(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20221101BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221101BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/00 303
G03G15/08 320
(21)【出願番号】P 2018181209
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 保
(72)【発明者】
【氏名】今西 康
(72)【発明者】
【氏名】砂山 智志
(72)【発明者】
【氏名】中地 一博
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼上 愛
(72)【発明者】
【氏名】菊池 佳名子
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-214451(JP,A)
【文献】特開平08-262818(JP,A)
【文献】米国特許第06694111(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転され、表面に静電潜像が形成されるとともに、前記静電潜像が顕在化されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体を所定の帯電電位に帯電する帯電装置と、
前記帯電電位に帯電された前記像担持体の表面を所定の画像情報に応じて露光することで前記静電潜像を形成する露光装置と、
所定の現像ニップ部において前記像担持体に対向して配置される現像装置であって、回転され周面にトナー及びキャリアからなる現像剤を担持するとともに前記静電潜像が形成された前記像担持体にトナーを供給することで前記トナー像を形成する現像ローラーを含む現像装置と、
直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを前記現像ローラーに印加可能な現像バイアス印加部と、
前記トナー像の濃度を検出する濃度検出部と、
前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる現像電流の直流成分を測定する現像電流測定部と、
所定の情報を記憶する記憶部と、
前記像担持体上に前記トナー像が形成される現像動作時とは異なる非現像動作時に、所定の実行タイミングで、前記帯電装置、前記露光装置及び前記現像バイアス印加部を制御して前記像担持体上に互いにトナー現像量の異なる複数の測定用トナー像を形成し、前記濃度検出部によって検出される前記複数の測定用トナー像の濃度に基づいて、又は、当該複数の測定用トナー像の濃度に加え前記複数の測定用トナー像が形成される際に前記現像電流測定部によって測定される前記現像電流の直流成分に基づいて、前記像担持体上に形成された前記測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する帯電量取得動作を実行する帯電量取得部と、
前記像担持体の表面の非画像形成領域が軸方向全体に亘って前記現像ローラーに対向し、前記像担持体の表面電位と前記現像バイアスの前記直流成分との電位差によって前記トナーが前記像担持体から前記現像ローラーに移動する向きの電界が前記現像ニップ部に形成されている所定の測定タイミングで、前記現像電流測定部によって測定された前記現像電流の直流成分を取得し、当該現像電流の直流成分に応じた特性値を出力する特性値出力部と、
前記特性値出力部によって出力される前記特性値に応じて、前記帯電量取得動作のための前記実行タイミングを決定する実行タイミング決定部と、
を備え
、
前記実行タイミング決定部は、第1の測定タイミングで前記特性値出力部が出力した第1特性値に対する、前記第1の測定タイミングよりも後の第2の測定タイミングで前記特性値出力部が出力した第2特性値の変化量が、予め設定された特性値閾値よりも大きい場合に、前記実行タイミングに至ったと判定し、前記帯電量取得部に前記帯電量取得動作を実行させる、
画像形成装置。
【請求項2】
前記特性値出力部は、前記現像電流測定部によって測定された前記現像電流の直流成分を前記特性値として出力する、
請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像装置に収容される前記現像剤に含まれるキャリア量に対するトナー量の比率を示すトナー濃度を検出するトナー濃度検出部を更に備え、
前記特性値出力部は、前記測定タイミングで前記現像電流測定部によって測定された前記現像電流の直流成分を、前記測定タイミングで前記トナー濃度検出部によって検出された前記トナー濃度に応じて補正したものを前記特性値として出力する、
請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記実行タイミング決定部は、第1の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第1トナー帯電量と、前記第1の実行タイミングよりも後の第2の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第2トナー帯電量と、の差の絶対値に応じて、前記特性値閾値を変更する、
請求項1から
3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像装置に収容される前記現像剤における前記トナーの濃度を検出するトナー濃度検出部を更に備え、
前記実行タイミング決定部は、第1の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第1トナー帯電量と前記第1の実行タイミングで検出された前記トナー濃度である第1トナー濃度との積と、前記第1の実行タイミングよりも後の第2の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第2トナー帯電量と前記第2の実行タイミングで検出された前記トナー濃度である第2トナー濃度との積と、の差の絶対値に応じて、前記特性値閾値を変更する、
請求項1から
3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記実行タイミング決定部は、前記絶対値が予め設定された第1判定閾値よりも大きい場合に、前記特性値閾値が小さくなるように当該特性値閾値を変更する、
請求項
4又は
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記実行タイミング決定部は、前記絶対値が予め設定された第2判定閾値よりも小さい場合に、前記特性値閾値が大きくなるように当該特性値閾値を変更する、
請求項
4又は
5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記記憶部は、前記特性値出力部によって出力される前記特性値を随時記憶し、
前記記憶部に記憶された前記特性値の推移に基づいて前記現像装置内の前記現像剤が寿命に至る寿命時期を予測し、当該予測した前記寿命時期に関する寿命情報を出力する寿命予測部を更に備える
請求項1乃至
7の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記憶部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差が一定に保持された状態で前記現像バイアスの交流電圧の周波数が変化された場合における当該周波数の変化量に対する前記トナー像の濃度変化量の関係を示す参照用直線の傾きに関する参照情報を、前記トナーの帯電量毎に予め格納し、
前記帯電量取得部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で前記現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させながら前記像担持体上に前記複数の測定用トナー像を形成し、前記周波数の変化量に対する前記測定用トナー像の濃度変化量の関係を示す測定用直線の傾きを、前記周波数の変化量と前記濃度検出部による前記測定用トナー像の濃度検出結果とから取得するとともに、当該取得された測定用直線の傾きと前記記憶部の参照情報とから前記像担持体上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する、
請求項1乃至
8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記記憶部に格納されている前記参照情報は、前記トナーの帯電量が第1の仮想帯電量である場合に前記参照用直線の傾きが負であり、前記トナーの帯電量が第1の仮想帯電量よりも小さな第2の仮想帯電量である場合に前記参照用直線の傾きが正であり、更に、前記トナーの帯電量の低下とともに前記参照用直線の傾きが増大するように設定されている、
請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記帯電量取得部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で前記現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させながら前記像担持体上に前記複数の測定用トナー像を形成し、前記濃度検出部によって検出される前記複数の測定用トナー像の濃度の差に対する前記複数の測定用トナー像が形成される際に前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる前記現像電流の直流成分の差の比に基づいて、前記像担持体上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する、
請求項1乃至
8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記帯電量取得部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で前記露光装置を制御して単位面積あたりの印字率を変化させながら前記像担持体上に前記複数の測定用トナー像を形成し、前記濃度検出部によって検出される前記複数の測定用トナー像の濃度の差に対する前記複数の測定用トナー像が形成される際に前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる前記現像電流の直流成分の差の比に基づいて、前記像担持体上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する、
請求項1乃至
8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成する画像形成装置として、感光体ドラム(像担持体)と、現像装置と、転写部材と、を備えるものが知られている。感光体ドラム上に形成された静電潜像が、現像ニップ部において現像装置によって顕在化されると、感光体ドラム上にトナー像が形成される。転写部材によって、トナー像がシートに転写される。このような画像形成装置に適用される現像装置として、トナー及びキャリアを含む現像剤が使用される二成分現像技術が知られている。
【0003】
二成分現像においては、印字枚数、環境変動、印字モード(1ジョブあたりの連続印字枚数)及び印字率等の影響を受けて、現像剤が劣化しトナー帯電量が変化するという現象が見られる。この結果、画像濃度の低下、トナーかぶりの発生やトナー飛散の増加といった問題が発生する。このような問題に対応するため、従来、印字枚数、環境変動、印字モード及び印字率等から現像剤の帯電量変化を予測し、トナー濃度、現像バイアス、感光体の表面電位、現像ローラーの回転速度、飛散トナーを回収する吸引ファンの出力等を調整し、画像濃度の低下やトナーかぶりの悪化、トナー飛散の悪化を抑制する技術が採用されていた。
【0004】
しかしながら、これらの技術は、印字枚数、環境変動、印字モード及び印字率のそれぞれの条件下での個々の予測を組み合わせたものに過ぎず、複数の条件が複合的に変化すると、現像剤の帯電量を充分に予測することは困難であった。
【0005】
このため、トナーの帯電量を更に正確に予測する技術が提案されている。特許文献1、2では、現像前の感光体ドラムの表面電位と、現像後の感光体ドラム上のトナー層の表面電位とがそれぞれ測定される一方、現像されたトナー層の画像濃度測定結果からトナーの現像量が算出される。そして、この測定された各表面電位とトナーの現像量とからトナーの帯電量が算出される。
【0006】
また、特許文献3、4及び5では、現像剤を担持する現像ローラーに流入する電流値が測定され、当該測定された電流値が、現像ローラーから感光体ドラムに移動したトナーの電荷量と仮定される。また、現像されたトナー層の画像濃度測定結果からトナーの現像量が算出される。そして、このトナーの電荷量とトナーの現像量とからトナーの帯電量が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-345075号公報
【文献】特開2004-37952号公報
【文献】特許第5024192号明細書
【文献】特許第5273542号明細書
【文献】特許第4480066号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載された技術では、感光体ドラム上の表面電位を測定するために表面電位センサーが必要になる。ここで、感光体ドラム上に形成されたトナー層の表面電位を測定するためには、表面電位センサーを現像ニップ部よりも感光体ドラムの回転方向下流側に設置する必要がある。しかし、この位置に表面電位センサーを設置すると、表面電位センサーの表面が、現像ローラーから飛散したトナーによって汚染されやすく、長期に亘って精度良く表面電位を測定することが困難となる。
【0009】
また、特許文献3、4及び5に記載された技術では、現像ローラーに流入する電流が、トナー中を流れる電流に加えてキャリア中を流れる電流も含んでしまう。したがって、当該電流値からトナーの帯電量を精度よく算出することが難しい。更に、画像形成装置において印字が繰り返されることでキャリアのコート剥がれやコート汚染によってキャリアの抵抗値が変化すると、このキャリア中を流れる電流も変化する。このように、従来の技術では、現像ローラーに流入する電流からトナーの電荷量を正しく測定することは困難であった。
【0010】
また、上記の各特許文献に記載された技術では、トナーの帯電量を測定するために、感光体ドラム上に測定用トナー像を含む画像パターンが形成される。トナーの帯電量を精度良く測定するためには、頻繁に測定用トナー像を形成することが望ましいが、この場合、通常の画像形成動作が実行できない時間が増大するとともに、測定時に消費するトナー量が増大するという問題があった。このため、トナーの帯電量を測定するタイミングを効率的に決定することが望まれていた。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、二成分現像方式が適用された現像装置を含む画像形成装置において、トナーの帯電量を精度よく且つ効率的に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、回転され、表面に静電潜像が形成されるとともに、前記静電潜像が顕在化されたトナー像を担持する像担持体と、前記像担持体を所定の帯電電位に帯電する帯電装置と、前記帯電電位に帯電された前記像担持体の表面を所定の画像情報に応じて露光することで前記静電潜像を形成する露光装置と、所定の現像ニップ部において前記像担持体に対向して配置される現像装置であって、回転され周面にトナー及びキャリアからなる現像剤を担持するとともに前記静電潜像が形成された前記像担持体にトナーを供給することで前記トナー像を形成する現像ローラーを含む現像装置と、直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを前記現像ローラーに印加可能な現像バイアス印加部と、前記トナー像の濃度を検出する濃度検出部と、前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる現像電流の直流成分を測定する現像電流測定部と、所定の情報を記憶する記憶部と、前記像担持体上に前記トナー像が形成される現像動作時とは異なる非現像動作時に、所定の実行タイミングで、前記帯電装置、前記露光装置及び前記現像バイアス印加部を制御して前記像担持体上に互いにトナー現像量の異なる複数の測定用トナー像を形成し、前記濃度検出部によって検出される前記複数の測定用トナー像の濃度に基づいて、又は、当該複数の測定用トナー像の濃度に加え前記複数の測定用トナー像が形成される際に前記現像電流測定部によって測定される前記現像電流の直流成分に基づいて、前記像担持体上に形成された前記測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する帯電量取得動作を実行する帯電量取得部と、前記像担持体の表面の非画像形成領域が軸方向全体に亘って前記現像ローラーに対向し、前記像担持体の表面電位と前記現像バイアスの前記直流成分との電位差によって前記トナーが前記像担持体から前記現像ローラーに移動する向きの電界が前記現像ニップ部に形成されている所定の測定タイミングで、前記現像電流測定部によって測定された前記現像電流の直流成分を取得し、当該現像電流の直流成分に応じた特性値を出力する特性値出力部と、前記特性値出力部によって出力される前記特性値に応じて、前記帯電量取得動作のための前記実行タイミングを決定する実行タイミング決定部と、を備え、前記実行タイミング決定部は、第1の測定タイミングで前記特性値出力部が出力した第1特性値に対する、前記第1の測定タイミングよりも後の第2の測定タイミングで前記特性値出力部が出力した第2特性値の変化量が、予め設定された特性値閾値よりも大きい場合に、前記実行タイミングに至ったと判定し、前記帯電量取得部に前記帯電量取得動作を実行させる。
【0013】
本構成によれば、帯電量取得部は、非現像動作時に、濃度検出部によって検出される複数の測定用トナー像の濃度に基づいて、又は、当該複数の測定用トナー像の濃度に加え複数の測定用トナー像が形成される際に現像ローラーと現像バイアス印加部との間を流れる現像電流の直流成分に基づいて、像担持体上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する。このため、画像形成に伴う現像動作とは異なる時に、測定用トナー像を用いてトナーの帯電量を精度良く取得することができる。
【0014】
特性値出力部は、所定の測定タイミングで、現像電流測定部によって測定された現像電流の直流成分を取得し、当該現像電流の直流成分に応じた特性値を出力する。この測定タイミングは、非画像形成領域が軸方向全体に亘って現像ローラーに対向し、像担持体から現像ローラーに移動する向きの電界が現像ニップ部に形成されているタイミングに設定されている。このようなタイミングで測定される現像電流には、トナーが現像ローラーから像担持体に移動する際に流れる電流成分が含まれにくいため、キャリア中を流れる電流(キャリア電流)を精度良く測定することができる。
【0015】
そして、実行タイミング決定部は、特性値出力部によって出力されるキャリア電流に応じた特性値に応じて、帯電量取得動作のための実行タイミングを決定する。このように、キャリア電流に応じた特性値に基づいて、今後の帯電量取得動作の実行タイミングが決定されるので、キャリアの劣化具合に応じて変化するトナーの帯電量を効率的に取得することができる。したがって、キャリアの劣化具合やトナーの帯電量とは関係なく予め設定された実行タイミングで帯電量取得動作が実行される場合と比較して、トナーの帯電量の変化を効率的に測定することができる。換言すれば、トナーの帯電量の変化が少ない時期に、帯電量取得動作を過剰に実行することを防止することができる。
【0017】
本構成によれば、実行タイミング決定部は、第1の測定タイミングで特性値出力部が出力した第1特性値に対する、第1の測定タイミングよりも後の第2の測定タイミングで特性値出力部が出力した第2特性値の変化量に応じて、帯電量取得動作の実行タイミングを適切に決定することができる。
【0018】
上記の構成において、前記特性値出力部は、前記現像電流測定部によって測定された前記現像電流の直流成分を前記特性値として出力することが望ましい。
【0019】
本構成によれば、現像電流測定部によって精度良く測定されるキャリア電流が、特性値出力部によって特性値として出力される。このため、実行タイミング決定部は、特性値出力部によって特性値として出力される精度の良いキャリア電流に応じて、帯電量取得動作のための実行タイミングを適切に決定することができる。
【0020】
上記の構成において、前記現像装置に収容される前記現像剤に含まれるキャリア量に対するトナー量の比率を示すトナー濃度を検出するトナー濃度検出部を更に備え、前記特性値出力部は、前記測定タイミングで前記現像電流測定部によって測定された前記現像電流の直流成分を、前記測定タイミングで前記トナー濃度検出部によって検出された前記トナー濃度に応じて補正したものを前記特性値として出力してもよい。
【0021】
現像装置に収容される現像剤に含まれるキャリア量に対するトナー量の比率を示すトナー濃度が高くなっている場合、現像ローラーと像担持体との間に形成される磁気ブラシの抵抗は高くなる。その影響で、特性値出力部が前記測定タイミングで非画像形成領域に現像バイアスを印加しているときに測定する現像電流の測定値は、トナー濃度が規定値である場合に比べて低下している虞がある。
【0022】
本構成によれば、現像電流測定部によって精度良く測定されるキャリア電流を、トナー濃度によって補正したものが特性値として出力され、当該特性値に応じて帯電量取得動作のための実行タイミングが決定される。このため、現像電流測定部によって測定されるキャリア電流のみに応じて帯電量取得動作のための実行タイミングを決定する場合よりも、上記のような、トナー濃度の変化が現像電流の測定値に与える影響を除外して、帯電量取得動作のための実行タイミングをより適切に決定することができる。
【0023】
上記の構成において、前記実行タイミング決定部は、第1の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第1トナー帯電量と、前記第1の実行タイミングよりも後の第2の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第2トナー帯電量と、の差の絶対値に応じて、前記特性値閾値を変更することが望ましい。
【0024】
本構成によれば、実行タイミング決定部は、第1の実行タイミングで取得された第1トナー帯電量と、第1の実行タイミングよりも後の第2の実行タイミングで取得された第2トナー帯電量と、の差の絶対値に応じて、帯電量取得動作の実行タイミングを決定することができる。
【0025】
このため、第1の実行タイミングで取得された第1トナー帯電量と、第1の実行タイミングよりも後の第2の実行タイミングで取得された第2トナー帯電量と、の差の絶対値が、帯電量取得動作の実行が必要でない程度であるにも関わらず、特性値閾値が低すぎることによって、頻繁に帯電量取得動作が実行される虞を解消することができる。また、絶対値が帯電量取得動作の実行が必要である程度であるにも関わらず、特性値閾値が高すぎることによって、帯電量取得動作が長時間実行されない虞を解消することができる。
【0026】
上記の構成において、前記現像装置に収容される前記現像剤における前記トナーの濃度を検出するトナー濃度検出部を更に備え、前記実行タイミング決定部は、第1の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第1トナー帯電量と前記第1の実行タイミングで検出された前記トナー濃度である第1トナー濃度との積と、前記第1の実行タイミングよりも後の第2の実行タイミングで取得された前記トナーの帯電量である第2トナー帯電量と前記第2の実行タイミングで検出された前記トナー濃度である第2トナー濃度との積と、の差の絶対値に応じて、前記特性値閾値を変更することが望ましい。
【0027】
本構成によれば、実行タイミング決定部は、第1の実行タイミングにおいて取得及び検出された第1トナー帯電量及び第1トナー濃度の積と、第1の実行タイミングよりも後の第2の実行タイミングにおいて取得及び検出された第2トナー帯電量及び第2トナー濃度の積と、の差の絶対値に応じて、帯電量取得動作の実行タイミングを決定することができる。
【0028】
このため、第1トナー帯電量及び第1トナー濃度の積と、第2トナー帯電量及び第2トナー濃度の積と、の差の絶対値が、帯電量取得動作の実行が必要でない程度であるにも関わらず、特性値閾値が低すぎることによって、頻繁に帯電量取得動作が実行される虞を解消することができる。また、絶対値が帯電量取得動作の実行が必要である程度であるにも関わらず、特性値閾値が高すぎることによって、帯電量取得動作が長時間実行されない虞を解消することができる。
【0029】
上記の構成において、前記実行タイミング決定部は、前記絶対値が予め設定された第1判定閾値よりも大きい場合に、前記特性値閾値が小さくなるように当該特性値閾値を変更してもよい。
【0030】
本構成によれば、実行タイミング決定部は、前記絶対値が第1判定閾値よりも大きく、帯電量取得動作で取得されるトナーの帯電量が大きく変化するような場合に、特性値閾値を小さくなるように変更することができる。これにより、トナーの帯電量が大きく変化するような場合に、特性値閾値が高すぎることによって、帯電量取得動作が長時間実行されなくなる虞を解消することができる。
【0031】
上記構成において、前記実行タイミング決定部は、前記絶対値が予め設定された第2判定閾値よりも小さい場合に、前記特性値閾値が大きくなるように当該特性値閾値を変更してもよい。
【0032】
本構成によれば、実行タイミング決定部は、前記絶対値が第2判定閾値よりも小さく、帯電量取得動作で取得されるトナーの帯電量があまり変化しないような場合に、特性値閾値を大きくなるように変更することができる。これにより、トナーの帯電量があまり変化しないような場合に、特性値閾値が低すぎることによって、頻繁に帯電量取得動作が実行される虞を解消することができる。
【0033】
上記構成において、前記記憶部は、前記特性値出力部によって出力される前記特性値を随時記憶し、前記記憶部に記憶された前記特性値の推移に基づいて前記現像装置内の前記現像剤が寿命に至る寿命時期を予測し、当該予測した前記寿命時期に関する寿命情報を出力する寿命予測部を更に備えてもよい。
【0034】
本構成によれば、記憶部に記憶されたキャリア電流に応じた特性値の推移に基づいて、現像装置内の現像剤が寿命に至る寿命時期が予測され、当該予測された寿命時期に関する寿命情報が出力される。このため、ユーザは、当該出力された寿命情報から、現像剤の寿命時期を容易に把握することができる。
【0035】
上記の構成において、前記記憶部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差が一定に保持された状態で前記現像バイアスの交流電圧の周波数が変化された場合における当該周波数の変化量に対する前記トナー像の濃度変化量の関係を示す参照用直線の傾きに関する参照情報を、前記トナーの帯電量毎に予め格納し、前記帯電量取得部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で前記現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させながら前記像担持体上に前記複数の測定用トナー像を形成し、前記周波数の変化量に対する前記測定用トナー像の濃度変化量の関係を示す測定用直線の傾きを、前記周波数の変化量と前記濃度検出部による前記測定用トナー像の濃度検出結果とから取得するとともに、当該取得された測定用直線の傾きと前記記憶部の参照情報とから前記像担持体上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得することが望ましい。
【0036】
本構成によれば、像担持体上の電位を測定する表面電位センサや現像ローラーに流入する現像電流を測定する電流計を用いることなく、トナーの帯電量を取得することができる。
【0037】
上記の構成において、前記記憶部に格納されている前記参照情報は、前記トナーの帯電量が第1の仮想帯電量である場合に前記参照用直線の傾きが負であり、前記トナーの帯電量が第1の仮想帯電量よりも小さな第2の仮想帯電量である場合に前記参照用直線の傾きが正であり、更に、前記トナーの帯電量の低下とともに前記参照用直線の傾きが増大するように設定されていることが望ましい。
【0038】
本構成によれば、現像バイアスの交流電圧の周波数と像担持体に形成されるトナー像の濃度(現像トナー量)との関係から、トナーの帯電量を精度良く取得することができる。
【0039】
上記の構成において、前記帯電量取得部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で前記現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させながら前記像担持体上に前記複数の測定用トナー像を形成し、前記濃度検出部によって検出される前記複数の測定用トナー像の濃度の差に対する前記複数の測定用トナー像が形成される際に前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる前記現像電流の直流成分の差の比に基づいて、前記像担持体上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得するものでもよい。
【0040】
また、上記の構成において、前記帯電量取得部は、前記現像ローラーと前記像担持体との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で前記露光装置を制御して単位面積あたりの印字率を変化させながら前記像担持体上に前記複数の測定用トナー像を形成し、前記濃度検出部によって検出される前記複数の測定用トナー像の濃度の差に対する前記複数の測定用トナー像が形成される際に前記現像ローラーと前記現像バイアス印加部との間を流れる前記現像電流の直流成分の差の比に基づいて、前記像担持体上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得するものでもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、二成分現像方式が適用された現像装置を含む画像形成装置において、トナーの帯電量を精度よくかつ効率的に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る現像装置の断面図及び制御部の電気的構成を示したブロック図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の現像動作を示す模式図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る像担持体及び現像ローラーの電位の大小関係を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、現像バイアスの周波数と画像濃度との関係を示したグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、
図4のグラフの傾きとトナー帯電量との関係を示したグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行される帯電量測定モードのフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において実行される帯電量測定モード時に像担持体上に形成される測定用トナー像の模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る画像形成装置において、帯電量測定モードの実行タイミングを決定する動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る画像形成装置における現像電流と耐久枚数との関係を示したグラフである。
【
図10】本発明の変形実施形態に係る画像形成装置において、帯電量測定モードの実行タイミングを決定する動作を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の変形実施形態に係る画像形成装置において実行される帯電量測定モードのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る画像形成装置10について、図面に基づき詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンタを例示する。画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ装置、及びこれらの複合機等であってもよい。また、画像形成装置は、単色(モノクロ)画像を形成するものでもよい。
【0044】
図1は、画像形成装置10の内部構造を示す断面図である。この画像形成装置10は、箱形の筐体構造を備える装置本体11を備える。この装置本体11内には、シートPを給紙する給紙部12、給紙部12から給紙されたシートPに転写するトナー像を形成する画像形成部13、前記トナー像が一次転写される中間転写ユニット14、画像形成部13にトナーを補給するトナー補給部15、及び、シートP上に形成された未定着トナー像をシートPに定着する処理を施す定着部16が内装されている。さらに、装置本体11の上部には、定着部16で定着処理の施されたシートPが排紙される排紙部17が備えられている。
【0045】
装置本体11の上面の適所には、シートPに対する出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示装置や、電源キーや出力条件を入力するためのタッチパネルや各種の操作キーが設けられている。
【0046】
装置本体11内には、さらに、画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びるシート搬送路111が形成されている。シート搬送路111には、適所にシートを搬送する搬送ローラー対112が設けられている。また、シートのスキュー矯正を行うと共に、後述する二次転写のニップ部に所定のタイミングでシートを送り込むレジストローラー対113が、シート搬送路111における前記ニップ部の上流側に設けられている。シート搬送路111は、シートPを給紙部12から排紙部17まで、画像形成部13及び定着部16を経由して搬送させる搬送路である。
【0047】
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122、及び給紙ローラー対123を備える。給紙トレイ121は、装置本体11の下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚のシートPが積層されたシート束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121に貯留されたシート束P1の最上面のシートPを1枚ずつ繰り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
【0048】
給紙部12は、装置本体11の、
図1に示す左側面に取り付けられる手差し給紙部を備える。手差し給紙部は、手差しトレイ124、ピックアップローラー125、及び給紙ローラー対126を備える。手差しトレイ124は、手差しされるシートPが載置されるトレイであり、手差しでシートPを給紙する際、
図1に示すように、装置本体11の側面から開放される。ピックアップローラー125は、手差しトレイ124に載置されたシートPを繰り出す。給紙ローラー対126は、ピックアップローラー125によって繰り出されたシートPをシート搬送路111に送り出す。
【0049】
画像形成部13は、シートPに転写するトナー像を形成するものであって、異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成ユニットを備える。この画像形成ユニットとして、本実施形態では、後述する中間転写ベルト141の回転方向上流側から下流側に向けて(
図1に示す左側から右側へ)順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット13M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット13C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット13Y、及びブラック(Bk)色の現像剤を用いるブラック用ユニット13Bkが備えられている。各ユニット13M、13C、13Y、13Bkは、それぞれ感光体ドラム20(像担持体)と、感光体ドラム20の周囲に配置された帯電装置21、現像装置23、一次転写ローラー24及びクリーニング装置25とを備える。また、各ユニット13M、13C、13Y、13Bk共通の露光装置22が、画像形成ユニットの下方に配置されている。
【0050】
感光体ドラム20は、その軸回りに回転駆動され、その表面に静電潜像が形成されるとともに、前記静電潜像が顕在化されたトナー像を担持する。この感光体ドラム20としては、一例として、公知のアモルファスシリコン(α-Si)感光体ドラムや有機(OPC)感光体ドラムが用いられる。
【0051】
帯電装置21は、感光体ドラム20の表面を所定の帯電電位に均一に帯電する。帯電装置21は、帯電ローラーと、前記帯電ローラーに付着したトナーを除去するための帯電クリーニングブラシとを備える。
【0052】
露光装置22は、帯電装置21よりも感光体ドラム20の回転方向下流側に位置する露光用光路を通じて感光体ドラム20に対向して配置され、内部に光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラー等の各種の光学系機器を有する。露光装置22は、前記帯電電位に均一に帯電された感光体ドラム20の表面に、画像データ(所定の画像情報)に基づき変調された光を照射して露光することで、静電潜像を形成する。
【0053】
現像装置23は、露光装置22の露光用光路よりも感光体ドラム20の回転方向下流側の所定の現像ニップ部NP(
図3A)において感光体ドラム20に対向して配置される。現像装置23は、回転され周面にトナー及びキャリアからなる現像剤を担持するとともに感光体ドラム20にトナーを供給することで前記トナー像を形成する現像ローラー231を含む。
【0054】
一次転写ローラー24は、中間転写ユニット14に備えられている中間転写ベルト141を挟んで感光体ドラム20とニップ部を形成する。更に、一次転写ローラー24は、感光体ドラム20上のトナー像を中間転写ベルト141上に一次転写する。クリーニング装置25は、トナー像転写後の感光体ドラム20の周面を清掃する。
【0055】
中間転写ユニット14は、画像形成部13とトナー補給部15との間に設けられた空間に配置され、中間転写ベルト141と、図略のユニットフレームにて回転可能に支持された駆動ローラー142と、従動ローラー143と、バックアップローラー146と、濃度センサー100と、を備える。中間転写ベルト141は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム20の周面にそれぞれ当接するように、駆動ローラー142及び従動ローラー143、146に架け渡されている。中間転写ベルト141は駆動ローラー142の回転により周回駆動される。従動ローラー143の近傍には、中間転写ベルト141の周面上に残存したトナーを除去するベルトクリーニング装置144が配置されている。濃度センサー100(濃度検出部)は、ユニット13M、13C、13Y、13Bkよりも下流側において中間転写ベルト141に対向して配置されており、中間転写ベルト141上に形成されたトナー像の濃度を検出する。尚、他の実施形態において、濃度センサー100は、感光体ドラム20上のトナー像の濃度を検出するものでもよく、また、シートP上に定着されたトナー像の濃度を検出するものでもよい。
【0056】
駆動ローラー142に対向して、中間転写ベルト141の外側には、二次転写ローラー145が配置されている。二次転写ローラー145は、中間転写ベルト141の周面に圧接されて、駆動ローラー142との間で転写ニップ部を形成している。中間転写ベルト141上に一次転写されたトナー像は、給紙部12から供給されるシートPに、転写ニップ部において二次転写される。すなわち、中間転写ユニット14及び二次転写ローラー145は、感光体ドラム20上に担持されたトナー像をシートPに転写する。また、駆動ローラー142には、その周面を清掃するためのロールクリーナー200が配置されている。
【0057】
トナー補給部15は、画像形成に用いられるトナーを貯留するものであり、本実施形態ではマゼンタ用トナーコンテナ15M、シアン用トナーコンテナ15C、イエロー用トナーコンテナ15Y及びブラック用トナーコンテナ15Bkを備える。これらトナーコンテナ15M、15C、15Y、15Bkは、それぞれM/C/Y/Bk各色の補給用トナーを貯留するものである。コンテナ底面に形成されたトナー排出口15Hから、M/C/Y/Bk各色に対応する画像形成ユニット13M、13C、13Y、13Bkの現像装置23に各色のトナーが補給される。
【0058】
定着部16は、内部に加熱源を備えた加熱ローラー161と、加熱ローラー161に対向配置された定着ローラー162と、定着ローラー162と加熱ローラー161とに張架された定着ベルト163と、定着ベルト163を介して定着ローラー162と対向配置され定着ニップ部を形成する加圧ローラー164とを備えている。定着部16へ供給されたシートPは、前記定着ニップ部を通過することで、加熱加圧される。これにより、前記転写ニップ部でシートPに転写されたトナー像は、シートPに定着される。
【0059】
排紙部17は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹部の底部に排紙されたシートPを受ける排紙トレイ171が形成されている。定着処理が施されたシートPは、定着部16の上部から延設されたシート搬送路111を経由して、排紙トレイ151へ向けて排紙される。
【0060】
<現像装置について>
図2は、本実施形態に係る現像装置23の断面図及び制御部980の電気的構成を示したブロック図である。現像装置23は、現像ハウジング230と、現像ローラー231と、第1スクリューフィーダー232と、第2スクリューフィーダー233と、規制ブレード234とを備える。現像装置23には、二成分現像方式が適用されている。
【0061】
現像ハウジング230には、現像剤収容部230Hが備えられている。現像剤収容部230Hには、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤が収容されている。また、現像剤収容部230Hは、現像剤が現像ローラー231の軸方向の一端側から他端側に向かう第1搬送方向(
図2の紙面と直交する方向、後から前に向かう方向)に搬送される第1搬送部230Aと、軸方向の両端部において第1搬送部230Aに連通され、第1搬送方向とは逆の第2搬送方向に現像剤が搬送される第2搬送部230Bとを含む。第1スクリューフィーダー232及び第2スクリューフィーダー233は、
図2の矢印D22、D23方向に回転され、それぞれ、現像剤を第1搬送方向及び第2搬送方向に搬送する。特に、第1スクリューフィーダー232は、現像剤を第1搬送方向に搬送しながら、現像ローラー231に現像剤を供給する。
【0062】
現像ローラー231は、現像ニップ部NP(
図3A)において、感光体ドラム20に対向して配置されている。現像ローラー231は、回転されるスリーブ231Sと、スリーブ231Sの内部に固定配置された磁石231Mとを備える。磁石231Mは、S1、N1、S2、N2及びS3極を備える。N1極は主極とし機能し、S1極及びN2極は搬送極として機能し、S2極は剥離極として機能する。また、S3極は、汲み上げ極及び規制極として機能する。一例として、S1極、N1極、S2極、N2極及びS3極の磁束密度は、54mT、96mT、35mT、44mT及び45mTに設定される。現像ローラー231のスリーブ231Sは、
図2の矢印D21方向に回転される。現像ローラー231は、回転され、現像ハウジング230内の現像剤を受け取って現像剤層を担持し、感光体ドラム20にトナーを供給する。尚、本実施形態では、現像ローラー231は、感光体ドラム20と対向する位置において、同方向(ウィズ方向)に回転する。
【0063】
規制ブレード234(層厚規制部材)は、現像ローラー231に所定の間隔をおいて配置され、第1スクリューフィーダー232から現像ローラー231の周面上に供給された現像剤の層厚を規制する。
【0064】
現像装置23を備える画像形成装置10は、更に、現像バイアス印加部971と、駆動部972と、電流計973(現像電流測定部)と、制御部980と、を備える。制御部980は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。
【0065】
現像バイアス印加部971は、直流電源と交流電源とから構成され、後記のバイアス制御部982からの制御信号に基づき、現像装置23の現像ローラー231に、直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを印加する。
【0066】
駆動部972は、モーター及びそのトルクを伝達するギア機構からなり、後記の駆動制御部981からの制御信号に応じて、画像形成動作及び帯電量測定モードの実行時に、感光体ドラム20等に加え、現像装置23内の現像ローラー231及び第1スクリューフィーダー232、第2スクリューフィーダー233を回転駆動させる。尚、駆動部972は、画像形成装置10のその他の部材を駆動(回転)する駆動力を更に発生する。画像形成動作とは、感光体ドラム20、帯電装置21、露光装置22、現像装置23、一次転写ローラー24、中間転写ユニット14、二次転写ローラー145及び定着部16を駆動して、シートPに画像を形成する動作を示す。
【0067】
電流計973は、現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる電流(以降、現像電流)の直流成分を測定する。
【0068】
制御部980は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、駆動制御部981、バイアス制御部982、記憶部983、モード制御部984(帯電量取得部、特性値出力部、寿命予測部)及び判定部985(実行タイミング決定部)を備えるように機能する。
【0069】
駆動制御部981は、駆動部972を制御して、現像ローラー231、第1スクリューフィーダー232、第2スクリューフィーダー233を回転駆動させる。また、駆動制御部981は、不図示の駆動機構を制御して、感光体ドラム20を回転駆動させる。
【0070】
バイアス制御部982は、感光体ドラム20上にトナー像が形成される現像動作時に、現像バイアス印加部971を制御して、感光体ドラム20と現像ローラー231との間に直流電圧及び交流電圧の電位差を設ける。前記電位差によって、トナーが現像ローラー231から感光体ドラム20に移動されることにより、感光体ドラム20上にトナー像が形成される。
【0071】
記憶部983は、駆動制御部981、バイアス制御部982、モード制御部984及び判定部985によって参照される各種の情報を記憶している。一例として、記憶部983は、現像ローラー231の回転数や環境に応じて調整される現像バイアスの値等を記憶している。また、記憶部983は、モード制御部984によって取得されるトナーの帯電量を随時記憶する。
【0072】
また、記憶部983は、現像ローラー231と感光体ドラム20との間の直流電圧の電位差が一定に保持された状態で現像バイアスの交流電圧の周波数が変化された場合における当該周波数の変化量に対するトナー像の濃度変化量の関係を示す参照用直線の傾きに関する参照情報を、トナーの帯電量毎に予め格納している。記憶部983に格納されている当該参照情報は、トナーの帯電量が第1の仮想帯電量である場合に参照用直線の傾きが負であり、トナーの帯電量が第1の仮想帯電量よりも小さな第2の仮想帯電量である場合に参照用直線の傾きが正であり、更に、トナーの帯電量の低下とともに参照用直線の傾きが増大するように設定されている。
【0073】
また、記憶部983は、モード制御部984によって出力される後述する特性値を随時記憶する。また、記憶部983は、モード制御部984によって取得されるトナーの帯電量を随時記憶する。また、記憶部983は、後述する特性値閾値の初期値及び閾値変更情報を予め記憶している。尚、記憶部983に格納される情報は、グラフやテーブル等の形式でもよい。
【0074】
モード制御部984は、シートPに転写される肉眼で視認可能な画像のトナー像が感光体ドラム20上に形成される現像動作時とは異なる非現像動作時に、所定の実行タイミングで、帯電量測定モード(帯電量取得動作)を実行する。前記実行タイミングには、前記操作パネルを介して帯電量測定モードの実行指示が入力されたタイミング、劣化したトナーを現像ローラー231から感光体ドラム20へ吐き出す(現像させる)劣化トナー吐出し制御が開始されたタイミング、及び、判定部985によって決定された実行タイミングが含まれる。
【0075】
モード制御部984は、帯電量測定モードにおいて、帯電装置21、露光装置22、現像バイアス印加部971等を制御して、感光体ドラム20上に互いにトナー現像量の異なる複数の測定用トナー像を形成し、濃度センサー100によって検出される前記複数の測定用トナー像の濃度に基づいて、又は、当該複数の測定用トナー像の濃度に加え前記複数の測定用トナー像が形成される際に現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流の直流成分に基づいて、感光体ドラム20上に形成された前記測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する。
【0076】
詳しくは、モード制御部984は、当該帯電量測定モードにおいて、現像ローラー231と感光体ドラム20との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させながら感光体ドラム20上に複数の測定用トナー像を形成する。そして、前記周波数の変化量に対する前記測定用トナー像の濃度変化量の関係を示す測定用直線の傾きを、前記周波数の変化量と濃度センサー100による前記測定用トナー像の濃度検出結果とから取得するとともに、当該取得された測定用直線の傾きと記憶部983の参照情報とから感光体ドラム20上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する。
【0077】
また、モード制御部984は、所定の測定タイミングで、電流計973によって測定された現像電流の直流成分を取得し、当該現像電流の直流成分に応じた特性値を出力する。本実施形態では、モード制御部984は、電流計973によって測定された現像電流の直流成分を前記特性値として出力する。
【0078】
前記測定タイミングは、感光体ドラム20の表面の非画像形成領域が感光体ドラム20の回転軸方向全体に亘って現像ローラー231に対向し、感光体ドラム20の表面電位と現像バイアスの直流成分との電位差によってトナーが感光体ドラム20から現像ローラー231に移動する向きの電界が、現像ニップ部NP(
図3A)に形成されているときに定められている。非画像形成領域とは、感光体ドラム20の表面において、シートPに転写される肉眼で視認可能な画像のトナー像が形成される画像形成領域とは異なる領域を示す。
【0079】
前記測定タイミングで、電流計973によって測定される現像電流には、トナーが現像ローラー231から感光体ドラム20に移動する際に流れる電流成分が含まれにくい。つまり、モード制御部984は、前記測定タイミングで、電流計973によって測定された現像電流の直流成分を取得することにより、キャリア中を流れる電流(以降、キャリア電流)を精度良く取得する。
【0080】
また、モード制御部984は、記憶部983に記憶された前記特性値の推移に基づいて現像装置23内の現像剤が寿命に至る寿命時期を予測し、当該予測した寿命時期に関する寿命情報を出力する。
【0081】
判定部985は、モード制御部984によって出力された前記特性値に応じて、帯電量測定モードのための実行タイミングを決定し、当該決定した実行タイミングに応じて、モード制御部984に帯電量測定モードを随時実行させる。
【0082】
<現像動作について>
図3Aは、本実施形態に係る画像形成装置10の現像動作の模式図、
図3Bは、感光体ドラム20及び現像ローラー231の電位の大小関係を示す模式図である。
図3Aを参照して、現像ローラー231と感光体ドラム20との間に、現像ニップ部NPが形成されている。現像ローラー231上に担持されるトナーTN及びキャリアCAは磁気ブラシを形成する。現像ニップ部NPにおいて、磁気ブラシからトナーTNが感光体ドラム20側に供給され、トナー像TIが形成される。
図3Bを参照して、感光体ドラム20の表面電位は、帯電装置21によって、背景部電位V0(V)に帯電される。その後、露光装置22によって露光光が照射されると、感光体ドラム20の表面電位が、印刷される画像に応じて背景部電位V0から最大で画像部電位VL(V)まで変化される。一方、現像ローラー231には、現像バイアスの直流電圧Vdcが印加されるとともに、直流電圧Vdcに不図示の交流電圧が重畳されている。
【0083】
このような反転現像方式の場合、表面電位V0と現像バイアスの直流成分Vdcとの電位差が、感光体ドラム20の背景部へのトナーかぶりを抑制する電位差である。一方、露光後の表面電位VLと現像バイアスの直流成分Vdcとの電位差が、感光体ドラム20の画像部に、プラス極性のトナーを移動させる現像電位差となる。更に、現像ローラー231に印加される交流電圧によって、現像ローラー231から感光体ドラム20へのトナーの移動が促進される。
【0084】
一方、個々のトナーは、現像ハウジング230内で循環搬送される間に、キャリアとの間で摩擦帯電する。それぞれのトナーの帯電量は、上記の現像バイアスによって感光体ドラム20側に移動するトナー量(現像量)に影響する。したがって、画像形成装置10においてトナーの帯電量が精度よく予測することが可能になると、印字枚数、環境変動、印字モード及び印字率等に応じて現像バイアスやトナー濃度を調整することで、良好な画質を維持することができる。このため、従来から、トナーの帯電量を精度よく予測する技術が提案されている。
【0085】
例えば、現像前の感光体ドラム20の表面電位と、現像後の感光体ドラム20上のトナー層の表面電位とをそれぞれ測定する一方、現像されたトナー層の画像濃度測定結果からトナーの現像量を算出する。そして、この測定した各表面電位とトナーの現像量とからトナーの帯電量を算出する技術(以降、第一従来技術)が提案されている。また、現像剤を担持する現像ローラー231に流入する電流値が、現像ローラー231から感光体ドラム20に移動したトナーの電荷量であると仮定し、現像されたトナー層の画像濃度測定結果からトナーの現像量を算出する。そして、このトナーの電荷量とトナーの現像量とからトナーの帯電量を算出する技術(以降、第二従来技術)が提案されている。
【0086】
<従来技術の問題について>
上記の第一従来技術では、感光体ドラム20上の表面電位を測定するために表面電位センサーが必要になる。ここで、感光体ドラム20上に形成されたトナー層の表面電位を測定するためには、表面電位センサーを現像ニップ部NP(
図3A)よりも感光体ドラム20の回転方向下流側に設置する必要がある。しかし、この位置に表面電位センサーを設置すると、表面電位センサーの表面が、現像ローラー231から飛散したトナーによって汚染されやすく、長期に亘って精度良く表面電位を測定することが困難となる。
【0087】
また、上記の第二従来技術では、現像ローラー231に流入する電流が、トナー中を流れる電流に加えてキャリア中を流れる電流も含んでしまう。したがって、電流計973の測定値からトナーの帯電量を精度よく算出することが難しい。更に、画像形成装置10において印字が繰り返されることでキャリアのコート剥がれやコート汚染によってキャリアの抵抗値が変化すると、このキャリア中を流れる電流も変化する。このように、従来の技術では、現像ローラー231に流入する電流からトナーの電荷量を正しく測定することは困難であった。
【0088】
また、第一従来技術及び第二従来技術では、トナーの帯電量を測定するために、感光体ドラム20上に測定用トナー像を含む画像パターンが形成される。トナーの帯電量を精度良く測定するためには、頻繁に測定用トナー像を形成することが望ましいが、この場合、通常の画像形成動作が実行できない時間が増大するとともに、測定時に消費するトナー量が増大するという問題がある。このため、トナーの帯電量を測定するタイミングを効率的に決定することが望まれていた。
【0089】
<トナー帯電量の予測について>
本発明者は、上記の様な状況に鑑み鋭意検討し続けた結果、現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させた場合、トナーの現像量の変化がトナーの帯電量によって異なることを新たに知見した。具体的に、トナーの帯電量が低い場合は、交流電圧の周波数を増大させるとトナーの現像量が増加する。一方、トナーの帯電量が高い場合は、交流電圧の周波数を増大させるとトナーの現像量が減少することを新たに知見した。この特性を利用することで、交流電圧の周波数を変化させた際の画像濃度の変化を測定することによって、トナーの帯電量を精度よく予測することが可能となった。
【0090】
図4は、本実施形態に係る画像形成装置10において、現像バイアスの周波数と画像濃度との関係を示したグラフである。
図5は、本実施形態に係る画像形成装置10において、
図4のグラフの傾きとトナー帯電量との関係を示したグラフである。
【0091】
現像ローラー231に印加される現像バイアスの直流電圧と感光体ドラム20の静電潜像との間の直流電圧における電位差を一定に保持し、現像バイアスの交流電圧のピーク間電圧Vpp、デューティ比をそれぞれ固定した状態で、同交流電圧の周波数を変化させる。この結果、現像ローラー231上のトナーの帯電量に応じて、濃度センサー100によって検出されるトナー像の画像濃度が異なる傾向を示す(
図4)。すなわち、
図4に示すように、トナーの帯電量が27.5μc/gの場合、周波数fが小さくなると画像濃度が低くなる。一方、トナーの帯電量が34.0μc/g、37.7μc/gの場合、周波数fが小さくなると画像濃度が高くなる。そして、トナーの帯電量が小さくなるほど、
図4に示されるグラフの傾きが大きくなる。
図5を参照して、
図4の3つのグラフの傾きと各トナー帯電量との関係は、直線(近似直線)上に分布する。したがって、
図5に示される情報が予め記憶部983に格納され、
図4に示される直線の傾きが後記の帯電量測定モードにおいて導出されれば、その際のトナーの帯電量を測定(予測)することが可能となる。
【0092】
<トナーの帯電量の予測効果について>
本実施形態では、トナーの帯電量を予測することによって、以下のような効果が更に得られる。すなわち、トナーの帯電量を予測するために、感光体ドラム20上の表面電位を測定する表面電位センサーを備える必要がない。また、トナーの帯電量を予測するために、現像バイアスに応じて現像ローラー231に流入する電流を測定する必要がない。このため、表面電位センサーの汚れや、キャリアの抵抗変化によって現像ローラー231に流入する電流の変化の影響を受けることなく、安定してトナーの帯電量を予測することが可能になる。このため、画像形成装置10において印字される画像濃度が低下した場合、現像装置23のトナー濃度を上昇させることでトナーの帯電量を低下させることで画像濃度を増大させることが望ましいか、現像ニップ部NPにおける現像電位差(Vdc-VL)を増大させることで画像濃度を増大させることが望ましいかの選択が容易となる。
【0093】
一般的に、画像形成装置10において画像濃度が低下する原因は、「現像電位差の低下」、「規制ブレード234を通過する現像剤の搬送量低下」、「キャリア抵抗の上昇」、「トナー帯電量の上昇」等が考えられる。この中で、トナー帯電量の上昇以外の要因が原因の画像濃度低下に対して、トナーの帯電量を低下させるためにトナー濃度を上昇させてしまうと、新たにトナー飛散等の不具合が発生する可能性がある。トナー帯電量の上昇が原因の画像濃度低下に対しては、トナー濃度を上昇させることでトナー帯電量を低下させることが望ましく、その他の要因が原因の画像濃度低下に対しては、現像電界(現像バイアス)を増大することが好ましい。また、トナー帯電量を把握することで、二次転写ローラー145に付与される転写電流の最適化も可能となるため、画像形成装置10のシステム全体をより安定させることが可能となる。
【0094】
<周波数とトナー帯電量との関係について>
本発明の発明者は、現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させた場合の画像濃度の変化について、トナー帯電量が下記のように寄与するものと推定する。
【0095】
(1)トナー帯電量が低い場合
トナーの帯電量が低い場合、トナーとキャリアとの間に働く静電付着力が小さいため、トナーはキャリアからは離れやすい。しかしながら、現像バイアスの交流電圧の周波数が小さくなると、現像ニップ部NPにおけるトナーの往復移動回数が低下する。このため、画像濃度が低下する。尚、周波数が小さくなると、交流電圧の1周期あたりのトナーの往復移動距離が増大するが、トナーの帯電量が低い場合、トナーの元々の移動距離が少ないため、画像濃度の低下への影響は少ない。このように、トナーの帯電量が低い場合には、現像バイアスの交流電圧の周波数が小さくなると、画像濃度は低下する。
【0096】
(2)トナー帯電量が高い場合
上記のように現像バイアスの交流電圧の周波数が小さくなると、現像ニップ部NPにおけるトナーの往復移動回数が低下するが、トナーの帯電量が高い場合、もともとトナーがキャリアから外れにくいため、当該往復移動回数の低下の影響は少ない。一方、周波数が低下すると、交流電圧の1周期あたりのトナーの往復距離が増大するため、高いトナーの帯電量に応じて画像濃度が増大する。このように、トナーの帯電量が高い場合には、現像バイアスの交流電圧の周波数が小さくなると、画像濃度は増大する。
【0097】
<トナーの帯電量測定モードのフローについて>
図6は、本実施形態に係る画像形成装置10において実行される帯電量測定モードのフローチャートである。
図7は、帯電量測定モード時に感光体ドラム20上に形成される測定用トナー像の模式図である。
【0098】
図6を参照して、モード制御部984は、帯電量測定モードを開始すると(ステップS01)、現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させるための変数nをn=1に設定する(ステップS02)。そして、モード制御部984は、駆動制御部981及びバイアス制御部982を制御して、予め設定された基準現象バイアスを印加した状態で、現像ローラー231を1回転以上回転させた後、現像バイアスの交流電圧の周波数を第1の周波数(n=1)に設定する(ステップS03)。
【0099】
尚、当該基準現象バイアスは、帯電量測定モードが直前の画像形成の履歴の影響を受けないために設定される。通常、この基準現像バイアス条件には、印字(画像形成)に使用する際のバイアスが適用される。尚、基準現像バイアスとして直流電圧のみが適用されると、上記の履歴の解消効果が弱いので、直流電圧及び交流電圧が重畳的に適用されることが望ましい。
【0100】
次に、交流電圧の周波数が前記第1の周波数に設定された現像バイアスで、予め設定された測定用トナー像が現像され(ステップS04)、当該トナー像が感光体ドラム20から中間転写ベルト141に転写される(ステップS05)。そして、当該測定用トナー像の画像濃度が濃度センサー100によって測定され(ステップS06)、第1の周波数の値とともに、取得された画像濃度が記憶部983に記憶される(ステップS07)。
【0101】
次に、モード制御部984は、周波数に関する変数nが予め設定された規定回数Nに到達したか否かを判定する(ステップS08)。ここで、n≠Nの場合(ステップS08でNO)には、nの値が1つカウントアップされ(n=n+1、ステップS09)、ステップS03からS07までが繰り返される。尚、帯電量測定の精度を高くするためには、規定回数N=2以上であることが望ましく、3≦Nに設定されることが更に望ましい。一方、n=Nの場合(ステップS08でYES)には、モード制御部984が、記憶部983に記憶された情報に基づいて、
図4に示される近似直線の傾きを算出する(ステップS10)。そして、モード制御部984は、記憶部983に格納されている
図5に示されるグラフ(参照情報)に基づいて、上記の傾きからトナーの帯電量を推定し(ステップS11)、帯電量測定モードを終了する(ステップS12)。
【0102】
図7では、規定回数N=3の場合に、周波数fが増大されることによって、測定用トナー像の画像濃度が上昇している例を示している。この場合、トナーの帯電量は、
図4の27.5μc/gのように相対的に低めである。
【0103】
尚、N=2の場合に、ステップS06において測定される画像濃度がそれぞれ、ID1、ID2と定義される。また、第1の周波数がf1(kHz)、第2の周波数がf2(kHz)(f2<f1)と定義される。この場合、
図4に示される直線の傾きaは、式1で算出される。
傾きa=(ID1-ID2)/(f1-f2)) ・・・(式1)
傾きaはトナー帯電量によって異なり、トナー帯電量が低いと「正(+)」となり、トナー帯電量が低いと「負(-)」となる。尚、3≦Nの条件で測定する場合には、最小自乗法で求めた1次式の近似直線の傾きを用いればよい。
【0104】
また、
図5に示される参照情報は、式2で示される。
Q/M=A×直線の傾き+B ・・・(式2)
ここで、A及びBは、現像剤固有の値であり、予め実験によって決定されている。Q/Mは、単位質量あたりのトナー帯電量を意味する。ステップS10において式1から算出された近似直線の傾きaを式2に代入すれば、トナー帯電量Q/Mが算出される。
【0105】
尚、
図6に示される帯電量測定モードは、
図1の各色の現像装置23に対してそれぞれ実行されてもよく、またモード実行中に設定される周波数は現像装置23毎に固有の値に設定してもよい。特に、画像形成装置10の周辺の温湿度や耐久枚数に応じて望ましい周波数が既知の場合には、モード実行中に設定される周波数は当該既知の周波数の近傍で設定されてもよい。また、前回のトナー帯電量測定モードの結果を参照して、新たな測定モードに用いられる周波数が選定されても良い。この場合、測定されるトナー帯電量の精度を高めることができる。
【0106】
<帯電量測定モードの実行タイミングについて>
本実施形態に係る帯電量測定モードは、前記操作パネルを用いて入力された指示に従って手動で開始される。または、本実施形態に係る帯電量測定モードは、劣化したトナーを現像ローラー231から感光体ドラム20へ吐き出す(現像させる)劣化トナー吐出し制御が開始されたタイミング及び判定部985によって決定された実行タイミングで、自動で開始される。
【0107】
尚、
図6に示すような帯電量測定モードを実行する場合、感光体ドラム20上に測定用トナー像を含む画像パターンが形成される。トナーの帯電量を精度良く測定するためには、頻繁に測定用トナー像を形成することが望ましいが、この場合、通常の画像形成動作が実行できない時間が増大するとともに、測定時に消費するトナー量が増大する。このため、トナーの帯電量を測定するタイミングを効率的に決定することが重要となる。本実施形態では、このような問題を解決するために、判定部985が、効率的な帯電量測定モードの実行タイミングを決定する。
【0108】
更に、画像形成装置10が製造後に工場から出荷される時と、画像形成装置10の使用場所において実行される本体セットアップ時に、上記の帯電量測定モードがそれぞれ実行されることが望ましい。この結果、画像形成装置10の休止期間中の影響を予測する事も可能になる。すなわち、現像剤は、休止期間が長いと帯電量が低くなる傾向にあり、この傾向は放置された期間や環境によってそのレベルが異なることが多い。したがって、工場出荷時及び本体セットアップ時のトナー帯電量がそれぞれ測定されることで、現像剤の放置による劣化状態が予測され、放置時間が非常に長い場合や劣悪環境に放置されていた場合は、この2つのトナー帯電量(工場出荷時と本体セットアップ時のトナー帯電量)の差が大きく検出される。この様な場合には、上記と同様に使用場所において現像剤の入れ替えを促すことができる。
【0109】
一方、工場出荷時及び本体セットアップ時のトナー帯電量が低くても、両者のトナー帯電量の差が小さい場合には、現像剤が劣化している可能性は低い。このため、使用場所において現像剤を入れ替える必要はなく、トナー濃度や現像条件(現像バイアス等)を調整することで、画質を向上させることができる。以上のように、本実施形態に係るトナー帯電量測定モードが、画像形成装置10が使用されない状態で所定の期間放置された後に実行されることで、現像剤の状態変化を把握することが可能となる。
【0110】
尚、濃度センサー100が主走査方向(感光体ドラム20の軸方向)において複数配置され、帯電量測定モードでは、当該濃度センサー100の位置に応じて測定用トナー像がそれぞれ形成されることが更に望ましい。すなわち、感光体ドラム20の軸方向の両端部に対応してそれぞれ測定用トナー像が形成される場合、現像装置23(現像ローラー231)の両端部におけるトナー帯電量をそれぞれ予測することができる。そして、この両端部でのトナー帯電量の差が予め設定された閾値よりも大きい場合には、現像装置23内での荷電性能が悪化している可能性がある。したがって、モード制御部984は、画像形成装置10の不図示の表示部等を通じて、現像装置23の交換や、現像剤の交換を促すことが可能となる。
【0111】
以上のように、本実施形態に係る帯電量測定モードでは、感光体ドラム20上の電位を測定する表面電位センサーや現像ローラー231に流入する現像電流を測定する電流計973を用いることなく、現像装置23に収容されるトナーの帯電量を取得することができる。この結果、現像装置23の現像剤交換の要否や現像バイアスの調整の必要性を精度良く判断することができる。
【0112】
特に、記憶部983に格納されている参照情報は、トナーの帯電量が第1の仮想帯電量である場合に参照用直線の傾きが負であり、トナーの帯電量が第1の仮想帯電量よりも小さな第2の仮想帯電量である場合に参照用直線の傾きが正であり、更に、トナーの帯電量の低下とともに参照用直線の傾きが増大するように設定されている。このような構成によれば、現像バイアスの交流電圧の周波数と感光体ドラム20(中間転写ベルト141)に形成されるトナー像の濃度(現像トナー量)との関係から、トナーの帯電量を精度良く取得することができる。
【0113】
<帯電量測定モードの実行タイミングを決定する動作のフローについて>
次に、帯電量測定モードの実行タイミングを決定する動作について説明する。
図8は、本実施形態に係る画像形成装置10において、帯電量測定モードの実行タイミングを決定する動作を示すフローチャートである。
図8に示すように、画像形成動作において現像動作が開始されると(ステップS21)、モード制御部984は、前記測定タイミングで、電流計973によってされた現像電流の直流成分を取得し、当該取得した現像電流の直流成分を特性値として出力する(ステップS22)。尚、記憶部983は、ステップS22で特性値が出力される度に、当該出力された特性値を、ステップS22が実行されたときの画像形成装置10におけるシートPに画像を形成した累計枚数(以降、耐久枚数)と対応付けて随時記憶する。尚、当該特性値と対応付けて記憶される値は、耐久枚数に限らず、現像装置23又は画像形成装置10本体の累計駆動時間や、これらの値を用いた関数(数式)から得られる値であっても良い。
【0114】
判定部985は、直近のステップS22よりも前に行われたステップS22(第1の測定タイミング)でモード制御部984が出力した特性値(第1特性値)に対する、直近のステップS22(第2の測定タイミング)でモード制御部984が出力した特性値(第2特性値)の変化量が、予め設定された特性値閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS23)。
【0115】
具体的には、判定部985は、ステップS23において、下記の式3を満たすか否かを判定する。式3において、Iは、直近のステップS22で特性値として出力された現像電流の直流成分を示す。ILは、前記特性値として出力された現像電流の直流成分の所定の下限値を示し、IMは、前記特性値として出力された現像電流の直流成分の所定の上限値を示す。
IL ≦ I ≦ IM ・・・・(式3)
【0116】
ここで、前記下限値ILは、直近の帯電量測定モードにおける測定用トナー像の現像動作時に行われたステップS22で特性値として出力された現像電流の直流成分I0(以降、基準直流成分I0)から前記特性値閾値THを減算した結果(=I0-TH)に定められている。前記上限値IMは、基準直流成分I0に前記特性値閾値THを加算した結果(=I0+TH)に定められている。
【0117】
したがって、以下に示すように、式3は、基準直流成分I0に対する、直近のステップS22で特性値として出力された現像電流の直流成分Iの変化量|I-I0|(以降、変化量ΔI)を用いて、式9、式10及び式11に変形することができる。
I0-TH ≦ IT ≦ I0+TH・・・(式4)
-TH ≦ IT-I0 ≦ TH・・・(式5)
ΔI ≦ TH・・・(式6)
【0118】
すなわち、判定部985は、ステップS23において、式3を満たすか否かを判定することにより、式6に示すように、基準直流成分I0に対する、直近のステップS22で特性値として出力された現像電流の直流成分Iの変化量ΔIが、特性値閾値TH以下であるか、特性値閾値THよりも大きいかを判定する。
【0119】
ステップS23において、式3を満たすことで、前記変化量ΔIが特性値閾値TH以下であると判定された場合(ステップS23でYES)、直近の帯電量測定モードの実行時からのキャリア電流の変動は小さく、当該直近の帯電量測定モードの実行時以降、キャリアは略劣化していないと考えられる。この場合(ステップS23でYES)、判定部985は、トナーの帯電量を取得し直す必要はないと判断し、処理をステップS21に戻す。
【0120】
一方、ステップS23において、式3を満たさないことで、前記変化量ΔIが特性値閾値THよりも大きいと判定された場合(ステップS23でNO)、直近の帯電量測定モードの実行時からのキャリア電流の変動が大きく、当該直近の帯電量測定モードの実行時以降にキャリアの劣化具合が増大したと考えられる。この場合(ステップS23でNO)、判定部985は、トナーの帯電量を取得し直す必要があると判断し、帯電量測定モードのための実行タイミングに至ったと判定する。この場合、判定部985は、更に、キャリアの劣化具合が増大した原因を判断する。
【0121】
具体的には、トナー成分が付着することでキャリアが劣化すると、キャリアの抵抗値が増大し、キャリア電流が低下する。このため、ステップS22で特性値として出力された直流成分Iが前記下限値ILよりも小さい(IL>I)場合(ステップS24でNO)、判定部985は、キャリアへのトナー成分のスペントが発生したことが原因で、キャリアの劣化具合が増大したと判断する(ステップS25)。
【0122】
一方、キャリアにコート剥がれが生じたことでキャリアが劣化すると、キャリアの抵抗値が減少し、キャリア電流が増大する。このため、ステップS22で特性値として出力された直流成分Iが前記上限値IMよりも大きい(IM<I)場合(ステップS24でYES)、判定部985は、キャリアにコート剥れが発生したことが原因で、キャリアの劣化具合が増大したと判断する(ステップS26)。
【0123】
判定部985は、ステップS23で前記変化量ΔIが特性値閾値THよりも大きいと判定した場合に(ステップS23でNO)、帯電量測定モードのための実行タイミングに至ったと判定し、更に、ステップS25又はステップS26において、キャリアの劣化具合が増大した原因を判断した後、モード制御部984に、帯電量測定モードを実行させる(ステップS27)。このように、判定部985は、モード制御部984によって特性値として出力される、電流計973によって測定された精度の良いキャリア電流に基づく前記変化量ΔIに応じて、帯電量測定モードの実行タイミングを適切に決定することができる。尚、記憶部983は、ステップS27でトナーの帯電量が取得される度に、当該取得されたトナーの帯電量を、ステップS27が実行されたときの耐久枚数と対応付けて随時記憶する。
【0124】
モード制御部984は、帯電量測定モードの実行後、記憶部983に記憶された前記特性値の推移に基づいて、現像装置23内の現像剤が寿命に至る寿命時期を予測し、当該予測した寿命時期に関する寿命情報を出力する(ステップS28)。
【0125】
図9は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置10における現像電流と耐久枚数との関係を示したグラフである。具体的には、ステップS28において、モード制御部984は、例えば
図9に示すように、公知の近似手法で、記憶部983に記憶されている特性値(現像電流の直流成分)と記憶部983において当該特性値に対応付けられている耐久枚数との関係を表す近似直線(例えば、y=-0.0008x-1.4745(yは特性値を示し、xは耐久枚数を示す))を算出する。そして、モード制御部984は、当該算出した近似直線において、特性値が所定の上限閾値又は下限閾値(例えば-2μA)になるときの耐久枚数(例えば、656.9K(656900)枚)を、現像剤が寿命になるとき(寿命時期)の耐久枚数として予測する。
【0126】
尚、前記上限閾値は、例えば、実使用上問題がある程度にコート剥れによって劣化したキャリアを用いてステップS21及びステップS22を複数回行ったときに、当該複数回のステップS22で出力された特性値の上限値等に定められる。また、前記下限閾値は、例えば、実使用上問題がある程度にトナー成分が付着したことによって劣化したキャリアを用いて、ステップS21及びステップS22を複数回行ったときに、当該複数回のステップS22で出力された特性値の下限値等に定められる。
【0127】
そして、モード制御部984は、当該予測したキャリアが寿命になるときの耐久枚数から、現在の耐久枚数を減算した結果が、キャリアが寿命になるまでの残りの耐久枚数である旨のメッセージ(寿命情報)(例えば、「キャリアの寿命が訪れるまで、あと「XX」枚印字可能です。」)を、前記操作パネルに設けられた表示装置に表示(出力)する。これにより、モード制御部984は、予測した寿命時期に関する寿命情報を出力する。
【0128】
尚、ステップS28における寿命情報の出力方法は、これに限らない。例えば、ステップS28において、モード制御部984が、予測したキャリアの寿命を示すメッセージを寿命情報として記憶部983に記憶するようにしてもよい。そして、画像形成装置10のメンテナンス時に出力されるメンテナンスシートに、記憶部983に記憶されている当該キャリアの寿命を示すメッセージを含めるようにしてもよい。又は、外部装置と通信を行う通信インターフェイス回路が画像形成装置10に設けられている場合には、ステップS28において、モード制御部984が、予測したキャリアの寿命を示す信号を、寿命情報として、当該通信インターフェイス回路を介して、例えば、サービスセンターや画像形成装置10の管理用パソコン等の所定の外部装置へ送信するようにしてもよい。この場合、当該外部装置において、画像形成装置10のキャリアの寿命を管理することが可能となる。
【0129】
つまり、ステップS28によれば、記憶部983に記憶されたキャリア電流に応じた特性値の推移に基づいて、現像装置23内の現像剤が寿命に至る寿命時期が予測され、当該予測された寿命時期に関する寿命情報が出力される。このため、ユーザは、当該出力された寿命情報から、現像剤の寿命時期を容易に把握することができる。
【0130】
ステップS28の後、判定部985は、ステップS23の判定で用いる式3に含まれる前記下限値IL及び前記上限値IMを修正し(ステップS29)、処理を終了する。
【0131】
具体的には、ステップS29において、判定部985は、直近のステップS27で実行された帯電量測定モードの前に実行された帯電量測定モードの実行時(第1の実行タイミング)に取得されたトナーの帯電量(以降、第1トナー帯電量)と、直近のステップS27における帯電量測定モードの実行時(第2の実行タイミング)に取得されたトナーの帯電量(以降、第2トナー帯電量)と、の差の絶対値に応じて特性値閾値THを変更する。尚、直近のステップS27で実行された帯電量測定モードの前に実行された帯電量測定モードは、手動で実行された帯電量測定モードであってもよいし、自動で実行された帯電量測定モードであってもよい。
【0132】
詳しくは、記憶部983は、特性値閾値THの初期値(例えば、0.05μA)を予め記憶している。また、記憶部983は、下記の表1に示すように、第1トナー帯電量と第2トナー帯電量との差の絶対値ΔQと、変更後の特性値閾値THaと、を対応付ける閾値変更情報を予め記憶している。
【0133】
【0134】
閾値変更情報では、特性値閾値THの初期値(例えば、0.05μA)と同じ特性値閾値THa(例えば、0.05μA)に対応付けられている前記絶対値ΔQの上限値(第1判定閾値)(例えば、1.0μc/g)よりも大きい前記絶対値ΔQ(例えば、1.3μc/g)には、特性値閾値THの初期値よりも小さい特性値閾値THa(例えば、0.04μA)が対応付けられている。一方、閾値変更情報では、特性値閾値THの初期値と同じ特性値閾値THaに対応付けられている前記絶対値ΔQの下限値(第二判定閾値)(例えば、0.5μc/g)よりも小さい前記絶対値ΔQ(例えば、0.4μc/g)には、特性値閾値THの初期値よりも大きい特性値閾値THa(例えば、0.06μA)が対応付けられている。
【0135】
判定部985は、閾値変更情報(表1)において、第1トナー帯電量と第2トナー帯電量との差の絶対値ΔQ(例えば、1.3μc/g)に対応付けられている特性値閾値THa(例えば、0.04μA)を取得し、現在の特性値閾値TH(例えば、0.05μA)を当該取得した特性値閾値THa(例えば、0.04μA)に変更する。
【0136】
これにより、判定部985は、前記絶対値ΔQが前記閾値変更情報において特性値閾値THの初期値と同じ特性値閾値THaに対応付けられている前記絶対値ΔQの上限値よりも大きい場合に、特性値閾値THが初期値よりも小さくなるように特性値閾値THを変更する。また、判定部985は、前記絶対値ΔQが前記閾値変更情報において特性値閾値THの初期値と同じ特性値閾値THaに対応付けられている前記絶対値ΔQの下限値よりも小さい場合に、特性値閾値THが初期値よりも大きくなるように特性値閾値THを変更する。
【0137】
そして、判定部985は、変更後の特性値閾値THaを用いて、ステップS23の判定で用いる式3に含まれる前記下限値ILを、基準直流成分I0から前記変更後の特性値閾値THaを減算した結果(=I0-THa)に修正する。また、判定部985は、前記上限値IMを、基準直流成分I0に前記変更後の特性値閾値THaを加算した結果(=I0+THa)に修正する。
【0138】
このように、判定部985は、前記絶対値ΔQに応じて、帯電量測定モードの実行タイミングを決定することができる。このため、前記絶対値ΔQが、帯電量測定モードの実行が必要でない程度であるにも関わらず、特性値閾値THが低すぎることによって、頻繁に帯電量測定モードが実行される虞を解消することができる。また、前記絶対値ΔQが帯電量測定モードの実行が必要である程度であるにも関わらず、特性値閾値THが高すぎることによって、帯電量測定モードが長時間実行されない虞を解消することができる。
【0139】
詳しくは、前記絶対値ΔQが、特性値閾値THの初期値と同じ特性値閾値THaに予め対応付けられた前記絶対値ΔQの上限値よりも大きく、帯電量測定モードで取得されるトナーの帯電量が大きく変化するような場合に、特性値閾値THを特性値閾値THの初期値よりも小さくなるように変更することができる。これにより、トナーの帯電量が大きく変化するような場合に、特性値閾値THが高すぎることによって、帯電量測定モードが長時間実行されなくなる虞を解消することができる。
【0140】
これとは反対に、前記絶対値ΔQが、特性値閾値THの初期値と同じ特性値閾値THaに予め対応付けられた前記絶対値ΔQの下限値よりも小さく、帯電量測定モードで取得されるトナーの帯電量があまり変化しないような場合に、特性値閾値THを特性値閾値THの初期値よりも大きくなるように変更することができる。これにより、トナーの帯電量があまり変化しないような場合に、特性値閾値THが低すぎることによって、頻繁に帯電量測定モードが実行される虞を解消することができる。
【0141】
<実施例>
以下、判定部985によって決定された実行タイミングで帯電量測定モードを実行させる実施例について説明する。尚、実施した実験の条件は以下のとおりである。
【0142】
<実験条件>
・プリント速度:55枚/分
・感光体ドラム20:アモルファスシリコン感光体(α-Si)
・現像ローラー231:外径20mm、表面形状ローレット溝加工、周方向に沿って80列の凹部(溝)が形成されている。
・規制ブレード234:SUS430製、磁性、厚み1.5mm
・規制ブレード234後の現像剤搬送量:250g/m2
・現像ローラー231の感光体ドラム20に対する周速:1.8(対向位置でトレール方向)
・感光体ドラム20と現像ローラー231との間の距離:0.30mm
・感光体ドラム20の背景部(非画像形成領域)電位V0:+270V
・感光体ドラム20の画像部(画像形成領域)電位VL:+20V
・トナー:正帯電極性トナー、体積平均粒子径6.8μm、トナー濃度8%
・キャリア:体積平均粒子径35μm、フェライト・樹脂コートキャリア
・現像ローラー231の現像バイアス:周波数=4.2kHz、Duty=50%、Vpp=900Vの交流電圧矩形波、Vdc(直流電圧)=180V
【0143】
<第一の実施例>
特性値閾値THの初期値を0.05μAに設定し、上記の実験条件で、画像形成装置10の起動後、耐久枚数が0のときに、モード制御部984に帯電量測定モードを実行させた。その後、トナー濃度が8±1%となるように公知のトナー濃度制御を行いながら、
図8に示すステップS29は省略し、特性値閾値THを初期値に維持して、帯電量測定モードが7回実行されるまで、
図8に示すステップS21以降の処理を繰り返す第一の実験を行った。当該第一の実験の結果を表2に示す。
【0144】
【0145】
第一の実験では、表2に示すように、耐久枚数が100K枚、200K枚、250K枚、300K枚、350K枚、400K枚、500K枚のときに、ステップS22で特性値として出力された現像電流の直流成分が、基準直流成分I0(直近の帯電量測定モードにおける測定用トナー像の現像動作後に行われたステップS22で特性値として出力された現像電流の直流成分)に対して特性値閾値TH「0.05μA」以上変化し、帯電量測定モードが実行された。このため、ステップS29を実行しない構成であっても、耐久枚数が50枚増加する度に帯電量測定モードを実行する場合よりも、効率的に帯電量測定モードを実行するタイミングを決定できることがわかった。
【0146】
<第二の実施例>
また、第一の実施例と同様、特性値閾値THの初期値を0.05μAに設定し、上記の条件で、画像形成装置10の起動後、耐久枚数が0のときに、モード制御部984に帯電量測定モードを実行させた。その後、トナー濃度が8±1%となるように公知のトナー濃度制御を行いながら、ステップS29(
図8)では、特性値閾値THを、上記表1において第1トナー帯電量と第2トナー帯電量との差の絶対値ΔQに対応付けられている特性値閾値THに修正するようにして、帯電量測定モードが7回実行されるまで、
図8に示すステップS21以降の処理を繰り返す第二の実験を行った。当該第二の実験の結果を表3に示す。
【0147】
【0148】
第二の実験では、第一の実験とは異なり、表3に示すように、耐久枚数が100K枚、190K枚、230K枚、300K枚、350K枚、430K枚、500K枚のときに、帯電量測定モードが実行された。これにより、ステップS29を実行する構成においても、耐久枚数が50枚増加する度に帯電量測定モードを実行する場合よりも、効率的に帯電量測定モードを実行するタイミングを決定できることがわかった。
【0149】
また、耐久枚数が100K枚及び190K枚のときは、表3の帯電量の変化量欄に示す、第1トナー帯電量と第2トナー帯電量との差の絶対値ΔQが、表1において、特性値閾値THの初期値と同じ特性値閾値THaに対応付けられている前記絶対値ΔQの上限値である1.0μc/gよりも大きくなったため、ステップS29において、特性値閾値THが特性値閾値THの初期値よりも小さい、0.04μAに変更された。また、耐久枚数が300K枚、350K枚、430K枚、500K枚のときは、表3の帯電量の変化量欄に示す前記絶対値ΔQが、表1において、特性値閾値THの初期値に対応付けられている前記絶対値ΔQの下限値である0.5μc/gよりも小さくなったため、ステップS29において、特性値閾値THが特性値閾値THの初期値よりも大きい、0.06μA又は0.07μAに設定された。これにより、第二の実験では、ステップS29において前記絶対値ΔQに応じて特性値閾値THを変更することにより、トナーの帯電量の変化に応じて帯電量測定モードの実行タイミングを適切に調整できることがわかった。
【0150】
本実施形態によれば、モード制御部984は、非現像動作時に、濃度センサー100によって検出される複数の測定用トナー像の濃度に基づいて、感光体ドラム20上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する。このため、画像形成動作に伴う現像動作とは異なる時に、測定用トナー像を用いてトナーの帯電量を精度良く取得することができる。
【0151】
また、判定部985は、モード制御部984によって特性値として出力されるキャリア電流に応じて、帯電量測定モードのための実行タイミングを決定する。このように、キャリア電流に基づいて、今後の帯電量測定モードの実行タイミングが決定されるので、キャリアの劣化具合に応じて変化するトナーの帯電量を効率的に取得することができる。したがって、キャリアの劣化具合やトナーの帯電量とは関係なく予め設定された実行タイミングで帯電量測定モードが実行される場合と比較して、トナーの帯電量の変化を効率的に測定することができる。換言すれば、トナーの帯電量の変化が少ない時期に、帯電量取得動作を過剰に実行することを防止することができる。
【0152】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取り得る。
【0153】
(1)現像装置23に収容される現像剤に含まれるキャリア量に対するトナー量の比率を示すトナー濃度が高くなっている場合、現像ローラー231と感光体ドラム20との間に形成される磁気ブラシの抵抗は高くなる。その影響で、ステップS22(
図8)において、モード制御部984が前記測定タイミングで非画像形成領域に現像バイアスを印加しているときに測定する現像電流の測定値は、トナー濃度が規定値である場合に比べて低下している虞がある。そこで、上記のような、トナー濃度の変化が現像電流の測定値に与える影響を除外するために、トナー濃度に応じて現像電流の測定値を補正するようにしてもよい。
【0154】
具体的には、
図2に示すように、現像ハウジング230に、現像装置23に収容される現像剤に含まれるキャリア量に対するトナー量の比率を示すトナー濃度を検出するトナーセンサーTS(トナー濃度検出部)を備えてもよい。トナーセンサーTSは、公知の透磁率センサーや圧力センサー等によって構成すればよい。
図10は、本発明の変形実施形態に係る画像形成装置10において、帯電量測定モードの実行タイミングを決定する動作を示すフローチャートである。そして、
図8に示したステップS22~S24を、
図10に示すように、ステップS22a~S24aに変更してもよい。更に、
図8に示したステップS28及びステップS29を、
図10に示すように、ステップS28a及びステップS29aに変更してもよい。
【0155】
詳しくは、ステップS22aでは、モード制御部984は、前記測定タイミングで電流計973によって測定された現像電流の直流成分Iを、前記測定タイミングでトナーセンサーTSによって検出されたトナー濃度に応じて補正したものITを前記特性値として出力するようにしてもよい。具体的には、モード制御部984は、例えば下記式7等に従って、トナーセンサーTSによって検出されたトナー濃度が高くなる程、電流計973によって測定された現像電流の直流成分Iの値を大きく補正するようにしてもよい。
IT=I×C×T/T0・・・(式7)
尚、式7において、Cは、1以上の所定の補正係数(例えば、1.2)を示す。Tは、トナーセンサーTSによって検出されたトナー濃度(例えば、10%)を示す。T0は、トナー濃度の規定値(例えば、8%)を示す。
【0156】
尚、記憶部983は、ステップS22aで特性値が出力される度に、当該出力された特性値を、ステップS22aが実行されたときの耐久枚数と対応付けて随時記憶する。当該特性値と対応付けて記憶される値は、耐久枚数に限らず、現像装置23又は画像形成装置10本体の累計駆動時間や、これらの値を用いた関数(数式)から得られる値であっても良い。
【0157】
ステップS23aでは、ステップS23と同様、判定部985は、直近のステップS22aよりも前に行われたステップS22a(第1の測定タイミング)でモード制御部984が出力した特性値(第1特性値)に対する、直近のステップS22a(第2の測定タイミング)でモード制御部984が出力した特性値(第2特性値)の変化量が、予め設定された特性値閾値THbよりも大きいか否かを判定する(ステップS23a)。
【0158】
具体的には、判定部985は、ステップS23aにおいて、下記の式8を満たすか否かを判定する。式8において、ITは、直近のステップS22aで特性値として出力された現像電流の直流成分をトナー濃度に応じて補正したもの(以降、補正直流成分)を示す。ITLは、前記特性値として出力された補正直流成分の所定の下限値を示し、ITMは、前記特性値として出力された補正直流成分の所定の上限値を示す。
ITL ≦ IT ≦ ITM ・・・・(式8)
【0159】
ここで、前記下限値ITLは、直近の帯電量測定モードにおける測定用トナー像の現像動作時に行われたステップS22aで特性値として出力された補正直流成分IT0(以降、基準補正直流成分IT0)から前記特性値閾値THbを減算した結果(=IT0-THb)に定められている。前記上限値ITMは、基準補正直流成分IT0に前記特性値閾値THbを加算した結果(=IT0+THb)に定められている。
【0160】
したがって、以下に示すように、式8は、基準補正直流成分IT0に対する、直近のステップS22aで特性値として出力された補正直流成分ITの変化量|IT-IT0|(以降、変化量ΔIT)を用いて、式9、式10及び式11に変形することができる。
IT0-THb ≦ IT ≦ IT0+THb・・・(式9)
-THb ≦ IT-IT0 ≦ THb・・・(式10)
ΔIT ≦ THb・・・(式11)
【0161】
すなわち、判定部985は、ステップS23aにおいて、式8を満たすか否かを判定することにより、式11に示すように、基準補正直流成分IT0に対する、直近のステップS22aで特性値として出力された補正直流成分ITの変化量ΔITが、特性値閾値THb以下であるか、特性値閾値THbよりも大きいかを判定する。
【0162】
そして、ステップS23aにおいて、式11を満たすことで、前記変化量ΔITが特性値閾値THb以下であると判定された場合(ステップS23aでYES)、判定部985は、トナーの帯電量を取得し直す必要はないと判断し、処理をステップS21に戻す。一方、ステップS23aにおいて、式11を満たさないことで、前記変化量ΔITが特性値閾値THbよりも大きいと判定された場合(ステップS23aでNO)、判定部985は、トナーの帯電量を取得し直す必要があると判断し、帯電量測定モードのための実行タイミングに至ったと判定する。これにより、判定部985は、上記のような、トナー濃度の変化が現像電流の測定値に与える影響を除外して、帯電量測定モードのための実行タイミングをより適切に判定することができる。
【0163】
尚、ステップS23aにおいて、式11を満たさないことで、前記変化量ΔITが特性値閾値THbよりも大きいと判定されたとする(ステップS23aでNO)。この場合に、ステップS22aで特性値として出力された補正直流成分ITが前記下限値ITLよりも小さい(ITL>IT)ときは(ステップS24aでNO)、判定部985は、キャリアへのトナー成分のスペントが発生したことが原因で、キャリアの劣化具合が増大したと判断する(ステップS25)。一方、ステップS22aで特性値として出力された補正直流成分ITが前記上限値ITMよりも大きい(ITM<IT)ときは(ステップS24aでYES)、判定部985は、キャリアにコート剥れが発生したことが原因で、キャリアの劣化具合が増大したと判断する(ステップS26)。
【0164】
そして、ステップS28aでは、モード制御部984は、ステップS28と同様、記憶部983に記憶されている特性値(補正直流成分IT)の推移を示す近似直線を算出し、当該近似直線を用いて現像装置23内の現像剤が寿命に至る寿命時期を予測し、当該予測した寿命時期に関する寿命情報を出力する(ステップS28a)。
【0165】
そして、ステップS29aでは、判定部985は、ステップS23aの判定で用いる式8に含まれる前記下限値ITL及び前記上限値ITMを修正する。
【0166】
具体的には、ステップS29aにおいて、判定部985は、直近のステップS27で実行された帯電量測定モードの前に実行された帯電量測定モードの実行時(第1の実行タイミング)に取得されたトナーの帯電量(以降、第1トナー帯電量)と当該帯電量測定モードの実行時に検出されたトナー濃度(以降、第1トナー濃度)との積と、直近のステップS27における帯電量測定モードの実行時(第2の実行タイミング)に取得されたトナーの帯電量(以降、第2トナー帯電量)と当該帯電量測定モードの実行時に検出されたトナー濃度(以降、第2トナー濃度)との積と、の差の絶対値に応じて特性値閾値THbを変更する。尚、直近のステップS27で実行された帯電量測定モードの前に実行された帯電量測定モードは、手動で実行された帯電量測定モードであってもよいし、自動で実行された帯電量測定モードであってもよい。
【0167】
詳しくは、記憶部983は、特性値閾値THbの初期値(例えば、0.05μA)を予め記憶している。また、記憶部983は、下記の表4に示すように、第1トナー帯電量と第1トナー濃度との積(以降、第1積)と、第2トナー帯電量と第2トナー濃度との積(以降、第2積)の差の絶対値ΔQTと、変更後の特性値閾値THcと、を対応付ける閾値変更情報を予め記憶している。
【0168】
【0169】
当該閾値変更情報では、特性値閾値THbの初期値(例えば、0.05μA)と同じ特性値閾値THc(例えば、0.05μA)に対応付けられている前記絶対値ΔQTの上限値(第1判定閾値)(例えば、8μc/g・%)よりも大きい前記絶対値ΔQT(例えば、9μc/g・%)には、特性値閾値THbの初期値よりも小さい特性値閾値THc(例えば、0.04μA)が対応付けられている。一方、当該閾値変更情報では、特性値閾値THbの初期値と同じ特性値閾値THcに対応付けられている前記絶対値ΔQTの下限値(第二判定閾値)(例えば、4μc/g・%)よりも小さい前記絶対値ΔQT(例えば、3μc/g・%)には、特性値閾値THbの初期値よりも大きい特性値閾値THc(例えば、0.06μA)が対応付けられている。
【0170】
判定部985は、当該閾値変更情報(表4)において、第1積と第2積との差の絶対値ΔQT(例えば、9μc/g)に対応付けられている特性値閾値THc(例えば、0.04μA)を取得し、現在の特性値閾値THb(例えば、0.05μA)を当該取得した特性値閾値THc(例えば、0.04μA)に変更する。
【0171】
これにより、判定部985は、前記絶対値ΔQが前記閾値変更情報において特性値閾値THbの初期値と同じ特性値閾値THcに対応付けられている前記絶対値ΔQTの上限値よりも大きい場合に、特性値閾値THbが初期値よりも小さくなるように特性値閾値THbを変更する。また、判定部985は、前記絶対値ΔQTが前記閾値変更情報において特性値閾値THbの初期値と同じ特性値閾値THcに対応付けられている前記絶対値ΔQTの下限値よりも小さい場合に、特性値閾値THbが初期値よりも大きくなるように特性値閾値THbを変更する。
【0172】
そして、判定部985は、変更後の特性値閾値THcを用いて、ステップS23aの判定で用いる式8に含まれる前記下限値ITLを、基準補正直流成分IT0から前記変更後の特性値閾値THcを減算した結果(=IT0-THc)に修正する。また、判定部985は、前記上限値ITMを、基準補正直流成分IT0に前記変更後の特性値閾値THcを加算した結果(=IT0+THc)に修正する。
【0173】
このように、判定部985は、前記絶対値ΔQTに応じて、帯電量測定モードの実行タイミングを決定することができる。このため、前記絶対値ΔQTが、帯電量測定モードの実行が必要でない程度であるにも関わらず、特性値閾値THbが低すぎることによって、頻繁に帯電量測定モードが実行される虞を解消することができる。また、前記絶対値ΔQTが帯電量測定モードの実行が必要である程度であるにも関わらず、特性値閾値THbが高すぎることによって、帯電量測定モードが長時間実行されない虞を解消することができる。
【0174】
詳しくは、前記絶対値ΔQTが、特性値閾値THbの初期値と同じ特性値閾値THcに予め対応付けられた前記絶対値ΔQTの上限値よりも大きく、帯電量測定モードで取得されるトナーの帯電量が大きく変化するような場合に、特性値閾値THbを特性値閾値THbの初期値よりも小さくなるように変更することができる。これにより、トナーの帯電量が大きく変化するような場合に、特性値閾値THbが高すぎることによって、帯電量測定モードが長時間実行されなくなる虞を解消することができる。
【0175】
これとは反対に、前記絶対値ΔQTが、特性値閾値THbの初期値と同じ特性値閾値THcに予め対応付けられた前記絶対値ΔQTの下限値よりも小さく、帯電量測定モードで取得されるトナーの帯電量があまり変化しないような場合に、特性値閾値THbを特性値閾値THbの初期値よりも大きくなるように変更することができる。これにより、トナーの帯電量があまり変化しないような場合に、特性値閾値THbが低すぎることによって、頻繁に帯電量測定モードが実行される虞を解消することができる。
【0176】
<第三の実施例>
当該変形実施形態においても、上記の第一及び第二の実施例と同様、特性値閾値THbの初期値を0.05μAに設定し、上記の実験条件で、画像形成装置10の起動後、耐久枚数が0のときに、モード制御部984に帯電量測定モードを実行させた。その後、トナー濃度が8±1%となるように公知のトナー濃度制御を行いながら、ステップS29a(
図10)では、特性値閾値THbを、上記表4において第1積と第2積との差の絶対値ΔQTに対応付けられている特性値閾値THcに修正するようにして、帯電量測定モードが7回実行されるまで、
図10に示すステップS21以降の処理を繰り返す第三の実験を行った。当該第三の実験の結果を表5に示す。
【0177】
【0178】
第三の実験では、表5に示すように、耐久枚数が100K枚、200K枚、235K枚、300K枚、340K枚、420K枚、480K枚のときに、帯電量測定モードが実行された。これにより、耐久枚数が50枚増加する度に帯電量測定モードを実行する場合よりも、効率的に帯電量測定モードを実行するタイミングを決定できることがわかった。
【0179】
また、耐久枚数が200K枚、340K枚及び420K枚のときは、表5の(帯電量×トナー濃度)の変化量欄に示す、第1積と第2積との差の絶対値ΔQTが、表4において、特性値閾値THbの初期値と同じ特性値閾値THcに対応付けられている前記絶対値ΔQTの上限値である8μc/g・%よりも大きくなったため、ステップS29aにおいて、特性値閾値THbが特性値閾値THbの初期値よりも小さい、0.03μAに変更された。また、耐久枚数が235K枚及び480K枚のときは、表5の(帯電量×トナー濃度)の変化量欄に示す前記絶対値ΔQTが、表4において、特性値閾値THbの初期値と同じ特性値閾値THcに対応付けられている前記絶対値ΔQTの下限値である4μc/g・%よりも小さくなったため、ステップS29aにおいて、特性値閾値THbが特性値閾値THbの初期値よりも大きい、0.06μAに設定された。これにより、第三の実験では、ステップS29aにおいて前記絶対値ΔQTに応じて特性値閾値THbを変更することにより、トナーの帯電量及びトナー濃度の変化に応じて帯電量測定モードの実行タイミングを適切に調整できることがわかった。
【0180】
(2)上記の実施形態及び変形実施形態では、現像ローラー231の表面にローレット溝加工が施される態様にて説明したが、現像ローラー231の表面に凹形状(ディンプル)を有するものや、ブラスト加工が施されたものでもよい。
【0181】
(3)
図1のように画像形成装置10が複数の現像装置23を有する場合、上記実施形態及び変形実施形態に係る帯電量測定モードを1つもしくは2つの現像装置23で行い、その結果を他の現像装置23で利用するものでもよい。
【0182】
(4)更に、上記の実施形態及び変形実施形態では、帯電量測定モードにおいて、モード制御部984が測定用直線の傾きと記憶部983の参照情報とから感光体ドラム20上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11は、本変形実施形態に係る画像形成装置10において実行される帯電量測定モードのフローチャートである。
【0183】
本変形実施形態では、モード制御部984は、帯電量測定モードにおいて、現像ローラー231と感光体ドラム20との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で現像バイアスの交流電圧の周波数を変化させながら感光体ドラム20上に複数の測定用トナー像を形成する。そして、モード制御部984は、濃度センサー100によって検出される複数の測定用トナー像の濃度の差に対する複数の測定用トナー像が形成される際に現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流の直流成分の差の比に基づいて、感光体ドラム20上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得する。
【0184】
図11を参照して、モード制御部984が帯電量測定モードを開始すると(ステップS41)、モード制御部984は複数の測定用トナー像を形成するための変数nをn=1に設定する(ステップS42)。そして、モード制御部984は、予め記憶部983に格納されているn=1に対応する画像1を選択する(ステップS43)。記憶部983には、画像nを形成するための静電潜像の画像情報や現像バイアスの交流電圧の周波数に関する情報が格納されている。尚、その他の画像形成動作に関するパラメータは、直前の画像形成動作時と同じ値に設定される。次に、モード制御部984は、露光装置22(
図1)、駆動制御部981及びバイアス制御部982を制御して、画像1を形成するための現象バイアスを現像ローラー231に印加した状態で現像ローラー231を1回転以上回転させた後、感光体ドラム20上に画像1に対応する測定用トナー像の静電潜像を形成する。感光体ドラム20の回転に伴って、当該測定用トナー像が感光体ドラム20と現像ローラー231とが対向する現像ニップ部NPを通過する際に、静電潜像にトナーが供給され、測定用トナー像が現像される(ステップS44)。この現像動作時に、電流計973によって現像電流(直流電流)が測定される(ステップS45)。
【0185】
その後、当該トナー像が感光体ドラム20から中間転写ベルト141に転写される(ステップS46)。そして、当該測定用トナー像の画像濃度が濃度センサー100によって測定され(ステップS47)、ステップS35で測定された現像電流の値とともに、取得された画像濃度が記憶部983に記憶される(ステップS48)。
【0186】
次に、モード制御部984は、複数の測定用トナー像を形成するための変数nが予め設定された規定回数Nに到達したか否かを判定する(ステップS49)。ここで、n≠Nの場合(ステップS49でNO)には、nの値が1つカウントアップされ(n=n+1、ステップS50)、ステップS43からS49までが繰り返される。尚、帯電量測定の精度を高くするためには、規定回数N=2以上であることが望ましく、3≦Nに設定されることが更に望ましい。一方、n=Nの場合(ステップS49でYES)には、モード制御部984が、トナーの帯電量を推定し(ステップS51)、帯電量測定モードを終了する(ステップS52)。
【0187】
尚、一例として、N=2の場合に、ステップS45において測定されるn=1、2の現像電流(直流電流)がそれぞれ、I1、I2と定義される。またステップS47において測定されるn=1、2の画像濃度がそれぞれ、ID1、ID2と定義される。この際、ステップS51におけるトナーの帯電量は、以下の式12から得られる傾きaに相当する。
傾きa=(I1-I2)/(ID1-ID2) ・・・(式12)
上記の傾きaは、横軸を画像濃度ID、縦軸を現像電流Iとして、n=1、2におけるデータ(ID、I)をそれぞれプロットした場合の2点を通る直線の傾きに相当する。尚、N=3以上の条件にてトナーの帯電量を測定する場合には、最小二乗法で求めた1次式の近似直線の傾きaをトナーの帯電量とする。
【0188】
また、他の変形実施形態として、複数の測定用トナー像が形成される際に変化されるパラメータは、現像バイアスの交流電圧の周波数ではなく、露光装置22によって形成される静電潜像の印字率であってもよい。
【0189】
すなわち、当該変形実施形態では、モード制御部984は、現像ローラー231と感光体ドラム20との間の直流電圧の電位差を一定に保持した状態で露光装置22を制御して単位面積あたりの印字率を変化させながら感光体ドラム20上に複数の測定用トナー像を形成する。そして、モード制御部984は、濃度センサー100によって検出される複数の測定用トナー像の濃度の差に対する複数の測定用トナー像が形成される際に現像ローラー231と現像バイアス印加部971との間を流れる現像電流の直流成分の差の比に基づいて、感光体ドラム20上に形成された測定用トナー像に含まれるトナーの帯電量を取得するものでもよい。尚、この場合も上記の変形実施形態と同様に、式12に基づいてトナーの帯電量が取得できる。
【0190】
(5)上記の実施形態及び変形実施形態において、モード制御部984が、更に、シートに転写されるトナー像の画質を定めるパラメータを調整するキャリブレーション動作を実行するようにしてもよい。当該パラメータには、感光体ドラム20の回転速度、帯電装置21に感光体ドラム20の表面を帯電させるときの帯電電位、現像ローラー231に印加する現像バイアス、露光装置22に光を照射させるときの光量等が含まれる。そして、モード制御部984が、ステップS27において、現像バイアスを変化させて感光体ドラム20に複数の前記測定用トナー像を形成させるキャリブレーション動作を実行するようにし、当該複数の前記測定用トナー像を用いて帯電量測定モードを実行するようにしてもよい。
【0191】
(6)上記の実施形態において、モード制御部984がステップS28(
図8)を実行しないようにしてもよい。また、上記の変形実施形態において、モード制御部984がステップS28a(
図10)を実行しないようにしてもよい。
【0192】
(7)上記の実施形態において、モード制御部984がステップS29(
図8)を実行しないようにしてもよい。また、上記の変形実施形態において、モード制御部984がステップS29a(
図10)を実行しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0193】
10 画像形成装置
20 感光体ドラム(像担持体)
21 帯電装置
22 露光装置
23 現像装置
100 濃度センサー(濃度検出部)
231 現像ローラー
971 現像バイアス印加部
972 駆動部
973 電流計(現像電流測定部)
980 制御部
981 駆動制御部
982 バイアス制御部
983 記憶部
984 モード制御部(帯電量取得部、特性値出力部、寿命予測部)
985 判定部(実行タイミング決定部)
TS トナーセンサー(トナー濃度検出部)