IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ MCPPイノベーション合同会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】接着性樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/10 20060101AFI20221101BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221101BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20221101BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20221101BHJP
【FI】
C09J123/10
B32B27/32 Z
C09J123/08
C09J7/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019005348
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020111709
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中村 信貴
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-188662(JP,A)
【文献】特開2007-168257(JP,A)
【文献】特開2018-154683(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093805(WO,A1)
【文献】特開2018-135488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
B32B 27/32
C09J 123/00
C09J 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の樹脂成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、該(A)~(D)の合計100質量%中に成分(A)を10~20質量%、成分(B)を30~45質量%、成分(C)を5~15質量%及び成分(D)を30~45質量%含み、該樹脂成分中の不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする接着性樹脂組成物。
成分(A):ポリプロピレン系樹脂に、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレン系樹脂
成分(B):下記条件1及び2を満足するプロピレン系重合体であって、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・プロピレン以外のα-オレフィン共重合体及びプロピレン・エチレン・プロピレン以外のα-オレフィン共重合体よりなる群より選ばれる1以上であるプロピレン系重合体
条件1:230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが5~30g/10分
条件2:DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mg以下
成分(C):密度が0.900~0.930g/cmである低密度ポリエチレン
成分(D):DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mgを超え、且つ密度が0.855~0.875g/cmであるエチレン・α-オレフィン共重合体
【請求項2】
成分(A)のポリプロピレン系樹脂が、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン・エチレン共重合体である、請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(B)のプロピレン系重合体が、プロピレン・エチレン・プロピレン以外のα-オレフィン共重合体である、請求項1又は2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層と基材層とを有することを特徴とする積層体。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂層が基材層上に、前記接着性樹脂組成物からなる層が該基材層に接するように押出ラミネート成形されてなることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材層が、前記接着性樹脂組成物からなる層と接する面がコロナ処理されたポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単層または多層のラミネート成形において成形性に優れ、樹脂との接着性が良好な接着性樹脂組成物とこの接着性樹脂組成物を用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
基材層に接着性樹脂層をラミネートした積層体は、食品や医薬品等、品質の保持が重要視される内容物を包装する材料として広く用いられている。これらの用途に用いる積層体の基材層としては、包装材料にバリアー性(酸素バリアー性や水蒸気バリアー性など)及び遮光性が要求される場合は金属層が用いられる。また、包装材料にバリアー性及び透明性が要求される場合は、バリアー性を有する特殊樹脂層が用いられている。このような基材層と接着性樹脂層との積層には、押出ラミネート成形、熱ラミネート成形、共押出成形等が行われるが、中でも押出ラミネート成形は、高速成形が可能であるため好適に用いられている。
【0003】
しかしながら、押出ラミネート成形においては、既にフィルム状となっている基材層の表面に溶融した接着性樹脂等を高速でラミネートするため、両層間の接着強度は必ずしも高くならない。この結果、得られた積層体は、基材層と接着性樹脂層との界面で剥離を生じる等の問題が発生していた。特に、押出ラミネート成形で得られた積層体を長期間保存した場合、温度や湿度の上昇等の影響で経時的に両層間の接着強度が低下することも問題であった。
【0004】
基材層と接着性樹脂層との接着性を向上させるためには、押出ラミネート成形時の押出速度を低速にする必要が生じ、本来の押出ラミネート成形の特徴である高速成形性が大幅に損なわれることになる。
【0005】
このような問題を解決するものとして、特許文献1には、ポリプロピレンを不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で変性した変性ポリプロピレンを含有するポリプロピレン系樹脂(A)、プロピレン系共重合体(B)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)およびポリエチレン(D)を所定の割合で含有する樹脂組成物が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、特許文献1の樹脂組成物の接着耐久性や押出ラミネート成形性等を更に改善したものとして、変性ポリプロピレン系樹脂(A)、ある特定の条件(230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが5~30g/10分であり、且つDSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mg以下)を満たすプロピレン系重合体(B)、低密度ポリエチレン(C)を特定の割合で配合した接着性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-188662号公報
【文献】特開2018-135488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の樹脂組成物は、高速押出ラミネート成形性、積層体の接着層として用いた場合の基材層との接着性に優れるものであるが、基材層の被接着面がコロナ処理されたものである場合の接着強度については更なる強度の向上が求められている。即ち、各種用途に用いられる積層体の基材層としてのポリエステルフィルムは、接着性向上のためにコロナ処理が施される場合があるが、このような基材層に対して、特許文献2の樹脂組成物では十分な接着性を得ることができなかった。
【0009】
本発明は、積層体における接着層として用いた場合の基材層、特に表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムとの接着性が、従来の接着性樹脂組成物に比べて極めて良好であり、高速押出ラミネート成形に最適な接着性樹脂組成物と、この接着性樹脂組成物を用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、上述の特許文献2における変性ポリプロピレン系樹脂(A)、ある特定の条件(230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが5~30g/10分であり、且つDSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mg以下)を満たすプロピレン系重合体(B)、低密度ポリエチレン(C)の配合割合を変更し、且つ成分(D)として、ある特定の密度を有するエチレン・α-オレフィン共重合体を特定量配合することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下を要旨とする。
【0012】
[1] 下記の樹脂成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、該(A)~(D)の合計100質量%中に成分(A)を10~20質量%、成分(B)を30~45質量%、成分(C)を5~15質量%及び成分(D)を30~45質量%含み、該樹脂成分中の不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする接着性樹脂組成物。
成分(A):ポリプロピレン系樹脂に、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレン系樹脂
成分(B):下記条件1及び2を満足するプロピレン系重合体
条件1:230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが5~30g/10分
条件2:DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mg以下
成分(C):密度が0.900~0.930g/cmである低密度ポリエチレン
成分(D):DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mgを超え、且つ密度が0.855~0.875g/cmであるエチレン・α-オレフィン共重合体
【0013】
[2] 成分(A)のポリプロピレン系樹脂が、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン・エチレン共重合体である、[1]に記載の接着性樹脂組成物。
【0014】
[3] 成分(B)のプロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・プロピレン以外のα-オレフィン共重合体及びプロピレン・エチレン・プロピレン以外のα-オレフィン共重合体よりなる群より選ばれる1以上である、[1]又は[2]に記載の接着性樹脂組成物。
【0015】
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層と基材層とを有することを特徴とする積層体。
【0016】
[5] 前記ポリプロピレン系樹脂層が基材層上に、前記接着性樹脂組成物からなる層が該基材層に接するように押出ラミネート成形されてなることを特徴とする[4]に記載の積層体。
【0017】
[6] 前記基材層が、前記接着性樹脂組成物からなる層と接する面がコロナ処理されたポリエステルフィルムであることを特徴とする[5]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層体における接着層として用いた場合の基材層としてのポリエステルフィルム、中でも表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムとの接着性が、極めて良好であり、従って、押出速度を上げることができ、高速押出ラミネート成形に好適な接着性樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、この接着性樹脂組成物を用いて、接着耐久性、信頼性に優れると共に、生産性にも優れた積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0020】
本発明において、樹脂のメルトフローレート(MFR)、密度、曲げ弾性率は、以下のようにして測定された値である。
【0021】
<MFR>
後述の成分(A)のポリプロピレン系樹脂(a)、成分(B)のプロピレン系重合体、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。成分(C)の低密度ポリエチレンのMFRは、JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
【0022】
<密度>
JIS K7112に準拠して、水中置換法で測定される。
【0023】
<曲げ弾性率>
JIS K7171-1994に準拠して測定される。
【0024】
また、成分(B)のプロピレン系重合体及び成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体の示差走査熱量計(DSC)による融解熱量及び融点は後述の実施例の項に記載される方法で求められる。
【0025】
[接着性樹脂組成物]
本発明の接着性樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」と称す場合がある。)は、樹脂成分として少なくとも下記の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、該成分(A)~(D)の合計100質量%中に成分(A)を10~20質量%、成分(B)を30~45質量%、成分(C)を5~15質量%及び成分(D)を30~45質量%含み、該樹脂成分中の不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする。
本発明において、「樹脂成分」とは、下記成分(A)~(D)と後述のその他の成分としての成分(A)~(D)以外の樹脂を指す。
成分(A):ポリプロピレン系樹脂に、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレン系樹脂
成分(B):下記条件1及び2を満足するプロピレン系重合体
条件1:230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが5~30g/10分
条件2:DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mg以下
成分(C):密度が0.900~0.930g/cmである低密度ポリエチレン
成分(D):DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mgを超え、且つ密度が0.855~0.875g/cmであるエチレン・α-オレフィン共重合体
【0026】
<メカニズム>
本発明の接着性樹脂組成物は、成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂を含み、また、この成分(A)に由来して不飽和カルボン酸成分を所定値以上含むことで、基材層、特に表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムとの接着性を十分なものとすることができる。また、成分(B)のプロピレン系重合体が基材層との親和性に優れていることから成分(B)を含むことで接着性をさらに高めることができる。成分(C)の低密度ポリエチレンは、耐熱性、成形性に寄与する成分であり、成分(C)を所定の割合で含むことで、高速押出ラミネート成形性に優れたものとなる。
本発明では、特許文献2に対して、成分(B)の割合を減らし、その分、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体を配合することで、固化に要する時間を長くして、濡れ時間を稼ぐことで、表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムに対する接着性を高めることができる。
【0027】
<成分(A)>
成分(A)は、ポリプロピレン系樹脂に、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフトした変性ポリプロピレン系樹脂である。
【0028】
成分(A)の原料として用いるポリプロピレン系樹脂(以下、「ポリプロピレン系樹脂(a)」と称す場合がある。)は、プロピレン単位の含有量が50mol%を超える、即ちプロピレン以外の単量体単位の含有量が50mol%未満のものであれば限定されない。好ましくはプロピレン以外の単量体単位の含有量が40mol%以下、より好ましくは30mol%以下、更に好ましくは20mol%以下である。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂(a)は、上記に該当するものであれば特に限定されず、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレンとエチレン及び/又はその他のα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとその他のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。ここで、その他のα-オレフィン、すなわち、プロピレン以外のα-オレフィンは限定されないが、通常、炭素数4~20、好ましくは4~10の二重結合を有する炭化水素が挙げられる。また、「その他のビニルモノマー」も限定されないが、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、スチレン誘導体等が挙げられる。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂(a)は、上記の樹脂の1種であってもよく2種以上の混合物であってもよい。
【0031】
なお、前記の各共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等の何れであってもよい。
【0032】
これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂(a)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、これらのブレンド物が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂(a)の曲げ弾性率は通常30~2000MPaの範囲であり、この範囲内であれば、特に限定されないが、被着体との密着性、特に、高速押出ラミネート成形による被着体との密着性に優れるという観点から、100MPa以下であることが好ましい。ただし、ポリプロピレン系樹脂(a)の曲げ弾性率が過度に小さいと、樹脂組成物製造時の成分(A)の加工性が損なわれるおそれがある。
一方、材料強度が求められる場合や、材料強度が接着強度に影響がある場合においては、曲げ弾性率が500MPa以上という高い曲げ弾性率のポリプロピレン系樹脂(a)が好ましい場合もある。
【0034】
また、ポリプロピレン系樹脂(a)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、通常0.5~50g/10分、好ましくは1~30g/10分、より好ましくは2~25g/10分である。MFRが前記下限値よりも小さい場合には、単独での凝集力が強くなり他の成分との均一混合性が不十分になる場合があるほか、本発明の接着性樹脂組成物を製造する際のエネルギー負荷が大きくなり過ぎる場合がある。また、MFRが前記上限値よりも大きい場合には、本発明の接着性樹脂組成物の流動性が高くなり(溶融粘度および溶融張力が低下し)、高速成形性の指標であるネックインが低下する傾向にある。
【0035】
また、ポリプロピレン系樹脂(a)の密度は、成形性と強度とを共に優れたものとするために、0.860~0.910g/cmあることが好ましい。
【0036】
ポリプロピレン系樹脂(a)のグラフト変性に用いる不飽和カルボン酸としては、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの不飽和カルボン酸の酸無水物、カルボン酸エステル等が例示され、更には、酸ハロゲン化物、アミド、イミドなどの誘導体であってもよい。これらの誘導体としては、酸無水物が好ましい。
【0037】
これらの中では、特にマレイン酸及び/又はその無水物が好適である。また、これらの化合物を複数併用してもよい。更には、ビニルトリメトキシシランなどのいわゆるビニルシラン類などを不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とともに併用することもできる。
【0038】
成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂を得るためのグラフト変性は公知の方法を用いることができる。例えば、熱のみの反応でも得ることができるが、反応の際にラジカルを発生させる有機過酸化物等をラジカル発生剤として添加してもよい。また、反応させる手法としては、溶媒中で反応させる溶液変性法や溶媒を使用しない溶融変性法等が挙げられ、更には、懸濁分散反応法などその他の方法を用いてもよい。
【0039】
溶融変性法としては、ポリプロピレン系樹脂(a)と、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、必要により後述するラジカル発生剤を予め混合した上で、混練機中で溶融混練して反応させる方法や、混練機中で溶融したポリプロピレン系樹脂(a)に、ラジカル発生剤と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
【0040】
溶液変性法としては、ポリプロピレン系樹脂(a)を有機溶媒等に溶解して、これにラジカル発生剤と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とを添加してグラフト共重合させる方法を使用することができる。有機溶媒としては特に限定されるものではなく、例えばアルキル基置換芳香族炭化水素やハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂と不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との配合割合は限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を通常0.01~30質量部、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部の割合で配合することが望ましい。
【0042】
ラジカル発生剤は限定されないが、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,4-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレエート、2,2-ビス(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(トルイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類、ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
これらのラジカル発生剤は、原料のポリプロピレン系樹脂(a)の種類やMFR、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の種類および反応条件等に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、ポリプロピレン系樹脂(a)100質量部に対し、通常0.001~20質量部、好ましくは0.005~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部、特に好ましくは0.01~3質量部である。
【0044】
成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂における不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性量(グラフト率)は限定されないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、一方、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性量が前記下限値より低いと、本発明の接着性樹脂組成物における基材層への接着性能が低下する傾向にある。また、該変性量が前記上限値より高いと熱安定性が低下するほか、他の成分との相溶性が低下する傾向にある。
【0045】
ここで変性量(グラフト率)とは、赤外分光測定装置で測定した際の、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体成分の含有率を意味する。例えば、厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中のカルボン酸及び/又はその誘導体特有の吸収、具体的には1900~1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。なお、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性は、100%が反応に供されずに、ポリプロピレン系樹脂(a)と反応していない不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体も変性ポリプロピレン中に残留している場合があるが、本発明における変性量(グラフト率)は、上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。
【0046】
また、成分(A)は、未反応の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を除く処理を行うことができる。この処理方法は限定されないが、具体的な例としては、装置下部より気体が吹き込める構造を有する貯蔵タンクに変性ポリプロピレン系樹脂を入れて、ヒーターあるいは熱媒油で装置を100℃程度に加熱し、装置下部より窒素などの不活性気体あるいは空気を吹き込み、6~24時間処理する方法がある。
【0047】
本発明において、成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂は1種のみを用いてもよく、ポリプロピレン系樹脂(a)の単量体組成や物性、グラフト変性に用いた不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の種類や、変性量の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
<成分(B)>
成分(B)は、下記条件1及び2を満足するプロピレン系重合体である。ここでプロピレン系重合体とは、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・プロピレン以外のα-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・プロピレン以外のα-オレフィン共重合体であるが、耐熱性を低下せず、結晶性を効率よく低下させ、接着性を維持できる観点から、好ましくはプロピレン・エチレン・ブテン共重合体である。
条件1:230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが5~30g/10分
条件2:DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mg以下
【0049】
成分(B)のプロピレン系重合体を構成するプロピレン以外のα-オレフィンは限定されないが、例えば、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素数4~10程度のα-オレフィン等が挙げられる。
【0050】
なお、成分(B)のプロピレン系重合体は、プロピレン、エチレン、プロピレン以外のα-オレフィン以外のその他の単量体単位を含有していてもよく、その他の単量体としては具体的には、前記のポリプロピレン系樹脂(a)における「その他のビニルモノマー」が挙げられる。
【0051】
成分(B)のプロピレン系重合体が、プロピレンの単独重合体の場合、以下の融解熱量を達成可能な材料として、結晶性が低い材料、具体的には立体規則性を低下させた材料が挙げられる。成分(B)のプロピレン系重合体が、プロピレン・(エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン)共重合体の場合、当該共重合体におけるプロピレンとエチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合比率は、プロピレン単位の含有量とエチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量との合計を100mol%として、好ましくは、プロピレン単位の含有量が50~85mol%、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位の含有量が15~50mol%であり、より好ましくは、プロピレン単位の含有量が50~85mol%、エチレン単位の含有量が10~40mol%であり、エチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン単位の含有量が5~40mol%であり、さらに好ましくはプロピレン単位の含有量が60~80mol%、エチレン単位の含有量が10~20mol%であり、ブテン単位の含有量が10~20mol%である。
プロピレン単位の含有量が上記上限を超える場合は、常温時の基材層に対する接着強度が低くなるため好ましくない。また、プロピレン単位の含有量が上記下限未満の場合は、高温時における基材に対する接着強度が低くなるため好ましくない。
【0052】
成分(B)のプロピレン系重合体は、上記のプロピレン単独重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等の何れであってもよいが、ランダム共重合体が好ましい
【0053】
成分(B)のプロピレン系重合体のMFR(230℃、荷重2.16kg)は、5~30g/10分である(条件1)。成分(B)のプロピレン系重合体のMFRが上記上限を超える場合は、他の成分との相溶性が低下し、本発明の接着性樹脂組成物の流動性が高くなり高速成形性の指標であるネックインが低下するため好ましくない。一方、MFRが上記下限未満の場合は、単独での凝集力が強くなり他の成分との均一混合性が不十分になるため好ましくない。成分(B)のMFRは好ましくは6~25g/10分、より好ましくは7~20g/10分である。
【0054】
また、成分(B)のプロピレン系重合体の融解熱量は20mJ/mg以下である(条件2)。成分(B)のプロピレン系重合体の融解熱量が20mJ/mgを超えると既述の通り、結晶性が高くなり、接着性が低下する。従って、融解熱量は20mJ/mg以下であり、好ましくは15mJ/mg以下である。ただし、融解熱量が過度に小さいと、結晶性成分が過度に少なくなってしまい、耐熱性が劣ってしまうため、成分(B)のプロピレン系重合体の融解熱量は5mJ/mg以上であることが好ましい。
【0055】
また、成分(B)のプロピレン系重合体について、後述の実施例の項に記載の方法でDSCにより測定される吸熱ピークトップ温度に相当する融点は、既述の結晶性部分の特性を表すものである。この部分の結晶性の特性は融点によって表され、100~165℃であることが好ましく、135~160℃であることがさらに好ましい。融点が上記下限未満であると、結晶部分の耐熱性が低下していることを意味しており、耐熱性を維持できない。上記上限を超えるものは一般的なポリプロピレン系樹脂では実現が困難である。
【0056】
成分(B)のプロピレン系重合体の密度は限定されないが、通常0.895g/cm以下、好ましくは0.880g/cm以下であることが望ましい。プロピレン系重合体の密度が前記上限を超える場合は、常温時の基材に対する接着強度が低くなる傾向にある。また、密度の下限は限定されないが、通常0.860g/cm以上である。
【0057】
本発明において、成分(B)のプロピレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、単量体組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
<成分(C)>
成分(C)の低密度ポリエチレンとしては、耐熱性と強度のバランスに優れた高圧法低密度ポリエチレンが好ましく、また、その密度は、0.900~0.930g/cmであり、特に0.910~0.930g/cmであることが好ましい。
【0059】
また、低密度ポリエチレンの物性については特に制限は無いが、MFR(190℃、荷重2.16kg)は、通常1g/10分以上、好ましくは3g/10分以上であり、また、通常30g/10分以下、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下である。低密度ポリエチレンのMFRが前記下限値より低い場合、樹脂組成物中での微分散性が不十分となり、前記上限値より高い場合は、加工特性の改良特性が得られず、何れも高速押出ラミネート成形が低下する傾向にある。
【0060】
成分(C)の低密度ポリエチレンは、1種のみを用いてもよく、物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
<成分(D)>
本発明の接着性樹脂組成物は、樹脂成分中に、下記成分(D)を含むが、これは、表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムに対する常温及び高温下での接着性の向上に寄与する。
成分(D):DSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mgを超え、且つ密度が0.855~0.875g/cmであるエチレン・α-オレフィン共重合体
ここで、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位の含有量が51mol%以上であって、エチレン以外のα-オレフィンとの共重合体であること、そして、密度が0.855~0.875g/cmであるエチレン・α-オレフィン共重合体という点で、前述の成分(C)の密度が0.900~0.930g/cmである低密度ポリエチレンとは区別され、またDSCにおける80~170℃の積分値から求められる融解熱量が20mJ/mgを超えることで、成分(B)のプロピレン系重合体とは区別されるものである。
【0062】
成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体としては特に限定されず、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等のエチレンとα-オレフィンの1種又は2種以上との共重合体、エチレンとα-オレフィンとその他のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。ここで、α-オレフィンは限定されないが、通常、炭素数3~20、好ましくは3~10の二重結合を有する炭化水素である。「他のビニルモノマー」も限定されないが、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、スチレン誘導体等が挙げられる。
【0063】
成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位の含有量が60~90mol%で、α-オレフィン単位の含有量が10~40mol%であることが好ましい。
成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、これらのブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等の何れであってもよい。
【0064】
成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度は0.855g/cm以上であり、好ましくは0.860g/cm以上である。一方、この密度は0.875g/cm以下であり、好ましくは0.870g/cm以下である。
成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体の密度が上記下限以上であることにより材料強度の面で有利であり、上記上限以下であることにより柔軟性、密着性の面で有利である。
【0065】
また、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体は融解熱量が20mJ/mgを超えるものである。本発明の接着性樹脂組成物では、成分(B)の一部を成分(D)とすることで、本発明の課題を解決するものであり、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体の融解熱量が20mJ/mg以下であると耐熱性の観点で好ましくない。従って、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体の融解熱量は20mJ/mgを超え、好ましくは22mJ/mg以上である。ただし、融解熱量が過度に大きいと、接着性能が低下することが考えられるため、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体の融解熱量は40mJ/mg以下であることが好ましい。
【0066】
また、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体について、後述の実施例の項に記載の方法でDSCにより測定される吸熱ピークトップ温度に相当する融点は、既述の結晶性部分の特性を表すものである。この部分の結晶性の特性は融点によって表され、25~95℃であることが好ましく、30~90℃であることがさらに好ましい。融点が上記上限を超えると、接着性能が低下することが考えられるため好ましくなく、上記下限未満では耐熱性の観点で好ましくない。
【0067】
また、成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体のMFR(230℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、成形性の点から0.01~50g/10分が好ましく、より好ましくは0.1~15g/10分である。
【0068】
成分(D)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種のみを用いてもよく、単量体組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
<成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有割合>
本発明の接着性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)をこれらの合計100質量%に対して、成分(A):10~20質量%、成分(B):30~45質量%、成分(C):5~15質量%、成分(D):30~45質量%含む。
【0070】
成分(A)の含有量は、酸量の程度が反映されるが、前記上限値を超える場合は、吸湿性が高くなり、発泡しやすくなる等のハンドリング特性が大きく損なわれるため好ましくない。また、成分(A)の含有量が前記下限値未満の場合は、接着性が低下するため好ましくない。成分(A)~(D)の合計100質量%中の成分(A)の含有量は好ましくは12~18質量%である。
【0071】
成分(B)の含有量が前記上限値を超える場合は、表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムに対する接着性を高めることができない。また、成分(B)の含有量が前記下限値未満の場合は、接着性、耐熱性の維持が困難になるため好ましくない。成分(A)~(D)の合計100質量%中の成分(B)の含有量は好ましくは30~43質量%である。
【0072】
成分(C)の含有量が前記上限値を超える場合は、耐熱性が低下するため好ましくない。また、成分(C)の含有量が前記下限値未満の場合は、高速成形性が低下する傾向にあるほか、ネックインが大きくなり、所望のフィルム幅を得ることが難しくなるため好ましくない。成分(A)~(D)の合計100質量%中の成分(C)の含有量は好ましくは8~12質量%である。
【0073】
成分(D)含有量が前記上限値を超える場合は、耐熱性の維持が困難になる恐れがある。また、成分(D)の含有量が前記下限値未満の場合は、表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムに対する接着性を高めることができない恐れがある。成分(A)~(D)の合計100質量%中の成分(D)の含有量は好ましくは30~43質量%である。
【0074】
<不飽和カルボン酸成分の含有量>
本発明の接着性樹脂組成物は、樹脂成分の合計100質量%中に、成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂に由来して、不飽和カルボン酸成分を0.1質量%以上含むものである。
【0075】
ここで、不飽和カルボン酸成分とは、成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂により樹脂組成物中に含まれるポリプロピレン系樹脂(a)にグラフト重合した不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と、ポリプロピレン系樹脂(a)と反応せずに変性ポリプロピレン系樹脂中に残留して含まれる不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との合計であり、樹脂組成物中の不飽和カルボン酸成分量は、前述の成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂の変性量と同様に求めることができる。或いは、成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂の変性量(グラフト率)と成分(A)の含有割合とから算出することができる。
【0076】
本発明の接着性樹脂組成物の上記不飽和カルボン酸成分の含有量が上記下限値よりも低いと、基材層への接着性を十分に得ることができない。ただし、不飽和カルボン酸成分の含有量が多過ぎると、樹脂組成物としての相溶性が低下するので、接着性と相溶性の両立の観点で、樹脂成分100質量%中の不飽和カルボン酸成分の含有量は0.1質量%以上であって、0.1~0.5質量%、特に0.2~0.4質量%であることが好ましい。
【0077】
<その他の成分>
本発明の接着性樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(A)~(D)以外に添加剤や樹脂等(以下、その他の成分という場合がある)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0078】
本発明の接着性樹脂組成物に使用可能な添加剤は限定されないが、具体的には、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など)、難燃剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、充填剤(無機および/または有機フィラー等)、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、相溶化剤、触媒残渣の中和剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料など)等が挙げられる。これら添加剤を用いる場合のその含有量は限定されないが、樹脂組成物に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下であることが望ましい。
【0079】
本発明の接着性樹脂組成物には、その他の成分として粘着付与剤を用いることもできる。ここで粘着付与剤とは、常温で固体の非晶性樹脂が挙げられ、例えば、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂またはそれらの水素添加物等が例示される。しかしながら、樹脂組成物中に粘着付与剤を多量に含有すると、成形時に発煙を生じたり、油性の飲食品を包装する材料として用いた場合に、粘着付与剤が飲食品中に漏れ出す場合がある。このため粘着付与剤を用いる場合も、樹脂組成物中に10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%未満であり、実質的に粘着付与剤を含有しないことが最も好ましい。本発明の接着性樹脂組成物は、粘着付与剤を用いない場合においても、高速押出ラミネート成形性に優れ、積層体における接着層として用いた場合に基材層との接着性が良好であり、しかも高温や高湿の環境下においても基材層との接着性を良好に維持することができる。
【0080】
前記石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、またはそれらの共重合体、およびこれらの水素添加物などが挙げられる。石油樹脂の骨格としては、C5樹脂、C9樹脂、C5/C9共重合樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ビニル置換芳香族系化合物の重合体、オレフィン/ビニル置換芳香族化合物の共重合体、シクロペンタジエン系化合物/ビニル置換芳香族系化合物の共重合体、あるいはこれらの水素添加物などが挙げられる。
前記ロジン樹脂とはアビエチン酸を主成分とする天然樹脂であり、例えば、天然ロジン、天然ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化又は水素添加して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジン、天然ロジンエステル、変性ロジンエステル、重合ロジンエステル等が挙げられる。
前記テルペン樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の芳香族テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂およびそれらの水素添加物が挙げられる。
【0081】
その他の成分として用いる樹脂は限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂等を挙げることができる。
ただし、本発明の接着性樹脂組成物が前述の成分(A)~(D)を含むことによる本発明の効果を有効に得る上で、本発明の接着性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量%に含まれる成分(A)~(D)以外の樹脂の含有量は5質量%以下、特に0~3質量%であることが好ましい。
【0082】
<接着性樹脂組成物の製造方法>
本発明の接着性樹脂組成物は、上述の各成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。
混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分散した組成物を得る。
より均一な混合・分散のためには、所定量の上記原料成分を溶融混合することが好ましく、例えば、本発明の樹脂組成物の各原料成分等を任意の順序で混合してから加熱したり、全原料成分等を順次溶融させながら混合してもよいし、各原料成分等の混合物をペレット化したり目的成形品を製造する際の成形時に溶融混合してもよい。
【0083】
本発明の接着性樹脂組成物は、所定量の上記原料成分を種々公知の手法、例えばタンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、混合後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融混練し、造粒あるいは粉砕する手法により調製することができる。溶融混練時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150~300℃の範囲で行う。
【0084】
本発明の接着性樹脂組成物は、少なくとも前記の成分(A)~(D)を含有していれば、これを独立した原料として用いなくともよい。すなわち、既にこれら成分のうち2つ以上の成分を含有する樹脂組成物を原料とする場合や、既に樹脂組成物からなる成形品となったものを破砕して原料とすることもできる。また、予め樹脂組成物となっている原料が本発明を構成する全ての成分を有していない場合には、足りない成分のみを原料として補えばよい。
【0085】
<接着性樹脂組成物の成形品>
本発明の接着性樹脂組成物から得られる成形品には限定は無く、種々の押出成形品や射出成形品とすることができる。また、本発明の接着性樹脂組成物を単独で使用し、単層シートなどの成形品とすることもできるが、本発明の接着性樹脂組成物は、後述する種々の金属や樹脂との接着性に優れているので、これらを基材とした積層体の接着層として好適に使用される。
【0086】
[積層体]
本発明の積層体は、上述した本発明の接着性樹脂組成物からなる層を接着層として含むポリプロピレン系樹脂層と基材層とを少なくとも有する、2層または3層以上に積層された積層体であり、具体的には、積層シート、積層フィルム、積層チューブ等が挙げられる。ここで、「シート」と「フィルム」は何れも面状の成形体を意味し、同義である。
【0087】
本発明の積層体の基材層を構成する材料は限定されないが、具体的には、樹脂フィルム等が例示される。また、本発明の接着性樹脂組成物からなる層と基材層との層構成は限定されないが、これらの層が隣接している場合が好ましい。
【0088】
基材層が樹脂フィルム又はシートである場合、該樹脂フィルム又はシートを構成する樹脂は限定されないが、具体的には、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含むオレフィン系ポリマーやオレフィン系エラストマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル-1―ペンテン、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6・66、ポリアミド12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂やポリエステル系エラストマー、スチレン系樹脂やスチレン系エラストマー、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂が好適に用いられる。中でも、食品や医療用の材料に用いる場合は、ポリエステル樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体層またはポリアミド樹脂層を少なくとも有することが好ましく、中でもポリエステル樹脂が更に好ましい。
【0089】
これらの樹脂フィルムは、2種以上が積層されていてもよい。
【0090】
基材の形態は、フィルムやシートに限定されず、織布、不織布のような形状であってもよい。また、基材は、単層構造であっても複層構造であってもよい。複層構造の基材の作成方法としては、特に限定されるものではなく、共押フィルム法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法等が挙げられる。
【0091】
また、これら基材がポリエステル樹脂よりなるポリエステルフィルムを用いる場合は、表面がコロナ放電処理加工(コロナ処理)又は蒸着処理されたものが好ましい。即ち、本発明の接着性樹脂組成物は、表面がコロナ処理や蒸着処理されたポリエステルフィルムに対して特に優れた接着性を有する点において、このような表面処理を施したポリエステルフィルムを基材とする場合に特に有効である。
【0092】
ポリエステルフィルムのコロナ処理は、常法に従って行うことができる。
また、ポリエステルフィルムの蒸着処理法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法などが用いられ、蒸着膜としてアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素(シリカ)、酸化窒化珪素、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜などが形成される。これらのうち、酸化アルミニウムや酸化珪素蒸着膜は、透明性に優れ、コストの点からも好ましい。
【0093】
このような基材層の厚みには特に制限はないが、通常5~100μm程度である。
【0094】
本発明の積層体には、本発明の樹脂組成物層、前記の基材層以外に任意の層を設けることができる。これらの層を構成する材料は限定されないが、通常は樹脂層である。例えば、任意の樹脂層/本発明の樹脂組成物層/基材層の積層体とすることができる。任意の層が樹脂層である場合、該樹脂層を構成する樹脂も限定されず、具体的には、本発明における成分(A)~(D)等や、前記した本発明の樹脂組成物におけるその他の成分として挙げた樹脂等が挙げられるが、好ましくは本発明の樹脂組成物との共押出し性に優れる観点からポリプロピレン系樹脂である。
【0095】
本発明の積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができるが、特に、押出ラミネート成形が好適である。押出ラミネート加工は、予め製造した基材の表面上に、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法であり、被覆と接着を同時に行うことができる成形加工法である。通常、基材の片側表面にラミネート加工するが、必要に応じて、両側にラミネートすることもできる。押出ラミネート成形によれば、高速かつ安定して積層体を得ることができるため好ましい。特に本発明の接着性樹脂組成物によれば、100m/min以上といった高速条件でのラミネートを行った場合においても成形性に優れ、基材層との接着性が良好であり、しかも、高温や高湿の環境下においても基材層との接着性を良好に維持し得る積層体とすることができる。
【0096】
押出ラミネート成形は、1種の基材層を予めフィルムとして用いるだけでなく、2種以上のフィルムを用いてもよい。その場合、同時貼り合せによって成形してもよいが、予め、一方の基材を用いてラミネート成形しておき、これに他方の基材を貼り合せてもよい。また、ラミネートする樹脂は、1種のみを用いる場合に限らず、2種以上を共押出してもよい。
本発明の樹脂組成物は、通常、押出ラミネート成形においてラミネート樹脂として用いるが、これを予めフィルムとしておき、基材層として用いることも排除されない。
【0097】
基材層上に、本発明の接着性樹脂組成物を押出ラミネートする際、樹脂組成物の溶融押出温度は、通常180~320℃、好ましくは200~310℃である。この温度が320℃を超えると、成形性が低下する可能性がある。押出ラミネートにより形成された本発明の樹脂組成物の溶融樹脂膜表面に、極性基を導入することを目的に、オゾン処理を施してもよい。オゾン処理量は、溶融樹脂膜の表面積に対して0.01~1g/mで行うことが好ましい。
【0098】
本発明の積層体は、上記の方法等で積層した後、これを延伸して延伸フィルムとしてもよい。このような場合は、基材層として無延伸の樹脂フィルムやシートを用いるとよい。
延伸フィルムを製造する方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。延伸方向は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよく、また逐次延伸で製造しても、同時延伸で製造してもよい。また、延伸方法の一つとして、積層体を製造する段階でインフレーション成形することでインフレーションフィルムとしてもよい。
【0099】
本発明の積層体を延伸して得る場合、上記の通り延伸した後には、熱固定を行ってもよいし、熱固定をせずに製品としてもよい。熱固定を行わない場合は、その後に積層体を加熱することによって応力が開放され、収縮する性質をもつためシュリンクフィルムとして用いることができる。
【0100】
本発明の積層体の各層の厚みは限定されず、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができる。通常、積層体の総厚みは、5~400μmであり、さらには10~300μmであることが好ましく、特には20~200μmであることが好ましい。また、積層体を構成する本発明の接着性樹脂組成物よりなる接着層の厚みは、通常0.1~100μmであり、0.3~50μmであることが好ましく、特には0.5~20μmであることが好ましい。また、本発明の接着性樹脂組成物よりなる接着層を含むポリプロピレン系樹脂層の厚みは、通常1~250μm、好ましくは3~200μm、特に好ましくは5~150μmである。
【0101】
このようにして製造された積層体には、さらに、金属蒸着加工、コロナ放電処理加工、印刷加工等の各種フィルム加工処理を施すことができる。
【0102】
本発明の接着性樹脂組成物は、金属層や樹脂フィルム、特に表面がコロナ処理されたポリエステルフィルムに対して優れた接着強度特性を示すため、これを用いた本発明の積層体は、各種食品や飲料、医薬・医療品、化粧品、衣料、文具及びその他産業資材や工業資材等の包装用途に、好適に用いることができる。
【実施例
【0103】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0104】
[測定・評価方法]
以下の実施例及び比較例で用いた原材料、得られた接着性樹脂組成物及び積層体の測定・評価方法は以下の通りである。
【0105】
(1)メルトフローレート(MFR)
原材料について、JIS K7210に準拠して、温度230℃又は190℃、荷重2.16kgの条件でMFRを測定した。
【0106】
(2)グラフト量
変性ポリプロピレン系樹脂のペレットをプレス成形(230℃)により、厚さ100μmのフィルム状に成形したサンプルを使用し、FT-IR装置(JASCO FT/IR610、日本分光株式会社製)にて、赤外吸収スペクトル法によるグラフト量を算出した。
【0107】
(3)融解熱量・融点
示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて昇温して測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。単位は℃である。また融解熱量は、80℃から170℃までの吸熱ピークの積分値を求めた。単位はmJ/mgである。
【0108】
(4)密度
JIS K7112に準拠して、水中置換法で測定した。
【0109】
(5)曲げ弾性率
JIS K7171-1994に準拠して測定した。
【0110】
[原材料]
以下の実施例及び比較例において、接着性樹脂組成物の製造に用いた原材料は以下の通りである。
【0111】
<成分(A)>
・A-1
変性ポリプロピレン系樹脂A-1として、市販のポリプロピレン単独重合体(密度:0.900g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):10g/10分、曲げ弾性率:1500MPa)を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性プロピレン系樹脂(グラフト率:2.2質量%)を用いた。
【0112】
・A-2
変性ポリプロピレン系樹脂A-2として、市販のプロピレン・エチレン共重合体(密度0.874g/cm、MFR(230℃、荷重2.16kg):3g/10分、曲げ弾性率:60MPa、エチレン単位含有量:11質量%)を無水マレイン酸によりグラフト変性して得られた変性プロピレン系樹脂((グラフト量:1.4質量%)を用いた。
【0113】
<成分(B)>
・B-1
プロピレン・エチレン・ブテン共重合体として、三井化学社のタフマーPN2070(
MFR(230℃、荷重2.16kg):7g/10分、プロピレン単位含有量:70m
ol%、エチレン単位含有量:15mol%、ブテン単位含有量:15mol%、融解熱量:7.6mJ/mg、融点:140℃、密度:0.867g/cm)を用いた。
・B-2
プロピレン・エチレン・ブテン共重合体として、三井化学社のタフマーPN3560(MFR(230℃、荷重2.16kg):6g/10分、プロピレン単位含有量:70mol%、エチレン単位含有量:15mol%、ブテン単位含有量:15mol%、融解熱量:12.2mJ/mg、融点:157.8℃、密度:0.866g/cm)を用いた。
【0114】
<成分(C)>
・C-1
低密度ポリエチレンとして、日本ポリエチレン社のノバテックLD LS500(MF
R(190℃、荷重2.16kg):4g/10分、密度:0.918g/cm)を用いた。
【0115】
<成分(D)>
・D-1
エチレン・α-オレフィン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体)として、三井化学社のタフマー P0180(MFR(230℃、荷重2.16kg):8.1g/10分、融解熱量:29.0mJ/mg、密度:0.869g/cm、融点:40℃)を用いた。
【0116】
<添加剤>
・X-1:協和化学工業社製 合成ハイドロタルサイト安定剤「DHT-4A(登録商標)」
【0117】
[実施例1~3、比較例1]
<接着性樹脂組成物の製造>
上記原材料を、それぞれ表1に記載の配合量にてドライブレンドして混合し、単軸押出機(IKG社製、PSM50-32(1V)、D=50mmφ、L/D=32)を用い、設定温度180~210℃、スクリュー回転数40~70rpm、押出量15~40kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状の接着性樹脂組成物を得た。
【0118】
<押出ラミネート成形>
2台の口径40mmφの押出機A,Bが装着されたTダイスを有する押出ラミネート装置(住友重機械モダン社製)を用い、得られた接着性樹脂組成物を押出機Aに、ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製 ノバテックPP FL02C)を押出機Bにそれぞれ供給し、基材フィルム側に押出機A層が配されるよう、分配ブロックをセットし、2層で押出される樹脂の温度が共に280~290℃になるように設定し、エアギャップ120mm、冷却ロール表面温度20℃、ダイス幅360mm、ダイリップ開度0.7mm、引き取り加工速度50m/minで、接着性樹脂組成物層の被覆厚みが10μm、ポリプロピレン系樹脂層の被覆厚みが10μmとなるように、押出量を調整して押出し製膜した。
基材フィルムとしては、コロナ処理延伸ポリエステルフィルムとして東洋紡エステルフィルムE5100(東洋紡社製 厚み:12μm)(以下「コロナPET」という)を、コロナ処理面が上記接着性樹脂組成物層と接するように用いた。
【0119】
<接着強度の測定>
上記で得られた多層フィルムを押出方向(MD方向)に幅15mmの短冊状に切り出して試験片とし、23℃の恒温雰囲気下にて、それぞれ速度300mm/minで180°ピール剥離試験を行い、接着強度を測定した。ここで、接着強度は、コロナPETと接着性樹脂組成物層との界面における接着強度である。
【0120】
これらの結果を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
表1より、本発明の接着性樹脂組成物は、表面がコロナ処理や蒸着処理されたポリエステルフィルムを基材層とする積層体において、常温でも高温でも高い接着性を示すことが分かる。
これに対して、比較例1は、成分(D)を含まず、成分(B)の含有量が多過ぎるために、コロナPETに対する接着性が劣る。