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  • 特許-湿式消火コークス付着水分の低減方法 図1
  • 特許-湿式消火コークス付着水分の低減方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】湿式消火コークス付着水分の低減方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 39/08 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
C10B39/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019022784
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020132645
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】木村 正明
(72)【発明者】
【氏名】河野 将和
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025146(JP,A)
【文献】特開2012-241035(JP,A)
【文献】特開昭50-048792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉から窯出しされた赤熱コークスを湿式消火して製造した湿式消火コークスの付着水分を低減する方法であって、
揮発分が28質量%以下である原料炭を乾留して製造した赤熱コークスに対し、空冷開始温度を500℃~250℃として、少なくとも900℃から前記空冷開始温度までの範囲を散水冷却し、次いで前記空冷開始温度から100℃までの範囲を空冷して湿式消火コークスとする際、
前記赤熱コークスに対し、窒素を用いて少なくとも900℃~180℃の範囲を2時間~5時間かけて冷却した乾式消火コークスのDI値であるCDQ-DI値(%)と前記湿式消火コークスのDI値であるCWQ-DI値(%)との差が1.5ポイント以下となる水冷条件を予め求めておき、求めた前記水冷条件で前記散水冷却を行うことを特徴とする湿式消火コークス付着水分の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉から窯出しされた赤熱コークスを湿式消火して製造した湿式消火コークスの付着水分を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業において、コークス付着水分の上昇は熱源単位の悪化や、炉内反応の阻害による操業不安定の原因となる。そのため、コークス付着水分を5質量%以下に抑える必要があり、コークス炉から窯出しされる赤熱コークスの冷却に水を使わずに不活性ガスを使用するコークス乾式消火(以下、CDQと呼ぶことがある。)設備が実用化されている。
【0003】
しかし、修理や設備検査等によるCDQ設備の停止時には、赤熱コークスに散水して冷却するコークス湿式消火(以下、CWQと呼ぶことがある。)設備が使用されている。これに伴い、CWQ工程におけるコークス付着水分を低減するための取り組みが従来より行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、赤熱コークスの湿式消火において、コークス1ton当たりの散水速度を3m/分以上として、従来よりも散水速度を高水準とすることで、低水分のコークスを得る方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、赤熱コークスの湿式消火において、単一粒子コークスに関する、粒子径、散水時間、散水流量密度等を用い、粒子表層部に留まる水をコークスが吸水したと称して蒸発と吸水のバランスをモデル化し、当該モデルに基づき目標とする含水率となる散水時間及び散水流量密度を求める方法が記載されている。そして、散水冷却とコークスを放置する空冷とを併用することにより、例えばコークス粒度が75~100mmの場合、含水率を1質量%未満に低減できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-213084号公報
【文献】特開2005-105063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、コークス付着水分を3質量%程度まで低減できることが記載されている。しかし、本発明者らの知見では、バラついたコークス付着水分の一部が3質量%程度になるのであり、高炉操業の安定化を図るためには、コークス付着水分をバラつきなく低減することが必要となる。
【0008】
また、特許文献2発明の方法によれば、相応のコークス付着水分の低減が可能となるが、湿式消火するコークス粒子の粒度分布は、一般に75mm未満や100mm超の粒子を含んでいる。このような広範囲の粒子径を含む赤熱コークスを湿式消火すると、5質量%を超える含水率になる場合があると考えられる。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、湿式消火したコークスの付着水分を既存の設備を用いてバラつきなく低減することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、コークス炉から窯出しされた赤熱コークスを湿式消火して製造した湿式消火コークスの付着水分を低減する方法であって、
揮発分が28質量%以下である原料炭を乾留して製造した赤熱コークスに対し、空冷開始温度を500℃~250℃として、少なくとも900℃から前記空冷開始温度までの範囲を散水冷却し、次いで前記空冷開始温度から100℃までの範囲を空冷して湿式消火コークスとする際、
前記赤熱コークスに対し、窒素を用いて少なくとも900℃~180℃の範囲を2時間~5時間かけて冷却した乾式消火コークスのDI値であるCDQ-DI値(%)と前記湿式消火コークスのDI値であるCWQ-DI値(%)との差が1.5ポイント以下となる水冷条件を予め求めておき、求めた前記水冷条件で前記散水冷却を行うことを特徴としている。
【0011】
「空冷」とは、コークス全体に水を供給する散水冷却を停止した以降であって、消火後のコークスをワーフに仮置きしたり、ベルトコンベアでコークスを搬送したりして大気中にコークスが曝露されることによる放冷を指す。なお、温度検知の結果、周囲に比べて温度が特別に高いコークス部分に対して防災目的で散水する場合も空冷期間と見做す。
「DI値」は、JIS K2151:2004「コークス類-試験方法」に記載されているドラム強度指数である。
「水冷条件」は、冷却対象となる赤熱コークスに供給する水量、供給時間等である。
【0012】
本発明者らは、水冷後のコークスを詳細に観察することにより、コークス表面に発生する亀裂が付着水の存在場所として大きな割合を占めていることを発見した。コークス表面に発生した亀裂がコークス内部に進展すると、さらに多くの水分をコークスが保持することになる。従って、湿式消火コークスの付着水分を低減するためには、亀裂の発生並びに進展を抑制する必要がある。
【0013】
コークスに亀裂が発生してコークス内部に亀裂が進展すると、コークス強度が低下する。そこで、本発明では、原料炭の揮発分(以下では、VMと呼ぶ。)を28質量%以下として乾留末期におけるコークスの収縮による亀裂の発生を抑制すると共に、(湿式消火コークスのDI値≧乾式消火コークスのDI値-1.5ポイント)となる水冷条件で赤熱コークスの散水冷却を行うことにより亀裂の進展を抑制する。
【0014】
コークス表面に発生する亀裂形状を、原料炭のVMと、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値との差によって分類したイメージ図を図1に示す。原料炭のVMが28質量%を超えると、コークスの表面に発生する亀裂が増加することが同図よりわかる。また、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値の差が1.5ポイントを超えると、亀裂が進展して亀裂が拡大することがわかる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る湿式消火コークス付着水分の低減方法では、コークスの亀裂発生並びに進展を抑制するため、原料炭のVM条件並びに湿式消火コークスのDI値が所定値以上となる水冷条件を規定する。これにより、湿式消火コークスの付着水分を既存の設備を用いてバラつきなく低減することができる。また、コークスの亀裂発生並びに進展が抑制されることに伴い、コークスの粉率(高炉に供給されるコークスのうち粒径25mm以下の割合)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コークス表面に発生する亀裂形状を、原料炭のVMと、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値との差によって分類したイメージ図である。
図2】コークス炉で製造されたコークスが高炉に供給されるまでのプロセスを示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0018】
コークス炉10から窯出しされた赤熱コークスは、CDQ設備14(コークス乾式消火設備)もしくはCWQ設備11(コークス湿式消火設備)において冷却された後、高炉15に供給される(図2参照)。
【0019】
赤熱コークスの冷却には、前述したように、CDQ設備14が通常使用される。CDQ設備14において、赤熱コークスは、冷却塔(図示省略)内を降下しながら塔底から吹き込まれる不活性ガス(窒素)と熱交換して200℃以下まで冷却された後、塔底から排出される。一方、800℃以上にまで昇温された不活性ガスは、ボイラー(図示省略)で高温高圧の水蒸気を発生させた後、再度、冷却塔に送られて循環利用される。発生した水蒸気はプロセス蒸気や発電用に利用される。
【0020】
一方、CWQ設備11は消火塔12とワーフ13とを備え、修理や設備検査等によるCDQ設備停止時に使用される。CWQ設備11では、消火塔12において、消火台車(図示省略)に積載された赤熱コークスに散水した後、消火台車をワーフ13に移動させ、消火台車内のコークスをワーフ13に払い出して空冷する。
【0021】
本発明は、CWQ設備11によって冷却された湿式消火コークスの付着水分をバラつきなく低減することを目的としている。
【0022】
[本発明の技術思想について]
従来、コークス(コークス塊)の付着水分は、主にコークス表面に表面張力によって付着した水滴で構成されていると考えられていた。即ち、付着水分はコークス塊の大きさ(コークス塊の比表面積)に応じて異なるものと認識されていた。
【0023】
しかし、本発明者らは、水冷後のコークスを詳細に観察することにより、コークス表面に発生する亀裂が付着水の存在場所として大きな割合を占めていることを発見した。
上記亀裂の幅は例えば10μm程度、コークス塊表面からの深さは例えば50mm程度(コークス塊の大きさにもよる。)である。亀裂内の水は、コークス表面の水に比べて毛管凝縮の影響を受けて蒸発除去が困難である。
【0024】
コークスの亀裂は、石炭の乾留処理において石炭が軟化・溶融して膨張したのちコークスへと変化する際の収縮ひずみによって発生する。故に、コークスの亀裂を抑制するためには、コークス収縮時のひずみを抑制する必要がある。
コークス化における収縮量は、石炭の揮発分(VM)の割合と相関がある。従って、石炭のVMを低くすることによりコークス収縮時のひずみを抑制し、亀裂の発生を抑えることができる。
また、石炭のVM低減によってコークス強度が増大するので、コークス収縮時のひずみによって発生する亀裂の幅が狭くなり、当該亀裂への水の浸入が困難となる効果も期待できる。
【0025】
コークス表面に発生した亀裂がコークス内部に進展すると、さらに多くの水分をコークスが保持することになる。そのため、付着水分低減のためには、亀裂の発生と併せて亀裂の進展を抑える必要がある。一方、コークスに亀裂が発生してコークス内部に亀裂が進展すると、コークス強度が低下する。
本発明者らは、赤熱コークス水冷時に亀裂内部へ浸入した水が水性ガス化反応の要因となって発生した気体(COとH)による亀裂内部の圧力上昇が亀裂進展の原因となり得ることを発見した。また、亀裂内部へ浸入した水の蒸発による亀裂内部の圧力上昇も亀裂進展の原因となり得る。
【0026】
本発明は、上記知見に基づくものであって、原料炭VMの上限を規定して乾留末期におけるコークスの収縮による亀裂の発生を抑制すると共に、湿式消火コークスのDI値が所定値以上となる水冷条件で赤熱コークスの散水冷却を行って亀裂の進展を抑制することにより、湿式消火コークス付着水分をバラつきなく低減する。
【0027】
[湿式消火コークス付着水分の低減方法]
以下、本発明の一実施の形態に係る湿式消火コークス付着水分の低減方法について詳細に説明する。
本実施の形態では、VMが28質量%以下である原料炭を乾留して製造した赤熱コークスに対し、空冷開始温度を500℃~250℃として、少なくとも900℃から空冷開始温度までの範囲を散水冷却し、次いで空冷開始温度から100℃までの範囲を空冷して湿式消火コークスとする。
【0028】
その際、前記赤熱コークスに対し、窒素を用いて少なくとも900℃~180℃の範囲を2時間~5時間かけて冷却した乾式消火コークスのDI値であるCDQ-DI値(%)と前記湿式消火コークスのDI値であるCWQ-DI値(%)との差が1.5ポイント以下となる水冷条件で前記散水冷却を行う。
赤熱コークスを冷却する水の温度は20℃~60℃程度である。
【0029】
水冷条件は、冷却対象となる赤熱コークスに供給する水の量、供給(散水又は噴霧)時間等である。
散水密度(m/min/m)は、単位時間(分)当たり供給する水の量(m)を冷却水噴霧領域の面積で除したものであり、予め定めた水冷条件と、水冷設備に応じた散水面積より決定される。なお、冷却水噴霧領域に冷却対象の赤熱コークスを配置して冷却する構成なので、冷却水噴霧領域に供給した冷却水が全て赤熱コークスの冷却に使用されるものではない。
【0030】
コークス湿式消火における散水冷却を、少なくとも900℃から空冷開始温度までの範囲とした理由は以下の通りである。
一般にコークス炉から窯出しした赤熱コークスは、窯出し直後は900℃を超え、概ね1000℃以下である。窯出ししたコークスはコークス冷却工程(CDQ設備あるいはCWQ設備)へ搬送されるが、搬送中の赤熱コークスには燃焼するものもあり、コークスの温度は概ね低下せず、コークス温度が上昇する場合もある。従って、赤熱コークスの水冷を開始する際のコークス温度は概ね900℃以上である。
【0031】
また、空冷開始温度を500℃~250℃とした理由は以下の通りである。
散水冷却工程において、散水後の温度が500℃超(空冷開始温度が500℃超)の場合、自然復熱によりコークスが発火するため、コークスの冷却ができない。また、250℃未満の場合には、コークス表面の付着水の蒸発が妨げられることが知られており、亀裂の有無によらずコークス付着水分が増加する。
【0032】
一方、コークス乾式消火において、窒素を用いて少なくとも900℃~180℃の範囲を2時間~5時間かけて冷却するという条件は、コークス乾式消火設備で常用される条件である。具体的な冷却時間は、コークス乾式消火設備の処理能力に応じて決定されるが、DI値の変動が少ないことが知られている。
【0033】
従来、原料炭のVMは、石炭銘柄や、コークス品質、コークス歩留り(生産するコークスの割合)、副産物歩留り(原料炭の量に対する例えばコークス炉ガス発生量の割合)の目標に応じて27~32質量%の範囲で調整していた。
本実施の形態では、VMが28質量%以下となる石炭配合とする。原料炭のVMを28質量%以下とすると、それを超えるVM値の原料炭から製造されたコークスに比べてコークスの収縮が抑えられるので、コークス塊内の亀裂が減少する。また、原料炭のVMを低減することによりコークス強度が増大するので、亀裂幅が低下し、後に行う水冷による亀裂への水の浸入を抑制することができる。
なお、原料炭のVMは、JIS M8812:2006「石炭類及びコークス類-工業分析方法」記載の角形電気炉法に基づいて測定する。
【0034】
コークスに亀裂が発生してコークス内部に亀裂が進展すると、コークス強度が低下する。そこで、本実施の形態では、VMが28質量%以下である原料炭を乾留して製造した赤熱コークスを乾式消火して製造した乾式消火コークスのDI値を基準値とし、前記赤熱コークスを湿式消火して製造した湿式消火コークスのDI値が、基準値である乾式消火コークスのDI値と比べて1.5ポイントを超えて下回らない水冷条件で前記赤熱コークスの散水冷却を行う。
【0035】
因みに、900℃から空冷開始温度までの範囲の散水密度が0.16m/min/m超の場合、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値の差が1.5ポイント超となっていたことから亀裂の進展が示唆された。なお、水冷時の赤熱コークスは、底面が傾斜して排水可能な最大深さが1.5m以下となる容器に貯蔵した。
一方、散水密度を0.16m/min/m以下とすると、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値の差は1.5ポイント以下となった。これは、散水密度の低下によって容器内の水深が低下し、コークスの水中浸漬によるコークス亀裂内部への水の浸透が抑制された結果、水の蒸発や水性ガス化反応が減少し、亀裂の進展が抑制されたと考えられる。
【0036】
冷却対象となる赤熱コークスは、消火台車に積載された状態で冷却水の供給を受けることが一般的であるが、消火台車に積載された赤熱コークス層の厚さは消火設備によって異なるため、予め使用する消火設備における冷却条件に対応した、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値の差を調べておくと良い。即ち、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値の差が1.5ポイント以下となるような散水冷却における水冷条件を予め求めておくと良い。
【0037】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【実施例
【0038】
本発明の効果について検証するために実施した検証試験について説明する。
各ケースの試験条件は以下の通りである。
[実施例]
揮発分27.8±0.2質量%の原料炭をコークス炉にて22時間乾留して赤熱コークスを製造した。
赤熱コークスは900℃から空冷開始温度までの範囲を散水密度0.15~0.16m/min/mにて散水冷却し、500℃~250℃の範囲から空冷を開始し、100℃以下まで冷却した。その後JIS M 8820:2000に基づいてコークスの付着水分を測定した。また、コークスのDI値(JIS K 2151:2004)も測定した。
併せて、同じ赤熱コークスを用いて、900℃~180℃の範囲を2時間~5時間かけて冷却した乾式消火コークスのDI値も求めた。
【0039】
[比較例1]
揮発分28.8±0.2質量%の原料炭をコークス炉にて22時間乾留して赤熱コークスを製造した。
赤熱コークスは900℃から空冷開始温度までの範囲を散水密度0.15~0.16m/min/mにて散水冷却し、500℃~250℃の範囲から空冷を開始し、100℃以下まで冷却した。その後、コークスの付着水分を測定した。
併せて、実施例と同様に、湿式消火コークスのDI値とCDQ設備で冷却した乾式消火コークスのDI値を測定した。
【0040】
[比較例2]
揮発分27.8±0.2質量%の原料炭をコークス炉にて22時間乾留して赤熱コークスを製造した。
赤熱コークスは900℃から空冷開始温度までの範囲を散水密度0.18~0.19m/min/mにて散水冷却し、500℃~250℃の範囲から空冷を開始し、100℃以下まで冷却した。その後、コークスの付着水分を測定した。
併せて、実施例と同様に、湿式消火コークスのDI値とCDQ設備で冷却した乾式消火コークスのDI値を測定した。
【0041】
試験結果の評価に当たっては、コークス付着水分が5質量%以下且つ付着水分のバラつきが1.0質量%以下の場合、○判定とし、これらの条件を満たさない場合、×判定とした。
試験結果の一覧を表1に示す。表中の数値は1週間~2週間の操業結果に基づくものである。
【0042】
【表1】
【0043】
同表より以下のことがわかる。
・実施例は、コークス付着水分5質量以下を安定して維持できている。
・比較例1は、原料炭の揮発分が28質量%を超えていたため、コークス付着水分5質量%以下を達成することができていない。なお、比較例1は、赤熱コークスの段階で発生した亀裂が元々多かったため、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値の差が顕著に表れなかったと考えられる。
・比較例2は、原料炭の揮発分は28質量%以下であったが、乾式消火コークスのDI値と湿式消火コークスのDI値の差が1.5ポイントを超えていたため、コークス付着水分5質量%以下を達成することができていない。
【符号の説明】
【0044】
10:コークス炉 、11:CWQ設備、12:消火塔、13:ワーフ、14:CDQ設備、15:高炉
図1
図2