(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】工作機械、情報処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/12 20060101AFI20221101BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20221101BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20221101BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20221101BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20221101BHJP
G05B 19/4063 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B23Q17/12
G05B19/18 W
G05B19/404 K
B23Q17/00 D
B23Q3/155 F
G05B19/4063 L
(21)【出願番号】P 2019064186
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 初
(72)【発明者】
【氏名】野村 裕昭
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094686(JP,A)
【文献】特開2009-172235(JP,A)
【文献】特開2012-225814(JP,A)
【文献】特開2018-196909(JP,A)
【文献】特開2009-042893(JP,A)
【文献】特開2016-135522(JP,A)
【文献】特開平09-237757(JP,A)
【文献】特開2009-100985(JP,A)
【文献】特開平06-000739(JP,A)
【文献】特開2017-068391(JP,A)
【文献】特表2016-534348(JP,A)
【文献】特開2000-068195(JP,A)
【文献】特開2013-064693(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0038702(KR,A)
【文献】特開2012-232370(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3446828(EP,A1)
【文献】特開2018-091629(JP,A)
【文献】特開2020-129220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155- 3/157
B23Q 11/00 - 13/00
B23Q 17/00 - 23/00
G05B 19/18 - 19/46
A47L 9/28
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を用いて工作を行う工作機械において、
自機械を設置した床の強度を算出する床強度算出部と、
前記床強度算出部が算出した床の強度を表示する表示部と
、
前記工具の自動交換装置と、
前記床強度算出部の算出結果に基づいて、前記自動交換装置の動作速度を調整する速度調整部とを備える工作機械。
【請求項2】
前記速度調整部による前記自動交換装置の動作速度の調整を行うか否かの選択を受け付ける選択受付部を備える請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
特定部分の作動時における自機械の振動を測定する振動測定部を備え、
前記床強度算出部は、前記振動を周波数に対応付けた場合における所定の周波数範囲内の最大振動の大きさ又は該最大振動に係る周波数に基づいて、前記床の強度を算出する請求項1
又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
特定部分の作動時の振動による自機械の振動を測定する振動測定部を備え、
前記床強度算出部は、前記振動を周波数に対応付けた場合における所定の周波数範囲内の最大振動の大きさ及び該最大振動に係る周波数に基づいて、前記床の強度を算出する請求項1
又は2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記振動測定部は、前記工具を取り付けるヘッド部、該ヘッド部を上下動するコラム、ワークを支持するテーブル、又は前記コラムと前記テーブルを支持するベースに設ける請求項
3又は
4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記振動測定部は、前記工具を取り付けるヘッド部、又は、該ヘッド部を上下動するコラムの上端部に設ける請求項
5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記速度調整部は、前記床強度算出部が算出した床の強度が閾値よりも小さい場合、前記自動交換装置の動作速度を低める請求項
1又は
2に記載の工作機械。
【請求項8】
前記床強度算出部は、前記最大振動の大きさが閾値よりも小さい場合、前記最大振動の大きさと前記閾値との比に基づいて前記床の強度を算出する請求項
3又は
4に記載の工作機械。
【請求項9】
前記床強度算出部は、前記最大振動に係る周波数が閾値よりも低い場合、前記最大振動に係る周波数と前記閾値との比に基づいて前記床の強度を算出する請求項
3又は
4に記載の工作機械。
【請求項10】
工作機械を設置した床の強度を算出し、
算出した床の強度を前記工作機械の表示部に表示
し、
前記算出した床の強度に基づいて、工具の自動交換装置の動作速度を調整する処理を前記工作機械が実行する情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータに、
工作機械を設置した床の強度を算出し、
算出した床の強度を前記工作機械の表示部に表示
し、
前記算出した床の強度に基づいて、工具の自動交換装置の動作速度を調整する処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いて工作を行う工作機械、該工作機械に係る情報処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットが動作する場合にロボットに生じる振動を抑制する為の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、ロボット等に取り付けたエンドエフェクタ等の振動発生を抑制するように、ロボットそのものの固有振動振幅を抑えることによって、ロボットによる作業を効率よく、かつ安全に実施できる制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
床に複数の工作機械が設置してある場合、一の工作機械に生じる振動は床を振動させることになり、他の工作機械にも振動が及ぶので、他の工作機械の加工精度が低下する虞がある。また、床の振動度合は床の強度に依存する。しかし、特許文献1の制御装置はこの問題について工夫しておらず、解決できない。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、床の強度を算出することによって、床の強度を自機械の運転に反映でき、その結果、床の振動を抑えることができる工作機械、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械は、工具を用いて工作を行う工作機械において、自機械を設置した床の強度を算出する床強度算出部と、前記床強度算出部が算出した床の強度を表示する表示部とを備える。
【0008】
本発明にあっては、工作機械の床強度算出部が自機械を設置した床の強度を算出し、床強度算出部が算出した床の強度を表示部がユーザに表示する。
【0009】
本発明に係る工作機械は、前記工具の自動交換装置と、前記床強度算出部の算出結果に基づいて、前記自動交換装置の動作速度を調整する速度調整部とを備える。
【0010】
本発明にあっては、速度調整部は、床強度算出部の算出結果に基づいて、自動交換装置の動作速度を調整する。例えば、床の強度が弱い場合、自動交換装置の動作速度を遅くする。
【0011】
本発明に係る工作機械は、前記速度調整部による前記自動交換装置の動作速度の調整を行うか否かの選択を受け付ける選択受付部を備える。
【0012】
本発明にあっては、選択受付部が、速度調整部による自動交換装置の動作速度の調整を行うか否かの選択をユーザから受け付ける。
【0013】
本発明に係る工作機械は、特定部分の作動時における自機械の振動を測定する振動測定部を備え、前記床強度算出部は、前記振動を周波数に対応付けた場合における所定の周波数範囲内の最大振動の大きさ又は該最大振動に係る周波数に基づいて、前記床の強度を算出する。
【0014】
本発明にあっては、振動測定部が、例えば工作機械の特定部分の作動時における自機械のZ軸上の振動を測定し、この振動を周波数に対応付けて表した場合における所定の周波数範囲内の最大振動の大きさ又は該最大振動に係る周波数に基づいて、床強度算出部が床の強度を算出する。
【0015】
本発明に係る工作機械は、特定部分の作動時の振動による自機械の振動を測定する振動測定部を備え、前記床強度算出部は、前記振動を周波数に対応付けた場合における所定の周波数範囲内の最大振動の大きさ及び該最大振動に係る周波数に基づいて、前記床の強度を算出する。
【0016】
本発明にあっては、振動測定部が、例えば工作機械の特定部分の作動時における自機械のZ軸上の振動を測定し、この振動を周波数に対応付けて表した場合における所定の周波数範囲内の最大振動の大きさ及び該最大振動に係る周波数に基づいて、床強度算出部が床の強度を算出する。
【0017】
本発明に係る工作機械は、前記振動測定部は、前記工具を取り付けるヘッド部、該ヘッド部を上下動するコラム、ワークを支持するテーブル、又は前記コラムと前記テーブルを支持するベースに設ける。
【0018】
本発明にあっては、振動測定部をヘッド部又はコラムの上端部等工作機械の上端側、又はテーブル、ベース等に設けることができる。
【0019】
本発明に係る工作機械は、前記振動測定部は、前記工具を取り付けるヘッド部、又は、該ヘッド部を上下動するコラムの上端部に設ける。
【0020】
本発明にあっては、振動測定部をヘッド部又はコラムの上端部等工作幾何の上端側に設けることによって、振動測定部の測定精度を高める。
【0021】
本発明に係る工作機械は、前記速度調整部は、前記床強度算出部が算出した床の強度が閾値よりも小さい場合、前記自動交換装置の動作速度を低める。
【0022】
本発明にあっては、床強度算出部が算出した床の強度が閾値よりも小さい場合、即ち、床が弱い場合、速度調整部は自動交換装置の動作速度を低めて、床に与える振動を抑制する。
【0023】
本発明に係る工作機械は、前記床強度算出部は、前記最大振動の大きさが閾値よりも小さい場合、前記最大振動の大きさと前記閾値との比に基づいて前記床の強度を算出する。
【0024】
本発明にあっては、工作機械のZ軸上の振動を測定して周波数に対応付けて表した場合の最大振動の大きさが閾値よりも小さい場合、床強度算出部は最大振動の大きさと閾値との比に基づいて床の強度を算出する。
【0025】
本発明に係る工作機械は、前記床強度算出部は、前記最大振動に係る周波数が閾値よりも低い場合、前記最大振動に係る周波数と前記閾値との比に基づいて前記床の強度を算出する。
【0026】
本発明にあっては、工作機械のZ軸上の振動を測定して周波数に対応付けて表した場合の最大振動に係る周波数が閾値よりも低い場合、床強度算出部は最大振動に係る周波数と閾値との比に基づいて床の強度を算出する。
【0027】
本発明に係る情報処理方法は、工作機械を設置した床の強度を算出し、算出した床の強度を前記工作機械の表示部に表示する処理を前記工作機械が実行する。
【0028】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、工作機械を設置した床の強度を算出し、算出した床の強度を前記工作機械の表示部に表示する処理を実行させる。
【0029】
本発明にあっては、工作機械を設置した床の強度を算出し、算出した床の強度を表示部がユーザに表示する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、床の強度を算出することによって、床の強度を自機械の運転に反映でき、その結果、床の振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図3】本実施の形態1の工作機械における数値制御装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本実施の形態1の工作機械における、制御部の要部構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】本実施の形態1の工作機械において、工具交換装置の動作速度を調整する処理を説明する流れ図である。
【
図6】本実施の形態1の工作機械において、振動測定部が測定した振動波形の一例を示す例示図である。
【
図7】本実施の形態2の工作機械において、工具交換装置の動作速度を調整する処理を説明する流れ図である。
【
図8】本実施の形態3の工作機械において、工具交換装置の動作速度を調整する処理を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施の形態に係る工作機械、最適化方法及びコンピュータプログラムを、図面に基づいて詳述する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1の工作機械1の斜視図であり、
図2は、本実施の形態1の工作機械1の側面図である。以下では、工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向は、夫々、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。
【0034】
工作機械1は、ベース2、コラム5、主軸ヘッド7、主軸9、制御箱6、テーブル10、工具交換装置20(自動交換装置)を備える。ベース2は略直方体状の鉄製土台である。コラム5はベース2上部後方に立設する。主軸ヘッド7はコラム5前面に設けたZ軸移動機構(図示略)によって上下方向に移動可能である。主軸ヘッド7は内部に主軸9を回転可能に支持する。主軸9は上下方向に延びており、下端部に工具ホルダ17を有し、主軸モータ52の駆動で回転する。主軸モータ52は主軸ヘッド7上部に位置する。工具ホルダ17は一端側に工具4を保持し、他端側が主軸9の下端部の装着穴(不図示)に装着する。
【0035】
工具交換装置20は円盤状のマガジン21を備える。マガジン21は左右一対のフレーム8がコラム5前面側にて保持する。マガジン21は外周に複数のグリップアーム90を放射状に備える。グリップアーム90は工具ホルダ17を着脱自在に保持する。工具交換装置20はマガジン21を旋回し、所定の工具を工具交換位置に位置決めする。工具交換装置20は主軸9に装着した工具4(工具ホルダ17)と工具交換位置にある次工具(工具ホルダ17)とを交換する。工具交換位置はマガジン21の最下端位置である。
【0036】
制御箱6は数値制御装置30(
図3参照)を格納する。数値制御装置30は工作機械1の動作を制御する。テーブル10はベース2上部に設け、後述する、X軸モータ53、Y軸モータ54、X軸-Y軸ガイド機構(図示略)で、X軸方向とY軸方向に移動可能である。
【0037】
図3は、本実施の形態1の工作機械1における数値制御装置30の要部構成を示す機能ブロック図である。
数値制御装置30は、CPU31、制御部32、記憶部34、入出力部33、駆動回路51A~55A等を備える。CPU31は数値制御装置30を制御する。記憶部34は、ROM、RAM、不揮発性の記憶装置等で構成する。ROMは、工作機械1の運転に関するプログラム等を記憶する。例えば、ROMは、工作機械1を設置した床の強度を算出し、算出した床の強度を表示し、工具交換装置20の動作速度を調整し、工具交換装置20の動作速度の調整を行うか否かの選択を受け付けるためのコンピュータプログラムを記憶する。RAMは各種処理実行中の各種データを一時的に記憶する。
本実施の形態1の工作機械1はこれに限定されるものでなく、これらコンピュータプログラムを、USBメモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体から提供しても良い。
【0038】
操作パネル24は入力部25と表示部28を備え、入出力部33と接続している。操作パネル24は、入力部25(例えば、ハードキー、タッチパネル)と表示部28を有する。作業者は入力部25で、NCプログラム、工具の種類、工具情報、各種パラメータ等を入力する。作業者が入力部25を操作すると、表示部28は各種入力画面と操作画面等を表示する。作業者が入力部25で入力して登録したNCプログラム等は記憶部34が記憶する。NCプログラムは各種制御指令を含む複数のブロックで構成し、工作機械1の軸移動、工具交換等を含む各種動作をブロック単位で制御する。
表示部28は、LCD又はEL(Electroluminescence)パネル等からなり、後述する床Fの強度の値及び作業者に表示すべき警告、情報を表示する。
【0039】
本実施の形態1の工作機械1は振動測定部26を備える。振動測定部26は、例えばジャイロセンサ又は加速度センサである。振動測定部26は、工作機械1の特定部分の作動時に起きる工作機械1のZ軸上の振動を測定する。前記特定部分は、例えば主軸ヘッド7、マガジン21又はテーブル10である。具体的に、振動測定部26が測定する振動は、例えば変位、速度、加速度である。以下では、振動測定部26が測定した変位を用いる場合を例に説明する。
【0040】
振動測定部26は、工作機械1の前記振動(変位)を、周波数に対応付けて測定する。振動測定部26は主軸ヘッド7及びコラム5等の工作機械1の上端部、テーブル10、ベース2等に配置する。なお、主軸ヘッド7及びコラム5等の工作機械1の上端部(
図2中○表示参照)がより好ましく、工作機械1のZ軸上の変位をより確実に測定できる。
【0041】
図4は、本実施の形態1の工作機械1における、制御部32の要部構成を示す機能ブロック図である。制御部32は、床強度算出部321、速度調整部322、選択受付部323等を含む。
【0042】
床強度算出部321は、工作機械1を設置した床Fの強度を算出する。床強度算出部321は、振動測定部26が測定した工作機械1のZ軸上の振動(変位)に基づいて床Fの強度を算出する。振動測定部26が測定した変位は、この変位を周波数に対応付けた振動波形である。床強度算出部321は、振動測定部26が測定した変位を周波数に対応付けた場合における所定の周波数範囲内の最大変位(最大振動)の大きさ又は該最大変位に係る周波数に基づいて、床Fの強度を算出する。前記所定の周波数範囲は、例えば50Hzである。床強度算出部321が算出した床Fの強度を表示部28がユーザに表示する。
【0043】
床強度算出部321は、前記最大変位の大きさが閾値よりも小さい場合、前記最大変位の大きさと前記閾値との差に基づいて床Fの強度を算出する。床強度算出部321は、前記最大変位に係る周波数が閾値よりも低い場合、前記最大変位に係る周波数と前記閾値との差に基づいて床Fの強度を算出する。前記最大変位の大きさ及び前記最大変位に係る周波数との比較の為の閾値は、記憶部34が記憶する。
【0044】
速度調整部322は、床強度算出部321の算出結果に基づいて工具交換装置20の動作速度を調整する。床強度算出部321の算出結果が閾値より低い場合、即ち床Fが弱い場合、速度調整部322は工具交換装置20の動作速度を遅くし、床Fに与える衝撃を減らす。速度調整部322は、工具交換装置20の自動工具交換時において、主軸9の上下移動速度、後述のマガジンモータ55の回転速度等を遅くする。これに限るものではなく、床強度算出部321の算出結果が閾値よりも高い場合、速度調整部322が工具交換装置20の動作速度を早くするようにしても良い。
【0045】
選択受付部323は、例えば表示部28が床Fの強度を表示した場合、速度調整部322による工具交換装置20の動作速度の調整を行うか否かの選択をユーザから入力部25を介して受け付ける。例えば、表示部28は、ユーザの選択を促すダイアログを表示する。
選択受付部323が工具交換装置20の動作速度の調整を実施するとの選択を受け付けた場合、速度調整部322は床強度算出部321の算出結果に基づいて工具交換装置20の動作速度を調整する。選択受付部323が工具交換装置20の動作速度の調整を実施しないとの選択を受け付けた場合、表示部28は前記ダイアログの表示を中止する。
【0046】
駆動回路51Aは電流検出器51CとZ軸モータ51とエンコーダ51Bに接続する。駆動回路52Aは電流検出器52Cと主軸モータ52とエンコーダ52Bに接続する。駆動回路53Aは電流検出器53CとX軸モータ53とエンコーダ53Bに接続する。駆動回路54Aは電流検出器54CとY軸モータ54とエンコーダ54Bに接続する。駆動回路55Aはマガジンモータ55とエンコーダ55Bに接続する。駆動回路51A-55AはCPU31から指示を受け、対応する各モータ51-55に駆動電流を夫々出力する。駆動回路51A-55Aはエンコーダ51B-55Bからフィードバック信号を受け、位置と速度のフィードバック制御を行う。フィードバック信号はパルス信号である。
【0047】
電流検出器51C~54Cは駆動回路51A~54Aが夫々出力した駆動電流を検出する。電流検出器51C~54Cは検出した駆動電流を夫々駆動回路51A~54Aにフィードバックする。駆動回路51A~54Aは電流検出器51C~54Cが夫々フィードバックした駆動電流に基づき、電流(トルク)制御を行う。一般的に、モータに流れる駆動電流とモータにかかる負荷トルクは略一致する。故に、電流検出器51C~54Cは各モータ51~54の駆動電流を検出することで、各モータ51-54の負荷トルクを検出する。
【0048】
一方、工具交換装置20の動作中に工具ホルダ17(工具4)を主軸9に装着する場合、主軸9が上昇と下降を行い、主軸9が工具ホルダ17の他端を把持する際に主軸ヘッド7内に収納した工具把持機構(ドローバーとドローバーを操作する機構)の動作により工作機械1が振動する。工作機械1の振動は外力として床Fに伝わり、床Fが振動する。この際、床Fの振動は床F上の他の機械に外乱として影響を与えるので、他の機械の正常な動作を妨害する。これに対して、本実施の形態1の工作機械1は、床Fの強度に応じて、工具交換装置20が自動工具交換する際の速度を調整することによって、斯かる問題に対応する。
【0049】
図5は、本実施の形態1の工作機械1において、工具交換装置20の動作速度を調整する処理を説明する流れ図である。
CPU31は、入力部25を監視することによって、ユーザから床Fの強度を算出する指示(以下、強度算出指示と言う。)を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。本発明はこれに限るものではなく、例えばメインスイッチ(不図示)をONにした場合、これを強度算出指示として認識するように構成しても良い。
【0050】
CPU31は強度算出指示を受け付けていないと判定した場合(ステップS101:NO)、斯かる判定を繰り返して行う。CPU31は、強度算出指示を受け付けたと判定した場合(ステップS101:YES)、駆動回路51Aに主軸ヘッド7の上昇を指示する。CPU31の指示に従って駆動回路51AはZ軸モータ51を駆動し、主軸ヘッド7が所定の高速にてZ軸方向に上昇する(ステップS102)。
【0051】
CPU31は、エンコーダ51Bからのフィードバック信号に基づいて主軸ヘッド7の位置を監視することによって、主軸ヘッド7の位置が第1位置に到達したか否かを判定する(ステップS103)。前記第1位置は、後述の第2位置よりも低い位置であり、後述の第3位置よりは高い位置である。即ち、Z軸方向において、第3位置、第1位置、第2位置の順に高い位置であり、第1位置は第2位置に近い位置である。
【0052】
CPU31は、主軸ヘッド7の位置が第1位置に到達していないと判定した場合(ステップS103:NO)、処理をステップS102に戻し、主軸ヘッド7は高速での上昇を続ける。CPU31は、主軸ヘッド7の位置が第1位置に到達していると判定した場合(ステップS103:YES)、駆動回路51Aに主軸ヘッド7の上昇速度の減速を指示する。CPU31の指示に従って駆動回路51AはZ軸モータ51の駆動電流を制御し、主軸ヘッド7は低速にてZ軸方向に上昇する(ステップS104)。
【0053】
CPU31は、エンコーダ51Bからのフィードバック信号に基づいて主軸ヘッド7の位置を監視することによって、主軸ヘッド7の位置が第2位置に到達したか否かを判定する(ステップS105)。CPU31は、主軸ヘッド7の位置が第2位置に到達していないと判定した場合(ステップS105:NO)、処理をステップS104に戻し、主軸ヘッド7は低速での上昇を続ける。CPU31は、主軸ヘッド7の位置が第2位置に到達していると判定した場合(ステップS105:YES)、駆動回路51Aに主軸ヘッド7の停止を指示する。CPU31の指示に従って駆動回路51AはZ軸モータ51の駆動電流を制御し、主軸ヘッド7は停止する(ステップS106)。
【0054】
CPU31は、駆動回路51Aに主軸ヘッド7の高速下降を指示する。CPU31の指示に従って駆動回路51AはZ軸モータ51の駆動電流を制御し、主軸ヘッド7は高速にて下降する(ステップS107)。
【0055】
CPU31は、エンコーダ51Bからのフィードバック信号に基づいて主軸ヘッド7の位置を監視することによって、主軸ヘッド7の位置が第3位置に到達したか否かを判定する(ステップS108)。CPU31は、主軸ヘッド7の位置が第3位置に到達していないと判定した場合(ステップS108:NO)、処理をステップS107に戻し、主軸ヘッド7は高速での下降を続ける。CPU31は、主軸ヘッド7の位置が第3位置に到達していると判定した場合(ステップS108:YES)、駆動回路51Aに主軸ヘッド7の停止を指示する。CPU31の指示に従って駆動回路51AはZ軸モータ51の駆動電流を制御し、主軸ヘッド7は停止する(ステップS109)。
【0056】
この際、主軸ヘッド7の下降の慣性によって、床Fに所定の力Nが加わり、工作機械1及び床Fが振動し、振動測定部26は振動波形を計測する。該振動波形は前記振動による工作機械1の変位を周波数に対応付けて表したものである。制御部32(床強度算出部321)は入出力部33を介して振動測定部26から振動波形を取得する(ステップS110)。
【0057】
図6は、本実施の形態1の工作機械1において、振動測定部26が測定した振動波形の一例を示す例示図である。
図6中、実線のグラフが、振動測定部26が測定した振動波形(以下、測定振動波形と言う。)である。
図6において、横軸は周波数であり、縦軸は工作機械1の変位を示す。
図6の縦軸は、加速度、速度でもよい。
【0058】
床強度算出部321は、振動測定部26から取得した測定振動波形から最大変位を抽出する(ステップS111)。前記最大変位は、50Hzの周波数範囲内において、最も大きい変位を示すピークである。
図6において、最大変位の値(大きさ)はL1(実線の矢印参照)であり、対応する周波数はH1である。
【0059】
床強度算出部321は閾値を記憶部34から読み出す(ステップS112)。前記閾値の一例を
図6に破線のグラフにて例示する。床強度算出部321は、前記閾値及び前記測定振動波形に基づいて工作機械1を設置した床Fの強度を算出する(ステップS113)。
【0060】
床強度算出部321は、50Hzの周波数範囲内において、前記測定振動波形の最大変位の大きさと、前記閾値の最大変位(
図6中、破線の矢印参照)の大きさとを比較することによって、床Fの強度を算出する。前記閾値における最大変位の値(大きさ)はL0であり、対応する周波数はH0である。
床強度算出部321は、測定振動波形の最大変位の大きさが閾値の最大変位よりも小さい場合、前記閾値の最大変位に対する測定振動波形の最大変位の大きさの比(L1/L0)に基づいて床Fの強度を算出する。
【0061】
表示部28は床強度算出部321が算出した床Fの強度を表示する(ステップS114)。例えば、表示部28は「L1/L0」の値をそのまま数字(例えば百分率)として表示する。又は、記憶部34が第1閾値及び第2閾値(第1閾値>第2閾値)を記憶して、L1/L0が第1閾値よりも大きい場合、「硬い床」とのテキストを表示し、L1/L0が第1閾値よりは小さいく第2閾値よりは大きい場合、「やや弱い床」とのテキストを表示し、L1/L0が第2閾値よりも小さい場合、「弱い床」とのテキストを表示する。
測定振動波形の最大変位の大きさが閾値の最大変位より大きい場合、表示部28は「硬い床」とのテキストを表示する。
【0062】
本発明はこれに限るものではなく、床強度算出部321が、前記測定振動波形の最大変位の大きさと前記閾値の最大変位との差(|L0-L1|)に基づいて床Fの強度を算出しても良い。
【0063】
CPU31は、ステップS113で算出した床Fの強度が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS115)。前記所定の閾値は、例えば前述の第1閾値である。CPU31は、床Fの強度が所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS115:YES)、速度調整部322に速度調整を指示する。CPU31の指示に応じて、速度調整部322は、工具交換装置20の自動工具交換における主軸9の上下移動速度、マガジンモータ55の回転速度等を遅く調整する(ステップS116)。CPU31は、床Fの強度が所定の閾値未満でないと判定した場合(ステップS115:NO)、処理を終了する。
【0064】
以上においては、床強度算出部321が、前記測定振動波形の最大変位と、前記閾値の最大変位との大きさを比較することによって床Fの強度を算出することについて説明したが、これに限るものではない。床強度算出部321が、前記測定振動波形の最大変位に係る周波数と、前記閾値の最大変位に係る周波数とを比較することによって床Fの強度を算出しても良い。
測定振動波形の最大変位の周波数が閾値の最大変位の周波数よりも低い場合、床強度算出部321が、前記測定振動波形の最大変位の周波数と前記閾値の最大変位の周波数との差(|H0-H1|)に基づいて床Fの強度を算出しても良い。また、床強度算出部321が、前記閾値の最大変位の周波数に対する測定振動波形の最大変位の周波数の比(H1/H0)に基づいて床Fの強度を算出しても良い。
【0065】
以上においては、主軸ヘッド7が下降した場合の床Fの振動波形を振動測定部26が計測したがこれに限るものでない。主軸ヘッド7の下降の代わりに、マガジン21が回転した場合又はテーブル10が移動した場合の床Fの振動波形を振動測定部26が計測し、この計測結果を床Fの強度算出に用いても良い。
【0066】
以上においては、振動測定部26が計測した振動波形を用いて床Fの強度を算出することについて説明したが、これに限るものでない。
Z軸モータ51に外部から負荷がかかると、速度変化が生じる。速度変化は、位置フィードバック信号と速度フィードバック信号により検出する。駆動回路51Aは、検出した速度変化を元に戻すために駆動電力を制御する。故に、数値制御装置30は、フィードバック制御時に、Z軸モータ51にかかる負荷に応じて駆動電流を制御するので、駆動電流に基づき、Z軸モータ51にかかる負荷を算出できる。即ち、Z軸モータ51にかかる負荷に基づいて、床の強度を測定しても良い。
【0067】
以上のように、本実施の形態1の工作機械1は、床Fの強度に応じて床Fが弱い場合は、速度調整部322が、工具交換装置20の自動工具交換時における主軸9の上下移動速度、マガジンモータ55の回転速度等を遅くし、床Fに与える衝撃を減らす。従って、床Fの振動が床F上の他の機械に与える影響を事前に抑制できる。
また、主軸ヘッド7が下降した場合、マガジン21が回転した場合又はテーブル10が移動した場合の床Fの振動波形を計測するので、床Fの強度測定時において床Fへ加わる力Nが一定であり、安定且つ信頼性の高い計測結果を得ることができる。
【0068】
(実施の形態2)
図7は、本実施の形態2の工作機械1において、工具交換装置20の動作速度を調整する処理を説明する流れ図である。
図7において、ステップS201~ステップS214は、実施の形態1の
図5のステップS101~ステップS114と同様であり、説明を省略する。
【0069】
表示部28が床Fの強度を表示した後(ステップS214)、CPU31は、ステップS213で算出した床Fの強度が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS215)。CPU31は、床Fの強度が所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS215:YES)、表示部28に選択勧告の表示を指示する。CPU31の指示に応じて表示部28は選択勧告の表示を行う(ステップS216)。前記選択勧告は、速度調整部322による工具交換装置20の動作速度の調整を行うか否かの選択をユーザに促す内容のテキストである。
【0070】
CPU31は、選択受付部323又は入力部25を監視することによって、工具交換装置20の動作速度の調整を実行する旨の選択をユーザから受け付けたか否かを判定する(ステップS217)。CPU31は、実行する旨の選択をユーザから受け付けていないと判定した場合(ステップS217:NO)、即ち実行しない旨の選択をユーザから受け付けた場合、処理を終了する。
【0071】
CPU31は、工具交換装置20の動作速度の調整を実行する旨の選択をユーザから受け付けたと判定した場合(ステップS217:YES)、速度調整部322に速度調整を指示する。CPU31の指示に応じて、速度調整部322は、工具交換装置20の自動工具交換における主軸9の上下移動速度、マガジンモータ55の回転速度等を遅く調整する(ステップS218)。
【0072】
以上のように、本実施の形態2の工作機械1は、床Fの強度に応じて床Fが弱い場合は、自機械が床Fに与える衝撃を減らし、床Fの振動が床F上の他の機械に与える影響を抑制できる。また、床Fの強度測定時に床Fへ加わる力Nを一定にし、安定且つ信頼性の高い計測結果を得ることができる。
更に、本実施の形態2の工作機械1においては、ユーザの必要に応じて工具交換装置20の動作速度の調整を選択的に行うことができる。
【0073】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0074】
(実施の形態3)
図8は、本実施の形態3の工作機械1において、工具交換装置20の動作速度を調整する処理を説明する流れ図である。
図8において、ステップS301~ステップS310は、実施の形態1の
図5のステップS101~ステップS110と同様であり、説明を省略する。
【0075】
床強度算出部321は、振動測定部26から取得した測定振動波形から最大変位を抽出し(ステップS311)、抽出した最大変位に係る周波数を抽出する(ステップS312)。
図6において、測定振動波形の最大変位の値(大きさ)はL1であり、対応する周波数はH1である。床強度算出部321は閾値を記憶部34から読み出す(ステップS313)。前記閾値の一例を
図6に破線のグラフとして例示する。
図6において、閾値の最大変位の値(大きさ)はL0であり、対応する周波数はH0である。
【0076】
CPU31は、測定振動波形の最大変位の周波数H1が閾値の最大変位の周波数H0未満であるか否かを判定する(ステップS314)。CPU31は、測定振動波形の最大変位の周波数H1が閾値の最大変位の周波数H0未満であると判定した場合(ステップS314:YES)、速度調整部322に速度調整を指示する。CPU31の指示に応じて、速度調整部322は、工具交換装置20の自動工具交換における主軸9の上下移動速度、マガジンモータ55の回転速度等を遅く調整する(ステップS316)。CPU31は、測定振動波形の最大変位の周波数H1が閾値の最大変位の周波数H0未満でないと判定した場合(ステップS314:NO)、測定振動波形の最大変位の大きさL1が閾値の最大変位の大きさL0未満であるか否かを判定する(ステップS315)。
【0077】
CPU31は、測定振動波形の最大変位の大きさL1が閾値の最大変位の大きさL0未満であると判定した場合(ステップS315:YES)、速度調整部322に速度調整を指示し、速度調整部322が工具交換装置20の自動工具交換における主軸9の上下移動速度、マガジンモータ55の回転速度等を遅く調整する(ステップS316)。
この際、表示部28は床強度算出部321が算出した床Fの強度を表示しても良い。表示部28による床Fの強度の表示については既に説明しており、説明を省略する。
CPU31は、測定振動波形の最大変位の大きさL1が閾値の最大変位の大きさL0未満でないと判定した場合(ステップS315:NO)、処理を終了する。
【0078】
以上のように、本実施の形態3の工作機械1は、床Fの強度に応じて床Fが弱い場合は、自機械が床Fに与える衝撃を減らし、床Fの振動が床F上の他の機械に与える影響を抑制できる。また、床Fの強度測定時に床Fへ加わる力Nを一定にし、安定且つ信頼性の高い計測結果を得ることができる。
更に、本実施の形態3の工作機械1においては、最大変位の大きさ及び最大変位の周波数に基づいて、工具交換装置20の動作速度を調整するか否か判断する。従って、最大変位の大きさ又は最大変位の周波数の何れか一方のみに基づいて斯かる判断を行う場合に比べて、正確な判断が可能である。
【0079】
実施の形態1又は2と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0080】
なお、上述した床強度算出部321、速度調整部322、選択受付部323は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPU31が所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 工作機械
4 工具
5 コラム
7 主軸ヘッド
20 工具交換装置
26 振動測定部
28 表示部
321 床強度算出部
322 速度調整部
323 選択受付部