。このように構成すれば、複数の移動量の平均値に基づいて、基準画像を補正するので、1つの特徴点のみの移動量を用いる場合に比べて、基準画像および透視画像に映された被検体全体の移動の情報を、より正確に取得することができる。
【0020】
上記第1の局面によるX線撮影装置において、好ましくは、移動情報取得部は、特徴点の移動情報に基づいて補正された基準画像と、透視画像とに基づいて、補正された基準画像に属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動方向および移動量を表す移動マップを取得するとともに、移動マップの空間方向の高周波成分が抑制された平滑化移動マップを画素の移動情報として取得するように構成されている。このように構成すれば、移動マップの空間方向の高周波成分を抑制した平滑化移動マップを画素の移動情報として取得することにより、画素毎に移動マップを生成することに起因して移動マップに誤差が生じたとしても、空間方向の高周波成分を抑制することにより、誤差の影響を小さくすることができる。これらの結果、異なる時間で撮影された2つのX線画像間における被検体の線形な動作だけでなく非線形な動作(比較的複雑な動作)を考慮して、合成対象画像と透視画像とを適切に合成することができる。
【0021】
この発明の第2の局面におけるX線撮影装置の作動方法は、被検体を透視するX線画像であり、かつ、特徴点画像を含む透視画像を取得するとともに、透視画像が撮影される時点よりも前に撮影されたX線画像であり、特徴点画像を含む基準画像を取得し、基準画像および透視画像の各々から特徴点画像を抽出し、抽出された基準画像の特徴点画像から、抽出された透視画像の特徴点画像への移動量に基づく特徴点の移動情報を取得するとともに、特徴点の移動情報に基づいて補正された基準画像と、透視画像とに基づいて、補正された基準画像に属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動方向および移動量を取得し、取得した移動方向および移動量を平滑化した情報を画素の移動情報として取得し、特徴点の移動情報と画素の移動情報とに基づいて、被検体のX線画像である合成対象画像もしくは透視画像を補正し、補正された合成対象画像と透視画像とを合成もしくは合成対象画像と補正された透視画像とを合成して合成画像を生成する。
【0022】
この発明の第2の局面によるX線撮影装置の作動方法では、上記のように構成することにより、互いに異なる時点で撮影された合成対象画像と透視画像とを合成して合成画像を生成する際に被検体が合成対象画像の撮影後に動いた場合にも、適切に合成画像を生成することにより、被検体に対するX線の被ばく量の増大を抑制することが可能なX線撮影装置の作動方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記のように、互いに異なる時点で撮影された合成対象画像と透視画像とを合成して合成画像を生成する際に被検体が合成対象画像の撮影後に動いた場合にも、適切に合成画像を生成することにより、被検体に対するX線の被ばく量の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1~第3実施形態によるX線撮影装置の全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるX線撮影装置のシフト量の取得、移動量の取得およびロードマップ透視画像の生成を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1~第3実施形態による画像処理部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による特徴点の移動情報の取得について説明するための図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による画素値差最小画素の特定について説明するための図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による移動マップの生成について説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による平滑化移動マップの生成について説明するための図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による一次元で表した移動マップについて説明するための図である。
【
図9】本発明の第1実施形態によるX線撮影装置における制御処理のフローを示す図(フローチャート)である。
【
図10】本発明の第2実施形態によるX線撮影装置のシフト量の取得、移動量の取得およびロードマップ透視画像の生成を説明するための図である。
【
図11】本発明の第3実施形態によるX線撮影装置のシフト量の取得、移動量の取得およびロードマップ透視画像の生成を説明するための図である。
【
図12】本発明の第1~第3実施形態の変形例によるX線撮影装置のロードマップ透視画像の生成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1~
図8を参照して、本発明の第1実施形態によるX線撮影装置100の構成について説明する。
【0027】
(X線撮影装置の構成)
図1に示すように、第1実施形態のX線撮影装置100(放射線撮影装置)は、被検体Pが載置される天板1と、被検体PのX線画像Rを撮影する撮影部2と、X線撮影装置100の各種構成を制御する制御部3と、撮影したX線画像R等を記憶する記憶部4と、X線画像R等を表示する表示部5と、術者からの入力操作を受け付ける操作部6とを備えている。なお、以下の説明では、「術者」とは、被検体Pの治療を行う者に限られず、被検体Pの治療に直接関与せずに単にX線撮影装置100を操作する「操作者」をも含むものとして記載している。
【0028】
図2に示すように、X線撮影装置100は、被検体PのX線画像Rを連続的に撮影して、リアルタイムで逐次的に生成されるライブ画像Rr(動画)を取得するように構成されている。また、X線撮影装置100は、ライブ画像Rrを、造影画像Rcおよびマスク画像RmよりもX線の照射量を低減し、被検体Pを透視する透視画像として撮影するように構成されている。これにより、X線撮影装置100を用いる術者は、被検体Pのライブ画像Rr(透視画像)を視認しながら、カテーテル等の治療器具を被検体Pの血管(たとえば、被検体Pの下肢の血管)に挿入することにより、各種の治療を行うことが可能となる。
【0029】
また、X線撮影装置100は、造影画像Rcとマスク画像Rmとの差分画像であるDSA画像Rdと、ライブ画像Rrとを合成したロードマップ透視画像Rsを表示部5により表示するように構成されている。ここで、第1実施形態によるX線撮影装置100は、ロードマップ透視画像Rsを生成する際に、特徴点画像F(
図4参照)を抽出し、抽出した特徴点画像Fに基づく特徴点の移動情報(後述するシフト量d1)に基づいた補正(マクロな位置合わせ補正)処理と、画素の移動情報(後述する移動量d2)に基づく補正処理であり、Flex-APS(Flexible Active Pixel Shift)技術を用いた補正(ミクロな位置合わせ補正)処理との両方を行うように構成されている。
【0030】
(X線撮影装置の各部の構成)
図1に示すように、天板1は、被検体Pが載置する検診台として構成されている。天板1は、駆動部が設けられ、操作部6の入力操作に基づいて制御部3の指令により移動可能に構成されている。
【0031】
撮影部2は、被検体PにX線を照射するX線発生部2aと、被検体Pを透過したX線発生部からのX線を検出するX線検出部2bとを含む。X線発生部2aは、天板1の一方側に配置されたX線管装置として構成されている。X線発生部2aは、X線源を含み、図示しないX線管駆動装置によって電圧が印加されることにより、X線を照射することが可能に構成されている。X線検出部2bは、天板1の他方側に配置されたFPD(フラットパネルディテクタ)として構成されており、X線を検出することができるように構成されている。なお、X線発生部2aの近傍には、X線発生部2aから照射されるX線の照射野を調整するためのコリメータ2cが設けられている。
【0032】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部3は、X線検出部2bから送られた検出信号に基づいて、被検体Pの内部構造をX線撮影したX線画像R同士を合成してロードマップ透視画像Rsを生成する画像処理部10を含む。
【0033】
また、制御部3は、術者による操作部6の入力操作に基づいて、ロードマップ透視画像撮影モードと、DSA画像撮影モードとを切り替える制御を行うように構成されている。ロードマップ透視画像撮影モードでは、制御部3は、ライブ画像Rrを撮影する制御を行い、DSA画像撮影モードでは、制御部3は、造影画像Rcとマスク画像Rmとを撮影する制御を行う。
【0034】
記憶部4は、たとえば、不揮発メモリを含む。そして、記憶部4には、制御部3の処理に用いられるプログラムが記憶されているとともに、画像処理部10で生成した各X線画像R(マスク画像Rm、造影画像Rc、DSA画像Rd、ライブ画像Rr、および、ロードマップ透視画像Rs)等を記憶するように構成されている。
【0035】
表示部5は、たとえば、液晶ディスプレイとして構成されている。そして、表示部5は、画像処理部10により生成された後述するロードマップ透視画像Rs(
図2参照)を表示することが可能に構成されている。たとえば、表示部5は、ロードマップ透視画像Rsを動画として表示するように構成されている。
【0036】
操作部6は、たとえば、入力用ボタンスイッチ、キーボード、タッチパネル、または、マウス等から構成されている。
【0037】
(画像処理部の構成)
画像処理部10は、GPU(Graphics Processing Unit)や画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサを含んで構成されたコンピュータである。画像処理部10は、記憶部4に記憶された画像処理プログラム実行することにより、画像処理装置として機能する。なお、後述するX線画像処理方法は、画像処理部10において実行される制御処理の方法である。
【0038】
図3に示すように、画像処理部10は、画像取得部20と、移動情報取得部30と、画像合成部40とを含む。なお、
図3では、画像処理部10を機能ブロックとして図示しているが、この例に限られない。すなわち、画像処理部10の各部をそれぞれ別個のハードウェア(ソフトウェア)として構成してもよいし、1つのハードウェア(ソフトウェア)として構成してもよい。
【0039】
〈画像取得部の構成〉
図2に示すように、画像取得部20は、撮影部2により撮影されたX線画像Rを取得するように構成されている。そして、画像取得部20は、撮影部2からX線画像Rを、マスク画像Rm、造影画像Rc、または、ライブ画像Rrとして取得するように構成されている。なお、マスク画像Rmは、特許請求の範囲の「非造影画像」の一例である。また、ライブ画像Rrは、特許請求の範囲の「基準画像」および「透視画像」の一例である。また、画像取得部20は、特許請求の範囲の「透視画像取得部」および「基準画像取得部」の一例である。
【0040】
ここで、X線撮影装置100では、マスク画像Rm、造影画像Rc、および、ライブ画像Rrは、たとえば、この順に撮影される。すなわち、X線撮影装置100では、術者により操作部6が操作されること(DSA画像撮影モードが選択されること)により、まず、被検体Pの下肢の血管に造影剤を投与しない状態(血管に造影剤がない状態)で、被検体Pの下肢が撮影されることにより、後述するDSA画像Rdのマスクとなるマスク画像Rmが撮影される。その後、X線撮影装置100では、ライブ画像Rrの撮影が行われる。
【0041】
詳細には、マスク画像Rmには、被検体Pの背景構造物Abが映し出されている一方、被検体Pの血管は明確には映し出されていない。次に、X線撮影装置100では、術者により操作部6が操作されることにより、被検体Pの下肢の血管に造影剤を投与した状態(血管に造影剤が残存した状態)で、被検体Pの下肢が撮影され、造影された血管の画像Avを含む造影画像Rcが撮影される。なお、背景構造物Abには、たとえば、被検体Pの骨や筋肉等の部位が含まれる。また、造影画像Rcは、たとえば、連続して撮影された複数のX線画像Rに対してピークホールドを適用した画像であってもよい。
【0042】
また、画像取得部20は、造影画像Rcからマスク画像Rmをデジタル差分処理することにより、DSA(Digital Subtraction Angiography)画像Rdを生成するように構成されている。DSA画像Rdでは、背景構造物Abが略削除され、造影された血管の画像Avが残存している。ここで、以下の記載では、DSA画像Rdのうちの画像Avが残存しているDSA画像Rdを、血管像Rdbとして説明する。なお、DSA画像Rdおよび血管像Rdbは、特許請求の範囲の「合成対象画像」および「差分画像」の一例である。
【0043】
造影画像Rcおよびマスク画像Rmの撮影後、X線撮影装置100では、術者により操作部6が操作されること(ロードマップ透視画像撮影モードが選択されること)により、撮影部2からのX線の照射量がマスク画像Rmおよび造影画像Rcの撮影における照射量よりも低減された状態で、ライブ画像Rr(X線画像R)の撮影が開始される。そして、X線撮影装置100は、ライブ画像Rrをリアルタイムで逐次的に(動画として)、撮影するように構成されている。詳細には、画像取得部20は、X線検出部2bから順次出力されるX線検出信号を画像化することにより、ライブ画像Rrを所定のフレームレートで生成する。フレームレートは、たとえば15FPS~30FPS程度である。ライブ画像Rr(X線画像R)は、たとえばグレースケールで所定の階調数(10~12ビットなど)の画素値を有する画像である。
【0044】
第1実施形態では、画像取得部20は、特徴点画像F1(
図4参照)を含み、マスク画像Rmおよび造影画像Rcが撮影された時点以降で、かつ、第2ライブ画像Rr2が撮影される時点よりも前に撮影されたX線画像Rである第1ライブ画像Rr1を基準画像として取得する。また、画像取得部20は、撮影部2により撮影され被検体Pを透視するX線画像Rであるとともに、特徴点画像F2(
図4参照)を含む透視画像である第2ライブ画像Rr2を取得するように構成されている。なお、第1ライブ画像Rr1は、特許請求の範囲の「基準画像」の一例である。また、第2ライブ画像Rr2は、特許請求の範囲の「透視画像」の一例である。
【0045】
また、マスク画像Rm、造影画像Rc、および、第1ライブ画像Rr1は、互いに略同一の撮影位置(好ましくは、同一の撮影位置)において撮影されているものとして説明する。具体的には、「同一の撮影位置において撮影されたX線画像R」とは、後述する特徴点画像Fの位置が互いに同一である(シフト量d1が略0となる)X線画像Rを意味するものとする。
【0046】
詳細には、術者により、第1ライブ画像Rr1の撮影位置が変更された場合には、変更後の第1ライブ画像Rr1の撮影位置に基づいて、記憶部4から同一の撮影位置となるDSA画像Rd(マスク画像Rmおよび造影画像Rc)が読み出される。なお、制御部3は、撮影部2および天板1の駆動部(エンコーダ等)から位置情報を取得するように構成されており、画像取得部20は、この位置情報が各X線画像Rに関連付けられていることにより、撮影位置を取得するように構成されている。
【0047】
第1ライブ画像Rr1は、ロードマップ透視画像撮影モードを開始した直後(造影画像Rcを撮影した時点の直後)に撮影された時点のライブ画像Rrである。たとえば、第1ライブ画像Rr1は、ロードマップ透視画像撮影モードを開始後の最初のライブ画像Rrである。すなわち、第1ライブ画像Rr1は、造影画像Rcから被検体Pの移動(体動)が略生じていない時点の透視画像である。また、第2ライブ画像Rr2は、たとえば、最新(現在)のライブ画像Rrである。すなわち、第2ライブ画像Rr2は、造影画像Rc、マスク画像Rm、および、第1ライブ画像Rr1よりも後の時点に撮影された画像である。また、第2ライブ画像Rr2は、ロードマップ透視画像Rsを構成するX線画像Rである。
【0048】
〈移動情報取得部の構成〉
図3に示すように、第1実施形態では、移動情報取得部30は、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2の各々から特徴点画像Fを抽出する特徴点抽出部31と、特徴点抽出部31により抽出された特徴点画像Fに基づく特徴点の移動情報E1を取得する特徴点移動情報取得部32と、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2に基づいて、第1ライブ画像Rr1に属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動情報E2とを取得する画素移動情報取得部33とを含む。
【0049】
ここで、第1実施形態では、
図4に示すように、特徴点抽出部31は、第1ライブ画像Rr1から複数(
図4では4つ)の特徴点画像F1(F1a、F1b、F1cおよびF1d)を抽出するとともに、第2ライブ画像Rr2から複数(
図4では4つ)の特徴点画像F2(F2a、F2b、F2cおよびF2d)を抽出するように構成されている。特徴点抽出部31は、たとえば、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2において、記憶部4に記憶されたパターン画像に対して類似性が高い画像や、輝度の変化が所定の変化量よりも大きい画像領域を、特徴点画像F1およびF2として抽出するように構成されている。なお、特徴点抽出部31による特徴点画像F1およびF2の抽出方法は、この例に限られず、公知の画像処理技術の特徴点抽出方法を用いてもよい。
【0050】
特徴点画像F1およびF2は、複数の画素からなる領域(
図4の円で囲む部分)である。なお、
図4では、特徴点画像F1およびF2を円状に示しているが、円状に限られず、円状以外の形状(たとえば、矩形状)であってもよい。たとえば、特徴点画像F1aと特徴点画像F2aとは、被検体Pにおける同一の部位を示す画像である。これと同様に、特徴点画像F1b、F1c、および、F1dは、特徴点画像F2b、F2c、およびF2dとそれぞれ対応する部位を示す画像である。
【0051】
特徴点移動情報取得部32は、特徴点画像F1と特徴点画像F2とを、対応付ける処理(マッチング処理)を行うように構成されている。たとえば、特徴点移動情報取得部32は、特徴点画像F1a~F1dと特徴点画像F2a~F2dとの各々をパターンマッチング処理することにより、特徴点画像F1aとF2aとを対応付けて(紐付けて)、特徴点画像F1bとF2bとを対応付けて、特徴点画像F1cとF2cとを対応付けて、特徴点画像F1dとF2dとを対応付ける。たとえば、特徴点移動情報取得部32は、特徴点画像F1a~F1dと特徴点画像F2a~F2dとのうちから、類似度の高いもの同士を対応付ける。
【0052】
そして、特徴点移動情報取得部32は、第1ライブ画像Rr1における被検体Pの位置に対する第2ライブ画像Rr2における被検体Pの位置への移動量を取得するように構成されている。具体的には、特徴点移動情報取得部32は、特徴点画像F1a~F1dから特徴点画像F2a~F2dへの移動量の平均値d1(以下、「シフト量d1」という)を取得(算出)するように構成されている。すなわち、特徴点移動情報取得部32は、被検体Pの動きや撮影部2の位置変更に起因する特徴点のシフト量d1を算出するように構成されている。
【0053】
詳細には、特徴点移動情報取得部32は、特徴点画像F1aの中心座標(x1a、y1a)と、特徴点画像F1aに対応付けられた特徴点画像F2aの中心座標(x2a、y2a)との変位da(dxa、dya)を取得する。特徴点移動情報取得部32は、変位daと同様に、特徴点画像F1b~F1dから特徴点画像F2b~F2dへの変位db、dcおよびddを取得する。そして、特徴点移動情報取得部32は、変位da~ddの平均値をシフト量d1として取得する。なお、シフト量d1は、特徴点の移動情報E1に含まれる。また、「平均値の取得」とは、相加平均値(算術平均値)を算出することを意味するのみならず、相加平均値以外の加重平均値等の平均値を算出してもよい。
【0054】
また、特徴点移動情報取得部32は、新たな第2ライブ画像Rr2が取得される度に、シフト量d1を取得するように構成されている。そして、第1実施形態では、特徴点移動情報取得部32は、シフト量d1が、しきい値d1tを超えた場合に、シフト量d1分移動させるように、第1ライブ画像Rr1を補正するように構成されている。すなわち、特徴点移動情報取得部32は、シフト量d1が、しきい値d1t未満の場合には、第1ライブ画像Rr1を補正しない。たとえば、特徴点移動情報取得部32は、シフト量d1がしきい値d1tを超えた場合、第1ライブ画像Rr1をシフト量d1分、平行移動、および、回転移動の少なくとも一方の画像処理を行い、第1補正ライブ画像Rr1cを生成するように構成されている。なお、しきい値d1tは、特許請求の範囲の「移動量しきい値」の一例である。
【0055】
画素移動情報取得部33は、第1補正ライブ画像Rr1cが生成されている場合には、第1補正ライブ画像Rr1cと第2ライブ画像Rr2とに基づいて、画素の移動情報E2を取得するように構成されている。また、画素移動情報取得部33は、第1補正ライブ画像Rr1cが生成されていない場合には、第1ライブ画像Rr1と第2ライブ画像Rr2とに基づいて、画素の移動情報E2を取得するように構成されている。以下、「第1補正ライブ画像Rr1cが生成されている場合」について説明するが、「第1補正ライブ画像Rr1cが生成されていない場合」は、以下の「第1補正ライブ画像Rr1c」という記載を、「第1ライブ画像Rr1」と読み替えるものとする。
【0056】
具体的には、画素移動情報取得部33は、Flex-APS技術を用いた補正処理を行うための画素の移動情報E2を取得するように構成されている。第1実施形態では、画素移動情報取得部33は、第1補正ライブ画像Rr1cおよび第2ライブ画像Rr2に基づいて、第1補正ライブ画像Rr1cに属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動方向および移動量を表す移動マップM1を取得する移動マップ生成部33aと、移動マップM1の空間方向の高周波成分が抑制された平滑化移動マップM2を画素の移動情報E2として取得する平滑化移動マップ生成部33bとを含む。移動マップM1は、言い換えると、移動ベクトルである。平滑化移動マップM2は、言い換えると、平滑化移動ベクトルである。
【0057】
移動マップ生成部33aは、
図5に示すように、第2ライブ画像Rr2の画素B2の画素値と、第1補正ライブ画像Rr1cにおける当該画素B2に対応する画素B1および所定の周辺領域に属する画素B1の画素値との画素値差とに基づいて、第1補正ライブ画像Rr1cの画素B1の移動方向および移動量を表す移動マップM1を生成するように構成されている。より詳しくは、移動マップ生成部33aは、第2ライブ画像Rr2の画素B2の画素値と、第2ライブ画像Rr2の画素B2に対して画素値差が最も小さい第1補正ライブ画像Rr1cにおける画素B1である画素値差最小画素B1aの画素値とに基づいて、第1補正ライブ画像Rr1cの画素B1の移動方向および移動量を表す移動マップM1を生成するように構成されている。
【0058】
具体的には、移動マップ生成部33aは、
図6に示すように、第2ライブ画像Rr2のある画素B2と、当該画素B2に対応する(同一座標である)第1補正ライブ画像Rr1cの画素B1、および、対応する画素B1の所定の周辺領域(対応する画素B1の上、右上、右、右下、下、左下、左および左上の計8つ)の画素B1の計9つの画素B1とを、各々の画素値で比較する。そして、移動マップ生成部33aは、第1補正ライブ画像Rr1cの9つの画素B1の中から、第2ライブ画像Rr2のある画素B2との画素値の差が最小の画素(画素値差最小画素B1a)を特定する。ここで、画素値は、被検体Pの位置によって異なる定量的な値であるため、第2ライブ画像Rr2および第1補正ライブ画像Rr1cにおいて被検体Pの位置の指標となる。したがって、上記のように、第2ライブ画像Rr2のある画素B2と、その画素B2と同一座標およびその周囲の第1補正ライブ画像Rr1cにおける9つの画素B1とを比較することは、第2ライブ画像Rr2の画素B2に対する第1補正ライブ画像Rr1cの位置ずれを調べることに相当する。また、第1補正ライブ画像Rr1cの画素値差最小画素B1aは、第2ライブ画像Rr2の画素B2が位置ずれした可能性が最も高い画素である。そして、移動マップ生成部33aは、
図6に示すように、画素値差最小画素B1aを、第2ライブ画像Rr2の画素B2に対応する(同一座標である)第1補正ライブ画像Rr1cの画素B1の位置に移動させた場合の画素値差最小画素B1aの移動方向および移動量を、第1補正ライブ画像Rr1cの画素B1に対応する移動マップM1とする。
【0059】
平滑化移動マップ生成部33bは、
図7に示すように、移動マップM1の空間方向の高周波成分を抑制することにより、平滑化移動マップM2を生成するように構成されている。具体的には、平滑化移動マップ生成部33bは、移動マップM1を、第1補正ライブ画像Rr1cにおける画素B1毎に、第1補正ライブ画像Rr1cにおける画素B1および第1補正ライブ画像Rr1cにおける画素B1の周囲の画素B1で平滑化した平滑化移動マップM2を算出する。すなわち、平滑化移動マップ生成部33bは、第1補正ライブ画像Rr1cにおける各々の画素B1に対応付けられた移動マップM1を、その画素B1と周囲の8つの画素B1とで平滑化した平滑化移動マップM2を算出する。なお、平滑化は、たとえば、9つの画素B1において、移動マップM1を平均化することである。
【0060】
平滑化を行うことにより、
図8に示すように、9つの画素B1内に移動マップM1が過度に異なるもの(移動マップM1x)が含まれていた場合であっても、移動マップM1が平均されることにより、過度に異なる移動マップM1xの影響が低減される。この結果、移動マップM1の空間方向の高周波成分が抑制される。なお、
図7では、紙面の都合上、平滑化移動マップM2を平滑化前の移動マップM1と同じ方向および大きさのベクトルにより描いている。なお、平滑化は、9つの画素B1で単純に移動マップM1を平均する場合に限られない。たとえば、9つの画素B1の移動マップM1を移動方向毎に移動量でグラフ化した後、フーリエ変換を行うことによって高周波成分を抽出する。そして、高周波成分を除去することによって、移動マップM1の空間方向の高周波成分を抑制してもよい。
【0061】
そして、平滑化移動マップ生成部33bは、生成された平滑化移動マップM2を、第2ライブ画像Rr2の画素B2に対応する第1補正ライブ画像Rr1cの画素B1に対応付ける。そして、平滑化移動マップ生成部33bが、この対応付けを第1補正ライブ画像Rr1cの全ての画素B1に対して行うことにより、第1補正ライブ画像Rr1cの全ての画素B1に平滑化移動マップM2が対応付けられた状態となる。第1実施形態では、第1補正ライブ画像Rr1cの全ての画素B1に平滑化移動マップM2が対応付けられた状態の第1補正ライブ画像Rr1cの移動量d2の情報を画素の移動情報E2とし、この移動量d2がDSA画像Rdの補正に用いられる。
【0062】
〈画像合成部の構成〉
図3に示すように、画像合成部40は、特徴点の移動情報E1(シフト量d1)と画素の移動情報E2(移動量d2)とに基づいて、第1ライブ画像Rr1と略同一の撮影位置で撮影されたDSA画像Rd(血管像Rdb)を補正して、補正血管像Rdbc(白黒反転像Ava)を生成する血管像補正部41と、生成された補正血管像Rdbcと第2ライブ画像Rr2とを合成してロードマップ透視画像Rsを生成する合成画像生成部42とを含む。なお、補正血管像Rdbcおよび白黒反転像Avaは、特許請求の範囲の「反転画像」の一例である。
【0063】
図2に示すように、血管像補正部41は、記憶部4に記憶されているDSA画像Rdのうちから血管像Rdbを読み出すように構成されている。そして、血管像補正部41は、血管像Rdbの位置(画像Avの位置)を、補正前の位置に対してシフト量d1分移動させる(平行移動または回転移動の少なくとも一方の)処理を行う。また、血管像補正部41は、一部(たとえば、画素毎、または、所定の領域毎)、画像全体(画像Av全体またはDSA画像Rd全体)に対して、移動量d2分移動させる処理を行う。
【0064】
また、第1実施形態では、血管像補正部41は、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて補正された血管像Rdbを、白黒反転処理した補正血管像Rdbcを生成するように構成されている。具体的には、血管像補正部41は、シフト量d1分移動され、かつ、移動量d2分移動された補正血管像Rdbcを白黒反転処理(輝度を反転させる処理)することにより、白黒反転像Avaを含む補正血管像Rdbcを生成する。
【0065】
また、血管像補正部41は、新たな第2ライブ画像Rr2が画像取得部20により取得される度に、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて、血管像Rdb(DSA画像Rd)を補正するように構成されている。すなわち、血管像補正部41は、リアルタイムで逐次的に血管像Rdbを補正して、補正血管像Rdbcを生成するように構成されている。
【0066】
合成画像生成部42は、補正血管像Rdbcと、第2ライブ画像Rr2とを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成されている。具体的には、合成画像生成部42は、補正血管像Rdbcと第2ライブ画像Rr2とを重畳させて表示するように、ロードマップ透視画像Rsを生成するように構成されている。また、合成画像生成部42は、新たな第2ライブ画像Rr2が画像取得部20により取得される度に、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて、血管像Rdbを補正して補正血管像Rdbcを生成し、生成された補正血管像Rdbcと、第2ライブ画像Rr2とを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成されている。
【0067】
言い換えると、第1実施形態では、合成画像生成部42は、被検体Pの下肢の血管に造影剤を投与した状態のX線画像Rである造影画像Rcと、被検体Pの血管に造影剤を投与しない状態のX線画像Rであるマスク画像Rmとの差分画像であるDSA画像Rdを、血管像Rdbとして取得するとともに特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて、血管像Rdbを補正血管像Rdbcに補正して、補正血管像Rdbcと第2ライブ画像Rr2とを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成されている。
【0068】
これにより、第1実施形態では、合成画像生成部42は、補正血管像Rdbcと、被検体P内に挿入されたカテーテル、ステントまたはガイドワイヤの少なくとも1つが映し出された画像Akを含む第2ライブ画像Rr2とを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成されている。そして、ロードマップ透視画像Rsは、表示部5により表示され、術者によって視認される。
【0069】
(X線画像処理方法)
次に、
図9を参照して、第1実施形態によるX線撮影装置100によるX線画像Rの制御処理(X線画像処理方法)について説明する。
図9には、X線撮影装置100によるX線画像Rの制御処理のフローを示している。なお、X線撮影装置100によるX線画像Rの制御処理は、制御部3(画像処理部10)により実行される。
【0070】
まず、ステップS1において、DSA画像撮影モードにおいて、DSA画像Rdの取得が行われる。すなわち、マスク画像Rmおよび造影画像Rcが撮影(取得)され、マスク画像Rmおよび造影画像Rcに基づいて、DSA画像Rdが生成される。
【0071】
ステップS2において、DSA画像Rdから血管像Rdbの選択(生成)が行われる。たとえば、血管像Rdbは、記憶部4に記憶されたDSA画像Rdのうちから操作部6に対する入力操作によって、または、自動的に選択される。
【0072】
ステップS3において、術者による操作部6の入力操作に応じて、ロードマップ透視画像撮影モードが開始され、ライブ画像Rrの取得が開始される。
【0073】
ステップS4において、ロードマップ透視画像撮影モードが開始直後のライブ画像Rrを、第1ライブ画像Rr1として保持する。すなわち、ロードマップ透視画像撮影モードが開始され、最初に取得されるライブ画像Rrが第1ライブ画像Rr1として、記憶部4または画像処理部10内に記憶される。
【0074】
ステップS5において、第1ライブ画像Rr1よりも後に撮影されたライブ画像Rrが第2ライブ画像Rr2として取得される。
【0075】
ステップS6において、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2の各々から、特徴点画像Fが抽出される。たとえば、
図4に示すように、第1ライブ画像Rr1から特徴点画像F1a~F1dが抽出され、第2ライブ画像Rr2から特徴点画像F2a~F2dが抽出される。
【0076】
ステップS7において、特徴点の移動情報E1(シフト量d1)が取得される。具体的には、
図4に示すように、第1ライブ画像Rr1の特徴点画像F1a~F1dと、第1ライブ画像Rr1の特徴点画像F1a~F1dとの対応付け(マッチング処理)を行い、各変位da~ddの平均値(シフト量)d1が取得(算出)される。すなわち、被検体Pの動きや撮影部2の位置変更に起因する特徴点のシフト量d1が算出される。
【0077】
ステップS8において、シフト量d1がしきい値d1tを超えたか否かが判断される。すなわち、シフト量d1としきい値d1tとが比較され、シフト量d1がしきい値d1tを超えている場合、ステップS9に進み、シフト量d1がしきい値d1tを超えていない場合、ステップS10に進む。
【0078】
ステップS9において、第1ライブ画像Rr1がシフト量d1に基づいて補正され、第1補正ライブ画像Rr1cが生成される。その後、ステップS10に進む。
【0079】
ステップS10において、第1補正ライブ画像Rr1cと第2ライブ画像Rr2とに基づいて、画像の移動情報E2(移動量d2)が取得される。すなわち、
図5~
図8に示す移動マップM1が取得されるとともに、平滑化移動マップM2が画像の移動情報E2(移動量d2)として取得される。
【0080】
ステップS11において、特徴点の移動情報E1(シフト量d1)および画素の移動情報E2(移動量d2)に基づいて、DSA画像Rd(血管像Rdb)が補正され、白黒反転像Avaを含む補正血管像Rdbcが生成される。
【0081】
ステップS12において、補正血管像Rdbcと第2ライブ画像Rr2とが合成され、ロードマップ透視画像Rsが生成され、ロードマップ透視画像Rsが表示部5に表示される。
【0082】
ステップS13において、ロードマップ透視画像撮影モードを継続するか否かが判断される。たとえば、操作部6がロードマップ透視画像撮影モードを終了する入力操作を受け付けない場合には、ロードマップ透視画像撮影モードを継続するものとして、ステップS5に戻る。また、操作部6がロードマップ透視画像撮影モードを終了する入力操作を受け付けた場合には、ロードマップ透視画像撮影モードを継続しない(終了する)ものとして、ステップS14に進む。すなわち、ロードマップ透視画像撮影モードを継続する場合には、ステップS5~S13が繰り返され、第2ライブ画像Rr2が取得される度に、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて、血管像Rdbが補正され、補正された血管像Rdbである補正血管像Rdbcと、第2ライブ画像Rr2とが合成されたロードマップ透視画像Rsが生成される。
【0083】
ステップS14において、ロードマップ透視画像撮影モードが終了される。その後、X線撮影装置100によるX線画像Rの制御処理が終了される。
【0084】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
第1実施形態では、上記のように、移動情報取得部30を、第2ライブ画像Rr2が撮影される時点よりも前に撮影されたX線画像Rである第1ライブ画像Rr1の特徴点画像F1、および、第2ライブ画像Rr2の特徴点画像F2に基づいて、特徴点の移動情報E1を取得するとともに、画素の移動情報E2を取得するように構成する。そして、画像合成部40を、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて、第1ライブ画像Rr1と略同一の撮影位置で撮影されたDSA画像Rd(血管像Rdb)を補正するとともに、補正されたDSA画像Rd(補正血管像Rdbc)と第2ライブ画像Rr2とを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成する。これにより、DSA画像Rd(血管像Rdb)および第1ライブ画像Rr1が撮影された後に、被検体Pが撮影部2に対して移動した場合でも、第2ライブ画像Rr2が撮影される時点における被検体Pの位置に整合するようにDSA画像Rd(血管像Rdb)を補正することができる。このため、互いに位置がずれた被検体PのX線画像R同士(DSA画像Rd(血管像Rdb)と第2ライブ画像Rr2と)が合成されるのを抑制することができる。この結果、互いに異なる時点で撮影されたDSA画像Rd(血管像Rdb)と第2ライブ画像Rr2(X線画像R)とを合成してロードマップ透視画像Rsを生成する際に被検体が合成対象画像の撮影後に動いた場合にも、適切に(画像同士の位置ずれが抑制された)ロードマップ透視画像Rsを生成することができる。これにより、DSA画像Rd(血管像Rdb)を再び撮影し直す必要がないので、被検体Pに対するX線の被ばく量が増大するのを抑制することができる。
【0086】
また、第1実施形態では、上記のように、移動情報取得部30を、DSA画像Rd(血管像Rdb)を補正するための情報として、特徴点の移動情報E1と、画素の移動情報E2とを取得するように構成する。これにより、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2における比較的広範囲(マクロ)な移動情報として、特徴点の移動情報E1を取得するので、比較的広範囲な被検体Pの移動(比較的大きな移動)に対する補正を行うことができる。そして、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2における比較的狭い範囲(ミクロ)の移動情報として、画素の移動情報E2を取得するので、比較的狭い範囲の被検体Pの移動(比較的小さな移動)に対する補正を行うことができる。これらの結果、相互に利点・欠点を補完し合う、被検体Pの比較的大きな移動に対する補正と、被検体Pの比較的小さな移動に対する補正との両方を行うことによって、より一層適切にDSA画像Rd(血管像Rdb)を補正することができる。したがって、互いに異なる時点で撮影されたDSA画像Rd(血管像Rdb)とX線画像Rとを合成してロードマップ透視画像Rsを生成する場合にも、より一層適切に(画像同士の位置ずれがより一層抑制された)ロードマップ透視画像Rsを生成することができる。
【0087】
また、第1実施形態では、上記のように、画像取得部20を、第2ライブ画像Rr2をリアルタイムで逐次的に生成されるライブ画像Rrとして取得するように構成する。そして、画像合成部40を、補正されたDSA画像Rd(補正血管像Rdbc)と、ライブ画像Rrとを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成する。これにより、ライブ画像Rrの変化に対応させてDSA画像Rd(血管像Rdb)を補正することができるので、リアルタイムで表示され逐次的に変化するライブ画像Rrに、DSA画像Rdを合成する場合でも、適切にロードマップ透視画像Rsを生成することができる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、画像合成部40を、ライブ画像Rrが画像取得部20により取得される度に、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて、DSA画像Rd(血管像Rdb)を補正するように構成する。そして、画像合成部40を、補正されたDSA画像Rd(補正血管像Rdbc)と、ライブ画像Rrとを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成する。これにより、更新されるライブ画像Rrに対応させてDSA画像Rd(血管像Rdb)を逐次的に更新するように補正することができる。このため、逐次的に変化するライブ画像Rr(たとえば、動画)にDSA画像Rd(血管像Rdb)を合成する場合でも、より一層適切に(画像同士の位置ずれが抑制された)ロードマップ透視画像Rsを生成することができる。この結果、術者が動画として表示されるロードマップ透視画像Rsを視認しながら、被検体Pの治療を行う場合にも、より効果的に位置ずれが抑制されたロードマップ透視画像Rsを生成することができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、画像合成部40を、被検体Pの下肢の血管に造影剤を投与した状態のX線画像Rである造影画像Rcと、被検体Pの血管に造影剤を投与しない状態のX線画像Rであるマスク画像Rmとの差分画像を、DSA画像Rd(血管像Rdb)として取得するように構成する。そして、画像合成部40を、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて、DSA画像Rd(血管像Rdb)を補正して、補正されたDSA画像Rd(補正血管像Rdbc)と、ライブ画像Rrとを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成する。これにより、術者が被検体Pの下肢の血管にカテーテルを挿入することにより各種の治療を行う際に、画像同士の位置ずれが効果的に抑制されたロードマップ透視画像Rsを生成することが可能なX線撮影装置100を提供することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、画像合成部40を、特徴点の移動情報E1と画素の移動情報E2とに基づいて補正された補正血管像Rdbcのうちの造影された血管の画像Avが白黒反転処理された白黒反転像Avaと、ライブ画像Rrとを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成する。これにより、DSA画像Rdにおいて略黒色の画像(血管像Rdb)が、略白色の画像(たとえば、白黒反転像Ava)に変換された状態で、ライブ画像Rrに合成されるので、ライブ画像Rrにおける血管に対応する部分における治療器具(たとえば、カテーテル、ステントまたはガイドワイヤ等)を黒色(白黒反転像Avaと異なる色)により表示させることができる。この結果、ライブ画像Rrにおける血管に対応する部分(治療器具)の視認性を向上させながら、適切に造影された血管の画像を術者に視認させることができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、画像合成部40を、白黒反転像Avaと、被検体P内に挿入されたカテーテル、ステントまたはガイドワイヤの少なくとも1つが映し出された画像Akを含むライブ画像Rrとを合成してロードマップ透視画像Rsを生成するように構成する。これにより、白黒反転処理により、略背景色(白色)として映し出される血管の画像と、被検体P内に挿入されたカテーテル、ステントまたはガイドワイヤの少なくとも1つが映し出された画Ak像とを、区別がより一層容易な態様で、術者に視認させることができる。
【0092】
また、第1実施形態では、上記のように、移動情報取得部30を、造影画像Rcおよびマスク画像Rmの撮影位置と略同一の撮影位置において、第2ライブ画像Rr2よりも前に撮影されたライブ画像Rrを第1ライブ画像Rr1として取得するように構成する。これにより、X線の照射量が互いにお簿等しいライブ画像Rr同士で、第1ライブ画像Rr1(ライブ画像Rr)の特徴点画像F1a~F1dと、第2ライブ画像Rr2(ライブ画像Rr)の特徴点画像F2a~F2dとを対応付けることができる。これにより、輝度を補正する制御処理が不要な分、対応付ける際の制御処理が複雑化するのを抑制しながら、DSA画像Rd(血管像Rdb)を補正することができる。
【0093】
また、第1実施形態では、上記のように、移動情報取得部30を、第1ライブ画像Rr1の特徴点画像Fからの第2ライブ画像Rr2の特徴点画像Fへのシフト量d1が、しきい値d1tを超えた場合に、特徴点の移動情報E1に基づいて、第1ライブ画像Rr1を補正するとともに、補正された第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2に基づいて、画素の移動情報E2を取得するように構成する。これにより、被検体Pが比較的大きく移動することにより、特徴点の位置が撮影部2に対して比較的大きく移動した場合(シフト量d1がしきい値d1tを超えた場合)に、第1ライブ画像Rr1を特徴点の移動情報E1に基づいて補正することができる。たとえば、被検体Pの移動が比較的小さい場合(シフト量d1がしきい値d1tを超えない場合)は、第1ライブ画像Rr1を補正する制御処理を行うことなく、画素の移動情報E2に基づいてDSA画像Rd(血管像Rdb)を補正すれば(被検体Pの比較的小さい移動に対する補正のみを行えば)、画像合成部40の制御負担を軽減しながら、適切にロードマップ透視画像Rsを生成することができる。
【0094】
また、第1実施形態では、上記のように、移動情報取得部30を、第1ライブ画像Rr1から複数の特徴点画像F1a~F1dを抽出するとともに、第2ライブ画像Rr2から複数の特徴点画像F2a~F2dを抽出し、第1ライブ画像Rr1の特徴点画像F1a~F1dからの第2ライブ画像Rr2の特徴点画像F2a~F2dへの移動量の平均値分(シフト量d1分)、第1ライブ画像Rr1を移動させるように補正するように構成する。そして、移動情報取得部30を、第1補正ライブ画像Rr1cおよび第2ライブ画像Rr2に基づいて、画素の移動情報E2を取得するように構成する。これにより、複数の移動量(変位da~dd)の平均値に基づいて、第1ライブ画像Rr1を補正するので、1つの特徴点のみの移動量を用いる場合に比べて、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2に映された被検体P全体の移動の情報を、より正確に取得することができる。
【0095】
また、第1実施形態では、上記のように、移動情報取得部30を、第1ライブ画像Rr1および第2ライブ画像Rr2に基づいて、第1ライブ画像Rr1に属する各画素B1のうちの少なくとも一部の画素B1の移動方向および移動量を表す移動マップM1を取得するとともに、移動マップM1の空間方向の高周波成分が抑制された平滑化移動マップM2を画素の移動情報E2として取得するように構成する。これにより、移動マップM1の空間方向の高周波成分を抑制した平滑化移動マップM2を画素の移動情報E2として取得することにより、画素B1毎に移動マップM1を生成することに起因して移動マップM1に誤差が生じたとしても、空間方向の高周波成分を抑制することにより、誤差の影響を小さくすることができる。これらの結果、異なる時間で撮影された2つのX線画像R間における被検体Pの線形な動作だけでなく非線形な動作(比較的複雑な動作)を考慮して、DSA画像Rd(血管像Rdb)と第2ライブ画像Rr2とを適切に合成することができる。
【0096】
[第2実施形態]
次に、
図1、
図3および
図10を参照して、本発明の第2実施形態によるX線撮影装置200の構成について説明する。第2実施形態では、第1ライブ画像Rr1と第2ライブ画像Rr2とに基づいて特徴点の移動情報E1および画素の移動情報E2を取得するように構成されていた第1実施形態によるX線撮影装置100と異なり、造影画像Rcとライブ画像Rr12とに基づいて特徴点の移動情報E11および画素の移動情報E12を取得するように構成されている。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。また、第2実施形態において、造影画像Rcは、特許請求の範囲の「基準画像」の一例であり、ライブ画像Rr12は、特許請求の範囲の「透視画像」の一例である。
【0097】
第2実施形態によるX線撮影装置200は、
図1に示すように、画像処理部210を有する制御部203を備える。
図3に示すように、画像処理部210は、画像取得部220と、移動情報取得部230と、画像合成部240とを含む。第2実施形態では、画像取得部220は、造影画像Rcを基準画像として取得するように構成されている。
【0098】
移動情報取得部230は、
図10に示すように、造影画像Rcおよびライブ画像Rr12の各々から特徴点画像を抽出するとともに、抽出された特徴点画像に基づく特徴点の移動情報E11(シフト量d11)を取得するように構成されている。そして、移動情報取得部230は、特徴点の移動情報E11に基づいて、造影画像Rcを補正した補正造影画像Rccを生成するとともに、補正造影画像Rccおよびライブ画像Rr12に基づいて、補正造影画像Rccに属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動情報E12(移動量d12)とを取得するように構成されている。
【0099】
画像合成部240は、特徴点の移動情報E11と画素の移動情報E12とに基づいて、DSA画像Rd1(血管像Rd1b)を補正して補正血管像Rd1bcを生成するとともに、補正血管像Rd1bcとライブ画像Rr12とを合成してロードマップ透視画像Rs1を生成するように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0100】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0101】
第2実施形態では、上記のように、画像取得部220を、造影画像Rcを基準画像として取得するように構成する。そして、移動情報取得部230を、造影画像Rcおよびライブ画像Rr12の各々から特徴点画像を抽出するとともに、抽出された特徴点画像に基づく特徴点の移動情報E11(シフト量d11)を取得するように構成する。これにより、造影された血管の画像Avを含む画像である造影画像Rcと、補正血管像Rd1bcの血管の画像Avaとは、同一の時点で撮影されたものとなるので、造影画像Rcよりも後の時点で撮影されるライブ画像Rrから特徴点画像を取得する場合に比べて、より正確に補正した補正血管像Rd1bcを生成することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0102】
[第3実施形態]
次に、
図1、
図3および
図11を参照して、本発明の第3実施形態によるX線撮影装置300の構成について説明する。第3実施形態では、第1ライブ画像Rr1と第2ライブ画像Rr2とに基づいて特徴点の移動情報E1および画素の移動情報E2を取得するように構成されていた第1実施形態によるX線撮影装置100と異なり、マスク画像Rmとライブ画像Rr22とに基づいて特徴点の移動情報E21および画素の移動情報E22を取得するように構成されている。なお、上記第1または第2実施形態と同一の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。また、第3実施形態において、マスク画像Rmは、特許請求の範囲の「基準画像」および「非造影画像」の一例であり、ライブ画像Rr22は、特許請求の範囲の「透視画像」の一例である。
【0103】
第3実施形態によるX線撮影装置300は、
図1に示すように、画像処理部310を有する制御部303を備える。
図3に示すように、画像処理部310は、画像取得部320と、移動情報取得部330と、画像合成部340とを含む。第3実施形態では、画像取得部320は、マスク画像Rmを基準画像として取得するように構成されている。
【0104】
移動情報取得部330は、
図11に示すように、マスク画像Rmおよびライブ画像Rr22の各々から特徴点画像を抽出するとともに、抽出された特徴点画像に基づく特徴点の移動情報E21(シフト量d21)を取得するように構成されている。そして、移動情報取得部330は、特徴点の移動情報E21に基づいて、マスク画像Rmを補正した補正マスク画像Rmcを生成するとともに、補正マスク画像Rmcおよびライブ画像Rr22に基づいて、補正マスク画像Rmcに属する各画素のうちの少なくとも一部の画素の移動情報E22(移動量d22)とを取得するように構成されている。
【0105】
画像合成部340は、特徴点の移動情報E21と画素の移動情報E22とに基づいて、DSA画像Rd2(血管像Rd2b)を補正して補正血管像Rd2bcを生成するとともに、補正血管像Rd2bcとライブ画像Rr22とを合成してロードマップ透視画像Rs2を生成するように構成されている。なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0106】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0107】
第3実施形態では、画像取得部320を、マスク画像Rmを基準画像として取得するように構成する。そして、移動情報取得部330を、マスク画像Rmおよびライブ画像Rr22の各々から特徴点画像を抽出するとともに、抽出された特徴点画像に基づく特徴点の移動情報E21(シフト量d21)を取得するように構成する。これにより、造影された血管の画像を含まないマスク画像Rmとライブ画像Rr22とで互いに異なる特徴点が抽出されることを抑制することができる。この結果、特徴点同士を容易に対応付けることができるので、特徴点の移動情報E21を容易に取得することができる。また、ライブ画像Rrに比べて、マスク画像RmはX線の照射量を多くすることができるので、比較的鮮明なマスク画像Rmとライブ画像Rr22とから、特徴点画像を抽出することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0108】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0109】
たとえば、上記実施形態では、本発明の合成対象画像として、DSA画像および血管像を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、DSA画像ではないX線画像を合成対象画像として用いてもよいし、血管の画像を含まないX線画像を合成対象画像として用いてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、「同一の撮影位置」において撮影されたX線画像を、特徴点画像の位置が互いに同一であるものを意味するのものとして説明したが、本発明はこれに限られない。たとえば、「同一の撮影位置」を、撮影部に対する天板の相対位置が同一で、かつ、撮影部におけるX線発生部とX線検出部との相対位置が同一の場合を意味するものとしてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、DSA画像(血管像)と第2ライブ画像とを重畳表示するように合成されたロードマップ透視画像を生成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、造影画像とライブ画像とを並列表示するように合成された合成画像を生成してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、第2ライブ画像が取得される(撮影される)度に、DSA画像(血管像)を補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、術者による操作部に対する入力操作を受け付けた場合のみ、DSA画像(血管像)を補正してもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、被検体の下肢を撮影する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、本発明のX線撮影装置は、被検体の下肢をX線撮影する際に特に効果的であるとともに、被検体の下肢以外の部位をX線撮影する際においても適切に合成画像を生成することができるという効果を奏する。
【0114】
また、上記実施形態では、DSA画像(血管像)と第2ライブ画像とを合成する際に、血管像を白黒反転処理する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、血管像を白黒反転せずに、第2ライブ画像に合成してもよいし、血管像を白黒反転以外の画像処理(色の変更処理)等を行って、第2ライブ画像に合成してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、特徴点の移動情報として、全ての特徴点画像の変位の平均値(シフト量)を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、複数の特徴点画像のうちの一部の特徴点画像のみについて変位を取得し、この変位に基づいてシフト量を取得してもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、白黒反転像と、被検体内に挿入されたカテーテル、ステントまたはガイドワイヤの少なくとも1つが映し出された画像を含むライブ画像とを合成する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、白黒反転像と、カテーテル、ステントおよびガイドワイヤ以外の治療器具が映し出された画像を含むライブ画像とを合成してもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、シフト量がしきい値を超えた場合に、特徴点の移動情報に基づいて第1ライブ画像(造影画像またはマスク画像)を補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、制御負担の増大に問題が少なければ、しきい値を設けずに、ライブ画像を取得する度に、特徴点の移動情報に基づいて第1ライブ画像(造影画像またはマスク画像)を補正するとともに、特徴点の移動情報および画素の移動情報に基づいて、DSA画像(血管像)を補正してもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、ロードマップ透視画像を生成する際、DSA画像(血管像)を補正するとともに、補正されたDSA画像(補正血管像)と第2ライブ画像(またはライブ画像)を合成するように、画像合成部を構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、
図12に示す変形例のX線撮影装置400のように、画像合成部440を、ロードマップ透視画像Rs3を生成する際、第2ライブ画像Rr2を、特徴点の移動情報(シフト量d1)および画素の移動情報(移動量d2)に基づいて補正するとともに、補正された第2ライブ画像Rr32とDSA画像Rd(補正血管像Rdb)とを合成するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0119】
2 撮影部
2a X線発生部
2b X線検出部
10、210、310 画像処理部
20、220、320 画像取得部(透視画像取得部、基準画像取得部)
30、230、330 移動情報取得部
40、240、340、440 画像合成部
100、200、300、400 X線撮影装置