(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】回路構成体
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20221101BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20221101BHJP
H05K 7/06 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H02G3/16
H05K7/06 C
(21)【出願番号】P 2019207977
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】葛原 史浩
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-103168(JP,A)
【文献】特開2020-184564(JP,A)
【文献】特開2005-144713(JP,A)
【文献】特開2016-32031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H02G 3/16
H05K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品と、
前記発熱部品の接続部に接続されたバスバーと、
前記発熱部品と前記バスバーを保持する絶縁性のベース部材と、
前記バスバーと熱的に接触する弾性を有する熱伝導部材とを備え、
前記バスバーの前記ベース部材への載置方向で前記バスバーが前記熱伝導部材を押圧し、
前記ベース部材に設けられたバスバー位置決め部に対して前記バスバーが当接することにより、前記載置方向における前記バスバーの位置が規定される回路構成体。
【請求項2】
前記ベース部材に前記発熱部品の固定部が突設されており、前記固定部の突出端面が前記バスバー位置決め部とされ、前記バスバーが前記固定部の突出端面に載置されて前記発熱部品と共に固定される当接部を有している請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
前記バスバーが、前記発熱部品の前記接続部に接続される第一接続部と、該第一接続部から離隔して他部材に導通接続される第二接続部を有しており、
前記バスバーが、前記第一接続部と前記第二接続部の中間部分に前記熱伝導部材を押圧する押圧部を含み、該押圧部よりも前記第一接続部側と前記第二接続部側に、前記バスバー位置決め部への当接部が設けられている請求項1または請求項2に記載の回路構成体。
【請求項4】
前記熱伝導部材が、前記ベース部材に載置されて前記バスバーと前記ベース部材の間で挟持されるようになっており、前記ベース部材の前記熱伝導部材の周囲には、前記熱伝導部材の変形を規制する規制壁が設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回路構成体。
【請求項5】
前記発熱部品がリレーであり、前記規制壁が、前記リレーのプラス側接続部に接続される前記バスバーと、前記リレーのマイナス側接続部に接続される前記バスバーの間において前記ベース部材に突設された絶縁壁を含んで構成されている請求項4に記載の回路構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発熱部品を含む回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両には、リレー等の発熱部品を含む回路構成体が搭載されている。例えば、特許文献1には、リレーを収容する金属製のバッテリケースを備えた回路構成体が開示されている。この回路構成体は、発熱部品としてのリレーと、リレーに接続される第1バスバーと、リレーと第1バスバーとの間に配置される熱伝導部材と、第1バスバーとバッテリケースとの間に配置される熱伝導部材とを備えている。それぞれの熱伝導部材は、第1バスバーとリレー、または、第1バスバーとバッテリケースに挟まれることにより、リレーから第1バスバー、第1バスバーからバッテリケースへとリレーの熱が伝達される伝熱経路を構成し、リレーの放熱効率を向上させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱伝導部材は、シート状等の任意の形状で弾性を有する、例えば放熱ギャップフィラーや熱伝導グリースや熱伝導性シリコーンゴム等の空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂からなり、部材間に挟まれて適度に圧縮されることによって各部材に対して高い密着度で接触し、熱伝導効率を高めることができる。しかしながら、回路構成体を構成する各部材の製造公差や各部材を組み付ける際の組付公差によって熱伝導部材が過剰に圧縮される場合がある。熱伝導部材が過剰に圧縮された場合には、熱伝導部材の反発力によって、各部材間に大きな応力が作用し、各部材等の損傷を招くおそれがあった。
【0005】
そこで、熱伝導部材の反発力を制御して、熱伝導部材の過剰な反発力による不具合の発生を未然に防止することができる新規な構造の回路構成体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の回路構成体は、発熱部品と、前記発熱部品の接続部に接続されたバスバーと、前記発熱部品と前記バスバーを保持する絶縁性のベース部材と、前記バスバーと熱的に接触する弾性を有する熱伝導部材とを備え、前記バスバーの前記ベース部材への載置方向で前記バスバーが前記熱伝導部材を押圧し、前記ベース部材に設けられたバスバー位置決め部に対して前記バスバーが当接することにより、前記載置方向における前記バスバーの位置が規定される回路構成体である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、熱伝導部材の反発力を制御して、熱伝導部材の過剰な反発力による不具合の発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る回路構成体を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態2に係る回路構成体を示す全体斜視図であって、
図2に相当する図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態3に係る回路構成体を示す平面図であって、
図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の回路構成体は、
(1)発熱部品と、前記発熱部品の接続部に接続されたバスバーと、前記発熱部品と前記バスバーを保持する絶縁性のベース部材と、前記バスバーと熱的に接触する弾性を有する熱伝導部材とを備え、前記バスバーの前記ベース部材への載置方向で前記バスバーが前記熱伝導部材を押圧し、前記ベース部材に設けられたバスバー位置決め部に対して前記バスバーが当接することにより、前記載置方向における前記バスバーの位置が規定される回路構成体である。
【0010】
本開示によれば、バスバーのベース部材への載置方向でバスバーが熱伝導部材を押圧するようになっており、ベース部材に設けられたバスバー位置決め部に当接することにより、載置方向におけるバスバーの位置が規定されるようになっている。これにより、バスバーによる熱伝導部材の圧縮量を決定するベース部材に対するバスバーの載置方向の位置が、ベース部材に設けられたバスバー位置決め部に対するバスバーの当接により確実に規定され、熱伝導部材がバスバーにより過剰に圧縮されることが未然に防止されている。また、ベース部材に対するバスバーの載置方向の位置が、バスバー位置決め部とバスバーの当接により規定されていることから、多数の部材の公差が重なり合うことにより熱伝導部材の過剰圧縮が生じる不具合も解消されている。その結果、熱伝導部材を所望の圧縮率で圧縮させて優れた放熱性を実現することが、安定して実現され得る。
【0011】
なお、熱伝導部材は、ベース部材に載置されてベース部材とバスバーの間で挟持されるようにしてもよいし、ベース部材に設けられた開口部を介してベース部材外の部材に熱的に接触して、当該部材とバスバーの間で挟持されるようにしてもよい。
【0012】
バスバーは、発熱部品の接続部に接続されているため、発熱部品の熱が有利に伝熱される。発熱部品の接続部に接続されたバスバーは、導通部材として用いられるものも、単に放熱用に用いられるものもいずれも含まれる。
【0013】
(2)前記ベース部材に前記発熱部品の固定部が突設されており、前記固定部の突出端面が前記バスバー位置決め部とされ、前記バスバーが前記固定部の突出端面に載置されて前記発熱部品と共に固定される当接部を有していることが好ましい。ベース部材に設けられた発熱部品の固定部を利用して、スペース効率よくバスバー位置決め部を設けることができるからである。また、発熱部品とバスバーのベース部材への固定構造を共有化できることから、部品点数や組付工数の増加を伴うことなく、バスバーによる熱伝導部材の圧縮量の制御構造を付加することができる。
【0014】
(3)前記バスバーが、前記発熱部品の前記接続部に接続される第一接続部と、該第一接続部から離隔して他部材に導通接続される第二接続部を有しており、前記バスバーが、前記第一接続部と前記第二接続部の中間部分に前記熱伝導部材を押圧する押圧部を含み、該押圧部よりも前記第一接続部側と前記第二接続部側に、前記バスバー位置決め部への当接部が設けられていることが好ましい。発熱部品への導通用として用いられるバスバーを放熱用として利用することで、部品点数の削減が図られるからである。しかも、比較的長尺となる導通用のバスバーの中間部分に押圧部が設けられ押圧部を間に挟んだ第一接続部側と第二接続部側で、バスバー位置決め部への当接部が設けられていることから、バスバーの載置方向における位置を押圧部の両側で確実に規定することができ、所望の熱伝導部材の圧縮状態を安定して実現できる。
【0015】
(4)前記熱伝導部材が、前記ベース部材に載置されて前記バスバーと前記ベース部材の間で挟持されるようになっており、前記ベース部材の前記熱伝導部材の周囲には、前記熱伝導部材の変形を規制する規制壁が設けられていることが好ましい。熱伝導部材の周囲に規制壁が設けられることにより、熱伝導部材の局所的な変形が防止され、熱伝導部材を比較的均一な圧縮状態に導くことができるからである。なお、規制壁は、より均一な圧縮状態を実現するために、好ましくは熱伝導部材の全周を囲って設けられる。
【0016】
(5)上記(4)において、前記発熱部品がリレーであり、前記規制壁が、前記リレーのプラス側接続部に接続される前記バスバーと、前記リレーのマイナス側接続部に接続される前記バスバーの間において前記ベース部材に突設された絶縁壁を含んで構成されていることが好ましい。予めベース部材に設けられていた絶縁壁を利用して規制壁を構成でき、部品点数の更なる削減を図ることができるからである。
【0017】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の回路構成体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、
図1から
図5を参照しつつ説明する。回路構成体10は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載される図示しない電池パックの骨格に取り付けられ、電池パックの電力を制御する。回路構成体10は、任意の向きで配置することができるが、以下の説明においては、上方とは、
図1,2,4,5中の上方、下方とは、
図1,2,4,5中の下方を言うものとする。また、前方とは、
図3中の下方、後方とは、
図3中の上方を言い、長さ方向とは、
図3中の上下方向、幅方向とは、
図3中の左右方向を言うものとする。さらに、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0019】
<回路構成体10>
回路構成体10は、
図1に示すように、発熱部品であるリレー12と、一対のバスバー14a,14bと、一対の弾性を有する熱伝導部材を構成する熱伝導シート16,16と、ベース部材18とを備えている。
【0020】
<リレー12>
リレー12は、機械式のリレーであって、図示しない制御回路によりON/OFF制御がなされている。リレー12は、
図1から
図5に示すように、ブロック状のリレー本体20と、一対の円環状の接続部22a,22bと、複数(本実施形態では3個)の脚部24とを備えている。リレー本体20は、図示しない接点部およびコイル部を内部に有している。リレー本体20の前面には、一対の接続部22a,22bが幅方向(
図3,4中、左右方向)に並んで配置されている。一対の接続部22a,22bは、リレー本体20の接点部を介して一対の接続部22a,22b間に電流を流すことにより、接点部で生じる熱が伝達されて発熱する。各接続部22a,22bは、後方に向かって延びる有底円筒形状のボルト挿通孔26を有している。脚部24はそれぞれ、リレー本体20の幅方向一方側(
図3中、右側)の側面に2個、リレー本体20の幅方向他方側(
図3中、左側)の側面に1個、外方に向かって平板状に突出して形成されている。脚部24は、上下方向に貫通するボルト挿通孔28を有している。ボルト挿通孔28には、ボルト30が挿通され、脚部24が後述するベース部材18に突設された固定部50a,50b,50cにそれぞれ締結されることにより、リレー12がベース部材18に対して固定されている。
【0021】
<バスバー14a,14b>
一対のバスバー14a,14bは、それぞれが導電性を有する金属板材を加工することによって形成されている。各バスバー14a,14bは、例えば
図1や
図2に示すように、L字形状に屈曲されて形成されており、一方側の端部が第一接続部32とされ、他方側の端部が第二接続部34とされている。第一接続部32は、リレー12の接続部22a,22bの前方側において上下方向に延びて配置されており、板厚方向である前後方向に貫通するボルト挿通孔36を有している。ボルト挿通孔36は、リレー12およびバスバー14a,14bをベース部材18に組み付ける方向である上下方向に長い長孔とされている。バスバー14a,14bは、第一接続部32のボルト挿通孔36にボルト30の軸部38を挿通して軸部38を接続部22a,22bのボルト挿通孔26に締め込むことによりリレー12の接続部22a,22bに対して電気的および熱的に接続されている。第二接続部34は、第一接続部32の下端部から前方に向かって延び出しており、板厚方向である上下方向に貫通するボルト挿通孔40を有している。バスバー14a,14bは、第二接続部34において図示しない他部材の端子を重ねてボルト挿通孔40にボルト30を挿通してボルト締結することにより、第二接続部34と他部材の端子が電気的に接続されている。本実施形態1では、一対のバスバー14a,14bは、バスバー14aがリレー12のプラス側の接続部22aに接続され、バスバー14bがリレー12のマイナス側の接続部22bに接続されている。
【0022】
また、バスバー14a,14bは、第一接続部32と第二接続部34の中間部分に、押圧部42を含んでいる。押圧部42は、第一接続部32の下端部から前方の第二接続部34に向かって矩形平板状に延び出して形成されている。さらに、バスバー14a,14bは、第一接続部32の下端部からバスバー14a,14bに対して離隔する方向に向かって矩形平板状に延出後、後方に向かってL字状に突出する部位を有しており、この部位の突出端部によって第一当接部44が形成されている。第一当接部44には、板厚方向である上下方向に貫通するボルト挿通孔45が設けられている。第一当接部44は、後述するバスバー位置決め部を構成するベース部材18の固定部50a,50bの突出端面60に載置されてリレー12の脚部24と共に固定されている。すなわち、バスバー14a,14bの押圧部42よりも第一接続部32側に、後述するバスバー位置決め部を構成する固定部50a,50bの突出端面60へ当接する第一当接部44が設けられている。加えて、バスバー14a,14bの押圧部42よりも第二接続部34側には、第二当接部46が設けられている。この第二当接部46は、後述するバスバー位置決め部を構成するベース部材18の熱伝導シート収容部48の前方側の側壁54上に載置されている。
【0023】
<ベース部材18>
ベース部材18は、例えば
図1に示すように、リレー12と、一対のバスバー14a,14bと、一対の熱伝導シート16,16と、が上方から組み付けられて、それらの部材を保持するように構成されている。ベース部材18は、全体として長さ方向に延びる扁平な直方体形状を有しており、絶縁性の合成樹脂によって形成されている。ベース部材18は、一対の熱伝導シート収容部48,48と、3個の固定部50a,50b,50cと、を備えている。
【0024】
<熱伝導シート収容部48>
一対の熱伝導シート収容部48,48は、ベース部材18の中央部の前方側の領域において、幅方向(
図3中、左右方向)の全長に亘って一定の深さ寸法で延び、上方および幅方向両側に開口する凹所52内に形成されている。凹所52の長さ方向の両端縁部には、一対の側壁54,54が形成されている。また、凹所52の幅方向の中央部には、凹所52の後方側(
図3中、上方側)の端部から凹所52の前方側の端部を越えて前方側に向かって延びる、平板状の絶縁壁56が形成されている。絶縁壁56は、一対のバスバー14a,14bがベース部材18に載置された状態で一対のバスバー14a,14bの間に突設されており、ベース部材18の上面58よりも上方に向かって突設されている。この絶縁壁56によって分断された凹所52によって、一対の熱伝導シート収容部48,48が形成されている。一対の熱伝導シート収容部48,48に対して、一対の熱伝導シート16,16がそれぞれ絶縁壁56に近接するように配置されている。これにより、一対の熱伝導シート16,16の4辺のうち3辺がそれぞれ、凹所52の一対の側壁54,54および絶縁壁56によって囲まれている。一対の側壁54,54および絶縁壁56によって熱伝導シート16が囲まれることにより、後述するバスバー14a,14bの押圧部42によって押圧された熱伝導シート16の変形が規制されている。すなわち、熱伝導シート16の変形を規制する規制壁が、一対の側壁54,54および絶縁壁56によって形成されている。
【0025】
<熱伝導シート16>
弾性を有する熱伝導部材を構成する熱伝導シート16は、バスバー14a,14bの熱をベース部材18に伝達するものである。熱伝導シート16は、上下方向に扁平なシート状をなしており、空気よりも熱伝導率の大きな弾性を有する合成樹脂からなる。具体的には、シリコーン系の樹脂や非シリコーン系のアクリル系樹脂やセラミック系樹脂等が利用できる。より詳細には、例えば、シリコーン系の樹脂からなる、放熱ギャップフィラーや熱伝導グリースや熱伝導性シリコーンゴム等が挙げられる。熱伝導シート16は柔軟性および弾性を有しており、上下方向に加えられる力に応じて、厚さ寸法が変化するように弾性変形可能である。なお、本実施形態では、熱伝導部材として熱伝導シート16が採用されているが、これに限定されず任意の形状の弾性を有する熱伝導部材が採用可能である。
【0026】
<固定部50a,50b,50c>
固定部50a,50b,50cは、ベース部材18の中央部の後方側の領域に配置され、幅方向一方側(
図3中、左側)の上面57から固定部50aが略矩形断面形状で上方に向かって突出し、幅方向他方側(
図3中、右側)の上面57から固定部50b,50cが略矩形断面形状で上方に向かって突出して形成されている。固定部50a,50b,50cの突出端面60には、上方に向かって開口する有底円筒形状のボルト挿通孔61が設けられている。なお、例えば
図5に示すように、固定部50a,50bの突出端面60は、固定部50cの突出端面60よりもバスバー14a,14bの厚さ分だけ低く形成されている。
【0027】
<ブラケット62>
回路構成体10のベース部材18は、図示しない電池パックの骨格に取り付けられたブラケット62に組み付けられる。
図2から
図5には、回路構成体10が取り付けられるブラケット62が仮想線で示されている。ブラケット62は、熱伝導性を有する金属によって形成されている。ブラケット62の表面には、ベース部材18の底面が熱伝導シート63を間に挟持して重ね合された状態で、図示しない固定具により固定されている。これにより、熱伝導シート63は、ベース部材18の底面とブラケット62の表面に密着するようになっている。
【0028】
<回路構成体10の組み付け工程>
続いて、回路構成体10の組み付け工程の一例について説明する。回路構成体10の組み付け工程は、以下の記載に限定されない。
【0029】
まず、ベース部材18を準備する。次に、2枚の熱伝導シート16を、トムソン型抜き加工等の公知の手法により所定の形状に切り出し、ベース部材18の一対の熱伝導シート収容部48,48内の所定位置に貼り付ける。
【0030】
熱伝導シート16が貼付されたベース部材18に対して、一対のバスバー14a,14bを、長さ方向に延びるように配置した状態で上方から載置する。さらに、リレー12をベース部材18上の所定位置に載置する。この状態で、一対のバスバー14a,14bの第一当接部44をベース部材18の固定部50a,50bの突出端面60に対してリレー12の脚部24と共にボルト締結し、ベース部材18の固定部50cの突出端面60に対して残るリレー12の脚部24をボルト締結する。続いて、リレー12の接続部22a,22bに対してそれぞれバスバー14a,14bの第一接続部32をボルト締結する。ここで、第一接続部32に設けられたボルト挿通孔36は、上下方向に長い長孔とされていることから、リレー12の接続部22a,22bの一対のバスバー14a,14bに対する上下方向の公差が有利に吸収されている。最後に、一対のバスバー14a,14bの第二接続部34を図示しない他部材の端子を重ねてボルト締結することにより、バスバー14a,14bが他部材と電気的に接続されて、回路構成体10が完成する。
【0031】
この状態において、バスバー14a,14bのベース部材18への載置方向である上下方向で、バスバー14a,14bの押圧部42が熱伝導シート16を押圧している。より詳細には、熱伝導シート16は、ベース部材18に形成された熱伝導シート収容部48内に載置されており、バスバー14a,14bとベース部材18の間で挟持されている。なお、熱伝導シート16は、バスバー14a,14bおよびベース部材18と熱的に接触しており、リレー12で発生した熱が接続部22a,22bからバスバー14a,14bに伝熱され、熱伝導シート16を介してベース部材18に放熱されるようになっている。また、バスバー14a,14bの第一当接部44が、ベース部材18の固定部50a,50bの突出端面60に載置されてリレー12の脚部24と共に固定されており、第二当接部46は、ベース部材18の熱伝導シート収容部48の前方側の側壁54上に載置されている。すなわち、ベース部材18に設けられたバスバー位置決め部を構成する固定部50a,50bの突出端面60および熱伝導シート収容部48の前方側の側壁54の上面58に対してバスバー14a,14bが当接することにより、載置方向におけるバスバー14a,14bの位置が規定されている。
【0032】
続いて、ブラケット62の表面に対して、熱伝導シート63を間に挟んで回路構成体10のベース部材18を図示しない固定具により固定する。その結果、バスバー14a,14bおよび熱伝導シート16を介してベース部材18に伝熱されたリレー12の熱が、熱伝導シート63を介してブラケット62さらには電池パックの骨格へ伝熱される伝熱経路が構成され、リレー12の放熱が効率よく達成されるようになっている。
【0033】
このような構造とされた本開示の回路構成体10によれば、バスバー14a,14bの押圧部42が上下方向で熱伝導シート16を押圧している。しかも、ベース部材18に設けられたバスバー位置決め部を構成する固定部50a,50bの突出端面60および熱伝導シート収容部48の前方側の側壁54の上面58に対してバスバー14a,14bが当接することにより、載置方向におけるバスバー14a,14bの位置が規定されている。それゆえ、バスバー14a,14bによる熱伝導シート16の圧縮量を決定するベース部材18に対するバスバー14a,14bの載置方向の位置が、ベース部材18に設けられた固定部50a,50bの突出端面60および熱伝導シート収容部48の前方側の側壁54の上面58によって確実に規定されている。これにより、熱伝導シート16がバスバー14a,14bによって過度に圧縮されることが未然に防止されている。また、バスバー位置決め部がいずれもバスバー14a,14bが直接載置されるベース部材18によって構成されていることから、多数の部材の公差が重なり合うことにより熱伝導シート16の過剰圧縮が生じる不具合も有利に解消されている。それゆえ、熱伝導シート16を所望の圧縮率で圧縮させて優れた放熱性を実現することが、安定して実現され得る。加えて、ベース部材18に設けられた既存のリレー12用の固定部50a,50bを利用してバスバー位置決め部を構成していることから、部品点数や組付工数の増加を伴うことなく、スペース効率よくバスバー位置決め部を形成することができる。
【0034】
また、リレー12の他部材との通電用の導通部材であるバスバー14a,14bを放熱用として利用していることから、部品点数の削減が図られている。しかも、比較的長尺となる導通用のバスバー14a,14bの中間部分に押圧部42が設けられ、押圧部42を間に挟んだ第一接続部32側と第二接続部34側にベース部材18のバスバー位置決め部(本実施形態では、上面58と突出端面60)に当接される第一当接部44と第二当接部46が設けられている。これにより、押圧部42の両側でバスバー14a,14bをバスバー位置決め部に確実に当接させることができ、所望の熱伝導シート16の圧縮状態を安定して実現できる。
【0035】
加えて、熱伝導シート16,16の周囲を囲うベース部材18の一対の側壁54,54および絶縁壁56によって熱伝導シート16の変形が規制されることにより、熱伝導シート16の局所的な変形が防止され、熱伝導シート16を比較的均一な圧縮状態に導くことができる。しかも、予めベース部材18に設けられていた絶縁壁56を利用していることから、部品点数の更なる削減が図られている。
【0036】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0037】
(1)上記実施形態では、リレー12で発生した熱が接続部22a,22bからバスバー14a,14bに伝熱され、熱伝導シート16を介してベース部材18に伝熱され、ベース部材18から熱伝導シート63を介してブラケット62に伝熱される伝熱経路が構成されていたが、これに限定されない。ベース部材18や熱伝導シート63を介することなく、回路構成体10の外部のブラケット62やその他の任意の部材に貼付された熱伝導シート16に対して、ベース部材18に設けられた開口部を通じてバスバー14a,14bが熱的に接触されていてもよい。また、弾性を有する熱伝導部材として熱伝導シート16,63に代えてまたは加えて、放熱ギャップフィラーや熱伝導グリース等を採用してもよい。
【0038】
(2)また、上記実施形態では、バスバー14a,14bは熱伝導シート16に対して直接に熱的に接触していたが、これに限定されず、バスバー14a,14bが他部材を介して熱伝導シート16に対して熱的に接触していてもよい。
【0039】
(3)上記実施形態では、例えばバスバー14a,14bは導通部材として用いられていたが、これに限定されず、バスバーは発熱部品の接続部に接続されるものであれば、単に放熱用として用いられるものであってもよい。
【0040】
(4)本開示の回路構成体10では、バスバー位置決め部であるベース部材18に設けられたリレー12用の固定部50a,50bの突出端面60にバスバー14a,14bの当接部44,4
4が直接載置されていたが、これに限定されない。例えば、
図6および
図7に示す実施形態2の回路構成体64のように、リレー12の脚部24を介して固定部50a,50bの突出端面60にバスバー14a,14bの当接部44,4
4が載置されていてもよい。本実施形態2においても、薄い脚部24を介しているに過ぎないことから、上記実施形態1と同様に多数の部材の公差が重なり合うことが制限されており、熱伝導シート16がバスバー14a,14bによって過度に圧縮されることが未然に防止されている。
【0041】
加えて、
図7に示すように、ベース部材18の底面において、熱伝導シート63の過度の変形を阻止する規制突起65を設けて、ベース部材18とブラケット62の間での熱伝導シート63の過度の圧縮が抑制されるようにしてもよい。
【0042】
(5)本開示の回路構成体10では、一対の熱伝導シート16,16の4辺のうち3辺がそれぞれ、凹所52の一対の側壁54,54および絶縁壁56によって囲まれていたが、これに限定されない。例えば、
図8に示す実施形態3の回路構成体66のように、一対の熱伝導シート16,16の4辺がそれぞれ、凹所52の一対の側壁54,54,絶縁壁56および規制壁68によって囲まれていてもよい。これにより、より一層、熱伝導シート16の局所的な変形が防止され、熱伝導シート16を均一な圧縮状態に導くことができる。なお、規制壁68は、凹所52の長さ方向の全長に亘って凹所52の深さ寸法以上の高さ寸法で突設されている。
【符号の説明】
【0043】
10 回路構成体(実施形態1)
12 リレー(発熱部品)
14a バスバー
14b バスバー
16 熱伝導シート(熱伝導部材)
18 ベース部材
20 リレー本体
22a 接続部
22b 接続部
24 脚部
26 ボルト挿通孔
28 ボルト挿通孔
30 ボルト
32 第一接続部
34 第二接続部
36 ボルト挿通孔
38 軸部
40 ボルト挿通孔
42 押圧部
44 第一当接部
45 ボルト挿通孔
46 第二当接部
48 熱伝導シート収容部
50a 固定部
50b 固定部
50c 固定部
52 凹所
54 側壁(規制壁)
56 絶縁壁(規制壁)
57 上面
58 上面
60 突出端面
61 ボルト挿通孔
62 ブラケット
63 熱伝導シート(熱伝導部材)
64 回路構成体(実施形態2)
65 規制突起
66 回路構成体(実施形態3)
68 規制壁