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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20221101BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
F04C15/00 E
F04C2/10 341Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019086356
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020037937
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2018163625
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信弥
(72)【発明者】
【氏名】朴 成濬
(72)【発明者】
【氏名】服部 猛
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051964(JP,A)
【文献】特開2017-066976(JP,A)
【文献】特開2006-329054(JP,A)
【文献】特開2013-163988(JP,A)
【文献】特開2001-182669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外歯を有するインナロータと、
前記インナロータを偏心状態で回転可能に収容するインナロータ用収容部と、前記外歯に噛合する内歯と、を有するアウタロータと、
前記インナロータ及び前記アウタロータを収容するロータ用収容部と、前記ロータ用収容部を形成する筒壁から径方向外側に突出するフランジ部と、を有する筒状の第1コアと、
前記第1コアを保持する凹部と、前記第1コアの前記フランジ部に対向するフランジ対向部と、を有する樹脂製のハウジングと、
前記第1コアに対して軸方向に当接配置され、前記ロータ用収容部の開口を閉塞する盤状の第2コアと、
を備えるオイルポンプであって、
前記第1コアは、前記第2コアに当接する第1当接部と、前記第1当接部が前記第2コアに当接した状態で前記第2コアに係合する第1係合部と、を有し、
前記第2コアは、前記第1コアに当接する第2当接部と、前記第2当接部が前記第1コアに当接した状態で前記第1コアに係合する第2係合部と、を有し、
前記オイルポンプは、
前記第1当接部と前記第2当接部とが互いに当接した状態で前記第1コアの前記フランジ部と前記ハウジングの前記フランジ対向部との間に形成される隙間と、
前記第1コアと前記第2コアと前記ハウジングとを締結する締結部と、
を備え、
前記締結部による締結は、前記第1当接部と前記第2当接部とが互いに当接する範囲内かつ前記隙間の空いた範囲内において行われている、オイルポンプ。
【請求項2】
前記第1係合部及び前記第2係合部は、互いに凹凸が嵌合する部位であり、又は、共通の係合ピンが嵌合する凹部位である、請求項に記載されたオイルポンプ。
【請求項3】
前記ハウジングの締結孔に挿入されると共に、前記フランジ対向部における前記締結孔の開口から前記隙間に相当する長さだけ軸方向に突出するカラー部材を備える、請求項1又は2に記載されたオイルポンプ。
【請求項4】
前記第1コアの前記ロータ用収容部の底壁と前記ハウジングの前記凹部の底壁とが接する箇所に配置されるシール部材を備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載されたオイルポンプ。
【請求項5】
前記第1コア及び前記第2コアはそれぞれ、金属又は熱硬化性樹脂により形成された切削加工品である、請求項1乃至の何れか一項に記載されたオイルポンプ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載されたオイルポンプを組み立てる方法であって、
前記第1コアとの当接側が上方に位置するように配置された前記第2コアに、前記第1当接部と前記第2当接部とが互いに当接しかつ前記第1係合部と前記第2係合部とが互いに係合するように、前記第2コアの上方から前記第1コアを組み付ける第1工程と、
前記第2コアに組み付けられた前記第1コアに、前記第1コアが前記凹部に保持されかつ前記第1コアの前記フランジ部が前記ハウジングの前記フランジ対向部に対向するように、前記第1コアの上方から前記ハウジングを組み付ける第2工程と、
を備える、オイルポンプの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トロコイド式のオイルポンプが知られている(例えば、特許文献1及び2)。このオイルポンプは、インナロータと、アウタロータと、ハウジングと、カバーと、を備えている。インナロータは、駆動シャフトに固定されており、外歯を有している。アウタロータは、インナロータの外歯に噛合する内歯を有している。インナロータは、アウタロータに対して偏心した状態で回転可能である。ハウジングは、インナロータ及びアウタロータを収容する凹部を有している。カバーは、ハウジングに対して軸方向に配置されており、ハウジングの凹部を閉塞している。
【0003】
特許文献1記載のオイルポンプにおいて、インナロータ、アウタロータ、及びカバーは、金属により形成されている。また、ハウジングの少なくとも一部は、射出成形された樹脂により形成されている。このオイルポンプの構造によれば、ハウジング全体が金属により形成されている構造に比べて、軽量化を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2記載のオイルポンプは、インナロータ及びアウタロータを収容する収容部を有する金属製のコアを備えている。このコアは、樹脂製のハウジングにインサート成形され、そのハウジングの凹部に配置されている。コアの収容部及びハウジングの凹部は、金属製のカバーにより閉塞されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-51964号公報
【文献】特開2017-66976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、オイルポンプにおいて、各部材の寸法管理が適切になされていないと、以下の不都合が生ずる。すなわち、各部材の寸法管理が良好であれば、ハウジングの凹部がカバーにより閉塞された際にインナロータ及びアウタロータとカバーとの間に不必要な隙間が形成されず、組付け精度が確保されるので、オイルが溜まる有効容量が一定であり、安定した吐出量が確保される。一方、各部材の寸法管理が悪いと、ハウジングの凹部がカバーにより閉塞された際にインナロータ及びアウタロータとカバーとの間に隙間が形成されることがあり、組付け精度が低下するので、オイルが溜まる有効容量が変動し、安定した吐出量が確保されなくなる。
【0007】
一方、各部材の寸法を良好な状態とするためには、すべての部材を金属により形成したうえで切削加工することが考えられる。しかしながら、すべての部材が金属により形成されるものとすると、オイルポンプ全体の重量が増加すると共に、すべての部材を切削加工することが必要であると、製造上の手間がかかる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、軽量化を図りつつ、各部材の組付け精度を確保することが可能なオイルポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、外歯を有するインナロータと、前記インナロータを偏心状態で回転可能に収容するインナロータ用収容部と、前記外歯に噛合する内歯と、を有するアウタロータと、前記インナロータ及び前記アウタロータを収容するロータ用収容部を有する筒状の第1コアと、前記第1コアを保持する凹部を有する樹脂製のハウジングと、前記第1コアに対して軸方向に当接配置された盤状の第2コアと、前記ハウジングに対して軸方向に配置された、前記第2コアを保持する保持孔を有する、前記ハウジングの前記凹部の開口を閉塞する樹脂製のカバーと、を備えるオイルポンプであって、前記第1コアは、前記凹部の底壁に対向する軸方向端面とは軸方向反対側の第1軸方向端面に形成された第1凹凸部を有し、前記第2コアは、前記第1コアの前記第1軸方向端面に当接する第2軸方向端面に形成された、前記第1凹凸部に嵌合する第2凹凸部を有し、前記第1軸方向端面と前記第2軸方向端面とが互いに当接した状態で前記ハウジングと前記カバーとの対向面同士間に隙間が形成されている、オイルポンプである。
【0010】
この構成によれば、第1コアの第1軸方向端面と第2コアの第2軸方向端面とが互いに当接すると共に、第1コアの第1軸方向端面に形成された第1凹凸部と第2コアの第2軸方向端面に形成された第2凹凸部とが互いに嵌合する。このため、第1コア及び第2コアを軸方向、径方向、及び周方向において位置決めすることができる。また、第1コアの第1軸方向端面と第2コアの第2軸方向端面とが互いに当接した状態では、ハウジングとカバーとの対向面同士間に隙間が形成される。このため、第1コアと第2コアとが互いに当接する前にハウジングとカバーとが当接するのを回避することができるので、第1コアと第2コアとの位置決め精度を高めることができる。更に、ハウジング及びカバーがそれぞれ樹脂により形成されている。このため、オイルポンプの軽量化を図ることができる。従って、オイルポンプの軽量化を図りつつ、第1コアと第2コアとの各方向の位置決めにより各部材の組付け精度を確保することができる。
【0011】
また、本発明の一態様は、外歯を有するインナロータと、前記インナロータを偏心状態で回転可能に収容するインナロータ用収容部と、前記外歯に噛合する内歯と、を有するアウタロータと、前記インナロータ及び前記アウタロータを収容するロータ用収容部と、前記ロータ用収容部を形成する筒壁から径方向外側に突出するフランジ部と、を有する筒状の第1コアと、前記第1コアを保持する凹部と、前記第1コアの前記フランジ部に対向するフランジ対向部と、を有する樹脂製のハウジングと、前記第1コアに対して軸方向に当接配置され、前記ロータ用収容部の開口を閉塞する盤状の第2コアと、を備えるオイルポンプであって、前記第1コアは、前記第2コアに当接する第1当接部と、前記第1当接部が前記第2コアに当接した状態で前記第2コアに係合する第1係合部と、を有し、前記第2コアは、前記第1コアに当接する第2当接部と、前記第2当接部が前記第1コアに当接した状態で前記第1コアに係合する第2係合部と、を有し、前記第1当接部と前記第2当接部とが互いに当接した状態で前記第1コアの前記フランジ部と前記ハウジングの前記フランジ対向部との間に形成される隙間を備える、オイルポンプである。
【0012】
この構成によれば、第1コアの第1当接部と第2コアの第2当接部とが互いに当接すると共に、第1コアの第1係合部と第2コアの第2係合部とが互いに係合する。このため、第1コア及び第2コアを軸方向、径方向、及び周方向において位置決めすることができる。また、第1コアの第1当接部と第2コアの第2当接部とが互いに当接した状態では、ハウジングと第1コアとの対向面同士間に隙間が形成される。このため、第1コアと第2コアとが互いに当接した状態でハウジングと第1コアとが当接するのを回避することができるので、第1コアと第2コアとの位置決め精度を高めることができる。更に、ハウジングが樹脂により形成されている。このため、オイルポンプの軽量化を図ることができる。従って、オイルポンプの軽量化を図りつつ、第1コアと第2コアとの各方向の位置決めにより各部材の組付け精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るオイルポンプの正面側から見た斜視図である。
図2】オイルポンプの背面側正面側から見た斜視図である。
図3】オイルポンプの分解図である。
図4】オイルポンプの正面図である。
図5】オイルポンプを図4に示すV-Vで切断した際の断面図である。
図6】オイルポンプが備える第1コアの斜視図である。
図7】オイルポンプが備えるハウジングに第1コアを組み付けた組付体の斜視図である。
図8】オイルポンプが備えるハウジングに第1コアを組み付けた組付体の正面図である。
図9】ハウジングに第1コアを組み付けた組付体を図8に示すIX-IXで切断した際の断面図である。
図10】オイルポンプが備える第2コアの斜視図である。
図11】オイルポンプが備えるカバーに第2コアを組み付けた組付体の正面図である。
図12】カバーに第2コアを組み付けた組付体を図11に示すXII-XIIで切断した際の断面図である。
図13】オイルポンプの要部の拡大断面図である。
図14】第2実施形態に係るオイルポンプが備える第1コアの斜視図である。
図15】オイルポンプが備えるハウジングに第1コアを組み付けた組付体の斜視図である。
図16】オイルポンプが備える第2コアの斜視図である。
図17】オイルポンプが備えるカバーに第2コアを組み付けた組付体の斜視図である。
図18】オイルポンプが備える第1コアと第2コアとが互いに当接配置された状態を表した斜視図である。
図19】オイルポンプが備える第1コアと第2コアとが互いに当接配置された状態での要部の拡大図である。
図20】オイルポンプの要部の拡大断面図である。
図21】第3実施形態に係るオイルポンプの正面側正面側から見た斜視図である。
図22】オイルポンプの正面図である。
図23】オイルポンプを図22に示すXXIII-XXIIIで切断した際の断面図である。
図24】オイルポンプを図23に示すXXIV-XXIVで切断した際の断面図である。
図25】オイルポンプを図23に示すXXV-XXVで切断した際の断面図である。
図26】オイルポンプが備えるシール部材の上面図である。
図27】オイルポンプの要部の拡大断面図である。
図28】一変形形態に係るオイルポンプの要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図28を用いて、本発明に係るオイルポンプの具体的な実施形態について説明する。
【0015】
[第1実施形態]
第1実施形態のオイルポンプ1は、吸入したオイルを圧送するトロコイド式の歯車ポンプである。オイルポンプ1は、例えば車両などに搭載される。オイルポンプ1は、図1及び図2に示す如く、ブロック状に形成されている。
【0016】
オイルポンプ1は、図3に示す如く、インナロータ10と、アウタロータ20と、を備えている。インナロータ10とアウタロータ20とは、トロコイドを構成している。インナロータ10及びアウタロータ20はそれぞれ、焼結金属(例えば、鉄系や銅鉄系,銅系,ステンレス系など)により形成されている。
【0017】
インナロータ10は、駆動シャフト2に固定された円板状(円盤状)又は円柱状の部材である。駆動シャフト2は、インナロータ10の回転中心に同軸上に取り付けられている。駆動シャフト2は、軸受3を介して後述の第2コアに回転可能に支持されている。インナロータ10は、外歯11を有している。外歯11は、インナロータ10の外周面に等角度間隔で設けられている。インナロータ10における外歯11の数は、所定数(例えば4個)である。
【0018】
アウタロータ20は、インナロータ10が噛み合う円環状又は円筒状の部材である。アウタロータ20は、インナロータ用収容部21と、内歯22と、を有している。インナロータ用収容部21は、筒壁23に囲まれる空間である。インナロータ用収容部21は、インナロータ10を偏心状態で回転可能に収容する容量を有している。内歯22は、筒壁23の内周面から径方向内側に突出するように設けられている。内歯22は、筒壁23の内周面に等角度間隔で設けられている。アウタロータ20における内歯22の数は、インナロータ10における外歯11の数よりも予め定められた数(例えば一つ)多い所定数(例えば5個)である。アウタロータ20の内歯22は、インナロータ10の外歯11に噛合する。インナロータ10は、外歯11がアウタロータ20の内歯22に噛み合いつつアウタロータ20に対して偏心した状態でそのアウタロータ20内に回転可能に収容されている。
【0019】
オイルポンプ1は、第1コア30を備えている。第1コア30は、筒状(具体的には、円筒状)に形成されており、軸方向に所定長さを有するように形成されている。第1コア30は、鉄やアルミニウムなどの金属により形成されている。第1コア30は、プレス加工、圧造、又はダイカストにより成形された成形体或いは更に切削加工が施された加工品である。尚、第1コア30は、金属に代えて、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂により形成されていてもよく、更に切削加工が施された加工品であってもよい。
【0020】
第1コア30は、図3及び図6に示す如く、ロータ用収容部31を有している。ロータ用収容部31は、円筒状の筒壁32と、円板状の底壁33と、に囲まれる空間である。ロータ用収容部31は、インナロータ10及びアウタロータ20を収容可能な容量を有している。ロータ用収容部31には、インナロータ10及びアウタロータ20が収容される。ロータ用収容部31における底壁33とは軸方向反対側は、開口している。インナロータ10及びアウタロータ20は、ロータ用収容部31への組付け時においてそのロータ用収容部31にその開口側の軸方向から挿入される。アウタロータ20は、ロータ用収容部31に収容される。
【0021】
筒壁32は、径方向に所定厚さを有している。筒壁32は、底壁33に接続する部位とは軸方向反対側において開口側の軸方向外側に向いた軸方向端面32aを有している。軸方向端面32aには、図6に示す如く、軸方向外側へ突出する突部34が形成されている。突部34は、第1コア30を後述の第2コアに対して径方向及び周方向に位置決めするための位置決め凸部である。突部34は、ピン状に形成されている。突部34は、軸方向端面32aにおいて第1コア30の周方向に亘って複数箇所に設けられていることが径方向への位置決めを行ううえで望ましい。尚、図6には、突部34が二箇所設けられている第1コア30が示されている。
【0022】
底壁33には、2つの連通溝35,36が設けられている。連通溝35は、後述のハウジング40の流入孔と、第1コア30のロータ用収容部31内で第2コア50に仕切られる容積室37(図9参照)と、を連通する流入通路の一部をなす。連通溝35は、軸方向から見て駆動シャフト2ひいてはインナロータ10の反回転方向端側から回転方向端側にかけて通路の有効断面積が大きくなるように形成されている。また、連通溝36は、容積室37とハウジング40の排出孔とを連通する排出通路の一部をなす。連通溝36は、軸方向から見て駆動シャフト2ひいてはインナロータ10の反回転方向端側から回転方向端側にかけて通路の有効断面積が小さくなるように形成されている。連通溝35と連通溝36とは、底壁33において直接的には互いに接続していない。
【0023】
オイルポンプ1は、図1図2、及び図4に示す如く、ハウジング40を備えている。ハウジング40は、トロコイドを保持する大きさに形成されている。ハウジング40は、樹脂(特に、熱可塑性樹脂)により形成されている。ハウジング40を形成する樹脂は、耐クリープ性や耐荷重性,耐摩耗性などに優れていることが好ましく、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂や熱可塑性ポリイミド樹脂などである。ハウジング40は、射出成形などにより成形される。
【0024】
ハウジング40は、第1コア30が配置収容される凹部41を有している。凹部41は、第1コア30の外形に合わせた形状(具体的には、円柱状)に形成されている。第1コア30は、底壁33が凹部41の底壁に対向しかつ開口側が凹部41の開口側に向くように凹部41に収容されて保持される。ハウジング40は、図1及び図2に示す如く、オイルが流入する流入孔42と、オイルが排出される排出孔43と、を有している。流入孔42は、凹部41に配置された第1コア30の連通溝35に連通している。排出孔43は、凹部41に配置された第1コア30の連通溝36に連通している。ハウジング40の流入孔42に流入したオイルは、第1コア30の連通溝35,36を経由して排出孔43から外部へ排出される。
【0025】
オイルポンプ1は、第2コア50を備えている。第2コア50は、円板状又は円柱状に形成されており、軸方向に所定厚さを有するように形成されている。第2コア50は、第1コア30と同様に、鉄やアルミニウムなどの金属により形成されている。第2コア50は、プレス加工、圧造、又はダイカストにより成形された成形体或いは更に切削加工が施された加工品である。尚、第2コア50は、金属に代えて、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂により形成されていてもよく、更に切削加工が施された加工品であってもよい。
【0026】
第2コア50は、第1コア30に対して軸方向に隣接して配置される。第2コア50は、第1コア30に対して軸方向に当接して位置決めされる。第2コア50には、図5及び図10に示す如く、軸方向に貫通する貫通孔51が設けられている。貫通孔51には、駆動シャフト2の先端部が挿通される。駆動シャフト2は、貫通孔51に配置された軸受3を介して回転可能に支持されている。尚、図5においては、軸受3の図示が省略されている。
【0027】
第2コア50は、それぞれ第1コア30の容積室37に連通する2つの連通溝52,53を有している。連通溝52,53は、第2コア50における第1コア30の軸方向端面32aに対向した軸方向端面50aに形成されている。連通溝52は、第1コア30の連通溝35に軸方向に対向する位置に配置されている。また、連通溝53は、第1コア30の連通溝36に軸方向に対向する位置に配置されている。連通溝52,53はそれぞれ、駆動シャフト2ひいてはインナロータ10の反回転方向端側から回転方向端側にかけて通路の有効断面積が略等しくなるように形成されている。連通溝52と連通溝53とは、第2コア50において直接的には互いに接続していない。
【0028】
第2コア50の軸方向端面50aには、軸方向に凹んだ孔部54が形成されている。孔部54は、第1コア30を第2コア50に対して径方向及び周方向に位置決めするための位置決め凹部である。孔部54は、第1コア30の突部34に対応してその突部34の数と同数設けられている。孔部54は、突部34に対応した形状に形成されており、例えば円形孔である。
【0029】
突部34と孔部54との嵌合に起因して第1コア30の軸方向端面32aと第2コア50の軸方向端面50aとの当接が妨げられるのを回避するため、すなわち、その嵌合時に突部34の先端が孔部54の底面を押圧する事態を生じさせないために、第2コア50の軸方向端面50aからの孔部54の軸方向深さは、第1コア30の軸方向端面32aからの突部34の軸方向突出量以上となるように設定されている。尚、孔部54は、突部34と同様に、軸方向端面50aにおいて第2コア50の周方向に亘って複数箇所に設けられていることが望ましい。
【0030】
第1コア30と第2コア50とは、第1コア30の軸方向端面32aと第2コア50の軸方向端面50aとが互いに当接することにより互いに軸方向において位置決めされると共に、突部34が孔部54に嵌ることにより互いに径方向及び周方向において位置決めされる。
【0031】
オイルポンプ1は、カバー60を備えている。カバー60は、ハウジング40に対して凹部41の開口側の軸方向に配置されている。カバー60は、ハウジング40の凹部41の開口を閉塞する。カバー60は、円板状又は円環状に形成された部材である。カバー60は、樹脂(特に、熱可塑性樹脂)により形成されている。カバー60を形成する樹脂は、耐クリープ性や耐荷重性,耐摩耗性などに優れていることが好ましく、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂や熱可塑性ポリイミド樹脂などである。尚、カバー60の素材は、ハウジング40の素材と同一であってもよい。カバー60は、射出成形などにより成形される。
【0032】
カバー60は、図13に示す如く、第2コア50を保持するための保持孔61と、第2コア50を嵌合させるための保持溝62と、を有している。保持孔61は、カバー60の軸中心において軸方向に貫通している。保持孔61は、第2コア50の外形に合わせた大きさに形成されている。保持溝62は、保持孔61の周縁に設けられており、環状に形成されている。第2コア50の外周側面には、径方向外側へ突出する突部55が環状に形成されている。第2コア50は、突部55がカバー60の保持溝62に嵌められることでカバー60の保持孔61に保持される。
【0033】
カバー60は、図11及び図12に示す如く、保持孔61の径方向外側に位置する部位において軸方向に貫通する断面円形の締結孔63を有している。締結孔63は、周方向に亘って複数箇所(図11においては4箇所)に設けられている。また、ハウジング40は、凹部41の径方向外側に位置する部位において軸方向に延びる断面円形の締結孔44を有している。締結孔44は、駆動シャフト2回りの周方向において複数箇所(図7においては4箇所)に設けられている。締結孔63と締結孔44とは、互いに対応した位置に同じ数だけ設けられている。カバー60は、ボルト70が、カバー60の締結孔63内に配置されたカラー71及びハウジング40の締結孔44内に配置されたカラー72を通してナット(図示せず)に螺合されることにより、ハウジング40に対して締結固定される。尚、図5においては、カラー71,72の図示が省略されている。
【0034】
カバー60がハウジング40に固定されると、ハウジング40の凹部41に保持された第1コア30の軸方向端面32aとカバー60の保持孔61に保持された第2コア50の軸方向端面50aとが互いに当接すると共に、ハウジング40における凹部41の径方向外側に位置する軸方向端面40aと、カバー60における保持孔61の径方向外側に位置する軸方向端面60aとが互いに軸方向に対向する。以下、これらの軸方向端面40a,60aを対向面40a,60aと称す。上記の対向時、図13に示す如く、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとは、後述のシール構造の部分を除いて互いに当接しない。すなわち、対向面40a,60a同士の間には、隙間Sが形成される。隙間Sは、軸方向に長さtを有する。
【0035】
第1コア30は、ハウジング40の凹部41に保持された状態で筒壁32における軸方向端面32aを含む軸方向先端部38がハウジング40の対向面40aよりも軸方向外側に飛び出るように形成されている。第1コア30がハウジング40の凹部41に保持された状態で、第1コア30の軸方向端面32aの軸方向位置は、ハウジング40の対向面40aよりも軸方向外側(カバー60側)である。また、第2コア50は、カバー60の保持孔61に保持された状態で軸方向端面50aがカバー60の対向面60aよりも軸方向外側に飛び出ることなく保持孔61内に収まるように形成されている。第2コア50がカバー60の保持孔61に保持された状態で、第2コア50の軸方向端面50aの軸方向位置は、カバー60の対向面60aよりも軸方向外側でなく、軸方向内側の保持孔61内に収まる位置である。
【0036】
カバー60がハウジング40に取り付け固定されて第1コア30の軸方向端面32aと第2コア50の軸方向端面50aとが互いに当接している状態では、第1コア30の軸方向端面32aを含む軸方向先端部38がハウジング40の対向面40aよりも軸方向外側に飛び出る飛出量(すなわち、第1コア30の軸方向端面32aとハウジング40の対向面40aとが軸方向にずれる距離(軸方向距離))をL1とし、第2コア50の軸方向端面50aがカバー60の対向面60aよりも軸方向内側に引っ込む引込量(すなわち、第2コア50の軸方向端面50aとカバー60の対向面60aとが軸方向にずれる距離(軸方向距離))をL2(但し、L2は0以上であればよい。)とすると、次式(1)の関係が成立する。また、上記の隙間Sの長さtと距離L1,L2とは次式(1)´の関係が成立する。
L1>L2 ・・・(1)
L1-L2=t ・・・(1)´
【0037】
ハウジング40及びカバー60の対向面40a,60a同士は、シール構造を有している。このシール構造は、凹凸が嵌合する構造である。ハウジング40の対向面40aには、図7及び図8に示す如く、凹状部45が設けられている。凹状部45は、対向面40aに環状に形成される環状溝である。カバー60の対向面60aには、凸状部65が設けられている。凸状部65は、対向面60aに環状に形成される環状突起である。凹状部45及び凸状部65は、互いに対応した形状(例えば台形状)に形成されている。凹状部45と凸状部65とは、ハウジング40とカバー60との組み付け時、互いに当接しながら弾性変形して互いに密着する。この際、凹状部45と凸状部65とは、周方向全周に亘って隙間無く密着して嵌合する。このように凹状部45に凸状部65が嵌合すると、シール性が確保される。
【0038】
上記のオイルポンプ1においては、駆動シャフト2が回転すると、第1コア30のロータ用収容部31内でトロコイドをなすインナロータ10がアウタロータ20に対して回転する。この回転中、第1コア30のロータ用収容部31内の容積室37の容積が増大することによりその内圧が負圧になると、流入孔42からその容積室37にオイルが吸入される。その後、トロコイドの回転により容積室37の容積が減少することによりその内圧が上昇すると、その容積室37に吸入されたオイルが排出孔43へ導かれて外部へ排出される。このポンプ作用がトロコイドの回転によって連続的に行われると、オイルポンプ1からオイルが圧送される。
【0039】
また、上記構造を有するオイルポンプ1においては、第1コア30のロータ用収容部31にインナロータ10及びアウタロータ20が収容され、その第1コア30が凹部41に配置されたハウジング40に、保持孔61に第2コア50が保持されたカバー60がボルト70の締結により固定されると、第1コア30の軸方向端面32aと第2コア50の軸方向端面50aとが互いに当接する。
【0040】
第1コア30及び第2コア50はそれぞれ、金属により形成されている。このため、上記の当接が生じている状態では、第1コア30と第2コア50とが相対的に軸方向に移動することはできないので、両コア30,50が互いに軸方向において位置決めされる。また、上記の当接が生じている状態では、第1コア30の軸方向端面32aに設けられた突部34が第2コア50の軸方向端面50aに設けられた孔部54に嵌るので、両コア30,50が互いに径方向及び周方向において位置決めされる。また、第1コア30及び第2コア50はそれぞれ、切削加工された切削加工品である。このため、上記した両コア30,50の軸方向位置決め、径方向位置決め、及び周方向位置決めを更に精度良いものとすることができる。
【0041】
また、第1コア30の軸方向端面32aと第2コア50の軸方向端面50aとが互いに当接する状態では、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとの間に長さtの隙間Sが形成される。このため、第1コア30と第2コア50とが互いに当接する前にハウジング40とカバー60とが当接するのを回避することができるので、第1コア30と第2コア50との位置決め精度を高めることができる。
【0042】
上記の如く第1コア30と第2コア50とが軸方向、径方向、及び周方向それぞれにおいて位置決めされると、インナロータ10及びアウタロータ20を収容する第1コア30内の容積室37の容量バラツキが抑えられるので、安定した吐出量を確保することができる。また、上記の如く第1コア30と第2コア50とが軸方向、径方向、及び周方向それぞれにおいて位置決めされれば、オイルポンプ1を組み立てるうえでの各部材の組付け精度を大きく向上させることができる。
【0043】
また、ハウジング40及びカバー60はそれぞれ、樹脂により形成されている。このため、ハウジング40及びカバー60が金属により形成されている構造に比べて、オイルポンプ1の軽量化を図ることができる。また、第1コア30の軸方向端面32aと第2コア50の軸方向端面50aとが互いに当接した状態では、ハウジング40とカバー60とが互いに当接することはないので、ハウジング40及びカバー60を精度良く加工することは不要である。このため、製造上の手間を省くことができ、製造時間を短縮することができる。
【0044】
従って、オイルポンプ1によれば、ハウジング40及びカバー60の樹脂形成により全体での軽量化を図りつつ、第1コア30と第2コア50との各方向の位置決めにより各部材の組付け精度を確保することができる。
【0045】
更に、オイルポンプ1においては、第1コア30と第2コア50とが位置決めされた状態で、それらのコア30,50の径方向外側において、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとは互いに当接しないが、それらの対向面40a,60a同士がシール構造を有している。具体的には、ハウジング40の対向面40aに設けられた凹状部45に、カバー60の対向面60aに設けられた凸状部65が嵌合する。この嵌合は、凹状部45と凸状部65とが周方向全周に亘って隙間無く密着するように行われる。
【0046】
このため、オイルポンプ1によれば、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとの間に隙間Sが形成されていても、上記のシール構造により、インナロータ10及びアウタロータ20からなるトロコイドを収容する第1コア30が配置されたハウジング40の凹部41側からその隙間Sを介してオイルが漏れるのを抑えることができる。
【0047】
尚、上記の第1実施形態においては、第1コア30の軸方向端面32aが特許請求の範囲に記載した「第1軸方向端面」に、第2コア50の軸方向端面50aが特許請求の範囲に記載した「第2軸方向端面」に、第1コア30の突部34が特許請求の範囲に記載した「第1凹凸部」に、第2コア50の孔部54が特許請求の範囲に記載した「第2凹凸部」に、ハウジング40の対向面40aが特許請求の範囲に記載した「第1対向面」に、カバー60の対向面60aが特許請求の範囲に記載した「第2対向面」に、それぞれ相当している。
【0048】
ところで、上記の第1実施形態においては、第1コア30の筒壁32の軸方向端面32aに軸方向外側へ突出する突部34が形成され、かつ、第2コア50の軸方向端面50aに軸方向に凹んだ孔部54が形成されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。第1コア30の筒壁32の軸方向端面32aに軸方向に凹んだ孔部が形成され、かつ、第2コア50の軸方向端面50aに軸方向外側へ突出する突部が形成されていてもよい。この場合、突部と孔部との嵌合に起因して第1コア30の軸方向端面32aと第2コア50の軸方向端面50aとの当接が妨げられるのを回避するため、すなわち、その嵌合時に突部の先端が孔部の底面を押圧する事態を生じさせないために、第1コア30の軸方向端面32aからの孔部の軸方向深さは、第2コア50の軸方向端面50aからの突部の軸方向突出量以上となるように設定される。この変形形態においても、上記の第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0049】
[第2実施形態]
上記の第1実施形態においては、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとの間に隙間Sを形成するのに、第1コア30の筒壁32の軸方向端面32aがハウジング40の対向面40aよりも軸方向外側に飛び出た軸方向位置に位置すると共に、第2コア50の軸方向端面50aがカバー60の対向面60aよりも軸方向内側に引っ込んだ軸方向位置に位置するものとしたうえで、上記(1)式の関係が成立するものとした。すなわち、第1コア30の軸方向端面32aがハウジング40の対向面40aよりも軸方向外側に飛び出る飛出量である軸方向距離L1を、第2コア50の軸方向端面50aがカバー60の対向面60aよりも軸方向内側に引っ込む引込量である軸方向距離L2よりも大きくした。
【0050】
これに対して、第2実施形態においては、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとの間に隙間Sを形成するのに、第1コア110の筒壁32の軸方向端面32aがハウジング40の対向面40aよりも軸方向内側に引っ込んだ位置に位置すると共に、第2コア120の軸方向端面120aがカバー60の対向面60aよりも軸方向外側に飛び出た軸方向位置に位置するものとしたうえで、第1コア110の軸方向端面32aとハウジング40の対向面40aとが軸方向にずれる軸方向距離(但し、この軸方向距離は0以上であればよい。)を、第2コア120の軸方向端面120aとカバー60の対向面60aとが軸方向にずれる軸方向距離よりも小さくすることとしてもよい。この変形形態においても、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
すなわち、第2実施形態のオイルポンプ100は、第1実施形態のオイルポンプ1と同様に、吸入したオイルを圧送するトロコイド式の歯車ポンプである。尚、オイルポンプ100において、オイルポンプ1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。オイルポンプ100は、オイルポンプ1の第1コア30及び第2コア50に代えて、第1コア110及び第2コア120を備えている。第1コア110は、後述の部分を除いて第1コア30と同じ構成を有している。第2コア120は、後述の部分を除いて第2コア50と同じ構成を有している。
【0052】
第1コア110は、図14に示す如く、筒壁32と底壁33とに囲まれたロータ用収容部31を有している。筒壁32の軸方向端面32aには、筒壁32の周方向一部を切り欠いた切欠部111が形成されている。切欠部111は、第1コア110を第2コア120に対して径方向及び周方向に位置決めするための位置決め凹部である。切欠部111は、第1コア110の筒壁32の周方向一箇所に設けられており、周方向に湾曲状に延びている。第1コア110は、図15に示す如く、ハウジング40の凹部41に配置されて保持される。
【0053】
第2コア120は、図16に示す如く、第1コア110に対して軸方向に隣接して配置される。第2コア120は、第1コア110に対して軸方向に当接して位置決めされる。第2コア120の軸方向端面120aには、軸中心部を含む領域において軸方向に突出する突出円板部121が形成されている。突出円板部121は、略円板状に形成されている。突出円板部121は、第1コア110の筒壁32の内径側に嵌るように形成されている。突出円板部121の外径は、第1コア110の筒壁32の内径に合致している。
【0054】
図17に示す如く、第2コア120における突出円板部121の外周側には、外縁に沿って延びる凹溝が形成される。この凹溝は、軸方向から見てC字状に形成されている。この凹溝の底面は、軸方向端面120aにおける第1コア110の軸方向端面32aに当接する部分をなす。突出円板部121には、第2コア120の軸方向端面120aの外縁の周方向一部から軸方向に突出する突出部122が連続して一体に形成されている。突出部122と突出円板部121とは、面一の面を有するように形成されている。突出部122は、第2コア120の外縁の周方向一箇所に設けられており、周方向に湾曲状に延びている。突出部122は、第1コア110を第2コア120に対して径方向及び周方向に位置決めするための位置決め凸部である。突出部122は、切欠部111に対応した形状に形成されている。第2コア120は、図17に示す如く、カバー60の保持孔61に保持される。
【0055】
突出部122と切欠部111との嵌合に起因して第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとの当接が妨げられるのを回避するため、すなわち、その嵌合時に突出部122の先端が切欠部111の底面を押圧する事態を生じさせないために、第1コア110の軸方向端面32aからの切欠部111の軸方向深さは、第2コア120の軸方向端面120aからの突出部122の軸方向突出量以上となるように設定されている。
【0056】
第1コア110と第2コア120とは、第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとが互いに当接することにより互いに軸方向において位置決めされると共に、突出部122が切欠部111に嵌ることにより互いに径方向及び周方向において位置決めされる(図18及び図19参照)。
【0057】
凹部41に第1コア110が保持されたハウジング40に、保持孔61に第2コア120が保持されたカバー60が固定されると、第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとが互いに当接すると共に、ハウジング40における凹部41の径方向外側に位置する対向面40aと、カバー60における保持孔61の径方向外側に位置する対向面60aとが互いに軸方向に対向する。この対向時、図20に示す如く、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとは、シール構造の部分を除いて互いに当接しない。すなわち、対向面40a,60a同士の間には、隙間Sが形成される。隙間Sは、軸方向に長さtを有する。
【0058】
第1コア110は、ハウジング40の凹部41に保持された状態で、筒壁32の軸方向端面32aの軸方向位置がハウジング40の対向面40aよりも軸方向外側でないようにすなわち凹部41内に引っ込んだ位置であるように形成されている。また、第2コア120は、カバー60の保持孔61に保持された状態で、軸方向端面120aの軸方向位置がカバー60の対向面60aよりも軸方向外側(ハウジング40側)であるようにすなわち軸方向外側に飛び出た位置であるように形成されている。
【0059】
カバー60がハウジング40に取り付け固定されて第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとが互いに当接している状態では、第1コア110の軸方向端面32aの軸方向位置がハウジング40の対向面40aよりも軸方向内側に引っ込む引込量(すなわち、第1コア110の軸方向端面32aとハウジング40の対向面40aとが軸方向にずれる距離(軸方向距離))をL11(但し、L11は0以上であればよい。尚、図20には、L11=0の場合が示されている。)とし、第2コア120の軸方向端面120aがカバー60の対向面60aよりも軸方向外側に飛び出る飛出量(すなわち、第2コア120の軸方向端面120aとカバー60の対向面60aとが軸方向にずれる距離(軸方向距離))をL12とすると、次式(2)の関係が成立する。また、上記の隙間Sの長さtと距離L11,L12とは次式(2)´の関係が成立する。
L12>L11 ・・・(2)
L12-L11=t ・・・(2)´
【0060】
上記のオイルポンプ100においては、ロータ用収容部31にインナロータ10及びアウタロータ20が収容された第1コア110が凹部41に配置されたハウジング40に、保持孔61に第2コア120が保持されたカバー60がボルト70の締結により固定されると、第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとが互いに当接する。
【0061】
第1コア110及び第2コア120はそれぞれ、金属により形成されている。このため、上記の当接が生じている状態では、第1コア110と第2コア120とが相対的に軸方向に移動することはできないので、両コア110,120が互いに軸方向において位置決めされる。また、上記の当接が生じている状態では、第1コア110の軸方向端面32aに設けられた切欠部111に第2コア120の軸方向端面120aに設けられた突出部122が嵌るので、両コア110,120が互いに径方向及び周方向において位置決めされる。また、第1コア110及び第2コア120はそれぞれ、切削加工された切削加工品である。このため、上記した両コア110,120の軸方向位置決め、径方向位置決め、及び周方向位置決めを更に精度良いものとすることができる。
【0062】
また、第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとが互いに当接する状態では、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとの間に長さtの隙間Sが形成される。このため、第1コア110と第2コア120とが互いに当接する前にハウジング40とカバー60とが当接するのを回避することができるので、第1コア110と第2コア120との位置決め精度を高めることができる。
【0063】
上記の如く第1コア110と第2コア120とが軸方向、径方向、及び周方向それぞれにおいて位置決めされると、第1コア110内の容積室37の容量バラツキが抑えられるので、安定した吐出量を確保することができる。また、上記の如く第1コア110と第2コア120とが軸方向、径方向、及び周方向それぞれにおいて位置決めされれば、オイルポンプ100を組み立てるうえでの各部材の組付け精度を大きく向上させることができる。
【0064】
また、ハウジング40及びカバー60はそれぞれ、樹脂により形成されている。このため、ハウジング40及びカバー60が金属により形成されている構造に比べて、オイルポンプ100の軽量化を図ることができる。また、第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとが互いに当接した状態では、ハウジング40とカバー60とが互いに当接することはないので、ハウジング40及びカバー60を精度良く加工することは不要である。このため、製造上の手間を省くことができ、製造時間を短縮することができる。
【0065】
従って、オイルポンプ100によれば、上記した第1実施形態のオイルポンプ1と同様に、ハウジング40及びカバー60の樹脂形成により全体での軽量化を図りつつ、第1コア110と第2コア120との各方向の位置決めにより各部材の組付け精度を確保することができる。更に、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとがシール構造を有するので、上記した第1実施形態のオイルポンプ1と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、オイルポンプ100においては、第2コア120の軸方向端面120aに、軸中心部を含む領域において軸方向に突出する突出円板部121が形成されており、第1コア110と第2コア120との組み付け時、突出円板部121が第1コア110の筒壁32の内径側に嵌る。かかる構造によれば、第1コア110と第2コア120との組み付けを円滑にかつ確実に行うことができるため、その組み付け性を向上させることができる。
【0067】
尚、上記の第2実施形態においては、第1コア110の軸方向端面32aが特許請求の範囲に記載した「第1軸方向端面」に、第2コア120の軸方向端面120aが特許請求の範囲に記載した「第2軸方向端面」に、第1コア110の切欠部111が特許請求の範囲に記載した「第1凹凸部」に、第2コア120の突出部122が特許請求の範囲に記載した「第2凹凸部」に、それぞれ相当している。
【0068】
ところで、上記の第2実施形態においては、第1コア110の筒壁32の軸方向端面32aに筒壁32の周方向一部を切り欠いた切欠部111が形成され、かつ、第2コア120の軸方向端面120aに第2コア120の外縁の周方向一部から軸方向に突出する突出部122が形成されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。第1コア110の筒壁32の軸方向端面32aに周方向一部から軸方向に突出する突出部が形成され、かつ、第2コア120の軸方向端面120aに第2コア120の外縁の周方向一部を切り欠いた切欠部が形成されていてもよい。この場合、突出部と切欠部との嵌合に起因して第1コア110の軸方向端面32aと第2コア120の軸方向端面120aとの当接が妨げられるのを回避するため、すなわち、その嵌合時に突出部の先端が切欠部の底面を押圧する事態を生じさせないために、第2コア120の軸方向端面120aからの切欠部の軸方向深さは、第1コア110の軸方向端面32aからの突出部の軸方向突出量以上となるように設定される。この変形形態においても、上記の第2実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0069】
尚、上記の第1及び第2実施形態においては、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとの間のシール構造として、ハウジング40側が、溝である凹状部45を有し、カバー60側が、突起である凸状部65を有する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。ハウジング40側が、突起である凸状部を有し、カバー60側が、溝である凹状部を有することとしてもよい。
【0070】
また、上記の第1及び第2実施形態において、第1コア30,110と第2コア50,120とのうち何れか一方のコアは、その軸方向端面32a,50a,120aの軸方向位置がハウジング40の対向面40a又はカバー60の対向面60aよりも軸方向外側であるように形成されると共に、何れか他方のコアは、その軸方向端面32a,50a,120aの軸方向位置がカバー60の対向面60a又はハウジング40の対向面40aよりも軸方向外側でないようにすなわち引っ込んだ位置であるように形成されるものとした。この構成によれば、軸方向外側に突出するコアと軸方向内側に引っ込んだコアとの組み付けを、軸方向外側に突出するコアの軸方向外側部分が軸方向内側に引っ込んだコアを保持するカバー60又はハウジング40の内面にガイドされながら行うことができるため、その組み付け性を向上させることができる。
【0071】
しかし、本発明はこれに限定されるものではない。両方のコアが共に、その軸方向端面32a,50a,120aの軸方向位置がハウジング40の対向面40a又はカバー60の対向面60aよりも軸方向外側であるように形成されるものとしてもよい。この構造でも、オイルポンプ1,100の組付け完了後、ハウジング40の対向面40aとカバー60の対向面60aとの間に、軸方向長さtの隙間Sが形成されるものであればよい。
【0072】
[第3実施形態]
第3実施形態のオイルポンプ200は、上記のオイルポンプ1,100と同様に、吸入したオイルを圧送するトロコイド式の歯車ポンプである。オイルポンプ200は、オイルポンプ1の第1コア30、ハウジング40、第2コア50、及びカバー60に代えて、図21図22図23図24、及び図25に示す如く、第1コア210、第2コア220、及びハウジング230を備えることにより実現される。尚、オイルポンプ200において、オイルポンプ1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0073】
第1コア210は、後述の部分を除いて第1コア30と同じ構成を有している。第1コア210は、ロータ用収容部211を有していると共に、フランジ部212を有している。ロータ用収容部211は、円筒状の筒壁213と、円板状の底壁214と、に囲まれる空間である。ロータ用収容部211は、インナロータ10及びアウタロータ20を収容可能な容量を有している。ロータ用収容部211には、インナロータ10及びアウタロータ20が収容される。ロータ用収容部211における底壁214とは軸方向反対側は、開口している。第1コア210は、筒壁213及び底壁214がハウジング230の後述の凹部231内に収容された状態でハウジング230に保持される。フランジ部212は、筒壁213の軸方向開口側の端部から径方向外側に突出する部位である。フランジ部212は、ハウジング230の外形に合致する外形を有している。フランジ部212は、ハウジング230の後述の軸方向端面230aに軸方向に対向する。
【0074】
第2コア220は、後述の部分を除いて第2コア50と同じ構成を有している。第2コア220は、ハウジング230の外形に合わせて盤状又は板状に形成されている。第2コア220は、略全域に亘って軸方向に所定厚さを有するように形成されている。第2コア220は、第1コア210に対して軸方向に隣接して配置される。第2コア220は、第1コア210に対して軸方向に当接して位置決めされると共に、第1コア210を介してハウジング230の軸方向端面230aに軸方向に対向する。第2コア220は、ハウジング230の凹部231ひいては第1コア210のロータ用収容部211の開口を閉塞する。
【0075】
第1コア210及び第2コア220は、互いに当接していると共に、当接状態で互いに係合して固定されている。第1コア210は、第1当接部215と、第1係合部216と、を有している。第2コア220は、第2当接部221と、第2係合部222と、を有している。第1当接部215は、上記のフランジ部212である。第1コア210の第1当接部215と第2コア220の第2当接部221とは、互いに当接する。
【0076】
第1コア210の第1係合部216と第2コア220の第2係合部222とは、互いに係合する。第1係合部216及び第2係合部222はそれぞれ、共通の係合ピン240が嵌合する凹部位である。第1係合部216は、第1当接部215に設けられた軸方向に貫通する貫通孔である。第2係合部222は、第2当接部221に設けられた軸方向に延びて開口する溝である。第1係合部216及び第2係合部222はそれぞれ、複数箇所(例えば2箇所)に設けられ、周方向に間隔を空けて配置されている。第1コア210と第2コア220とは、第1係合部216と第2係合部222とに係合ピン240が挿入されて嵌合することにより、第1当接部215と第2当接部221とが互いに当接した状態で互いに係合する。かかる係合が行われると、第1コア210と第2コア220とが径方向及び周方向に位置決めされる。
【0077】
ハウジング230は、後述の部分を除いてハウジング40と同じ構成を有している。ハウジング230は、第1コア210が配置収容される凹部231を有している。凹部231は、第1コア210の筒壁213の外形に合わせた形状(具体的には、円柱状)に形成されている。第1コア210は、底壁214が凹部231の底壁に対向しかつ開口側が凹部231の開口側に向いた状態で、筒壁213が凹部231に収容されると共にフランジ部212がハウジング230の軸方向端面230aに対向して保持される。ハウジング230の軸方向端面230aは、第1コア210のフランジ部212に対向するフランジ対向部である。
【0078】
ハウジング230は、係合ピン240の一端部が挿入されて嵌合する係合孔232を有している。係合ピン240は、第1コア210の第1係合部216と第2コア220の第2係合部222とハウジング230の係合孔232とに挿入されて嵌合する。かかる係合が行われると、第1コア210と第2コア220とハウジング230とが径方向及び周方向に位置決めされる。
【0079】
上記の如く第1コア210と第2コア220とハウジング230とが位置決めされると、第1コア210の第1当接部215と第2コア220の第2当接部221とが互いに当接する一方、第1コア210のフランジ部212とハウジング230の軸方向端面230aとは互いに当接しない。すなわち、第1コア210のフランジ部212とハウジング230の軸方向端面230aとの間に隙間Sが形成される。この隙間Sは、軸方向に長さtを有する。
【0080】
第1コア210は、ハウジング230の凹部231に保持された状態でフランジ部212がハウジング230の軸方向端面230aよりも軸方向外側に飛び出るように形成されている。第1コア210がハウジング230の凹部231に保持された状態で、第1コア210のフランジ部212におけるハウジング230の軸方向端面230aに対向する対向面212aの軸方向位置は、ハウジング230の軸方向端面230aよりも軸方向外側(第2コア220側)である。
【0081】
すなわち、図27に示す如く、第1コア210は、底壁214におけるハウジング230の軸方向端面230aに対向する対向面214aからフランジ部212の対向面212aまでの軸方向距離L21が、ハウジング230の凹部231の底面から軸方向端面230aまでの軸方向距離L22よりも大きくなるように形成されている。そして、上記の隙間Sの軸方向長さtと距離L21,L22とは次式(3)´の関係が成立する。
L21-L22=t ・・・(3)´
【0082】
オイルポンプ200は、締結部250を備えている。締結部250は、第1コア210と第2コア220とハウジング230とを締結する部位である。締結部250は、金属製のボルト251を有している。ボルト251の軸方向先端部には、雄ネジが形成されている。第1コア210は、軸方向に貫通する断面円形の締結孔217を有している。締結孔217は、第1コア210の第1当接部215に設けられている。第2コア220は、軸方向に貫通する断面円形の締結孔223を有している。締結孔223は、第2コア220の第2当接部221に設けられている。ハウジング230は、軸方向に貫通する断面円形の締結孔233を有している。締結孔233は、ハウジング230における凹部231の径方向外側に位置する部位に設けられている。
【0083】
締結孔217,233はそれぞれ、ボルト251の軸部の外径よりも僅かに大きな径を有している。締結孔223は、ボルト251の軸部の外径に略合致する径を有している。第2コア220の締結孔223には、雌ネジが形成されている。締結孔217,223,233はそれぞれ、駆動シャフト2回りの周方向において複数箇所(例えば4箇所)に設けられており、互いに対応した位置に同じ数だけ設けられている。
【0084】
オイルポンプ200は、金属製のカラー部材260を備えている。カラー部材260は、ハウジング230の締結孔233内に挿入配置される円筒状の部材である。カラー部材260は、締結部250による締結状態においてハウジング230の締結孔233の開口から僅かに軸方向に突出するように形成されている。カラー部材260がハウジング230の締結孔233の開口から軸方向に突出する長さは、上記の隙間Sに相当する長さである。
【0085】
第1コア210と第2コア220とハウジング230とは、径方向及び周方向に互いに位置決めされた状態で、ボルト251がハウジング230の締結孔233側から挿入されてカラー部材260内を通り更に第1コア210の締結孔217及び第2コア220の締結孔223を通ってその締結孔223の雌ネジに螺合されることにより締結される。この締結状態において、ボルト251のフランジ部と、カラー部材260と、第1コア210のフランジ部212(すなわち第1当接部215)と、第2コア220の第2当接部221と、が軸方向に当接した状態で並ぶ。
【0086】
オイルポンプ200は、シール部材270を備えている。シール部材270は、第1コア210のロータ用収容部211の底壁214とハウジング230の凹部231の底壁とが接する箇所に配置されている。シール部材270は、第1コア210とハウジング230との間のシール性を確保するための部材である。シール部材270は、第1コア210の連通溝35及びハウジング230の流入孔42が上記の底壁同士が接する箇所を介して外部(第1コア210の連通溝36及びハウジング230の排出孔43を含む。)に連通するのを阻止し、かつ、第1コア210の連通溝36及びハウジング230の排出孔43が上記の底壁同士が接する箇所を介して外部に連通するのを阻止する機能を有している。
【0087】
シール部材270は、図26に示す如く、環状部271と、仕切部272と、を有している。環状部271は、環状に形成されている、仕切部272は、環状部271の周方向の二箇所を繋いでおり、ハウジング230の流入孔42側(すなわち第1コア210の連通溝35側)の領域と排出孔43側(すなわち第1コア210の連通溝36側)の領域とを仕切る部位である。第1コア210の底壁214におけるハウジング230の凹部231の底壁に対向する面には、シール溝218が設けられている。シール溝218は、シール部材270に合致するように形成されている。シール部材270は、第1コア210のシール溝218に嵌るように配置される。
【0088】
上記構成を有するオイルポンプ200の組み立ては、以下の手順に従って行われる。具体的には、まず、駆動シャフト2を第2コア220の貫通孔51に挿通し、その駆動シャフト2の軸方向先端部にインナロータ10を固定すると共に、第2コア220の第2係合部222に係合ピン240を圧入する。
【0089】
次に、第2コア220を、駆動シャフト2の軸方向先端部及びインナロータ10が第2コア220よりも上方に位置した状態で水平に広がるように配置し、そのインナロータ10と噛み合うようにアウタロータ20を配置すると共に、その第2コア220の上方から上記の第1コア210を組み付ける。この第2コア220への第1コア210の組み付けは、第1コア210のフランジ部212(すなわち第1当接部215)と第2コア220の第2当接部221とが軸方向に互いに当接しかつ第1コア210の第1係合部216に第2コア220側の係合ピン240が挿通されるように行われる。
【0090】
そして、第1コア210のシール溝218にシール部材270を配置したうえで、その上方からハウジング230を組み付ける。このハウジング230の組み付けは、ハウジング230の係合孔232に係合ピン240が圧入されるように行われる。最後に、そのハウジング230の締結孔233内にカラー部材260を挿入配置したうえで、締結部250のボルト251を、ハウジング230の締結孔233(ひいてはカラー部材260)、第1コア210の締結孔217、及び第2コア220の締結孔223に挿入し、締結孔223の雌ネジに螺合させる。これにより、オイルポンプ200が組み立てられる。
【0091】
上記のオイルポンプ200においては、駆動シャフト2が回転すると、第1コア210のロータ用収容部211内でトロコイドをなすインナロータ10がアウタロータ20に対して回転する。この回転中、第1コア210のロータ用収容部211内の容積室の容積が増大することによりその内圧が負圧になると、流入孔42からその容積室にオイルが吸入される。その後、トロコイドの回転により容積室の容積が減少することによりその内圧が上昇すると、その容積室に吸入されたオイルが排出孔43へ導かれて外部へ排出される。このポンプ作用がトロコイドの回転によって連続的に行われると、オイルポンプ200からオイルが圧送される。
【0092】
また、上記の如くオイルポンプ1が組み立てられると、ボルト251のフランジ部と、カラー部材260と、第1コア210のフランジ部212(すなわち第1当接部215)と、第2コア220の第2当接部221と、が軸方向に当接した状態で並ぶ。ボルト251、カラー部材260、第1コア210、及び第2コア220はそれぞれ、金属により形成されている。このため、上記の当接状態では、第1コア210と第2コア220とが相対的に軸方向に移動することはできないので、両コア210,220が互いに軸方向において位置決めされる。また、この当接状態では、両コア210,220が共通の係合ピン240を介して係合するので、両コア210,220が互いに径方向及び周方向において位置決めされる。また、第1コア210及び第2コア220はそれぞれ、切削加工された切削加工品である。このため、上記した両コア210,220の軸方向位置決め、径方向位置決め、及び周方向位置決めを更に精度良いものとすることができる。
【0093】
また、第1コア210の第1当接部215と第2コア220の第2当接部221とが互いに当接する状態では、ハウジング230の軸方向端面230aと第1コア210の第1当接部215との間に軸方向長さtの隙間Sが形成される。このため、第1コア210と第2コア220とが互いに当接した状態でハウジング230と第1コア210とが当接するのを回避することができるので、第1コア210と第2コア220との位置決め精度を高めることができる。
【0094】
上記の如く第1コア210と第2コア220とが軸方向、径方向、及び周方向それぞれにおいて位置決めされると、インナロータ10及びアウタロータ20を収容する第1コア210内の容積室37の容量バラツキが抑えられるので、安定した吐出量を確保することができる。また、上記の如く第1コア210と第2コア220とが軸方向、径方向、及び周方向それぞれにおいて位置決めされれば、オイルポンプ200を組み立てるうえでの各部材の組付け精度を大きく向上させることができる。
【0095】
また、ハウジング230は、樹脂により形成されている。このため、ハウジング230が金属により形成されている構造に比べて、オイルポンプ200の軽量化を図ることができる。また、第1コア210の第1当接部215と第2コア220の第2当接部221とが互いに当接した状態でハウジング230の軸方向端面230aを第1コア210の第1当接部215に当接させる必要はないので、ハウジング230を精度良く加工することは不要である。このため、製造上の手間を省くことができ、製造時間を短縮することができる。
【0096】
従って、オイルポンプ200によれば、ハウジング230の樹脂形成により全体での軽量化を図りつつ、第1コア210と第2コア220との各方向の位置決めにより各部材の組付け精度を確保することができる。
【0097】
また、オイルポンプ200において、第1コア210と第2コア220とハウジング230とは、第1コア210の第1当接部215と第2コア220の第2当接部221とが互いに当接した状態で、それらの当接部215,221に設けられた締結孔217,223及びハウジング230の締結孔233に挿入されるボルト251及びカラー部材260を用いて互いに締結固定される。この構造では、第1コア210と第2コア220とが互いに当接する部位(当接範囲内)でボルト締結が行われるため、シール性を向上させることができる。また、カラー部材260は、ハウジング230の締結孔233の開口から上記の隙間Sに相当する長さだけ軸方向に突出する金属製の部材である。上記のボルト締結はかかるカラー部材260を用いて行われるため、ボルト251の締付を精度良く管理することが可能である。
【0098】
また、オイルポンプ200において、第1コア210のロータ用収容部211の底壁214とハウジング230の凹部231の底壁とが接する箇所には、第1コア210とハウジング230との間のシール性を確保するためのシール部材270が配置されている。このシール部材270は、環状部271と仕切部272とを有し、第1コア210の連通溝35及びハウジング230の流入孔42が上記の底壁同士が接する箇所を介して外部に連通するのを阻止し、かつ、第1コア210の連通溝36及びハウジング230の排出孔43が上記の底壁同士が接する箇所を介して外部に連通するのを阻止する。このため、オイルポンプ200の各所からのオイル漏れを抑えることができ、インナロータ10の回転が阻害されるのを防止することができる。
【0099】
ところで、上記の第3実施形態においては、第1コア210と第2コア220とハウジング230とを締結するのに、ボルト251と共にカラー部材260を用いることとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、図28に示す如く、カラー部材を用いないものとしてもよい。この変形形態によれば、オイルポンプ200を構成する部品点数を削減することができ、オイルポンプ200の組み付けを簡素化することができる。また、この場合、軸部に段差が無いボルト251に代えて、軸部に段差が形成されたボルト252を用いることとしてもよい。
【0100】
また、上記の第3実施形態においては、オイルポンプ200の組み立て時に第1コア210と第2コア220とを位置決めするのに、第1コア210の第1係合部216と第2コア220の第2係合部222とに嵌る係合ピン240を用いることとし、組み立て後のオイルポンプ200にその係合ピン240が内蔵されるものとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、組み立て後のオイルポンプ200から係合ピン240を引き抜けるようにハウジング230や第2コア220を形成することとしてもよい。この変形形態によれば、オイルポンプ200の組み立て時に必要な部品を組み立て後に除去することができるので、オイルポンプ200の軽量化を図ることができる。
【0101】
更に、上記の第3実施形態においては、第1コア210と第2コア220とを位置決めするのに、第1コア210の第1当接部215に設けられた貫通孔である第1係合部216と、第2コア220の第2当接部221に設けられた貫通孔である第2係合部222と、それらの係合部216,222に嵌る係合ピン240と、を用いることとしている。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、第1コア210及び第2コア220のうち一方の当接部215,221に軸方向に凹む凹部を設け、その凹部に嵌る、他方の当接部215,221に軸方向に突出する凸部を設けることとしてもよい。
【0102】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1,100,200:オイルポンプ、2:駆動シャフト、10:インナロータ、11:外歯、20:アウタロータ、21:インナロータ用収容部、22:内歯、30,110,210:第1コア、31,211:ロータ用収容部、32,213:筒壁、32a,50a,120a:軸方向端面、33,214:底壁、34:突部、38:軸方向先端部、40,230:ハウジング、40a,60a,230a:軸方向端面(対向面)、41,231:凹部、45:凹状部、50,120,220:第2コア、54:孔部、60:カバー、61:保持孔、62:保持溝、65:凸状部、111:切欠部、122:突出部、212:フランジ部、215:第1当接部、216:第1係合部、221:第2当接部、222:第2係合部、240:係合ピン、250:締結部、251,252:ボルト、260:カラー部材、270:シール部材、S:隙間。
図1
図2
図3
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図28