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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20221101BHJP
   G01N 3/06 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G01N3/20
G01N3/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019058482
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159826
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 信行
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/174574(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/125676(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339938(US,A1)
【文献】特開2017-032325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0131960(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0132575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/20
G01N 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の試験片における第1面と当接する第1リングを有する第1押圧部材と、前記試験片における前記第1面とは逆側の第2面と当接する前記第1リングとは内径が異なる第2リングを有する第2押圧部材と、を備え、前記試験片を前記第1リングと前記第2リングとの間に配置した状態で前記第1押圧部材と前記第2押圧部材とを互いに近接する方向に移動させることにより、前記試験片に試験力を付与する材料試験機において、
前記第2押圧部材は、一面が平面状である台座部の該一面に前記第2リングを有し、該台座部における前記第2リングの内側となる領域に貫通孔が形成されており、
前記第1押圧部材を前記第2押圧部材に近接する方向に移動させる駆動部と、
前記試験片から見て前記第2押圧部材の側にあって、前記貫通孔を通して前記試験片における前記第2面内の領域の画像を撮影する撮像部と、
を備える材料試験機。
【請求項2】
請求項1に記載の材料試験機において、
前記撮像部は、前記貫通孔を介した、前記第2押圧部材に対して前記試験片とは逆側となる位置において、反射面が前記試験片における前記第2面と交差する状態で配置されたミラーを含む材料試験機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の材料試験機において、
前記第2リングの内径は前記第1リングの内径より大きい材料試験機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の材料試験機において、
前記貫通孔の形状は、前記第2リングの内径と同一の直径を有する円形である材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
試験片に対して破壊が生じるまで試験力を付与する材料試験時においては、材料試験中に試験片をビデオカメラで撮影することにより、破壊時の画像を取得する場合がある。試験片としてガラス等のセラミック材料を使用するときには、従来、破壊が非常に高速であることから撮影は行われていなかったが、近年、超高速撮影が可能な高速ビデオカメラを使用した撮影も行われている(特許文献1参照)。
【0003】
また、材料試験を行う場合には、JIS等の各種の規定に則した方法で試験が実行される。ガラス等のセラミックに対する材料試験としては、米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials:ASTM、現在はASTM International)が策定する規格であるASTM C1499-01において規定されている。
【0004】
図5は、ASTM C1499-01において規定された「ガラスのリング曲げ試験」の態様を模式的に示す説明図である。
【0005】
この試験を実行するときには、環状の突起を備えたサポートリング102上にガラス板からなる試験片100を載置する。そして、環状の突起を備えたロードリング101を試験片100の表面に当接させるとともに、ロードリング101に対してロードロッド104からボール103を介して試験力を付与することにより、材料試験が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-189321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなガラスのリング曲げ試験等を行う場合に、試験片100におけるロードリング101との接触箇所や、破壊が生ずるサポートリング102の内側領域に対して、高速ビデオカメラによる撮影を行いたいという要請がある。しかしながら、ガラスのリング曲げ試験においては、これらの領域はロードリング101及びサポートリング102により囲まれていることから、これらの領域を撮影することができないという問題がある。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、試験片に対して一対のリングにより試験力を付与する場合においても、リング内の領域における試験片の撮影を実行することが可能な材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1の態様は、板状の試験片における第1面と当接する第1リングを有する第1押圧部材と、前記試験片における前記第1面とは逆側の第2面と当接する前記第1リングとは内径が異なる第2リングを有する第2押圧部材と、を備え、前記試験片を前記第1リングと前記第2リングとの間に挟持した状態で前記第1押圧部材と前記第2押圧部材とを互いに近接する方向に移動させることにより、前記試験片に試験力を付与する材料試験機において、前記第2押圧部材は、一面が平面状である台座部の該一面に前記第2リングを有し、該台座部における前記第2リングの内側となる領域に貫通孔が形成されており、前記第1押圧部材を前記第2押圧部材に近接する方向に移動させる駆動部と、前記試験片から見て前記第2押圧部材の側にあって、前記貫通孔を通して前記試験片における前記第2面内の領域の画像を撮影する撮像部と、を備える
【発明の効果】
【0010】
この発明の第1の態様によれば、試験片に対して一対のリングにより試験力を付与する場合においても、第2押圧部材における第2リングの内側となる領域に形成された貫通孔を利用することにより、リング内の領域における試験片の撮影を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施形態に係る材料試験機の概要図である。
図2】上治具10および下治具20を、ミラー30および高速ビデオカメラ40とともに示す概要図である。
図3】下治具20の断面図である。
図4】下治具20の平面図である。
図5】ガラスのリング曲げ試験の態様を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態に係る材料試験機の概要図である。
【0013】
この材料試験機は、クロスヘッド51、基台52と、この基台52の左右に立設された一対のカバー53とにより囲まれた材料試験機本体の試験空間に、試験片100を配置し、材料試験としてのASTM C1499-01において規定されるガラスのリング曲げ試験を実行するものである。試験片100は、ガラス板から構成される。この試験片100は、後述するように、クロスヘッド51の下面に配設された上治具10と基台52上に配置された下治具20との間に配置される。なお、図1においては、後述する高速ビデオカメラ40の図示を省略している。
【0014】
クロスヘッド51の両端部には、基台52の左右に立設されたカバー53内に配置される一対のねじ棹と螺合する図示しないナット部が配設されている。そして、一対のねじ棹が基台52内に配設されたモータの駆動により同期して回転することで、クロスヘッド51が上下方向に移動する。クロスヘッド51が下降することにより、試験片100に試験力が負荷される。
【0015】
図2は、上治具10および下治具20を、ミラー30および高速ビデオカメラ40とともに示す概要図である。また、図3は、下治具20の断面図である。さらに、図4は、下治具20の平面図である。なお、図2においては、上治具10、下治具20およびミラー30の側断面を図示している。
【0016】
上治具10は、試験片100の第1面である表面と当接可能な第1リングとしての上リング11を備えた第1押圧部材12を備える。この第1押圧部材12は、金属製の球体14を上部に載置するとともに枠体15に連結された支持部材13に固定されている。また、枠体15には、図1に示すクロスヘッド51に固定された昇降部材16が連結されている。昇降部材16は、枠体15に対して、図2において実線で示す位置と仮想線で示す位置との間を移動可能となっている。
【0017】
一方、下治具20は、試験片100の第2面である裏面と当接可能な第2リングとしての下リング21を備えた第2押圧部材22を備える。下リング21の内径は、上リング11の内径より大きい。この第2押圧部材22は、下治具20における上板23に対して、4個のネジ24により固定されている。この上板23は、一対の側板25および底板26とともに、前面が開放された箱状体を構成する。そして、第2押圧部材22には、下リング21の内側となる領域に、貫通孔29が形成されている。この貫通孔29の形状、すなわち、貫通孔29を水平方向に切った断面の形状は、下リング21の内径と同一の直径を有する円形となっている。また、上板23にも、貫通孔29と対応する貫通孔が形成されている。
【0018】
下治具20の内部には、支持部材31に支持されたミラー30が配設されている。このミラー30は、第2押圧部材22に対して試験片100とは逆側となる位置、すなわち、第2押圧部材22の下側において、反射面が試験片100の裏面に対して、45度の交差角をもって交差する状態で配置されている。そして、ミラー30の正面には、高速ビデオカメラ40が配設されている。この高速ビデオカメラ40は、ミラー30および第2押圧部材22に形成された貫通孔29を介して、試験片100における下リング21内の領域の画像を撮影する。
【0019】
以上のような構成を有する材料試験機において、ガラス板からなる試験片100に対してガラスのリング曲げ試験を実行する場合の動作について説明する。
【0020】
ガラスのリング曲げ試験を行う場合には、最初に、クロスヘッド51を上昇させることにより、上治具10を下治具20に対して上方に退避させておく。このときには、上治具10における昇降部材16は、図2において仮想線で示すように、球体14から離隔している。そして、試験片100を第2押圧部材22における下リング21の上部に載置する。
【0021】
この状態において、上治具10をクロスヘッド51とともに下降させる。そして、下リング21上に載置された試験片100を、上リング11と下リング21とにより挟持する。しかる後、さらに上治具10を下降させることにより第1押圧部材12と第2押圧部材22とを互いに近接させる。下リング21の内径は上リング11の内径より大きく、下リング21と試験片100の裏面との接触領域の直径は、上リング11と試験片100の表面との接触領域の直径より大きいことから、上治具10の下降に伴って、試験片100に対して試験片100を屈曲させる試験力が付与される。このときには、第1押圧部材12は球体14を介して昇降部材16から試験力を付与されることから、試験力の付与方向を試験片100の表面および裏面に対して垂直な方向とすることが可能となる。
【0022】
このような材料試験を実行中においては、試験片100における下リング21内の領域の画像が高速ビデオカメラ40により撮影される。そして、試験片100が変形を続け、やがて、試験片100が破壊する瞬間の画像が、高速ビデオカメラ40により取得される。このときには、下リング21の内径は上リング11の内径より大きく、かつ、貫通孔29の形状が下リング21の内径と同一の直径を有する円形となっていることから、試験片100における上リング11と試験片100との接触領域を含む下リング21内の全ての領域を高速ビデオカメラ40により撮影することが可能となる。但し、貫通孔29の直径を下リング21の内径より小さくしてもよく、貫通孔29の形状を円形以外の形状としてもよい。
【0023】
試験片100が破壊をした時点でガラスのリング曲げ試験が終了する。
【0024】
上述した実施形態においては、試験片100としてガラス板を使用し、破壊に至るまで試験力を付与する場合について説明したが、破壊に至る前の試験片100の変形等を測定するようにしてもよい。このような場合においては、試験片100の表面にランダムパターンを形成したシール等を貼着し、このシールを二方向からカメラにより撮影するステレオ計測により、試験片100の変形を測定するようにしてもよい。
【0025】
また、上述した実施形態としては、試験片100の材質としてセラミックの一種であるガラスを使用しているが、その他のセラミックに対して試験を行ってもよく、金属等のセラミック以外の材質に対して試験を行ってもよい。
【0026】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0027】
この発明の第1の態様に係る材料試験機は、板状の試験片における第1面と当接する第1リングを有する第1押圧部材と、前記試験片における第1面とは逆側の第2面と当接する前記第1リングとは内径が異なる第2リングを有する第2押圧部材と、を備え、前記試験片を前記第1リングと前記第2リングとの間に配置した状態で前記第1押圧部材と前記第2押圧部材とを互いに近接する方向に移動させることにより、前記試験片に試験力を付与する材料試験機において、前記第2押圧部材における前記第2リングの内側となる領域に貫通孔が形成される。
【0028】
この発明の第1の態様に係る材料試験機によれば、試験片に対して一対のリングにより試験力を付与する場合においても、第2押圧部材における第2リングの内側となる領域に形成された貫通孔を利用することにより、リング内の領域における試験片の撮影を実行することが可能となる。
【0029】
この発明の第1の態様の変形例に係る材料試験機は、前記第2押圧部材に対して前記試験片とは逆側となる位置において、反射面が前記試験片における前記第2面と交差する状態で配置されたミラーをさらに備える。
【0030】
このような態様によれば、リング内の領域における試験片の撮影を、ミラーを利用して任意の位置から実行することが可能となる。このため、撮影を行うためのカメラの配置の自由度を高めることが可能となる。
【0031】
この発明の第1の態様の他の変形例に係る材料試験機は、前記第2リングの内径は前記第1リングの内径より大きい。
【0032】
このような態様によれば、第1リングと試験片との接触領域を撮影することが可能となる。
【0033】
この発明の第1の形態のさらに他の変形例に係る材料試験機は、前記貫通孔の形状は、前記第2リングの内径と同一の直径を有する円形である。
【0034】
このような態様によれば、試験片における第2リング内の全ての領域を撮影することが可能となる。
【0035】
なお、上述した記載はこの発明の実施形態の説明のためのものであり、この発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0036】
10 上治具
11 上リング
12 第1押圧部材
13 支持部材
14 球体
15 枠体
16 昇降部材
20 下治具
21 下リング
22 第2押圧部材
23 上板
29 貫通孔
30 ミラー
31 支持部材
40 高速ビデオカメラ
51 クロスヘッド
100 試験片

図1
図2
図3
図4
図5