(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】イヤーマフ
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20221101BHJP
A61F 11/14 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G10K11/16 110
A61F11/14 100
(21)【出願番号】P 2019050743
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】上村 真史
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-087248(JP,A)
【文献】特開2017-112446(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105213104(CN,A)
【文献】特開2016-220085(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181008(JP,U)
【文献】実開昭62-021016(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00-13/00
A61F 9/00-11/14
H04R 1/10
H04R 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に取り付けられ使用時に頭部に当接させる当接面を有する環状のパッド部と、
前記パッド部において、内周面と外周面とを繋いで前記当接面に開口し、前記本体部に向け周方向に位置がずれるように形成された
複数の切り込み部
を有し、
複数の前記切り込み部は、隣接する2つの前記切り込み部の組として、一方の前記本体部の側の最奥位置と他方の前記当接面における開口位置とが同じ周方向位置にある組を含むイヤーマフ。
【請求項2】
前記本体部を左右の耳用に一対有すると共に一対の前記本体部を連結するバンド部を有し、
前記頭部に装着した状態で、バンド部の弾性反発力により前記本体部が前記頭部の側に付勢されて前記パッド部の前記切り込み部の隙間が閉じることを特徴とする請求項1記載のイヤーマフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤーマフに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者の聴覚を環境騒音から保護する用途で用いられる聴覚保護装置としてのイヤーマフが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたイヤーマフは、外部の騒音を遮断する装置として用いられる。一方で、イヤーマフは、その優れた遮音性から、イヤホンを耳介に装着して再生音を聴取する際の外部騒音の遮断装置として用いられる場合がある。すなわち、耳介に付けたイヤホンを覆うようにイヤーマフを装着する。
これにより、外部の騒音を遮断してイヤホンの再生音を良好に聴取できる。
【0005】
しかしながら、イヤホンが音楽再生装置などの外部機器と接続するためのケーブルを有する有線タイプの場合、ケーブルを、イヤーマフのパッド部と頭部との間から外部に引き出す必要がある。
そのため、パッド部と頭部との間に隙間ができてイヤーマフとしての遮音性が大きく低下し、外部の騒音がパッド部の内側に進入してイヤホンの音声が聴き取りにくくなったり、イヤホンの音声が隙間から外部に漏出するなどの不具合が生じ改善が望まれている。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、有線のイヤホンを耳介に付けた状態で装着しても遮音性が良好に維持されるイヤーマフを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1)の構成を有する。
1)本体部1と、
前記本体部1に取り付けられ使用時に頭部に当接させる当接面を有する環状のパッド部と、
前記パッド部において、内周面と外周面とを繋いで前記当接面に開口し、前記本体部に向け周方向に位置がずれるように形成された切り込み部を有するイヤーマフである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有線のイヤホンを耳介に付けた状態で装着しても遮音性が良好に維持される、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るイヤーマフの実施例であるイヤーマフ51を、有線のイヤホンを耳介に付けた頭部Hに装着した状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、イヤーマフ51におけるパッド部3を取り付けた本体部1の平面図である。
【
図3】
図3は、イヤーマフ51におけるパッド部3を取り付けた本体部1の下面図である。
【
図5】
図5は、パッド部3に形成したスリット31にイヤホン8のケーブル82を通す作業を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、耳介にイヤホン8を付けた状態でイヤーマフを装着した状態を示す一部断面とした部分前面図である。
【
図7】
図7は、パッド部3の製造方法の例を示す斜視的組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係るイヤーマフを、実施例のイヤーマフ51により説明する。
【0011】
(実施例)
図1は、使用者の耳介E(
図6参照)にケーブル82を有する有線のイヤホン8(
図5及び
図6参照)を付けた状態で、頭部Hにイヤーマフ51を装着した状態を示す斜視図である。以下の説明における前後左右上下の各方向を、
図1に示された矢印によって規定する。
【0012】
イヤーマフ51は、左右一対の本体部1,一対の本体部1を連結するバンド部2,及び一対の本体部1それぞれに取り付けられたパッド部3を有する。
図1において、本体部1は左側のみが示されている。また、
図1では、使用者の頭部Hにおける耳介E(
図6参照)には、有線のカナル型のイヤホン8が付けられており、イヤホン8の装着状態で耳介Eを覆うようにイヤーマフ51は装着されている。
【0013】
図5に示されるように、イヤホン8は、本体部81と、本体部1の先端に取り付けられたイヤピース83と、本体部81から延出するケーブル82と、を有する。
イヤホン8のケーブル82は、パッド部3に形成された
図2に示される切り込み部31を通して外部に引き出されている。切り込み部31の詳細は後述する。
【0014】
パッド部3は、クロロプレンゴムなどで形成されたスポンジ体からなるクッション部材を有し、周知のパッド部と同様に圧縮弾性をもって肌当たりが軟らかくなるように形成されている。
パッド部3は、クッション部を、樹脂シートなどのカバーで包むようにして形成してもよい。
【0015】
図2は、パッド部3を取り付けた本体部1を、イヤーマフ51を頭部Hに装着した状態で頭部Hの側となる側から見た平面図である。
図3はパッド部3を取り付けた本体部1の下面図である。
本体部1及びパッド部3は、上下に長い長丸形状に形成されている。具体的には、
図2において上下に離隔した位置CT1及び位置CT2をそれぞれ中心とする半円状の上端部分P1及び下端部分P2と、上端部分P1と下端部分P2とを繋ぐ中間部分P3とを有する。
【0016】
パッド部3は、下端部分P2において、径方向に放射状に延びる複数の切り込み部31として切り込み部31a,31b,31cを有する。
切り込み部31bは、パッド部3の表面位置において、位置CT2を通り上下方向の真下に延びる半径線Lb上に形成されている。
切り込み部31aは、パッド部3の表面位置において、切り込み部31bに対し後方に所定角度の角度θ1だけ傾いた半径線La上に形成されている。
切り込み部31cは、パッド部3の表面位置において、切り込み部31bに対し前方に所定角度の角度θ2だけ傾いた半径線Lc上に形成されている。
所定角度の角度θ1及び角度θ2は自由に設定でき、例えば、30°、45°などとされる。
角度θ1と角度θ2とは、等しくてもよく、等しくなくてもよい。
複数の切り込み部31は、パッド部3の表面の位置において、位置CT2を通り、上下方向の真下方向に延びる半径線Lbに対し、すべてが後方及び前方のいずれか一方に配置されていてもよく、いずれか1つが後方及び前方のいずれか一方に配置されていてもよい。
複数の切り込み部31は、パッド部3の内周面36と外周面37とを繋ぎ、表面32に開口するように形成されている。この表面32は、イヤーマフ51を頭部Hに装着した状態で頭部Hに当接する当接面である。
【0017】
パッド部3は、パッドユニット33,34,35を有する。
パッドユニット33は、切り込み部31aと切り込み部31bとの間の部分である。パッドユニット34は、切り込み部31bと切り込み部31cとの間の部分である。パッドユニット35は、パッドユニット33と離隔対向して切り込み部31aを形成すると共に、パッドユニット34と離隔対向して切り込み部31cを形成する部分である。
【0018】
切り込み部31a~31cは、開口するパッド部3の表面32から本体部1に向かうに従って、
図2の位置CT2を中心として同じ周方向にずれるように形成されている。
例えば、切り込み部31a~31cは、
図3に示されるように、本体部1に近づくに従って位置CT2を中心とする反時計回りに、周方向にずれるように形成されている。ずれ量は、1つの切り込み部31aの本体部1側の最奥位置Eaが、隣接する切り込み部31bの表面32の開口位置Stbと概ね一致するように設定されている。
【0019】
図4は、
図2に示されるパッド部3の下端部分P2の周方向範囲となる角度位置α1から角度位置α2までの範囲αを、平面展開した図である。
図4に示される平面展開した状態で、切り込み部31aは、開口位置Staから最奥位置Eaまで、位置CT2を通る軸線CL2に対して傾斜した直線状に形成されている。
切り込み部31aの最奥位置Eaは、範囲αの中央である角度位置αcにある。一方で、角度位置αcは、切り込み部31aに隣接する切り込み部31bの開口位置Stbとなっている。切り込み部31bの最奥位置Ebの角度位置α3は、切り込み部31bに隣接する切り込み部31cの開口位置Stcの位置となっている。
【0020】
図5は、切り込み部31a~31cを有するパッド部3が取り付けられた本体部1の斜視図であり、耳介Eに付けるイヤホン8のケーブル82を、任意の切り込み部31bに通す作業を示している。この作業は、イヤホン8を耳介Eに付ける前に行ってもよいし、耳介Eに取り付けた後のイヤーマフ51を装着する前又は後に行ってもよい。
【0021】
図5に示される例では、使用者が、ケーブル82を切り込み部31bに入れ込み、切り込み部31bの延在方向に沿って矢印DRaのように前方に移動させる作業を示している。
具体的な作業の例は次のようになる。
【0022】
まず使用者は、イヤホン8を、ケーブル82が概ね下方に垂れ下がる状態でイヤピース83を外耳道に挿入すると共に本体部81を耳甲介に宛がうことで耳介Eに付ける。
【0023】
次いで、使用者は、イヤーマフ51を、耳介Eがパッド部3の孔3a内に進入するように頭部Hに宛がう。この状態でケーブル82はパッド部3と頭部Hとに挟まれているので、使用者は、ケーブル82を指で摘み、摘んだケーブル82をパッド部3を本体部1側に軽く付勢しつつ矢印DRbのように前方又は後方に動かす。
【0024】
このように、ケーブル82を、パッド部3に押し付けながら動かすと、ケーブル82は、切り込み部31a~31cのいずれかの開口位置Sta~Stcに達したときに、矢印DRaのようにその切り込み部に進入する。
図5では、ケーブル82が切り込み部31bに進入した状態が示されている。
切り込み部31a~31cにおける切り込みの幅は、ケーブル82の外形の大きさに対しほぼ同じか少し狭く設定されている。さらに、イヤーマフ51が装着された状態でパッド部3は、
図6に示されるバンド部2の弾性反発力に基づく付勢力Faによって頭部H側に付勢されて圧縮されている。そのため、切り込み部31bに進入したケーブル82は、切り込み部31bを形成するパッドユニット33とパッドユニット34とに挟まれて保持される。
【0025】
図6は、耳介Eにイヤホン8を取り付け、さらにイヤーマフ51を装着した状態を示す一部断面とした部分前面図である。
図6において、イヤホン8の本体部81から延出したケーブル82は、切り込み部31cの途中の位置から外部の下方に引き出されている。
【0026】
既述のように、イヤーマフ51の装着状態で、本体部1及びパッド部3は、バンド部2からの付勢力Faによって頭部Hに押し付けられている。
そのため、パッド部3は厚さ方向に圧縮されており、この圧縮された状態で各切り込み部31a~31cが傾斜して形成されているために各切り込み部31a~31cは実質的に閉じた状態となっている。
具体的には、切り込み部31a,31b,31cをそれぞれ形成するパッドユニット35及びパッドユニット33,パッドユニット33及びパッドユニット34,パッドユニット34及びパッドユニット35の各傾斜面同士が、接触した状態で厚さ方向に圧縮されている。
従って、ケーブル82は、切り込み部31cの途中で切り込み部31cの両側のパッドユニット33及びパッドユニット34にほぼ隙間なく挟まれて保持される。
【0027】
これにより、イヤーマフ51は、切り込み部31を有するものの、頭部Hへの装着状態で、切り込み部31の隙間は実質的に閉じて遮音性が確保される。そのため、外部から騒音が内部に進入してイヤホン8の再生音の聴取に影響が生じることはなく、内部のイヤホン8の再生音は、実質的に外部に漏出しない。
すなわち、使用者は、ケーブル82を有するイヤホン8を耳介Eに付けた状態でイヤーマフ51を装着しても、イヤホン8の再生音を良好に聴取できる。
【0028】
既述のように、切り込み部31a~31cは、下端部分P2の周方向において、例えば切り込み部31aの最奥位置Eaが隣接する切り込み部31bの開口位置Stbと一致している。これにより、ケーブル82の周方向の引き出し位置を、切り込み部31aの開口位置Staから、切り込み部31cの最奥位置Ecまで連続した周方向位置に設定できる。すなわち、ケーブル82の引き出し方向を、切り込み部31が形成されている連続した弧状の周方向範囲の任意の位置に設定できる。これにより、イヤホン8とイヤーマフ51とを組み合わせた装着態様において、取り扱い及び装着性が向上する。
複数の切り込み部31は、隣接する2つの切り込み部の組として、このような一方の切り込み部の最奥位置が隣接する他方の切り込み部の開口位置と、周方向の位置として一致している組を含んでいればよい。
この組を構成する隣接する2つの切り込み部が形成されている連続した弧状の周方向範囲において、ケーブル82の引き出し方向を任意の周方向位置に設定できる。
また、隣接する2つの切り込み部の組は、周方向にそれぞれの一部が重なって形成されていてもよい。すなわち、一方の切り込み部の最奥位置に対し他方の切り込み部の開口位置が、一方の切り込み部の開口位置側にあってもよい。
この場合も、隣接する2つの切り込み部が形成されている連続した弧状の周方向範囲において、ケーブル82の引き出し方向を任意の周方向位置に設定できる。
【0029】
図7は、パッド部3の製造方法の例を示す斜視的組立図である。
本体部1は、例えば、底部1a及び底部1aの周囲に立設する環状の壁部1bを有するように形成されている。
図7において、切り込み部31a~31cの形成位置は、壁部1bの天面のパッド取り付け面1b1において、
図2を参照して説明した形成位置に対し、周方向にずれた位置に設定されている。
切り込み部31が3つの場合、3つのパッドユニット33,34,35を形成しておき、それぞれ壁部1bのパッド取り付け面1b1の3つの領域ARb,ARc,ARaに接着などによって互いに離隔して切り込み部31を形成するように取り付ける。
パッドユニット33,34,35は、表面32側の開口部において鋭角となる先端に、面取り部33a,34a,35aが形成されている。面取り部33a,34a,35aは、パッドユニット33,34,35の先端部の損傷を防止すると共に、使用者がケーブル82を切り込み部31に進入させる際のガイドとなる。
【0030】
以上詳述した実施例は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0031】
切り込み部31の数、間隔、ずれる方向は限定されない。
本体部1及びパッド部3の形状は長丸形状に限定されない。真円状、楕円状、角形状などであってもよい。
イヤーマフ51は、バンド部2が、頭頂部に掛け渡されるものでなくてもよく、首の後ろに掛け渡されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 本体部
1a 底部
1b 壁部
1b1 パッド取り付け面
2 バンド部
3 パッド部
3a 孔
31,31a,31b,31c 切り込み部
32 表面
33,34,35 パッドユニット
33a,34a,35a 面取り部
36 内周面
37 外周面
8 イヤホン
81 本体部
82 ケーブル
51 イヤーマフ
CL2 軸線
CT1,CT2 位置
E 耳介
Ea,Eb 最奥位置
H 頭部
La,Lb,Lc 半径線
P1 上端部分
P2 下端部分
P3 中間部分
Sta,Stb,Stc 開口位置
α 範囲
α1,α2,αc 角度位置
θ1,θ2 角度