(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット記録プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221101BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 201
B41J2/205
B41J2/01 111
(21)【出願番号】P 2019023079
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】山谷 自広
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178180(JP,A)
【文献】特開2014-008660(JP,A)
【文献】特開平5-057965(JP,A)
【文献】特開2005-306014(JP,A)
【文献】特開2014-195896(JP,A)
【文献】特開2011-116096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0018546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に配列された複数のインク吐出口をそれぞれが有する複数のヘッドモジュールが前記インク吐出口の配列方向に重複領域を介して配列されて構成されたラインヘッドを有し、前記各インク吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出する記録手段と、
前記記録媒体と前記ラインヘッドとを、前記ラインヘッドにおける前記吐出口の配列方向に交差する方向に相対移動させ、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口への対向位置のそれぞれを前記記録媒体の同一箇所に通過させる移動手段と、
前記複数のヘッドモジュールによる前記記録媒体に対するインク吐出動作を画像データに基づくドットデータに応じて制御し、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口の何れか一方からインク吐出を行わせ、前記2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口による相補的なインク吐出動作を行わせる記録制御手段と、を備え、
前記記録制御手段は、前記重複領域において、少なくとも一つの条件が満たされたときに、相対応するインク吐出口の一方からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替え、前記一つの条件は、前記ドットデータにおいて非吐出区間が所定の長さ以上続いたことである
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクは、前記記録媒体への着弾後に、相変化により増粘するインクであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体には、前処理材が塗布されており、
前記インクの相変化は、前記前処理材との反応により生ずることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの最大径をRd、この最大径Rdに対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>(γRd/Pp)-1
が成立する長さであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRd
nとし、次に吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRd
n+1とし、これらドット径Rd
n、Rd
n+1に対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>{γ(Rd
n+Rd
n+1)/2Pp}-1
が成立する長さであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
1つの前記ヘッドモジュールにおいて前記重複領域及びこれに連続する非重複領域のそれぞれに複数の前記インク吐出口が存在し、前記記録制御手段は、前記1つのヘッドモジュールにおける前記重複領域と前記非重複領域との境界から前記重複領域に亘って、このヘッドモジュールのインク吐出口からのインク吐出を選択する選択比率を徐々に変化させることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記選択比率の変化は、前記記録制御手段が、前記重複領域内について規定された選択比率傾斜テーブルに基づいて、閾値マトリクスを用いて前記インク吐出口を選択することが二つめの条件であって、二つの条件が満たされたときに、一方の吐出口からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによってなされることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記選択比率傾斜テーブルは、前記画像データにおける記録密度が高いほど急峻な傾斜となっていることを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
列状に配列された複数のインク吐出口をそれぞれが有する複数のヘッドモジュールが前記インク吐出口の配列方向に重複領域を介して配列されて構成されたラインヘッドを有し、前記各インク吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出する記録手段を用い、
前記記録媒体と前記ラインヘッドとを、前記ラインヘッドにおける前記吐出口の配列方向に交差する方向に相対移動させ、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口への対向位置のそれぞれを前記記録媒体の同一箇所に通過させる移動手段を用い、
前記複数のヘッドモジュールによる前記記録媒体に対するインク吐出動作を画像データに基づくドットデータに応じて制御し、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口の何れか一方からインク吐出を行わせ、前記2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口による相補的なインク吐出動作を行わせ、
前記重複領域においては、少なくとも一つの条件が満たされたときに、相対応するインク吐出口の一方からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替え、前記一つの条件は、前記ドットデータにおいて非吐出区間が所定の長さ以上続いたことである
ことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記インクとして、前記記録媒体への着弾後に、相変化により増粘するインクを用いることを特徴とする請求項9記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記記録媒体に、前処理材を塗布しておき、
前記インクの相変化を、前記前処理材との反応により生じさせることを特徴とする請求項10記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの最大径をRd、この最大径Rdに対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>(γRd/Pp)-1
が成立する長さとすることを特徴とする請求項9、10又は11記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRd
nとし、次に吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRd
n+1とし、これらドット径Rd
n、Rd
n+1に対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>{γ(Rd
n+Rd
n+1)/2Pp}-1
が成立する長さとすることを特徴とする請求項9、10又は11記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
1つの前記ヘッドモジュールにおいて前記重複領域及びこれに連続する非重複領域のそれぞれに複数の前記インク吐出口が存在し、前記1つのヘッドモジュールにおける前記重複領域と前記非重複領域との境界から前記重複領域に亘って、このヘッドモジュールのインク吐出口からのインク吐出を選択する選択比率を徐々に変化させ、
前記選択比率の変化は、前記重複領域内について規定された選択比率傾斜テーブルに基づいて、閾値マトリクスを用いて前記インク吐出口を選択することが二つめの条件であって、二つの条件が満たされたときに、一方の吐出口からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによってなされ、
前記選択比率傾斜テーブルは、前記画像データにおける記録密度が高いほど急峻な傾斜となっていることを特徴とする請求項9~13の何れかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
コンピュータ装置において実行されてインクジェット記録装置を制御するプログラムであって、
上記インクジェット記録装置は、
列状に配列された複数のインク吐出口をそれぞれが有する複数のヘッドモジュールが前記インク吐出口の配列方向に重複領域を介して配列されて構成されたラインヘッドを有し、前記各インク吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出する記録手段と、
前記記録媒体と前記ラインヘッドとを、前記ラインヘッドにおける前記吐出口の配列方向に交差する方向に相対移動させ、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口への対向位置のそれぞれを前記記録媒体の同一箇所に通過させる移動手段と、を備え、
前記複数のヘッドモジュールによる前記記録媒体に対するインク吐出動作を画像データに基づくドットデータに応じて制御し、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口の何れか一方からインク吐出を行わせ、前記2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口による相補的なインク吐出動作を行わせ、
前記重複領域においては、少なくとも一つの条件が満たされたときに、相対応するインク吐出口の一方からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替え、前記一つの条件は、前記ドットデータにおいて非吐出区間が所定の長さ以上続いたことである
ことを特徴とするインクジェット記録プログラム。
【請求項16】
上記インクジェット記録装置は、前記インクとして、前記記録媒体への着弾後に、相変化により増粘するインクを用いることを特徴とする請求項15記載のインクジェット記録プログラム。
【請求項17】
前記記録媒体には、前処理材が塗布されており、
前記インクの相変化は、前記前処理材との反応により生ずることを特徴とする請求項16記載のインクジェット記録プログラム。
【請求項18】
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの最大径をRd、この最大径Rdに対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>(γRd/Pp)-1
が成立する長さとすることを特徴とする請求項15、16又は17記載のインクジェット記録プログラム。
【請求項19】
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRd
nとし、次に吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRd
n+1とし、これらドット径Rd
n、Rd
n+1に対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>{γ(Rd
n+Rd
n+1)/2Pp}-1
が成立する長さとすることを特徴とする請求項15、16又は17記載のインクジェット記録プログラム。
【請求項20】
1つの前記ヘッドモジュールにおいて前記重複領域及びこれに連続する非重複領域のそれぞれに複数の前記インク吐出口が存在し、前記1つのヘッドモジュールにおける前記重複領域と前記非重複領域との境界から前記重複領域に亘って、このヘッドモジュールのインク吐出口からのインク吐出を選択する選択比率を徐々に変化させ、
前記選択比率の変化は、前記重複領域内について規定された選択比率傾斜テーブルに基づいて、閾値マトリクスを用いて前記インク吐出口を選択することが二つめの条件であって、二つの条件が満たされたときに、一方の吐出口からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによってなされ、
前記選択比率傾斜テーブルは、前記画像データにおける記録密度が高いほど急峻な傾斜となっていることを特徴とする請求項15~19の何れかに記載のインクジェット記録プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット記録プログラムに関し、より詳しくは、シングルパス方式のインクジェット記録装置におけるヘッドモジュールの重複領域(繋ぎ目)の画質劣化が防止されたインクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット記録プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドからインク滴を記録媒体に吐出して画像を形成するインクジェット記録装置は、電子写真方式に比較して構造が簡単で小型・軽量化しやすく、また、電子写真方式のような加熱定着部が不要で消費電力も少ないことから近年広く使用されている。
【0003】
インクジェット記録装置には、インクジェットヘッドとして、複数の短尺のヘッドモジュールが重複領域を介して千鳥状に配列されたラインヘッドを用いた、いわゆるシングルパス方式の記録装置がある。このようなインクジェット記録装置においては、ヘッドモジュールの重複領域(繋ぎ目)において画質劣化が生ずるという問題がある。
【0004】
シングルパス方式のインクジェット記録装置におけるヘッドモジュールの重複領域の画質劣化を防止するため、特許文献1には、重複領域において、記録媒体の搬送方向についてインク吐出口が重ならないように配置し、一部が重なって形成されるドット同士のインク着弾の時間差を一定にすることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたインクジェット記録装置においては、重複領域において、吐出率を非重複領域の吐出率より下げるとともに、記録デューティを高くしている。
【0006】
さらに、特許文献3に記載されたインクジェット記録装置においては、重複領域において、ヘッドモジュールの端部の方が、重複領域の中央部よりも、ドットの記録密度及びドットの連続数が小さくなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-306014号公報
【文献】特開2014-195896号公報
【文献】特開2011-116096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シングルパス方式のインクジェット記録装置においては、重複領域において、一部が重なって形成され、又は、インク着弾後に繋がるドット同士のインク着弾の時間差が大きいと、非重複領域において同様に形成されるドットに対して、光沢差などの画質の差異を生ずる。
【0009】
図16に示すように、重複領域における同一色の2つのドットのインク着弾の時間差は、同一のヘッドモジュール(HM)から吐出された場合には例えば25msecであり、異なるヘッドモジュールから吐出された場合には例えば100msecである。
【0010】
図17に示すように、(a)重複領域においてインク着弾後に繋がったドットの高さ形状(着弾時間差100msec)と、(b)非重複領域においてインク着弾後に繋がったドットの高さ形状(着弾時間差25msec)とでは、形状に差異があり、表面反射光の散乱状態が異なる等により、光沢差を生じている。(c)重複領域においてインク着弾後に繋がらないドットの高さ形状(着弾時間差100msec)と、(d)非重複領域においてインク着弾後に繋がらないドットの高さ形状(着弾時間差25msec)とでは、形状に差異がなく、光沢差を生じていない。
【0011】
図18は、非重複領域(着弾時間差25msec)及び重複領域(着弾時間差100msec)において連続したドットの表面形状の、インク着弾時の媒体温度の違いによる変化を示したものである。ここでも、非重複領域(着弾時間差25msec)と重複領域(着弾時間差100msec)とでは、表面形状に差異があり、光沢差を生じている。
【0012】
これは、記録媒体へのインク着弾後25mseから100msecの間にインクの相変化が進行するからである。つまり、インク着弾直後の相変化が進行していないドットに他のドットが重なり、又は、繋がったときと、インク着弾後時間が経過して相変化が進行したドットに他のドットが重なり、又は、繋がったときとでは、インクの融合状態が異なるためにドットの高さ形状が異なり、光沢差が生ずるのである。
【0013】
図17(a)(b)及び
図18に示すような画質の差異は、特に、相変化型インクのように、インク着弾後に状態変化を生ずるインクを用いた場合に顕著となる。相変化型インクを用いない場合でも、インク着弾直後のドットに他のドットが重なり、又は、繋がったときと、インク着弾後時間が経過したドットに他のドットが重なり、又は、繋がったときとでは、インクと前処理材との反応状態や、記録媒体への浸潤状態が異なるために、質感の差異が生ずる。このような問題については、上述した何れの特許文献にも記載されていない。
【0014】
そこで本発明の課題は、シングルパス方式のインクジェット記録装置におけるヘッドモジュールの重複領域(繋ぎ目)の画質劣化が防止されたインクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット記録プログラムを提供することにある。
【0015】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0017】
1.
列状に配列された複数のインク吐出口をそれぞれが有する複数のヘッドモジュールが前記インク吐出口の配列方向に重複領域を介して配列されて構成されたラインヘッドを有し、前記各インク吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出する記録手段と、
前記記録媒体と前記ラインヘッドとを、前記ラインヘッドにおける前記吐出口の配列方向に交差する方向に相対移動させ、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口への対向位置のそれぞれを前記記録媒体の同一箇所に通過させる移動手段と、
前記複数のヘッドモジュールによる前記記録媒体に対するインク吐出動作を画像データに基づくドットデータに応じて制御し、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口の何れか一方からインク吐出を行わせ、前記2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口による相補的なインク吐出動作を行わせる記録制御手段と、を備え、
前記記録制御手段は、前記重複領域において、少なくとも一つの条件が満たされたときに、相対応するインク吐出口の一方からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替え、前記一つの条件は、前記ドットデータにおいて非吐出区間が所定の長さ以上続いたことである
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
2.
前記インクは、前記記録媒体への着弾後に、相変化により増粘するインクであることを特徴とする前記1記載のインクジェット記録装置。
3.
前記記録媒体には、前処理材が塗布されており、
前記インクの相変化は、前記前処理材との反応により生ずることを特徴とする前記2記載のインクジェット記録装置。
4.
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの最大径をRd、この最大径Rdに対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>(γRd/Pp)-1
が成立する長さであることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェット記録装置。
5.
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRdnとし、次に吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRdn+1とし、これらドット径Rdn、Rdn+1に対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>{γ(Rdn+Rdn+1)/2Pp}-1
が成立する長さであることを特徴とする前記1、2又は3記載のインクジェット記録装置。
6.
1つの前記ヘッドモジュールにおいて前記重複領域及びこれに連続する非重複領域のそれぞれに複数の前記インク吐出口が存在し、前記記録制御手段は、前記1つのヘッドモジュールにおける前記重複領域と前記非重複領域との境界から前記重複領域に亘って、このヘッドモジュールのインク吐出口からのインク吐出を選択する選択比率を徐々に変化させることを特徴とする前記1~5の何れかに記載のインクジェット記録装置。
7.
前記選択比率の変化は、前記記録制御手段が、前記重複領域内について規定された選択比率傾斜テーブルに基づいて、閾値マトリクスを用いて前記インク吐出口を選択することが二つめの条件であって、二つの条件が満たされたときに、一方の吐出口からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによってなされることを特徴とする前記6記載のインクジェット記録装置。
8.
前記選択比率傾斜テーブルは、前記画像データにおける記録密度が高いほど急峻な傾斜となっていることを特徴とする前記7記載のインクジェット記録装置。
9.
列状に配列された複数のインク吐出口をそれぞれが有する複数のヘッドモジュールが前記インク吐出口の配列方向に重複領域を介して配列されて構成されたラインヘッドを有し、前記各インク吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出する記録手段を用い、
前記記録媒体と前記ラインヘッドとを、前記ラインヘッドにおける前記吐出口の配列方向に交差する方向に相対移動させ、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口への対向位置のそれぞれを前記記録媒体の同一箇所に通過させる移動手段を用い、
前記複数のヘッドモジュールによる前記記録媒体に対するインク吐出動作を画像データに基づくドットデータに応じて制御し、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口の何れか一方からインク吐出を行わせ、前記2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口による相補的なインク吐出動作を行わせ、
前記重複領域においては、少なくとも一つの条件が満たされたときに、相対応するインク吐出口の一方からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替え、前記一つの条件は、前記ドットデータにおいて非吐出区間が所定の長さ以上続いたことである
ことを特徴とするインクジェット記録方法。
10.
前記インクとして、前記記録媒体への着弾後に、相変化により増粘するインクを用いることを特徴とする前記9記載のインクジェット記録方法。
11.
前記記録媒体に、前処理材を塗布しておき、
前記インクの相変化を、前記前処理材との反応により生じさせることを特徴とする前記10記載のインクジェット記録方法。
12.
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの最大径をRd、この最大径Rdに対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>(γRd/Pp)-1
が成立する長さとすることを特徴とする前記9、10又は11記載のインクジェット記録方法。
13.
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRdnとし、次に吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRdn+1とし、これらドット径Rdn、Rdn+1に対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>{γ(Rdn+Rdn+1)/2Pp}-1
が成立する長さとすることを特徴とする前記9、10又は11記載のインクジェット記録方法。
14.
1つの前記ヘッドモジュールにおいて前記重複領域及びこれに連続する非重複領域のそれぞれに複数の前記インク吐出口が存在し、前記1つのヘッドモジュールにおける前記重複領域と前記非重複領域との境界から前記重複領域に亘って、このヘッドモジュールのインク吐出口からのインク吐出を選択する選択比率を徐々に変化させ、
前記選択比率の変化は、前記重複領域内について規定された選択比率傾斜テーブルに基づいて、閾値マトリクスを用いて前記インク吐出口を選択することが二つめの条件であって、二つの条件が満たされたときに、一方の吐出口からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによってなされ、
前記選択比率傾斜テーブルは、前記画像データにおける記録密度が高いほど急峻な傾斜となっていることを特徴とする前記9~13の何れかに記載のインクジェット記録方法。
15.
コンピュータ装置において実行されてインクジェット記録装置を制御するプログラムであって、
上記インクジェット記録装置は、
列状に配列された複数のインク吐出口をそれぞれが有する複数のヘッドモジュールが前記インク吐出口の配列方向に重複領域を介して配列されて構成されたラインヘッドを有し、前記各インク吐出口から記録媒体に向けてインクを吐出する記録手段と、
前記記録媒体と前記ラインヘッドとを、前記ラインヘッドにおける前記吐出口の配列方向に交差する方向に相対移動させ、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口への対向位置のそれぞれを前記記録媒体の同一箇所に通過させる移動手段と、を備え、
前記複数のヘッドモジュールによる前記記録媒体に対するインク吐出動作を画像データに基づくドットデータに応じて制御し、前記重複領域においては、隣接する2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口の何れか一方からインク吐出を行わせ、前記2つのヘッドモジュールの相対応するインク吐出口による相補的なインク吐出動作を行わせ、
前記重複領域においては、少なくとも一つの条件が満たされたときに、相対応するインク吐出口の一方からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替え、前記一つの条件は、前記ドットデータにおいて非吐出区間が所定の長さ以上続いたことである
ことを特徴とするインクジェット記録プログラム。
16.
上記インクジェット記録装置は、前記インクとして、前記記録媒体への着弾後に、相変化により増粘するインクを用いることを特徴とする前記15記載のインクジェット記録プログラム。
17.
前記記録媒体には、前処理材が塗布されており、
前記インクの相変化は、前記前処理材との反応により生ずることを特徴とする前記16記載のインクジェット記録プログラム。
18.
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの最大径をRd、この最大径Rdに対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>(γRd/Pp)-1
が成立する長さとすることを特徴とする前記15、16又は17記載のインクジェット記録プログラム。
19.
前記所定の長さ以上の非吐出区間は、前記インク吐出口から吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRdnとし、次に吐出されるインク滴が前記記録媒体上に形成するドットの径をRdn+1とし、これらドット径Rdn、Rdn+1に対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、前記記録媒体上における画素ピッチをPpとし、前記非吐出区間内の非吐出画素数をNとしたとき、
N>{γ(Rdn+Rdn+1)/2Pp}-1
が成立する長さとすることを特徴とする前記15、16又は17記載のインクジェット記録プログラム。
20.
1つの前記ヘッドモジュールにおいて前記重複領域及びこれに連続する非重複領域のそれぞれに複数の前記インク吐出口が存在し、前記1つのヘッドモジュールにおける前記重複領域と前記非重複領域との境界から前記重複領域に亘って、このヘッドモジュールのインク吐出口からのインク吐出を選択する選択比率を徐々に変化させ、
前記選択比率の変化は、前記重複領域内について規定された選択比率傾斜テーブルに基づいて、閾値マトリクスを用いて前記インク吐出口を選択することが二つめの条件であって、二つの条件が満たされたときに、一方の吐出口からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによってなされ、
前記選択比率傾斜テーブルは、前記画像データにおける記録密度が高いほど急峻な傾斜となっていることを特徴とする前記15~19の何れかに記載のインクジェット記録プログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シングルパス方式のインクジェット記録装置におけるヘッドモジュールの重複領域(繋ぎ目)の画質劣化が防止されたインクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット記録プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態のインクジェット記録装置を示す概説図
【
図2】第1実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの要部を示す概説図
【
図3】第1実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの要部の他の例を示す概説図
【
図4】第1実施形態のインクジェット記録装置の記録制御装置を示すブロック図
【
図5】第1実施形態のインクジェット記録プログラムを示すフローチャート
【
図6】第1実施形態のインクジェット記録装置において振り分けられたドットを示す平面図
【
図7】ヘッドモジュールの切替えが行われるドットデータを示す模式図である。
【
図8】記録媒体上における画素ピッチとドット径との関係を示す平面図
【
図9】ドットの最大径Rdと有効径γRdとの関係を示す側面図
【
図10】第1第2実施形態のインクジェット記録プログラムの振り分け処理を示すフローチャート
【
図11】第1第2実施形態のインクジェット記録プログラムのフラグ判定を示すフローチャート
【
図12】第3実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの要部及び振り分け比率を示す概説図
【
図13】第3実施形態のインクジェット記録装置のフラグ判定の動作を示す概略図
【
図14】第3実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの振り分けを示す概説図
【
図15】第3実施形態のインクジェット記録プログラムの振り分け処理を示すフローチャート
【
図16】重複領域及び非重複領域における2つのドットのインク着弾の時間差を示す平面図
【
図17】(a)重複領域においてインク着弾後に繋がったドットの高さ形状(着弾時間差100msec)、(b)非重複領域においてインク着弾後に繋がったドットの高さ形状(着弾時間差25msec)、(c)重複領域においてインク着弾後に繋がらないドットの高さ形状(着弾時間差100msec)、(d)非重複領域においてインク着弾後に繋がらないドットの高さ形状(着弾時間差25msec)を示すグラフ
【
図18】非重複領域(着弾時間差25msec)及び重複領域(着弾時間差100msec)において連続したドットの表面形状のインク着弾時の媒体温度の違いによる変化を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置について、図面を参照して説明する。本発明の実施の形態に係るインクジェット記録方法は、このインクジェット記録装置の動作として具現化され、このインクジェット記録装置が本発明の実施の形態に係るインクジェット記録プログラムを実行することによって実施される。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0021】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態のインクジェット記録装置を示す概説図である。
【0022】
インクジェット記録装置は、
図1に示すように、ローラ81、82間に張架された無端ベルト状の搬送ベルト1を有し、この搬送ベルト1により記録媒体Pを搬送する移動手段を備えている。
また、このインクジェット記録装置は、画像データに基づいてインク7を吐出し、記録媒体Pの表面にインク画像を形成するイエローインク用インクジェットヘッド2Y,マゼンタインク用インクジェットヘッド2M,シアンインク用インクジェットヘッド2C及びブラックインク用インクジェットヘッド2K(以下、「インクジェットヘッド2」と総称することがある)を有する記録手段を備えている。なお、インクジェットヘッドの数及び色数は何ら限定されない。
【0023】
搬送ベルト1は、矢印Aで示すように、ローラ81、82及びテンションローラ3間を送り操作される。搬送ベルト1は、外表面に載置された記録媒体Pを、矢印Bで示すように、インクジェットヘッド2に対して相対的に移動操作する。搬送ベルト1の内表面には、インクジェットヘッド2に対向する位置に、吸着板8が配置されている。吸着板8は、記録媒体P及び搬送ベルト1を吸着し、記録媒体P及び搬送ベルト1を密着させる。記録媒体Pは、搬送ベルト1に密着され吸着板8に支持されて、平面性を維持した状態でインクジェットヘッド2に対して移動操作される。なお、吸着板8は、記録媒体Pの平面性の維持のための必要がなければ設けなくともよい。
【0024】
なお、この実施形態においては、搬送ベルト1が送り操作されることによりインクジェットヘッド2と記録媒体Pとが相対的に移動されるが、インクジェットヘッド2を移動操作して、記録媒体Pに対して相対的に移動されるようにしてもよい。
【0025】
このインクジェット記録装置では、画像データに基づいてインクジェットヘッド2からインク7が吐出され、記録媒体Pの表面にインク画像が形成される。インクジェットヘッド2は、オンデマンド方式やコンティニュアス方式など従来公知の方式を用いることができる。また吐出方式としては、例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等の電気-機械変換方式、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型の等の電気-熱変換方式、スパークジェット型等の静電吸引方式などが挙げられる。
【0026】
このインクジェット記録装置で使用するインク7は、液媒体に顔料を分散したものであり、必要により界面活性剤や分散剤などの従来公知の添加剤が混合されていてもよい。液媒体としては水性媒体及び油性媒体のいずれも用いることができる。
【0027】
また、相変化型インクや、UV(紫外線)硬化性のインクも好ましく用いられる。相変化型インクは、記録媒体Pへの着弾後に、記録媒体Pの温度に応じて相変化を生じて、増粘するインクである。さらに、記録媒体Pに前処理材を塗布しておき、この前処理材との反応により相変化を生ずる2液反応型インクも用いることができる。
【0028】
顔料は、色材の他、色材を内包したマイクロカプセルなどであってもよい。顔料の粒径としては、例えば、50nm~200nmの範囲が好ましい。インク中における顔料の含有量は、例えば、0.1質量%~15質量%の範囲が好ましく、0.5質量%~12質量%の範囲がより好ましい。
【0029】
図2は、第1実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの要部を示す概説図である。
【0030】
記録手段が有する各色用インクジェットヘッド2Y、2M、2C、2Kは、
図16に示すように、それぞれがラインヘッドである。
図2に示すように、各ラインヘッド150は、短尺のヘッドモジュール150A、150Bが複数配列されて構成されている。各ヘッドモジュールは、列状に配列された複数のインク吐出口151をそれぞれが有している。各ヘッドモジュール150A、150Bは、インク吐出口151の配列方向に、重複領域abを介して配列されている。各ヘッドモジュール150A、150Bは、少なくとも記録媒体Pの全幅(送り方向に直交する方向の幅)に亘るに必要な個数が、記録媒体Pの全幅に亘って配列されている。ヘッドモジュール150A、150Bの個数は、何ら限定されない。各ヘッドモジュール150A、150Bは、各インク吐出口151から記録媒体Pに向けてインク7を吐出する。
【0031】
記録媒体Pとラインヘッド150とは、移動手段により、矢印Bで示すように、ラインヘッド150における吐出口151の配列方向に交差する方向に相対移動される。移動手段は、重複領域abにおいては、隣接する2つのヘッドモジュール150A、150Bの相対応するインク吐出口151a、151bへの対向位置のそれぞれを記録媒体Pの同一箇所に通過させる。この実施形態においては、重複領域abには、隣接する2つのヘッドモジュール150A、150Bのそれぞれが複数のインク吐出口151を有している。
【0032】
図3は、第1実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの要部の他の例を示す概説図である。
【0033】
記録媒体Pとラインヘッド150との相対移動方向は、ラインヘッド150における吐出口151の配列方向に直交する方向に限定されず、
図3に示すように、斜めに交差する方向でもよい。この場合においても、移動手段は、重複領域abにおいては、隣接する2つのヘッドモジュール150A、150Bの相対応するインク吐出口151a、151bへの対向位置のそれぞれを記録媒体Pの同一箇所に通過させる。
【0034】
図4は、第1実施形態のインクジェット記録装置の記録制御装置を示すブロック図である。
【0035】
インクジェット記録装置は、
図4に示すように、記録制御手段となる記録制御装置100を備えている。記録制御装置100には、画像データが入力される。画像データは、ラスタライズ処理部110においてビットマップデータとされ、ハーフトーン処理部120に送られる。ハーフトーン処理部120は、ビットマップデータからドットデータを生成し、振り分け処理部130に送る。振り分け処理部130は、隣接するヘッドモジュール150A、150Bの重複領域abにおいて、同一色のインクについて、どのドットをいずれのヘッドモジュール150A、150Bからのインク吐出によって形成するかを振り分ける。この処理は、各色のインクについてそれぞれ行う。
【0036】
すなわち、記録制御装置100は、複数のヘッドモジュール150A、150Bによる記録媒体Pに対するインク吐出動作を画像データに基づくドットデータに応じて制御し、重複領域abにおいては、隣接する2つのヘッドモジュール150A、150Bの相対応するインク吐出口151a、151bの何れか一方からインク吐出を行わせ、2つのヘッドモジュール150A、150Bの相対応するインク吐出口151a、151bによる相補的なインク吐出動作を行わせる。
【0037】
記録制御装置100において、ラスタライズ処理部110、ハーフトーン処理部120及び振り分け処理部130は、全体制御部101によって制御される。全体制御部101には、インクジェット記録プログラム及びその他の情報が記憶された記憶部105が接続されている。記録制御装置100の動作として具現化するインクジェット記録方法は、全体制御部101がインクジェット記録プログラムを実行することによって実施される。
【0038】
振り分け処理部130によって振り分けられたドットデータは、上流側のヘッドモジュール150Aを駆動させる駆動部140Aか、下流側のヘッドモジュール150Bを駆動させる駆動部140Bの何れかに送られる。上流側の駆動部140Aは、上流側のヘッドモジュール150Aを駆動させ、下流側の駆動部140Bは、下流側のヘッドモジュール150Bを駆動させる。なお、記録制御装置100は、搬送ベルト1の送り操作も制御する。
【0039】
図5は、第1実施形態のインクジェット記録プログラムを示すフローチャートである。
【0040】
記録制御装置100は、
図5に示すように、全体制御部101がインクジェット記録プログラムをスタートすると、S401に進み、ラスタライズ処理部110によりラスタライズ処理を実行する。次に、S402に進み、ハーフトーン処理部120によりハーフトーン処理を実行する。次に、S403に進み、振り分け処理部130により振り分け処理を実行する。そして、S404に進み、画像記録、すなわち、記録媒体Pの搬送及びラインヘッド150からのインク吐出を行って、インクジェット記録プログラムの終了(エンド)となる。
【0041】
図6は、第1実施形態のインクジェット記録装置において振り分けられたドットを示す平面図である。
【0042】
隣接するヘッドモジュール150A、150Bの重複領域abにおいては、
図6に示すように、隣接する2つのヘッドモジュール150A、150Bの相対応するインク吐出口151a、151bの何れか一方からインク吐出が行われて、2つのヘッドモジュール150A、150Bによる相補的なインク吐出動作が行われる。
図6(a)は、重複領域abに濃度の薄い画像が形成される場合を示しており、上流側のヘッドモジュール150Aが図中左側部分に主に吐出し、下流側のヘッドモジュール150Bが図中右側部分に主に吐出し、これらが合わさることにより、画像データに応じた薄い画像が形成される。なお、
図6においては、一方のヘッドモジュール150Aによって形成されたドットと、他方のヘッドモジュール150Bによって形成されたドットとを、説明の便宜上異なる濃度で表記して区別しているが、実際には、同一のラインヘッドを構成している各ヘッドモジュールは同一色のドットを形成する。
図6(b)は、重複領域abに濃度が中程度の画像が形成される場合を示しており、上流側のヘッドモジュール150Aが図中左側部分に主に吐出し、下流側のヘッドモジュール150Bが図中右側部分に主に吐出し、これらが合わさることにより、画像データに応じた中程度の濃度の画像が形成される。
図6(c)は、重複領域abに濃度の濃い画像が形成される場合を示しており、上流側のヘッドモジュール150Aが図中左側部分に主に吐出し、下流側のヘッドモジュール150Bが図中右側部分に主に吐出し、これらが合わさることにより、画像データに応じた濃い画像が形成される。
【0043】
図7は、ヘッドモジュールの切替えが行われるドットデータを示す模式図である。
【0044】
記録制御装置100は、重複領域abにおいて、
図7に示すように、少なくとも一つの条件が満たされたときに、相対応するインク吐出口151a、151bの一方からのインク吐出を、他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによって、振り分け処理を行う。インク吐出口の切替えを行う少なくとも一つの条件は、ドットデータにおいて非吐出区間(非吐出ドット)が所定の長さ以上続いたことである。
【0045】
図7は、非吐出区間が3画素以上であったときに、その後の吐出を他方のヘッドモジュールのインク吐出口からの吐出に切替える例を示している。
図7(a)では、始めの非吐出区間が2画素であったので切替えをせず、次の非吐出区間が3画素であったので上流側のヘッドモジュール150Aから下流側のヘッドモジュール150Bへの切替えを行っている。その次の非吐出区間が5画素であったので下流側のヘッドモジュール150Bから上流側のヘッドモジュール150Aへの切替えを行っている。
【0046】
図7(b)では、始めの非吐出区間が3画素であったので上流側のヘッドモジュール150Aから下流側のヘッドモジュール150Bへの切替えを行い、次の非吐出区間が1画素、2画素であったのでいずれも切替えを行っていない。
図7(c)では、いずれの非吐出区間も1画素であったのでいずれも切替えを行っていない。
【0047】
図8は、記録媒体上における画素ピッチとドット径との関係を示す平面図である。
【0048】
ヘッドモジュール150A、150Bの切替えを行う所定の長さ以上の非吐出区間は、この実施形態では、
図8に示すように、インク吐出口151から吐出されるインク滴が記録媒体P上に形成するドットの最大径をRd、この最大径Rdに対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、記録媒体P上における画素ピッチをPpとし、非吐出区間内の非吐出画素数をN個(整数)としたとき、
Pp(N+1)>γRd
より、
N>(γRd/Pp)-1
が成立する長さである。非吐出画素数Nがこの条件を満たしていれば、これら非吐出画素の前後のドットn、n+1同士が重なったり、繋がったりすることがない。
【0049】
この実施形態においては、
図8は、1番目のドットn(画素P0)と2番目のドットn+1(画素P3)との間の2画素(画素P1、P2)が非吐出画素となっている状態を示している。ドットの最大径の有効径γRdが40μmであり、画素ピッチPpが20μmであるとすると、
N>(40/20)-1=1
より、Nは2個となる。
【0050】
図9は、ドットの最大径Rdと有効径γRdとの関係を示す側面図である。
【0051】
ドットの最大径Rdとは、
図9に示すように、記録媒体P上に着弾したインクが形成した最大のドットの最外周径であり、記録媒体P上の光学的濃度を顕微鏡で観察したときの紙白とドット中心部濃度のコントラストで80%以上の濃度の領域を真円でフィッティングしたときの径である。ドットの最外周部分は、インク層は薄くなっており、隣接するドットn、n+1の最外周部分同士が重なっても、インクの粘度によっては、ドット全体は合一しない。隣接するドットn、n+1のインク層がある程度の厚さを有する部分同士が重なると、ドット全体が合一する。このように、インク層の厚さがドット全体が合一するような厚さである部分の外周径を、本発明では有効径γRdとし、有効径γRdの最大径Rdに対する比率が係数γである。係数γは、0.7~1.0であり、インクの粘度や記録媒体Pの表面状態によって異なるので、ドット全体が合一するか否かの実験によって定める。
【0052】
なお、前述したような重複領域abにおけるヘッドモジュールの切替えは、ハーフトーン処理において100%画素を埋めないビットデータに対して行うことが好ましい。また、ハーフトーンパターンがグリーンノイズのような低周波応答のパターンである場合に、より効果が高い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0053】
2液反応型の相変化型インク(記録媒体Pへの着弾と同時に相変化が始まるもの)を用いる場合には、記録媒体Pへの着弾と同時に反応が開始されるが、反応が完了するまでには所定の時間を要するために、前述したような光沢差を生ずることがあり、本実施形態によりこのような光沢差の発生を防止することができる。後述する他の実施形態においても同様である。
【0054】
記録媒体Pが浸透メディアである場合には、同一のヘッドモジュールにより少ない時間差で連続した(隣接した)ドットを形成すると、前のドットが呼び水となって次のドットが引き寄せられるため、異なるヘッドモジュールにより大きな時間差で形成された連続(隣接)ドットとはドットゲインが異なることとなる。このような場合にも、本実施形態により連続(隣接)ドットのドットゲイン差が生じないようにでき、重複領域と非重複領域との画質違和感を解消することができる。後述する他の実施形態においても同様である。
【0055】
〔第2実施形態〕
ヘッドモジュール150A、150Bの切替えを行う所定の長さ以上の非吐出区間は、第1実施形態では、ドットの最大径Rdを用いて算出した。しかし、ドットごとに大きさを異ならせることができるヘッドモジュールがあり、このようなヘッドモジュールを用いた場合には、記録媒体P上に形成されるドット径を、画素ごとに異ならせることができる。この場合には、常に最大径に基づかずとも、前後のドット同士が重なったり、繋がったりすることを回避することができる。つまり、ドット径が小さいときには、非吐出区間が短くともドット同士の重なりや繋がりが生じないので、ヘッドモジュール150A、150Bの切替えを行うことができる。
【0056】
この実施形態では、所定の長さ以上の非吐出区間は、
図8に示すように、インク吐出口151から吐出されるインク滴が記録媒体P上に形成するドットの径をRd
nとし、次に吐出されるインク滴が記録媒体上に形成するドットの径をRd
n+1とし、これらドット径Rd
n、Rd
n+1に対する有効径の比率を係数γ(=0.7~1.0)とし、記録媒体P上における画素ピッチをPpとし、非吐出区間内の非吐出画素数をN個(整数)としたとき、
Pp(N+1)>γ(Rd
n+Rd
n+1)/2
より、
N>{γ(Rd
n+Rd
n+1)/2Pp}-1
が成立する長さである。
【0057】
この実施形態においては、
図8は、2番目のドットn+1(画素P1)と3番目のドットn+2(画素P3)との間の1画素(画素P2)が非吐出画素となっている状態を示している。2番目のドットn+1の有効径γRd
n+1が20μmであり、3番目のドットn+2の有効径γRd
n+2が40μmであり、画素ピッチPpが20μmであるとすると、
N>((20+40)/2)/20-1=0.5
より、Nは1個となる。
【0058】
〔第1~第2実施形態におけるインクジェット記録装置の動作(インクジェット記録方法及びインクジェット記録プログラム)〕
図10は、第1第2実施形態のインクジェット記録プログラムの振り分け処理を示すフローチャートである。
【0059】
前述した第1及び第2実施形態において、記録制御装置100は、
図10に示すように、
図5のS403において振り分け処理を開始すると、S501に進み、「Hight=0、Width=0、Flag=0」と設定する。「Hight」は、記録媒体Pの送り方向についての座標であり、「0」は、この方向についての画像データの開始端の座標を示す。「Width」は、記録媒体Pの幅方向(インク吐出口の配列方向)についての座標であり、「0」は、この方向についての画像データの開始端の座標を示す。「Flag」は、重複領域abにおいてヘッドモジュール150A、150Bを指定する符号であり、「0」は上流側のヘッドモジュール150Aを示し、「0」以外(例えば「1」)は下流側のヘッドモジュール150Bを示す。
【0060】
次のS502では、振り分け処理の対象となるドットの記録媒体Pの送り方向についての座標「Hight」が「he」よりも小であるかを判別する。「he」は、記録媒体Pの送り方向についての画像データの終点の座標を示す。「Hight<he」ならば振り分け処理の対象となるドットなのでS503に進み、「Hight≧he」ならば記録媒体Pの送り方向について画像データの終点になっているので振り分け処理を終了し、
図5のS404に戻る。
【0061】
S503では、記録媒体Pの幅方向についての座標「Width」が「we」よりも小であるかを判別する。「we」は、記録媒体Pの幅方向についての画像データの終点の座標を示す。「Width<we」ならば振り分け処理の対象となるドットなのでS504に進み、「Width≧we」ならば記録媒体Pの幅方向について画像データの終点になっているのでS511に進む。
【0062】
S504では、記録媒体Pの幅方向についての座標「Width」が「w1」よりも小であるかを判別する。「w1」は、上流側のヘッドモジュール150Aの非重複領域aから重複領域abに入る箇所の座標である。「Width<w1」ならば上流側のヘッドモジュール150Aの非重複領域a内のドットなのでS508に進み、「Width≧w1」ならば重複領域abに入っているのでS505に進む。なお、「w1」は、一つのラインヘッド150について複数存在してもよい。
【0063】
S505では、記録媒体Pの幅方向についての座標「Width」が「w2」よりも小であるかを判別する。「w2」は、重複領域abから下流側のヘッドモジュール150Bの非重複領域bに入る箇所の座標である。「Width<w2」ならば重複領域ab内のドットなのでS506に進み、「Width≧w2」ならば重複領域abを抜けているのでS509に進む。なお、「w2」は、一つのラインヘッド150について複数存在してもよい。
【0064】
S506では、フラグ判定を行って、S507に進む。フラグ判定は、「Flag」を「0」のままとするか、「0」以外にスイッチ(切換え)するかの判定であり、その判定内容については後述する。
【0065】
S507では、「Flag」が「0」であるかを判別し、「Flag=0」であればS508に進み、「Flag≠0」であればS509に進む。
【0066】
S508では、そのドットを上流側のヘッドモジュール150A(head 0)で形成することを決定し、S510に進む。
【0067】
S509では、そのドットを下流側のヘッドモジュール150B(head 1)で形成することを決定し、S510に進む。
【0068】
S510では、座標「Width」を「Width+1」として1画素分増やして、S503に戻り、記録媒体Pの幅方向について次のドットについての振り分け処理に入る。
【0069】
S511では、座標「Width」を「0」(開始端)に戻し、座標「Hight」を「Hight+1」として1画素分増やして、S502に戻り、記録媒体Pの送り方向について次のドットについての振り分け処理に入る。
【0070】
図11は、第1第2実施形態のインクジェット記録プログラムのフラグ判定を示すフローチャートである。
【0071】
記録制御装置100は、
図11に示すように、
図10のS506においてフラグ判定を開始すると、S601に進み、注目画素(判定対象のドット)が白画素(非吐出ドット)ではないことを判別し、白画素でなければS602に進み、白画素であればフラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。
【0072】
S602では、注目画素の一つ上(1画素分先に吐出された画素)が白画素であったかを判別し、白画素であったならばS603に進み、白画素でなかったならばフラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。
【0073】
S603では、注目画素の二つ上(2画素分先に吐出された画素)が白画素であったかを判別し、白画素であったならばS604に進み、白画素でなかったならばフラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。この2画素分は、この実施形態においては、相対応するインク吐出口151a、151bの一方から他方に切替えるための所定の長さ以上の非吐出区間である。
【0074】
S604では、「Flag」を「0」から「0」以外に、又は、「0」以外から「0」に、スイッチ(切換え)し、フラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。
【0075】
〔第3実施形態〕
図12は、第3実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの要部及び振り分け比率を示す概説図である。
【0076】
この実施形態においては、
図12に示すように、1つのヘッドモジュール150A、150Bにおいて重複領域ab及びこれに連続する非重複領域a、bのそれぞれに複数のインク吐出口151が存在し、記録制御装置100は、1つのヘッドモジュール150A、150Bにおける重複領域abと非重複領域a、bとの境界から重複領域abに亘って、このヘッドモジュール150A、150Bのインク吐出口151からのインク吐出を選択する選択比率(振り分け比率)を徐々に変化させる。
【0077】
すなわち、上流側のヘッドモジュール150Aにおいては、重複領域abでは、非重複領域aに近い側にから遠い側にかけて、振り分け比率が100%から徐々に低下して0%に至るようになっている。下流側のヘッドモジュール150Bにおいても、重複領域abでは、非重複領域bに近い側にから遠い側にかけて、振り分け比率が100%から徐々に低下して0%に至るようになっている。重複領域ab内のいずれの箇所においても、両ヘッドモジュール150A、150Bの振り分け比率の合計は100%である。
【0078】
図13は、第3実施形態のインクジェット記録装置のフラグ判定の動作を示す概略図である。
【0079】
選択比率の変化は、記録制御装置100が、
図13に示すように、重複領域内について規定された選択比率傾斜テーブルに基づいて、閾値マトリクス202を用いてインク吐出口を選択することが、インク吐出口の切替えを行う二つめの条件であって、二つの条件が満たされたときに、一方の吐出口からのインク吐出を他方のインク吐出口からのインク吐出に切替えることによってなされる。
【0080】
閾値マトリクス202には、各画素に対応して乱数が配置されており、この乱数が閾値より大きければ、一方の吐出口を選択し、閾値以下ならば他方の吐出口を選する。非重複領域に近い側の閾値を小さくし、遠い側の閾値を大きくすれば、非重複領域に近い側から遠い側にかけて振り分け比率が徐々に低下してゆく。このような閾値の傾斜が、選択比率傾斜テーブルに定められている。
【0081】
図14は、第3実施形態のインクジェット記録装置のラインヘッドの振り分けを示す概説図である。
【0082】
閾値マトリクス202を用いてインク吐出口が選択されると、
図14に示すように、ドットデータにおける所定の長さ以上の非吐出区間と、次の所定の長さ以上の非吐出区間との間の、吐出区間の一又は複数のドットが一体となって、閾値マトリクス202を用いた選択にしたがって、上流側のヘッドモジュール150A又は下流側ヘッドモジュール150Bに振り分けられる。つまり、ヘッドモジュール150A、150Bの切替えは、所定の長さ以上の非吐出区間後であることと、閾値マトリクス202を用いて選択されたことの二つの条件が満たされたときに行われる。
【0083】
なお、選択比率傾斜テーブルは、画像データに応じて異なるものを使用してもよい。例えば、選択比率傾斜テーブルは、画像データにおける記録密度が高いほど、
図12中の一点鎖線で示すように、閾値の変化が急峻な傾斜となっていることが好ましい。閾値の変化が急峻な傾斜であると、各ヘッドモジュール150、150Bへの振り分けを行う領域が狭い領域となる。画像データにおける記録密度が高いと、ドット同士が重なるので、濃度変動よりも光沢変動を重視する必要があり、つなぎ幅(振り分けを行う領域)を狭くして光沢変化領域を狭く設定したほうが視認性が改善されるからである。
【0084】
この実施形態におけるヘッドモジュールの切替え(振り分け)は、閾値マトリクス202に代えて、例えば、ディザ法によるハーフトーン処理を行うためのディザマトリクス(Dither Matrix)を用いて行ってもよい。この場合には、ディザマトリクスの空間周波数とハーフトーンの空間周波数とが異なっていると、重なりパターンが高周波で発生する確率が高くなり、重複領域abにおけるドットの分散性能(異なるヘッドモジュールへの振り分け)を改善することができる。
【0085】
図15は、第3実施形態のインクジェット記録プログラムの振り分け処理を示すフローチャートである。
【0086】
この実施形態においては、記録制御装置100は、
図15に示すように、
図10のS506においてフラグ判定を開始すると、S701に進み、注目画素(判定対象のドット)が白画素(非吐出ドット)ではないことを判別し、白画素でなければS702に進み、白画素であればフラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。
【0087】
S702では、注目画素の一つ上(1画素分先に吐出された画素)が白画素であったかを判別し、白画素であったならばS703に進み、白画素でなかったならばフラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。
【0088】
S703では、注目画素の二つ上(2画素分先に吐出された画素)が白画素であったかを判別し、白画素であったならばS704に進み、白画素でなかったならばフラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。この2画素分は、この実施形態においては、相対応するインク吐出口151a、151bの一方から他方に切替えるための所定の長さ以上の非吐出区間である。
【0089】
S704では、閾値マトリクス202を用いた選択を行い、判定対象のヘッドモジュールが選択されたならば切替えを行わないのでフラグ判定を終了して
図10のS507に戻り、他方のヘッドモジュールが選択されたならば切替えを行うので、S705に進む。
【0090】
S705では、「Flag」を「0」から「0」以外に、又は、「0」以外から「0」に、スイッチ(切換え)し、フラグ判定を終了して
図10のS507に戻る。
【0091】
上述の各実施形態では、カラー画像を形成するインクジェット記録装置に本発明を適用した例について説明したが、モノクロ画像を形成するインクジェット記録装置についても本発明を適用することができる。その他、以上の各実施形態の説明における具体的な構成、形状、材質、動作及び数値等は、本発明を説明するための例示に過ぎず、これらによって本発明が限定的に解釈されることがあってはならない。
【符号の説明】
【0092】
1 搬送ベルト
2 インクジェットヘッド
3 テンションローラ
7 インク
8 吸着板
81 ローラ
82 ローラ
100 記録制御装置
101 全体制御部
105 記憶部
110 ラスタライズ処理部
120 ハーフトーン処理部
130 振り分け処理部
140A 駆動部(上流側)
140B 駆動部(下流側)
150 ラインヘッド
150A ヘッドモジュール(上流側)
150B ヘッドモジュール(下流側)
151 インク吐出口
201 閾値マトリクス
P 記録媒体