(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20221101BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20221101BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20221101BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20221101BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H02G3/16
H05K5/06 D
H05K7/06 C
H05K5/03 A
B60R16/02 610B
(21)【出願番号】P 2019091923
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】竹田 仁司
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-325465(JP,A)
【文献】特開2007-330054(JP,A)
【文献】特開2000-036678(JP,A)
【文献】実開平07-027235(JP,U)
【文献】特開2009-112078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H05K 5/06
H05K 7/06
H05K 5/03
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、電源回路と、分岐回路と、を備えた電気接続箱であって、
前記分岐回路は、着脱可能な過電流遮断素子を有すると共に前記電源回路から分岐する回路とされており、
前記ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に着脱可能なカバーと、弾性を有するカバー用シール部材と
、前記カバーを前記ケース本体に固定する固定部材と、を有し、
前記ケース本体は、第1作業孔を有すると共に前記電源回路および前記分岐回路を収容しており、
前記第1作業孔は、前記過電流遮断素子を外方に臨ませる位置において前記ケース本体の天井板を貫通した形態で前記天井板の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されており、
前記カバーは、前記第1作業孔を閉口する
カバー本体と、前記カバー本体の外周縁から外周側に張り出すカバーフランジと、を備え、
前記ケース本体は、前記カバー本体が前記第1作業孔を閉口するように前記カバーが前記ケース本体に装着された際に、前記カバーフランジと接触するフランジ接触面と、前記フランジ接触面よりも内周側において前記カバー側に突出するリブと、を備え、
前記カバー用シール部材が装着されるシール装着部の内周側は前記リブによって構成され、前記シール装着部の外周側は前記カバーフランジによって構成され、
前記カバー用シール部材は、
前記固定部材で前記カバーを前記ケース本体に固定することで前記ケース本体における前記
リブの周縁部と前記
カバー本体とに密着する電気接続箱。
【請求項2】
ケースと、電源回路と、分岐回路と、を備えた電気接続箱であって、
前記分岐回路は、着脱可能な過電流遮断素子を有すると共に前記電源回路から分岐する回路とされており、
前記ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に着脱可能なカバーと、弾性を有するカバー用シール部材とを有し、
前記ケース本体は、第1作業孔を有すると共に前記電源回路および前記分岐回路を収容しており、
前記第1作業孔は、前記過電流遮断素子を外方に臨ませる位置において前記ケース本体の天井板を貫通した形態で前記天井板の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されており、
前記カバーは、前記第1作業孔を閉口するように前記ケース本体に装着され、前記カバー用シール部材は、前記ケース本体における前記第1作業孔の周縁部と前記カバーとに密着し、
前記ケース本体は、ロアケースと、アッパケースと、弾性を有するケース用シール部材とを有しており、
前記ロアケースと前記アッパケースとは、互いに組み付けられるようになっており、
前記ケース用シール部材は、前記ロアケースと前記アッパケースとに密着して前記ロアケースと前記アッパケースとの間を水密状態にシールするようになっており、
前記分岐回路は、前記ロアケース内に配置されるロア側分岐回路と、前記アッパケース内に配置されるアッパ側分岐回路とを有しており、
前記ロアケースは、前記ロア側分岐回路に接続された少なくとも1つのコネクタを有しており、
前記アッパケースは、前記アッパ側分岐回路に接続された少なくとも1つのコネクタを有しており、
前記ロア側分岐回路と前記アッパ側分岐回路とは、前記ロアケースと前記アッパケースとが互いに組み付けられる方向に並んで配置されてい
る電気接続箱。
【請求項3】
前記電源回路は、前記ロアケース内に配置されており、
前記アッパ側分岐回路は、前記電源回路に接続される分岐バスバを有している請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記アッパケースは、前記アッパ側分岐回路の前記過電流遮断素子が配置されるアッパ台座を有しており、
前記ロアケースは、前記ロア側分岐回路の前記過電流遮断素子が配置されるロア台座を有しており、
前記アッパ台座と前記ロア台座とは、前記ロアケースと前記アッパケースとが互いに組み付けられる方向に並んで配置されている請求項3に記載の電気接続箱。
【請求項5】
前記アッパケースは、前記アッパ台座が着脱可能な台座受部を有しており、
前記台座受部は、前記アッパ台座によって閉口される第2作業孔を有している請求項4に記載の電気接続箱。
【請求項6】
前記分岐バスバは、前記第1作業孔および前記第2作業孔を通して前記電源回路に接続可能とされている請求項5に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の電気接続箱は、例えば、特開2019-47535号公報に記載のものが知られている。
【0003】
この電気接続箱は、上下に組み付けられるアッパーケースとロアケースとを有している。ロアケースの上部には、電源回路に接続される積層バスバー、積層バスバーに接続される中継バスバー、配電板、ヒューズなどが設置されている。配電板は、ヒューズを介して中継バスバーと接続されることにより、電源回路から分岐された分岐回路を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の電気接続箱は、ロアケースからアッパーケースを取り外し、ロアケースの上部全体を露出させてヒューズが交換される。
【0006】
ところが、ロアケースの上部全体を露出させてヒューズを交換する場合には、ロアケースとアッパケースとの間において防水する領域が大きくなるため、ロアケースとアッパケースとの間から水が侵入する可能性高くなる。この結果、電気接続箱における防水性が低下してしまう。
【0007】
本明細書では、交換作業性を良好にすると共に、防水性を高める技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電気接続箱は、ケースと、電源回路と、分岐回路と、を備えた電気接続箱であって、前記分岐回路は、着脱可能な過電流遮断素子を有すると共に前記電源回路から分岐する回路とされており、前記ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に着脱可能なカバーと、弾性を有するカバー用シール部材とを有し、前記ケース本体は、第1作業孔を有すると共に前記電源回路および前記分岐回路を収容しており、前記第1作業孔は、前記過電流遮断素子を外方に臨ませる位置において前記ケース本体の天井板を貫通した形態で前記天井板の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されており、前記カバーは、前記第1作業孔を閉口するように前記ケース本体に装着され、前記カバー用シール部材は、前記ケース本体における前記第1作業孔の周縁部と前記カバーとに密着する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、交換作業性を良好にすると共に、防水性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電気接続箱の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、ロアケースにアッパケースを組み付ける前の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、電源回路およびロア側分岐回路が収容された状態を示すロアケースの平面図である。
【
図7】
図7は、アッパ側分岐回路が収容された状態を示すアッパケースの底面図である。
【
図11】
図11は、カバーを取り外した状態の電気接続箱の斜視図である。
【
図12】
図12は、カバーを取り外した状態の電気接続箱の平面図である。
【
図13】
図13は、カバーおよびアッパ台座を取り外した状態の電気接続箱の斜視図である。
【
図14】
図14は、カバーおよびアッパ台座を取り外した状態の電気接続箱の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
【0012】
(1)ケースと、電源回路と、分岐回路と、を備えた電気接続箱であって、前記分岐回路は、着脱可能な過電流遮断素子を有すると共に前記電源回路から分岐する回路とされており、前記ケースは、ケース本体と、前記ケース本体に着脱可能なカバーと、弾性を有するカバー用シール部材とを有し、前記ケース本体は、第1作業孔を有すると共に前記電源回路および前記分岐回路を収容しており、前記第1作業孔は、前記過電流遮断素子を外方に臨ませる位置において前記ケース本体の天井板を貫通した形態で前記天井板の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されており、前記カバーは、前記第1作業孔を閉口するように前記ケース本体に装着され、前記カバー用シール部材は、前記ケース本体における前記第1作業孔の周縁部と前記カバーとに密着する。
【0013】
カバーをケース本体から取り外すことによって過電流遮断素子が第1作業孔から外方に臨んだ状態となるから、第1作業孔を通して過電流遮断素子を容易に交換できる。これにより、過電流遮断素子の交換作業性を良好にできる。また、第1作業孔がケース本体の天井板の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されており、カバーがケース本体に装着されると、カバーとカバー用シール部材とによって第1作業孔が水密状態に閉口される。これにより、例えば、ケースが大きく開放されて防水する領域が大きくなる場合に比べて、電気接続箱の防水性を高めることができる。
【0014】
(2)前記ケース本体は、ロアケースと、アッパケースと、弾性を有するケース用シール部材とを有しており、前記ロアケースと前記アッパケースとは、互いに組み付けられるようになっており、前記ケース用シール部材は、前記ロアケースと前記アッパケースとに密着して前記ロアケースと前記アッパケースとの間を水密状態にシールするようになっており、前記分岐回路は、前記ロアケース内に配置されるロア側分岐回路と、前記アッパケース内に配置されるアッパ側分岐回路とを有しており、前記ロアケースは、前記ロア側分岐回路に接続された少なくとも1つのコネクタを有しており、前記アッパケースは、前記アッパ側分岐回路に接続された少なくとも1つのコネクタを有しており、前記ロア側分岐回路と前記アッパ側分岐回路とは、前記ロアケースと前記アッパケースとが互いに組み付けられる方向に並んで配置されている。
【0015】
例えば、分岐回路に接続されたコネクタを、ロアケースとアッパケースのそれぞれに設ける場合、分岐回路の大部分をロアケース内に配置し、ロアケース内に配置された分岐回路とアッパケースに設けられたコネクタとを電線によって接続する方法が考えられる。しかしながら、このような方法によると、コネクタを設けるためだけにアッパケースを設ける必要があり、電気接続箱が大型化してしまう。また、電気接続箱が大型化するものの、アッパケース内にはデッドスペースが生じてしまう。
【0016】
ところが、このような構成によると、ロアケースのコネクタに接続されるロア側分岐回路はロアケース内に配置され、アッパケースのコネクタに接続されるアッパ側分岐回路はアッパケース内に配置されている。つまり、防水されたケース本体内を有効に使うことによってケース本体の小型化、さらには電気接続箱の小型化を図ることができる。
【0017】
(3)前記電源回路は、前記ロアケース内に配置されており、前記アッパ側分岐回路は、前記電源回路に接続される分岐バスバを有している。
【0018】
例えば、アッパ側分岐回路の電線がロアケースに配置された電源回路に接続される電気接続箱は、ロアケースとアッパケースとを組み付けた時に、電線の余長を収容する余長収容領域をケース内に確保する必要がある。このため、ケースが余長収容領域の分だけ大型化してしまう。
【0019】
ところが、アッパ側分岐回路は、電源回路に接続される分岐バスバを有しているから、ロアケースとアッパケースとを組み付けた際に、ケース内に余長収容領域を確保する必要がなく、ケースを小型化できる。これにより、電気接続箱をさらに小型化できる。
【0020】
(4)前記アッパケースは、前記アッパ側分岐回路の前記過電流遮断素子が配置されるアッパ台座を有しており、前記ロアケースは、前記ロア側分岐回路の前記過電流遮断素子が配置されるロア台座を有しており、前記アッパ台座と前記ロア台座とは、前記ロアケースと前記アッパケースとが互いに組み付けられる方向に並んで配置されている。
【0021】
アッパ台座とロア台座とがロアケースとアッパケースとの組み付け方向と交差する方向にずれて配置される場合に比べて、電気接続箱が交差する方向に大型化することを防ぐことができる。
【0022】
(5)前記アッパケースは、前記アッパ台座が着脱可能な台座受部を有しており、前記台座受部は、前記アッパ台座によって閉口される第2作業孔を有している。
【0023】
アッパ台座を台座受部から取り外すことによって第1作業孔および第2作業孔を通してロア台座を外方へ臨ませることができる。つまり、第1作業孔および第2作業孔を通してロア台座に配置された過電流遮断素子を交換できる。これにより、例えば、電源回路を含む回路全体を露出させて過電流遮断素子の交換を実施するものに比べて、防水性を高めつつ、過電流遮断素子の交換作業を良好に実施できる。
(6)前記分岐バスバは、前記第1作業孔および前記第2作業孔を通して前記電源回路に接続可能とされている。
【0024】
例えば、ロアケースとアッパケースとを組み付ける際に、アッパ側分岐回路のバスバを電源回路に接続する場合、バスバと電源回路との接続確認がケースによって視認できなくなるなど、アッパ側分岐回路と電源回路との接続作業性が低下してしまう。
【0025】
ところが、本実施形態は、分岐バスバが、第1作業孔および第2作業孔を通して電源回路に着脱可能とされているから、例えば、ロアケースとアッパケースとを組み付ける際に、アッパ側分岐回路のバスバを電源回路に接続する場合に比べて、電源回路とアッパ側分岐回路との接続作業性に優れる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電気接続箱の具体例を、以下の図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<実施形態>
本開示における一実施形態について
図1から
図14を参照して説明する。
本実施形態は、図示しない車両に搭載される電池パック内に取り付けられる電気接続箱を例示している。以下の説明においては、矢線Zの示す方向を上とし、矢線Yの示す方向を後とし、矢線Xの示す方向を右とする。また、複数の同一部材については一の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0028】
[電気接続箱10]
電気接続箱10は、
図1および
図2に示されるように、ケース20と、一対の電源バスバ61と、複数の分岐バスバ71と、複数のヒューズ(「過電流遮断素子」の一例)Fと、複数のワイヤハーネス90とを備えている。
【0029】
[ケース20]
ケース20は、絶縁性を有する合成樹脂によって形成されている。ケース20は、
図1から
図4に示されるように、ケース本体21と、カバー23と、カバー用シール部材24とを備えている。
【0030】
[ケース本体21]
ケース本体21は、前後方向に長い扁平な箱形状に形成されている。ケース本体21は、ロアケース30と、アッパケース40と、ケース用シール部材25とを備えている。
【0031】
[ロアケース30]
ロアケース30は、
図1、
図5および
図6に示されるように、上方に開口する前後方向に長いトレイ型に形成されている。ロアケース30は、後述するアッパケース40が上方から組み付けられることによってケース本体21を構成する。ロアケース30は、底板31と、4つのロア側板32と、ロア側フランジ部33とを備えている。
【0032】
底板31は、前後方向に長い矩形状に形成されている。底板31の中央には、平面視矩形状のロア台座34がボルトBTによって固定されている。
【0033】
ロア台座34は、上方に向かって突出する凸型に形成されている。ロア台座34の上には、
図6に示されるように、複数の分岐バスバ71のうちの後述する正極分岐バスバ72および第1負極分岐バスバ73と、一対の第1中継バスバ35と、2つのヒューズFが載置される。一対の第1中継バスバ35は、ロア台座34の左側端部において前後方向に延びた状態で前後方向に並んで固定されている。それぞれの第1中継バスバ35は、左側端部がワイヤハーネス90に接続され、右側端部がヒューズFに接続される。
【0034】
4つのロア側板32は、底板31の外側縁から上方に向かって延出されて形成されている。
【0035】
隣り合うロア側板32は、側縁同士が連なっている。これにより、ロアケース30はトレイ型に構成され、ロアケース30内には、後述する電源回路60および分岐回路70が上方から収容されるようになっている。
【0036】
4つのロア側板32のうちの前側のロア側板32には、一対の前側ケーブル導入口32Aがロア側板32を前後方向に貫通して形成されている。前側ケーブル導入口32Aには、図示しない電源ケーブルが止水された状態で導入されるようになっている。
【0037】
4つのロア側板32のうちの後側のロア側板32には、一対のコネクタ取付口32Bがロア側板32を貫通して形成されている。一対のコネクタ取付口32Bには、複数のワイヤハーネス90のうちの2つのワイヤハーネス90が止水された状態で取り付けられている。
【0038】
ロア側フランジ部33は、4つのロア側板32の上端縁に周設されている。ロア側フランジ部33は、それぞれのロア側板32から外方に向かって延出した形態で4つのロア側板32の上端縁に矩形状に形成されている。ロア側フランジ部33の上面には、ロア側フランジ部33に沿うように矩形状のシール溝36が凹んで形成されている。シール溝36には、弾性を有するケース用シール部材25が上方から装着されている。
【0039】
[ケース用シール部材25]
ケース用シール部材25は、ゴム等の弾性部材によって矩形の環状に形成されている。ケース用シール部材25は、上端部をシール溝36から上方に向けて突出させた状態でシール溝36に装着されている。ケース用シール部材25は、ロアケース30にアッパケース40が上方から組み付けられると、ロアケース30のロア側フランジ部33と後述するアッパケース40におけるアッパ側フランジ部43とに全周にわたって密着する。つまり、ケース用シール部材25は、ロアケース30とアッパケース40との間から水などが浸入しないように、ロアケース30とアッパケース40との間を水密状態にシールする。
【0040】
[アッパケース40]
アッパケース40は、
図1、
図5、
図7から
図10に示されるように、下方に開口する前後方向に長いトレイ型に形成されている。アッパケース40は、天井板41と、4つのアッパ側板42と、アッパ側フランジ部43とを備えている。
【0041】
天井板41は、前後方向に長い矩形状に形成されている。天井板41は、平面視矩形状の第1作業孔44を有している。第1作業孔44は、天井板41の左右方向の中央部であって、天井板41の前後方向の中央部に形成されている。第1作業孔44は、左右方向の幅寸法が天井板41の幅寸法よりも小さく、かつ前後方向の縦寸法が天井板41の縦寸法よりも小さく形成されている。つまり、第1作業孔44は、アッパケース40において天井板41の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されている。
【0042】
天井板41の上面における第1作業孔44の外周縁部には、
図8から
図10に示されるように、第1作業孔44に沿うように矩形状のシール装着リブ44Aが突出して形成されている。シール装着リブ44Aには、後述するカバー用シール部材24が外周面に沿うように装着されている。
【0043】
また、アッパケース40は、
図8から
図12に示されるように、天井板41の内側(下面)に取り付けられる台座受部45を有している。
【0044】
台座受部45は、天井板41の下面から下方に向かって凹型に突出して形成されている。台座受部45は、天井板41に沿って延びる取付フランジ47を有している。取付フランジ47が天井板41に下方からボルトBTによって固定されることによって台座受部45が天井板41の下面に固定されている。
【0045】
台座受部45は、第1作業孔44よりも僅かに小さい矩形状の底部48を有している。したがって、底部48は、
図11および
図12に示されるように、第1作業孔44を通して上方に臨んだ状態となっている。
【0046】
台座受部45の矩形状の底部48には、
図10,
図13および
図14に示されるように、第2作業孔49が形成されている。第2作業孔49は、底部48を上下方向に貫通するように矩形状に形成されている。第2作業孔49は、ロアケース30のロア台座34の上方に配置されると共に、第1作業孔44と上下方向に並んだ配置とされている。
【0047】
つまり、第1作業孔44と第2作業孔49とは、
図9、
図10および
図14に示されるように、電源回路60を上方に露出させない領域であって、ロアケース30のロア台座34を上方に臨ませる位置において上下方向に並んで配置されている。
【0048】
台座受部45の底部48には、アッパ台座50が上方から着脱可能に取り付けられている。したがって、アッパ台座50が台座受部45に装着された状態では、
図11および
図12に示されるように、第1作業孔44がアッパ台座50を上方に臨ませるようになっている。
【0049】
アッパ台座50は、
図1および
図13に示されるように、台座受部45の第2作業孔49よりも前後左右方向にやや大きい平面視矩形状に形成されている。アッパ台座50は、平面視矩形状の部材載置部51と、部材載置部51の外周に設けられた固定部53とを有している。
【0050】
部材載置部51は、
図8から
図11に示されるように、固定部53よりも一段高く形成されている。部材載置部51上には、複数の分岐バスバ71のうちの第2負極分岐バスバ75および一対の第2中継バスバ52と、2つのヒューズFとが載置可能とされている。つまり、第1作業孔44は、
図11および
図12に示されるように、2つのヒューズFが載置されたアッパ台座50を上方に臨ませるようになっている。
【0051】
一対の第2中継バスバ52は、
図5、
図9、
図10および
図13に示されるように、部材載置部51の右側端部において部材載置部51を上下方向に貫通した形態で部材載置部51に固定されている。第2中継バスバ52において部材載置部51上に配置される部分には、部材載置部51に載置されたヒューズFが接続されている。一方、部材載置部51から下方に延びる第2中継バスバ52の下端部には、ワイヤハーネス90が接続される。
【0052】
固定部53は、部材載置部51よりも一段下がる形態で部材載置部51の外周に連なって形成されている。固定部53は、アッパ台座50が台座受部45に装着された際に、
図8から
図10に示されるように、底部48における第2作業孔49の外周縁部上に配置される。アッパ台座50は、固定部53が底部48に対して上方から4本のボルトBTによって固定されることにより、台座受部45に固定されるようになっている。また、4本のボルトBTを取り外すことにより、
図13に示されるように、アッパ台座50を台座受部45から取り外すことが可能となっている。
【0053】
つまり、アッパ台座50は、第1作業孔44を通して台座受部45に着脱可能となっている。
【0054】
4つのアッパ側板42は、天井板41の外側縁から下方に向かって延出されて形成されている。
【0055】
隣り合うアッパ側板42は、側縁同士が連なっている。これにより、
図5、
図7から
図10に示されるように、アッパケース40はトレイ型に構成され、アッパケース40内には、後述する分岐回路70が下方から収容されるようになっている。
【0056】
4つのアッパ側板42のうちの後側のアッパ側板42には、
図5および
図7に示されるように、一対の後側ケーブル導入口42Aと、一対のコネクタ取付口42Bとがアッパ側板42を前後方向に貫通して形成されている。
【0057】
一対の後側ケーブル導入口42Aには、後述する一対の電源バスバ61と接続される図示しない電源ケーブルが止水された状態でそれぞれ導入されるようになっている。
【0058】
一対のコネクタ取付口42Bには、複数のワイヤハーネス90のうちの2つのワイヤハーネス90が止水された状態で取り付けられている。
【0059】
アッパ側フランジ部43は、4つのアッパ側板42の下端縁に周設されている。アッパ側フランジ部43は、それぞれのアッパ側板42から外方に向かって延出した形態で
4つのアッパ側板42の下端縁に矩形状に形成されている。アッパ側フランジ部43は、
図3に示されるように、長辺部に並んで配置された6本のボルトBTによってロア側フランジ部33に固定される。これにより、アッパケース40がロアケース30に固定される。
【0060】
アッパ側フランジ部43の下面は、平坦なシール面43Aとされている。シール面43Aは、アッパケース40がロアケース30に固定されると、
図8から
図10に示されるように、シール溝36の底面と共にケース用シール部材25を上下方向から挟み込む。つまり、ケース用シール部材25がシール面43Aとシール溝36の底面とに全周にわたって密着し、ロア側フランジ部33とアッパ側フランジ部43との間がシールされる。つまり、アッパケース40と、ロアケース30と、ケース用シール部材25とが一体となることによって、アッパケース40とロアケース30との間がシールされたケース本体21が構成される。
【0061】
[カバー用シール部材24]
カバー用シール部材24は、ゴム等の弾性部材によって矩形の環状に形成されている。カバー用シール部材24は、シール装着リブ44Aよりも上下方向に大きく構成されている。したがって、カバー用シール部材24がシール装着リブ44Aの外周に装着されると、カバー用シール部材24はシール装着リブ44Aよりも上方に突出した状態となる。
【0062】
[カバー23]
カバー23は、
図1から
図4に示されるように、ケース本体21の第1作業孔44よりも前後左右方向に大きい矩形の板状に形成されている。カバー23は、カバー23の四隅が天井板41にボルト固定されることによってアッパケース40に固定される。
【0063】
カバー23の外周縁部には、
図8から
図10に示されるように、カバー用シール部材24に対して上方から接触するカバー側シール面23Aが全周にわたって形成されている。カバー側シール面23Aは、カバー23がアッパケース40に固定されることにより、天井板41と共にカバー用シール部材24を上下方向から挟み込む。これにより、カバー用シール部材24がカバー23と天井板41とに密着し、第1作業孔44がカバー23とカバー用シール部材24とによって水密状態にシールされて閉口される。
【0064】
[電源バスバ61]
一対の電源バスバ61は、それぞれが導電性を有する金属板材を加工することによって形成されている。一対の電源バスバ61は、
図5および
図6に示されるように、大部分がロアケース30内に収容されている。一対の電源バスバ61は、いずれか一方が負極バスバ61Nとされ、他方が正極バスバ61Pとされる。本実施形態は、一対の電源バスバ61のうち左側の前側ケーブル導入口32Aの後方に配置された電源バスバ61が正極バスバ61Pとされ、右側の前側ケーブル導入口32Aの後方に配置された電源バスバ61が負極バスバ61Nとされている。それぞれの電源バスバ61の端部には、それぞれの極性に対応する電源ケーブルが接続される。つまり、一対の電源バスバ61に大電流が流れることによって、電源回路60が構成される。
【0065】
正極バスバ61Pは、
図6に示されるように、第1正極部62と、第2正極部63と、第3正極部64とを備えている。第1正極部62は、左側の前側ケーブル導入口32Aの後方の位置から左側のロア側板32に沿うように後方に向かって延びている。第2正極部63は、第1正極部62の後端部からロアケース30の右側部までロア台座34と後側のロア側板32との間を右方に向かって延びている。第3正極部64は、第2正極部63の右側端部からアッパケース40における左側の後側ケーブル導入口42Aまでクランク状に延びている。正極バスバ61Pは、第1正極部62の前端部と、第2正極部63の右端部とがロアケース30のボルト固定部37にボルト止めされることによってロアケース30に固定されている。
【0066】
負極バスバ61Nは、第1負極部65と、第2負極部66と、第3負極部67とを備えている。
【0067】
第1負極部65は、右側の前側ケーブル導入口32Aの後方の位置から一段高くなった形態でロア台座34の手前まで後方に向かって延びている。第2負極部66は、第1負極部65の後端部に連なるように、第1負極部65よりもやや右側の位置からロアケース30の右側部まで右方に向かって延びている。第3負極部67は、第2負極部66の右側端部からロアケース30の右側後端部まで真っ直ぐ延びている。そして、第3負極部67の後端部は、アッパケース40における右側の後側ケーブル導入口42Aまでクランク状に延びている。負極バスバ61Nは、第2負極部66の左側端部および左右方向の中央部がロアケース30のボルト固定部37にボルト固定されることによってロアケース30に固定されている。
【0068】
[分岐バスバ71]
複数の分岐バスバ71は、それぞれが電源バスバ61よりも板厚の薄い導電性を有する金属板材を加工することによって形成されている。
【0069】
複数の分岐バスバ71は、
図1および
図5に示されるように、正極分岐バスバ72と、第1負極分岐バスバ73と、第2負極分岐バスバ75との合計3つの分岐バスバ71を含んでいる。
【0070】
正極分岐バスバ72は、
図6および
図10に示されるように、正極バスバ61Pにおける第2正極部63の右側端部と共に、ロアケース30のボルト固定部37にボルト固定されている。これにより、正極分岐バスバ72は、正極バスバ61Pに対して電気的に接続されている。
【0071】
正極分岐バスバ72は、第2正極部63の右側端部の位置からロア台座34の上面と同じ高さ位置まで前方に向かってクランク状に延びた後、ロア台座34の後側部上を左方に延びている。
【0072】
正極分岐バスバ72においてロア台座34上に配置された部分には、後述するワイヤハーネス90が左右方向に4つ並んで接続されている。
【0073】
第1負極分岐バスバ73は、
図5,
図6および
図8に示されるように、負極バスバ61Nにおける第2負極部66の左右方向の中央部と共に、ロアケース30のボルト固定部37にボルト固定されている。これにより、第1負極分岐バスバ73は、負極バスバ61Nに対して電気的に接続されている。第1負極分岐バスバ73は、第2負極部66における左右方向の中央部の位置からロア台座34の上面までクランク状に延びた後、ロア台座34の右側部上を前後方向に延びている。第1負極分岐バスバ73においてロア台座34上に配置された部分には、後述するヒューズFが前後方向に2つ並んで接続されている。
【0074】
第2負極分岐バスバ75は、
図8および
図9に示されるように、第2負極部66の左側端部と共に、ロアケース30のボルト固定部37にボルト固定されている。これにより、第2負極分岐バスバ75は、負極バスバ61Nに対して電気的に接続されている。第2負極分岐バスバ75は、第2負極部66の左側端部の位置からアッパケース40のアッパ台座50の部材載置部51上までクランク状に延びた後、部材載置部51の左側部上を前後方向に延びている。つまり、第2負極分岐バスバ75は、
図8および
図9に示されるように、上下方向(ロアケース30とアッパケース40とが互いに組み付けられる方向)に延びて電源回路60に接続されている。第2負極分岐バスバ75において部材載置部51上に配置された部分には、後述するヒューズFが前後方向に2つ並んで接続されている。
【0075】
[ヒューズF]
ヒューズFは、
図5、
図6、
図8および
図9に示されるように、分岐回路70に組み込まれ、所定値以上の電流が流れた場合にその電流を遮断する一般的なヒューズとされている。
【0076】
複数のヒューズFは、
図9に示されるように、それぞれが円筒状の本体部F1と、本体部F1の両端部に設けられた一対の端子部F2とを有している。本体部F1内には、図示しない溶断部が設けられている。本体部F1は、溶断部に過電流が流れた場合、溶断部が溶断することにより、過電流を遮断する。一対の端子部F2は、本体部F1から互いに離れる方向に板状に延びている。
【0077】
ロア台座34に載置されるヒューズFは、
図5および
図6に示されるように、第1中継バスバ35の右側端部と第1負極分岐バスバ73とを左右方向に繋ぐように配置されている。ヒューズFは、それぞれの端子部F2が第1中継バスバ35および第1負極分岐バスバ73と共にロア台座34にねじ止めされることによって互いに電気的に接続されている。
【0078】
一方、部材載置部51に載置されるヒューズFは、
図8、
図9、
図11および
図12に示されるように、第2中継バスバ52と第2負極分岐バスバ75とを左右方向に繋ぐように配置されている。ヒューズFは、それぞれの端子部F2が第2中継バスバ52および第2負極分岐バスバ75と共に部材載置部51にねじ止めされることによって互いに電気的に接続されている。
【0079】
[ワイヤハーネス90]
ワイヤハーネス90は、
図1に示されるように、一対の電線92と、一対の端子94と、コネクタ96とを有している。
【0080】
電線92は、芯線が絶縁被覆によって覆われて形成された一般的な被覆電線である。一対の電線92のうちの一方の電線92は、
図5から
図7に示されるように、正極側に接続される正極電線92Pとされ、他方の電線92は、負極側に接続される負極電線92Nとされている。
【0081】
それぞれの電線92の前端部には、端子94が圧着されて電気的に接続されている。
【0082】
一対の端子94は、それぞれが導電性を有する金属によって形成されている。正極電線92Pに接続された端子94は、正極分岐バスバ72に対してねじ止めされて電気的に接続される。負極電線92Nに接続された端子94は、第1負極分岐バスバ73または第2負極分岐バスバ75のどちらかに対してねじ止めされることによって電気的に接続される。
【0083】
コネクタ96は、一対の電線92の後端部に電気的に接続されている。コネクタ96は、ロアケース30およびアッパケース40のコネクタ取付口32B、42Bに止水された状態で固定されている。これにより、ロアケース30およびアッパケース40に対して2つずつのワイヤハーネス90が止水された状態で取り付けられている。
【0084】
ロアケース30に取り付けられた2つのワイヤハーネス90の負極電線92Nにおける端子94は、
図5および
図6に示されるように、ロア台座34における第1中継バスバ35の
左側端部にねじ止めされて接続されている。これにより、ロアケース30に取り付けられた2つのワイヤハーネス90は、第1負極分岐バスバ73とヒューズFと第1中継バスバ35とを介して負極バスバ61Nと電気的に接続されている。
【0085】
一方、アッパケース40に取り付けられた2つのワイヤハーネス90における負極電線92Nの端子94は、
図5および
図7に示されるように、部材載置部51の第2中継バスバ52の下端部にねじ止めされて接続されている。これにより、アッパケース40に取り付けられた2つのワイヤハーネス90は、第2負極分岐バスバ75とヒューズFと第2中継バスバ52とを介して負極バスバ61Nと電気的に接続されている。
【0086】
したがって、ロアケース30内には、
図5および
図6に示されるように、ワイヤハーネス90の負極電線92Nと第1中継バスバ35とヒューズFと第1負極分岐バスバ73とを含むロア側負極回路70LNと、ワイヤハーネス90の正極電線92Pと正極分岐バスバ72とを含むロア側正極回路70LPとを有するロア側分岐回路70Lが2組収容されている。
【0087】
また、アッパケース40内には、
図5および
図9に示されるように、ワイヤハーネス90の負極電線92Nと第2中継バスバ52とヒューズFと第2負極分岐バスバ75とを含むアッパ側負極回路70UNと、ワイヤハーネス90の正極電線92Pと正極分岐バスバ72とを含むアッパ側正極回路70UPとを有するアッパ側分岐回路70Uの大部分が2組収容されている。
【0088】
つまり、ロアケース30内に配置されたロア側分岐回路70Lと、アッパケース40内に配置されたアッパ側分岐回路70Uとは、上下方向に重なるように並んで配置されることによって電源回路60から分岐された分岐回路70を構成している。
【0089】
[ヒューズの交換手順]
本実施形態の電気接続箱10は、以上のような構成であって、次にアッパ側分岐回路70UにおけるヒューズFの交換手順の一例を説明し、続けて、ロア側分岐回路70LにおけるヒューズFの交換手順の一例を説明する。
【0090】
アッパケース40内に配置されたアッパ側分岐回路70UにおけるヒューズFを交換するには、まず、カバー23に取り付けられた4本のボルトBTが取り外される。そして、
図11および
図12に示されるように、カバー23が天井板41から取り外されると、第1作業孔44が露出し、アッパ台座50の部材載置部51上に配置されたアッパ側負極回路70UNのヒューズFが第1作業孔44から上方に臨んだ状態となる。これにより、作業者は、第1作業孔44を通してアッパ側負極回路70UNのヒューズFの交換作業を容易に実施できる。
【0091】
次に、ロアケース30内に配置されたロア側負極回路70LNのヒューズFを交換するには、第1作業孔44を通してアッパ台座50における固定部53の4本のボルトBTが取り外される。そして、
図13および
図14に示されるように、アッパ台座50が第1作業孔44を通して上方に取り外される。
【0092】
ここで、アッパ台座50の部材載置部51に配置された第2中継バスバ52には、アッパケース40に取り付けられたワイヤハーネス90の負極電線92Nが端子94を介して接続されているため、ワイヤハーネス90の負極電線92Nや端子94に引張り荷重がかからないようにアッパ台座50が取り外される。
【0093】
すると、アッパ台座50において閉口されていた台座受部45の第2作業孔49が開放される。これにより、ロア台座34上に固定されたロア側負極回路70LNのヒューズFが第2作業孔49と第1作業孔44を通して上方に臨んだ状態となる。これにより、作業者が第2作業孔49と第1作業孔44を通してロア側負極回路70LNのヒューズFの交換作業を容易に実施できる。
【0094】
つまり、本実施形態は、アッパケース40からカバー23を取り外すことによってアッパ側分岐回路70UのヒューズFが配置されるアッパ台座50のみを露出させることができる。また、アッパケース40におけるアッパ台座50を取り外すことによってロア側分岐回路70LのヒューズFが配置されるロア台座34のみを露出させることができる。
【0095】
すなわち、本実施形態は、例えば、ロアケースからアッパケースを取り外してアッパ側分岐回路やロア側分岐回路を大きく露出させた状態でヒューズを交換する電気接続箱に比べて、電気接続箱10の防水性を高めつつ、ヒューズFの交換作業性を良好にできる。
【0096】
以上のように、本実施形態は、ケース20と、電源回路60と、分岐回路70と、を備えた電気接続箱10であって、分岐回路70は、着脱可能なヒューズ(過電流遮断素子)Fを有すると共に電源回路60から分岐する回路とされており、ケース20は、ケース本体21と、ケース本体21に着脱可能なカバー23と、カバー用シール部材24とを有し、ケース本体21は、第1作業孔44を有すると共に電源回路60および分岐回路70を収容しており、第1作業孔44は、
図8から
図10に示されるように、ヒューズFを上方(外方)に臨ませる位置においてケース本体21の天井板41を貫通した形態で天井板41の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されており、カバー23は、第1作業孔44を水密状態に閉口するようにケース本体21に装着され、カバー用シール部材24は、ケース本体21における第1作業孔44の周縁部とカバー23とに密着する。
【0097】
図11および
図12に示されるように、カバー23をケース本体21から取り外すことによってヒューズFが第1作業孔44から上方に臨んだ状態となるから、第1作業孔44を通してヒューズFを容易に交換できる。これにより、ヒューズFの交換作業性を良好にできる。また、第1作業孔44がケース本体21の天井板41の外形寸法よりも小さい外形寸法に形成されており、カバー23がケース本体21に装着されると、カバー23によって第1作業孔44が液密状態に閉口される。これにより、例えば、ケースが大きく開放される場合に比べて、電気接続箱10の防水性を高めることができる。
【0098】
ケース本体21は、ロアケース30と、アッパケース40と、弾性を有するケース用シール部材25とを有しており、ロアケース30とアッパケース40とは、互いに組み付けられるようになっており、ケース用シール部材25は、ロアケース30とアッパケース40とに密着してロアケース30とアッパケース40との間を水密状態にシールするようになっており、分岐回路70は、ロアケース30内に配置されるロア側分岐回路70Lと、アッパケース40内に配置されるアッパ側分岐回路70Uとを有しており、ロアケース30は、ロア側分岐回路70Lに接続された少なくとも1つのコネクタ96を有しており、アッパケース40は、アッパ側分岐回路70Uに接続された少なくとも1つのコネクタ96を有しており、ロア側分岐回路70Lとアッパ側分岐回路70Uとは、
図8に示されるように、ロアケース30とアッパケース40とが互いに組み付けられる方向に並んで配置されている。
【0099】
例えば、分岐回路に接続されたコネクタを、ロアケースとアッパケースのそれぞれに設ける場合、分岐回路の大部分をロアケース内に配置し、ロアケース内に配置された分岐回路とアッパケースに設けられたコネクタとを電線によって接続する方法が考えられる。しかしながら、このような方法によると、コネクタを設けるためだけにアッパケースを配置するための領域を確保することになり、アッパケース内にデッドスペースが生じると共に、電気接続箱全体が大型化してしまう。
【0100】
ところが、本実施形態は、ロアケース30のコネクタ96が接続されるロア側分岐回路70Lがロアケース30内に配置され、アッパケース40のコネクタ96が接続されるアッパ側分岐回路70Uがアッパケース40内に配置されている。つまり、防水されたケース本体21内を有効に使うことによってケース本体21の小型化、さらには電気接続箱10の小型化を図ることができる。
【0101】
電源回路60は、ロアケース30内に配置されており、アッパ側分岐回路70Uは、
図8および
図9に示されるように、電源回路60に接続される第2負極分岐バスバ75(分岐バスバ71)を有している。
【0102】
例えば、アッパ側分岐回路の電線がロアケースに配置された電源回路に接続される電気接続箱は、ロアケースとアッパケースとを組み付けた時に、電線の余長を収容する余長収容領域をケース内に確保する必要がある。このため、ケースが余長収容領域の分だけ大型化してしまう。
【0103】
ところが、本実施形態のアッパ側分岐回路70Uは、電源回路60に接続される上下方向に延びる第2負極分岐バスバ75を有しているから、ロアケース30とアッパケース40とを組み付けた際に、ケース20内に余長収容領域を確保する必要がなく、ケース20を小型化できる。これにより、電気接続箱10をさらに小型化できる。
【0104】
アッパケース40は、
図9に示されるように、アッパ側分岐回路70UのヒューズFが配置されるアッパ台座50を有しており、ロアケース30は、ロア側分岐回路70LのヒューズFが配置されるロア台座34を有しており、アッパ台座50とロア台座34とは、上下方向(ロアケース30とアッパケース40とが互いに組み付けられる方向)に並んで配置されている。
【0105】
アッパ台座50とロア台座34とが上下方向に並んで配置されているから、例えば、アッパ台座とロア台座とが上下方向と交差する前後左右方向にずれて配置される場合に比べて、ケース本体21、つまりは、電気接続箱10が前後左右方向に大型化することを防ぐことができる。
【0106】
また、アッパケース40は、アッパ台座50が着脱可能な台座受部45を有しており、台座受部45は、
図13および
図14に示されるように、アッパ台座50によって閉口される第2作業孔49を有している。
【0107】
アッパ台座50を台座受部45から取り外すことによって第1作業孔44および第2作業孔49を通してロア台座34を上方に臨ませることができる。したがって、第1作業孔44および第2作業孔49を通してロア台座34に配置されたヒューズFを交換できる。これにより、例えば、電源回路を含む回路全体を露出させてヒューズの交換を実施するものに比べて、防水性を高めつつ、ヒューズFの交換作業を良好に実施できる。
【0108】
例えば、ロアケースとアッパケースとを組み付ける際に、アッパ側分岐回路のバスバを電源回路に接続する場合には、バスバと電源回路との接続確認がケースによって視認できなくなるなど、アッパ側分岐回路と電源回路との接続作業性が低下してしまう。
【0109】
ところが、本実施形態は、第2負極分岐バスバ75が、第1作業孔44を通して電源回路60に着脱可能とされているから、例えば、ロアケースとアッパケースとを組み付ける際に、アッパ側分岐回路のバスバを電源回路に接続する場合に比べて、電源回路60とアッパ側分岐回路70Uとの接続作業性に優れる。
【0110】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0111】
(1)上記実施形態では、過電流遮断素子として円筒状の本体部F1を有するヒューズFを用いる構成にした。しかしながら、これに限らず、過電流遮断素子として角形の本体部を有するヒューズを用いてもよい。
【0112】
(2)上記実施形態では、ロアケース30およびアッパケース40にワイヤハーネス90が2つずつ取り付けられた構成にした。しかしながら、これに限らず、それぞれのケースに取り付けられるワイヤハーネスは、1つであっても良く、3つ以上であってもよい。
【0113】
(3)上記実施形態では、第1作業孔44およびカバー23と、第2作業孔49およびアッパ台座50とを矩形状に構成した。しかしながら、これに限らず、第1作業孔およびカバーと、第2作業孔およびアッパ台座とを円形状や長円形状などに構成してもよい。
【符号の説明】
【0114】
10: 電気接続箱
20: ケース
21: ケース本体
23: カバー
23A: カバー側シール面
24: カバー用シール部材
25: ケース用シール部材
30: ロアケース
31: 底板
32: ロア側板
32A: 前側ケーブル導入口
32B: コネクタ取付口
33: ロア側フランジ部
34: ロア台座
35: 第1中継バスバ
36: シール溝
37: ボルト固定部
40: アッパケース
41: 天井板
42: アッパ側板
42A: 後側ケーブル導入口
42B: コネクタ取付口
43: アッパ側フランジ部
43A: シール面
44: 第1作業孔
44A: シール装着リブ
45: 台座受部
47: 取付フランジ
48: 底部
49: 第2作業孔
50: アッパ台座
51: 部材載置部
52: 第2中継バスバ
53: 固定部
60: 電源回路
61: 電源バスバ
61N: 負極バスバ
61P: 正極バスバ
62: 第1正極部
63: 第2正極部
64: 第3正極部
65: 第1負極部
66: 第2負極部
67: 第3負極部
70: 分岐回路
70L: ロア側分岐回路
70LN: ロア側負極回路
70LP: ロア側正極回路
70U: アッパ側分岐回路
70UN: アッパ側負極回路
70UP: アッパ側正極回路
71: 分岐バスバ
72: 正極分岐バスバ
73: 第1負極分岐バスバ
75: 第2負極分岐バスバ
90: ワイヤハーネス
92: 電線
92N: 負極電線
92P: 正極電線
94: 端子
96: コネクタ
BT: ボルト
F1: 本体部
F2: 端子部
F: ヒューズ