(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】スパウトおよびスパウト付きパウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 33/38 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B65D33/38
(21)【出願番号】P 2018196841
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 高博
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】石坂 公一
(72)【発明者】
【氏名】安海 隆裕
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-059702(JP,A)
【文献】特開2006-168820(JP,A)
【文献】特開2011-173615(JP,A)
【文献】実開平04-038955(JP,U)
【文献】特開2002-002722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウチに装着される取付部と、前記取付部の上方に形成される1つ以上のフランジ部と、前記取付部に形成され上下方向に沿って延びる注出孔とを備えたスパウトであって、
前記スパウトは、前記取付部および前記フランジ部を有したスパウト本体と、前記スパウト本体に対してねじ係合によって取り付けられるキャップ部とを有し、
前記1つ以上のフランジ部には、最も下方に形成される第1フランジ部
と、前記第1フランジ部の上方に形成された第2フランジ部とが含まれ、
前記取付部は、パウチ表裏方向における表側に面する表側取付部端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する裏側取付部端面とを有し、
前記第1フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第1表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第1裏側フランジ端面とを有し、
前記第1表側フランジ端面は、パウチ左右方向において前記注出孔の中心軸に対応する中央位置において、前記表側取付部端面よりもパウチ表裏方向の外側に位置し、
前記第1裏側フランジ端面は、前記中央位置において、前記裏側取付部端面よりもパウチ表裏方向の外側に位置し、
前記中央位置における、前記表側取付部端面と前記第1表側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D1は、0.5mm以内に設定され、
前記中央位置における、前記裏側取付部端面と前記第1裏側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D2は、0.5mm以内に設定され
、
前記第1表側フランジ端面または前記第1裏側フランジ端面の少なくとも一方は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、キャップ開栓時における前記キャップ部に対する前記スパウト本体の相対的な回転方向の前方側に寄った位置のみに、パウチ表裏方向の外側に膨出した第1フランジ膨出部を有し、
前記第2フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第2表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第2裏側フランジ端面とを有し、
前記第2表側フランジ端面および前記第2裏側フランジ端面は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、前記回転方向の前方側および後方側に寄った位置に、パウチ表裏方向の外側に張り出した第2フランジ膨出部をそれぞれ有し、
前記各第2フランジ膨出部は、パウチ左右方向および上下方向に平行なフラット部を有し、
前記フラット部は、パウチ表裏方向における前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所よりもパウチ表裏方向の外側、または、パウチ表裏方向において前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所と同じ位置に位置していることを特徴とするスパウト。
【請求項2】
請求項1に記載のスパウトと、表側フィルム部および裏側フィルム部を有し前記取付部に装着されるパウチとを備えたスパウト付きパウチであって、
前記距離D1は、前記表側フィルム部の厚み寸法T1以上に設定され、
前記距離D2は、前記裏側フィルム部の厚み寸法T2以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスパウト付きパウチ。
【請求項3】
前記距離D1は、前記表側フィルム部の厚み寸法T1の1.0~3.0倍に設定され、
前記距離D2は、前記裏側フィルム部の厚み寸法T2の1.0~3.0倍に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のスパウト付きパウチ。
【請求項4】
パウチに装着される取付部と、前記取付部の上方に形成される1つ以上のフランジ部と、前記取付部に形成され上下方向に沿って延びる注出孔とを備えたスパウトであって、
前記スパウトは、前記取付部および前記フランジ部を有したスパウト本体と、前記スパウト本体に対してねじ係合によって取り付けられるキャップ部とを有し、
前記1つ以上のフランジ部には、最も下方に形成される第1フランジ部
と、前記第1フランジ部の上方に形成された第2フランジ部とが含まれ、
前記取付部は、パウチ表裏方向における表側に面する表側取付部端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する裏側取付部端面とを有し、
前記第1フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第1表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第1裏側フランジ端面とを有し、
前記第1表側フランジ端面は、パウチ左右方向において前記注出孔の中心軸に対応する中央位置において、前記表側取付部端面よりもパウチ表裏方向の内側、または、前記表側取付部端面とパウチ表裏方向の同じ位置に位置し、
前記第1裏側フランジ端面は、前記中央位置において、前記裏側取付部端面よりもパウチ表裏方向の内側、または、前記裏側取付部端面とパウチ表裏方向の同じ位置に位置し
、
前記第1表側フランジ端面または前記第1裏側フランジ端面の少なくとも一方は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、キャップ開栓時における前記キャップ部に対する前記スパウト本体の相対的な回転方向の前方側に寄った位置のみに、パウチ表裏方向の外側に膨出した第1フランジ膨出部を有し、
前記第2フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第2表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第2裏側フランジ端面とを有し、
前記第2表側フランジ端面および前記第2裏側フランジ端面は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、前記回転方向の前方側および後方側に寄った位置に、パウチ表裏方向の外側に張り出した第2フランジ膨出部をそれぞれ有し、
前記各第2フランジ膨出部は、パウチ左右方向および上下方向に平行なフラット部を有し、
前記フラット部は、パウチ表裏方向における前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所よりもパウチ表裏方向の外側、または、パウチ表裏方向において前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所と同じ位置に位置していることを特徴とするスパウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチに装着されるスパウトおよびスパウト付きパウチに関し、特に、パウチに装着される取付部の上方にフランジ部が形成されたスパウトおよびスパウト付きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼリー状飲料等の内容物を収容する容器として、重ねたフィルムを所定箇所で熱溶着することで袋状に形成したパウチの注出口にスパウトを装着したスパウト付きパウチが広く用いられている。
【0003】
このようなスパウトには、パウチに装着される取付部の上方に、外周側に突出するフランジ部が形成されることが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなスパウト付きパウチでは、使用者がキャップ開閉の操作を行う時、使用者が、一方の手の指で取付部の上方に形成されたフランジ部を掴むとともに、他方の手の指でキャップを掴んだ状態で、キャップを回転させることがある。
【0006】
ところが、上下方向におけるフランジ部の厚みは薄く形成されているのが一般的であるため、フランジ部を掴んだ指にフランジ部が食い込み、使用者に痛みや不快感を覚させてしまうことがあるといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、使用者に痛みや不快感を覚えさせることなく、スパウトを安定して把持することが可能なスパウトおよびスパウト付きパウチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスパウトは、パウチに装着される取付部と、前記取付部の上方に形成される1つ以上のフランジ部と、前記取付部に形成され上下方向に沿って延びる注出孔とを備えたスパウトであって、前記スパウトは、前記取付部および前記フランジ部を有したスパウト本体と、前記スパウト本体に対してねじ係合によって取り付けられるキャップ部とを有し、前記フランジ部には、最も下方に形成される第1フランジ部と、前記第1フランジ部の上方に形成された第2フランジ部とが含まれ、前記取付部は、パウチ表裏方向における表側に面する表側取付部端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する裏側取付部端面とを有し、前記第1フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第1表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第1裏側フランジ端面とを有し、前記第1表側フランジ端面は、パウチ左右方向において前記注出孔の中心軸に対応する中央位置において、前記表側取付部端面よりもパウチ表裏方向の外側に位置し、前記第1裏側フランジ端面は、前記中央位置において、前記裏側取付部端面よりもパウチ表裏方向の外側に位置し、前記中央位置における、前記表側取付部端面と前記第1表側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D1は、0.5mm以内に設定され、前記中央位置における、前記裏側取付部端面と前記第1裏側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D2は、0.5mm以内に設定され、前記第1表側フランジ端面または前記第1裏側フランジ端面の少なくとも一方は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、キャップ開栓時における前記キャップ部に対する前記スパウト本体の相対的な回転方向の前方側に寄った位置のみに、パウチ表裏方向の外側に膨出した第1フランジ膨出部を有し、前記第2フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第2表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第2裏側フランジ端面とを有し、前記第2表側フランジ端面および前記第2裏側フランジ端面は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、前記回転方向の前方側および後方側に寄った位置に、パウチ表裏方向の外側に張り出した第2フランジ膨出部をそれぞれ有し、前記各第2フランジ膨出部は、パウチ左右方向および上下方向に平行なフラット部を有し、前記フラット部は、パウチ表裏方向における前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所よりもパウチ表裏方向の外側、または、パウチ表裏方向において前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所と同じ位置に位置していることにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明の他の態様のスパウトは、パウチに装着される取付部と、前記取付部の上方に形成される1つ以上のフランジ部と、前記取付部に形成され上下方向に沿って延びる注出孔とを備えたスパウトであって、前記スパウトは、前記取付部および前記フランジ部を有したスパウト本体と、前記スパウト本体に対してねじ係合によって取り付けられるキャップ部とを有し、前記フランジ部には、最も下方に形成される第1フランジ部と、前記第1フランジ部の上方に形成された第2フランジ部とが含まれ、前記取付部は、パウチ表裏方向における表側に面する表側取付部端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する裏側取付部端面とを有し、前記第1フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第1表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第1裏側フランジ端面とを有し、前記第1表側フランジ端面は、パウチ左右方向において前記注出孔の中心軸に対応する中央位置において、前記表側取付部端面よりもパウチ表裏方向の内側、または、前記表側取付部端面とパウチ表裏方向の同じ位置に位置し、前記第1裏側フランジ端面は、前記中央位置において、前記裏側取付部端面よりもパウチ表裏方向の内側、または、前記裏側取付部端面とパウチ表裏方向の同じ位置に位置し、前記第1表側フランジ端面または前記第1裏側フランジ端面の少なくとも一方は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、キャップ開栓時における前記キャップ部に対する前記スパウト本体の相対的な回転方向の前方側に寄った位置のみに、パウチ表裏方向の外側に膨出した第1フランジ膨出部を有し、前記第2フランジ部は、パウチ表裏方向における表側に面する第2表側フランジ端面と、パウチ表裏方向における裏側に面する第2裏側フランジ端面とを有し、前記第2表側フランジ端面および前記第2裏側フランジ端面は、パウチ左右方向における前記中央位置よりも、前記回転方向の前方側および後方側に寄った位置に、パウチ表裏方向の外側に張り出した第2フランジ膨出部をそれぞれ有し、前記各第2フランジ膨出部は、パウチ左右方向および上下方向に平行なフラット部を有し、前記フラット部は、パウチ表裏方向における前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所よりもパウチ表裏方向の外側、または、パウチ表裏方向において前記第1フランジ部の前記第1フランジ膨出部の最外箇所と同じ位置に位置していることにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明の他の態様のスパウト付きパウチは、前記スパウトと、表側フィルム部および裏側フィルム部を有し前記取付部に装着されるパウチとを備えたスパウト付きパウチであって、前記距離D1は、前記表側フィルム部の厚み寸法T1以上に設定され、前記距離D2は、前記裏側フィルム部の厚み寸法T2以上に設定されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、第1表側フランジ端面および第1裏側フランジ端面が、パウチ左右方向において注出孔の中心軸に対応する中央位置において、表側取付部端面または裏側取付部端面よりもパウチ表裏方向の外側に位置している場合において、中央位置における表側取付部端面と第1表側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D1が0.5mm以内に設定されているとともに、中央位置における裏側取付部端面と第1裏側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D2が0.5mm以内に設定されている。これにより、取付部と第1フランジ部との間の段差が小さくなり、キャップ開閉時等において、使用者が指でスパウトを把持する時に、使用者が取付部および第1フランジ部の両方を把持することが容易になるため、第1フランジ部が使用者の指に食い込むことを抑制でき、使用者に痛みや不快感を覚えさせることなく、スパウトを安定して把持することができる。また、第1フランジ部の材料の量を低減することが可能であるため、製造コストを低減できる。
【0010】
本請求項2に係る発明によれば、表側取付部端面と第1表側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D1を、表側フィルム部の厚み寸法T1以上に設定するとともに、裏側取付部端面と第1裏側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D2を、裏側フィルム部の厚み寸法T2以上に設定することにより、使用者が指でスパウトを把持する時に、使用者の指が表側フィルム部および裏側フィルムの縁部に当たることを抑制することが可能であるため、使用者に痛みや不快感を覚えさせることなく、スパウトを把持することができる。
本請求項3に係る発明によれば、表側取付部端面と第1表側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D1を、表側フィルム部の厚み寸法T1の1.0~3.0倍に設定するとともに、裏側取付部端面と第1裏側フランジ端面との間のパウチ表裏方向の距離D2を、裏側フィルム部の厚み寸法T2の1.0~3.0倍に設定することにより、使用者が指でスパウトを把持する時に、スパウトの取付部に対して各フィルム部を溶着する時に各フィルム部の接着層等が溶融して形成される所謂ポリ溜まりに、使用者の指が触れることを抑制することができる。
本請求項4に係る発明によれば、第1表側フランジ端面が、中央位置において表側取付部端面よりもパウチ表裏方向の内側または表側取付部端面とパウチ表裏方向の同じ位置に位置しているとともに、第1裏側フランジ端面が、中央位置において裏側取付部端面よりもパウチ表裏方向の内側または裏側取付部端面とパウチ表裏方向の同じ位置に位置している。これにより、キャップ開閉時等において、第1フランジ部が使用者の指に食い込むことを抑制することが可能であるため、使用者に痛みや不快感を覚えさせることなく、スパウトを安定して把持することができる。
本請求項1、4に係る発明によれば、第1表側フランジ端面または第1裏側フランジ端面の少なくとも一方が、パウチ左右方向における中央位置よりも、キャップ開栓時におけるキャップ部に対するスパウト本体の相対的な回転方向の前方側に寄った位置のみに、パウチ表裏方向の外側に膨出した第1フランジ膨出部を有していることにより、キャップ開封時に、使用者の指を第1フランジ膨出部に引っ掛けることが可能であるため、キャップの開け易さを向上することができるとともに、キャップ閉塞時には、使用者の指が第1フランジ膨出部に引っ掛かることが回避されるため、キャップの締め過ぎを抑制することができる。
本請求項1、4に係る発明によれば、パウチ左右方向および上下方向に平行に形成された各第2フランジ膨出部のフラット部が、パウチ表裏方向における第1フランジ部のフランジ膨出部の最外箇所よりもパウチ表裏方向の外側、または、パウチ表裏方向において第1フランジ部のフランジ膨出部の最外箇所と同じ位置に位置していることにより、スパウト付きパウチの搬送時等において、搬送方向に前後のスパウト間でフラット部同士を当接させて、搬送方向に沿って複数のスパウト付きパウチを玉突き状態で搬送することが可能であるため、スパウト付きパウチの搬送性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスパウト付きパウチを示す説明図。
【
図2】スパウト本体をパウチ表裏方向に見て示す説明図。
【
図3】第1フランジ部と取付部との寸法関係を上方から見て示す説明図。
【
図4】第2フランジ部と取付部との寸法関係を上方から見て示す説明図。
【
図5】第1フランジ部または第2フランジ部の変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係るスパウト付きパウチ10について、図面に基づいて説明する。
【0013】
スパウト付きパウチ10は、
図1に示すように、重ねたフィルムを所定箇所で熱溶着することで袋状に形成されたパウチ20に、注出口として機能するスパウト30を装着して構成され、ゼリー状飲料等の粘性および流動性を有した内容物(内容液)を収容するものである。
【0014】
以下、スパウト付きパウチ10の各構成要素について、図面に基づいて説明する。
【0015】
スパウト30は、合成樹脂等から形成され、
図1に示すように、パウチ20に装着されるスパウト本体31と、スパウト本体31に着脱可能にねじ係合によって取り付けられるキャップ部37とを有している。
【0016】
スパウト本体31は、
図1~4に示すように、その断面形状が舟形(具体的には、円筒状の部分のパウチ左右方向Xの両端付近からパウチ左右方向Xの外側に向けて突出する略三角形状の突出部が形成された形状)に形成された取付部32と、取付部32から上方に向けて延びる注出筒部33と、取付部32から下方に向けて延びパウチ20の内側に配置されるストロー部34と、取付部32の上方において互いに間隔を置いて形成される複数のフランジ部35、36とを一体に有している。
【0017】
取付部32は、
図1~4に示すように、その長手方向をパウチ左右方向Xに向けた状態で、パウチ20の表側フィルム部21および裏側フィルム部22の間に配置され、熱溶着等によって表側フィルム部21および裏側フィルム部22に固着される部位である。
取付部32は、
図2~4に示すように、パウチ表裏方向Yにおける表側に面する表側取付部端面32aと、パウチ表裏方向Yにおける裏側に面する裏側取付部端面32bとを有している。
取付部32は、
図3や
図4に示すように、上下方向Zに沿って形成された丸孔状の注出孔32cを有している。
【0018】
注出筒部33は、
図2~4に示すように、取付部32の注出孔32cに上下方向Zに連続する丸孔状の注出孔33aを有した円筒状の部位である。
注出筒部33の上端側(第2フランジ部36よりも上方側)において、注出筒部33の外周面には、
図2に示すように、キャップ部37に係合可能なネジ部33bが形成されている。
【0019】
また、第1フランジ部35と第2フランジ部36との間において、注出筒部33の外周面には、
図2に示すように、フランジ間部33cが形成されている。
フランジ間部33cは、パウチ表裏方向Yの表側または裏側に面し、パウチ左右方向Xおよび上下方向Zに平行な表側端面および裏側端面と、パウチ左右方向Xの左側または右側に面し、パウチ表裏方向Yおよび上下方向Zに平行な左側端面および右側端面とを有している。
フランジ間部33cの表側端面および裏側端面は、その全面に亘って、フランジ部35、36よりも、パウチ表裏方向Yの外側に突出しないように形成されているのが好ましい。
なお、本実施形態では、フランジ間部33cの表側端面および裏側端面は、パウチ左右方向Xにおいて注出孔32cの中心軸に対応する中央位置Cにおいて、フランジ部35、36よりも、パウチ表裏方向Yの内側に位置している。
また、フランジ間部33cの左側端面および右側端面は、フランジ部35、36よりも、パウチ左右方向Xの内側に位置している。
【0020】
ストロー部34は、
図1に示すように、パウチ20の内部に配置され、パウチ20の内部に内容物を注出するための流路を形成するための部位である。
【0021】
複数のフランジ部35、36には、
図2に示すように、最も下方に形成された(取付部32の最も近くに形成される)第1フランジ部35と、第1フランジ部35の上方に形成された第2フランジ部36とが含まれる。
【0022】
第1フランジ部35は、取付部32の上方に隙間無く隣接して形成され、
図2や
図3に示すように、パウチ表裏方向Yにおける表側に面する第1表側フランジ端面35aと、パウチ表裏方向Yにおける裏側に面する第1裏側フランジ端面35bとを有している。
【0023】
第1フランジ部35の各フランジ端面35a、35bは、
図3に示すように、キャップ開栓時におけるキャップ部37に対するスパウト本体31の相対的な回転方向の前方側(キャップ開栓時にトルクがかかる側)に形成された第1フランジ膨出部35cと、回転方向の後方側に形成された平坦部35eと、フランジ端面35a、35bのパウチ左右方向Xの両端に形成されたR部とを有している。
【0024】
第1フランジ膨出部35cは、
図3に示すように、中央位置Cよりも、回転方向の前方側に寄った位置において、パウチ表裏方向Yの外側に膨出して形成され、具体的には、平坦部35eよりもパウチ表裏方向Yの外側に突出した凸部として形成されている。
各第1フランジ膨出部35cは、パウチ左右方向Xおよび上下方向Zに平行に形成されたフラット部35dを有している。
平坦部35eは、
図3に示すように、中央位置Cを跨ぐように形成され、また、パウチ左右方向Xおよび上下方向Zに平行に形成されている。
各フランジ端面35a、35b(の平坦部35e)は、中央位置Cにおいて、各取付部端面32a、32bよりもパウチ表裏方向Yの外側に位置している。
【0025】
第2フランジ部36は、
図2に示すように、第1フランジ部35の上方かつネジ部33bよりも下方において、注出筒部33の外周に形成されている。
【0026】
第2フランジ部36は、
図4に示すように、パウチ表裏方向Yにおける表側に面する第2表側フランジ端面36aと、パウチ表裏方向Yにおける裏側に面する第2裏側フランジ端面36bとを有している。
【0027】
第2フランジ部36の各フランジ端面36a、36bは、
図4に示すように、中央位置Cよりも、回転方向の前方側および後方側に寄った位置に、パウチ表裏方向Yの外側に膨出した第2フランジ膨出部36cをそれぞれ有している。
また、フランジ端面35a、35bのパウチ左右方向Xの両端には、R部が形成されている。
【0028】
各第2フランジ膨出部36cは、
図4に示すように、中央位置C側に形成された凹状の湾曲面36dと、湾曲面36dよりもパウチ左右方向Xの外側に形成されたフラット部36eとを有している。
【0029】
回転方向の前方側の湾曲面36dと後方側の湾曲面36dとは、
図4に示すように、滑らかに連続して形成されており、これにより、フランジ端面36a、36bのパウチ左右方向Xの中央には、凹状湾曲部36fが形成されている。
【0030】
各フラット部36eは、
図1に示すように、湾曲面36dよりもパウチ表裏方向Yの外側に位置し、また、パウチ左右方向Xおよび上下方向Zに平行に形成されている。
第2フランジ部36のフラット部36eは、パウチ表裏方向Yにおける第1フランジ部35の第1フランジ膨出部35cの最外箇所(本実施形態では、フラット部35d)よりもパウチ表裏方向Yの外側、または、パウチ表裏方向Yにおいて第1フランジ膨出部35cの最外箇所と同じ位置に位置している。
【0031】
キャップ部37は、スパウト本体31のネジ部33bに係合可能なネジ部(図示しない)をその内周面に有し、上下軸を中心としてスパウト本体31に対してキャップ部37を回転させることで、キャップ部37に対して開栓および閉栓されるように構成されている。具体的には、本実施形態では、キャップ部37を上方から見た場合に、キャップ部37を時計回りに回転させた場合に、キャップ部37が閉栓され、キャップ部37を反時計回りに回転させた場合に、キャップ部37が開栓されるように構成されている。
【0032】
次に、スパウト付きパウチ10の各部間の寸法関係について、以下に説明する。
【0033】
まず、
図3に示すように、中央位置Cにおける、表側取付部端面32a(の最外箇所)と第1表側フランジ端面35a(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D1は、0.5mm以内に設定されている。
また、距離D1は、表側フィルム部21の厚み寸法T1以上に設定されることが好ましく、更には、距離D1は、表側フィルム部21の厚み寸法T1の1.0~3.0倍に設定されていることが好ましい。
【0034】
また、
図3に示すように、中央位置Cにおける、裏側取付部端面32b(の最外箇所)と第1裏側フランジ端面35b(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D2は、0.5mm以内に設定されている。
また、距離D2は、裏側フィルム部22の厚み寸法T2以上に設定されることが好ましく、更には、距離D2は、裏側フィルム部22の厚み寸法T2の1.0~3.0倍に設定されていることが好ましい。
【0035】
なお、本実施形態では、厚み寸法T1と厚み寸法T2とは等しく設定され、また、距離D1と距離D2とは等しく設定されている。
【0036】
また、
図4に示すように、中央位置Cにおける、表側取付部端面32a(の最外箇所)と第2表側フランジ端面36a(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D3は、0.5mm以内に設定されている。
また、中央位置Cにおける、裏側取付部端面32b(の最外箇所)と第2裏側フランジ端面36b(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D4は、0.5mm以内に設定されている。
【0037】
また、中央位置Cにおける、フランジ間部33cの表側端面(の最外箇所)と第1表側フランジ端面35a(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D5は、0.5mm以内に設定され、また、また、中央位置Cにおける、フランジ間部33cの表側端面(の最外箇所)と第2表側フランジ端面36a(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D6は、0.5mm以内に設定されている。
また、中央位置Cにおける、フランジ間部33cの裏側端面(の最外箇所)と第1裏側フランジ端面35b(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D7は、0.5mm以内に設定され、また、また、中央位置Cにおける、フランジ間部33cの表側端面(の最外箇所)と第2裏側フランジ端面36b(の最外箇所)との間のパウチ表裏方向Yの距離D8は、0.5mm以内に設定されている。
【0038】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0039】
例えば、前述または後述する実施形態や変形例の各構成を、任意に組み合わせてスパウト付きパウチ10を構成しても何ら構わない。
また、パウチ20を構成するフィルムの具体的態様は、如何なるものでもよく、その具体例としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ボリブチレンテレフタレート、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の合成樹脂性フィルムや、これら合成樹脂性フィルムにガスバリア性や水分バリア性を付与したコーティングフィルム又は蒸着フィルム等の公知の合成樹脂性フィルムを積層したり、合成樹脂製フィルムに紙またはアルミ箔を積層することで形成されたもの等が挙げられる。
【0040】
また、上述した実施形態では、第1フランジ部35が取付部32の上方に隣接して形成されているものとして説明したが、第1フランジ部35を取付部32の上方に取付部32から離間して形成してもよい。
また、上述した実施形態では、第1表側フランジ端面35aおよび第1裏側フランジ端面35bの両方が第1フランジ膨出部35cを有しているものとして説明したが、第1表側フランジ端面35aまたは第1裏側フランジ端面35bの一方のみに、第1フランジ膨出部35cを形成してもよい。
また、上述した実施形態では、取付部32、注出筒部33、フランジ間部33c、第1フランジ部35、および、第2フランジ部36のパウチ左右方向Xの中央位置が、中央位置Cに一致しているものとして説明したが、取付部32、注出筒部33、フランジ間部33c、第1フランジ部35、および、第2フランジ部36の少なくとも1つの中央位置が、中央位置Cからパウチ左右方向Xにずれていてもよい。
また、上述した実施形態では、取付部32、注出筒部33、フランジ間部33c、第1フランジ部35、および、第2フランジ部36のパウチ表裏方向Yの中央位置が、パウチ表裏方向Yにおいて注出孔32cの中心軸に対応する中央位置に一致しているものとして説明したが、取付部32、注出筒部33、フランジ間部33c、第1フランジ部35、および、第2フランジ部36の少なくとも1つの中央位置が、パウチ表裏方向Yにおいて注出孔32cの中心軸に対応する中央位置からパウチ表裏方向Yにずれていてもよい。
また、上述した実施形態では、フランジ端面35a、35b、36a、36bが、中央位置Cにおいて、取付部端面32a、32bよりもパウチ表裏方向Yの外側に位置しているものとして説明したが、フランジ端面35a、35b、36a、36bの少なくとも1つが、中央位置Cにおいて、取付部端面32a、32bよりもパウチ表裏方向Yの内側、または、取付部端面32a、32bとパウチ表裏方向Yの同じ位置に、位置していてもよい。
また、上述した実施形態では、距離D1~D4が互いに同じ寸法で設定されているものとして説明したが、距離D1~D4の寸法設計は上記に限定されず、距離D1~D4の少なくとも1つを他と異なる寸法とする等、距離D1~D4の寸法を任意に設定すればよい。
なお、距離D1の寸法設定と距離D3の寸法設定とを異ならせる場合、距離D1と距離D3との寸法差を0.25mm以内に収めるのが好ましく、また、距離D1よりも距離D3の寸法を大きく設定するのが好ましい。
また、同様に、距離D2の寸法設定と距離D4の寸法設定とを異ならせる場合、距離D2と距離D4との寸法差を0.25mm以内に収めるのが好ましく、また、距離D2よりも距離D4の寸法を大きく設定するのが好ましい。
また、上述した実施形態では、第1フランジ部35が、
図3に示す形状で形成されているものとして説明したが、第1フランジ部35の具体的態様は、上記に限定されず、例えば、第1フランジ部35の態様として、
図4に示す第2フランジ部36の形状と同様の形状を採用してもよく、また、
図5に示す変形例のように、第1フランジ膨出部35cが形成されていない態様を採用してもよい。なお、この
図5に示す変形例では、第1表側フランジ端面35aおよび第1裏側フランジ端面35bが、中央位置Cを跨ぐように形成された、パウチ左右方向Xおよび上下方向Zに平行な平坦部と、平坦部のパウチ左右方向Xの両端に形成されたR部とから構成されている。また、
図5に示す変形例では、上述した距離D1、D2が0.5mm以内に設定されている。
また、上述した実施形態では、第2フランジ部36が、
図4に示す形状で形成されているものとして説明したが、第2フランジ部36の具体的態様は上記に限定されず、例えば、第2フランジ部36の態様として、
図3に示す第1フランジ部35の形状と同様の形状を採用してもよく、また、
図5に示す変形例のように、第1フランジ膨出部35cが形成されていない態様を採用してもよい。なお、この
図5に示す変形例では、第2表側フランジ端面36aおよび第2裏側フランジ端面36bが、中央位置Cを跨ぐように形成された、パウチ左右方向Xおよび上下方向Zに平行な平坦部と、平坦部のパウチ左右方向Xの両端に形成されたR部とから構成されている。また、
図5に示す変形例では、上述した距離D3、D4が0.5mm以内に設定されている。
また、第2フランジ部36の態様として、上述した距離D3、D4が0.5mmよりも大きく設定された
図6に示すような態様を採用してもよい。この場合、パウチ表裏方向Yの外側に張り出した第2フランジ膨出部36によって、取付部32や第1フランジ部35を掴んだ使用者の指がキャップ部37に当たることを抑制することができ、特に、キャップ部37側にTE(タンパーエビデント)バンドが残る所謂バンドスプリットタイプのキャップ部37を採用した場合であっても、使用者の指がTEバンドに当たることを抑制することが可能であるため、キャップ開閉を安定して行うことができる。
また、上述した実施形態では、第2フランジ部36が1つ形成されているものとして説明したが、第2フランジ部36の数量は、2つ以上であってもよく、また、第2フランジ部36を形成しなくてもよい。しかしながら、第2フランジ部36を形成した場合、第1フランジ部35と第2フランジ部36との間にレールを通して、スパウト付きパウチ10を搬送することが可能であるため、第2フランジ部36を形成するのが好ましい。
また、取付部32の各取付部端面32a、32bおよび各フランジ部35、36の各フランジ端面35a、35b、36a、36b、特に、第1フランジ部35の各フランジ端面35a、35bに、ローレット加工、ブラスト加工等の滑り止め加工を施してもよい。
また、表側フィルム部21および裏側フィルム部22は、互いに分離した別個のフィルムから構成されていてもよく、一枚の連続したフィルムとして構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 ・・・ スパウト付きパウチ
20 ・・・ パウチ
21 ・・・ 表側フィルム部
22 ・・・ 裏側フィルム部
30 ・・・ スパウト
31 ・・・ スパウト本体
32 ・・・ 取付部
32a ・・・ 表側取付部端面
32b ・・・ 裏側取付部端面
32c ・・・ 注出孔
33 ・・・ 注出筒部
33a ・・・ 注出孔
33b ・・・ ネジ部
33c ・・・ フランジ間部
34 ・・・ ストロー部
35 ・・・ 第1フランジ部
35a ・・・ 第1表側フランジ端面
35b ・・・ 第1裏側フランジ端面
35c ・・・ 第1フランジ膨出部
35d ・・・ フラット部
35e ・・・ 平坦部
36 ・・・ 第2フランジ部
36a ・・・ 第2表側フランジ端面
36b ・・・ 第2裏側フランジ端面
36c ・・・ 第2フランジ膨出部
36d ・・・ 湾曲面
36e ・・・ フラット部
36f ・・・ 凹状湾曲部
37 ・・・ キャップ部
C ・・・ 中央位置
X ・・・ パウチ左右方向
Y ・・・ パウチ表裏方向
Z ・・・ 上下方向