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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】超音波センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/521 20060101AFI20221101BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20221101BHJP
   H04R 1/44 20060101ALI20221101BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20221101BHJP
【FI】
G01S7/521 B
H04R1/02 330
H04R1/44 330D
G01S15/931
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018167027
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020041808
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-070784(JP,A)
【文献】特開2009-055458(JP,A)
【文献】特開2005-072771(JP,A)
【文献】特開2012-070244(JP,A)
【文献】特開2018-125824(JP,A)
【文献】井幡 光詞 ほか,バイモルフ構造を利用した空中超音波センサ,電子情報通信学会2012年基礎・境界ソサイエティ大会講演論文集,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年08月28日,Page: 140,ISSN 1349-1407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/18 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
H04R 1/00 - 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサ(1)であって、
電気信号と超音波振動とを変換するように構成された、超音波素子(5)と、
有底筒形状を有していて、内側に前記超音波素子を収容するように構成された、素子収容ケース(6)と、
を備え、
前記素子収容ケースは、指向中心軸(DA)を囲む筒状に形成された側板部(61)と、前記指向中心軸と平行な軸方向における前記側板部の一端側を閉塞する底板部(62)とを有し、
前記側板部は、前記指向中心軸と直交する径方向について所定厚さを有する円筒状または部分円筒状の薄肉部(611)と、前記指向中心軸を囲む周方向における前記薄肉部の一部に設けられていて前記所定厚さよりも大きな径方向寸法を有する厚肉部(613)とを有し、
前記底板部には、前記超音波素子が固定され、
前記電気信号の入力により励振された前記超音波素子の振動により、前記超音波素子と前記素子収容ケースとによって構成される超音波マイクロフォン(4)が、一方が他方の高次共振周波数ではない第一構造共振周波数および第二構造共振周波数を有するように、前記厚肉部が形成された、
超音波センサ。
【請求項2】
前記薄肉部の厚さ寸法の値は、前記側板部および前記底板部の前記径方向または前記軸方向における寸法の値のうち、前記軸方向における前記底板部の厚さ寸法の値に最も近い、
請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記厚肉部は、前記指向中心軸側に突設された、
請求項1または2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記側板部は、前記薄肉部よりも大きな径方向寸法を有し前記周方向について前記薄肉部に隣接配置された指向性調整部(612)をさらに有し、
前記薄肉部は、部分円筒状に形成された、
請求項1~3のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記側板部の内側の空間である内部空間(63)は、前記指向中心軸と平行な視線で見た場合に、一対の半円と一対の線分とで構成される角丸長方形状あるいは長円状に形成され、
前記側板部は、前記半円に対応して前記指向中心軸を挟んで対向配置された一対の前記薄肉部と、前記線分に対応して前記指向中心軸を挟んで対向配置された一対の前記指向性調整部とを有する、
請求項4に記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記厚肉部は、前記薄肉部の前記軸方向における少なくとも一部に設けられた、
請求項1~5のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記厚肉部は、前記径方向寸法が前記軸方向に沿って変化するように形成された、
請求項1~6のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波周波数帯の送受信を行う超音波送受波器は、例えば、車載用コーナーセンサ等の超音波センサとして産業上利用されている。この種の超音波送受波器は、有底筒状のケースと、このケースの底部に貼り付けられた圧電素子とを備えている。
【0003】
この種の超音波送受波器において、一個の超音波送受波器に複数の共振周波数を持たせる技術が知られている(例えば特許文献1等参照)。これにより、近距離および遠距離の検知を一個の超音波送受波器で行うことができる等、超音波送受波器あるいはこれを備えた超音波センサの高機能化が図られる。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の超音波送受波器は、大きさの異なる2個の有底筒状ケースを有している。この超音波送受波器は、大きい有底筒状ケースの底面と小さい有底筒状ケースの開口部とを固着して、小さい有底筒状ケースの底面に圧電素子を貼り合せることによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5276352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一個の超音波送受波器に複数の共振周波数を持たせる従来の技術においては、圧電素子等の超音波素子を収容するケースの形状が複雑化する。このため、製造コストおよび耐久性の面で課題があった。本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、形状の複雑化を可及的に回避しつつ、複数の共振周波数を有する構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の超音波センサ(1)は、
電気信号と超音波振動とを変換するように構成された、超音波素子(5)と、
有底筒形状を有していて、内側に前記超音波素子を収容するように構成された、素子収容ケース(6)と、
を備え、
前記素子収容ケースは、指向中心軸(DA)を囲む筒状に形成された側板部(61)と、前記指向中心軸と平行な軸方向における前記側板部の一端側を閉塞する底板部(62)とを有し、
前記側板部は、前記指向中心軸と直交する径方向について所定厚さを有する円筒状または部分円筒状の薄肉部(611)と、前記指向中心軸を囲む周方向における前記薄肉部の一部に設けられていて前記所定厚さよりも大きな径方向寸法を有する厚肉部(613)とを有し、
前記底板部には、前記超音波素子が固定され、
前記電気信号の入力により励振された前記超音波素子の振動により、前記超音波素子と前記素子収容ケースとによって構成される超音波マイクロフォン(4)が、一方が他方の高次共振周波数ではない第一構造共振周波数および第二構造共振周波数を有するように、前記厚肉部が形成されている。
【0012】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を、単に示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る超音波センサを搭載した車両の外観を示す斜視図である。
図2図1に示された超音波センサの概略的な装置構成を示す断面図である。
図3図2に示された超音波マイクロフォンの概略構成を示す斜視図である。
図4図3に示された超音波マイクロフォンの音響インピーダンス特性を示すグラフである。
図5】一変形例に係る超音波マイクロフォンの概略構成を示す平面図である。
図6図5におけるVI-VI断面図である。
図7】他の一変形例に係る超音波マイクロフォンの概略構成を示す断面図である。
図8】さらに他の一変形例に係る超音波マイクロフォンの概略構成を示す平面図である。
図9図8におけるIX-IX断面図である。
図10A】さらに他の一変形例に係る超音波マイクロフォンの概略構成を示す斜視図である。
図10B図10Aに示された超音波マイクロフォンの断面図である。
図11】さらに他の一変形例に係る超音波マイクロフォンの概略構成を示す斜視図である。
図12図11に示された超音波マイクロフォンの断面図である。
図13図12におけるXIII-XIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中には挿入せず、その後にまとめて説明する。
【0015】
(実施形態)
図1を参照すると、車両Vは、いわゆる四輪自動車であって、箱状の車体V1を備えている。車体V1の前端部には、車体部品であるフロントバンパーV2が装着されている。車体V1の後端部には、車体部品であるリアバンパーV3が装着されている。
【0016】
フロントバンパーV2およびリアバンパーV3には、超音波センサ1を装着するための貫通孔である装着孔V4が形成されている。超音波センサ1は、いわゆる車載のクリアランスソナーであって、フロントバンパーV2およびリアバンパーV3に装着されている。
【0017】
(超音波センサ)
図2は、超音波センサ1の全体構成を、フロントバンパーV2に装着された車載状態で示す。説明の便宜上、図2において、図示の通りに、Z軸が超音波センサ1の指向中心軸DAと平行となるように右手系XYZ直交座標系を設定する。このとき、指向中心軸DAと平行な方向を「軸方向」と称する。図2における上側、すなわち、Z軸正方向側を、軸方向における「先端側」と称することがある。同様に、図2における下側、すなわち、Z軸負方向側を、軸方向における「基端側」と称することがある。さらに、軸方向と直交する任意の方向を「面内方向」と称することがある。すなわち、「面内方向」は、図2における、XY平面と平行な方向である。
【0018】
図2を参照すると、超音波センサ1は、センサケース2と、弾性保持部材3と、超音波マイクロフォン4とを備えている。超音波マイクロフォン4は、超音波素子5と素子収容ケース6とを備えている。以下、超音波センサ1を構成する各部の構成について説明する。
【0019】
超音波センサ1の筐体を構成するセンサケース2は、弾性保持部材3を保持するように構成されている。弾性保持部材3は、絶縁性且つ弾性を有するシリコーンゴム等の合成樹脂系弾性材料によって形成されている。合成樹脂系弾性材料は、粘弾性材料あるいはエラストマとも称される。弾性保持部材3は、超音波マイクロフォン4の軸方向における先端側を露出させつつ基端側を覆うことで、超音波マイクロフォン4を弾性支持するように構成されている。すなわち、超音波マイクロフォン4は、弾性保持部材3を介して、センサケース2により支持されている。
【0020】
センサケース2は、ケース本体部21と、コネクタ部22と、ケース筒部23とを有している。センサケース2は、ポリプロピレン等の硬質の合成樹脂によって一体に形成されている。
【0021】
ケース本体部21は、略直方体状の外形形状を有する箱状部分であって、軸方向における基端側が開口する有底筒状に形成されている。コネクタ部22は、超音波センサ1を電子制御ユニット等の外部機器と電気接続するために、ケース本体部21における側壁部から外側に向かって延設されている。
【0022】
ケース筒部23は、略円筒状の部分であって、ケース本体部21から軸方向における先端側に突設されている。ケース筒部23は、指向中心軸DAを軸中心とする略円筒形状に形成された弾性保持部材3の、軸方向における基端部を保持するように構成されている。ケース筒部23の内側のシリンダ状の空間は、ケース本体部21の内側の略直方体状の空間と連通するように設けられている。以下、ケース筒部23の内側の空間とケース本体部21の内側の空間とを総称して、センサケース2の内側の空間と称する。
【0023】
センサケース2の内側の空間には、回路基板24と、配線部25と、シールド部26とが収容されている。超音波センサ1の動作を制御する回路基板24は、ケース本体部21に収容されている。配線部25は、超音波マイクロフォン4と回路基板24とを電気接続するように設けられている。シールド部26は、回路基板24と配線部25とを覆うことで、これらを電磁シールドするように、センサケース2の内面に固定されている。
【0024】
ダンパ部材27は、円盤状の部材であって、弾性保持部材3の内径に対応する外径を有している。すなわち、ダンパ部材27は、軸方向における超音波マイクロフォン4よりも基端側にて、弾性保持部材3の内側のシリンダ状の空間内に嵌め込まれている。ダンパ部材27は、超音波マイクロフォン4からセンサケース2への振動伝達を抑制するよう設けられている。具体的には、ダンパ部材27は、絶縁性且つ弾性を有する発泡シリコーン等の発泡弾性体によって形成されている。
【0025】
センサケース2の内側の空間には、充填材28が充填されている。充填材28はシリコーンゴム等の、絶縁性且つ弾性を有する合成樹脂材料によって形成されている。
【0026】
(超音波マイクロフォン)
本実施形態においては、超音波素子5と素子収容ケース6とによって構成される超音波マイクロフォン4は、超音波送受波器としての機能を有している。すなわち、超音波マイクロフォン4は、超音波を送受信可能に構成されている。
【0027】
換言すれば、超音波マイクロフォン4は、印加された駆動信号に基づいて、探査波を指向中心軸DAに沿って送信するように構成されている。指向中心軸DAは、超音波マイクロフォン4から超音波の送受信方向に沿って延びる仮想半直線であって、指向角の基準となるものである。「指向中心軸」は検出軸とも称され得る。また、超音波マイクロフォン4は、周囲に存在する物体による反射波を受信して、受信信号を発生するように構成されている。
【0028】
超音波素子5は、電気信号と超音波振動とを変換するように構成されている。本実施形態においては、超音波素子5は、圧電素子であって、軸方向に厚さ方向を有する薄膜状に形成されている。
【0029】
(素子収容ケース)
素子収容ケース6は、指向中心軸DAを軸中心とする有底筒形状を有している。素子収容ケース6は、内側に超音波素子5を収容するように構成されている。図2および図3を参照しつつ、素子収容ケース6の構成の詳細について説明する。なお、図3に示された右手系XYZ直交座標系は、図2に示された右手系XYZ直交座標系に対応している。
【0030】
素子収容ケース6は、側板部61と底板部62とを備えている。側板部61と底板部62とは、同一の材料によって構成されている。本実施形態においては、素子収容ケース6は、アルミニウム等の金属によって、継ぎ目なく一体に形成されている。
【0031】
側板部61は、指向中心軸DAを囲む筒状に形成されている。本実施形態においては、側板部61は、指向中心軸DAと略平行な中心軸線を有する円筒状に形成されている。
【0032】
底板部62は、軸方向に厚さ方向を有する平板状あるいは薄板状の部分であって、軸方向における側板部61の一端側を閉塞するように設けられている。具体的には、底板部62は、側板部61の軸方向における先端部と継ぎ目なく一体的に結合されている。
【0033】
底板部62には、超音波素子5が固定されている。すなわち、超音波素子5は、側板部61の内側の空間である内部空間63に収容されつつ、底板部62と接合されている。底板部62は、超音波素子5による超音波の送信または受信の際に、側板部61と結合された外縁部を固定端として撓みながら軸方向に超音波振動するように設けられている。
【0034】
側板部61は、薄肉部611と、指向性調整部612と、厚肉部613とを有している。薄肉部611は、指向中心軸DAと直交する径方向について所定厚さを有する部分円筒状に形成されている。「径方向」は、指向中心軸DAから放射状に延びる方向である。すなわち、径方向は、指向中心軸DAを法線とする平面上にて、当該平面と指向中心軸DAとの交点を中心とする仮想円を描いた場合の、当該仮想円の半径方向である。また、側板部61の各部における径方向寸法を「厚さ」と称することがある。換言すれば、薄肉部611は、指向性調整部612および厚肉部613よりも薄い、一定厚さを有している。
【0035】
本実施形態においては、薄肉部611の所定厚さは、側板部61および底板部62の径方向または軸方向における寸法のうち、軸方向における底板部62の厚さに最も近い寸法を有している。具体的には、薄肉部611は、底板部62の厚さすなわち軸方向寸法の0.3~2.0倍、好ましくは0.5~1.5倍、より好ましくは0.7~1.2倍の厚さに形成されている。典型的には、薄肉部611は、底板部62と略同じ厚さに形成され得る。
【0036】
指向性調整部612は、薄肉部611よりも大きな厚さすなわち径方向寸法を有している。具体的には、本実施形態においては、指向性調整部612は、指向中心軸DAと平行な視線で見た場合に、X軸方向に沿って延設された弦と円弧とで囲まれた弓形に形成されている。また、指向性調整部612は、指向中心軸DAを囲む周方向について薄肉部611に隣接配置されている。「周方向」は、上記の仮想円の円周方向である。
【0037】
本実施形態においては、一対の薄肉部611が、指向中心軸DAを挟んで対向配置されている。同様に、一対の指向性調整部612が、指向中心軸DAを挟んで対向配置されている。すなわち、内部空間63は、指向中心軸DAと平行な視線で見た場合に、一対の半円と一対の線分とで構成される角丸長方形状あるいは長円状に形成されている。また、側板部61は、半円に対応して設けられた一対の薄肉部611と、線分に対応して設けられた一対の指向性調整部612とを有している。これにより、超音波マイクロフォン4は、Y軸方向にてX軸方向よりも狭い指向角を有するように構成されている。
【0038】
厚肉部613は、薄肉部611の有する所定厚さよりも大きな厚さすなわち径方向寸法を有している。厚肉部613は、周方向について、薄肉部611に対応する位置に配置されている。また、厚肉部613は、周方向における薄肉部611の一部に設けられている。一方、厚肉部613は、薄肉部611の軸方向における少なくとも一部に設けられている。
【0039】
すなわち、厚肉部613は、電気信号の入力により励振された超音波素子5の振動により、超音波マイクロフォン4が第一構造共振周波数および第二構造共振周波数を有するように形成されている。第一構造共振周波数および第二構造共振周波数は、ともに超音波域であって、一方が他方の高次共振周波数ではない関係を有している。具体的には、第一構造共振周波数をF1とし、第二構造共振周波数をF2とし、F1<F2とし、nを自然数とし、rおよびsを任意の一桁の自然数とすると、F2≠n×F1且つF2≠(r/s)×F1である。
【0040】
具体的には、厚肉部613は、厚さが薄肉部611の厚さの1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは2倍以上となるように形成されている。また、厚肉部613は、好ましくは、厚さが薄肉部611の厚さの5倍以下となるように形成されている。また、厚肉部613は、幅あるいは周方向寸法が当該厚肉部613の厚さ寸法の1/2以上となるように形成されている。厚肉部613の「幅」とは、軸方向と直交し且つ径方向と直交する方向における、厚肉部613の寸法である。同様に、厚肉部613は、軸方向寸法が当該厚肉部613の厚さ寸法の1/2以上となるように形成されている。典型的には、厚肉部613は、薄肉部611の厚さの2倍以上の幅および軸方向寸法を有している。本実施形態においては、厚肉部613は、薄肉部611の軸方向における全体にわたって設けられている。図3に示された例においては、厚肉部613は、軸方向に延設された八角柱を軸方向に沿って半分に切断した形状を有している。
【0041】
本実施形態においては、厚肉部613は、周方向における薄肉部611の略中央位置に配置されている。また、厚肉部613は、指向中心軸DA側に突設されている。すなわち、厚肉部613は、上記のような構造共振周波数を実現するように、薄肉部611から指向中心軸DAに向かって突出する突起部として設けられている。さらに、一対の厚肉部613が、指向中心軸DAを挟んで対向配置されている。
【0042】
(効果)
以下、本実施形態の構成により奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。
【0043】
上記構成を有する超音波センサ1においては、有底筒状の素子収容ケース6の内側に収容された超音波素子5に電気信号が入力されると、超音波素子5が超音波振動する。これにより、素子収容ケース6が励振される。すると、超音波素子5と素子収容ケース6とによって構成される超音波マイクロフォン4が、所定の振動モードで振動する。
【0044】
この点、上記構成においては、有底筒形状における筒状部である側板部61は、薄肉部611と厚肉部613とを有している。厚肉部613は、部分円筒状の薄肉部611の、周方向における一部に設けられている。厚肉部613は、薄肉部611の所定厚さよりも大きな径方向寸法を有している。また、厚肉部613は、薄肉部611の軸方向における少なくとも一部に設けられている。
【0045】
このため、超音波マイクロフォン4にて、厚肉部613が存在しない場合の通常の振動モードに加えて、厚肉部613の存在に起因する追加の振動モードが生じる。これにより、通常の振動モードによる第一構造共振周波数の他に、追加の振動モードの発生に起因する第二構造共振周波数が発生する。第一構造共振周波数と第二構造共振周波数とは、一方が他方の高次共振周波数とはならないような関係となる。
【0046】
図4は、図3に示された超音波マイクロフォン4の振動状態を計算機シミュレーションした結果を示す。図4中、横軸Fは周波数を示し、縦軸Ωは音響インピーダンスを示す。図4に示されているように、図3に示された超音波マイクロフォン4においては、10~100kHzの範囲内にて、二個の顕著な構造共振周波数が発生している。約52kHzにて発生している一方の構造共振周波数は、厚肉部613が存在しない場合の通常の振動モードに対応する。約67kHzにて発生している他方の構造共振周波数は、追加の振動モードの発生に起因する。具体的には、この追加の振動モードは、通常の振動モードによる振動波と、厚肉部613による反射波とが合成されたものであると推定される。
【0047】
すなわち、厚肉部613は、部材間の位置決め等に用いられるような、単なる微小突起ではない。具体的には、厚肉部613は、一方が他方の高次共振周波数とはならない第一構造共振周波数および第二構造共振周波数を顕著に発生させるような、所定程度の大きさを有している。
【0048】
このように、上記構成によれば、薄肉部611の周方向における一部に厚肉部613を設けるという、極めて簡素な形状変更により、一個の超音波マイクロフォン4に複数の構造共振周波数を持たせることができる。したがって、複数の構造共振周波数を有する超音波マイクロフォン4の構成において、形状の複雑化を可及的に回避することが可能となる。
【0049】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0050】
超音波センサ1は、車載用に限定されない。すなわち、超音波センサ1は、車載のクリアランスソナーあるいはコーナーセンサ以外の、様々な用途に用いられ得る。
【0051】
超音波センサ1は、超音波を送受信可能な構成に限定されない。すなわち、例えば、超音波センサ1は、超音波の発信のみが可能な構成を有していてもよい。あるいは、超音波センサ1は、他の超音波発信器から発信された超音波である探査波の、周囲に存在する物体による反射波を受信する機能のみを有するものであってもよい。換言すれば、超音波マイクロフォン4は、送受信用であってもよいし、送信用であってもよいし、受信用であってもよい。
【0052】
超音波マイクロフォン4における各部の構成も、上記具体例に限定されない。具体的には、例えば、超音波マイクロフォン4すなわち素子収容ケース6の外形形状は、略円柱状に限定されず、略正六角柱状、略正八角柱状、等であってもよい。
【0053】
指向性調整部612は、省略され得る。すなわち、薄肉部611は、一定の厚さを有し指向中心軸DAを囲む円筒状に形成されていてもよい。
【0054】
厚肉部613の形状も、上記の具体例に限定されない。すなわち、例えば、図5および図6に示されているように、厚肉部613は、軸方向に延設された四角柱状に形成されていてもよい。
【0055】
厚肉部613は、薄肉部611の軸方向における一部に設けられていてもよい。具体的には、例えば、図7に示されているように、厚肉部613は、底板部62から離隔して設けられていてもよい。
【0056】
あるいは、図8および図9に示されているように、厚肉部613は、底板部62に隣接して設けられていてもよい。この場合、厚肉部613は、底板部62と継ぎ目なく一体に接合されていてもよい。
【0057】
あるいは、図10Aおよび図10Bに示されているように、厚肉部613は、薄肉部611の軸方向における中間位置に設けられていてもよい。すなわち、厚肉部613は、薄肉部611の軸方向における両端から所定距離を隔てた位置に配置されていてもよい。この場合、厚肉部613の軸方向における先端側および基端側の双方に、薄肉部611が形成される。
【0058】
上記の実施形態および各変形例においては、厚肉部613の厚さすなわち径方向寸法は一定であった。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、厚肉部613は、径方向寸法が軸方向に沿って変化するように形成されていてもよい。
【0059】
図11図13は、かかる変形例の一例を示す。本変形例においては、薄肉部611は、一定の厚さを有し指向中心軸DAを囲む円筒状に形成されている。また、厚肉部613は、薄肉部611の軸方向における全体にわたって設けられている。さらに、厚肉部613は、小突出部614と、大突出部615と、寸法変化部616とを有している。
【0060】
小突出部614は、厚肉部613の軸方向における両端部に設けられている。大突出部615は、小突出部614よりも大きな径方向寸法を有している。大突出部615は、一対の小突出部614の間に配置されている。すなわち、大突出部615は、厚肉部613の軸方向における中間位置に設けられている。寸法変化部616は、径方向寸法が変化する部分であって、小突出部614と大突出部615との間に設けられている。
【0061】
なお、小突出部614は、厚肉部613の軸方向における一端側のみに設けられていてもよい。この場合、大突出部615は、側板部61の軸方向における他端側に設けられていてもよい。具体的には、例えば、大突出部615は、底板部62と継ぎ目なく一体に接合されていてもよい。
【0062】
超音波素子5は、圧電素子に限定されない。すなわち、例えば、超音波素子5として、いわゆる静電容量型素子が用いられ得る。
【0063】
上記の説明において、互いに継ぎ目無く一体に形成されていた複数の構成要素は、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されてもよい。同様に、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されていた複数の構成要素は、互いに継ぎ目無く一体に形成されてもよい。
【0064】
上記の説明において、互いに同一の材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに異なる材料によって形成されてもよい。同様に、互いに異なる材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに同一の材料によって形成されてもよい。
【0065】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0066】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。更に、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0067】
1 超音波センサ
2 センサケース
4 超音波マイクロフォン
5 超音波素子
6 素子収容ケース
61 側板部
611 薄肉部
613 厚肉部
62 底板部
DA 指向中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13