(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20221101BHJP
F16K 5/06 20060101ALI20221101BHJP
F16K 27/06 20060101ALI20221101BHJP
F16K 11/085 20060101ALN20221101BHJP
F16K 11/087 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
F16K5/04 C
F16K5/06 C
F16K27/06 B
F16K27/06 C
F16K11/085 Z
F16K11/087 Z
(21)【出願番号】P 2019202524
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理絵
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0249786(US,A1)
【文献】特開2019-007614(JP,A)
【文献】国際公開第2018/169067(WO,A1)
【文献】特開2019-105199(JP,A)
【文献】特公平06-021668(JP,B2)
【文献】特開2018-096437(JP,A)
【文献】実開昭60-029939(JP,U)
【文献】実開昭59-191438(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00- 5/22
F16K 11/00-11/24
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量調整および流路切替の少なくとも一方を行うバルブ装置であって、
前記流体が流入する流体入口部(24)と、前記流体入口部から流入した前記流体が流れる流体流入部(651、652、653)と、前記流体流入部を通った前記流体を流出させる流体流出口(61、62、63)と、を有するケース部材(10、60)と、
前記流体入口部から流入した前記流体が流れるバルブ流出口(373、374、375)を有し、前記ケース部材の内側に回転可能に設けられたバルブ体(30)と、
前記流体流入部の内壁により摺動可能に支持され、前記バルブ流出口から流出した前記流体を前記ケース部材の前記流体流出口側に導く流路を形成する筒状のスリーブ(43、44、45)と、
前記スリーブの外周面を囲むように配置され、前記スリーブを前記バルブ体側に付勢するスプリング(481、482、483)と、
前記ケース部材における前記スプリングの前記バルブ体側と反対側の端部に形成され、前記スプリングの軸方向の前記バルブ体側と反対側の端部を前記スプリングの径方向外側から支持するスプリング端部支持部(65、66、67)と、を備え
、
前記スプリング端部支持部は、前記ケース部材における前記スプリングの前記軸方向の前記バルブ体側と反対側の端部から前記バルブ体側に向かって突出する複数の突起(65、66、67)を有している、バルブ装置。
【請求項2】
前記ケース部材は、前記流体入口部を有するハウジング(10)と、前記流体流入部および前記流体流出口を有する出口パイプ構成部材(60)と、を有し、
前記ハウジングは、前記流体入口部から流入した前記流体を前記流体流入部に導入する流体出口部(153、154、155)を有し、
前記複数の突起は、前記ハウジングと前記出口パイプ構成部材とを互いに組み付ける際に、前記スリーブおよび前記スプリングを前記流体出口部の内部に案内するガイドとして機能する請求項
1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記出口パイプ構成部材は、ネジ(80)を挿通するための貫通孔(681)が形成されたネジ固定部(68)を有し、
前記ハウジングは、前記流体が流れる流路を有するハウジング本体(11)と、タッピングネジが締結されるネジ締結部(110)と、前記ハウジング本体と前記ネジ締結部との間を連結する連結部(120)と、を有し、
前記ネジ固定部に形成された前記貫通孔に挿通された前記ネジを前記ハウジングに形成された前記ネジ締結部に締め付け固定されていることにより、前記ハウジング本体と前記出口パイプ構成部材とが互いに組み付けられており、
前記ネジ締結部と前記ハウジング本体との間に穴部(130)が形成されている請求項
2に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量調整および流路切替の少なくとも一方を行うバルブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されたバルブ装置がある。この装置は、冷却水が導入されるインレットおよび冷却水が排出されるアウトレットが設けられたハウジングと、インレットから供給される冷却水が流れるバルブ開口を有し回転可能に支持されたバルブと、を備えている。この装置は、バルブ開口を通過した冷却水が流れるシート開口を有するバルブシートと、シート開口を通過した冷却水をアウトレットへ導く円筒状のスリーブと、スリーブの周囲に装着されてバルブシートをバルブの表面に押し付けるスプリングと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたものは、単に、スプリングがスリーブの周囲を囲むように配置されておりスプリングの軸ずれが生じやすい。このため、外部からの振動等によってスプリングのスリーブの外周面への当たりが生じ、スプリングとスリーブの摩耗が進みやすい。このようにスプリングとスリーブの摩耗が進むと、スプリングがバルブシートをバルブの表面に押し付けるスプリング力が低下し冷却水の漏れが大きくなってしまうといった懸念がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みたもので、スプリングとスリーブとの摩耗を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、流体の流量調整および流路切替の少なくとも一方を行うバルブ装置であって、流体が流入する流体入口部(24)と、流体入口部から流入した流体が流れる流体流入部(651、652、653)と、流体流入部を通った流体を流出させる流体流出口(61、62、63)と、を有するケース部材(10、60)と、流体入口部から流入した流体が流れるバルブ流出口(373、374、375)を有し、ケース部材の内側に回転可能に設けられたバルブ体(30)と、流体流入部の内壁により摺動可能に支持され、バルブ流出口から流出した流体をケース部材の流体流出口側に導く流路を形成する筒状のスリーブ(43、44、45)と、スリーブの外周面を囲むように配置され、スリーブをバルブ体側に付勢するスプリング(481、482、483)と、ケース部材におけるスプリングのバルブ体側と反対側の端部に形成され、スプリングの軸方向のバルブ体側と反対側の端部をスプリングの径方向外側から支持するスプリング端部支持部(65、66、67)と、を備え、スプリング端部支持部は、ケース部材におけるスプリングの軸方向のバルブ体側と反対側の端部からバルブ体側に向かって突出する複数の突起(65、66、67)を有している。
【0007】
このような構成によれば、ケース部材におけるスプリングのバルブ体側と反対側の端部に形成されたスプリング端部支持部により、スプリングの軸方向のバルブ体側と反対側の端部が支持される。したがって、スプリングの軸ずれが防止され、スプリングとスリーブとの摩耗を抑制することができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両に搭載されるエンジンの冷却水を冷却する冷却システムの全体構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るバルブ装置の分解図である。
【
図3】第1実施形態に係るバルブ装置の断面図である。
【
図7】タッピングネジによりハウジングと出口パイプ構成部材とが締結されている様子を示した図である。
【
図8】第2実施形態に係るバルブ装置の第1パイプ接続部の断面図である。
【
図9】第3実施形態に係るバルブ装置の断面図である。
【
図11】第4実施形態に係るバルブ装置の出口パイプ構成部材の正面図である。
【
図12】第4実施形態に係るバルブ装置のハウジングを示した図であって、
図6に対応する図である。
【
図13】第4実施形態に係るバルブ装置のタッピングネジによりハウジングと出口パイプ構成部材とが締結されている様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るバルブ装置について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のバルブ装置1は、車両に搭載されるエンジンの冷却水回路に用いられるものである。
図1に示すように、バルブ装置1は、車両の冷却システム9に適用される。車両には、内燃機関としてのエンジン2、冷却システム9、ヒータ6、デバイス7等が搭載されている。
【0012】
冷却システム9は、バルブ装置1、ウォーターポンプ4、ラジエータ5、ECU8等を備えている。ウォーターポンプ4は、冷却水をエンジン2のウォータージャケットに向けて圧送する。バルブ装置1は、例えばエンジン2のウォータージャケットの出口に設けられ、ラジエータ5、ヒータ6、デバイス7へ送る冷却水の流量を調整する。
【0013】
ラジエータ5は、熱交換器であり、冷却水と空気との間で熱交換を行い冷却水の温度を下げる。ヒータ6およびデバイス7は、バルブ装置1とウォーターポンプ4との間に設けられている。ここで、デバイス7は、例えばオイルクーラ、EGRクーラ等を含む。
【0014】
ヒータ6は、冷却水と車両の室内の空気との熱交換により車両の室内の空気を加熱する。
デバイス7に冷却水を流すと、デバイス7を流れる流体(オイル、EGRガス等)と冷却水との間で熱交換が行われる。ECU8は、バルブ装置1の作動を制御し、ラジエータ5、ヒータ6、デバイス7へ送る冷却水の流量を制御可能である。
【0015】
バルブ装置1は、冷却水回路を循環する流体としての冷却水の流量の調整および流路の切替を行うことが可能である。なお、冷却水としては、例えば、エチレングリコールを含むLLC(Long Life Coolant)などが用いられる。
【0016】
図2に示すように、本実施形態のバルブ装置1は、ハウジング10と、出口パイプ構成部材60と、バルブ体30と出口パイプ構成部材60との間をシールするガスケット70と、を備えている。なお、出口パイプ構成部材60には、複数の突起65~67が形成されている。ハウジング10および出口パイプ構成部材60は、それぞれ樹脂により構成され、ガスケット70は弾性部材により構成されている。ハウジング10および出口パイプ構成部材60は、バルブ装置1の外殻を構成している。ハウジング10、出口パイプ構成部材60およびガスケット70は、図示しないネジにより固定され一体化される。
【0017】
図3に示すように、ハウジング10は、バルブ装置1の外殻の一部を構成するハウジング本体11、シャフト31を支持する第1軸受18およびプレート14等を有している。ハウジング本体11の内側には、シャフト31、バルブ体30等が収容される収容空間13が形成されている。また、ハウジング本体11には、冷却水を収容空間13に流入させる流体入口部24と、冷却水を収容空間13から出口パイプ構成部材60へ流出させる第1~第3流体出口部153、154、155が形成されている。また、プレート14には、第2軸受19が設けられている。
【0018】
シャフト31は、その第1軸受18と第2軸受19によりハウジング本体11の内側に回転可能に支持されている。なお、シャフト31は、ハウジング本体11の外側に設けられた図示しない電動モータの駆動により軸周りに回転する。
【0019】
バルブ体30はシャフト31に固定されている。そのため、シャフト31の回転に伴って、バルブ体30は、ハウジング本体11の内側でシャフト31の軸周りに回転動作する。なお、シャフト31の軸とバルブ体30の回転軸Axとは一致している。
【0020】
バルブ体30は、シャフト固定部300、第1筒部310、第2筒部320、複数の第1連結部330、および複数の第2連結部340を有している。
【0021】
シャフト固定部300は、シャフト31の外壁に固定されている。第1筒部310と第2筒部320は、シャフト固定部300から径方向外側に離れた位置に設けられている。第1筒部310はシャフト31の軸方向の一方の側に設けられ、第2筒部320はシャフト31の軸方向の他方の側に設けられている。以下の説明では、2つの筒部のうち、
図3の紙面右側のものを第1筒部310と呼び、紙面左側のものを第2筒部320と呼ぶこととする。
【0022】
第1筒部310と第2筒部320との間には、所定の空隙200が設けられている。その所定の空隙200は、ハウジング本体11の流体入口部24に対応する位置に設けられている。具体的には、第1筒部310と第2筒部320との間の所定の空隙200と、ハウジング本体11の流体入口部24とは、バルブ体30の回転軸Axに対して垂直な方向から視て少なくとも一部が重なるように設けられている。
【0023】
第1筒部310の外壁には、球状面311が形成されている。その球状面311の一部に冷却水が流出する第1流出口373が設けられている。
【0024】
複数の第1連結部330は、第1筒部310のうち第2筒部320側の端部とシャフト固定部300との間で放射状に延びて、第1筒部310とシャフト固定部300とを連結している。その複数の第1連結部330同士の間に第1流入口381が形成されている。
【0025】
第1流入口381は、ハウジング本体11の内側の空間(具体的には、第1筒部310と第2筒部320との間の所定の空隙200)からバルブ体30の第1筒部310の内側の空間331に冷却水が流入する流入口である。
【0026】
一方、第2筒部320の外壁には、中心点の異なる2つの球状面321、322が形成されている。第2筒部320の外壁に形成された2つの球状面321、322のうち、一方の球状面321に第2流出口374が設けられ、他方の球状面322に第3流出口375が設けられている。
【0027】
複数の第2連結部340は、第2筒部320のうち第1筒部310側の端部とシャフト固定部300との間で放射状に延びて、第2筒部320とシャフト固定部300とを連結している。その複数の第2連結部340同士の間に第2流入口382が形成されている。
【0028】
第2流入口382は、ハウジング本体11の内側の空間(具体的には、第1筒部310と第2筒部320との間の所定の空隙200)からバルブ体30の第2筒部320の内側の空間332に冷却水が流入する流入口である。このように、本実施形態では、バルブ体30の第1流入口381と第2流入口382はいずれも、バルブ体30のうち回転軸Ax方向に位置する部位に設けられている。
【0029】
出口パイプ構成部材60は、ハウジング本体11の第1~第3流出口373、374、375に対応する位置にそれぞれ第1~第3流体流入部651、652、653を有している。
【0030】
出口パイプ構成部材60は、さらに、冷却水を出口パイプ構成部材60から流出させる第1~第3流体流出口61、62、63と、第1~第3パイプ接続部641、642、643と、を有している。
【0031】
第1~第3パイプ接続部641、642、643は、それぞれ筒状を成している。第1~第3パイプ接続部641、642、643には、それぞれ冷却水が流れる図示しないパイプが接続される。
【0032】
第1流体流出口61は、第1パイプ接続部641に形成されている。第2流体流出口62は、第2パイプ接続部642に形成され、第3流体流出口63は、第3パイプ接続部643に形成されている。
【0033】
また、第1~第3流体流入部651、652、653には、それぞれ、スリーブ43、44、45、シート部材53、54、55などが設けられている。スリーブ43、44、45は、出口パイプ構成部材60が有する第1~第3流体流入部651、652、653の内壁により摺動可能に支持されている。
【0034】
スリーブ43、44、45は、バルブ体30の内側の空間から流出口373、374、375を介して冷却水が流出する流路を形成している。スリーブ43、44、45は、バルブ体30側の端部にシート部材53、54、55を支持するためのフランジ部461、462、463を有している。フランジ部461、462、463は、スリーブ43、44、45のハウジング本体11側の一端からスリーブ43、44、45の径方向外側に拡がるように形成されている。
【0035】
シート部材53は、スリーブ43が有するフランジ部461と、バルブ体30の第1筒部310の外壁との間に設けられている。また、シート部材54、55は、スリーブ44、45が有するフランジ部462、463と、バルブ体30の第2筒部320の外壁との間に設けられている。シート部材53、54、55は、環状に形成されており、その内径側を冷却水が流れる。
【0036】
シート部材53は、バルブ体30の第1筒部310の外壁に摺接している。また、シート部材54、55は、バルブ体30の第2筒部320の外壁に摺接している。スリーブ43、44、45のフランジ部461、462、463と出口パイプ構成部材60との間には、スプリング481、482、483が設けられている。スプリング481、482、483は、圧縮コイルスプリングであり、スリーブ43、44、45とシート部材53、54、55をバルブ体30側へ付勢している。これにより、シート部材53、54、55は、バルブ体30の筒部35の外壁に密着する。このシート部材53、54、55は、ハウジング本体11の内壁とバルブ体30の外壁との間に形成される空間と、スリーブ43、44、45の内側の流路と間で、冷却水が漏れることを防いでいる。
【0037】
冷却水は、ハウジング本体11の流体入口部24からハウジング本体11の収容空間13に流入する。
【0038】
ここで、バルブ体30の第1~第3流出口373、374、375が出口パイプ構成部材60の第1~第3流体流入部651、652、653と連通している場合、収容空間13の冷却水は、以下のように流れる。すなわち、収容空間13の冷却水は、バルブ体30の第1流入口381、第2流入口382を通ってバルブ体30の第1~第3流出口373、374、375へと流れる。
【0039】
この冷却水は、さらに、シート部材53、54、55およびスリーブ43、44、45を通った後、出口パイプ構成部材60の第1~第3流体流出口61、62、63から流出する。
【0040】
また、バルブ体30の第1~第3流出口373、374、375が出口パイプ構成部材60の第1~第3流体流入部651、652、653と連通していない場合、冷却水はバルブ体30の第1流入口381、第2流入口382に流入されずに収容空間13に留まる。
【0041】
図3、
図5に示すように、本バルブ装置1は、出口パイプ構成部材60におけるスプリング481、482、483のバルブ体30側と反対側の端部に、それぞれ8つの突起65、66、67と、を有している。各突起65、66、67は、スプリング端部支持部に相当する。
【0042】
8つの突起65は、スプリング481のバルブ体30側と反対側の端部をスプリング481の径方向外側から支持する。また、8つの突起66は、スプリング482のバルブ体30側と反対側の端部をスプリング482の径方向外側から支持する。また、各突起65、66、67は、スプリング483のバルブ体30側と反対側の端部をスプリング483の径方向外側から支持する。
【0043】
図1、
図3に示すように、各突起65、66、67は、それぞれ出口パイプ構成部材60におけるスプリング481、482、483のバルブ体30側と反対側の端部からスプリング481、482、483の径方向外側に向かって突出している。
【0044】
図4に示すように、突起65は、出口パイプ構成部材60におけるスプリング481のバルブ体30側と反対側の端部からスプリング481の径方向外側に向かって突出している。そして、突起65は、スプリング481のバルブ体30側と反対側の端部をスプリング481の径方向外側から支持する。
【0045】
これにより、外部からの振動等がバルブ装置1に伝搬しても、スプリング481、482、483の軸ずれが抑制される。したがって、スプリング481、482、483とスリーブ43、44、45の摩耗が抑制され、冷却水の漏れが抑制される。
【0046】
また、各突起65、66、67は、それぞれハウジング本体11に形成された第1~第3流体出口部153、154、155に挿入される。各突起65、66、67は、ハウジング本体11に形成された第1~第3流体出口部153、154、155の内周面と接触する位置に形成されている。そして、各突起65、66、67は、ハウジング本体11と出口パイプ構成部材60とを組み付ける際のガイドとしての機能を兼ねる。
【0047】
図7に示すように、本実施形態のバルブ装置1は、ハウジング10と出口パイプ構成部材60との間がタッピングネジ80によって固定されている。
【0048】
出口パイプ構成部材60には、タッピングネジ80を挿通するための貫通孔681が形成されたネジ固定部68が形成されている。
【0049】
また、ハウジング10は、流体が流れる流路を有するハウジング本体11と、タッピングネジが締結されるネジ締結部110と、ハウジング本体11とネジ締結部110との間を連結する連結部120と、を有している。
【0050】
作業者は、ネジ固定部68に形成された貫通孔681にタッピングネジ80を挿通させた後、タッピングネジ80をハウジング10のネジ締結部110に締め付け固定する。なお、作業者はタッピングネジ80をハウジング10のネジ締結部110に切り込むようにして締め付け固定する。これにより、ハウジング10と出口パイプ構成部材60とが一体化している。
【0051】
本実施形態のハウジング10は、ハウジング10の本体とネジ締結部110との間を連結する連結部120に穴部130が形成されている。穴部130は、ネジ締結部110とハウジング本体との間に形成されている。穴部130は、連結部120を上下方向に貫通するように形成されている。
【0052】
この穴部130が形成されていない場合、タッピングネジ80をハウジング10のネジ締結部110に締め付け固定する際に、タッピングネジ80を切り込む力が強いと、ネジ締結部110に亀裂が入って割れてしまう。そして、このような割れが拡がるとハウジング10の内部の冷却水の漏れが生じてしまう。
【0053】
しかし、本実施形態のバルブ装置1は、ハウジング10の本体とネジ締結部110との間を連結する連結部120に穴部130が形成されている。このため、タッピングネジ80をハウジング10のネジ締結部110に締め付け固定する際に、ネジ締結部110に亀裂が入って割れが生じても連結部120に沿って亀裂が進展し、穴部130で止まり、ハウジング10の本体側に拡がることはない。したがって、ハウジング10の内部の冷却水の漏れが防止される。
【0054】
以上、説明したように、本実施形態のバルブ装置1は、ハウジング10と出口パイプ構成部材60によって構成されるケース部材を備えている。ケース部材は、流体が流入する流体入口部24と、流体入口部24から流入した流体が流れる流体流入部651、652、653と、流体流入部651、652、653を通った流体を流出させる流体流出口61、62、63と、を有している。また、バルブ装置1は、流体入口部から流入した流体が流れるバルブ流出口373、374、375を有し、ケース部材の内側に回転可能に設けられたバルブ体30を備えている。また、流体流入部の内壁により摺動可能に支持され、バルブ流出口373、374、375から流出した流体をケース部材の流体流出口側に導く流路を形成する筒状のスリーブ43、44、45を備えている。また、スリーブ43、44、45の外周面を囲むように配置され、スリーブ43、44、45をバルブ体30側に付勢するスプリング481、482、483を備えている。また、ケース部材におけるスプリング481、482、483のバルブ体30側と反対側の端部にスプリング端部支持部を備えている。このスプリング端部支持部は、スプリング481、482、483の軸方向のバルブ体30側と反対側の端部をスプリング481、482、483の径方向外側から支持する。
【0055】
このような構成によれば、ケース部材におけるスプリング481、482、483のバルブ体30側と反対側の端部に形成されたスプリング端部支持部により、スプリング481、482、483の軸方向のバルブ体30側と反対側の端部が支持される。したがって、スプリング481、482、483とスリーブ43、44、45が接触することなくスプリング481、482、483の軸ずれが防止される。したがって、スプリング481、482、483とスリーブ43、44、45との摩耗を抑制することができる。
【0056】
また、スプリング端部支持部は、ケース部材におけるスプリング481、482、483の軸方向のバルブ体30側と反対側の端部からバルブ体30側に向かって突出する複数の突起65、66、67を有している。このように、複数の突起65、66、67によりスプリング端部支持部を構成することができる。
【0057】
また、ケース部材は、流体入口部24を有するハウジング10と、流体流入部651、652、653および流体流出口61、62、63を有する出口パイプ構成部材60と、を有している。
【0058】
また、ハウジング10は、流体入口部24から流入した流体を流体流入部651、652、653に導入する第1~第3流体出口部153、154、155を有している。
【0059】
また、複数の突起65、66、67は、ハウジング10と出口パイプ構成部材60を組み付ける際に、ハウジング本体11と出口パイプ構成部材60とを組み付ける際のガイドとしても機能する。
【0060】
したがって、スプリング端部支持部としての突起65、66、67とは別にハウジング本体11と出口パイプ構成部材60とを組み付ける際のガイドを設ける場合と比較して小型化が可能である。
【0061】
また、出口パイプ構成部材60は、タッピングネジ80を挿通するための貫通孔681が形成されたネジ固定部68を有している。
【0062】
また、ハウジング10は、冷却水が流れる流路を有するハウジング本体11と、タッピングネジ80が締結されるネジ締結部110と、ハウジング本体11とネジ締結部110との間を連結する連結部120と、を有している。
【0063】
ネジ固定部68に形成された貫通孔681に挿通されたタッピングネジ80をハウジング10に形成されたネジ締結部110に締め付け固定されていることにより、ハウジング本体11と出口パイプ構成部材60とが互いに組み付けられる。そして、ネジ締結部110とハウジング本体11との間に穴部130が形成されている。
【0064】
このような構成によれば、ネジ締結部110とハウジング本体11との間に穴部130が形成されているので、タッピングネジ80をネジ締結部110に締め付け固定する際にハウジング本体11側に割れが進展するのを防止することができる。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るバルブ装置について
図8を用いて説明する。本実施形態のバルブ装置1は、第1パイプ接続部641を有する出口パイプ構成部材60を備えている。また、第1パイプ接続部641は、冷却水が流入する流入口6411と、第1流入口6411から流入した冷却水が流れる第1流路641aと、を有している。さらに、冷却水が流入する第2流入口6412と、第2流入口6412から流入した冷却水が流れる第2流路641bを有している。また、第1流路641aを流れる冷却水と第2流路を流れる冷却水が合流した冷却水が流れる第3流路641cを有している。
【0066】
そして、第1流路641aを流れる冷却水と第2流路を流れる冷却水が途中で合流した後、第3流路641cを通って図示しない流出口から流出するようになっている。なお、第1流路641aと第2流路641bは、隣り合って並走するように形成されている。
【0067】
また、第1パイプ接続部641の第1流路641a、第2流路641b、第3流路641c内には冷却水の流れ方向に対して直角となる直角部が設けられていない。すなわち、第1流路641aを流れる冷却水と第2流路を流れる冷却水が合流する合流部において、第1パイプ接続部641の第1~第3流路641a、641b、641cを形成する内壁は、冷却水の流れ方向に対して90度以上の角度となるよう形成されている。
【0068】
これにより、第1パイプ接続部641の第1~第3流路641a、641b、641cを形成する内壁を、冷却水の流れ方向に対して90度となるよう形成する場合と比較して通水抵抗を小さくすることができる。また、出口パイプ構成部材60の成形時における所謂無理抜きがしやすくなるため出口パイプ構成部材60の加工コストを低減することが可能である。
【0069】
以上、説明したように、本実施形態のバルブ装置は、流体としての冷却水が流れる第1パイプ接続部641を有する出口パイプ構成部材60を備えている。第1パイプ接続部641は、冷却水が流入する流入口6411と、第1流入口6411から流入した冷却水が流れる第1流路641aを有している。また、冷却水が流入する第2流入口6412と、第2流入口6412から流入した冷却水が流れる第2流路641bを有している。また、第1流路641aを流れる冷却水と第2流路を流れる冷却水が合流した冷却水が流れる第3流路641cを有している。
【0070】
そして、第1流路641aを流れる冷却水と第2流路を流れる冷却水が途中で合流した後、第3流路641cを通って流出口から流出するようになっている。また、第1流路641aを流れる冷却水と第2流路を流れる冷却水が合流する合流部において、第1パイプ接続部641の流路641a、641b、641cを形成する内壁は、冷却水の流れ方向に対して90度以上の角度となるよう形成されている。
【0071】
このような構成によれば、第1パイプ接続部641の流路641a、641b、641cを形成する内壁を、冷却水の流れ方向に対して90度となるよう形成する場合と比較して通水抵抗を小さくすることができる。
【0072】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るバルブ装置について
図9~
図10を用いて説明する。本実施形態のバルブ装置1の断面図を
図9に示す。なお、
図9では、バルブ装置1を上下反転させて示してある。すなわち、ハウジング10が出口パイプ構成部材60に対して上下方向上側となるよう示してある。
【0073】
本実施形態の出口パイプ構成部材60には、シャフト31を駆動する電動モータが故障した際にエンジンがオーバーヒートするのを抑制するためのリリーフ弁69が設けられている。
【0074】
このリリーフ弁69は、
図8に示した第1パイプ接続部641の流路641bに配置される。このリリーフ弁69は、水温が高くなるとメカニカル的に開弁して冷却水を第1パイプ接続部641の流路641cからエンジン2のウォータージャケットに流す。
【0075】
本実施形態の出口パイプ構成部材60には、ハウジング10と接合する接合面600と、この接合面600より凹んだ位置に形成された凹部602と、が形成されている。
【0076】
一方、リリーフ弁69は、出口パイプ構成部材60に固定されるフランジ部691を有している。リリーフ弁69は、出口パイプ構成部材60に形成された凹部602に圧入固定される。
【0077】
次に、ハウジング10への出口パイプ構成部材60の組付けについて説明する。
【0078】
まず、出口パイプ構成部材60のハウジング10と接合する接合面600が上下方向上側を向くように出口パイプ構成部材60を設置する。
【0079】
次に、リリーフ弁69のフランジ部691を、出口パイプ構成部材60に形成された凹部602に圧入固定する。これにより、リリーフ弁69は、出口パイプ構成部材60のハウジング10と接合する接合面600から凹んだ位置に入り込むように配置される。
【0080】
次に、ハウジング10を用意するとともに、ハウジング10を出口パイプ構成部材60の上側から被せるように配置して出口パイプ構成部材60をハウジング10にネジ固定する。
【0081】
従来のバルブ装置の断面図を
図10に示す。従来のバルブ装置は、出口パイプ構成部材60のハウジング10と接合する接合面600にリリーフ弁69が固定されている。このため、出口パイプ構成部材60をハウジング10に組み付ける際のリリーフ弁69の安定性がよくない。
【0082】
以上、説明したように、本実施形態のバルブ装置1は、ハウジング10と、流体としての冷却水が流れる第2パイプ接続部642を有する出口パイプ構成部材60を備えている。また、第2パイプ接続部642に配置され、第2パイプ接続部642を流れる冷却水が流れる流路641bを機械的に開閉するリリーフ弁69を備えている。また、出口パイプ構成部材60には、ハウジング10と接合する接合面600と、この接合面600より凹んだ位置に形成された凹部602と、が形成されている。また、リリーフ弁69は、出口パイプ構成部材60に固定されるフランジ部691を有している。そして、リリーフ弁69は、フランジ部691が、出口パイプ構成部材60に形成された凹部602に固定されている。
【0083】
このような構成によれば、リリーフ弁69は、フランジ部691が、出口パイプ構成部材60に形成された凹部602に固定されるので、出口パイプ構成部材60をハウジング10に組み付ける際のリリーフ弁69の安定性を向上することができる。
【0084】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るバルブ装置の出口パイプ構成部材60の正面図を
図11に示す。本実施形態のバルブ装置1は、第1~第3パイプ接続部641、642、643に形成されたストッパー641d、642d、643dの位置が同じになっている。すなわち、出口パイプ構成部材60が有するハウジング10との接合面600からストッパー641d、642d、643dまでの長さが同じになっている。
【0085】
第1~第3パイプ接続部641、642、643には、図示しないホースが接続される。ストッパー641d、642d、643dは、第1~第3パイプ接続部641、642、643に取り付けられるホースと当接する。
【0086】
つまり、ホースを第1~第3パイプ接続部641、642、643に取り付ける際にホースの先端がストッパー641d、642d、643dに当接して、それ以上ホースが第1~第3パイプ接続部641、642、643の根元側に進まないようになっている。
【0087】
以上、説明したように、本実施形態のバルブ装置1は、ハウジング10と、第1~第3パイプ接続部641、642、643が形成された出口パイプ構成部材60を備えている。また、出口パイプ構成部材60には、該出口パイプ構成部材60に取り付けられるホースの先端と当接するストッパー641d、642d、643dが形成されている。そして、出口パイプ構成部材60が有するハウジング10との接合面600からストッパー641d、642d、643dまでの長さが同じになっている。
【0088】
このような構成によれば、ホースを第1~第3パイプ接続部641、642、643に組み付ける際の作業性を向上することができる。また、第1~第3パイプ接続部641、642、643に形成されたストッパー641d、642d、643dの位置が異なる場合と比較して、成形性を向上することができる。
【0089】
(第5実施形態)
第5実施形態に係るバルブ装置について
図12~
図13を用いて説明する。本実施形態のバルブ装置1は、上記第1実施形態のバルブ装置1と比較して、さらにリブ121を有している点が異なる。リブ121は、ネジ締結部110のネジ穴の軸方向に対して直交する方向に拡がるように形成されている。
【0090】
このようなリブ121を有するバルブ装置1において、ハウジング10の本体とネジ締結部110との間を連結する連結部120に穴部130を形成することもできる。
【0091】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、8つの突起65によりスプリング端部支持部を構成したが、突起65の数は8つに限定されるものではない。また、出口パイプ構成部材60におけるスプリング481、482、483のバルブ体30側と反対側の端部にリング状のスプリング端部支持部を形成してもよい。そして、このリング状のスプリング端部支持部によりスプリング481、482、483のバルブ体30側と反対側の端部をスプリング481、482、483の径方向外側から支持するようにしてもよい。
【0092】
(2)上記第1実施形態の出口パイプ構成部材60は、スプリング端部支持部としての複数の突起65、66、67を有している。これに対し、出口パイプ構成部材60と別体でスプリング端部支持部としての複数の突起65、66、67を備えるようにしてもよい。
【0093】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0094】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、ハウジング10および出口パイプ構成部材が径す部材に相当し、突起64~67がスプリング端部支持部に相当する。
【符号の説明】
【0095】
1 バルブ装置
2 エンジン
4 ウォーターポンプ
5 ラジエータ
6 ヒータ
7 デバイス
8 ECU
9 冷却システム
10 ハウジング
11 ハウジング本体
24 流体入口部
60 出口パイプ構成部材
61~63 流体流出口
64~67 突起
68 ネジ固定部
80 タッピングネジ
110 ネジ締結部
120 連結部
130 穴部
153~155 流体出口部
651~653 流体流入部