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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ピロロキノリンキノン含有ゼリー
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/10 20160101AFI20221101BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221101BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20221101BHJP
【FI】
A23L21/10
A23L33/10
A23L33/125
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019509660
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2018011390
(87)【国際公開番号】W WO2018180885
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2017062594
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】玉腰 優典
(72)【発明者】
【氏名】新堀 武士
(72)【発明者】
【氏名】伊丸岡 智子
(72)【発明者】
【氏名】池本 一人
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/020767(WO,A1)
【文献】特開2014-214089(JP,A)
【文献】特開平01-156903(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073642(WO,A1)
【文献】特開2013-237644(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103525639(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロロキノリンキノン及び/又はその塩と、
ソルビトール及びキシリトールから成る群から選択される非還元性糖と、
寒天及びゼラチンから成る群から選択されるゲル化剤と、
を含有するゼリー、但し、酸化型PQQジナトリウム粉末5gを水1Lに加え、75℃で溶解し、これを室温にして得られた過飽和な5g/LのPQQジナトリウム溶液4mlに0.3、0.6、0.9、1.2又は1.5gのソルビトールを加えて溶かして得られたゲル、を除く。
【請求項2】
ピロロキノリンキノン及び/又はその塩を0.004~0.05重量%、
非還元性糖を2~20重量%、
ゲル化剤を0.2~5重量%、
含有する、請求項1に記載のゼリー。
【請求項3】
ピロロキノリンキノンの塩がピロロキノリンキノンジナトリウム塩である、請求項1又は2に記載のゼリー。
【請求項4】
ホモジナイズされている、請求項1から3のいずれか1項に記載のゼリー。
【請求項5】
ピロロキノリンキノン及び/又はその塩と、ソルビトール及びキシリトールから成る群から選択される非還元性糖と、寒天及びゼラチンから成る群から選択されるゲル化剤とを配合する工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のゼリーを製造する方法。
【請求項6】
有効成分としてソルビトール及びキシリトールから成る群から選択される非還元性糖を含む、ピロロキノリンキノン又はその塩を含有するゼリーの安定化剤。
【請求項7】
有効成分としてソルビトール及びキシリトールから成る群から選択される非還元性糖を含む、ピロロキノリンキノン又はその塩を含有するゼリーの着色抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロキノリンキノン含有ゼリー及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロロキノリンキノン(以下、「PQQ」と記すことがある。)は微生物の補酵素として知られており、その機能としては脳機能改善、ミトコンドリア活性化、細胞増殖などが知られている。
【0003】
ピロロキノリンキノンは、食品に添加する場合、水溶性を有するジナトリウム塩として配合され得る。例えば、特許文献1には、ピロロキノリンキノンジナトリウム塩を配合した炭酸水などが具体的に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-237644号公報
【文献】国際公開第2012/020767号
【文献】特開2013-103913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PQQの塩はその水溶液と還元剤とを室温で混合することにより、繊維状構造を形成して、最終的にゲルを形成することが知られている(特許文献2)。しかしながら、PQQをゲルなどのゼリーに配合した例は知られていない。PQQを含むゼリーを提供するにあたり、ゲル食品としての安定性等について検討する必要があるが、ゲル化剤には多くの種類があるし、また、ピロロキノリンキノン存在下でのゲル化に関する情報は存在しない。
【0006】
デザートとして提供される場合、ゲルは甘味を有していることが多い。そのため、PQQをゲルに含めるには、ゲル化剤以外にも甘味剤存在下でのゲルの安定性を検討する必要がある。甘味料の代表的な物質は糖類であるが、ピロロキノリンキノンとの相互作用については知られていない。また、甘味料がゲルの安定性に及ぼす影響に関しても情報はない。
【0007】
本発明は、ピロロキノリンキノンを配合した安定なゼリーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
通常糖の種類がゲル化に影響を及ぼすことはない。しかしながら、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、意外にもPQQが入ると糖の種類によってはゲル化せず、また、ゲル化した場合でも糖の種類によりゼリーの安定性も変わることを見出した。更に、PQQは舌や皮膚へ色がつきやすく、着色防止のためにキレート剤と併用する方法が提案されているが(特許文献3)、特定の糖を使用することでキレート剤なしで着色を抑制することも明らかとなった。すなわち、特定の糖を用いることがピロロキノリンキノン含有ゼリーを作るのに予想外にも重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
(1)ピロロキノリンキノン及び/又はその塩と、
非還元性糖と、
ゲル化剤と、
を含有するゼリー。
(2)ピロロキノリンキノン及び/又はその塩を0.004~0.05重量%、
非還元性糖を2~20重量%、
ゲル化剤を0.2~5重量%、
含有する、(1)に記載のゼリー。
(3)ピロロキノリンキノンの塩がピロロキノリンキノンジナトリウム塩である(1)記載のゼリー。
(4)非還元性糖がソルビトール、キシリトール又はショ糖である(1)から(3)のいずれかに記載のゼリー。
(5)ゲル化剤が寒天又はゼラチンである、(1)から(4)のいずれかに記載のゼリー。
(6)ホモジナイズされている、(1)から(5)いずれかに記載のゼリー。
(7)ピロロキノリンキノン及び/又はその塩と、非還元性糖と、ゲル化剤と、を配合する工程を含む、(1)~(6)のいずれかに記載のゼリーを製造する方法。
(8)有効成分として非還元性糖を含む、ピロロキノリンキノン又はその塩を含有するゼリーの安定化剤。
(9)有効成分として非還元性糖を含む、ピロロキノリンキノン又はその塩を含有するゼリーの着色抑制剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非還元性糖を配合することで、ピロロキノリンキノン含有ゼリーを安定化し、尚且つピロロキノリンキノンに特有の着色を抑制することが可能になる。その結果、ピロロキノリンキノンを含む機能性食品が食べやすいゼリーの形で摂取可能となる。
【0011】
デザートのようにしばしば低温で食されるゲルに配合される甘味料として、温度による変化の少ない異性化糖が使用されることが多い。予想外にも、還元性のある糖である異性化糖を配合するとピロロキノリンキノンを含有したゼリーの安定性が低くなるのに対し、非還元性糖を使用した場合には安定性が向上することが本発明者らの検討により初めて明らかとなった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
本発明のピロロキノリンキノン含有ゼリーは、ピロロキノリンキノン及び/又はその塩と非還元性糖とを含有する。本発明のゼリーはゲル化剤によりゲル化される。つまり、本明細書で使用する場合、「ゼリー」とは、寒天やゼラチンなどの一般的なゲル化剤が有するゲル化能により形成されるゲルなどのゼリーを意味し、国際公開第2012/020767号(上掲)に記載のような、分散媒を用いてピロロキノリンキノン自体のゲル形成能により形成されるゲルは本発明の範囲に含まれることを意図していない。
【0014】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンは、式1に示す構造の物質である。本発明はピロロキノリンキノンの遊離体のみならず、その塩を使用することもできる。
【化1】
【0015】
本発明において用いられるピロロキノリンキノン又はその塩は、市販されているものを入手することができるし、公知の方法により製造することができる。ピロロキノリンキノンの塩としては、例えばピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩が挙げられる。好ましい塩はアルカリ金属塩である。
【0016】
本発明において用いられるピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、ルビジュウムなどの塩が挙げられる。好ましくは、入手しやすい点で、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。ピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩は、1~3個のアルカリ金属で置換されるアルカリ金属塩であってよく、モノアルカリ金属塩、ジアルカリ金属塩、トリアルカリ金属塩のどれでも良い。好ましくは、ジアルカリ金属塩である。特に好ましくは、ジナトリウム塩およびジカリウム塩である。中でもジナトリウム塩の含水結晶は安定性も高く、使用しやすいため好ましい。
【0017】
ピロロキノリンキノンを含むゼリーを形成できる限り、ゲル化剤は種々のものが使用できる。しかしながら、ゼリーの全重量あたり、ゲル化剤として0.2~5重量%、例えば2重量%程度添加する場合、寒天もしくはゼラチンはゼリーを形成しやすいため好ましい。寒天もしくはゼラチンの量は0.4~2重量%程度がより好ましい。寒天やゼラチンなどの有効成分はゲル化剤中に80重量%以上含まれていることが好ましい。寒天又はゼラチンは更に、ピロロキノリンキノン存在下でも着色することなくゲル化を促進するため、好ましい。ゲル化剤は寒天とゼラチンに限定されず、ゲルを形成させることができる限り、その他のゲル化剤を、寒天もしくはゼラチンとの組み合わせで、あるいは単独で使用してもよい。
【0018】
本発明で使用するゲル化剤は、ゲルを形成させることができる限り、原料の由来・処理方法を問わず使用できる。
【0019】
甘味料として配合される非還元性糖は、ピロロキノリンキノンの変色を抑制し、また、ゲルの安定化に寄与する。非還元性糖とは塩基性条件でケトン、アルデヒドを形成しない糖である。具体的にはソルビトール、キシリトール、パラチニット、ショ糖、還元性水あめ糖である。一般的に、グルコース等の還元性糖を用いた場合、ゲル化が進むが、本発明で還元性糖を使用した場合、予想外にもゲル化し難くなる効果があった。しかしながら、還元性糖の添加を完全に排除するものではなく、所望の効果を阻害しない程度の量で還元性糖を添加することは許容される。
【0020】
一態様において、本発明のゼリーはピロロキノリンキノン及び/又はその塩を0.004~0.05重量%含む。(~の記載については、上限値と下限値をそれぞれ含む、以下同様。)ピロロキノリンキノンの配合量をこの範囲とすることにより、舌への着色を抑制できる。好ましい態様において、ゼリー中のピロロキノリンキノン及び/又はその塩の配合量を0.01~0.04重量%としてもよい。ピロロキノリンキノン及び/又はその塩は、成人1日あたり、ピロロキノリンキノンジナトリウム3水和物換算で10~200mgになるように摂取することが好ましい。特に、脳機能改善の観点からは、成人1日あたり、ピロロキノリンキノン及び/又はその塩が、ピロロキノリンキノンジナトリウム3水和物換算で2~200mg、好ましくは5~50mgとなるように、上記配合量やゼリーの量を調節してもよい。本発明のゼリーは全重量あたりショ糖換算で2~20重量%の非還元性糖の甘味料を含んでもよい。この範囲とすることにより適度な甘みとなり、美味しいと感じることが出来る。
【0021】
本発明のゼリーをホモジナイズすることで、流動性を持たせたゼリー菓子を作ることができる。流動性のあるゼリーは食感に優れており、また、短時間で摂取できるという利点がある。
【0022】
本発明のピロロキノリンキノン含有ゼリーには、必要に応じて、本発明の効果やゼリーの風味に悪影響を及ぼさない程度に、下記の成分を任意に添加することができる。
【0023】
酸味料、香料、着色料等を用いることに関して特に制限されない。
【0024】
食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、ネオテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)等が用いられる。
【0025】
本発明のゼリーを製造する場合、最初に、水又は緩衝液にゲル化剤と非還元性糖を溶解させ、得られた溶液を加熱してゲル化剤溶液を調製する。続いて、ゲル化剤溶液をピロロキノリンキノン水溶液と混合することで、本発明のゼリーを製造することが出来る。ゲル化剤溶液の調製に使用可能な緩衝液としては、食品に添加することが認められているpH調整剤から調製された水溶液であればよく、例えばリン酸バッファー、クエン酸バッファーを用いることが出来る。ピロロキノリンキノンの水溶液濃度は0.004重量%~0.2重量%を使用できる。
【0026】
ゲル化剤としてゼラチンを用いた場合は、ピロロキリンキノンの安定性を上げるため30~50℃で混合することが好ましい。ゼラチンを混合する際の温度は任意でよいが、ゼラチンの溶解する温度を考慮して50~120℃が好ましい。ピロロキノリンキノン及び/又はその塩とゲル化剤と非還元性糖を同時に混合して良い。同時に混合する場合、PQQの安定性向上のため長時間の高温におかないことが好ましい。
【0027】
本発明のゼリーの摂取量はピロロキノリンキノンジナトリウム3水和物換算で1日あたり、10~50mgになるように摂取することが好ましい。この摂取量であれば、肌の保湿、脳機能の改善、脂質の改善を期待できる機能性食品となる。
【0028】
別の態様において、本発明は、有効成分として非還元性糖を含む、ピロロキノリンキノン又はその塩を含有するゼリーの安定化剤、を提供する。有効成分の含有量は上述のゼリーに配合される量と同じである。
【0029】
更に別の態様において、本発明は、有効成分として非還元性糖を含む、ピロロキノリンキノン又はその塩を含有するゼリーの着色抑制剤、を提供する。
【実施例
【0030】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
ピロロキノリンキノンジナトリウムは三菱瓦斯化学株式会社製のBioPQQ(登録商標)を使用した。この製品は結晶性で3水和物が安定である。その他の試薬は和光純薬製を使用した。
【0032】
実施例1
ピロロキリンキノンジナトリウム 0.02重量% ソルビトール10重量% 寒天2重量%、水残余、からなる組成の試料(総重量50g)を調製し、これをオートクレーブ(121℃)で15分加熱した。加熱した溶液を混合することで均一にした。得られた溶液を冷蔵庫(4℃)で冷やし、1日保存することでゼリー食品が得られた。得られたゼリーはピロロキノリンキノンに起因する赤色を呈しており、その色は全体的に均一であった。
【0033】
ゼリー中のピロロキノリンキノン分析
各ゼリー1gを水10mlと混合し、ポリプロピレン製15mL遠心分離容器に入れ、室温で30分振った。この溶液を液体クロマトグラフィー用の溶離液で10倍に希釈した。これを0.2μmフィルターで濾過した。ピロロキノリンキノン含有量について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い以下の条件で分析した。
HPLC条件:259nm, 40℃、YMC-Pack ODS-A 150mm, 4.6mm, 30mM 酢酸-70mM酢酸アンモニウム、装置LC2010(株式会社島津製作所製)
その結果、添加したピロロキリンキノンジナトリウム含有量はゼリー中で100%維持されていた。
【0034】
比較例1
異性化糖は王子コーンスターチ株式会社製王子の異性化糖HC(果糖分55%以上)を使用した。ピロロキリンキノンジナトリウム0.02重量% 異性化糖10重量% 寒天2重量%、水残余、からなる組成の試料(総重量50g)を調製し、これをオートクレーブ(121℃)で15分加熱して均一にした。得られた溶液を冷蔵庫(4℃)で冷やした。1日経過しても、溶液はゼリー状に固まっておらず、当初赤色だった混合物の色が黄色に変色していた。また、HPLC分析により、ゼリー中のピロロキリンキノンジナトリウム含有量は添加量との比較で59%に減少していた。
【0035】
実施例2~5、比較例2~4
実施例1の試料の組成中、ピロロキノリンキノンジナトリウムの含有量のみを変えたゼリー食品を実施例1と同様の手法により調製した(実施例2~5)。同様に、比較例1の試料の組成中、ピロロキノリンキノンジナトリウムの含有量のみを変えたゼリー食品を比較例1と同様の手法により調製した(比較例2)。また、比較例1の異性化糖に代えて、グルコース(比較例3)と果糖(比較例4)を添加したゼリー食品も調製した。調製した各ゼリー食品5gを口に入れ30秒保持し、その後、5分後に舌全体を見て舌におけるピロロキノリンキノンの着色のしやすさを観察した。
【0036】
ゲル化は、固まった場合をA、固まってもやわらかい場合をB、固まっても非常にやわらかく、固形物と溶液とが混在しているような場合をCというように、目視により三段階で評価した。結果を表1に示す。
【表1】
*)ゼリーの色が経時的に赤色から黄色に変色
【0037】
非還元性の糖であるショ糖、キシリトール、ソルビトールを添加した場合、ピロロキノリンキノンを含む安定なゼリーを作ることができた。一方、予想外にも、還元性のある糖である異性化糖、グルコース又は果糖を添加した場合にはゼリーの安定性が低い結果となった。特に、ピロロキノリンキノンの配合量が少ない場合、ゲル中のピロロキノリンキノン含有量が減少した。いずれのゼリーも舌への着色は確認されなかったが、還元性の糖の存在下では、ゼリーの色も赤色から黄色に経時的に変色した。寒天濃度が非常に高いにも関わらず、還元性糖を使用するとゲルになりにくく、特に異性化糖と果糖ではゲルが形成されなかった。グルコースを添加した場合にはゲル化が確認されたものの、形成したゼリーは柔らかかった。
【0038】
ゲル化剤の種類の検討
実施例6、7、参考例1~3
ゲル化剤の種類を変更してゼリーの形成を検討した。ピロロキリンキノンジナトリウム 0.02重量% ソルビトール10重量% ゲル化剤2重量% 水残余、からなる組成の試料(総重量50g)をオートクレーブ(121℃)で15分加熱して均一にした。冷蔵庫(4℃)で冷やし、1日後、ゼリーの形成を観察した。その結果を表2に示す。
【表2】
寒天以外でゼリーに適していたのはゼラチンであった。ゼラチンでゲル化した実施例7のゼリーにおけるピロロキノリンキノンの含有量は86%であった。結果は示さないが、上記の参考例に使用した条件を変更した場合、例えば、カラギーナン、アラビアガム、キサンタンガムの配合量等を増やした場合、いずれもゲル化することが確認された。
【0039】
比較例5
国際公開第2012/020767号(上掲)の実施例13に基づき、ピロロキノリンキノンの塩と分散媒を用いてピロロキノリンキノン自体のゲルを調製した。まず、PQQ粉末0.1gを15mlのプラスチック製遠心分離用容器に加え、水10ml加え、室温で振って混合した(約25℃)。これを冷蔵庫で冷却して4℃になった後、さらに振って混合した。一晩、冷蔵庫に保存すると全体が均一なゲル状に変化した。続いて、寒天0.01gを水10mlに加え、電子レンジで溶解したものを約40℃まで冷却し、上記のピロロキノリンキノン1%ゲルと1mlずつ混合した。混合物を冷蔵庫で一晩冷却したところ、ゲル化しており、光学顕微鏡で繊維が確認できた。得られたゼリーを口に入れ30秒保持したところ、ゼリーの色が舌に着色した。
【0040】
実施例8 クラッシュゼリー
ホモジナイザーを用い、実施例1で作製したゼリーを室温で均一の大きさに壊れるように砕いた。固まっていたゼリーが砕かれて流動性のあるクラッシュゼリーになった。
【0041】
実施例9-1、実施例9-2、比較例6
ピロロキノリンキノンジナトリウムの濃度を変えて舌への着色を調べた。ソルビトール10重量%、寒天2%に固定した点を除き、ゼリーの調製は上述のとおり行った。
【表3】
ソルビトールが10重量%、寒天が2%の場合、0.02~0.04重量%程度のPQQ配合量では舌への着色が生じないことが明らかとなった。
【0042】
比較例7 水溶液での例
ピロロキノリンキノンジナトリウム0.04重量%、ソルビトール10重量%の水溶液を口に30秒含み着色を調べた結果、舌に着色が見られた。この結果から、驚くべきことに、ピロロキノリンキノンの着色抑制には非還元性糖をゼリーに配合する必要があることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のゼリーは、サプリや機能性食品、ゼリー複合菓子、化粧品に有用である。