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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B60K35/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019535114
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2018028472
(87)【国際公開番号】W WO2019031291
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017155425
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舛屋 勇希
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴史
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/046937(WO,A1)
【文献】特開2008-001182(JP,A)
【文献】特開2015-011666(JP,A)
【文献】特開2015-024709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0106750(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0249684(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02894620(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が前記第一の基準値未満場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成され
前記画像生成部は、
前記車両の速度が大きいほど前記第一の基準値を大きくする、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上の場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が前記第一の基準値未満の場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成され、
前記画像生成部は、
前記車両から前記車両の搭乗者の視点までの距離が前記第一の基準値未満場合に、前記車両から前記車両の前記搭乗者の前記視点までの前記距離が前記第一の基準値以上場合と比較して、前記不鮮明領域の前記情報画像をより不鮮明に生成する、
ことを特徴とする両用表示装置。
【請求項3】
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が第二の基準値未満場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成され、
前記第一の基準値は、前記第二の基準値以上であり、
前記画像生成部は、
前記車両の速度が大きいほど前記第一の基準値を大きくする、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上の場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が第二の基準値未満の場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成され、
前記第一の基準値は、前記第二の基準値以上であり、
前記画像生成部は、
前記車両の速度が大きいほど前記第二の基準値を大きくする、
ことを特徴とする両用表示装置。
【請求項5】
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上の場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が第二の基準値未満の場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成され、
前記第一の基準値は、前記第二の基準値以上であり、
前記画像生成部は、
前記車両の速度が大きいほど前記第一の基準値、及び前記第二の基準値を大きくする、
ことを特徴とする両用表示装置。
【請求項6】
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上の場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が第二の基準値未満の場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成され、
前記第一の基準値は、前記第二の基準値以上であり、
前記画像生成部は、
前記車両から前記車両の搭乗者の視点までの距離が前記第一の基準値未満場合に、前記車両から前記車両の前記搭乗者の前記視点までの前記距離が前記第一の基準値以上場合と比較して、前記不鮮明領域の前記情報画像をより不鮮明に生成する、
ことを特徴とする両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用表示装置として、車両のウインドシールド等の透光部材に表示画像を投影することによって、ウインドシールドで反射される表示画像の光を用いて運転席に座った搭乗者に、虚像を視認させる、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD: Head Up Display)装置がある。
例えば、特許文献1に開示される画像処理装置は、走行路に設けられた区画線の車両に対する相対位置を検知し、所定の表示要素である接近表示要素、及び非接近表示要素が、区画線と重畳して視認されるように表示画像を生成し、ウインドシールドに投影していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-105256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の近傍にある検知対象物は搭乗者による視認が容易であり、車両の遠方の検知対象物は視認できない、あるいは視認しづらい。すなわち、車両近傍にある検知対象物に関する情報の重要度は低く、車両遠方の対象物に関する情報の重要度は高いと言える。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、車両の近傍と遠方で虚像の表現に差がないため搭乗者は何処に視線を向ければよいか分からず、視認しづらい重要な情報を認識することが困難であった。
【0006】
本発明は、視認しづらい重要な情報をより確実に搭乗者に認識させることができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る車両用表示装置は、
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上、若しくはより大きい場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が前記第一の基準値未満、若しくは以下の場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成される、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点に係る車両用表示装置は、
表示画像を表示する表示部と、
車両用表示装置が搭載される車両の周囲に存在する対象物に関する対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記表示画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記表示画像の表示領域は、鮮明領域と不鮮明領域を備え、
前記画像生成部は、前記車両から前記対象物までの距離が第一の基準値以上、若しくはより大きい場合は前記対象物の情報画像を前記鮮明領域に生成し、前記車両から前記対象物までの前記距離が第二の基準値未満、若しくは、以下の場合は前記対象物の前記情報画像を前記不鮮明領域に生成し、
前記不鮮明領域の前記情報画像は、前記鮮明領域の前記情報画像よりも不鮮明に生成され、
前記第一の基準値は、前記第二の基準値以上である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、視認しづらい重要な情報を確実に搭乗者に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両用表示装置の一形態であるヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す概略図である。
図2】車両用表示装置のブロック図である。
図3図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における車両から対象物までの距離と鮮明領域、不鮮明領域の対応を示した図である。
図4図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における情報画像重畳の表示例である。
図5図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における情報画像の鮮明、不鮮明の表現に関する他の実施例である。
図6図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における車両の速度が図3より大きい時の車両から対象物までの距離と鮮明領域、不鮮明領域の対応を示した図である。
図7図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における車両の速度が図3より大きい時の表示例である。
図8図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における搭乗者の視点が車両近傍にある場合の表示例である。
図9図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における車両から対象物までの距離と鮮明領域、不鮮明領域の対応を示した図である。
図10図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における情報画像重畳の表示例である。
図11図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における情報画像の鮮明、不鮮明の表現に関する他の実施例である。
図12図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における車両の速度が図9より大きい時の車両から対象物までの距離と鮮明領域、不鮮明領域の対応を示した図である。
図13図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における車両の速度が図9より大きい時の表示例である。
図14図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における搭乗者の視点が車両近傍にある場合の表示例である。
図15図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における情報画像重畳の別の表示例である。
図16図2に示される車両用表示装置における歩行者検知の表示例である。
図17図2に示される車両用表示装置における方向指示の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する好ましい実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0012】
図1には、車両用表示装置4の一形態であるヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置ともいう)8の構成の概略図が示されている。HUD装置8は、表示部10と、平面ミラー21と、曲面ミラー22と、筐体30と、を備え、筐体30はケース31と透明カバー32からなる。HUD装置8は、表示部10が表示した表示画像Mを表す表示光Lを、平面ミラー21と曲面ミラー22とで反射させ、HUD装置8が搭載される車両1の透光部材からなるウインドシールド2に出射し、搭乗者3(通常、車両1の運転者)に、実風景に重畳するように虚像Vを視認させるものである。HUD装置8がこのように表示する内容は、各種車両情報、ナビゲーション情報、拡張現実(AR: Augmented Reality)情報等である。また、図1に示されている座標軸において、z軸正方向は車両1の前方向を表し、y軸正方向は鉛直方向上側を表し、x軸正方向(図面に対して垂直上方向)は車両1の左方向を表す。
【0013】
図2には、車両用表示装置4のブロック図が示されている。車両用表示装置4は、表示部10、画像生成部100、車両情報取得部200、対象物情報取得部300、視線検出部400を備えている。
【0014】
表示部10は、液晶パネルモジュールからなり、画像生成部100が生成した表示画像Mを表示する。なお、他の実施例として、有機EL(Electro Luminescence)素子等の自発光表示パネルモジュールであってもよく、DMD(Digital Micromirror Device)、LCoS(Liquid Crystal on Silicon)(登録商標)等の反射型表示パネルモジュールであってもよく、レーザー光を走査する走査型表示装置等であってもよい。
【0015】
画像生成部100は、回路で構成され、前記回路は少なくとも1つのプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU: Central Processing Unit))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC: Application Specific Integrated Circuit)、および/または、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA: Field-Programmable Gate Array)などの少なくとも1つの半導体集積回路を含む。少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能で有形な記録媒体から1つまたは複数の命令を読み取ることにより、図2に示す車両用表示装置4の機能の全部または一部を実行することができる。前記記録媒体は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CDおよびDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、および不揮発性メモリを含む。揮発性メモリはDRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリはROM及びNVRAMを含む。半導体メモリは、少なくとも1つのプロセッサと共に回路の一部となる半導体回路でもある。ASICは、図2に示す車両用表示装置4の機能の全部または一部を実行するようにカスタマイズされた集積回路であり、FPGAは、製造後に、図2に示す車両用表示装置4の機能の全部または一部を実行できるように設計された集積回路である。画像生成部100は、車両情報取得部200、対象物情報取得部300、視線検出部400からの情報を基に画像処理を行い、少なくとも1つの情報画像を備えた表示画像Mを生成する。前記情報画像は、例えば、実風景に情報を付加するためのAR画像である。
【0016】
車両情報取得部200は、少なくとも車両1の速度を検出し、その検出結果を図示しないCAN(Control Area Network)などの通信インターフェースを介して車両用表示装置4の画像生成部100に出力する。なお、他の実施例として、GPS(Global Positioning System)を含むGNSS(Global Navigation Satellite System)等の図示しない位置情報取得手段を備え、車両1の位置情報の推移から車両1の速度を推定し、この推定した速度を車両用表示装置4の画像生成部100に出力するものであってもよい。
【0017】
対象物情報取得部300は、ステレオカメラや単眼カメラから構成され、車両1の周囲、少なくとも前方、を撮影し、撮影した画像データを解析して車両1周囲の対象物に関する対象物情報(区画線、停止線、交差点、カーブ、横断歩道、歩行者、他の車両、位置、大きさ、色、車両1との距離、車両1との相対速度等)を取得し、車両用表示装置4の画像生成部100に出力する。なお、他の実施例として、LIDAR(Light Detection and Ranging)等のリモートセンシングや、V2X(Vehicle to X)等の車車間通信、路車間通信から車両1周囲の対象物に関する前記対象物情報を取得し、車両用表示装置4の画像生成部100に出力するものであってもよい。
【0018】
視線検出部400は、ステレオカメラや単眼カメラから構成され、搭乗者3を撮影して視線、及び視点を検出し、車両用表示装置4の画像生成部100に出力する。
【0019】
図3には、図2に示される車両用表示装置4の第1の実施形態における車両1から対象物までの距離と鮮明領域120、及び不鮮明領域130の対応が示されている。ここでは、区画線5を対象物として検知した場合の例を示す。
【0020】
通常、区画線5は車線を区切るために車両1の左右に設置されている。以後、対象物の左右を区別するため、車両1の左側(x軸正方向)の対象物についてaを、車両1の右側(x軸負方向)の対象物についてbを付加して呼ぶ。例えば、区画線5について、車両1の左側の区画線5を意味する区画線5-a、車両1の右側の区画線5を意味する区画線5-b、と呼ぶ。
【0021】
対象物情報取得部300は、対象物である区画線5の対象物情報を取得し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、前記対象物情報から、車両1から対象物である区画線5までの距離が第一の基準値D1以上である対象物320と、及び第一の基準値D1未満である対象物330と、を識別する。前記車両1から対象物までの距離は、z軸方向のみを基準としても、z軸方向とx軸方向、またはy軸方向を合成したものを基準としても、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向を合成したものを基準としてもよい。以後、車両1から対象物までの距離の左右を区別するため、車両1から左側(x軸正方向)の対象物までの距離についてaを、車両1から右側(x軸負方向)の対象物までの距離についてbを付加して呼ぶ。例えば、車両1から左側の対象物までの距離が第一の基準値D1であることを意味する第一の基準値D1-a、車両1から右側の対象物までの距離が第一の基準値D1であることを意味する第一の基準値D1-b、と呼ぶ。
【0022】
表示画像Mの表示領域110において、対象物320が存在する領域を鮮明領域120、対象物330が存在する領域を不鮮明領域130とする。以後、鮮明領域、不鮮明領域の左右を区別するため、車両1の左側(x軸正方向)の鮮明領域、不鮮明領域についてaを、車両1の右側(x軸負方向)の鮮明領域、不鮮明領域についてbを付加して呼ぶ。例えば、鮮明領域120について、車両1の左側の鮮明領域120を意味する鮮明領域120-a、車両1の右側の鮮明領域120を意味する鮮明領域120-b、と呼ぶ。
【0023】
図4は、図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における情報画像重畳の表示例が示されている。図4では、区画線5に情報画像121,131を重畳している。以後、情報画像の左右を区別するため、車両1の左側(x軸正方向)の情報画像についてaを、車両1の右側(x軸負方向)の情報画像についてbを付加して呼ぶ。例えば、情報画像121について、車両1の左側の情報画像121を意味する情報画像121-a、車両1の右側の情報画像121を意味する鮮明領域121-b、と呼ぶ。
【0024】
画像生成部100は、対象物320の情報画像121を鮮明領域120に、及び対象物330の情報画像131を不鮮明領域130に生成する。不鮮明領域130の情報画像131は、鮮明領域120の情報画像121よりも、不鮮明に生成される。
【0025】
情報画像の鮮明、不鮮明の表現は、例えば、情報画像の色の濃度であり、鮮明領域120の情報画像121は色が濃く生成され、不鮮明領域130の情報画像131は色が薄く生成される。
【0026】
搭乗者3は、不鮮明領域130の情報画像131よりも鮮明領域120の情報画像121を意識するようになり、遠方の対象物(例えば、区画線形状や車線)について確実に認識することができる。
【0027】
また、搭乗者3が視認しやすい車両1の近傍の情報画像を不鮮明にすることで、車両1の近傍の情報画像と対象物(実風景)がずれたことによる違和感を小さくできる。
【0028】
図5は、図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における情報画像の鮮明、不鮮明の表現に関する他の実施例を示している。図5(a)の様に、例えば、液晶パネルモジュールのLED(Light Emitting Diode)の点灯は黒点で表されており、情報画像の輝度の明暗で鮮明、不鮮明を表現しても良い。あるいは、デューティー(Duty)駆動の様にLEDを周期的に点滅させる、図示しないアクチュエータや回転軸を用いて光量が最大となる位置を鮮明領域にずらす等をして情報画像の輝度を制御しても良い。また、図5(b)の様に情報画像の縞模様の粗密で鮮明、不鮮明を表現しても良い。さらに、縞模様の間隙について、前記対象物情報を用いて対象物(実風景)に近い色を表示しても良い。
【0029】
図6は、図2に示される車両用表示装置の第1の実施形態における車両の速度が図3より大きい時の車両から対象物までの距離と鮮明領域、不鮮明領域の対応を示した図である。車両情報取得部200は、車両1の速度を取得し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、車両1の前記速度が大きいほど第一の基準値D1を大きくする。車両1の速度が図4よりも大きいため第一の基準値D1が大きくなり、鮮明領域120は小さく、不鮮明領域130は大きくなる。
【0030】
図7は、図2に示される車両用表示装置4の第1の実施形態における車両1の速度が、図3より大きい時の表示例である。画像生成部100は、対象物320の情報画像121を鮮明領域120に、及び対象物330の情報画像131を不鮮明領域130に生成する。
【0031】
搭乗者3は、不鮮明領域130の情報画像131に対し割合が小さくなった鮮明領域120の情報画像121を確認することにより、同時に遠方に視点を合わせることが出来る。これは、車両で高速走行している時の注視挙動と一致し、搭乗者3にとって自然な情報提示として感じられる。
【0032】
図8は、図2に示される車両用表示装置4の第1の実施形態における搭乗者3の視点が、車両1の近傍にある場合の表示例である。視線検出部400は、搭乗者3を撮影して視線、及び視点を検出し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、車両1から搭乗者3の前記視点までの距離が第一の基準値D1未満の場合は、車両1から搭乗者3の前記視点までの前記距離が第一の基準値D1以上の場合と比較して、不鮮明領域130の情報画像131をより不鮮明に生成する。例えば、画像生成部100は、情報画像131の色の濃度をより薄く生成する。前記距離は、z軸方向のみを基準としても、z軸方向とx軸方向、またはy軸方向を合成したものを基準としても、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向を合成したものを基準としてもよい。
【0033】
搭乗者3は、不鮮明度がより大きくなった不鮮明領域130の情報画像131よりも鮮明領域120の情報画像121に視線を向けるようになり、遠方の対象物(例えば、区画線形状や車線)についてより確実に認識することができる。
【0034】
図9は、図2に示される車両用表示装置4の第2の実施形態における車両1から対象物までの距離と鮮明領域120、不鮮明領域130の対応を示した図である。車両用表示装置4の第2の実施形態において、第一の基準値D1は、第二の基準値D2以上である。第一の基準値D1が第二の基準値D2と等しい場合、車両用表示装置4の第1の実施形態と同様の構成となる。
【0035】
対象物情報取得部300は、対象物である区画線5の対象物情報を取得し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、前記対象物情報から、車両1から対象物である区画線5までの距離が第一の基準値D1以上の対象物320と、第二の基準値D2未満の対象物340と、を識別する。また、画像生成部100は、第二の基準値D2以上、且つ第一の基準値D1未満の対象物350についても識別することが望ましい。前記車両1から対象物までの距離は、z軸方向のみを基準としても、z軸方向とx軸方向、またはy軸方向を合成したものを基準としても、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向を合成したものを基準としてもよい。
【0036】
画像生成部100は、表示画像Mの表示領域110について、対象物320が存在する領域を鮮明領域120と、対象物330が存在する領域を不鮮明領域130とする。また、対象物350が存在する領域を、例えば、中間領域140とする。以後、中間領域の左右を区別するため、車両1の左側(x軸正方向)の中間領域についてaを、車両1の右側(x軸負方向)の中間領域についてbを付加して呼ぶ。例えば、中間領域140について、車両1の左側の中間領域140を意味する中間領域140-a、車両1の右側の中間領域140を意味する中間領域140-b、と呼ぶ。
【0037】
図10は、図2に示される車両用表示装置4の第2の実施形態における情報画像重畳の表示例である。画像生成部100は、対象物320の情報画像122を鮮明領域120に、対象物340の情報画像132を不鮮明領域130に生成する。また、対象物350の情報画像142を中間領域140に生成する。不鮮明領域130の情報画像132は、鮮明領域120の情報画像122よりも、不鮮明に生成される。中間領域140の情報画像142は、不鮮明領域130の情報画像132よりも鮮明、且つ鮮明領域120の情報画像122よりも不鮮明に生成されることが望ましい。
【0038】
搭乗者3は、不鮮明領域130の情報画像132、及び中間領域140の情報画像142よりも鮮明領域120の情報画像122を意識するようになり、遠方の区画線形状(車線)について確実に認識することができる。
【0039】
図11は、図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における情報画像の鮮明、不鮮明の表現に関する他の実施例を示している。すなわち、図11(a)の様に情報画像の輝度の明暗で鮮明、不鮮明を表現しても良いし、図11(b)の様に情報画像の縞模様の粗密で鮮明、不鮮明を表現しても良いし、図11(c)の様に情報画像の縞模様の粗密、及び線幅の広狭で鮮明、不鮮明を表現しても良い。
【0040】
図12(a)乃至(c)は、図2に示される車両用表示装置4の第2の実施形態における車両1の速度が図9より大きい時の車両から対象物までの距離と鮮明領域、不鮮明領域の対応を示した図である。車両情報取得部200は、車両1の速度を取得し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、車両1の前記速度が大きいほど第一の基準値D1、及び第二の基準値D2を大きくする。図12(a)では、車両1の速度が図9よりも大きいため第一の基準値D1が大きくなり、鮮明領域120は小さくなる。図12(b)では、車両1の速度が図9よりも大きいため第二の基準値D2が大きくなり、不鮮明領域130は大きくなる。図12(c)では、車両1の速度が図9よりも大きいため第一の基準値D1、及び第二の基準値D2が大きくなり、鮮明領域120は小さく、且つ不鮮明領域130は大きくなる。
【0041】
図13は、図2に示される車両用表示装置4の第2の実施形態における車両1の速度が、図9より大きい時の表示例である。画像生成部100は、対象物320の情報画像122を鮮明領域120に、及び対象物340の情報画像132を不鮮明領域130に生成する。また、画像生成部100は、対象物350の情報画像142を中間領域140に生成する。
【0042】
搭乗者3は、不鮮明領域130の情報画像132に対し割合が小さくなった鮮明領域120の情報画像122を確認することにより、同時に遠方に視点を合わせることが出来る。これは、車両で高速走行している時の注視挙動と一致し、搭乗者3にとって自然な情報提示として感じられる。
【0043】
図14は、図2に示される車両用表示装置の第2の実施形態における搭乗者3の視点が車両1近傍にある場合の表示例である。視線検出部400は、搭乗者3を撮影して視線、及び視点を検出し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、車両1から搭乗者3の前記視点までの距離が第一の基準値D1未満の場合は、車両1から搭乗者3の前記視点までの距離が第一の基準値D1以上の場合と比較して、不鮮明領域130の情報画像132をより不鮮明に生成する。例えば、画像生成部100は、情報画像132の色の濃度をより薄く生成する。このとき、中間領域140の情報画像142についてもより不鮮明に生成してよい。中間領域140の情報画像142は、不鮮明領域130の情報画像132よりも鮮明、且つ鮮明領域120の情報画像122よりも不鮮明に生成されることが望ましい。前記距離は、z軸方向のみを基準としても、z軸方向とx軸方向、またはy軸方向を合成したものを基準としても、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向を合成したものを基準としてもよい。
【0044】
搭乗者3は、不鮮明度がより大きくなった不鮮明領域130の情報画像131よりも鮮明領域120の情報画像121に視線を向けるようになり、遠方の対象物(例えば、区画線形状や車線)についてより確実に認識することができる。
【0045】
図15(a)乃至(b)は、図2に示される車両用表示装置4の第2の実施形態における情報画像重畳の別の表示例である。
【0046】
図15(a)に示されるように、鮮明領域120と不鮮明領域130の間に複数の中間領域150,160,170を備え、情報画像122,132,152,162,172を生成しても良い。
【0047】
また、図15(b)に示されるように、鮮明領域120の情報画像122と不鮮明領域130の情報画像132を、中間領域140の情報画像142で鮮明、不鮮明の表現を滑らかに接続しても良い。
【0048】
図16(a)乃至(b)は、図2に示される車両用表示装置4における歩行者検知の表示例である。
【0049】
図16(a)は、ある時刻に歩行者6を対象物として車両1の遠方に検知した場合の例を示す。車両用表示装置4の第1の実施形態を用いた場合、対象物情報取得部300は、対象物である歩行者6の対象物情報を取得し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、前記対象物情報から、車両1から前記対象物までの距離が第一の基準値D1以上の対象物326を識別する。画像生成部100は、表示画像Mの表示領域110について、対象物326が存在する領域を鮮明領域120とし、対象物326の情報画像123を鮮明領域120に生成する。
【0050】
図16(b)は、前記時刻から一定時間経過し、車両1が前進した、あるいは、歩行者6が歩行したことにより、歩行者6を対象物として車両1の近傍に検知した場合の例を示す。対象物情報取得部300は、対象物である歩行者6の対象物情報を取得し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、前記対象物情報から、車両1から前記対象物までの距離が車両1から前記対象物までの距離が第一の基準値D1未満の対象物336を画像生成部100に出力する。画像生成部100は、表示画像Mの表示領域110について、対象物336が存在する領域を不鮮明領域130とし、対象物336の情報画像133を不鮮明領域130に生成する。
【0051】
搭乗者3は、遠方にいる歩行者6を確実に認識することができ、且つ時間経過とともに距離が近くなり、視認が容易となった歩行者6について、過度な情報提示によるわずらわしさを感じずに済む。
【0052】
図17は、図2に示される車両用表示装置4における方向指示の表示例であり、区画線5、及び交差点7を対象物として検知した場合の例を示す。車両用表示装置4の第2の実施形態を用いた場合、対象物情報取得部300は、対象物である区画線5、及び交差点7の対象物情報を取得し、画像生成部100に出力する。画像生成部100は、前記対象物情報から、車両1から前記対象物までの距離が第一の基準値D1以上の対象物325,327、第二の基準値D2未満の対象物335、第二の基準値D2以上、且つ第一の基準値D1未満の対象物345について画像生成部100に出力する。画像生成部100は、表示画像Mの表示領域110について、対象物325,327が存在する領域を鮮明領域120とし、対象物335が存在する領域を不鮮明領域130とし、対象物345が存在する領域を中間領域140とする。画像生成部100は、対象物325,327の情報画像124を鮮明領域120に、対象物335の情報画像134を不鮮明領域130に、対象物345の情報画像146を中間領域140に生成する。
【0053】
搭乗者3は、遠方にある交差点7を確実に認識することができ、且つ交差点7に至るまでの経路について実風景との一致性を感じやすくなる。
【0054】
上記実施形態において、車両1から対象物までの距離が第一の基準値D1以上、第一の基準値D1未満、第二の基準値D2未満、としたが、車両1から対象物までの距離が第一の基準値D1より大きい、第一の基準値D1以下、第二の基準値D2以下、としても同様の効果を得ることが出来る。
【0055】
上記実施形態において、車両1から対象物までの距離を基準値としたが、車両1の速度や対象物の速度を併せて考慮し、車両1の対象物までの到達時間を基準値としても良い。
【0056】
上記実施形態において、鮮明領域120、不鮮明領域130を矩形で表したが、円形等の別の図形や対象物の輪郭に沿って表しても良い。
【0057】
上記実施形態において、表示部10は、上記情報画像と合わせて別の情報画像も表示画像Mに表示しても良い。例えば、車両1の速度等である。
【0058】
上記実施形態において、車両用表示装置4の一形態としてウインドシールド型のHUD装置を用いたが、コンバイナ型のHUD装置にも適用可能である。
【0059】
上記実施形態は、スマートグラスを含むヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display)等の表示装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・車両
2・・・ウインドシールド
3・・・搭乗者
4・・・車両用表示装置
5・・・区画線
6・・・歩行者
7・・・交差点
8・・・ヘッドアップディスプレイ装置
10・・・表示部
21・・・平面ミラー
22・・・曲面ミラー
30・・・筐体
100・・・画像生成部
110・・・表示領域
120・・・鮮明領域
121・・・情報画像
130・・・不鮮明領域
131・・・情報画像
140・・・中間領域
142・・・情報画像
200・・・車両情報取得部
300・・・対象物情報取得部
320・・・第一の基準値以上の対象物
330・・・第一の基準値未満の対象物
340・・・第二の基準値未満の対象物
400・・・視線検出部
D1・・・第一の基準値
D2・・・第二の基準値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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図17