(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】鋳造スラブの切断長さ制御方法、鋳造スラブの切断長さ制御装置、および鋳造スラブの製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/16 20060101AFI20221101BHJP
B22D 11/126 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B22D11/16 D
B22D11/126 Z
B22D11/16 104Q
(21)【出願番号】P 2019170839
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郡山 大河
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-283865(JP,A)
【文献】特開昭54-065133(JP,A)
【文献】特開2007-319929(JP,A)
【文献】特開2010-142854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御方法であって、
前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、所定の間隔ごとに実行され、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向全域に亘りスキャンして測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより測定された測定値を用いて、当該測定ステップの都度、前記所定の間隔ごとに実行される測定期間の長さに応じて、前記鋳造ストランドの代表断面積を算出する断面積算出ステップと、
前記断面積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの代表断面積を鋳造方向に積算して求められた鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、
を含み、
前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において少なくとも1回行われ
、
前記断面積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの代表断面積を用いて、前記鋳造ストランドの単位長さ当たりの重量を算出する重量算出ステップ、をさらに含み、
前記決定ステップは、前記重量算出ステップにより算出された重量を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含む
ことを特徴とする鋳造スラブの切断長さ制御方法。
【請求項2】
連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御方法であって、
前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより測定された測定値を用いて、前記鋳造ストランドの断面積を鋳造の進行とともに逐次算出する断面積算出ステップと、
前記断面積算出ステップにより逐次算出された鋳造ストランドの断面積を鋳造方向に積算して前記鋳造ストランドの体積を算出する体積算出ステップと、
前記体積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、
を含み、
前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において間欠的または連続的に行われ
、
前記体積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの体積を用いて、前記鋳造ストランドの重量を算出する重量算出ステップ、をさらに含み、
前記決定ステップは、前記重量算出ステップにより算出された重量を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含む
ことを特徴とする鋳造スラブの切断長さ制御方法。
【請求項3】
前記決定ステップにおいて、要求された鋳造スラブの重量にマージンを付加する補正を行って、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の鋳造スラブの切断長さ制御方法。
【請求項4】
前記測定ステップの測定は、連続鋳造設備の最終サポートロールから切断装置までの鋳造方向区間内において行われる
ことを特徴とする請求項1から
3のうちのいずれか一項に記載の鋳造スラブの切断長さ制御方法。
【請求項5】
前記測定ステップは、レーザ距離計によって前記短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定するステップを含む
ことを特徴とする請求項1から
4のうちのいずれか一項に記載の鋳造スラブの切断長さ制御方法。
【請求項6】
連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御装置であって、
前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、所定の間隔ごとに実行され、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向全域に亘りスキャンして測定する測定器と、
前記測定器により測定された測定値を用いて、前記測定器での測定の都度、前記所定の間隔ごとに実行される測定期間の長さに応じて、前記鋳造ストランドの代表断面積を算出する断面積算出手段と、
前記断面積算出手段により算出された前記鋳造ストランドの代表断面積を鋳造方向に積算して求められた鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断装置と、
を備え、
前記測定器は、前記切断装置による切断間隔内において少なくとも1回前記短辺面の幅方向位置を測定
し、
前記断面積算出手段により算出された鋳造ストランドの代表断面積を用いて、前記鋳造ストランドの単位長さ当たりの重量を算出する重量算出手段、をさらに備え、
前記決定手段は、前記重量算出手段により算出された重量を用いて、切断すべき前記鋳造スラブの切断長さを決定する
ことを特徴とする鋳造スラブの切断長さ制御装置。
【請求項7】
連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御装置であって、
前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定器と、
前記測定器により測定された測定値を用いて、前記鋳造ストランドの断面積を鋳造の進行とともに逐次算出する断面積算出手段と、
前記断面積算出手段により逐次算出された鋳造ストランドの断面積を鋳造方向に積算して前記鋳造ストランドの体積を算出する体積算出手段と、
前記体積算出手段により算出された鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断装置と、
を備え、
前記測定器は、前記切断装置による切断間隔内において間欠的または連続的に前記短辺面の幅方向位置を測定
し、
前記体積算出手段により算出された鋳造ストランドの体積を用いて、前記鋳造ストランドの重量を算出する重量算出手段、をさらに備え、
前記決定手段は、前記重量算出手段により算出された重量を用いて、切断すべき前記鋳造スラブの切断長さを決定する
ことを特徴とする鋳造スラブの切断長さ制御装置。
【請求項8】
前記決定手段は、要求された鋳造スラブの重量にマージンを付加する補正を行って、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する
ことを特徴とする請求項
6または7に記載の鋳造スラブの切断長さ制御装置。
【請求項9】
前記測定器は、連続鋳造設備の最終サポートロールから切断装置までの鋳造方向区間内において前記測定を行う
ことを特徴とする請求項
6から
8のうちのいずれか一項に記載の鋳造スラブの切断長さ制御装置。
【請求項10】
前記測定器は、レーザ距離計であることを特徴とする請求項
6から
9のうちのいずれか一項に記載の鋳造スラブの切断長さ制御装置。
【請求項11】
連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを製造する鋳造スラブの製造方法であって、
前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、所定の間隔ごとに実行され、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向全域に亘りスキャンして測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより測定された測定値を用いて、当該測定ステップの都度、前記所定の間隔ごとに実行される測定期間の長さに応じて、前記鋳造ストランドの代表断面積を算出する断面積算出ステップと、
前記断面積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの代表断面積を鋳造方向に積算して求められた鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、
を含み、
前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において少なくとも1回行われ
、
前記断面積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの代表断面積を用いて、前記鋳造ストランドの単位長さ当たりの重量を算出する重量算出ステップ、をさらに含み、
前記決定ステップは、前記重量算出ステップにより算出された重量を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含む
ことを特徴とする鋳造スラブの製造方法。
【請求項12】
連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを製造する鋳造スラブの製造方法であって、
前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより測定された測定値を用いて、前記鋳造ストランドの断面積を鋳造の進行とともに逐次算出する断面積算出ステップと、
前記断面積算出ステップにより逐次算出された鋳造ストランドの断面積を鋳造方向に積算して前記鋳造ストランドの体積を算出する体積算出ステップと、
前記体積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、
前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、
を含み、
前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において間欠的または連続的に行われ
、
前記体積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの体積を用いて、前記鋳造ストランドの重量を算出する重量算出ステップ、をさらに含み、
前記決定ステップは、前記重量算出ステップにより算出された重量を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含む
ことを特徴とする鋳造スラブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造スラブの切断長さ制御方法、鋳造スラブの切断長さ制御装置、および鋳造スラブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造においては、切断すべき鋳造スラブの目標長さ(切断長さ)は、後続プロセスにおいて要求されている要求重量にマージン(付加重量)を付加した目標重量に合わせるように決定されるものであり、この目標重量に応じて、公称単位重量と、公称単位重量を補正する熱寸補正係数とから求められている。ここで公称単位重量とは、鋳型の断面積および溶鋼の成分(鋳片の成分)より定まる比重を用いて求められるストランドの単位長さ当たりの重量であるが、例えばストランドの断面積は鋳型から引抜かれた直後と冷却された後では変化するため、熱寸補正係数を用いて切断直前のストランドの単位重量に補正した上で、上記の目標重量を満たすよう切断長さを算出する。しかしながら、実際に切断された後のスラブ重量にはバラツキがあり、バラツキが大きい場合には要求重量を下回り、不適合材を発生させることがあった。
【0003】
こうした事態を回避するため、上記の目標長さを、オペレータが経験的に得た切断補正係数で除して切断長さを補正する方法が採用されることがある。例えば、鋳込みスタート時には、切断補正係数として、オペレータの経験則に応じた値を入力し、スラブ3~4枚の秤量実績に応じて切断補正係数をオペレータが修正し、その後、マージンが目標値に近づくように切断補正係数を直接オペレータが調整し続けるという操業方法である。
【0004】
しかしながら、このような切断長さの決定方法では、重量不足による不適合材を発生させないことに注意が払われるため、実際に付加したマージンを表す付加重量比率(=(鋳造スラブの実績重量-鋳造スラブの要求重量)/鋳造スラブの要求重量)が大きくなりがちで、歩留まりが低下するという問題がある。また、経験が少ないオペレータでも、過剰なマージンを付加せずに操業を行えるようにする必要がある。
【0005】
付加重量比率を最小化するためには、まず、切断直前のストランドの単位重量の適中精度を向上させて、常時1に近い切断補正係数を設定できる(切断補正を行なわなくて済む)ようにする必要があり、これまでは、ストランドの外形寸法や温度を計測することで、より正確に熱寸補正を行うという観点から技術改善がなされてきた。
【0006】
特許文献1には、連続鋳造されたストランドをスラブに切断するに当り、クランプ装置でスラブ幅測定を、測長装置でスラブ厚を測定し、得られたストランドの実幅並びに実厚および切断予定スラブの命令質量に基づきスラブ切断命令長を演算し、前記ストランドを搬送してその搬送距離が前記切断予定スラブのスラブ切断命令長に到達した時点でストランドをクランプして前記連続鋳造スラブの切断を行う方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、超音波センサにより、切断以前の鋳造ストランドのクレータエンド位置を検出又は推定し、検出又は推定されたクレータエンド位置と予め求めた鋳造ストランド単重との関係から切断すべき鋳造スラブの目標重量を達成するための切断長さを補正する方法が開示されている。
【0008】
特許文献3には、ピンチロールと切断装置の間に、ストランドの表面温度を測定する表面温度測定器を設置し、切断された複数の鋳片に関して、前記表面温度測定器により測定された表面温度を含む鋳込条件情報および各鋳片の実測重量より、前記補正係数を算出する式に含まれる各鋳込条件に乗ずる補助係数を求め、各補助係数と、次に切断すべき鋳片に関する鋳込条件情報とから、該鋳片の切断長さの計算に適用する補正係数を求める方法が開示されている。
【0009】
特許文献4には、切断対象の鋳片に対応する位置のストランドが連続鋳造機の内部を通過するのに要する機内滞留時間と、切断位置の直前にスラブ幅計で計測されたストランドの幅とに基づいて切断長を補正する方法が開示されている。
【0010】
特許文献5には、要求重量から求まる切断長で切断した鋳片について冷間長の測定を行ない、プロセスコンピュータが、測定器から取得した鋳片の冷間長に基づいて、鋳片の熱間長を補正する熱間補正係数を鋳片毎に算出し、熱間補正係数によって補正した熱間長を、鋳片の切断長として切断装置に指令する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-283865号公報
【文献】特開2011-131268号公報
【文献】特開2012-40612号公報
【文献】特開2014-108449号公報
【文献】特開2015-58436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の方法はいずれも、ストランド形状が完全な直方体、すなわち、断面形状が長方形で、各辺の垂直を保って鋳造方向に延長された形状であるという前提で行なわれている。そのため、ストランド形状が完全な直方体ではない場合には、どんなに精度よく熱寸補正を行なっても、切断されたスラブの重量は、目標重量に対して誤差を生じる。
【0013】
例えば、実際のストランド形状は、短辺がバレル状に膨らんだ(短辺バルジングと呼ばれる)形状を呈することがある。鋼の連続鋳造では、鋳型内で形成された凝固シェルが、その厚みを増しながら凝固が進行するが、鋳型を出た直後の凝固シェルはまだその厚みが薄いために、凝固シェルのサポートが弱いと、上方に存在する溶鋼の静圧によって凝固シェルが外側に膨らむ場合がある。これがストランドの短辺に現れたものが短辺バルジングであり、膨らんだ部分のストランドの幅は鋳型の幅よりも大きくなることがある。すなわち、このような場合は、ストランドの断面積は熱寸補正係数の適否に依らず、正確な値とならず、実際に切断された後のスラブ重量は目標重量に対して誤差を生じる。その結果、切断後のスラブ重量が要求重量を下回るリスクが残っており、マージンを最小化するには至らないという問題があった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、鋳造スラブの目標重量と、実際に製造された鋳造スラブの重量との差異を小さくでき、マージンの最小化を図れるような鋳造スラブの切断長さ制御方法、鋳造スラブの切断長さ制御装置、および鋳造スラブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御方法であって、前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定ステップと、前記測定ステップにより測定された測定値を用いて前記鋳造ストランドの代表断面積を算出する断面積算出ステップと、前記断面積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの代表断面積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、を含み、前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において少なくとも1回行われることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、上記発明において、前記断面積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの代表断面積を用いて、前記鋳造ストランドの単位長さ当たりの重量を算出する重量算出ステップ、をさらに含み、前記決定ステップは、前記重量算出ステップにより算出された重量を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御方法であって、前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定ステップと、前記測定ステップにより測定された測定値を用いて、前記鋳造ストランドの断面積を鋳造の進行とともに逐次算出する断面積算出ステップと、前記断面積算出ステップにより逐次算出された鋳造ストランドの断面積を鋳造方向に積算して前記鋳造ストランドの体積を算出する体積算出ステップと、前記体積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、を含み、前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において間欠的または連続的に行われることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、上記発明において、前記体積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの体積を用いて、前記鋳造ストランドの重量を算出する重量算出ステップ、をさらに含み、前記決定ステップは、前記重量算出ステップにより算出された重量を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、上記発明において、前記決定ステップにおいて、要求された鋳造スラブの重量にマージンを付加する補正を行って、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、上記発明において、前記測定ステップの測定は、連続鋳造設備の最終サポートロールから切断装置までの鋳造方向区間内において行われることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、上記発明において、前記測定ステップは、レーザ距離計によって前記短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定するステップを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御装置は、連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御装置であって、前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定器と、前記測定器により測定された測定データを収集し、前記鋳造ストランドの代表断面積を算出する断面積算出手段と、前記断面積算出手段により算出された前記鋳造ストランドの代表断面積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断装置と、を備え、前記測定器は、前記切断装置による切断間隔内において少なくとも1回前記短辺面の幅方向位置を測定することを特徴とする。
【0023】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御装置は、上記発明において、前記断面積算出手段により算出された鋳造ストランドの代表断面積を用いて、前記鋳造ストランドの単位長さ当たりの重量を算出する重量算出手段、をさらに備え、前記決定手段は、前記重量算出手段により算出された重量を用いて、切断すべき前記鋳造スラブの切断長さを決定することを特徴とする。
【0024】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御装置は、連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを得る鋳造スラブの切断長さ制御装置であって、前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定器と、前記測定器により測定された測定値を用いて、前記鋳造ストランドの断面積を鋳造の進行とともに逐次算出する断面積算出手段と、前記断面積算出手段により逐次算出された鋳造ストランドの断面積を鋳造方向に積算して前記鋳造ストランドの体積を算出する体積算出手段と、前記体積算出手段により算出された鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断装置と、を備え、前記測定器は、前記切断装置による切断間隔内において間欠的または連続的に前記短辺面の幅方向位置を測定することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御装置は、上記発明において、前記体積算出手段により算出された鋳造ストランドの体積を用いて、前記鋳造ストランドの重量を算出する重量算出手段、をさらに備え、前記決定手段は、前記重量算出手段により算出された重量を用いて、切断すべき前記鋳造スラブの切断長さを決定することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御装置は、上記発明において、前記決定手段は、要求された鋳造スラブの重量にマージンを付加する補正を行って、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御装置は、上記発明において、前記測定器は、連続鋳造設備の最終サポートロールから切断装置までの鋳造方向区間内において前記測定を行うことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御装置は、上記発明において、前記測定器は、レーザ距離計であることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る鋳造スラブの製造方法は、連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを製造する鋳造スラブの製造方法であって、前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定ステップと、前記測定ステップにより測定された測定値を用いて前記鋳造ストランドの代表断面積を算出する断面積算出ステップと、前記断面積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの代表断面積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、を含み、前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において少なくとも1回行われることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る鋳造スラブの製造方法は、連続鋳造された鋳造ストランドを切断して目標長さの鋳造スラブを製造する鋳造スラブの製造方法であって、前記鋳造ストランドの幅方向両側の短辺面について、当該短辺面の幅方向位置を前記鋳造ストランドの厚み方向に測定する測定ステップと、前記測定ステップにより測定された測定値を用いて、前記鋳造ストランドの断面積を鋳造の進行とともに逐次算出する断面積算出ステップと、前記断面積算出ステップにより逐次算出された鋳造ストランドの断面積を鋳造方向に積算して前記鋳造ストランドの体積を算出する体積算出ステップと、前記体積算出ステップにより算出された鋳造ストランドの体積を用いて、切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、前記決定ステップにより決定された切断長さで前記鋳造スラブを切断する切断ステップと、を含み、前記測定ステップの測定は、前記切断ステップによる切断間隔内において間欠的または連続的に行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、鋳造ストランド両側の短辺面の幅方向位置を鋳造ストランドの厚み方向に測定して、その測定値を用いて鋳造ストランドの代表断面積を算出し、その代表断面積から切断すべき鋳造スラブの切断長さを決定することができる。これにより、ストランド形状が完全な直方体でない場合であっても、鋳造ストランドの形状を反映した正確な切断重量が算出でき、その結果、マージンを最小化できる。また、鋳造ストランド両側の短辺面の位置の測定により、鋳造ストランドの厚みも正確に把握できるので、切断重量をより正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における鋳造スラブの切断長さ制御方法が実施された連続鋳造設備の概略構成図である。
【
図2】
図2は、測定器の設置位置を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、測定器による測定方法を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、鋳造スラブの切断長さ制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態における鋳造スラブの切断長さ制御方法、鋳造スラブの切断長さ制御装置、および鋳造スラブの製造方法について説明する。
【0034】
[連続鋳造設備の構成]
図1は、本発明の一実施形態における鋳造スラブの切断長さ制御方法が実施された連続鋳造設備の概略構成図である。なお、この説明では、連続鋳造設備で鋳造された鋳片について、「切断される以前の鋳片」を「鋳造ストランド」と記載し、「切断後の鋳片」を「鋳造スラブ」と記載する。
【0035】
連続鋳造設備1では、取鍋2内の溶鋼が耐火物ノズル3を介してタンディッシュ4に注入され、タンディッシュ4内の溶鋼は浸漬ノズル5と呼ばれる耐火物ノズル3を介して鋳型6に注入される。鋳型6は、図示しない振動装置によって焼き付かないように振動されており、この鋳型6から引き抜かれた鋳造ストランド7が支持ロール8によって支持されながら次第に下方に引き抜かれてゆく。この支持ロール8の間隙にはスプレーノズルが配置されてなる、二次冷却帯が構成されている。二次冷却帯では、冷却水をスプレーノズルからミスト状にして鋳造ストランド7に吹き付け、これにより鋳造ストランド7を外部から冷却する。鋳造ストランド7は、必要に応じて設置される軽圧下帯を通過した後、切断装置であるトーチ9によって鋳造スラブ11に切断される。トーチ9は、トーチ制御装置10によって、鋳造ストランド7の鋳造速度に応じて移動される。なお、符号12は、切断された鋳造スラブ11の重量を計測する秤量器である。
【0036】
本実施形態では、トーチ9の上流側に、鋳造ストランド7の短辺面7aの幅方向位置を測定する測定器13が設けられている。
図1に示すように、鋳造方向で連続鋳造設備1の最終サポートロール8aからトーチ9までの区間内に、測定器13が配置されている。
【0037】
測定器13は、レーザ距離計である。レーザ距離計とは、レーザ光を対象物の表面に照射して、その反射光を受光することによって対象物との距離を測定する測定器である。特に測定器13は、帯状に広がったレーザ光を対象物の表面に照射する変位センサ(二次元レーザ変位センサ)である。
【0038】
図2は、測定器の設置位置を説明するための模式図である。
図3は、測定器による測定方法を説明するための模式図である。なお、配置や方向を説明する際、「鋳造ストランドの幅方向」を単に「幅方向」と記載し、「鋳造ストランドの厚み方向」を単に「厚み方向」と記載する場合がある。
【0039】
図2に示すように、測定器13は、鋳造ストランド7の短辺面7aよりも幅方向で外側に配置され、その短辺面7aに向けて、厚み方向に帯状に広がるレーザ光14を照射する。この測定器13は、その反射光を受光することにより短辺面7aの幅方向位置を測定する。例えば、測定器13は、シリンドリカルレンズにより帯状に拡散されたレーザ光14を短辺面7aに向けて照射する投光部(図示せず)と、その反射光を受光する受光部(図示せず)とを有する。測定器13には投光部と受光部とが鋳造方向に並んで設けられており、この投光部と受光部とがいずれも短辺面7a側を向くようにして測定器13が配置される。さらに、厚み方向については、
図3に示すように、測定器13の位置(受光部および投光部の位置)は鋳造ストランド7の厚さと重なる位置に配置される。このようにして配置された測定器13では、投光部と受光部とが鋳造方向で異なる位置に配置されていることにより、厚み方向に帯状に拡散されたレーザ光14を短辺面7aに照射し、その反射光を受光することができる。
【0040】
図3に示すように、測定器13は、幅方向にレーザ光14を投光し、鋳造ストランド7の短辺面7aを厚み方向全域に亘りスキャンして、短辺面7aの幅方向位置を測定する。そして、幅方向において、基準位置から鋳造ストランド7の短辺面7aまでの距離Lが、測定器13により測定される。この測定範囲は、鋳造ストランド7の厚み方向全域に亘る。距離Lは、幅方向の距離、すなわち厚み方向に直交する方向の距離である。なお、
図3には、基準位置が破線で示されている。
【0041】
例えば、短辺面7aのうち、厚み方向中央部と、厚み方向下部と、厚み方向上部との三点を例に説明する。鋳造ストランド7で短辺バルジングが発生している場合、短辺面7aについて、基準位置から厚み方向中央部までの距離Lは、基準位置から厚み方向上部までの距離Lおよび基準位置から厚み方向下部までの距離Lよりも短いという測定結果を得ることになる。このように、鋳造ストランド7の短辺面7aが帯状のレーザ光14によって厚み方向全域に亘りスキャンされることにより、測定器13は、測定値である距離Lを厚み方向全域に亘り得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、測定器13によって、鋳造ストランド7の断面形状を把握するように構成されている。連続鋳造中に鋳造ストランド7の断面形状を把握するためには、鋳造ストランド7の幅方向両側を対象として、短辺面7aの幅方向位置を測定する必要がある。そのため、本実施形態では、幅方向で鋳造ストランド7の両側に、一対の測定器13が配置されている。すなわち、測定器13は、幅方向の一方側に配置された第1測定器と、幅方向の他方側に配置された第2測定器とを含む。第1測定器と第2測定器とは、いずれもレーザ距離計である。そして、鋳造ストランド7の幅方向両側に配置された一対の測定器13は、鋳造ストランド7のうちの鋳造方向で同じ箇所を測定対象とするように、鋳造方向で同じ位置に配置されている。すなわち、上述した連続鋳造設備1の区間内における同一の鋳造方向位置において、一対の測定器13が鋳造ストランド7の幅方向両側で同じ測定タイミングで測定を行うように構成されている。
【0043】
そして、連続鋳造中に鋳造ストランド7は、トーチ9によって切断される前に、測定器13の前を通過する。すなわち、一対の測定器13によって幅方向に挟まれているエリアを、切断前の鋳片である鋳造ストランド7が通過することになる。この通過の際、鋳造ストランド7の両側の短辺面7aについて、基準位置から短辺面7aまでの距離Lが、厚み方向全域に亘り測定器13によって測定される。そして、測定器13が短辺面7aの幅方向位置を測定すると、この測定値が測定器13から制御装置15に入力される。なお、測定器13は、厚み方向位置を調整するために台座16の上に設置されてもよい。
【0044】
制御装置15は、電子制御装置により構成されており、鋳造スラブ11の切断長さを制御する切断制御を実行する。この制御装置15は、トーチ制御装置10を含んで構成される。
【0045】
トーチ制御装置10では、測定器13から入力された測定値を用いて、鋳造ストランド7の代表断面積を算出し、算出された代表断面積に基づいて、切断すべき鋳造スラブ11の長さを決定する制御を実行する。このトーチ制御装置10は、トーチ9を制御することにより、決定された切断長さに従って鋳造ストランド7を切断することができる。
【0046】
[鋳造スラブの切断長さ制御方法]
図4は、鋳造スラブの切断長さ制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、
図4に示す処理は、連続鋳造設備1での連続鋳造中に実行される。
【0047】
連続鋳造中に、最終サポートロール8aとトーチ9との間に設置された測定器13は、鋳造ストランド7の両側の短辺面7aについて、短辺面7aの幅方向位置を厚み方向全域に亘り測定する(ステップS1)。ステップS1では、基準位置から短辺面7aまでの距離Lが、鋳造ストランド7の厚み方向全域で測定される。測定器13は、この測定を間欠的または連続的に繰り返す。つまり、測定器13は、所定の測定ピッチごとに間欠的に測定を行ってもよく、あるいは連続鋳造中に連続的に測定を行ってもよい。
【0048】
例えば、鋳造速度1.8m2/minで鋳造される鋳片について、上述した測定を2秒ピッチで行うと、鋳造ストランド7の両側の短辺面7aにおける厚み方向のプロファイルが、鋳造方向に60mmピッチで得られることになる。つまり、時間的な測定ピッチは2秒間、測定対象となる鋳造長さの測定ピッチは60mmとなる。
【0049】
制御装置15は、ステップS1の処理により測定され、測定器13から入力された測定値を用いて、鋳造ストランド7の代表断面積を算出する(ステップS2)。ステップS2では、幅方向両側に配置された一対の測定器13から入力された測定値を用いて、鋳造ストランド7の断面形状が描かれ、鋳造ストランド7の代表断面積が算出される。この場合、測定器13により測定された測定データ(測定値)が収集される。そして、ステップS2では、鋳造の進行に伴い、鋳造ストランド7の断面積が逐次算出される。
【0050】
例えば、断面積の算出方法として、まず、制御装置15は、短辺面7aの幅方向位置を、鋳造ストランド7の幅方向中央位置からの距離に換算する処理を実行する。この幅方向中央位置は連続鋳造設備1の幅方向中央位置として予め定められている。また、一対の測定器13が配置されている幅方向位置から、その幅方向中央位置に対する測定器13の幅方向位置を特定できる。そのため、制御装置15は、測定器13による測定値に基づいて、鋳造ストランド7の幅方向中央位置から短辺面7aの幅方向位置までの距離を算出することができる。
【0051】
断面積の算出方法の続きとして、制御装置15は、測定器13から入力された測定値に基づいて、仮想平面上に鋳造ストランド7の断面形状を描く処理を実行する。この場合、制御装置15は、幅方向両側の短辺面7aについて、一方側の上端に相当する位置と他方側の上端に相当する位置とを直線で結び、一方側の下端に相当する位置と他方側の下端に相当する位置とを直線で結ぶ。制御装置15には、一対の測定器13からそれぞれに測定値が入力される。また、制御装置15は、この上端同士を結ぶ線分と、下端同士を結ぶ線分と、測定器13により測定された幅方向両側の短辺面7aの形状とを、鋳造方向位置が同一となる仮想平面上に、鋳造ストランド7の断面形状として描く。この仮想平面は、一方の軸が鋳造ストランド7の幅方向、他方の軸が鋳造ストランド7の厚み方向となる二次元平面である。例えば、仮想平面は、鋳造ストランド7の幅方向中央位置を一方の軸(鋳造ストランドの幅方向に対応する軸)の原点に設定することができる。このように、制御装置15は、測定器13から入力された測定値に基づいて、仮想平面上に鋳造ストランド7の断面形状を描けるとともに、その長辺の長さを算出し、かつ短辺の形状を測定器13からの測定値により求めることができる。
【0052】
そして、断面積の算出方法のさらなる続きとして、制御装置15は、仮想平面上に描かれた断面形状と、算出された断面形状の長辺の長さ(上端同士を幅方向に結ぶ線分、下端同士を幅方向に結ぶ線分)と、測定された鋳造ストランド7の厚み(測定器13による測定値)とに基づいて、仮想平面上での断面形状について断面積を算出する処理を実行する。測定器13の測定値によって、断面形状の厚みを求めることができる。この場合、制御装置15は、測定器13から入力された測定値を用いて、測定器13での測定の都度、代表断面積を算出することが可能である。このようにして得られた鋳造ストランド7の断面形状から、鋳造ストランド7の代表断面積を算出することができる。上述した測定ピッチで測定器13が測定を行う例では、鋳造ストランド7の断面形状が鋳造方向に60mmごとに描かれることになる。
【0053】
制御装置15は、ステップS2の処理により算出された代表断面積を、鋳造方向に積算して、鋳造ストランド7の体積を求める(ステップS3)。ステップS3では、鋳造方向に所定長さに亘って鋳造ストランド7の体積が算出される。この体積算出対象とする鋳造方向長さは、適宜の長さに設定することが可能である。
【0054】
例えば、制御装置15は、上述した測定ピッチごとに得られた鋳造ストランド7の断面形状を鋳造方向に積算すると、鋳造方向において、測定器13での測定位置よりも下流側の鋳造ストランド7の体積を逐次求めることができる。このように、測定器13によって所定の間隔ごとに実行される測定期間の長さ(測定対象となる鋳造ストランド7の鋳造方向長さ)に応じて、体積や断面積を算出することができる。
【0055】
制御装置15は、ステップS3の処理により算出された体積に、鋳片温度を考慮した鋳片の密度を掛けて、測定器13の測定位置よりも下流側の鋳造ストランド7の重量を求める(ステップS4)。鋳片温度は、鋳造ストランド7の温度であり、連続鋳造設備1に設けられた温度センサ(図示せず)により測定される。この温度センサで測定した鋳片温度が制御装置15に入力される。鋳片温度を考慮した鋳片の密度は、鋼種ごとに決まった値であり、例えば制御装置15の記憶部に予め記憶されている。ステップS4では、鋳造の進行に伴い、鋳造ストランド7の重量が逐次算出される。
【0056】
あるいは、ステップS4では、ステップS2の処理により算出された鋳造ストランド7の代表断面積と、鋳片の成分により定まる比重とを用いて、鋳造ストランド7の単位長さ当たりの重量を求めることができる。この算出された単位長さ当たりの重量と、測定器13の測定位置よりも下流側の鋳造ストランド7の長さとから、測定器13の測定位置よりも下流側の鋳造ストランド7の重量を求めることができる。なお、鋳片の成分により定まる比重は、例えば制御装置15の記憶部に予め記憶されている。
【0057】
制御装置15は、ステップS4の処理により算出された鋳造ストランド7の重量が、要求重量に対応する重量となるように鋳造スラブ11の切断長さを算出し、この算出された切断長さに所定の付加重量分に相当する長さを加えて鋳造スラブ11の切断長さを決定する(ステップS5)。要求重量とは、連続鋳造の後続プロセス(連続鋳造工程の次工程)から要求される鋳造スラブ11の重量である。ステップS5では、まず要求重量に合うように鋳造ストランド7の重量を設定し、この要求重量となる長さを鋳造スラブ11の切断長さとして算出する。すなわち、制御装置15は、重量を長さに換算して切断長さを算出する。そのうえで、要求重量となるように算出された切断長さに所定の付加重量分(マージン分)の長さを加えて、鋳造ストランド7の重量が目標重量と合うように設定された際の長さを、鋳造スラブ11の切断長さに決定する。つまり、ステップS5において、制御装置15は、鋳造ストランド7の重量を、要求重量にマージンを付加した目標重量に合わせるように鋳造スラブ11の切断長さを決定する。マージンとは、連続鋳造工程において鋳造ストランド7を切断して鋳造スラブ11を製造する際、要求重量に付加する重量(付加重量)のことである。この制御装置15は、切断すべきスラブの目標長さを、後続プロセスにおいて要求されている重量にマージンを付加した目標重量に合わせるように決定する。そのため、ステップS5において、制御装置15は、要求された鋳造スラブ11の重量にマージンを付加する補正を行い、補正後の重量に応じて、切断すべき鋳造スラブ11の長さを決定する。
【0058】
制御装置15は、トーチ9を制御することにより、決定された切断長さに従って鋳造ストランド7を切断する(ステップS6)。ステップS6において、トーチ制御装置10は、測定器13による測定位置からの鋳造ストランド7の体積が、目標重量に対応する鋳造方向位置にトーチ9を移動させて、鋳造スラブ11を切断するようトーチ9を制御する。
【0059】
以上説明したように、実施形態によれば、鋳造ストランド7の両側の短辺面7aの幅方向位置を、測定器13により厚み方向全域に亘り測定し、その測定値から鋳造ストランド7の代表断面積を算出し、その代表断面積から切断すべき鋳造スラブ11の切断長さを決定することができる。これにより、ストランド形状が完全な直方体でない場合であっても、鋳造ストランド7の形状を反映した正確な切断重量が算出でき、その結果、マージンが最小化できる。また、鋳造ストランド7の両側の短辺面7aの幅方向位置を測定することによって、鋳造ストランド7の厚みも正確に把握することができるので、より正確に切断重量を算出することが可能になる。その結果、オペレータが過剰なマージンを付加せずに操業を行うことが可能になり、歩留まりの向上を実現する。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0061】
例えば、上述した実施形態では、測定器13が間欠的または連続的に測定を行う構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。測定器13は、最終サポートロール8aからトーチ9までの区間内において、トーチ9によって鋳造スラブ11が切断されるまでの切断間隔内で、少なくとも1回、短辺面7aの幅方向位置を測定するように構成することができる。要するに、トーチ9による前回の切断から、次回の切断までの間に、上述した鋳造方向の区間内において、少なくとも1回は測定器13による測定が行われればよい。つまり、上述したステップS5の処理(切断ステップ)による切断間隔内において、少なくとも1回、測定器13による測定が行われる。
【0062】
また、測定器13の設置箇所は、上述した実施形態に限定されない。鋳造方向での設置箇所は、トーチ9よりも上流側であればよい。この場合、上述した二次冷却帯では、ミスト状の冷却水や、冷却により蒸発した水蒸気など、測定器13による測定に関して外乱が存在する測定環境である。そのため、外乱の少ない測定環境として、最終サポートロール8aとトーチ9との間の区間内に、測定器13を設置することが好ましい。さらに、測定器13としてレーザ距離計などの光学式センサを用いる場合には、冷却により蒸発した水蒸気や、粉塵などによって測定光が遮られないよう、鋳造ストランド7と測定器13との間隙にパージガスを流通させる等の措置を施してもよい。加えて、設備スペースが少ないなどの事情で、鋳造ストランド7と測定器13との間隔が充分に確保できず、鋳造ストランド7から発せられる熱でセンサが使用に耐えない恐れがある場合は、センサの冷却や防熱等の対策を講じてもよい。
【0063】
また、測定器13は、上述したレーザ距離計に限定されない。例えば、測定器13は、超音波距離計や接触式の距離計であってもよい。また、測定器13がレーザ距離計である場合、そのレーザ距離計は、上述した二次元レーザ変位センサに限定されない。例えば、測定器13には、線状のレーザ光が照射された1点までの距離を測定する、いわゆる一次元レーザ変位センサを用いてもよい。この場合は、センサ自体またはセンサを設置した台座を鋳造ストランド7の鋳造方向への進行に同期させつつ、鋳造ストランド7の厚み方向に走査することにより、鋳造ストランド7の両側の短辺面7aについて、短辺面7aの幅方向位置を厚み方向全域に亘り測定する。
【0064】
また、鋳造スラブの切断長さ制御方法は、上述したステップS1~S6を全て含む方法に限定されない。例えば、
図4に示すフローチャートについて、上述したステップS3の処理(体積算出ステップ)を実施せずに、ステップS2の処理(断面積算出ステップ)からステップS4の処理(重量算出ステップ)に進むことが可能である。この場合、ステップS4では、ステップS2の処理により算出された鋳造ストランド7の代表断面積に、鋳片の成分により定まる比重を掛けて、鋳造ストランド7の単位長さ当たりの重量を算出する。そして、ステップS5では、要求重量を、ステップS4で算出された単位長さ当たりの重量で割ることにより、切断長さを決定する。このように、鋳造ストランド7の体積を算出せずに、鋳造スラブ11の切断長さを決定することが可能である。
【0065】
また、上述した鋳造スラブの切断長さ制御方法を用いて決定された切断長さとなるように、連続鋳造された鋳造ストランド7を切断して鋳造スラブ11を製造する製造方法を実施することが可能である。
【実施例】
【0066】
ここで、上述した実施形態に基づいた実施例について説明する。実施例では、ストランド幅1400mm×厚み220mmの炭素鋼の鋳造タイミングにおいて、レーザ距離計である測定器13による短辺形状の測定を行い、その測定結果より求められる鋳造ストランド7の断面積を、従来の断面積の計算(長方形前提)の場合と比較した。従来の方法では、幅1.424m、厚み0.22mの長方形断面として、断面積を計算していた。これに対し、実施例の方法では、短辺がバルジングしている部分の面積を求めると、その面積は0.00152m2であった。すなわち、従来の方法で計算される断面積は(1.424×0.22)m2であるのに対し、実施例の方法では、より実態に近い断面積の値として(1.424×0.22+0.00152)m2が得られる。この鋳造タイミングでは、平均切断長が3.243mであったので、鋳造スラブ11の比重を7.85ton/m3として両者の平均計算スラブ重量を求めると、従来の方法では、3.243×0.22×7.85=7.96tonであるのに対し、実施例の方法では、3.243×(0.22×1.424+0.00152)×7.85=8.01tonとなる。すなわち、従来の方法では、実際よりもスラブ1枚当たり約50kg少ない見積もりに基づいて操業を行うことがあったことになり、この場合には結果的に過剰なマージンを付加するよう切断補正係数を設定していたと考えられる。このように、実施例によれば、従来の方法よりも、正確に切断重量を算出することが可能になるため、オペレータが過剰なマージンを付加せずに操業を行うことが可能になり、歩留まりの向上を実現することが可能になる。
【符号の説明】
【0067】
1 連続鋳造設備
2 取鍋
3 耐火物ノズル
4 タンディッシュ
5 浸漬ノズル
6 鋳型
7 鋳造ストランド
7a 短辺面
8 支持ロール
8a 最終サポートロール
9 トーチ(切断装置)
10 トーチ制御装置
11 鋳造スラブ
12 秤量器
13 測定器
14 レーザ光
15 制御装置
16 台座
L 距離