(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20221101BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20221101BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20221101BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C5/00 H
B60C11/00 F
B60C11/03 C
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
(21)【出願番号】P 2019088071
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 菜摘
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-55493(JP,A)
【文献】特開2018-111452(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049765(WO,A1)
【文献】特開2003-159911(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207112(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3401125(EP,A1)
【文献】特開2001-219715(JP,A)
【文献】米国特許第6467517(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、
タイヤ幅方向における端部が前記主溝により区画される陸部と、
前記陸部に形成され、面取り部を有するサイプである複数の面取りサイプと、
前記陸部に形成され、面取り部を有さないサイプである複数の非面取りサイプと、
を備え、
前記面取りサイプは、前記陸部を区画する前記主溝に一端が連通し、他端は前記陸部内で終端し、
前記面取りサイプと前記非面取りサイプとは、タイヤ周方向に交互に配置され、
前記面取りサイプのタイヤ周方向における両側に位置する前記非面取りサイプのうち、前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離が近い側の前記非面取りサイプである近接サイプと前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離aと、前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離が遠い側の前記非面取りサイプと前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離bとの関係が、1.5≦(b/a)≦12の範囲内であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記面取りサイプと前記近接サイプとは、前記面取りサイプの長さLmと、前記近接サイプの長さLpとの関係が、0.2≦(Lm/Lp)≦0.95の範囲内である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記面取りサイプは、前記面取りサイプが有する対向する壁面のうち、前記近接サイプに近い側の前記壁面に前記面取り部を有する請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記面取りサイプと前記近接サイプとは、前記面取りサイプの開口幅Wmと、前記近接サイプの開口幅Wpとの関係が、1.2≦(Wm/Wp)≦6.0の範囲内である請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記面取りサイプは、開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係が、0.1≦(Wm1/Wm)≦0.85の範囲内である請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記陸部は、タイヤ幅方向における両側が前記主溝により区画され、
前記近接サイプは、前記陸部を区画する2本の前記主溝に連通する請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記面取りサイプと前記近接サイプとは、前記面取りサイプの溝深さDmと、前記近接サイプの溝深さDpとの関係が、1.2≦(Dp/Dm)≦8.0の範囲内である請求項1~6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記面取りサイプは、溝深さDmと面取り部深さDm1との関係が、0.1≦(Dm1/Dm)≦0.85の範囲内である請求項1~7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記陸部は、タイヤ幅方向における両側が前記主溝により区画され、
前記面取りサイプは、同じ前記陸部に形成される複数の前記面取りサイプが、同じ前記主溝に連通する請求項1~8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記面取りサイプと前記近接サイプとは、タイヤ回転方向における先着側に前記近接サイプが配置される請求項1~9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記面取りサイプが形成される前記陸部は、タイヤ子午断面視において、トレッドプロファイルの基準輪郭線からタイヤ径方向外側に膨出した踏面を有する請求項1~10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、濡れた路面の走行時におけるトレッド踏面と路面との間の水の排出等を目的としてトレッド部の表面に溝が複数形成されている。また、従来の空気入りタイヤの中には、トレッド部に形成する切り込みである、いわゆるサイプの形態を工夫することにより、排水性の向上を図っているものもある。例えば、特許文献1、2に記載された空気入りタイヤは、面取り部を有するサイプである面取りサイプの配置を工夫することにより、濡れた路面での走行性能であるウェット性能の向上を図っている。即ち、特許文献1、2では、面取りサイプが形成されるリブのタイヤ幅方向の両側を区画する2本の主溝のうちの一方に主溝に連通する面取りサイプと、他方の主溝に連通する面取りサイプとを、タイヤ周方向に交互に配置することにより、ウェット性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-111453号公報
【文献】特許第6364781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異なる主溝に連通する面取りサイプ同士をタイヤ周方向に交互に配置した場合、空気入りタイヤの使用初期における面取りサイプ同士の間の部分のリブの剛性が低くなる虞があり、空気入りタイヤの使用初期における、乾燥した路面での操縦安定性が低下し易くなる虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、タイヤ幅方向における端部が前記主溝により区画される陸部と、前記陸部に形成され、面取り部を有するサイプである複数の面取りサイプと、前記陸部に形成され、面取り部を有さないサイプである複数の非面取りサイプと、を備え、前記面取りサイプは、前記陸部を区画する前記主溝に一端が連通し、他端は前記陸部内で終端し、前記面取りサイプと前記非面取りサイプとは、タイヤ周方向に交互に配置され、前記面取りサイプのタイヤ周方向における両側に位置する前記非面取りサイプのうち、前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離が近い側の前記非面取りサイプである近接サイプと前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離aと、前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離が遠い側の前記非面取りサイプと前記面取りサイプとのタイヤ周方向における距離bとの関係が、1.5≦(b/a)≦12の範囲内であることを特徴とする。
【0007】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプと前記近接サイプとは、前記面取りサイプの長さLmと、前記近接サイプの長さLpとの関係が、0.2≦(Lm/Lp)≦0.95の範囲内であることが好ましい。
【0008】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプは、前記面取りサイプが有する対向する壁面のうち、前記近接サイプに近い側の前記壁面に前記面取り部を有することが好ましい。
【0009】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプと前記近接サイプとは、前記面取りサイプの開口幅Wmと、前記近接サイプの開口幅Wpとの関係が、1.2≦(Wm/Wp)≦6.0の範囲内であることが好ましい。
【0010】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプは、開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係が、0.1≦(Wm1/Wm)≦0.85の範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記陸部は、タイヤ幅方向における両側が前記主溝により区画され、前記近接サイプは、前記陸部を区画する2本の前記主溝に連通することが好ましい。
【0012】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプと前記近接サイプとは、前記面取りサイプの溝深さDmと、前記近接サイプの溝深さDpとの関係が、1.2≦(Dp/Dm)≦8.0の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプは、溝深さDmと面取り部深さDm1との関係が、0.1≦(Dm1/Dm)≦0.85の範囲内であることが好ましい。
【0014】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記陸部は、タイヤ幅方向における両側が前記主溝により区画され、前記面取りサイプは、同じ前記陸部に形成される複数の前記面取りサイプが、同じ前記主溝に連通することが好ましい。
【0015】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプと前記近接サイプとは、タイヤ回転方向における先着側に前記近接サイプが配置されることが好ましい。
【0016】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記面取りサイプが形成される前記陸部は、タイヤ子午断面視において、トレッドプロファイルの基準輪郭線からタイヤ径方向外側に膨出した踏面を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤは、操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、非面取りサイプが一方の主溝にのみ連通する場合の説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、面取りサイプが異なる主溝に連通する場合の説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、陸部がブロック状に形成される場合の説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、空気入りタイヤの回転方向に対するサイプの配置についての模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、膨出する陸部についての要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
【0021】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、踏面3として形成され、踏面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。
【0022】
トレッド部2には、踏面3にタイヤ周方向に延びる主溝30が複数形成されており、複数の主溝30は、タイヤ幅方向に並んでいる。また、トレッド部2には、タイヤ幅方向における端部が主溝30により区画される陸部20が複数形成されている。本実施形態では、主溝30は3本がタイヤ幅方向に並んで配置されており、これに伴い、陸部20は、4列の陸部20が主溝30を介してタイヤ幅方向に並んでいる。4列の陸部20は、タイヤ周方向に延びるリブ状の形状で形成されている。
【0023】
なお、主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に主溝30は、3.0mm以上の溝幅を有し、5.5mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在していてもよく、タイヤ周方向に延びながらタイヤ幅方向に繰り返し振幅することにより、波形状又はジグザグ状に形成してもよい。
【0024】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されており、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
【0025】
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
【0026】
また、トレッド部2には、ベルト層14が配設されている。ベルト層14は、複数のベルト141、142が積層される多層構造によって構成されており、本実施形態では、2層のベルト141、142が積層されている。ベルト層14を構成するベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。また、2層のベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層のベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。つまり、2層のベルト141、142は、それぞれのベルト141、142が有するベルトコードが互いに交差する向きで配設される、いわゆる交差ベルトとして設けられている。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0027】
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
【0028】
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
【0029】
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
【0030】
図2は、
図1のA-A矢視図である。
図3は、
図2に示す陸部20の斜視図である。なお、
図2、
図3は、複数の陸部20のうち、タイヤ幅方向における両側が主溝30により区画される陸部20を図示している。陸部20には、
図2、
図3に示すように、複数のサイプ40が形成されている。ここでいうサイプ40は、踏面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1をリムにリム組みする前の状態で、細溝を構成する壁面同士の幅が2mm未満で、踏面3からの細溝の深さが2mm以上のものをいう。
【0031】
複数のサイプ40は、面取り部42を有するサイプ40である複数の面取りサイプ41と、面取り部42を有さないサイプ40である複数の非面取りサイプ46とを有している。この場合における面取り部42は、サイプ40の壁面と踏面3とが交差するエッジの一部を欠いた切り欠き部を指し、面取り部42は、矩形や傾斜などの形状をとることができる。
【0032】
面取りサイプ41と非面取りサイプ46とは、1つの陸部20にそれぞれ複数が設けられ、複数の面取りサイプ41と非面取りサイプ46とは、タイヤ周方向に交互に配置されている。その際に、面取りサイプ41のタイヤ周方向におけるピッチと、非面取りサイプ46のタイヤ周方向におけるピッチとは、互いに同じ大きさになっており、且つ、面取りサイプ41と非面取りサイプ46とで、位相がタイヤ周方向にずれて配置されている。
【0033】
このうち、面取りサイプ41は、陸部20を区画する主溝30に一端が連通し、他端は陸部20内で終端している。また、面取りサイプ41は、同じ陸部20に形成される複数の面取りサイプ41が、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の主溝30のうち、同じ主溝30に連通している。つまり、1つの陸部20に形成される複数の面取りサイプ41は、全て同じ主溝30に連通している。
【0034】
一方、非面取りサイプ46は、長さ方向における両端が、陸部20を区画する2本の主溝30の双方に連通している。換言すると、非面取りサイプ46は、当該非面取りサイプ46が形成される陸部20をタイヤ幅方向に貫通している。
【0035】
このため、面取りサイプ41と非面取りサイプ46とは、面取りサイプ41の長さLmと、非面取りサイプ46の長さLpとの関係が、Lm<Lpになっており、詳しくは、0.2≦(Lm/Lp)≦0.95の範囲内になっている。なお、この場合における長さLm、Lpは、面取りサイプ41や非面取りサイプ46の延在方向における長さ、即ち、面取りサイプ41や非面取りサイプ46の形状に沿った方向における長さになっている。また、面取りサイプ41の長さLmと、非面取りサイプ46の長さLpとの関係は、0.3≦(Lm/Lp)≦0.8の範囲内であるのが好ましく、面取りサイプ41の長さLmは、具体的には2mm以上30mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0036】
面取りサイプ41と非面取りサイプ46とは、タイヤ周方向に交互に並んでいるため、面取りサイプ41のタイヤ周方向における両側には、非面取りサイプ46が位置している。面取りサイプ41と非面取りサイプ46とは、位相がタイヤ周方向にずれて配置されているため、面取りサイプ41のタイヤ周方向における両側に位置する2本の非面取りサイプ46は、面取りサイプ41とのタイヤ周方向における距離が、互いに異なっている。
【0037】
面取りサイプ41との距離が互いに異なる距離で面取りサイプ41のタイヤ周方向における両側に位置する非面取りサイプ46のうち、面取りサイプ41とのタイヤ周方向における距離が近い側の非面取りサイプ46は近接サイプ47になっており、面取りサイプ41とのタイヤ周方向における距離が遠い側の非面取りサイプ46は遠隔サイプ48になっている。近接サイプ47と遠隔サイプ48とは、いずれも近接サイプ47や遠隔サイプ48が形成される陸部20を区画する2本の主溝30に連通している。また、近接サイプ47は、非面取りサイプ46であるため、面取りサイプ41と近接サイプ47とで長さを比較した場合、面取りサイプ41の長さLmと、近接サイプ47の長さLpとの関係は、0.2≦(Lm/Lp)≦0.95の範囲内になる。
【0038】
なお、近接サイプ47と遠隔サイプ48とは、面取りサイプ41を介して隣り合う2本の非面取りサイプ46に対して、これらの間に位置する面取りサイプ41からの距離に基づいて定められるものになっている。このため、とある面取りサイプ41に対する近接サイプ47は、当該近接サイプ47を介してこの面取りサイプ41と隣り合う面取りサイプ41に対しては、遠隔サイプ48として扱われる。同様に、とある面取りサイプ41に対する遠隔サイプ48は、当該遠隔サイプ48を介してこの面取りサイプ41と隣り合う面取りサイプ41に対しては、近接サイプ47として扱われる。
【0039】
これらのように定められる面取りサイプ41と、近接サイプ47及び遠隔サイプ48とは、面取りサイプ41と近接サイプ47とのタイヤ周方向における距離aと、面取りサイプ41と遠隔サイプ48とのタイヤ周方向における距離bとの関係が、1.5≦(b/a)≦12の範囲内になっている。
【0040】
図4は、
図2のB-B断面図である。面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aは、面取りサイプ41における、面取り部42を含んで近接サイプ47との距離が最も近い位置でのタイヤ周方向における距離aになっている。同様に、面取りサイプ41と遠隔サイプ48との距離bは、面取りサイプ41における、面取り部42を含んで遠隔サイプ48との距離が最も近い位置でのタイヤ周方向における距離bになっている。
【0041】
ここで、本実施形態では、面取りサイプ41は、面取りサイプ41が有する対向する壁面41aのうち、近接サイプ47に近い側の壁面41aに面取り部42を有している。このため、本実施形態では、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aは、面取りサイプ41が有する面取り部42における最も近接サイプ47寄りに位置する部分と、近接サイプ47における面取りサイプ41側の壁面47aとのタイヤ周方向における最短距離になっている。また、面取りサイプ41と遠隔サイプ48との距離bは、面取りサイプ41における遠隔サイプ48側の壁面41aと、遠隔サイプ48における面取りサイプ41側の壁面48aとのタイヤ周方向における最短距離になっている。
【0042】
これらのように定められる面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aと、面取りサイプ41と遠隔サイプ48との距離bとは、1.5≦(b/a)≦5の範囲内の関係であるのが好ましく、さらに好ましい関係は、3≦(b/a)≦5の範囲内である。また、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aは、3mm以上6mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0043】
図5は、
図4のC部詳細図である。面取りサイプ41と近接サイプ47とは、面取りサイプ41の開口幅Wmと、近接サイプ47の開口幅Wpとの関係が、1.2≦(Wm/Wp)≦6.0の範囲内になっている。この場合における面取りサイプ41の開口幅Wmは、面取り部42を含んだ、踏面3に対する面取りサイプ41の開口部分の幅になっており、開口部分の幅が変化する場合には、最大幅となる位置での幅になっている。近接サイプ47の開口幅Wpも同様に、踏面3に対する近接サイプ47の開口部分の幅になっており、開口部分の幅が変化する場合には、最大幅となる位置での幅になっている。
【0044】
なお、面取りサイプ41の開口幅Wmと近接サイプ47の開口幅Wpとの関係は、2.0≦(Wm/Wp)≦4.0の範囲内であるのが好ましい。また、面取りサイプ41の開口幅Wmは、1.0mm以上8.0mm以下の範囲内であるのが好ましく、近接サイプ47の開口幅Wpは、0.8mm以上1.8mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0045】
さらに、面取りサイプ41は、開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係が、0.1≦(Wm1/Wm)≦0.85の範囲内になっている。この場合における面取りサイプ41の溝底幅Wm1は、面取りサイプ41の溝底41bの位置での溝幅の、最大となる位置での幅になっている。なお、面取りサイプ41の開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係は、0.3≦(Wm1/Wm)≦0.6の範囲内であるのが好ましく、面取りサイプ41の溝底幅Wm1は、0.8mm以上1.8mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0046】
また、面取りサイプ41と近接サイプ47とは、面取りサイプ41の溝底幅Wm1と近接サイプ47の溝底幅Wp1との関係が、0.3≦(Wm1/Wp1)≦3.0の範囲内になっている。この場合における溝底幅Wp1は、近接サイプ47の溝底47bの位置での溝幅の、最大となる位置での幅になっている。なお、面取りサイプ41の溝底幅Wm1と近接サイプ47の溝底幅Wp1との関係は、0.5≦(Wm1/Wp1)≦2.0の範囲内であるのが好ましい。
【0047】
また、面取りサイプ41と近接サイプ47とは、面取りサイプ41の溝深さDmと、近接サイプ47の溝深さDpとの関係が、1.2≦(Dp/Dm)≦8.0の範囲内になっている。この場合における面取りサイプ41の溝深さDmや近接サイプ47の溝深さDpは、それぞれのサイプ40における、踏面3に対する開口部分から溝底までの深さの最大となる位置での深さになっている。
【0048】
なお、面取りサイプ41の溝深さDmと、近接サイプ47の溝深さDpとの関係は、1.4≦(Dp/Dm)≦2.0の範囲内であるのが好ましい。また、面取りサイプ41の溝深さDmは、2.0mm以上5.0mm以下の範囲内であるのが好ましく、近接サイプ47の溝深さDpは、2.4mm以上6.0mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0049】
さらに、面取りサイプ41は、溝深さDmと、面取り部42の面取り部深さDm1との関係が、0.1≦(Dm1/Dm)≦0.85の範囲内になっている。この場合における面取り部深さDm1は、面取り部42における、踏面3に対する開口部分から、面取りサイプ41の溝底41b側の端部までの、面取りサイプ41の深さ方向における深さが最大となる位置での深さになっている。
【0050】
なお、面取りサイプ41は、溝深さDmと面取り部深さDm1との関係は、0.3≦(Dm1/Dm)≦0.6の範囲内であるのが好ましく、面取り部深さDm1は、0.6mm以上3.0mm以下の範囲内であるのが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、空気入りタイヤ1をリムホイールにリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド部2の踏面3のうち下方に位置する踏面3が路面に接触しながら空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主に踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、踏面3と路面との間の水が主溝30等の溝やサイプ40に入り込み、これらの主溝30やサイプ40で踏面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、踏面3は路面に接地し易くなり、踏面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
【0052】
その際に、複数のサイプ40のうちの一部は面取りサイプ41になっており、面取りサイプ41は、面取り部42を有しているため、面取り部42によって排水性を確保することができる。即ち、面取りサイプ41は、面取りサイプ41が形成される陸部20の踏面3における、面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地して溝幅が小さくなる方向に面取りサイプ41が変形する場合でも、面取り部42によって面取りサイプ41の容積を確保することができる。これにより、面取りサイプ41での排水性を向上させることができる。一方で、面取りサイプ41は、陸部20内で終端する端部を有しているため、面取りサイプ41が形成される陸部20の剛性の低下を抑制することができ、これにより、車両の走行時における操縦安定性を確保することができる。
【0053】
また、サイプ40は、面取りサイプ41と非面取りサイプ46とがタイヤ周方向に交互に配置されており、面取りサイプ41のタイヤ周方向における一方側のサイプ40は、面取りサイプ41との距離が相対的に近い近接サイプ47になっている。このため、陸部20の踏面3における、面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した際に、面取りサイプ41の周囲の陸部20を、近接サイプ47の溝幅が小さくなる方向に変形させることができ、これにより、面取りサイプ41の溝幅が小さくなる方向に面取りサイプ41が大きく変形することを抑制することができる。即ち、陸部20の踏面3における、面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した際に、近接サイプ47が潰れることにより、近接サイプ47で陸部20の変形を負担することができ、面取りサイプ41が潰れることを抑制することができる。従って、面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した場合でも、面取り部42を有する面取りサイプ41の容積をより確実に確保することができ、面取りサイプ41での排水性を確保することができる。
【0054】
また、面取りサイプ41と非面取りサイプ46とは、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aと、面取りサイプ41と遠隔サイプ48との距離bとの関係が、1.5≦(b/a)≦12の範囲内であるため、陸部20の剛性が部分的に低下することを抑制しつつ、近接サイプ47が潰れることにより、面取りサイプ41が潰れることを抑制することができる。
【0055】
つまり、距離aと距離bとの関係が、(b/a)<1.5である場合は、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aが大き過ぎるため、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した際に、近接サイプ47が潰れ難くなる、または、近接サイプ47が潰れても面取りサイプ41の潰れの抑制が行われ難くなる。即ち、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aが大き過ぎるため、近接サイプ47の変形と面取りサイプ41の変形とを影響させ合うのが困難になり、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の接地時に、面取りサイプ41が潰れることを抑制し難くなる。この場合、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の接地時に、面取りサイプ41の容積を確保し難くなる虞があり、濡れた路面での走行性能であるウェット性能を確保し難くなる虞がある。また、距離aと距離bとの関係が、(b/a)>12である場合は、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aが小さ過ぎるため、陸部20における面取りサイプ41と近接サイプ47との間の部分の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が部分的に低下することにより、車両の走行時における、主に乾いた路面での操縦安定性を確保し難くなる虞がある。
【0056】
これに対し、距離aと距離bとの関係が、1.5≦(b/a)≦12の範囲内である場合は、陸部20における面取りサイプ41と近接サイプ47との間の部分の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、近接サイプ47の変形と面取りサイプ41の変形とを影響させ合わせることができる。これにより、陸部20の剛性が部分的に低下することを抑制しつつ、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の接地時に、近接サイプ47が潰れることにより、面取りサイプ41が潰れることを抑制することができる。これらの結果、操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【0057】
また、面取りサイプ41と近接サイプ47とは、面取りサイプ41の長さLmと、近接サイプ47の長さLpとの関係が、0.2≦(Lm/Lp)≦0.95の範囲内であるため、陸部20における近接サイプ47の近傍の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、近接サイプ47が適切な長さで潰れることにより、面取りサイプ41が潰れることを抑制することができる。
【0058】
つまり、面取りサイプ41の長さLmと近接サイプ47の長さLpとの関係が、(Lm/Lp)<0.2である場合は、近接サイプ47の長さLpが長過ぎるため、陸部20における近接サイプ47の近傍の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が部分的に低下することにより、車両の走行時における操縦安定性を確保し難くなる虞がある。また、面取りサイプ41の長さLmと近接サイプ47の長さLpとの関係が、(Lm/Lp)>0.95である場合は、近接サイプ47の長さLpが短くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の接地時に近接サイプ47が潰れても、近接サイプ47が潰れる長さが短いため、近接サイプ47の潰れによって面取りサイプ41の潰れを抑制することが困難になり、面取りサイプ41での排水性を確保するのが困難になる虞がある。
【0059】
これに対し、面取りサイプ41の長さLmと近接サイプ47の長さLpとの関係が、0.2≦(Lm/Lp)≦0.95の範囲内である場合は、陸部20における近接サイプ47の近傍の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の接地時に、近接サイプ47が適切な長さで潰れることにより、面取りサイプ41が潰れることを抑制することができる。この結果、より確実に操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【0060】
また、面取りサイプ41は、面取りサイプ41が有する対向する壁面41aのうち、近接サイプ47に近い側の壁面41aに面取り部42を有するため、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した際に、近接サイプ47が潰れることにより、面取りサイプ41における面取り部42付近が潰れることを、より確実に抑制することができる。これにより、より確実に面取り部42によって面取りサイプ41の容積を確保することができ、面取りサイプ41での排水性を向上させることができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
【0061】
また、面取りサイプ41と近接サイプ47とは、面取りサイプ41の開口幅Wmと、近接サイプ47の開口幅Wpとの関係が、1.2≦(Wm/Wp)≦6.0の範囲内であるため、面取りサイプ41の容積を確保しつつ、陸部20における面取りサイプ41の周囲の剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。つまり、面取りサイプ41の開口幅Wmと近接サイプ47の開口幅Wpとの関係が、(Wm/Wp)<1.2である場合は、面取りサイプ41の開口幅Wmが小さ過ぎるため、面取りサイプ41の容積を確保するのが困難になる虞がある。この場合、面取りサイプ41での排水性を確保するのが困難になり、面取りサイプ41によってウェット性能を確保し難くなる虞がある。また、面取りサイプ41の開口幅Wmと近接サイプ47の開口幅Wpとの関係が、(Wm/Wp)>6.0である場合は、面取りサイプ41の開口幅Wmが大き過ぎるため、陸部20における面取りサイプ41の周囲の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が部分的に低下することにより、車両の走行時における操縦安定性を確保し難くなる虞がある。
【0062】
これに対し、面取りサイプ41の開口幅Wmと近接サイプ47の開口幅Wpとの関係が、1.2≦(Wm/Wp)≦6.0の範囲内である場合は、面取りサイプ41の容積を確保しつつ、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。この結果、より確実に操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【0063】
また、面取りサイプ41は、開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係が、0.1≦(Wm1/Wm)≦0.85の範囲内であるため、面取りサイプ41の容積を確保しつつ、陸部20における面取りサイプ41の周囲の剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。つまり、面取りサイプ41の開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係が、(Wm1/Wm)<0.1である場合は、面取りサイプ41の溝底幅Wm1が小さ過ぎるため、面取りサイプ41の容積を確保するのが困難になる虞がある。この場合、面取りサイプ41での排水性を確保するのが困難になり、面取りサイプ41によってウェット性能を確保し難くなる虞がある。また、面取りサイプ41の開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係が、(Wm1/Wm)>0.85である場合は、面取りサイプ41の溝底幅Wm1が大き過ぎるため、陸部20における面取りサイプ41の周囲の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が部分的に低下することにより、車両の走行時における操縦安定性を確保し難くなる虞がある。
【0064】
これに対し、面取りサイプ41の開口幅Wmと溝底幅Wm1との関係が、0.1≦(Wm1/Wm)≦0.85の範囲内である場合は、面取りサイプ41の容積を確保しつつ、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の剛性が低くなり過ぎることを抑制することができる。この結果、より確実に操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【0065】
また、近接サイプ47は、陸部20を区画する2本の主溝30に連通し、即ち、近接サイプ47が形成される陸部20をタイヤ幅方向に貫通するため、陸部20における近接サイプ47が形成される部分の周辺の剛性を、より確実に低下させることができる。これにより、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した際に、より確実に近接サイプ47を潰れ易くすることができ、近接サイプ47が潰れることにより、陸部20の変形を近接サイプ47で負担することができる。従って、面取りサイプ41が潰れることを、より確実に抑制することができるため、面取りサイプ41の容積を確保することができ、面取りサイプ41での排水性を向上させることができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
【0066】
また、面取りサイプ41と近接サイプ47とは、面取りサイプ41の溝深さDmと近接サイプ47の溝深さDpとの関係が、1.2≦(Dp/Dm)≦8.0の範囲内であるため、陸部20における近接サイプ47の近傍の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、面取りサイプ41の潰れを、近接サイプ47が潰れることによって抑制することができる。つまり、面取りサイプ41の溝深さDmと近接サイプ47の溝深さDpとの関係が、(Dp/Dm)<1.2である場合は、近接サイプ47の溝深さDpが浅過ぎるため、近接サイプ47が潰れることによって陸部20の変形を負担することが困難になる虞がある。この場合、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した際に、面取りサイプ41が潰れることを抑制し難くなり、面取りサイプ41での排水性を確保するのが困難になる虞がある。また、面取りサイプ41の溝深さDmと近接サイプ47の溝深さDpとの関係が、(Dp/Dm)>8.0である場合は、近接サイプ47の溝深さDpが深過ぎるため、陸部20における近接サイプ47の近傍の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、陸部20の剛性が部分的に低下することにより、車両の走行時における操縦安定性を確保し難くなる虞がある。
【0067】
これに対し、面取りサイプ41の溝深さDmと近接サイプ47の溝深さDpとの関係が、1.2≦(Dp/Dm)≦8.0の範囲内である場合は、陸部20における近接サイプ47の近傍の剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分が接地した際における面取りサイプ41の潰れを、近接サイプ47が潰れることによって抑制することができる。この結果、より確実に操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【0068】
また、面取りサイプ41は、溝深さDmと面取り部深さDm1との関係が、0.1≦(Dm1/Dm)≦0.85の範囲内であるため、陸部20の剛性の低下を抑えつつ、面取りサイプ41での排水性を面取り部42によって向上させることができる。つまり、面取りサイプ41の溝深さDmと面取り部深さDm1との関係が、(Dm1/Dm)<0.1である場合は、面取りサイプ41の面取り部深さDm1が浅過ぎるため、面取りサイプ41に面取り部42を設けても、面取り部42によって面取りサイプ41での排水性を向上させるのが困難になる虞がある。また、面取りサイプ41の溝深さDmと面取り部深さDm1との関係が、(Dm1/Dm)>0.85である場合は、面取りサイプ41の面取り部深さDm1が深過ぎるため、陸部20における面取りサイプ41の周囲に位置する部分の体積が小さくなり、面取りサイプ41が形成される陸部20の剛性が低下し易くなる虞がある。
【0069】
これに対し、面取りサイプ41の溝深さDmと面取り部深さDm1との関係が、0.1≦(Dm1/Dm)≦0.85の範囲内である場合は、面取りサイプ41が形成される陸部20の剛性の低下を抑えつつ、面取りサイプ41での排水性を面取り部42によって効果的に向上させることができる。この結果、より確実に操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【0070】
また、同じ陸部20に形成される複数の面取りサイプ41は、同じ主溝30に連通するため、陸部20における、面取りサイプ41が連通する主溝30によって区画される側のエッジと、反対側の主溝30によって区画される側のエッジとで、剛性差を生じさせることができる。これにより、陸部20における、面取りサイプ41が連通する主溝30によって区画される側のエッジ側では、陸部20の剛性が低くなることにより、近接サイプ47が潰れ易くすることができ、近接サイプ47が潰れることによって面取りサイプ41が潰れることを抑制することができる。また、陸部20における、面取りサイプ41が連通する主溝30の反対側の主溝30によって区画される側のエッジ側では、主溝30に連通するサイプ40の数が少なくなり、陸部20の剛性が確保されることにより、車両走行時における操舵初期の剛性感を向上させることができる。この結果、より確実に操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【0071】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、非面取りサイプ46は、陸部20を区画する2本の主溝30の双方に連通しているが、非面取りサイプ46は、2本の主溝30の双方に連通していなくてもよい。
図6は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、非面取りサイプ46が一方の主溝30にのみ連通する場合の説明図である。非面取りサイプ46は、例えば、
図6に示すように、陸部20のタイヤ幅方向における両側を区画する2本の主溝30のうち、一方の主溝30にのみ連通し、主溝30に連通する側の端部の反対側の端部は、陸部20内で終端していてもよい。即ち、近接サイプ47と遠隔サイプ48は、一端が主溝30に連通し、他端は陸部20内で終端していてもよい。その際に、複数の非面取りサイプ46は、
図6に示すように、陸部20を区画する2本の主溝30のうち、面取りサイプ41が連通する主溝30と同じ主溝30に連通するのが好ましい。このように、非面取りサイプ46が一方の主溝30にのみ連通する場合でも、面取りサイプ41と近接サイプ47とは、面取りサイプ41の長さLmと、近接サイプ47の長さLpとの関係が、0.2≦(Lm/Lp)≦0.95の範囲内であるのが好ましい。
【0072】
また、上述した実施形態では、同じ陸部20に形成される複数の面取りサイプ41が同じ主溝30に連通しているが、複数の面取りサイプ41は、同じ主溝30に連通していなくてもよい。
図7は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、面取りサイプ41が異なる主溝30に連通する場合の説明図である。面取りサイプ41は、
図7に示すように、同じ陸部20に形成される面取りサイプ41同士で、異なる主溝30に連通していてもよい。この場合、非面取りサイプ46を介してタイヤ周方向に隣り合う面取りサイプ41同士で、互い違いで異なる主溝30に連通していてもよく、または、同じ陸部20に形成される複数の面取りサイプ41の中で、非面取りサイプ46を介してタイヤ周方向に隣り合う面取りサイプ41同士で異なる主溝30に連通するものと、同じ主溝30に連通するものとが併存していてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、サイプ40が形成される陸部20は、リブ状の形状で形成されているが、陸部20は、リブ状以外に形状で形成されていてもよい。
図8は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、陸部20がブロック状に形成される場合の説明図である。陸部20は、例えば、
図8に示すように、タイヤ幅方向における両側が主溝30によって区画され、タイヤ周方向における両側がラグ溝35によって区画される、いわゆるブロック状の形状で形成されていてもよい。つまり、トレッド部2の踏面3には、タイヤ周方向の延びる主溝30の他に、タイヤ幅方向に延びるラグ溝35が複数形成され、サイプ40が形成される陸部20は、主溝30とラグ溝35とによって区画されていてもよい。この場合、サイプ40は、1つのブロック状の陸部20に、複数の面取りサイプ41と非面取りサイプ46とがタイヤ周方向に交互に配置されるのが好ましい。サイプ40は、面取りサイプ41と非面取りサイプ46とがタイヤ周方向に交互に配置されていれば、サイプ40が形成される陸部20の形状は問わない。
【0074】
また、上述した実施形態では、空気入りタイヤ1の回転方向は、特に指定されていないが、空気入りタイヤ1は、車両装着時での回転方向が指定された空気入りタイヤ1であってもよい。即ち、サイプ40が形成される空気入りタイヤ1は、車両の前進時において回転軸を中心に指定された回転方向に回転するように車両に装着される空気入りタイヤ1であってもよい。この場合、空気入りタイヤ1は、回転方向を示す回転方向表示部(図示省略)を有する。回転方向表示部は、例えば、タイヤのサイドウォール部8に付されたマークや凹凸によって構成される。
【0075】
図9は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、空気入りタイヤ1の回転方向に対するサイプ40の配置についての模式図である。面取りサイプ41と非面取りサイプ46とがタイヤ周方向に交互に踏面3に配置される空気入りタイヤ1は、車両装着時での回転方向が指定された空気入りタイヤ1であってもよい。この場合、面取りサイプ41と近接サイプ47とは、
図9に示すように、タイヤ回転方向における先着側に近接サイプ47が配置され、タイヤ回転方向における後着側に面取りサイプ41が配置されるのが好ましい。
【0076】
この場合における、タイヤ回転方向における先着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先に路面100に接地したり先に路面100から離れたりする側である。また、タイヤ回転方向における後着側とは、空気入りタイヤ1を指定方向に回転させた際における回転方向の反対側であり、空気入りタイヤ1を車両に装着して指定方向に回転させて走行する場合において、先着側に位置する部分の後に路面100に接地したり、先着側に位置する部分の後に路面100から離れたりする側である。
【0077】
タイヤ周方向に並んで配置される面取りサイプ41と近接サイプ47とは、タイヤ回転方向における先着側に近接サイプ47が配置され、面取りサイプ41よりも近接サイプ47が先に路面100に接地することにより、近接サイプ47が、陸部20の変形をより負担することができる。これにより、面取りサイプ41が潰れることをより確実に抑制することができ、より確実にウェット性能を向上させることができる。
【0078】
また、サイプ40が形成される陸部20は、踏面3がタイヤ径方向外側に膨出する形状で形成されていてもよい。
図10は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、膨出する陸部20についての要部模式図である。面取りサイプ41が形成される陸部20は、
図10に示すように、タイヤ子午断面視において、トレッドプロファイルの基準輪郭線Pfからタイヤ径方向外側に膨出した踏面3を有していてもよい。この場合におけるトレッドプロファイルの基準輪郭線Pfは、内圧非充填の状態での陸部20の踏面3の形状の基準となる輪郭線になっている。トレッドプロファイルの基準輪郭線Pfは、詳しくは、内圧非充填の状態のタイヤ子午面断面視において、陸部20のタイヤ幅方向における両側に隣接する2本の主溝30における4つの開口端Eのうちの少なくとも3つを通り、円弧の中心が踏面3のタイヤ径方向内側に位置して最大曲率半径で描ける円弧をいう。
【0079】
面取りサイプ41が形成される陸部20は、タイヤ子午断面視における踏面3の曲率半径が、このように規定されるトレッドプロファイルの基準輪郭線Pfの曲率半径より小さくなっている。これにより陸部20は、タイヤ子午断面視における踏面3の形状が、トレッドプロファイルの基準輪郭線Pfからタイヤ径方向外側に膨出する形状になっている。このため、陸部20は、タイヤ幅方向における両端部の位置よりも、タイヤ幅方向における中央の位置の方が、厚さが厚くなっている。
【0080】
陸部20の踏面3が、このようにトレッドプロファイルの基準輪郭線Pfよりもタイヤ径方向外側に膨出する形状にすることにより、濡れた路面の走行時に、踏面3と路面との間に位置する水を、陸部20のタイヤ幅方向における端部を区画する主溝30に向けて送ることができる。これにより、より確実に排水性を向上させることができ、より確実にウェット性能を向上させることができる。
【0081】
また、上述した実施形態では、面取りサイプ41や非面取りサイプ46は、タイヤ幅方向に直線状の延びる形状で図示されているが、各サイプ40は、これ以外の形状であってもよい。サイプ40は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に向かって傾斜していたり、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に繰り返し屈曲したり湾曲したりしていてもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、主溝30は3本が形成されているが、主溝30は3本以外であってもよい。トレッド部2に形成される主溝30は、3本以上5本以下の範囲内であるのが好ましい。また、主溝30は、タイヤ周方向に延びる際に、直線状以外の形状で形成されていてもよく、例えば、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲したり湾曲したりしていてもよい。
【0083】
[実施例]
図11A~
図11Dは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、濡れた路面での制動性能であるウェット制動性能と、操縦安定性とについての試験を行った。
【0084】
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Hサイズの空気入りタイヤ1を、リムサイズ15×6.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みし、空気圧を250kPaに調整して、評価車両に装着して評価車両で走行をすることにより行った。
【0085】
各試験項目の評価方法は、ウェット制動性能については、テストコースにおいて、撒水した路面を、試験タイヤを装着した評価車両で初速100km/hで走行し、制動したときの制動距離を測定し、測定した距離の逆数を後述する従来例を100とする指数で表した。この数値が大きいほど、制動に要する距離が短く、ウェット制動性能が優れていることを示している。
【0086】
また、操縦安定性については、試験タイヤを装着した評価車両で乾燥した路面のテストコースを走行した際の操縦安定性を、テストドライバーの官能評価により比較した。操縦安定性は、テストドライバーの官能評価を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価し、指数が大きいほど操縦安定性が優れていることを示している。なお、操縦安定性は、指数が98以上であれば、操縦安定性の低下が抑制されているものとする。
【0087】
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~29と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1、2との32種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例は、面取りサイプ41に近接する近接サイプ47を有していない。また、比較例1は、面取りサイプ41に近接する近接サイプ47を有しているものの、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aに対する、面取りサイプ41と遠隔サイプ48と距離bの比が、1.5未満になっている。また、比較例2は、比較例1と同様に近接サイプ47を有しているものの、面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aに対する、面取りサイプ41と遠隔サイプ48と距離bの比が、12より大きくなっている。
【0088】
これらに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~29は、全て面取りサイプ41と近接サイプ47との距離aに対する、面取りサイプ41と遠隔サイプ48と距離bの比が、1.5≦(b/a)≦12の範囲内になっている。さらに、実施例1~29に係る空気入りタイヤ1は、面取りサイプ41の長さLmと近接サイプ47の長さLpとの比(Lm/Lp)や、面取りサイプ41における面取り部42が配置されている方向、面取りサイプ41の開口幅Wmと近接サイプ47の開口幅Wpとの比(Wm/Wp)、面取りサイプ41の開口幅Wmと溝底幅Wm1との比(Wm1/Wm)、陸部20を区画する2本の主溝30への近接サイプ47の連通の有無、面取りサイプ41の溝深さDmと近接サイプ47の溝深さDpとの比(Dp/Dm)、面取りサイプ41の溝深さDmと面取り部深さDm1との比(Dm1/Dm)、同じ陸部20に形成される複数の面取りサイプ41が連通する主溝30、タイヤ回転方向における先着側に位置するサイプ40、タイヤ径方向外側に膨出した踏面3を有する陸部20の有無が、それぞれ異なっている。
【0089】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図11A~
図11Dに示すように、実施例1~29に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例1、2に対して、操縦安定性の低下を極力抑えつつ、ウェット制動性能を向上させることができることが分かった。つまり、実施例1~29に係る空気入りタイヤ1は、操縦安定性の低下を抑制しつつウェット性能を確保することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 踏面
4 トレッドゴム層
5 ショルダー部
8 サイドウォール部
10 ビード部
11 ビードコア
12 ビードフィラー
13 カーカス層
14 ベルト層
16 インナーライナ
17 リムクッションゴム
18 タイヤ内面
20 陸部
30 主溝
35 ラグ溝
40 サイプ
41 面取りサイプ
41a、47a、48a 壁面
41b、47b 溝底
42 面取り部
46 非面取りサイプ
47 近接サイプ
48 遠隔サイプ