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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】アンテナ受信装置及び電子時計
(51)【国際特許分類】
   G04R 60/08 20130101AFI20221101BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20221101BHJP
   G04R 20/02 20130101ALI20221101BHJP
   G04C 9/00 20060101ALI20221101BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20221101BHJP
   H01Q 1/44 20060101ALI20221101BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20221101BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G04R60/08
G04G21/04
G04R20/02
G04C9/00 301B
H01Q7/00 100
H01Q1/44
H01Q1/24 C
H01Q13/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020053628
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021152507
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松江 剛志
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-86312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0224996(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 9/00
G04G 21/04
G04R 20/00 - 60/14
H01Q 1/00 - 1/52
H01Q 5/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を受信するアンテナと、
3個以上の電極を有する基板と、
前記電極のうちいずれか2個と前記アンテナとの間をそれぞれつなぐ接続部と、
を有し、
前記基板は、
接地面に接続可能な第1電極及び給電点に接続可能な第2電極の少なくとも一方を2個以上有し、
前記第1電極を2個以上有する場合には、当該第1電極から前記接地面までの第1配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、
前記第2電極を2個以上有する場合には、当該第2電極から延びる信号線の第2配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、
前記配線は、前記電極間をつなぐ中間配線を含み、前記アンテナからの複数の前記電極を経由して、前記接地面への経路及び前記信号線の経路がそれぞれ設定可能であり、経由する前記電極の数に応じて前記第1配線距離及び前記第2配線距離が変化する
ことを特徴とするアンテナ受信装置。
【請求項2】
電波を受信するアンテナと、
3個以上の電極を有する基板と、
前記電極のうちいずれか2個と前記アンテナとの間をそれぞれつなぐ接続部と、
を有し、
前記基板は、
接地面に接続可能な第1電極及び給電点に接続可能な第2電極の少なくとも一方を2個以上有し、
前記第1電極を2個以上有する場合には、当該第1電極から前記接地面までの第1配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、
前記第2電極を2個以上有する場合には、当該第2電極から延びる信号線の第2配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、
前記電極のうち少なくとも一部は、前記第1電極と前記第2電極とを兼ねており、
前記配線は、当該一部の電極から前記接地面への経路及び前記信号線の経路のうちいずれかを切断する切断部を有する
ことを特徴とするアンテナ受信装置。
【請求項3】
前記基板は、前記第1電極及び前記第2電極のうち一方の電極を2個以上有し、前記一方の電極のうちいずれかが前記接続部の一方に接続された状態で当該接続部の他方が接続可能な他方の電極を1個以上有することを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ受信装置。
【請求項4】
前記電極は、前記接続部により前記接地面と前記アンテナとを接続する前記第1電極と前記接続部により前記給電点に接続する前記第2電極の組み合わせに応じて前記アンテナにおける前記接続部との接続位置間の距離を変更可能な位置関係で並んでいることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置。
【請求項5】
前記中間配線は、前記電極間を折線又は曲線でつないでいることを特徴とする請求項記載のアンテナ受信装置。
【請求項6】
前記第2電極からの前記信号線の経路は、インピーダンス整合回路を介して電波受信制御ドライバに接続していることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置。
【請求項7】
前記アンテナは環状であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置と、
現在時刻を計数する計時部と、
前記アンテナ受信装置により受信された電波に基づいて、前記計時部が計数する現在時刻を修正する制御部と、
を備えることを特徴とする電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ受信装置及び電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
電子腕時計などの小型携帯型端末装置において、測位衛星からの電波といったGHz帯域の電波を受信するものがある。このような受信装置では、アンテナを外部に突出させるのが難しく、筐体表面や周囲などに沿って位置させる場合がある。
【0003】
このようなアンテナは、固定されており、また、筐体のサイズに応じたサイズに制約される。この場合、受信対象の周波数に応じてアンテナ上の給電点及び接地点が定められて配線接続されることで、所望の共振周波数を得ることができる。すなわち、製品において、内部構成や外部デザインなどが変化した場合には、配線接続の位置を調整して移動させる必要が生じる場合がある。このような状況に容易に対応するために、予め配線基板に複数の電極を用意しておき、いずれかに対して選択的に接続可能とする技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-086312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インピーダンス整合などを考慮すると、接続位置の調整だけでは、所望の周波数における受信感度が適切に得られないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より適切に製品の受信周波数における受信感度を定めることのできるアンテナ受信装置及び電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るアンテナ受信装置は、電波を受信するアンテナと、3個以上の電極を有する基板と、前記電極のうちいずれか2個と前記アンテナとの間をそれぞれつなぐ接続部と、を有し、前記基板は、接地面に接続可能な第1電極及び給電点に接続可能な第2電極の少なくとも一方を2個以上有し、前記第1電極を2個以上有する場合には、当該第1電極から前記接地面までの第1配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、前記第2電極を2個以上有する場合には、当該第2電極から延びる信号線の第2配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、前記配線は、前記電極間をつなぐ中間配線を含み、前記アンテナからの複数の前記電極を経由して、前記接地面への経路及び前記信号線の経路がそれぞれ設定可能であり、経由する前記電極の数に応じて前記第1配線距離及び前記第2配線距離が変化することを特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るアンテナ受信装置は、電波を受信するアンテナと、3個以上の電極を有する基板と、前記電極のうちいずれか2個と前記アンテナとの間をそれぞれつなぐ接続部と、を有し、前記基板は、接地面に接続可能な第1電極及び給電点に接続可能な第2電極の少なくとも一方を2個以上有し、前記第1電極を2個以上有する場合には、当該第1電極から前記接地面までの第1配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、前記第2電極を2個以上有する場合には、当該第2電極から延びる信号線の第2配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、前記電極のうち少なくとも一部は、前記第1電極と前記第2電極とを兼ねており、前記配線は、当該一部の電極から前記接地面への経路及び前記信号線の経路のうちいずれかを切断する切断部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、より適切に製品のアンテナ受信感度を定めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電子時計の外観を示す平面図である。
図2】筐体と基板との位置関係を説明する図である。
図3】筐体の内側における一本の接続ピンを含む断面の一部を示す図である。
図4】基板上の接続ピンとの接続部分を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電子時計1の外観を示す平面図である。
【0011】
電子時計1の上面は、中央に表示部11を有し、その周囲にベゼル13が位置している。また、電子時計1は、ベゼル13の一部を被覆する外装部材14と、本体にベルトを接続するための接続部16などを備える。電子時計1の側面には、押しボタンスイッチB1~B4とりゅうずC1とが設けられている。外装部材14は、ねじ15により筐体12(図2図3参照)に固定される。これに伴い、外装部材14と筐体12との間でベゼル13も固定されている。
【0012】
外装部材14は、その凹凸により押しボタンスイッチB1~B4及びりゅうずC1を含む電子時計1の本体を保護する他、デザイン装飾としての機能も有する。外装部材14の材質は、例えば、樹脂などであってもよい。
【0013】
ベゼル13は、環状の構造を有する導体部材(通常では金属部材)である。ベゼル13は、電子時計1においてアンテナとして動作する。ここでは、アンテナは、測位衛星(主にGPS(Global Positioning Satellite System)に係る衛星)からの右旋円偏波を受信する。
【0014】
押しボタンスイッチB1~B4及びりゅうずC1は、筐体12の側面を貫通して外側に突出しており、押しボタンスイッチB1~B4の押下操作、並びにりゅうずC1の引き出し操作及び回転操作が受け付け可能となっている。
【0015】
表示部11は、デジタル表示ディスプレイを有し、デジタル表示を行う。
【0016】
図2は、筐体12と基板21との位置関係を説明する図である。この図も図1と同様に上方から平面視したものである。
筐体12は、内部に基板21などの動作モジュール及びバッテリ30(図3参照)を内包して保護する略円筒状の構造を有する。筐体12の側面に上述の接続部16の各貫通孔が設けられている。
【0017】
筐体12の内縁付近には、9つの貫通孔121が位置している。これらの貫通孔121のうちいずれか2つに接続ピン241、242(接続部、まとめて又はいずれか一方を接続ピン24)が挿入されている。接続ピン241、242は、後述のように、アンテナとしてのベゼル13と基板21上の接続パッドP1~P9のうちいずれかとを各々電気的に接続する。接続ピン241、242は、筐体12や他の部分と接合(固着)されている必要はない。後述のように、接続ピン241は、ベゼル13と接触する一端が給電点となり、他端から信号線を経由して接続される受信回路に受信信号を送る。接続ピン242は、基板21上の接地面G(図4参照)につながる。
【0018】
なお、筐体12は、貫通孔121よりも外縁側にOリングの挿入溝122を有し、Oリングが挿入された状態でベゼル13や外装部材14と接触固定されることで、防水構造とされる。
【0019】
図3は、筐体12の内側におけるいずれかの接続ピン24を含む断面の一部を示す図である。
基板21に対し、上側には、金属フレーム23を介して表示画面111と、表示画面を覆う光透過性(通常は透明)の保護層112(コンタクトガラス)が位置する。基板21の下側には、フレーム22により固定、支持されているバッテリ30が位置する。最下面は、裏蓋17により覆われている。
【0020】
基板21上の一部の回路、例えば、電波受信回路や、制御部として動作し、日時の計数、表示及び修正などの各種制御動作を行うCPUなどは、シールドケース211などにより覆われている。シールドケース211は、内部の素子などを電磁波や静電気から保護するためのものであり、例えば、導体の箱型構造である。その他の基板21上の構成、例えば、発振回路、現在日時(現在時刻)を計数する計時部や不揮発性メモリなどは、シールドケース211などの外側に位置していてもよい。
【0021】
基板21の下面には、一部の回路212、ここでは、ブルートゥース(登録商標)に係る送受信回路が設けられていてもよい。
【0022】
金属フレーム23は、基板21上の回路を静電気から保護する導体板を有する。また、金属フレーム23は、脚状部分231によりシールドケース211と接触し、当該シールドケース211を介して基板21上の接地面に接続している。この金属フレーム23は、ベゼル13の内縁の概ね内側に位置している。
【0023】
表示画面111は、例えば、液晶表示画面であるが、これに限られるものではなく、また、液晶の種別などを問わない。表示画面111には、基板21上の制御部からの制御信号に基づいて各種表示がなされる。
【0024】
筐体12の貫通孔121に挿入された接続ピン24は、延在方向に伸縮可能なばね構造などを有していてよい。電子時計1が組み立てられ、封止された状態では、接続ピン24は、ばねが縮んだ状態で両端がそれぞれ基板21及びベゼル13に接する。これにより、電子時計1に多少の衝撃などがかかった場合でも、ばねの張力により両側への接触が維持される。また、貫通孔121は、幅が二段階になっており、接続ピン24は、これらと嵌り合う頭部形状を有することで、左右方向についての位置ずれを防ぐことができる。
【0025】
ベゼル13は、筐体12の外側に位置してアンテナとして機能する。環状のベゼル13は、上述のように接続ピン241、242により基板21上の回路と2か所で接続される。そのうちの一方が接地面につながり、他方が給電点である。これにより、ベゼル13は、基板21上の接地面と対になってパッチ状のマイクロストリップアンテナのように動作する。
【0026】
フレーム22は、少なくとも一部が導体部材であり、バッテリ30を内側に固定して保持し、保護するとともに、基板21の接地面と裏蓋17とに接触して接地面の範囲を裏蓋17まで拡張している。図3に示されているように、フレーム22は、バッテリ30の側面全体を覆っている必要はない。また、フレーム22と裏蓋17との間は、導体部材(金属など)の板ばね25などを介して電気的により安定かつ低抵抗(低インピーダンス)で接続されていてもよい。
【0027】
バッテリ30は、基板21の電力供給端子に接続されて、基板21の各回路などに電力を供給する。バッテリ30は、着脱交換可能であってもよいし、フレーム22に固定されたものであってもよい。後者の場合には、バッテリ30は、図示略のソーラパネルにより発電された電力に応じて、又は外部接続端子と接続されて外部から供給される電力に応じて充電可能であってよい。
【0028】
図4は、基板21上の接続ピン24との接続部分を説明する図である。
【0029】
基板21上には、上記貫通孔121の位置に合わせて複数(3以上の所定数、ここでは9つ)の接続パッドP1~P9(電極)が位置している。接続パッドP2~P8の間は、それぞれ所定の集中定数回路D1(切断部)を介して配線L1~L12(中間配線)により接続されている。集中定数回路D1は、RLC(抵抗、インダクタ、キャパシタ。)回路であり、また、選択的に開放状態と導通状態を切り替えることができる。この切替は、不可逆的であってもよい。
集中定数回路D1は、配線で接続される隣の接続パッドを結ぶ直線上ではなく、外れた位置にある。これに伴って接続パッド間を結ぶ配線は、折線状となっている。スペースを節約する観点から接続パッド間の距離が短いので、折線状とすることで、短い直線距離であっても配線の長さを延長することができる。
【0030】
接続パッドP1に接続する配線L21と、接続パッドP2、P3の間から延びる配線L22は、それぞれ、インピーダンス整合回路213及び配線L23を経て受信回路214(LNA(Low Noise Amplifier)やBPF(Band Pass Filter)などを有するフロントエンド、及び電波受信制御ドライバ(バックエンドのベースバンド回路など)を含む)につながっている信号線の経路に含まれる。一方、配線L5、L6の間から延びる配線L31、配線L11、L12の間から延びる配線L32及び接続パッドP9から延びる配線L33は、それぞれ、接続部S1~S3を介して接地面Gに接続されている。
【0031】
すなわち、接続パッドP1~P8(少なくとも2個の第2電極)は、いずれも給電点に接続可能な電極であり、信号線は、配線L21、L22、L1~L12のうち選択された接続パッドに応じて定まる(設定可能な)一部によりインピーダンス整合回路213につながる。さらに、信号線は、インピーダンス整合回路213を介して、受信回路214につながっている。また、接続パッドP2~P9(少なくとも2個の第1電極)は、いずれも配線L1~L12、L31~L33のうち選択された接続パッド及び接続部S1~S3に応じて定まる一部を介して接地面Gにつながり得る。接続ピン241が接続パッドP1~P8のいずれかに接続された状況で、接続ピン242に接続可能な接続パッドは、必ず一個以上存在する。同様に、接続ピン242が接続パッドP2~P9のいずれかに接続された状況で、接続ピン241に接続可能な接続パッドは、必ず一個以上存在する。また、選択される接続パッドの組合せと、接地面Gへの接続部S1~S3の選択と、(すなわち、経由する接続パッドの数)に応じて、インピーダンス整合回路213に到達するまでの経路に沿った配線の長さ(第2配線距離)及び接地面Gに到達するまでの経路に沿った配線の長さ(第1配線距離)がそれぞれ異なるものを含む。例えば、図3に示した例では、接続ピン241が接続パッドP1に接続し、配線L21のみを介してインピーダンス整合回路213に接続している。また、接続ピン242が接続パッドP8に接続し、配線L12、L32を介して接地面Gに接続している。
【0032】
接続パッドP2~P8は、接地面Gにもインピーダンス整合回路213にも接続可能になっている(第1電極と第2電極を兼ねている)ので、実際に選択される接続パッドP2~P8に応じて不要な集中定数回路D1や接続部S1~S3の部分で導通が切断されてよい。
【0033】
また、接続パッドP4、P5、P7、P8から接地面Gまでの距離は、いずれも同一であるが、いずれかを選択することで、ベゼル13における2本の接続ピン241、242の間の距離(中心との間でなす角の角度)を変更することがでる。この距離(角度)に応じて共振周波数が調整されてよい。
【0034】
以上のように、接続ピン241、242の位置関係と、接続ピン241からインピーダンス整合回路213までの距離と、接続ピン242から接地面Gまでの距離を適宜調整することで、ベゼル13により受信される電波の共振周波数及び位相差をより適切に調整することが可能になる。これらは、集中定数回路D1、接続ピン24などに応じても変化し得るので、製品の設計からの微小なずれなどを適切に調整することができる。
【0035】
上記各構成のうち、ベゼル13、接続ピン24及び基板21の少なくとも一部が本実施形態のアンテナ受信装置を構成する。
【0036】
以上のように、本実施形態のアンテナ受信装置を含む電子時計1は、電波を受信するベゼル13と、3個以上の接続パッドP1~P9を有する基板21と、接続パッドP1~P9のうちいずれか2個とベゼル13との間をそれぞれつなぐ接続ピン24と、を有する。基板21は、接地面Gに接続可能な第1電極及び給電点に接続可能な第2電極の少なくとも一方を2個以上有し、第1電極を2個以上有する場合には(ここでは、接続パッドP2~P9)、当該第1電極から接地面Gまでの第1配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、第2電極を2個以上有する場合には(ここでは、接続パッドP1~P8)、当該第2電極から延びる信号線の第2配線距離がそれぞれ異なる配線を有する。
このような構成により、接続ピン24と接続される接続パッドP1~P9が調整、選択されるだけで、電子時計1(アンテナ受信装置)では、アンテナによる受信周波数と共振周波数のマッチング及びインピーダンス整合を容易により適切に行い、より良好な受信感度で所望の波長の電波を受信することができる。これにより、基板21又は筐体12が改良やモデルチェンジなどで交換された場合でも、全体の設計変更を行うことなく容易に電波受信状況を良好に保つことができる。また、微小な設計値との誤差なども容易かつ適切に調整可能になるので、電子時計1においてより安定した適切な感度で所望の電波を受信することができる。
【0037】
特に、基板21は、第1電極及び第2電極のうち一方の電極を2個以上有し、一方の電極のうちいずれか(例えば、第2電極)が接続ピン24の一方(例えば、接続ピン241)に接続された状態で当該接続ピン24の他方(例えば、接続ピン242)が接続可能な他方の電極(例えば、第1電極)を1個以上有する。
よって、電子時計1では、選択された第1電極と第2電極に応じて適切にベゼル13による受信周波数と共振周波数とを合わせることができ、また、インピーダンス整合を容易に行うことができる。
【0038】
また、接続パッドP1~P9は、接続ピン242により接地面Gとベゼル13とを接続する第1電極と、接続ピン241により給電側とベゼル13とを接続する第2電極との組み合わせに応じてベゼル13における2個の接続ピン24との接続位置間(一方が給電点)の距離を変更可能な位置関係で並んでいる。
すなわち、接続ピン241、242間のベゼル13(アンテナ)上の距離も調整可能とすることで、適切に電波の受信周波数と共振周波数とを合わせることができる。
【0039】
また、配線は、接続パッドP2~P8間をつなぐ配線L1~L12(中間配線)を含み、ベゼル13から複数の接続パッドP2~P8を経由して、接地面Gへの経路及び受信回路214への信号線の経路がそれぞれ設定可能であり、経由する接続パッドの数に応じて第1配線距離及び第2配線距離が変化する。すなわち、基板上の長い配線は他の配線と共用することで、必要以上に多くの配線を基板上に形成する必要がなく、手間とスペースを節約することができる。
【0040】
また、中間配線は、接続パッドP2~P8間を折線又は曲線でつないでいる。電子時計1のサイズ、すなわち基板21のサイズと調整の精度上、接続パッドP2~P8の距離を離隔させるのが難しいので、中間配線を直線状としないことで、距離に比して長い配線距離を得ることができる。したがって、広い範囲にわたって接地面Gまで及びインピーダンス整合回路213までの距離を調整することができる。特に、小型化などにより外周だけで受信周波数に応じた長さを得るのが難しくなった場合に容易に調整が可能である。
【0041】
また、接続パッドのうち少なくとも一部の接続パッドP2~P8は、第1電極と第2電極とを兼ねている。配線には、集中定数回路D1が含まれ、当該一部の接続パッドP2~P8から接地面Gへの経路及び受信回路214への信号線の経路のうちいずれかを集中定数回路D1で切断することができる。このように、集中定数回路D1で適宜インピーダンスの整合を取りつつ、不要な方向へ電流を流さないようにも定めることができるので、接地面Gへの配線と給電側への配線をある程度共用させて形成することができ、必要に応じた向きに導通させればよい。これにより、電子時計1では、配線の本数、スペースや形成の手間をより削減することができる。
【0042】
また、第2電極からの信号線の経路は、インピーダンス整合回路213を介して受信回路214の電波受信制御ドライバに接続している。すなわち、共振周波数に応じた長さの調整だけではなく、インピーダンスや位相差を適切に整合して信号を受信することができるので、無駄な損失を防ぎより良好な感度で所望の電波を受信することができる。
【0043】
また、ベゼル13は環状である。正面中央に表示部11を有することの多い携帯型の端末装置において、環状のアンテナを設けることで他の構成を邪魔せずに効率よく受信電波の波長に応じた長さのアンテナを利用して電波を受信することが可能になる。
【0044】
また、本実施形態の電子時計1は、上記のアンテナ受信装置としての構成と、現在時刻を計数する計時部と、アンテナ受信装置により受信された電波に基づいて、計時部が計数する現在時刻を修正する制御部と、を備える。よって、電子時計1では、その重量化、大型化や電力消費の増大を抑制しつつ電波受信をより適切に行って、正確な現在日時の計数を維持したり、各種機能を実行したりすることができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態ではベゼル13をアンテナとして用いるものとして説明したが、他の環状部材が代用されたり、アンテナ専用部材が別個に設けられていたりしてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、各接続パッドP2~P8間を接続する配線により接続ピン24と接続された接続パッドからインピーダンス整合回路213や接地面Gまでの距離を可変としたが、配線パターンは、これに限られない。例えば、接続パッドP2~P8がインピーダンス整合回路213及び接地面Gのうち一方にのみ接続されて、当該一方のみの距離が可変とされていてもよい。また、選択された接続パッドに応じて配線の長さが可変とできればよい。例えば、各接続パッドP2~P8から他の接続パッドを経由せず、それぞれ異なる配線距離で直接インピーダンス整合回路213や接地面Gに接続可能であってもよい。また、配線が、接続パッドP2~P8の中間の集中定数回路D1の部分で折れ曲がる折線状であるとして説明したが、その他の部分で曲線状に曲がっていてもよく、集中定数回路D1へ所定の直線に漸近して接続しているものであってもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、接続パッドP1、P9がそれぞれ、インピーダンス整合回路213及び接地面Gに専用につながるものとして説明したが、このような専用部分が設けられているように配線がなされていなくてもよい。反対に、インピーダンス整合回路213にのみつながる接続パッドと接地面Gにのみつながる接続パッドとがそれぞれ別個に設けられ、少なくとも一方が複数個であってもよい。また、接続パッドの数は、必要な精度、調整幅及び接続パッドの配置可能な幅(角度範囲)などに応じて任意に変更されてよい。また、接続パッドP2~P7が一直線上に配置されている必要もなく、例えば、円周に沿って円弧状に並んでいてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、接続ピン24がベゼル13と接続パッドP1~P9の平面視で同一位置の間をつなぐものとして説明したが、ベゼル13上の位置と接続パッドP1~P9との位置関係が適正に保てるものであれば、平面視同一位置の間をつなぐ場合に限られなくてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、円状の接続パッドP1~P9と、線状の配線とが明確に異なるものとして説明したが、接続ピン24との接続位置が適正に保つことができ、また、適切に集中定数回路D1を配置することが可能であれば、接続パッドの部分と配線部分とが連続的に設けられていてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、貫通孔121が筐体12に設けられていたが、筐体12に取り付けられる板面に設けられていてもよい。更に、接続パッドP1~P9とベゼル13との接続位置を手間をかけずに適切に維持可能であれば、接続パッドの数と同数の貫通孔を有する構成でなくてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、環状のベゼル13をアンテナとした場合について説明したが、接地点及び給電点に応じて共振周波数が調整される同様の構造のアンテナ、例えば、平面状のマイクロストリップアンテナを有する場合であっても、上記構成を適用することができる。
【0052】
また、上記実施の形態では、電子時計1が測位衛星からの電波を受信するものとして説明したが、これに限られない。小型携帯型でアンテナを突出させることの難しい電子端末が当該電子端末のサイズに応じたマイクロ波、特にGHz帯域の電波を受信するアンテナを備える場合に上記開示の技術内容を適用することができる。また、電子時計であっても、現在日時の修正に必ずしも用いられなくてもよい。測位機能を有する電子時計における測位動作にのみ用いられてもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0054】
[付記]
<請求項1>
電波を受信するアンテナと、
3個以上の電極を有する基板と、
前記電極のうちいずれか2個と前記アンテナとの間をそれぞれつなぐ接続部と、
を有し、
前記基板は、
接地面に接続可能な第1電極及び給電点に接続可能な第2電極の少なくとも一方を2個以上有し、
前記第1電極を2個以上有する場合には、当該第1電極から前記接地面までの第1配線距離がそれぞれ異なる配線を有し、
前記第2電極を2個以上有する場合には、当該第2電極から延びる信号線の第2配線距離がそれぞれ異なる配線を有する
ことを特徴とするアンテナ受信装置。
<請求項2>
前記基板は、前記第1電極及び前記第2電極のうち一方の電極を2個以上有し、前記一方の電極のうちいずれかが前記接続部の一方に接続された状態で当該接続部の他方が接続可能な他方の電極を1個以上有することを特徴とする請求項1記載のアンテナ受信装置。
<請求項3>
前記電極は、前記接続部により前記接地面と前記アンテナとを接続する前記第1電極と前記接続部により前記給電点に接続する前記第2電極の組み合わせに応じて前記アンテナにおける前記接続部との接続位置間の距離を変更可能な位置関係で並んでいることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ受信装置。
<請求項4>
前記配線は、前記電極間をつなぐ中間配線を含み、前記アンテナからの複数の前記電極を経由して、前記接地面への経路及び前記信号線の経路がそれぞれ設定可能であり、経由する前記電極の数に応じて前記第1配線距離及び前記第2配線距離が変化することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置。
<請求項5>
前記中間配線は、前記電極間を折線又は曲線でつないでいることを特徴とする請求項4記載のアンテナ受信装置。
<請求項6>
前記電極のうち少なくとも一部は、前記第1電極と前記第2電極とを兼ねており、
前記配線は、当該一部の電極から前記接地面への経路及び前記信号線の経路のうちいずれかを切断する切断部を有する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置。
<請求項7>
前記第2電極からの前記信号線の経路は、インピーダンス整合回路を介して電波受信制御ドライバに接続していることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置。
<請求項8>
前記アンテナは環状であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置。
<請求項9>
請求項1~8のいずれか一項に記載のアンテナ受信装置と、
現在時刻を計数する計時部と、
前記アンテナ受信装置により受信された電波に基づいて、前記計時部が計数する現在時刻を修正する制御部と、
を備えることを特徴とする電子時計。
【符号の説明】
【0055】
1 電子時計
11 表示部
111 表示画面
112 保護層
12 筐体
121 貫通孔
122 挿入溝
13 ベゼル
14 外装部材
15 ねじ
16 接続部
17 裏蓋
21 基板
211 シールドケース
212 回路
213 インピーダンス整合回路
214 受信回路
22 フレーム
23 金属フレーム
231 脚状部分
24、241、242 接続ピン
25 板ばね
30 バッテリ
D1 集中定数回路
G 接地面
P1~P9 接続パッド
図1
図2
図3
図4