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特許7167777ノズル、ブラスト加工装置及びブラスト加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ノズル、ブラスト加工装置及びブラスト加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 5/04 20060101AFI20221101BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B24C5/04 C
B24C5/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019041618
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142338
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-05-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】神田 真治
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-028291(JP,U)
【文献】特開2005-288596(JP,A)
【文献】特開2013-129021(JP,A)
【文献】実開昭50-081492(JP,U)
【文献】特開昭55-018322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/02-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨材の導入路を有する基部と、
軸線を中心とする円環状の噴射口を有する先端部と、
前記基部と前記先端部との間に設けられた本体部と、を備え、
前記先端部が、
少なくとも一部分が、前記軸線を中心軸線とし、且つ、前記噴射口に近づくにつれて径が大きくなる円錐台形状を呈するロッドと、
前記ロッドの側方から前記ロッドの側面を囲む内周面を有する筒状のノズルチップであり、前記側面と前記内周面との間に、前記導入路から導入された研磨材を前記噴射口に案内する通路を形成する、該ノズルチップと、
を有し、
前記ロッドは、前記基部側に配置された上面と、前記上面の反対側に配置された下面とを含み、前記ロッドの前記下面は部分的に露出しており、
前記ロッドの径は、前記下面において最大となり、
本体部は、前記導入路に連通する拡散室と、前記通路に連通するバッファ室と、前記拡散室と前記バッファ室との間に設けられ、且つ、前記軸線に直交する平面に沿って設けられた拡散板とを有し、
前記拡散板の中心は、前記導入路から導入された前記研磨材と衝突するように前記軸線に重なる位置に配置され、
前記拡散板には、前記軸線を中心とする仮想円に沿って複数の開口が形成されている、ノズル。
【請求項2】
前記基部が、前記軸線に沿って直線状に延在し、前記導入路を画成する導入管を含み、
前記本体部には、前記導入管の端部が接続される導入口が形成されており、
前記導入管が、前記導入口の開口幅に対して10倍以上の長さを有している、請求項に記載のノズル。
【請求項3】
前記ロッド及び前記ノズルチップが、ボロンカーバイドによって構成されている、請求項1又は2に記載のノズル。
【請求項4】
前記噴射口は、前記ロッドの前記下面と前記ノズルチップの下面との間に形成されている、請求項1~の何れか一項に記載のノズル。
【請求項5】
前記通路は、前記基部側の端部と前記噴射口との間で一定の幅を有している、請求項1~の何れか一項に記載のノズル。
【請求項6】
軸線に対して直交する任意の断面において円環状のパターンになるように前記研磨材を噴射する、請求項1~の何れか一項に記載のノズル。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項に記載のノズルを備えるブラスト加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノズル、ブラスト加工装置及びブラスト加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気と共に研磨材をノズルから噴射することで、被処理体に穴や溝といった深いスペースを形成するブラスト加工装置が知られている。このようなブラスト加工では、マスクパターンが形成されたドライフィルムを被処理体上に形成し、ノズルから研磨材を噴射して被処理体のドライフィルムから露出する領域を除去することによって、被処理体にスペースを形成する。
【0003】
一般的なブラスト加工装置は、図10に示すようなノズルを備えている。図10に示す従来のノズル100は、ドライフィルム104を介して、円形の噴射口102から被処理体Wに研磨材Mを噴射する。このようなノズル100を用いて被処理体Wにスペース106を形成した場合には、スペース106を画成する側壁106sにテーパ面が形成され、深さ方向において先細った形状のスペース106が形成される。
【0004】
近年、ブラスト加工の用途によっては、被処理体に高い垂直性を有するスペースを形成することが求められることがある。高い垂直性を有するスペースを形成するための技術として、特許文献1に記載のブラスト加工方法が知られている。特許文献1には、粉粒体と気体とを含む固気二相流を分散させる分散室と、固気二相流を収束させる収束室と、収束された固気二相流を加速させる加速室とを有するノズルを用いて、被処理体に溝状のスペースを形成することが記載されている。特許文献1のノズルの噴射口は、スリット形状を有している。この噴射口は、スリットの長さ方向の中心で2つに分割されており、分割された2つの噴射口からは、被処理体の加工面の法線方向を基準として噴射口の長さ方向に傾斜し、且つ、互いに遠ざかる方向に沿って固気二相流が噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-129762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のノズルでは、被処理体の加工面の法線方向を基準として噴射口の長さ方向に傾斜する方向に研磨材を噴射することによって、溝を画成する側壁に斜め方向から研磨材を衝突させている。このように、側壁に斜め方向から研磨材を衝突されることで、テーパ面が除去され、溝の垂直性が改善される。しかしながら、このノズルでは、スロット状の噴射口の長さ方向に対して垂直に形成された側壁のテーパ面を除去することができるものの、噴射口の長さ方向に対して平行な方向に形成された側壁にはテーパ面が残ることとなる。すなわち、特許文献1に記載のノズルを用いたブラスト加工では、スペースの側壁の向きによって当該側壁の角度にばらつきが生じ、非等方的にスペースの形成が進行することとなる。
【0007】
したがって、等方的にスペースを形成し、且つ、スペースの垂直性を改善することができるノズル、ブラスト加工装置及びブラスト加工方法を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様に係るノズルは、研磨材の導入路を有する基部と、軸線を中心とする円環状の噴射口を有する先端部と、を備えている。この先端部は、少なくとも一部分が、軸線を中心軸線とし、且つ、噴射口に近づくにつれて径が大きくなる円錐台形状を呈するロッドと、ロッドの側方からロッドの側面を囲む内周面を有する筒状のノズルチップであり、側面と内周面との間に、導入路から導入された研磨材を噴射口に案内する通路を形成する、該ノズルチップと、を有している。
【0009】
上記態様に係るノズルでは、導入路から研磨材が導入されると、当該研磨材がロッドの側面と内周面との間に形成された通路に流入する。通路に流入した研磨材は、軸線周りに延在し、且つ、噴射口に近づくにつれて径が大きくなる円錐台形状の側面に沿って噴射口に案内され、噴射口から噴射される。このように噴射された研磨材は、スペースを画成する側壁に対して斜め方向から衝突するので、側壁のテーパ面を除去することができ、その結果、スペースの垂直性を改善することができる。また、上記態様のノズルでは、円環状の噴射口から、軸線周りの全方向に研磨材が噴射されるので、被処理体にスペースを等方的に形成することができる。
【0010】
一実施形態のノズルは、基部と先端部との間に設けられた本体部であり、導入路に連通する拡散室、及び、通路に連通するバッファ室を有する、該本体部を更に備え、本体部が、拡散室とバッファ室との間に設けられ、且つ、軸線上に配置された拡散板を有し、拡散板には、軸線を中心とする仮想円に沿って複数の開口が形成されていてもよい。
【0011】
上記実施形態では、導入路から拡散室に導入された研磨材が、拡散板に衝突し、跳ね返ることで拡散室内において拡散される。拡散された研磨材は、複数の開口を通過してバッファ室に導入される。バッファ室に導入された研磨材は通路に導入される。このように、拡散された研磨材を通路に導入することによって、噴出口での研磨材の分布の均一性を改善することができる。
【0012】
一実施形態では、基部が、軸線に沿って直線状に延在し、導入路を画成する導入管を含み、本体部には、導入管の端部が接続される導入口が形成されており、導入管が、導入口の開口幅に対して10倍以上の長さを有していてもよい。
【0013】
この実施形態では、導入管が、軸線に沿って直線状に延在し、且つ、導入口の幅に対して十分な長さを有しているので、導入路を流れる研磨材が軸線方向に平行な方向に沿って流れるように整流させることができる。その結果、噴出口での研磨材の分布の均一性をより改善することができる。
【0014】
一実施形態では、ロッド及びノズルチップが、ボロンカーバイドによって構成されていてもよい。ボロンカーバイドは高い耐摩耗性を有しているので、ロッド及びノズルチップをボロンカーバイドによって構成することで、ロッド及びノズルチップの摩耗を抑制することができる。
【0015】
一態様に係るブラスト加工装置は、上記ノズルを備えている。上記のように、このブラスト加工装置によれば、等方的にスペースを形成し、且つ、スペースの垂直性を改善することができる。
【0016】
一態様では、研磨材の導入路を有する基部と、軸線を中心とする円環状の噴射口を有する先端部と、を備えるノズルから研磨材を噴射するブラスト加工方法が提供される。この方法は、導入路から研磨材を導入する工程と、軸線を基準として軸線に対して径方向側に傾斜する方向であって噴射口から離れるにつれて軸線から遠ざかる方向に沿って、噴射口から研磨材を噴射する工程を含む。
【0017】
上記態様のブラスト加工方法では、軸線を基準として軸線に対して径方向側に傾斜する方向であって噴射口から離れるにつれて軸線から遠ざかる方向に沿って、噴射口から研磨材が噴射される。このように噴射された研磨材は、スペースを画成する側壁に対して斜め方向から衝突するので、側壁のテーパ面を除去することができ、その結果、スペースの垂直性を改善することができる。また、上記態様のノズルでは、円環状の噴射口から、軸線周りの全方向に研磨材が噴射されるので、被処理体に等方的にスペースを形成することができる。
【0018】
一実施形態では、ノズルが、基部と先端部との間に設けられ、且つ、軸線上に配置された円形の拡散板であり、軸線を中心とする仮想円の周方向に沿って複数の開口が形成された、該拡散板を更に備え、導入路から導入された研磨材を拡散板に衝突させ、複数の開口に衝突した研磨材を通過させることによって、研磨材を拡散させる工程を更に含んでいてもよい。
【0019】
上記実施形態では、導入路から拡散室に導入された研磨材が、拡散板に衝突し、跳ね返ることで拡散される。拡散された研磨材は、複数の開口を通過して噴射口から噴射される。このように、拡散板を用いて研磨材が拡散されることによって、噴出口での研磨材の分布の均一性を改善することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様及び種々の実施形態によれば、等方的にスペースを形成し、且つ、スペースの垂直性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態のブラスト加工システムを概略的に示す図である。
図2】一実施形態のノズルを示す断面図である。
図3】一実施形態のノズルを示す斜視図である。
図4】拡散部の平面図である。
図5】先端部の下面図である。
図6】研磨材の流れを示す断面図である。
図7図6のVII-VII線に沿った断面図である。
図8】一実施形態に係るブラスト加工方法を示すフローチャートである。
図9】実験例1~3によって穴が形成された被処理体を示す断面図である。
図10】従来のノズルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0023】
図1は、一実施形態に係るブラスト加工システムを概略的に表す図である。図1に示すブラスト加工システム1は、ブラスト加工装置10、研磨材供給装置50、分級器62及び集塵機70を備えている。
【0024】
ブラスト加工装置10は、研磨材供給装置50から供給された研磨材Mを被処理体Wに対して噴射する装置である。ブラスト加工装置10は、研磨材Mを被処理体Wに噴射することによって、被処理体Wに穴や溝といったスペースを形成する。ブラスト加工装置10は、例えば直圧式のブラスト加工装置である。
【0025】
ブラスト加工装置10は、容器12及びノズル20を備えている。容器12は、上部容器13及び下部容器14を含んでいる。上部容器13は下部が開放されており、下部容器14は上部が開放されている。上部容器13と下部容器14との間には、通過板23が設けられている。通過板23には、研磨材Mが通過可能な複数の開口が形成されている。上部容器13は、通過板23と共に加工室13sを画成している。
【0026】
加工室13s内には、被処理体Wが載置される加工台24が設けられている。被処理体Wは、例えば、セラミック材料、ガラス材料などの硬脆材料、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)材料などの難切削材料であり得る。加工台24は、コンベア駆動部25に支持されている。コンベア駆動部25は、通過板23上に設けられている。コンベア駆動部25は、例えばX-Yステージといった移動機構であり、加工台24上に載置された被処理体Wをノズル20に対して相対的に移動させる。被処理体Wの移動方向及び移動速度は、被処理体Wの大きさ、形状、材質、被処理体Wに形成されるスペースの形状等に応じて適宜設定される。なお、上部容器13には、加工室13sの内側を観察するための窓13wが設けられていてもよい。
【0027】
ノズル20は、加工台24の上方に設けられている。ノズル20は、直圧式ブラスト加工用のブラストノズルであり、基部31、本体部32及び先端部33を備えている。先端部33は、研磨材Mの噴射口49を有しており、噴射口49が加工台24の上面に対向するように、加工室13s内に設けられている。基部31は、少なくとも部分的に加工室13sの外部に配置されており、当該基部31には供給配管22の一端が接続されている。ノズル20は、供給配管22から供給された研磨材Mを圧縮空気と共に固気二相流として被処理体Wに噴射する。
【0028】
上部容器13の上方には、ノズル駆動部26が設けられている。ノズル駆動部26は、ノズル20に接続する接続機構と、当該接続機構を駆動するモータとを含んでいる。ノズル駆動部26は、モータを駆動することによって、加工台24上に載置された被処理体Wに対してノズル20の水平方向の位置を相対的に移動させる。ノズル駆動部26によるノズル20の移動方向及び移動速度は、被処理体Wの大きさ、形状、材料、形成されるスペースの形状等に応じて適宜設定される。
【0029】
下部容器14は、上部容器13の下方に設けられている。下部容器14は、下方に向かうにつれて幅が狭くなるテーパ状の側壁を有している。下部容器14は、通過板23と共に回収空間14sを画成している。回収空間14sは、通過板23に形成された複数の開口を介して加工室13sに連通している。したがって、ノズル20から被処理体Wに噴射された研磨材Mは、通過板23に形成された複数の開口を通って下部容器14の回収空間14sに回収される。下部容器14の底部には、回収した研磨材Mを分級器62に供給するための下部開口14eが形成されている。
【0030】
下部容器14の下部開口14eには、回収管28の一端が接続されている。回収管28の他端は、分級器62に接続されている。分級器62は、ノズル20から被処理体Wに投射された使用済みの研磨材Mを吸引し、再使用可能な研磨材Mと再利用不能な破片とに分離する。分級器62は、例えばサイクロン式の分級器である。分級器62には、サイクロン導管64の一端が接続されている。サイクロン導管64の他端は集塵機70に接続されている。分級器62に吸引された使用済みの研磨材Mのうち再利用不能な破片は、サイクロン導管64を介して集塵機70に搬送される。一方、分級器62に吸引された使用済みの研磨材Mのうち再利用可能な研磨材Mは、導管66に送られる。
【0031】
集塵機70は、研磨材Mの破片及び被処理体Wの切削粉を収集する装置である。集塵機70は、サイクロン導管64を吸引し、下部容器14の下部開口14eから回収管28、分級器62及びサイクロン導管64を通って集塵機70に向かう気流を生成する。この気流によって、下部容器14の回収空間14sに回収された使用済みの研磨材M及び被処理体Wの切削粉が分級器62に搬送され、分級器62において分級された研磨材Mの破片及び切削粉が集塵機70に吸引される。集塵機70によって吸引された破片及び切削粉は、フィルタを用いて捕捉される。
【0032】
分級器62の下方には、研磨材供給装置50が設けられる。研磨材供給装置50は、ブラスト加工装置10に研磨材Mを供給するための装置であり、タンク52及び定量供給機構54を備えている。タンク52の内部には、研磨材Mが貯留されている。限定されるものではないが、研磨材Mとしては、例えばアルミナ粉末、銑鉄グリット及び鋳型グリットが用いられる。
【0033】
タンク52は、天板52a及び側壁52bを含んでいる。一実施形態では、タンク52は、4つの側壁52bを有している。4つの側壁52bの各々は、向かい合う側壁52bに対して平行に配置された上部と、下方に向かうにつれて向かい合う側壁52bに対して近づくように傾斜する下部を有している。すなわち、タンク52は、下方に向かうにつれて幅が狭くなる側壁を有している。
【0034】
また、タンク52の底部には、下部開口53が形成されている。タンク52の下部開口53の下方には、定量供給機構54が設けられている。定量供給機構54には、供給配管22の他端が接続されている。定量供給機構54は、タンク52内の下部開口53から一定量の研磨材Mを取り出し、取り出した研磨材を供給配管22を介してノズル20に供給する。
【0035】
一実施形態では、定量供給機構54は、ローラ54a及び駆動機構54bを備えている。ローラ54aの外周面には、タンク52内の下部開口53から供給された研磨材Mが充填される凹部が形成されている。駆動機構54bは、ローラ54aに対して駆動力を付与することによりローラ54aを回転させる。ローラ54aの回転によって回転方向下流に搬送された凹部には、圧縮空気供給装置56から供給された圧縮空気が噴射され、凹部に充填された研磨材Mが取り出される。凹部から取り出された研磨材Mは、圧縮空気によって供給配管22を通り、ノズル20に供給される。なお、定量供給機構54は、ローラ54a及び駆動機構54bを含む構成に限定されるものではなく、一定量の研磨材Mをノズル20に供給することができる限りその構造は限定されない。
【0036】
また、タンク52の天板52aには、加圧用配管58が接続されている。加圧用配管58は、圧縮空気供給装置56に接続されている。圧縮空気供給装置56から供給された圧縮空気は、加圧用配管58を介して加圧用空気としてタンク52内に導入される。加圧用空気がタンク52内に供給されることにより、タンク52内は加圧される。その圧力によって、タンク52内の研磨材Mが下部開口53を介してローラ54aの凹部に密に充填される。
【0037】
タンク52の天板52aには、分級器62によって分級された再利用可能な研磨材Mを回収するための開口が形成されている。この開口と導管66との間には、弁体60が設けられている。弁体60は、例えば加圧弁であり、タンク52内部圧力に応じて開閉する。具体的には、弁体60は、タンク52の内部圧力が所定の圧力よりも高くなった場合に閉鎖され、タンク52の内部圧力が所定の圧力以下になったときに開放される。弁体60が閉鎖されている場合には、タンク52と導管66との連通が遮断されことにより、分級器62からタンク52への研磨材Mの供給が停止される。反対に、弁体60が開放されている場合には、タンク52と導管66とが連通され、分級器62からタンク52へ再利用可能な研磨材Mが供給される。一実施形態では、弁体60は、例えば、ダンプバルブ又はエアシリンダなどの駆動により円錐形状の弁体を上下させる三角弁であってもよい。
【0038】
なお、一実施形態では、研磨材供給装置50は、バイブレータ55を更に備えていてもよい。バイブレータ55は、タンク52を振動させることによって、タンク52内の研磨材Mの偏在又は残留を抑え、下部開口53からの研磨材Mの供給を円滑化する。
【0039】
さらに、一実施形態においては、ブラスト加工装置10は、制御装置CNTを更に備えていてもよい。制御装置CNTは、例えば、プログラム可能なコンピュータから構成されており、ブラスト加工システム1の全体の動作を制御する。制御装置CNTは、例えば、コンベア駆動部25、ノズル駆動部26、駆動機構54b、分級器62及び集塵機70に接続されている。
【0040】
制御装置CNTは、入力されたプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。制御装置CNTからの制御信号により、加工台24の移動方向及び移動速度、ノズル20の移動方向及び移動速度、ローラ54aの回転速度、分級器62の作動及び作動停止、及び、集塵機70の作動及び作動停止を制御することが可能となっている。
【0041】
以下、図2及び図3を参照して、一実施形態のノズルについて詳細に説明する。図2は、一実施形態のノズル20を示す断面図である。図3は、一実施形態のノズル20を示す斜視図である。図2及び図3に示すように、ノズル20は、基部31、本体部32及び先端部33を備えている。なお、以下では、ノズル20の基部31側の方向をノズル基端側と称し、ノズル20の噴射口49側の方向をノズル先端側と称する。
【0042】
基部31は、研磨材供給装置50から供給された研磨材Mをノズル20の内部に導入する部分である。基部31は、ノズル20の軸線Zに沿って直線状に延びる導入管34を有している。導入管34の内部には、研磨材Mの導入路35が画成されている。導入管34のノズル基端側の端部には、連結用のジョイント34jが設けられており、当該ジョイント34jを介して導入管34が供給配管22に接続されている。導入管34のノズル先端側の端部は、本体部32に形成された貫通孔(導入口)36に嵌入されることにより本体部32に接続されている。一実施形態では、導入管34は、貫通孔36の開口幅rに対して10倍以上の長さLを有していてもよい。
【0043】
本体部32は、天板37、上部本体38、拡散部39及び下部本体40を有している。上部本体38は、筒状をなしており、その内部に拡散室38sを画成している。拡散室38sは、導入路35から導入された研磨材Mを拡散させるための空間であり、略円柱形状を有している。上部本体38の導入管34側の端部、すなわち上部本体38の上端側には、天板37が設けられている。天板37は、略正方形の平面形状を有する板体であり、上部本体38の上端を覆っている。
【0044】
天板37には、当該天板37を厚さ方向に貫通する貫通孔36が形成されている。貫通孔36は、軸線Zに重なる位置に形成されている。貫通孔36は、軸線Zに直交する方向において、所定の開口幅rを有している。貫通孔36には、導入管34のノズル先端側の端部が嵌入されている。
【0045】
上部本体38のノズル先端側には、拡散部39が設けられている。拡散部39は、拡散板41及び枠体42を含んでいる。拡散板41は、拡散室38sと後述するバッファ室44sとの間に設けられており、軸線Z上に配置されている。一実施形態では、拡散板41は、円形板状を呈しており、軸線Zに対して直交する平面に沿って設けられている。拡散板41の中心は、軸線Zと重なる位置に配置されている。
【0046】
図4は、拡散部39を示す平面図である。図4に示すように、拡散板41には、研磨材Mが通過可能な複数の開口43が形成されている。これら複数の開口43は、軸線Zを中心とする仮想円Cに沿って配列されており、軸線Zの周りに等間隔で形成されている。複数の開口43は、拡散室38sと後述するバッファ室44sとを連通させる。一実施形態では、拡散板41は、ボロンカーバイドによって構成されていてもよい。
【0047】
枠体42は、径方向外側から拡散板41を囲むように設けられている。枠体42は、上部本体38と下部本体40との間で挟持されている。これにより、拡散室38sとバッファ室44sとの間で拡散板41が保持される。なお、拡散板41及び枠体42は、一体的に形成されていてもよいし、別体として形成されたうえで互いに連結されていてもよい。
【0048】
図2に示すように、下部本体40は、筒体44及び連結部材45を有している。筒体44は、上部本体38と同形の筒状を呈しており、枠体42に対してノズル先端側に設けられている。連結部材45は、筒体44の内部空間に設けられている。一実施形態では、連結部材45は、円板45a及び突出部45bを含んでいる。円板45aは、拡散板41と同形状を有しており、拡散板41よりもノズル先端側において、拡散板41と重なるように配置されている。すなわち、軸線Z方向から見て、円板45aに形成された複数の開口は、拡散板41に形成された複数の開口43に対して重なる位置に設けられている。円板45aは筒体44に接続されている。
【0049】
突出部45bは、円柱形状を呈しており、上面及び下面を有している。突出部45bの上面は、円板45aに連結されている。突出部45bの下面には、ネジ72が挿通されるネジ穴が形成されている。突出部45bは、その中心軸線が軸線Zに一致するように上面及び下面の間で延在している。
【0050】
筒体44と突出部45bとの間には、バッファ室44sが形成されている。バッファ室44sは、軸線Zに直交する断面視において円環状を有する空間であり、軸線Z方向に平行な方向に延在している。拡散室38s及びバッファ室44sは、拡散板41の複数の開口43及び円板45aの複数の開口を介して互いに連通されている。
【0051】
なお、天板37、上部本体38、枠体42及び筒体44には、軸線Z方向に延びる穴が形成されており、当該穴にネジB1が挿通されることで、天板37、上部本体38、拡散部39及び下部本体40が互いに締結されていてもよい。一実施形態では、上部本体38のノズル基端側の端部には、溝が形成され、その溝に沿って弾性体(例えば、Oリング)Rが設けられており、当該弾性体Rを介して天板37と上部本体38とが締結されていてもよい。
【0052】
先端部33は、本体部32に対してノズル先端側に設けられている。先端部33は、筒体46、ロッド47及びノズルチップ48を有している。筒体46は、円筒形状を有しており、その内部に円柱形状の内部空間を画成している。筒体46の中心軸線は、軸線Zに一致している。筒体46は筒体44にネジB2で固定されている。一実施形態では、筒体44と筒体46との間には弾性体(例えば、Oリング)Rが介在していてもよい。
【0053】
筒体46の内部空間には、ロッド47及びノズルチップ48が設けられている。限定されるものではないが、ロッド47及びノズルチップ48は、ボロンカーバイド等の耐摩耗性を有する材料から構成されていてもよい。ロッド47は、軸線Zを中心軸線とし、且つ、ノズル先端側に近づくにつれて径が大きくなる円錐台形状を有している。ロッド47の上面は、突出部45b径と同一又は当該径よりも小さな径を有しており、ロッド47の下面は、当該上面よりも大きな径を有している。また、ロッド47は、軸線Zに対して傾斜する側面47aを有している。より具体的には、側面47aは、軸線Z周りに延在し、且つ、ノズル20の噴射口49に近づくにつれて径が大きくなる円錐面に沿って延在している。
【0054】
図2に示すように、軸線Zに沿った平面で切断した断面視において、側面47aは、軸線Zに対して角度θで傾斜する方向に直線状に延びている。角度θは、被処理体Wの大きさ、形状、材料、形成されるスペースの形状等に応じて任意に設定される。この角度θを変化させることで、噴射口49から噴射される研磨材Mの投射角度が変化し、その結果、スペースを画成する側壁の角度を制御することができる。一実施形態では、角度θは、5°以上30°以下、より詳細には、5°以上15°以下に設定されていてもよい。
【0055】
一実施形態では、ロッド47には、その中心軸線(軸線Z)に沿って貫通孔47hが形成されている。貫通孔47hにはネジ72が挿入され、当該ネジ72が突出部45bに形成されたネジ穴にねじ込まれている。これにより、ロッド47の上面と突出部45bの下面が対面した状態で、ロッド47が本体部32に対して固定される。
【0056】
ノズルチップ48は、筒状をなしており、ロッド47の側面47aを囲むように設けられている。ノズルチップ48は、ロッド47の側方から側面47aを囲む内周面48aを有している。この内周面48aは、側面47aに対面するように配置されている。すなわち、軸線Zを含む断面から見て、側面47a及び内周面48aは互いに平行に延びている。側面47aと内周面48aとの間には、隙間74が形成されている。隙間74は、ロッド47の側面47aに沿って延びており、軸線Zに直交する断面視において円環状を有している。図2に示す断面から見た場合に、隙間74の延在方向は、ノズル先端側に近づくにつれて軸線Zから遠ざかるように軸線Zに対して傾斜している。側面47aの法線方向において、隙間74は例えば1mmの幅を有している。この隙間74は、導入路35から導入された研磨材Mを噴射口49に案内する通路として機能する。
【0057】
一実施形態では、ノズルチップ48は、内周面48aの上端に接続する傾斜面48bを更に有していてもよい。傾斜面48bは、軸線Z周りに延在し、且つ、ノズル先端側に近づくにつれて径が小さくなる円錐面に沿って延在している。すなわち、図2に示す断面視において、傾斜面48bは、ノズル先端側に近づくにつれて軸線Zに近づくように傾斜している。この傾斜面48bは、バッファ室44sに導入された研磨材Mを隙間74の入口側に案内するように機能する。
【0058】
隙間74のノズル先端側の端部、すなわち隙間74の出口は、研磨材Mが噴射される噴射口49を構成する。図5は、先端部33の下面図である。図5に示すように、ノズル20の噴射口49は、ロッド47の下面とノズルチップ48の下面との間に形成されており、軸線Zを中心とする円環状をなしている。噴射口49は、隙間74、バッファ室44s及び拡散室38sを介して導入路35に連通している。
【0059】
次に、図6を参照してノズル20内の研磨材Mの流れについて説明する。定量供給機構54によって、タンク52から取り出された研磨材Mは、供給配管22を通って固気二相流として導入管34に供給される。導入管34に供給された研磨材Mは、軸線Z方向に沿って導入路35を流れ、拡散室38sに導入される。ここで、導入路35が、軸線Z方向に沿って直線状に延在し、且つ、貫通孔36の開口幅wに対して十分な長さLを有しているので、研磨材Mが導入路35を通過する間に研磨材Mが軸線Z方向に対して平行な方向に沿って流れるように整流される。
【0060】
軸線Z方向に沿って拡散室38sに導入された研磨材Mは、拡散板41に衝突し、跳ね返ることで拡散室38s内において拡散される。拡散された研磨材Mは、複数の開口43の何れかをランダムで通過し、バッファ室44sに導入される。この際、研磨材Mが整流された状態で拡散室38sに導入されているので、複数の開口43の各々を通過する研磨材Mの量が均等化される。
【0061】
バッファ室44sに導入された研磨材Mは、傾斜面48bに衝突し、傾斜面48bに沿って隙間74に案内される。案内された研磨材Mは、隙間74の入口から導入され、隙間74内を流れる。これにより、研磨材Mの流れ方向は、ロッド47の側面47aに沿った方向、すなわち軸線Zに対して角度θで傾斜した方向に変化する。隙間74を流れる研磨材Mは、軸線Zを中心とする円環状の噴射口49から被処理体Wに向けて噴射される。
【0062】
図6に示すように、噴射口49から噴射される研磨材Mの向きは、ロッド47の側面47aの延在方向に沿っている。すなわち、研磨材Mは、軸線Zを基準として軸線Zに対する径方向側に傾斜した方向であって噴射口49から離れるにつれて軸線Zから遠ざかる方向に沿って噴射口49から噴射される。噴射口49からの研磨材Mの噴射方向は、軸線Zとロッド47の側面47aとがなす角度θに一致する。このように噴射口49から噴射された研磨材Mは、被処理体Wに衝突し、その結果、被処理体Wの表面に穴や溝といったスペースが形成される。ここで、研磨材Mは、スペースを画成する側壁に対して斜め方向から衝突することになるので、側壁のテーパ面を除去することができ、その結果、スペースの垂直性を改善することができる。
【0063】
図7は、図6のVII―VII線に沿った研磨材Mの噴射流の断面図である。噴射口49は円環状を呈しているので、図7に示すように、噴射口49から噴射された研磨材Mの流れは、軸線Zに対して直交する断面視において円環状のパターンを有している。すなわち、噴射口49からは、軸線Z周りの全方向において、軸線Zを基準として軸線Zに対する径方向側に傾斜した方向であって噴射口49から離れるにつれて軸線Zから遠ざかる方向に沿って研磨材Mが噴射されることとなる。このように研磨材Mが噴射されることにより、被処理体Wにスペースを等方的に形成することができる。
【0064】
次に、一実施形態のブラスト加工方法について説明する。図8は、一実施形態に係るブラスト加工方法MTを示すフローチャートである。この方法MTは、図1に示すブラスト加工装置10を用いて実行される。
【0065】
方法MTでは、まず工程ST11が行われる。工程ST11では、ドライフィルムが被処理体W上に形成される。このドライフィルムには、被処理体Wに形成されるべきスペースの形状に対応したマスクパターンが形成されている。続く工程ST12では、供給配管22から導入管34に研磨材Mが導入される。導入管34に導入された研磨材Mは、導入路35を流れる過程で軸線Z方向に対して平行に流れるように整流される。
【0066】
続く工程ST13では、導入管34を通過した研磨材Mが、拡散板41に衝突し、拡散室38s内で拡散される。研磨材Mが拡散されることによって、噴射口49の周方向において研磨材Mの分布の均一性が向上する。続く工程ST14では、拡散された研磨材Mが、複数の開口43、バッファ室44s及び隙間74を通って噴射口49から噴射される。ここで、研磨材Mは、軸線Zを基準として軸線Zに対する径方向側に傾斜する方向であって噴射口49から離れるにつれて軸線Zから遠ざかる方向に沿って噴射される。噴射口49から噴射された研磨材Mは、被処理体Wに衝突し、その結果、被処理体Wの表面に穴や溝といったスペースが形成される。
【0067】
以上、種々の実施形態に係るノズル、ブラスト加工装置及びブラスト加工方法について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、ロッド47が円錐台形状を有しているが、ロッド47が、軸線Z周りに延在し、且つ、噴射口49に近づくにつれて径が大きくなる円錐面に沿って延在する側面47aを有している限り、ロッド47は任意の形状を有していてもよい。例えば、ロッド47は、円錐台形状を一部分に含む立体形状を有していてもよいし、円錐形を有していてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ロッド47及びノズルチップ48は、ボロンカーバイドとは異なる任意の耐摩耗性材料から構成されていてもよい。さらに、上部本体38及び下部本体40の構成部材の表面が、ボロンカーバイド等の耐摩耗性材料でコーティングされていてもよい。
【0070】
以下、実験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0071】
本実験例では、図2に示すノズル20を用いて被処理体Wにブラスト加工を行った。本実験例では、まずニッコーマテリアル社製のドライフィルムF(NCM250)を被処理体W上に形成した後に露光現像を行い、被処理体W上にレジストマスクを形成した。ドライフィルムFには、直径60μmの穴パターンを有するレジストパターンが形成された。被処理体Wとしては、厚さ40μmのガラスエポキシ基板を使用した。
【0072】
本実験例では、ロッド47の側面47aと軸線Zとのなす角度θが異なる3つのノズルを用意した。具体的に、実験例1では、角度θが5°に設定されたノズルを使用して被処理体Wに貫通孔を形成した。同様に、実験例2及び3では、それぞれ角度θが10°及び15°に設定されたノズルを使用して被処理体Wに貫通孔を形成した。そして、実験例1~3において、被処理体Wに形成された貫通孔の側壁の角度を測定した。
【0073】
実験例1~3では、ロッド47及びノズルチップ48の材料としてボロンカーバイドを使用した。また、ロッド47とノズルチップ48との間の隙間74の幅は1mmとした。実験例1~3のその他の加工条件は、以下の通りとした。
・研磨材M:WA#1500(株式会社松見製のホワイトアルミナ研磨材)
・ノズル20の移動速度:10m/min
・加工台24の移動速度:20mm/min
・ノズル20の移動幅:150mm
・ノズル20と被処理体Wとの距離:20mm
・噴射圧力:0.15MPa
・研磨材Mの噴射量:約80g/min
【0074】
図9は、実験例1~3によって被処理体Wに形成された穴の形状を示す断面図である。図9(a)に示すように、実験例1で形成された貫通孔は、被処理体Wの表面側に59μmの開口幅を有し、被処理体Wの裏面側に28μmの開口幅を有していた。貫通孔の側壁は、貫通孔の軸線方向を基準として19.8°の角度で傾斜していた。なお、実験例1では、被処理体Wを3回走査することによって被処理体Wに貫通孔が形成された。
【0075】
図9(b)に示すように、実験例2で形成された貫通孔は、被処理体Wの表面側に59μmの開口幅を有し、被処理体Wの裏面側に38μmの開口幅を有していた。貫通孔の側壁は、貫通孔の軸線方向を基準として13.8°の角度で傾斜していた。なお、実験例2では、被処理体Wを2回走査することによって被処理体Wに貫通孔が形成された。
【0076】
図9(c)に示すように、実験例3で形成された貫通孔は、被処理体Wの表面側に59μmの開口幅を有し、被処理体Wの裏面側に50.8μmの開口幅を有していた。貫通孔の側壁は、貫通孔の軸線方向を基準として4.4°の角度で傾斜していた。なお、実験例3では、被処理体Wを2回走査することによって被処理体Wに貫通孔が形成された。
【0077】
実験例1~3から、ロッド47の側面47aと軸線Zとのなす角度θを変化させることによって、スペースを画成する側壁の角度を調整することができることが確認された。また、実験例1では、被処理体Wを3回走査することによって貫通孔が形成されたのに対し、実験例2及び3では、被処理体Wを2回走査することによって貫通孔が形成された。この結果から、角度θを変化させることによって、穴あけ加工の効率も変化することが確認された。
【符号の説明】
【0078】
1…ブラスト加工システム、10…ブラスト加工装置、12…容器、20…ノズル、22…供給配管、24…加工台、31…基部、32…本体部、33…先端部、34…導入管、34j…ジョイント、35…導入路、36…貫通孔(導入口)、37…天板、38…上部本体、38s…拡散室、39…拡散部、40…下部本体、41…拡散板、42…枠体、43…複数の開口、44…筒体、44s…バッファ室、45…連結部材、46…筒体、47…ロッド、47a…側面、48…ノズルチップ、48a…内周面、48b…傾斜面、49…噴射口、50…研磨材供給装置、62…分級器、70…集塵機、74…隙間(通路)、F…ドライフィルム、M…研磨材、W…被処理体、Z…軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10