(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221101BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221101BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 658E
(21)【出願番号】P 2019054196
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 潤一郎
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-198837(JP,A)
【文献】特開2004-253654(JP,A)
【文献】特開昭53-072485(JP,A)
【文献】特開2016-174067(JP,A)
【文献】特開2009-212172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上に、Siを構成元素として含む材料からなる第1絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第1レジストマスクを形成する第2工程と、
前記第1レジストマスクを除去する第3工程と、
前記第1絶縁膜上に、Siを構成元素として含む材料からなる第2絶縁膜を形成する第4工程と、
前記第2絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第2レジストマスクを形成する第5工程と、
前記第2レジストマスクの開口に露出する前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜をウェットエッチングする第6工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程後、前記第3工程前に、前記第1レジストマスクの開口に露出する前記第1絶縁膜をウェットエッチングにより除去して前記半導体層表面を露出させ、その露出させた前記半導体層上、および前記第1レジストマスク上に、第1金属膜を形成する工程をさらに有し、
前記第3工程は、前記第1レジストマスクを除去することで、前記第1レジストマスク上の前記第1金属膜を除去し、前記半導体層上の前記第1金属膜を残す工程である、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第6工程後、前記第2レジストマスク上、および前記第2レジストマスクの開口底面に、第2金属膜を形成し、前記第2レジストマスクを除去することで、前記第2レジストマスク上の前記第2金属膜を除去し、前記第2レジストマスクの開口底面の前記第2金属膜を残す工程をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜は、SiO
2 からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第4工程は、前記第2絶縁膜をALD法により形成する工程である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第4工程後、前記第5工程前に、前記第2絶縁膜表面をHMDS処理する工程をさらに有する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体層上に、Siを構成元素として含まない材料からなる第1絶縁膜を形成する第1工程と、
前記第1絶縁膜上に、Siを構成元素として含む材料からなる第2絶縁膜を形成する第2工程と、
前記第2絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第1レジストマスクを形成する第3工程と、
前記第1レジストマスクを除去する第4工程と、
前記第2絶縁膜上に、Siを構成元素として含む材料からなる第3絶縁膜を形成する第5工程と、
前記第3絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第2レジストマスクを形成する第6工程と、
前記第2レジストマスクの開口に露出する前記第1絶縁膜、前記第2絶縁膜、および前記第3絶縁膜をウェットエッチングする第7工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程後、前記第4工程前に、前記第1レジストマスクの開口に露出する前記第1絶縁膜をウェットエッチングにより除去して前記半導体層表面を露出させ、その露出させた前記半導体層上、および前記第1レジストマスク上に、第1金属膜を形成する工程をさらに有し、
前記第4工程は、前記第1レジストマスクを除去することで、前記第1レジストマスク上の前記第1金属膜を除去し、前記半導体層上の前記第1金属膜を残す工程である、
ことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第7工程後、前記第2レジストマスク上、および前記第2レジストマスクの開口底面に、第2金属膜を形成し、前記第2レジストマスクを除去することで、前記第2レジストマスク上の前記第2金属膜を除去し、前記第2レジストマスクの開口底面の前記第2金属膜を残す工程をさらに有する、
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1絶縁膜は、Al
2 O
3 からなることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2絶縁膜および前記第3絶縁膜は、SiO
2 からなることを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程は、前記第2絶縁膜をALD法により形成する工程であり、
前記第5工程は、前記第3絶縁膜をALD法により形成する工程である、
ことを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第5工程後、前記第6工程前に、前記第3絶縁膜表面をHMDS処理する工程をさらに有する、ことを特徴とする請求項7ないし請求項12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III 族窒化物半導体からなる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III 族窒化物半導体からなる半導体装置の製造においては、ゲート絶縁膜のパターニング、トレンチの形成、電極の成膜など、多数のレジストマスク形成・剥離工程を経る必要がある。
【0003】
特許文献1には、トレンチゲート型の縦型HFETが記載されている。縦型HFETは、GaN基板上に、n- -GaNからなるドリフト層、p-GaN層、n+ -GaNからなるキャップ層が順に積層された積層体を有する。また、キャップ層、p-GaN層を貫通してドリフト層に達するトレンチと、トレンチ底面、側面、キャップ層表面に連続して膜状に設けられた再成長層とを有し、再成長層はi-GaNからなる電子走行層と、AlGaNからなる電子供給層とで構成されることが記載されている。また、再成長層およびキャップ層を貫通してp-GaN層に達する溝を設け、その溝の底面にp部電極を設け、p部電極上および再成長層上にソース電極を設けることが記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、p部電極を形成するための溝は、レジストマスクを用いてドライエッチングにより形成し、その後、レジストマスクを除去し、再度レジストマスクを設けて蒸着、リフトオフによりp部電極を形成することが記載されている。その後、さらにレジストマスクを設けて、蒸着、リフトオフによってp部電極上および再成長層上にソース電極を形成することが記載されている。このように、レジストマスクの形成・剥離を複数回繰り返すことが記載されている。
【0005】
特許文献2には、絶縁膜の表面に対して疎水化表面処理などをせずに、絶縁膜上にレジストマスクを形成することで、絶縁膜とレジストマスクの密着性を抑制することが記載されている。そして、レジストマスクの開口に露出する絶縁膜をウェットエッチングして除去する際に、側面から絶縁膜とレジストマスクの隙間にエッチャントを入り込ませることで、絶縁膜を薄くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-82397号公報
【文献】特開2016-162786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体装置の製造においては、絶縁膜上にレジストマスクを形成し、そのレジストマスクを用いてドライエッチングやウェットエッチングなどをし、レジストマスクを剥離した後に、再度、絶縁膜上にレジストマスクを形成して、そのレジストマスクを用いて絶縁膜をウェットエッチングする工程を有する場合がある。再度のレジストマスクを用いたウェットエッチングでは、レジストマスクと絶縁膜との間にエッチャントが侵入し、絶縁膜が異常にサイドエッチングされてしまい、残すべき部分もエッチングされてしまう問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、半導体装置の製造方法において、絶縁膜上に再度レジストマスクを形成して絶縁膜をウェットエッチングをする場合に、異常なサイドエッチングを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、半導体層上に、Siを構成元素として含む材料からなる第1絶縁膜を形成する第1工程と、第1絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第1レジストマスクを形成する第2工程と、第1レジストマスクを除去する第3工程と、第1絶縁膜上に、Siを構成元素として含む材料からなる第2絶縁膜を形成する第4工程と、第2絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第2レジストマスクを形成する第5工程と、第2レジストマスクの開口に露出する第1絶縁膜および第2絶縁膜をウェットエッチングする第6工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0010】
本発明の第1態様において、第2工程後、第3工程前に、第1レジストマスクの開口に露出する第1絶縁膜をウェットエッチングにより除去して半導体層表面を露出させ、その露出させた半導体層上、および第1レジストマスク上に、第1金属膜を形成する工程をさらに有し、第3工程は、第1レジストマスクを除去することで、第1レジストマスク上の第1金属膜を除去し、半導体層上の第1金属膜を残す工程であってもよい。
【0011】
また、本発明の第1態様において、第6工程後、第2レジストマスク上、および第2レジストマスクの開口底面に、第2金属膜を形成し、第2レジストマスクを除去することで、第2レジストマスク上の第2金属膜を除去し、第2レジストマスクの開口底面の第2金属膜を残す工程をさらに有していてもよい。
【0012】
また、本発明の第1態様において、第1絶縁膜および第2絶縁膜は、SiO2 としてもよく、第4工程は、第2絶縁膜をALD法により形成する工程としてもよい。また、第4工程後、第5工程前に、第2絶縁膜表面をHMDS処理する工程をさらに有していてもよい。
【0013】
本発明の第2態様は、半導体層上に、Siを構成元素として含まない材料からなる第1絶縁膜を形成する第1工程と、第1絶縁膜上に、Siを構成元素として含む材料からなる第2絶縁膜を形成する第2工程と、第2絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第1レジストマスクを形成する第3工程と、第1レジストマスクを除去する第4工程と、第2絶縁膜上に、Siを構成元素として含む材料からなる第3絶縁膜を形成する第5工程と、第3絶縁膜上に、レジストからなり、開口を有した第2レジストマスクを形成する第6工程と、第2レジストマスクの開口に露出する第1絶縁膜、第2絶縁膜、および第3絶縁膜をウェットエッチングする第7工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0014】
本発明の第2態様において、第3工程後、第4工程前に、第1レジストマスクの開口に露出する第1絶縁膜をウェットエッチングにより除去して半導体層表面を露出させ、その露出させた半導体層上、および第1レジストマスク上に、第1金属膜を形成する工程をさらに有し、第4工程は、第1レジストマスクを除去することで、第1レジストマスク上の第1金属膜を除去し、半導体層上の第1金属膜を残す工程であってもよい。
【0015】
また本発明の第2態様において、第7工程後、第2レジストマスク上、および第2レジストマスクの開口底面に、第2金属膜を形成し、第2レジストマスクを除去することで、第2レジストマスク上の第2金属膜を除去し、第2レジストマスクの開口底面の第2金属膜を残す工程をさらに有していてもよい。
【0016】
また本発明の第2態様において、第1絶縁膜は、Al2 O3 であってもよく、第2絶縁膜および第3絶縁膜は、SiO2 であってもよい。また、第2工程は、第2絶縁膜をALD法により形成する工程であり、第5工程は、第3絶縁膜をALD法により形成する工程であってもよい。また、第5工程後、第6工程前に、第3絶縁膜表面をHMDS処理する工程をさらに有していてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、絶縁膜に対する第2レジストマスクの密着性を向上させることができ、絶縁膜の異常なサイドエッチングを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
【
図3】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
【
図4】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
【
図5】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
【
図6】実施例1の半導体装置の製造工程を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限るものではない。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1の半導体装置の構成を示した図である。
図1のように、実施例1の半導体装置は、トレンチゲート型の縦型FETであり、基板110と、第1のn層120と、p層130と、第2のn層140と、トレンチT1と、リセスR1と、絶縁膜F1と、ゲート電極G1と、ソース電極S1と、ボディ電極B1と、ドレイン電極D1と、を有している。絶縁膜F1は、本発明の第1絶縁膜および第2絶縁膜に相当する。
【0021】
基板110は、c面を主面とするSiドープのn-GaNからなる厚さ300μmの平板状の基板である。Si濃度は、1×1018/cm3 である。n-GaN以外にも、導電性を有し、III 族窒化物半導体の成長基板となる任意の材料の基板を用いることができる。たとえば、ZnO、Siなどを用いることも可能である。ただし、格子整合性の点から、本実施例のようにGaN基板を用いることが望ましい。
【0022】
第1のn層120は、基板110上(基板110の一方の表面100a)に積層され、c面を主面とするSiドープのn-GaN層である。第1のn層120の厚さは10μm、Si濃度は1×1016/cm3 である。
【0023】
p層130は、第1のn層120上に積層され、c面を主面とするMgドープのp-GaN層である。p層130の厚さは1.0μm、Mg濃度は2×1018/cm3 である。
【0024】
第2のn層140は、p層130上に積層され、c面を主面とするSiドープのn-GaN層である。第2のn層140の厚さは0.2μm、Si濃度は1×1018/cm3 である。
【0025】
トレンチT1は、第2のn層140表面の所定位置に形成された溝であり、第2のn層140およびp層130を貫通して第1のn層120に達する深さである。トレンチT1の底面T1aには第1のn層120が露出し、トレンチT1の側面T1bには第1のn層120、p層130、第2のn層140が露出する。このトレンチT1の側面T1bに露出するp層130の側面が、実施例1のFETのチャネルとして動作する領域である。また、トレンチT1の側面T1bはa面であり、そのa面には微細な凹凸が設けられている。この凹凸によりトレンチT1の側面T1bの面積が広くなり、これにより半導体装置の電気的特性の向上を図っている。
【0026】
絶縁膜F1は、トレンチT1の底面T1a、側面T1b、第2のn層140表面(ソース電極S1の形成領域は除く)にわたって連続して膜状に設けられている。絶縁膜F1は、ゲート絶縁膜と、パッシベーション膜とを兼ねている。パッシベーション膜は、第2のn層140表面での電流リークを抑制するために設けるものである。
【0027】
絶縁膜F1は、Al2 O3 からなる第1絶縁膜F1A、SiO2 からなる第2絶縁膜F1B、SiO2 からなる第3絶縁膜F1Cを順に積層した3層からなる。第2絶縁膜F1Bおよび第3絶縁膜F1Cは、ボディ電極B1およびソース電極S1の形成時に用いるレジストマスクとの密着性を高めるために必要となる層である。詳しくは、後述の製造方法の段において説明する。
【0028】
第1絶縁膜F1Aの厚さは100nmである。第1絶縁膜F1Aの厚さはこれに限らず、ゲート絶縁膜およびパッシベーション膜として必要な厚さであれば任意である。第2絶縁膜F1Bおよび第3絶縁膜F1Cの厚さは10nmである。第2絶縁膜F1Bおよび第3絶縁膜F1Cの厚さはこれに限らないが、2~20nmであることが好ましい。この範囲であれば、被覆性が十分となり、絶縁膜F1のウェットエッチングによるパターニングの精度を向上させることができる。より好ましくは5~15nmである。
【0029】
第1絶縁膜F1Aの材料には、Al2 O3 以外にも、ZrON、AlON、ZrO2 、HfO2 、HfON、SiOF、SiOC、SiO2 などの絶縁材料を用いることができる。第1絶縁膜F1Aは複数の層により構成されていてもよい。第1絶縁膜F1Aの最表層としてSiを構成元素として含む材料を用いる場合には、第2絶縁膜F1Bは設ける必要はない。その理由は、製造方法の段において説明する。
【0030】
第2絶縁膜F1Bおよび第3絶縁膜F1Cの材料には、SiO2 以外にも、Siを構成元素として含む任意の絶縁材料を用いることができ、たとえば、SiOF、SiOC、SiONを用いることができる。特に実施例1のようにSiO2 が好ましい。段差被覆性に優れたALD法を用いて形成することができるためである。
【0031】
なお、実施例1では、絶縁膜F1はゲート絶縁膜とパッシベーション膜を兼ねているが、パッシベーション膜としての役割のみとし、ゲート絶縁膜を別途設けてもよい。
【0032】
ゲート電極G1は、絶縁膜F1を介して、トレンチT1の底面T1a、側面T1b、トレンチT1の上面に連続して膜状に設けられている。ゲート電極G1は、Alからなる。
【0033】
リセスR1は、第2のn層140表面の所定位置に設けられた溝であり、第2のn層140を貫通してp層130に達する深さである。リセスR1の底面にはp層130が露出し、側面にはp層130、第2のn層140が露出する。リセスR1の側面はm面である。
【0034】
ボディ電極B1は、リセスR1の底面に設けられている。ボディ電極B1は、Pdからなる。
【0035】
ソース電極S1は、ボディ電極B1上、第2のn層140上にわたって連続的に設けられている。ソース電極S1は、Ti/Alからなる。
【0036】
ドレイン電極D1は、基板110の裏面(第1のn層120が設けられている側とは反対側の面100b)に設けられている。ドレイン電極D1は、ソース電極S1と同一材料からなり、Ti/Alからなる。
【0037】
次に、実施例1の半導体装置の製造方法について、
図2~6を参照に説明する。なお、
図3~6では、リセスR1近傍の領域を示している。
【0038】
まず、c面を主面とするn-GaNからなる基板110を用意し、MOCVD法によって、第1のn層120、p層130、第2のn層140を順に形成する(
図2(a)参照)。MOCVD法において、窒素源は、アンモニア、Ga源は、トリメチルガリウム(Ga(CH
3 )
3 :TMG)、In源は、トリメチルインジウム(In(CH
3 )
3 :TMI)、Al源は、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3 )
3 :TMA)である。また、n型ドーパントガスは、シラン(SiH
4 )、p型ドーパントガスは、シクロペンタジエニルマグネシウム(Mg(C
5 H
5 )
2 :CP
2 Mg)である。キャリアガスは水素や窒素である。
【0039】
次に、第2のn層140表面の所定位置をドライエッチングすることで、トレンチT1を形成する(
図2(b)参照)。ドライエッチングは、第1のn層120が露出するまで行う。ドライエッチングには、塩素系ガスを用いる。たとえば、Cl
2 、SiCl
4 、CCl
4 である。また、ドライエッチングは、ICPエッチングなど任意の方式を用いることができる。
【0040】
次に、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液を用いてトレンチT1の側面T1bのウェットエッチングを行う。TMAH水溶液は、III 族窒化物半導体のc面以外をウェットエッチングすることが可能であり、ウェットエッチングはm面が露出するまで進行する。これによりドライエッチングによるダメージ層を除去することができる。また、側面T1bを第2のn層140表面に対して垂直にすることができ、耐圧の向上を図ることができる。また、トレンチT1の側面T1bはa面である。そのため、トレンチT1の側面T1bは、m面で構成されるノコギリ歯状のギザギザにエッチングされる。ノコギリ歯状となることでトレンチT1の側面T1bの面積が増え、半導体装置の電気的特性が向上する。ウェットエッチング溶液には、TMAH以外にも、NaOH(水酸化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、H3 PO4 (リン酸)などを用いることができる。
【0041】
次に、第2のn層140表面の所定位置をドライエッチングすることで、リセスR1を形成する(
図2(c)参照)。エッチングは、p層130が露出するまで行う。エッチングガスは、トレンチT1の形成時と同様である。
【0042】
なお、実施例1では、トレンチT1の形成後にリセスR1を形成しているが、先にリセスR1を形成し、後にトレンチT1を形成してもよい。
【0043】
また、リセスR1の形成後、リセスR1の側面をウェットエッチングしてもよい。ドライエッチングによるダメージ層を除去することができ、リセスR1のパターンをより高精度に形成することができる。この時のウェットエッチング溶液は、トレンチT1の側面T1bのウェットエッチング時と同様である。
【0044】
次に、窒素雰囲気で加熱することにより、p層130のp型化を行う。リセスR1の底面により露出したp層130から効率的に水素が抜け出すため、効率的にp層130中のMgの活性化を行うことができる。
【0045】
次に、トレンチT1の底面T1a、側面T1b、および第2のn層140表面に連続して、ALD法によってAl
2 O
3 からなる第1絶縁膜F1Aを形成する(
図3(a)参照)。ALD法を用いることで、トレンチT1による段差があっても均一な厚さに第1絶縁膜F1Aを形成することができる。なお、実施例1では段差被覆性の高さからALD法を用いて第1絶縁膜F1Aを形成しているが、スパッタやCVD法などによって形成してもよい。
【0046】
次に、第1絶縁膜F1A上に、ALD法によってSiO
2からなる第2絶縁膜F1Bを形成する(
図3(b)参照)。この第2絶縁膜F1Bは、次工程で形成する第1レジストマスクRM1との密着性を向上させるために設けるものである。第1絶縁膜F1Aは、Al
2O
3からなり、構成元素としてSiを含まないため、
HMDS処理をしてもレジストとの密着性が低い。そこで、構成元素としてSiを含む材料であるSiO
2からなる第2絶縁膜F1Bを間に挟むことで、第1レジストマスクRM1との密着性向上を図っている。なお、第1絶縁膜F1Aの材料を、構成元素としてSiを含む材料とする場合には、第1絶縁膜F1Aと第1レジストマスクRM1との密着性は十分であるため、第2絶縁膜F1Bの形成を省略することができる。
【0047】
第2絶縁膜F1Bの形成にALD法を用いるのは、第1絶縁膜F1Aの全面を均一に覆うように形成するためである。第2絶縁膜F1Bが均一かつ十分な厚さに形成されていないと、第1絶縁膜F1A表面の一部に第2絶縁膜F1Bによって覆われていない領域が存在してしまうおそれがある。すると、次工程で形成する第1レジストマスクRM1との密着性の低い領域が生じ、後工程の第1絶縁膜F1Aおよび第2絶縁膜F1Bのパターニングが精度よくできないおそれがある。このような理由から、第2絶縁膜F1Bの厚さは2~20nmが好ましく、より好ましくは5~15nmである。
【0048】
なお、第2絶縁膜F1Bは、第1絶縁膜F1Aの成膜後に連続的に成膜してもよい。また、実施例1では段差被覆性の高さからALD法を用いて第2絶縁膜F1Bを形成しているが、スパッタやCVD法などによって形成してもよい。
【0049】
次に、第2絶縁膜F1B表面を
HMDS処理し、第2絶縁膜F1B上に、フォトリソグラフィにより第1レジストマスクRM1を形成する(
図4(a)参照)。第1レジストマスクRM1は、平面視においてリセスR1およびその近傍を含むように開口したパターンである。第1レジストマスクRM1には、ポジ型のフォトレジストを用いる。
【0050】
次に、第1レジストマスクRM1の開口に露出する第1絶縁膜F1A、および第2絶縁膜F1Bをウェットエッチングにより除去し、リセスR1の底面(p層130)、側面および第2のn層140表面のうちリセスR1近傍の領域を露出させる(
図4(b)参照)。ウェットエッチング液には、たとえばフッ酸(HF)を用いる。
【0051】
次に、第1レジストマスクRM1上、および第1レジストマスクRM1の開口底面(リセスR1底面、側面、n層140表面のうちリセスR1近傍の領域)に、ボディ電極B1となる第1金属膜M1を形成する(
図4(c)参照)。第1金属膜M1は、蒸着やスパッタにより形成する。
【0052】
次に、第1レジストマスクRM1を剥離液を用いて除去し、なおも残存する第1レジストマスクRM1を酸素プラズマを用いたアッシングにより除去する。第1レジストマスクRM1上の第1金属膜M1は除去され、第1レジストマスクRM1の開口底面に形成された第1金属膜M1は残される。このようにして、第1金属膜M1をリフトオフ法によりパターニングし、ボディ電極B1を形成する(
図4(d)参照)。
【0053】
次に、ボディ電極B1上および第2絶縁膜F1B上に連続して、ALD法によってSiO
2 からなる第3絶縁膜F1Cを形成する(
図5参照)。
【0054】
第3絶縁膜F1Cを設けるのは、絶縁膜F1の最表面をレジスト塗布履歴のない状態とするためである。第2絶縁膜F1Bの表面には、第1レジストマスクRM1が形成、剥離されている。そのため、第2絶縁膜F1Bの表面状態が変化しており、第2絶縁膜F1B表面に再度レジストマスクを設けると密着性が悪い。第2絶縁膜F1Bの表面状態は、第2絶縁膜F1B表面をHMDS処理しても回復しない。そこで、第2絶縁膜F1B上に第3絶縁膜F1Cを設けることで、絶縁膜F1の最表面をレジストの塗布履歴のない状態にリセットし、次工程で第3絶縁膜F1C上に第2レジストマスクRM2を形成したときに密着性を良好としている。
【0055】
また、第3絶縁膜F1Cの形成方法としてALD法を用いるのは、第2絶縁膜F1Bの全面を均一に覆うように形成するためである。第3絶縁膜F1Cが均一かつ十分な厚さに形成されていないと、第2絶縁膜F1B表面の一部に第3絶縁膜F1Cによって覆われていない領域が存在してしまうおそれがある。そのような領域は、レジストの塗布履歴のある領域であり、次工程で形成する第2レジストマスクRM2との密着性の低い領域である。そのため、後工程の第1絶縁膜F1A、第2絶縁膜F1Bおよび第3絶縁膜F1Cのウェットエッチングにおいて異常なサイドエッチングが発生する可能性がある。このような理由から、第3絶縁膜F1Cの厚さは2~20nmが好ましく、より好ましくは5~15nmである。
【0056】
次に、第3絶縁膜F1C表面を
HMDS処理し、第3絶縁膜F1C上に、フォトリソグラフィにより第2レジストマスクRM2を形成する(
図6(a)参照)。第2レジストマスクRM2は、平面視においてボディ電極B1およびその近傍を含むように開口したパターンである。第2レジストマスクRM2には、ポジ型のフォトレジストを用いる。
【0057】
次に、第2レジストマスクRM2の開口に露出する第1絶縁膜F1A、第2絶縁膜F1B、および第3絶縁膜F1Cをウェットエッチングにより除去し、ボディ電極B1、および第2のn層140表面のうちボディ電極B1近傍の領域を露出させる(
図6(b)参照)。ウェットエッチング液には、たとえばフッ酸(HF)を用いる。
【0058】
ここで、第2レジストマスクRM2は、レジストの塗布履歴のない第3絶縁膜F1C表面に設けられるため、第3絶縁膜F1Cに対して密着性がよく、ウェットエッチング液が第2レジストマスクRM2と第3絶縁膜F1Cの間に侵入しない。そのため、異常なサイドエッチングが防止され、サイドエッチング量も少なく、第2レジストマスクRM2の開口パターンとほぼ同一のパターンに第1絶縁膜F1A、第2絶縁膜F1Bおよび第3絶縁膜F1Cをウェットエッチングすることができる。
【0059】
次に、第2レジストマスクRM2上、および第2レジストマスクRM2の開口底面(ボディ電極B1上、リセスR1近傍の第2のn層140表面)に、ソース電極S1となる第2金属膜M2を形成する(
図6(c)参照)。第2金属膜M2は、蒸着やスパッタにより形成する。
【0060】
次に、第2レジストマスクRM2を剥離液を用いて除去し、なおも残存する第2レジストマスクRM2を酸素プラズマを用いたアッシングにより除去する。第2レジストマスクRM2上の第2金属膜M2は除去され、第2レジストマスクRM2の開口底面に形成された第2金属膜M2は残される。このようにして、第2金属膜M2をリフトオフ法によりパターニングし、ソース電極S1を形成する(
図6(d)参照)。
【0061】
次に、リフトオフ法を用いてゲート電極G1を形成し、さらに基板110裏面にリフトオフ法を用いてドレイン電極D1を形成する。以上によって、
図1に示す実施例1の半導体装置が製造される。
【0062】
以上、実施例1の半導体装置の製造方法では、レジストの塗布履歴のある第2絶縁膜F1B上に第3絶縁膜F1Cを形成し、表面をレジストの塗布履歴のない状態とし、そのレジストの塗布履歴のない第3絶縁膜F1C上に第2レジストマスクRM2を形成している。そのため、第2レジストマスクRM2を用いて第1絶縁膜F1A、第2絶縁膜F1B、および第3絶縁膜F1Cをウェットエッチングする際に、異常なサイドエッチングが発生するのを防止することができる。
【0063】
次に、実施例1の半導体装置に関する実験結果を説明する。
【0064】
(実験1)
実施例1の半導体装置の製造工程により第2レジストマスクRM2を作製した段階までの試料1を作製した。つまり、第1レジストマスクRM1を除去して第2絶縁膜F1B上に第3絶縁膜F1Cを形成し、さらに第3絶縁膜F1C上に開口を有した第2レジストマスクRM2を形成した段階である。第1絶縁膜F1Aは厚さ100nmのAl2 O3 、第2絶縁膜F1Bおよび第3絶縁膜F1Cは厚さ10nmのSiO2 とした。このようにして作製した試料1について、フッ酸を用いたウェットエッチングを5分間行った。
【0065】
その結果、第2レジストマスクRM2と第3絶縁膜F1Cとの間にウェットエッチング液の侵入は見られず、サイドエッチングは100nmであり、異常なサイドエッチングは見られなかった。
【0066】
(実験2)
実施例1の半導体装置の製造工程により第2絶縁膜F1Bまで作製し、さらに第2絶縁膜F1B上に開口を有した第2レジストマスクRM2を作製した。第1絶縁膜F1A、第2絶縁膜F1Bの材料や厚さは実験1と同様である。このようにして作製した試料2について、フッ酸を用いたウェットエッチングを5分間行った。
【0067】
その結果、第2レジストマスクRM2と第2絶縁膜F1Bとの間にウェットエッチング液の侵入が見られ、第2レジストマスクRM2の浮きやずれが発生した。また、ウェットエッチング液の侵入は、第2レジストマスクRM2の開口から10μm以上の位置まで見られた。このように、第3絶縁膜F1Cを形成していない試料2では、異常なサイドエッチングが発生した。
【0068】
(実験3)
第2絶縁膜F1Bの厚さを10nmから50nmに変更した以外は実験2と同様にして試料3を作製した。
【0069】
その結果、実験2と同様に異常なサイドエッチングが発生した。
【0070】
実験1~3の結果から、異常なサイドエッチングは絶縁膜の厚さの問題ではなく、絶縁膜表面のレジスト塗布履歴の有無が重要であることがわかり、異常なサイドエッチングを防止するためには、レジストの塗布履歴のない絶縁膜上にレジストマスクを形成することが必要であるとわかった。
【0071】
(変形例)
実施例1は、ボディ電極B1、およびソース電極S1の連続形成に本発明を利用するものであるが、本発明はこれに限るものではない。絶縁膜上に再度レジストマスクを形成し、絶縁膜をウェットエッチングする工程を有した半導体装置の製造方法であれば、本発明は適用可能である。
【0072】
また、本発明はIII 族窒化物半導体からなる半導体装置に限らず、任意の半導体材料からなる半導体装置の製造方法に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、FET、ダイオードなど各種半導体装置の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
110:基板
120:第1のn層
130:p層
140:第2のn層
F1:絶縁膜
F1A:第1絶縁膜
F1B:第2絶縁膜
F1C:第3絶縁膜
G1:ゲート電極
S1:ソース電極
B1:ボディ電極
D1:ドレイン電極
T1:トレンチ
R1:リセス
RM1:第1レジストマスク
RM2:第2レジストマスク
M1:第1金属膜
M2:第2金属膜