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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】回路基板用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/504 20060101AFI20221101BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20221101BHJP
【FI】
H01R13/504
H01R12/71
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019025758
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020135991
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 唯
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-099274(JP,A)
【文献】特開2004-127571(JP,A)
【文献】特開2013-016388(JP,A)
【文献】特開2019-017158(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098826(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0018780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/40-13/533
H01R24/00-24/86
H01R43/027-43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板が配置されたケース樹脂部と、
前記ケース樹脂部の一部を構成する基部、及び前記基部に繋がって前記ケース樹脂部から前記回路基板の平面方向に対して垂直な方向に突出するタワー部を有するコネクタ樹脂部と、
前記コネクタ樹脂部内に設けられ、前記回路基板を外部に電気接続するための複数のコネクタ端子と、を備える回路基板用コネクタであって、
前記コネクタ樹脂部は、
前記コネクタ樹脂部の内側部分に配置され、複数の前記コネクタ端子の両端部を除く中間部を覆う1つ又は複数の中子樹脂部と、
前記コネクタ樹脂部の外側部分に配置され、前記中子樹脂部を覆う外側樹脂部と、を有し、
樹脂材料から構成された前記ケース樹脂部樹脂材料から構成された前記外側樹脂部樹脂成形によって接合されており、
前記コネクタ樹脂部の先端部には、相手側コネクタが装着されるコネクタ装着部が形成されており、
前記コネクタ装着部は、前記外側樹脂部によって形成され、前記中子樹脂部から突出する前記コネクタ端子の端部を囲む筒形状を有し
前記外側樹脂部内には、複数の前記コネクタ端子の前記中間部を覆う複数の前記中子樹脂部が互いに対面して配置されており、
前記コネクタ樹脂部には、前記回路基板が配置された空間を外気に開放するための通気経路が形成されており、
前記通気経路は、前記中子樹脂部が互いに対面する合わせ面に形成された溝部を利用して、前記タワー部を構成する前記外側樹脂部の側面に開口されている、回路基板用コネクタ。
【請求項2】
前記ケース樹脂部と前記外側樹脂部とが接合された部位には、前記ケース樹脂部に対する前記外側樹脂部の抜け止めがなされる抜け止め形状が形成されている、請求項1に記載の回路基板用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路基板が配置される部位を有する回路基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、種々の電子制御部品を制御装置に配線する場合などに用いられる。また、種々の電子制御部品が設けられた機械部品等のケース内に、第1の制御装置を構成する回路基板を配置し、この回路基板を第2の制御装置に配線するためのコネクタを、ケースに設けることがある。この場合には、回路基板用コネクタとして、回路基板が配置されたケースにコネクタが設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1のコネクタ付きケースの成形構造においては、ケース本体と、ケース本体の側壁に貫通した状態で設けられたハウジングと、ハウジングからケース本体の内側に突出した状態で設けられた端子金具とを備えるコネクタ付きケースについて記載されている。ハウジングには、相手側コネクタを接続可能なコネクタ部が形成されており、ケース本体には、端子金具が接続される回路基板が配置される。
【0004】
ケース本体は、ハウジング及び端子金具を中子として成形型内に配置して、インサート成形を行うことによって成形されている。特許文献1においては、コネクタ付きケースが、成形時のアンダーカット形状を形成する端子金具を有する場合であっても、スライド型を用いない簡単な成形型によって成形することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-127571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1等に開示された従来のコネクタ付きケースは、端子金具を成形型に配置したハウジングの1段階目のインサート成形、及びハウジングを成形型に配置したケース本体の2段階目のインサート成形を行って形成している。しかし、端子金具の配列の仕方、コネクタ部を有するハウジングの形成方向等の成形品の構成によっては、インサート成形を2段階に行うことによっては、一般的な小型の成形装置によっては成形が困難な場合がある。そのため、小型の成形装置によって、種々の形状の回路基板用コネクタ又はコネクタ付きケースを成形するためには、更なる工夫が必要とされる。
【0007】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたもので、3段階にインサート成形を行うことにより、小型の成形装置による成形を可能にすることができる回路基板用コネクタを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、回路基板が配置されたケース樹脂部と、
前記ケース樹脂部の一部を構成する基部、及び前記基部に繋がって前記ケース樹脂部から前記回路基板の平面方向に対して垂直な方向に突出するタワー部を有するコネクタ樹脂部と、
前記コネクタ樹脂部内に設けられ、前記回路基板を外部に電気接続するための複数のコネクタ端子と、を備える回路基板用コネクタであって、
前記コネクタ樹脂部は、
前記コネクタ樹脂部の内側部分に配置され、複数の前記コネクタ端子の両端部を除く中間部を覆う1つ又は複数の中子樹脂部と、
前記コネクタ樹脂部の外側部分に配置され、前記中子樹脂部を覆う外側樹脂部と、を有し、
樹脂材料から構成された前記ケース樹脂部樹脂材料から構成された前記外側樹脂部樹脂成形によって接合されており、
前記コネクタ樹脂部の先端部には、相手側コネクタが装着されるコネクタ装着部が形成されており、
前記コネクタ装着部は、前記外側樹脂部によって形成され、前記中子樹脂部から突出する前記コネクタ端子の端部を囲む筒形状を有し
前記外側樹脂部内には、複数の前記コネクタ端子の前記中間部を覆う複数の前記中子樹脂部が互いに対面して配置されており、
前記コネクタ樹脂部には、前記回路基板が配置された空間を外気に開放するための通気経路が形成されており、
前記通気経路は、前記中子樹脂部が互いに対面する合わせ面に形成された溝部を利用して、前記タワー部を構成する前記外側樹脂部の側面に開口されている、回路基板用コネクタにある。
【0009】
本開示の参考態様は、回路基板が配置されたケース樹脂部と、
前記ケース樹脂部の一部を構成する基部、及び前記基部に繋がって前記ケース樹脂部から突出するタワー部を有するコネクタ樹脂部と、
前記コネクタ樹脂部内に設けられ、前記回路基板を外部に電気接続するための複数のコネクタ端子と、を備え、
前記コネクタ樹脂部は、
前記コネクタ樹脂部の内側部分に配置され、複数の前記コネクタ端子の両端部を除く中間部を覆う1つ又は複数の中子樹脂部と、
前記コネクタ樹脂部の外側部分に配置され、前記中子樹脂部を覆う外側樹脂部と、を有し、
前記ケース樹脂部を構成する樹脂材料は、前記外側樹脂部を構成する樹脂材料に樹脂成形によって接合されている、回路基板用コネクタの製造方法であって、
複数の前記コネクタ端子が配置された第1成形型内に、前記中子樹脂部を構成する第1樹脂材料を充填して、前記中子樹脂部のインサート成形を行って第1インサート部品を得る第1成形工程と、
前記第1インサート部品が配置された第2成形型内に、前記外側樹脂部を構成する第2樹脂材料を充填して、前記外側樹脂部のインサート成形を行って第2インサート部品を得る第2成形工程と、
前記第2インサート部品が配置された第3成形型内に、前記ケース樹脂部を構成する第3樹脂材料を充填して、前記ケース樹脂部のインサート成形を行って前記回路基板用コネクタを得る第3成形工程と、を含む、回路基板用コネクタの製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
(一態様の回路基板用コネクタ)
前記一態様の回路基板用コネクタは、複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部の1段階目の成形、中子樹脂部が配置された外側樹脂部の2段階目の成形、及びコネクタ樹脂部が配置されたケース樹脂部の3段階目の成形を行って成形されたものである。複数のコネクタ端子が配置された中子樹脂部を成形することにより、複数のコネクタ端子を配列する自由度を高めることができる。例えば、複数のコネクタ端子は、複数の中子樹脂部に分けて配列することができる。この場合、中子樹脂部は、複数のコネクタ端子が並ぶ段ごとに形成し、複数の中子樹脂部を合わせることにより、複数段のコネクタ端子の全体の配列を形成することができる。
【0011】
また、1つ又は複数の中子樹脂部が配置されたコネクタ樹脂部を成形することにより、コネクタ樹脂部とケース樹脂部とを一体成形する場合に比べて、成形装置の構造を簡単にすることができる。具体的には、コネクタ樹脂部は、ケース樹脂部から突出する部分を有している。そして、コネクタ樹脂部とケース樹脂部とを一体成形する場合には、成形品の外形が大きく、成形品を成形して取り出すための成形装置が大型化するおそれがある。一方、コネクタ樹脂部をケース樹脂部とは別に成形する場合には、成形装置は、コネクタ樹脂部の外形に合わせた大きさと、ケース樹脂部の外形に合わせた大きさとを有していればよく、成形装置を小型化することができる。
【0012】
そして、ケース樹脂部は、コネクタ樹脂部が配置された成形型においてインサート成形され、ケース樹脂部を構成する樹脂材料は、コネクタ樹脂部の外側樹脂部を構成する樹脂材料に樹脂成形によって接合される。こうして、前記一態様の回路基板用コネクタは、中子樹脂部、外側樹脂部及びケース樹脂部のインサート成形を3段階に行うことによって、小型の成形装置によって成形することが可能になる。
【0013】
それ故、前記一態様の回路基板用コネクタによれば、3段階にインサート成形を行うことにより、小型の成形装置による成形を可能にすることができる。
【0014】
参考態様の回路基板用コネクタの製造方法)
前記参考態様の回路基板用コネクタの製造方法においては、第1~第3成形工程として3段階にインサート成形を行って回路基板用コネクタを成形する。特に、第2成形工程及び第3成形工程として、コネクタ樹脂部の外側樹脂部を、ケース樹脂部とは別に、ケース樹脂部を成形する前に成形することにより、コネクタ樹脂部がケース樹脂部から長く突出する回路基板用コネクタであっても、小型の成形装置によって成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態にかかる、回路基板用コネクタを示す平面図。
図2】実施形態にかかる、回路基板用コネクタを示す側面図。
図3】実施形態にかかる、回路基板用コネクタを簡略的に示す断面図。
図4】実施形態にかかる、コネクタ樹脂部を示す平面図。
図5】実施形態にかかる、コネクタ樹脂部を示す側面図。
図6】実施形態にかかる、コネクタ樹脂部を示す他の側面図。
図7】実施形態にかかる、中子樹脂部を示す平面図。
図8】実施形態にかかる、中子樹脂部を示す側面図。
図9】実施形態にかかる、中子樹脂部を示す他の側面図。
図10】実施形態にかかる、回路基板用コネクタの製造方法を示す図で、成形型にコネクタ端子が配置された状態を簡略的に示す断面図。
図11】実施形態にかかる、回路基板用コネクタの製造方法を示す図で、成形型に中子樹脂部が成形された状態を簡略的に示す断面図。
図12】実施形態にかかる、回路基板用コネクタの製造方法を示す図で、成形型に中子樹脂部を含むインサート部品が配置された状態を簡略的に示す断面図。
図13】実施形態にかかる、回路基板用コネクタの製造方法を示す図で、成形型に外側樹脂部が成形された状態を簡略的に示す断面図。
図14】実施形態にかかる、回路基板用コネクタの製造方法を示す図で、成形型にコネクタ樹脂部を含むインサート部品が配置された状態を簡略的に示す断面図。
図15】実施形態にかかる、回路基板用コネクタの製造方法を示す図で、成形型に回路基板用コネクタが成形された状態を簡略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
前述した回路基板用コネクタ及びその製造方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
本形態の回路基板用コネクタ1は、図1図3に示すように、ケース樹脂部2、コネクタ樹脂部3及び複数のコネクタ端子6A,6B,6Cを備える。ケース樹脂部2は、電子制御部品72を制御するための回路基板71が配置されたものである。コネクタ樹脂部3は、ケース樹脂部2の一部を構成する基部31と、基部31に繋がってケース樹脂部2から突出するタワー部32とを有する。複数のコネクタ端子6A,6B,6Cは、コネクタ樹脂部3内に設けられており、回路基板71を外部に電気接続するためのものである。
【0017】
コネクタ樹脂部3は、複数の中子樹脂部4A,4B,4Cと、複数の中子樹脂部4A,4B,4Cを覆う外側樹脂部5とを有する。中子樹脂部4A,4B,4Cは、コネクタ樹脂部3の内側部分に配置されており、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cの両端部61,62を除く中間部63を覆っている。外側樹脂部5は、コネクタ樹脂部3の外側部分に配置されている。ケース樹脂部2を構成する樹脂材料は、外側樹脂部5を構成する樹脂材料に樹脂成形によって接合されている。
【0018】
以下に、本形態の回路基板用コネクタ1について詳説する。
(回路基板用コネクタ1)
図1図3に示すように、回路基板用コネクタ1は、機械部品としての自動変速機73に取り付けられるケースとして形成されている。自動変速機73は、自動車に搭載されるものである。回路基板用コネクタ1のケース樹脂部2に配置された回路基板71は、自動変速機73における各種の電子制御部品72の制御を行うものである。この電子制御部品72には、種々のアクチュエータ、センサ等がある。
【0019】
回路基板用コネクタ1は、自動変速機73に取り付けられるケースにコネクタが設けられたものであり、コネクタ付きのケースということもできる。ケース樹脂部2は、自動変速機73におけるケース部に取り付けられる。
【0020】
回路基板用コネクタ1は、種々の電子制御機器の動作を制御する回路基板71を、回路基板用コネクタ1の外部にある電子制御ユニット(ECU)等の制御装置に電気的に接続するものである。なお、機械部品は、自動変速機73以外の種々のものとしてもよい。自動変速機73においては、自動変速の制御動作、各構成部品間の潤滑等を行うためのオイル(自動変速機油)が用いられる。
【0021】
(ケース樹脂部2)
図1図3に示すように、ケース樹脂部2は、回路基板71を内部に配置するための凹部21を有する。ケース樹脂部2は、平板状の回路基板71の形状に合わせて、平板に近い形状に形成されている。ケース樹脂部2には、コネクタ樹脂部3以外の、他の複数の端子が配置されたコネクタ部35も形成されている。ケース樹脂部2には、回路基板71を凹部21内に収容して密閉するためのカバー11が、シール材111を介して取り付けられる。ケース樹脂部2とカバー11との間には、回路基板71が収容された空間20が形成される。ケース樹脂部2とカバー11との間にシール材111が配置されることにより、空間20内に自動変速機73におけるオイルが浸入しないようにしている。
【0022】
ケース樹脂部2には、ケース樹脂部2を自動変速機73に取り付けるための取付穴22と、ケース樹脂部2にカバー11を取り付けるための取付穴22とが形成されている。取付穴22は、ボルトを挿通するものである。図1においては、いくつかの取付穴22が自動変速機73への回路基板用コネクタ1の取り付けに使用され、残りのいくつかの取付穴22が回路基板用コネクタ1へのカバー11の取り付けに使用される。
【0023】
(コネクタ樹脂部3)
図1図3に示すように、コネクタ樹脂部3は、ケース樹脂部2に隣接して配置される基部31と、基部31及びケース樹脂部2に対して垂直に配置される柱形状のタワー部32とを有する。タワー部32は、ケース樹脂部2における回路基板71の平面方向に対して垂直な方向に突出している。タワー部32は、基部31の平面方向における長さよりも長く形成されている。タワー部32は、回路基板用コネクタ1とは別のケース部材12に挿入される。
【0024】
図4図6に示すように、コネクタ樹脂部3は、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cを有している。図4は、コネクタ樹脂部3を、タワー部32の先端側から見た状態で示す。図5は、コネクタ樹脂部3を、複数の中子樹脂部4A,4B,4Cが重なる方向から見た状態で示す。図6は、コネクタ樹脂部3を、各コネクタ端子6A,6B,6Cのそれぞれが一列に並ぶ方向から見た状態で示す。
【0025】
コネクタ樹脂部3は、回路基板用コネクタ1における複数のコネクタ端子6A,6B,6Cの配置部位を、ケース樹脂部2とは別部品にしたものである。コネクタ樹脂部3は、コネクタ樹脂部3の内側部分に配置されて複数のコネクタ端子6A,6B,6Cの周囲に設けられた中子樹脂部4A,4B,4Cと、コネクタ樹脂部3の外側部分に配置されて複数の中子樹脂部4A,4B,4Cの周囲に設けられた外側樹脂部5とによって構成されている。中子樹脂部4A,4B,4Cのほとんどは外側樹脂部5内に埋設される。図3に示すように、コネクタ樹脂部3の先端部には、相手側コネクタ13が装着されるコネクタ装着部33が形成されている。
【0026】
コネクタ装着部33は、外側樹脂部5によって形成されており、中子樹脂部4A,4B,4Cから突出するコネクタ端子6A,6B,6Cの一端部61を囲む筒形状を有する。コネクタ装着部33の内側の底位置には、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cの一端部61が突出する、中子樹脂部4A,4B,4Cの端面が露出している。
【0027】
(コネクタ端子6A,6B,6C)
図7図9に示すように、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cは、導電性の導体によって形成されている。図7は、複数の中子樹脂部4A,4B,4C及び複数のコネクタ端子6A,6B,6Cを、タワー部32の先端側から見た状態で示す。図8は、複数の中子樹脂部4A,4B,4C及び複数のコネクタ端子6A,6B,6Cを、複数の中子樹脂部4A,4B,4Cが重なる方向から見た状態で示す。図9は、複数の中子樹脂部4A,4B,4C及び複数のコネクタ端子6A,6B,6Cを、各コネクタ端子6A,6B,6Cのそれぞれが一列に並ぶ方向から見た状態で示す。
【0028】
複数の第1のコネクタ端子6Aの一端部61は、互いに平行になるよう一方向に一列に並んで配置されている。複数の第2のコネクタ端子6Bの一端部61も、互いに平行になるよう一方向に一列に並んで配置されている。複数の第3のコネクタ端子6Cの一端部61も、互いに平行になるよう一方向に一列に並んで配置されている。
【0029】
図7に示すように、複数の第1のコネクタ端子6Aの一端部61、複数の第2のコネクタ端子6Bの一端部61及び複数の第3のコネクタ端子6Cの一端部61は、一方向に直交する方向に複数段に並んで配置されている。複数段に並ぶコネクタ端子6A,6B,6Cの一端部61には、複数の第1のコネクタ端子6Aの一端部61による段、複数の第2のコネクタ端子6Bの一端部61による段、及び複数の第3のコネクタ端子6Cの一端部61による段がある。
【0030】
第1のコネクタ端子6A及び第2のコネクタ端子6Bは制御用のコネクタ端子を構成し、第3のコネクタ端子6Cは電源用のコネクタ端子を構成する。複数の第1のコネクタ端子6Aは、キャリヤによって互いに繋がった状態で成形型に配置されるインサート部品となり、第1の中子樹脂部4Aのインサート成形によって、第1の中子樹脂部4A内に配置される。そして、第1の中子樹脂部4Aの成形が行われた後に、複数の第1のコネクタ端子6Aにおけるキャリヤが除去されて、複数のコネクタ端子6Aが別々に切り離される。なお、キャリヤは、複数の第1のコネクタ端子6Aをプレス加工によって成形する際に、複数の第1のコネクタ端子6Aが互いに離れないようにしておく部分である。
【0031】
複数の第2のコネクタ端子6B及び複数の第3のコネクタ端子6Cも、第1のコネクタ端子6Aと同様にして、第2の中子樹脂部4B内又は第3の中子樹脂部4C内に配置される。
【0032】
各コネクタ端子6A,6B,6Cの一端部61は、コネクタ樹脂部3のコネクタ装着部33の内側において、各中子樹脂部4A,4B,4Cの端面から突出してコネクタ樹脂部3の外部に露出している。各コネクタ端子6A,6B,6Cの他端部62は、ケース樹脂部2の凹部21内において、各中子樹脂部4A,4B,4Cの端面から突出して凹部21内に露出している。複数のコネクタ端子6A,6B,6Cは、タワー部32の形成方向に平行な状態から、ケース樹脂部2の形成方向に平行な状態に屈曲し、さらにタワー部32の形成方向に平行な状態に屈曲している。
【0033】
(中子樹脂部4A,4B,4C)
図7図9に示すように、外側樹脂部5内には、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cの中間部63を覆う複数の中子樹脂部4A,4B,4Cが互いに対面して配置されている。本形態の中子樹脂部4A,4B,4Cは、複数の第1のコネクタ端子6Aが配置された第1の中子樹脂部4Aと、複数の第2のコネクタ端子6Bが配置された第2の中子樹脂部4Bと、複数の第3のコネクタ端子6Cが配置された第3の中子樹脂部4Cとによって構成されている。
【0034】
コネクタ樹脂部3には、回路基板71が配置された空間20を外気に開放するための通気経路41が形成されている。通気経路41は、中子樹脂部4A,4B,4Cが互いに対面する合わせ面に形成された溝部を利用して、タワー部32を構成する外側樹脂部5の側面に開口されている。通気経路41の外側の開口部411は、タワー部32を構成する外側樹脂部5の側面に開口しており、通気経路41の内側の開口部412は、空間20内に開口している。
【0035】
外側の開口部411は、コネクタ装着部33を除く外側樹脂部5の側面に開口している。本形態のタワー部32は、ケース部材12内に挿入されており、通気経路41は、ケース部材12内を経由して外気に開放されている。
【0036】
本形態の通気経路41を形成する溝部は、第3の中子樹脂部4Cにおける、第2の中子樹脂部4Bとの合わせ面に形成されている。通気経路41の外側の端部は、中子樹脂部4Cと、タワー部32を構成する外側樹脂部5とに設けられた貫通孔によって形成されている。通気経路41を形成する溝部は、各中子樹脂部4A,4B,4Cにおける各合わせ面のうちの少なくとも一方に形成されていればよい。
【0037】
通気経路41の形成によって、ケース樹脂部2内の空間20を、回路基板用コネクタ1の外部の空気によって換気することができる。そして、回路基板71等の発熱によってケース樹脂部2内の空間20が加熱されたときでも、この空間20内の空気を通気経路41から外部へ逃がし、ケース樹脂部2内が冷却されるようにすることができる。
【0038】
中子樹脂部4A,4B,4Cは、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cが配置される段数に応じた数が形成されている。複数のコネクタ端子6A,6B,6Cの段ごとに中子樹脂部4A,4B,4Cを成形することにより、成形型に対するコネクタ端子6A,6B,6Cの位置決めを容易にし、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cが配置された中子樹脂部4A,4B,4Cのインサート成形を容易にすることができる。中子樹脂部4A,4B,4C同士が対面することにより、複数段のコネクタ端子6A,6B,6C同士の間隔が定められる。
【0039】
(外側樹脂部5)
図7図9に示すように、外側樹脂部5は、コネクタ樹脂部3の外形を形成するものである。ケース樹脂部2と外側樹脂部5とが接合された部位には、ケース樹脂部2に対する外側樹脂部5の抜け止めがなされる抜け止め形状が形成されている。本形態においては、外側樹脂部5における、ケース樹脂部2と接合される部位には、タワー部32の形成方向に直交する方向に陥没して、ケース樹脂部2を構成する樹脂材料が流入する流入溝51が形成されている。
【0040】
そして、ケース樹脂部2の一部が流入溝51に流入していることにより、コネクタ樹脂部3が、ケース樹脂部2から離脱しにくくすることができる。なお、外側樹脂部5における、ケース樹脂部2と接合される部位には、流入溝51を形成する代わりに、タワー部32の形成方向に直交する方向に突出する突起を形成することもできる。この場合にも、流入溝51を形成する場合と同様の作用効果が得られる。
【0041】
(樹脂材料)
本形態の回路基板用コネクタ1のケース樹脂部2、中子樹脂部4A,4B,4C及び外側樹脂部5は、同じ組成の熱可塑性樹脂によって成形されている。そのため、回路基板用コネクタ1が成形された後において、ケース樹脂部2、中子樹脂部4A,4B,4C及び外側樹脂部5は、一体化されている。
【0042】
ただし、回路基板用コネクタ1を切断した断面を観察すれば、ケース樹脂部2、中子樹脂部4A,4B,4C及び外側樹脂部5の間の境界位置を確認することができる。この境界位置には、各樹脂部2,4A,4B,4C,5が成形されたときの樹脂の表面層が配置される。この表面層は、硬度が高くなる等の、他の部位に比べて異なる性質を有することが多い。このことによって、ケース樹脂部2、中子樹脂部4A,4B,4C及び外側樹脂部5が別々に成形されたことを確認することができる。
【0043】
コネクタ樹脂部3は、ケース樹脂部2のインサート成形を行う際のインサート部品となる。そして、コネクタ樹脂部3の外側樹脂部5を構成する樹脂材料の表面に、ケース樹脂部2を構成する溶融した樹脂材料が流れ込み、ケース樹脂部2を構成する樹脂材料が接合される。また、ケース樹脂部2を構成する樹脂材料は、各中子樹脂部4A,4B,4Cを構成する樹脂材料にも接合されていてもよい。
【0044】
(成形型81,82,83及び成形装置)
本形態の回路基板用コネクタ1は、成形型81,82,83を用いて射出成形を行う成形装置によって成形される。回路基板用コネクタ1は、インサート成形を3段階に行って成形する。成形装置は、成形型81,82,83を構成する複数の型部を可動させるとともに、複数の型部によって形成されるキャビティ810,820,830内に樹脂材料を充填するよう構成されている。
【0045】
成形装置においては、成形型81,82,83のキャビティ810,820,830内に樹脂材料が充填され、樹脂材料が冷却されて成形品が成形された後に、この成形品が成形型81,82,83から取り出される。成形装置は、成形品の取り出しを可能にするために、成形品の大きさに応じた量のストローク(往復動作)を行うことが可能である。成形品の大きさが大きくなるほど、成形装置に必要なストローク量が大きくなり、成形装置が大型化する。
【0046】
(回路基板用コネクタ1の製造方法)
次に、回路基板用コネクタ1の製造方法について詳説する。回路基板用コネクタ1の製造方法においては、第1~第3成形工程として、3段階にインサート成形を行って回路基板用コネクタ1を成形する。
【0047】
第1成形工程においては、図10に示すように、第1成形型81のキャビティ810に複数の第1のコネクタ端子6Aを配置する。このとき、複数のコネクタ端子6Aはキャリヤによって繋がれており、複数の第1のコネクタ端子6Aの中間部63が第1成形型81のキャビティ810内に配置されるとともに、複数の第1のコネクタ端子6Aの両端部61,62が第1成形型81のキャビティ810の外部に配置される。
【0048】
そして、図11に示すように、第1成形型81のキャビティ810内に、第1の中子樹脂部4Aを構成する溶融状態の第1樹脂材料を充填する。これにより、第1樹脂材料によって第1の中子樹脂部4Aが成形され、複数の第1のコネクタ端子6Aの中間部63が第1の中子樹脂部4A内に埋設され、複数の第1のコネクタ端子6Aの両端部61,62が第1の中子樹脂部4Aの両端から突出する。こうして、複数の第1のコネクタ端子6Aが配置された第1の中子樹脂部4Aのインサート成形が行われて、第1インサート部品40が成形される。第1インサート部品40の成形後に、複数の第1のコネクタ端子6Aにおけるキャリヤが切断され、複数の第1のコネクタ端子6Aが分離される。
【0049】
また、第2の中子樹脂部4B及び第3の中子樹脂部4Cについても、第1の中子樹脂部4Aの場合と同様に、第1成形型81のキャビティ810に第1樹脂材料が充填されて、第1インサート部品40として成形される。
【0050】
第1成形型81は、各中子樹脂部4A,4B,4Cを成形するための、開閉可能な一対の型部811,812によって構成することができる。
【0051】
次いで、第2成形工程においては、図12に示すように、第2成形型82のキャビティ820に第1インサート部品40としての第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cを配置する。このとき、複数のコネクタ端子6A,6B,6Cの両端部61,62が第2成形型82のキャビティ820の外部に配置される。
【0052】
そして、図13に示すように、第2成形型82のキャビティ820内に、外側樹脂部5を構成する溶融状態の第2樹脂材料を充填する。これにより、第2樹脂材料によって外側樹脂部5が成形され、複数の第1~第3のコネクタ端子6A,6B,6Cの両端部61,62が第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cの両端から突出する状態が維持されて、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cが外側樹脂部5内に埋設される。こうして、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cが配置された外側樹脂部5のインサート成形が行われて、コネクタ樹脂部3を含む第2インサート部品50が成形される。
【0053】
第2成形型82は、外側樹脂部5を成形するために、開閉可能な一対の型部821,822、及び各型部821,821に対してスライド可能なスライド型部823によって構成することができる。
【0054】
次いで、図14に示すように、第3成形工程においては、第3成形型83のキャビティ830に第2インサート部品50を配置する。このとき、コネクタ樹脂部3の基部31が第3成形型83のキャビティ830内に配置されるとともに、コネクタ樹脂部3のタワー部32が第3成形型83のキャビティ830の外部に配置される。
【0055】
そして、図15に示すように、第3成形型83のキャビティ830内に、ケース樹脂部2を構成する溶融状態の第3樹脂材料を充填する。これにより、第3樹脂材料によってケース樹脂部2が成形され、コネクタ樹脂部3のタワー部32がケース樹脂部2から突出する状態で、コネクタ樹脂部3の基部31とケース樹脂部2とが接合される。こうして、コネクタ樹脂部3が配置されたケース樹脂部2のインサート成形が行われて、回路基板用コネクタ1が成形される。
【0056】
第3成形型83は、ケース樹脂部2を成形するための、開閉可能な一対の型部831,832によって構成することができる。
【0057】
特に、第2成形工程及び第3成形工程として、コネクタ樹脂部3の外側樹脂部5を、ケース樹脂部2とは別に、ケース樹脂部2を成形する前に成形することにより、コネクタ樹脂部3のタワー部32がケース樹脂部2から長く突出する回路基板用コネクタ1であっても、小型の成形装置によって成形することができる。
【0058】
(作用効果)
本形態の回路基板用コネクタ1は、第1~第3のコネクタ端子6A,6B,6Cが配置された第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cの1段階目の成形、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cが配置された外側樹脂部5の2段階目の成形、及びコネクタ樹脂部3が配置されたケース樹脂部2の3段階目の成形を行って成形されたものである。回路基板用コネクタ1においては、第1~第3のコネクタ端子6A,6B,6Cが配置された第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cを成形することにより、第1~第3のコネクタ端子6A,6B,6Cを配列する自由度を高めることができる。
【0059】
本形態の第1~第3のコネクタ端子6A,6B,6Cは、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cに分けて配列されている。そして、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cは、第1~第3のコネクタ端子6A,6B,6Cが並ぶ段ごとに形成されており、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cを合わせることにより、第1~第3のコネクタ端子6A,6B,6Cの全体の配列が形成される。
【0060】
また、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4Cが配置されたコネクタ樹脂部3を成形することにより、コネクタ樹脂部3とケース樹脂部2とを一体成形する場合に比べて、成形装置の構造を簡単にすることができる。具体的には、コネクタ樹脂部3は、ケース樹脂部2から突出するタワー部32を有している。そして、コネクタ樹脂部3とケース樹脂部2とを1回の成形によって一体成形する場合には、成形品の外形が大きく、成形品を成形して取り出すための成形装置が大型化するおそれがある。
【0061】
一方、コネクタ樹脂部3をケース樹脂部2とは別に成形する場合には、成形装置は、コネクタ樹脂部3の外形に合わせた大きさと、ケース樹脂部2の外形に合わせた大きさとを有していればよい。そのため、成形装置を小型化することができる。
【0062】
そして、ケース樹脂部2は、コネクタ樹脂部3が配置された成形型83においてインサート成形され、ケース樹脂部2を構成する第3樹脂材料は、コネクタ樹脂部3の外側樹脂部5を構成する第2樹脂材料に樹脂成形によって接合される。こうして、本形態の回路基板用コネクタ1は、第1~第3の中子樹脂部4A,4B,4C、外側樹脂部5及びケース樹脂部2のインサート成形を3段階に行うことによって、小型の成形装置によって成形することが可能になる。
【0063】
それ故、本形態の回路基板用コネクタ1及びその製造方法によれば、3段階にインサート成形を行うことにより、小型の成形装置による成形を可能にすることができる。
【0064】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。さらに、本発明から想定される様々な構成要素の組み合わせ、形態等も本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 回路基板用コネクタ
11 カバー
111 シール材
12 ケース部材
13 相手側コネクタ
2 ケース樹脂部
20 空間
21 凹部
22 取付穴
3 コネクタ樹脂部
31 基部
32 タワー部
33 コネクタ装着部
35 コネクタ部
4A,4B,4C 中子樹脂部
40 第1インサート部品
41 通気経路
411,412 開口部
5 外側樹脂部
50 第2インサート部品
51 流入溝
6A,6B,6C コネクタ端子
61 一端部
62 他端部
63 中間部
71 回路基板
72 電子制御部品
73 自動変速機
81 第1成形型
82 第2成形型
83 第3成形型
810,820,830 キャビティ
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
図11
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図15