(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】カバー装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
B23Q11/08 E
(21)【出願番号】P 2020115819
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】横須賀 竜也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀行
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸義
【審査官】永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102825303(CN,A)
【文献】登録実用新案第3153369(JP,U)
【文献】独国実用新案第202004003323(DE,U1)
【文献】中国特許出願公開第102814521(CN,A)
【文献】実開昭49-69894(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08
B23B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる軸回りに回転する回転部を有する回転加工機の加工機本体に設けられた基部と、
前記基部に接続部を介して設けられ前記回転部を覆う第1カバーと、
前記第1カバーに軸方向スライド機構を介して前後方向にスライド自在に設けられた第2カバーとを備え、
前記接続部は、前記第1カバーを前記回転部の径方向外方に展開可能に支持
し、
前記基部は、前記回転加工機に設けられた固定基部と、前記軸を中心とする円の周方向にスライド自在に前記固定基部に設けられたロータリー基部とを備え、
前記第1カバーは、前記ロータリー基部に前記接続部を介して設けられた
ことを特徴とするカバー装置。
【請求項2】
前記ロータリー基部は、周方向における前記第1カバーの位置が前記軸の上方及び左方である周方向遮蔽位置と、周方向における前記第1カバーの位置が前記軸の下方及び右方である周方向開放位置との間でスライド可能に支持され、
前記固定基部には、前記ロータリー基部を前記周方向遮蔽位置で係止する周方向遮蔽用ストッパが形成されると共に、前記ロータリー基部を前記周方向開放位置で係止する周方向開放用ストッパが形成された
請求項
1に記載のカバー装置。
【請求項3】
前記第1カバー及び前記第2カバーの内、少なくとも一方が、前後方向に延びると共に前記軸を中心とする円の周方向に延びる柵状に形成された
請求項
1または2に記載のカバー装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記第1カバーを上方に展開可能に支持する
請求項1から
3のいずれか一項に記載のカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被切削加工物または刃具を回転させて被切削加工物の加工を行う回転加工機のカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、中ぐり盤のように刃具を回転させて切削加工を行う回転加工機にあっては、刃具を剥き出しの状態で回転させて部品の加工を行っている。
【0003】
また、旋盤のように、被切削加工物を回転させる回転加工機にあっても、回転する被切削加工物が剥き出しの状態となっている。
【0004】
一般に回転加工機には、刃具や被加工物等の回転体を覆う覆いはなく、有ったとしても跳ね上げ式又は回転摺動式のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実登3153369号公報
【文献】実開昭49-069894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、安全のためには、回転体を覆う覆いがあることが好ましい。
【0007】
しかしながら、回転体の周囲に跳ね上げ式の覆いを設けた場合、刃具の交換の際に覆いを持ち上げる作業が大変である。また、作業や刃具に応じて回転体を覆う範囲を変更できず、作業性を損なう可能性がある。
【0008】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、作業性を向上できるカバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一の態様によれば、前後方向に延びる軸回りに回転する回転部を有する回転加工機の加工機本体に設けられた基部と、
前記基部に接続部を介して設けられ前記回転部を覆う第1カバーと、
前記第1カバーに軸方向スライド機構を介して前後方向にスライド自在に設けられた第2カバーとを備え、
前記接続部は、前記第1カバーを前記回転部の径方向外方に展開可能に支持する
ことを特徴とするカバー装置が提供される。
【0010】
好ましくは、前記基部は、前記回転加工機に設けられた固定基部と、前記軸を中心とする円の周方向にスライド自在に前記固定基部に設けられたロータリー基部とを備え、
前記第1カバーは、前記ロータリー基部に前記接続部を介して設けられる。
【0011】
好ましくは、前記ロータリー基部は、周方向における前記第1カバーの位置が前記軸の上方及び左方である周方向遮蔽位置と、周方向における前記第1カバーの位置が前記軸の下方及び右方である周方向開放位置との間でスライド可能に支持され、
前記固定基部には、前記ロータリー基部を前記周方向遮蔽位置で係止する周方向遮蔽用ストッパが形成されると共に、前記ロータリー基部を前記周方向開放位置で係止する周方向開放用ストッパが形成される。
【0012】
好ましくは、前記第1カバー及び前記第2カバーの内、少なくとも一方が、前後方向に延びると共に前記軸を中心とする円の周方向に延びる柵状に形成される。
【0013】
好ましくは、前記接続部は、前記第1カバーを上方に展開可能に支持する。
【発明の効果】
【0014】
上記の態様によれば、作業性を損なう可能性を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るカバー装置の斜視図である。
【
図5】カバーを短縮したカバー装置の斜視図である。
【
図7】回転体を中心としてカバーを回転させたカバー装置の斜視図である。
【
図9】カバーを上方に跳ね上げたカバー装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、後述する実施の形態における前後左右上下の各方向は、回転加工機の回転部における先端方向を前方とし、これを基準としていうものとする。ただし、本実施の形態における各方向は、説明の便宜のために用いるものであり、後述する部材間の相対的な位置関係を表す。
【0017】
図1は回転加工機1に取り付けられたカバー装置2の斜視図である。
図2は
図1のA-A線矢視断面図である。まず、カバー装置2が適用される回転加工機1について説明する。
【0018】
図1に示すように、回転加工機1は、例えば横型ジグ中ぐり盤で構成される。回転加工機1は、被切削加工物3を載せるためのテーブル4と、テーブル4上の被切削加工物3に切削加工を施す加工機本体5とを備える。テーブル4は、図示しないベッド上に前後左右方向にスライド自在に設けられる。加工機本体5は、図示しないフロアに固定される固定本体部6と、固定本体部6に前後方向に移動自在に設けられる可動本体部7と、可動本体部7に前後方向に延びる軸C回りに回転自在に設けられる回転部8とを備える。
【0019】
回転部8は、可動本体部7に前方に延出して形成される本体軸部7aの前端から前方に延出して形成される。回転部8には、刃具9が着脱自在に把持される。回転部8に着脱可能な刃具9の種類は、中ぐりバイト、エンドミル、フェイスミル、ドリル等である。刃具9は、回転加工機1で行う加工の種類に応じて適宜選択される。また、本体軸部7aは、軸Cと同軸の断面円形に形成される。本実施の形態に係る回転加工機1に対する作業者の立ち位置は、回転部8の左方に形成される。すなわち、作業者は回転部8の左方の位置に立って作業を行う。
【0020】
なお、回転加工機1は上述のものに限られない。回転加工機1は、前後方向に延びる軸C回りに回転する回転部8を有するものであればよく、例えば旋盤等であってもよい。この場合、回転部8には、被切削加工物が把持される。
【0021】
ところで、安全のためには、回転部8及び刃具9を覆う覆いがあることが好ましい。
【0022】
しかしながら、回転部8及び刃具9の周囲に覆い(図示せず)を設けた場合、刃具9の交換の際に覆いを持ち上げる作業が大変である。また、作業や刃具に応じて回転部8及び刃具9を覆う範囲を変更できず、作業性を損なう可能性がある。
【0023】
そこで本実施の形態では、後述するカバー装置2を回転加工機1に設ける。これにより、作業性を向上できる。カバー装置2について説明する。
【0024】
カバー装置2は、本体軸部7aに着脱自在に設けられる基部10と、基部10に接続部11を介して設けられる第1カバー12と、第1カバー12に軸方向スライド機構13を介して設けられる第2カバー14とを備える。
【0025】
図2及び
図3に示すように、基部10は、本体軸部7aに設けられる固定基部15と、軸Cを中心とする円の周方向にスライド自在に固定基部15に設けられるロータリー基部16とを備える。
【0026】
固定基部15は、環状に形成され、本体軸部7aの外周に同軸に固定される。また、固定基部15は、内周部17と、外周部18とを備える。外周部18は、均等な厚さの板状に形成されると共に、内周部17より前後方向の厚さを薄く形成される。また、内周部17の前面17aと外周部18の前面18aとの間には、内周部17の外周面17bが形成される。内周部17の外周面17bは、内周部17の前面17a及び外周部18の前面18aに対して直角となるように形成される。また、外周部18には、ロータリー基部16をガイドするためのスリット19が形成される。スリット19は、固定基部15と同軸の円弧状に形成される。すなわち、スリット19は、軸Cを中心とする円の周方向に延びる。
【0027】
ロータリー基部16は、固定基部15と同軸の円弧状に形成されると共に、断面矩形に形成される。ロータリー基部16の内周面の半径Ri1は、内周部17の外周面17bの半径Ri2より若干大きく設定され、ロータリー基部16の外周面の半径Ro1は、外周部18の半径Ro2と概ね同じに設定される。
図3及び
図4に示すように、ロータリー基部16には、スリット19にガイドされるガイドピン20が回転自在に、かつ、周方向に沿って複数(本実施の形態にあっては3つ)設けられる。なお、ロータリー基部16は、円弧状に形成されるものとしたが、これに限られない。例えばロータリー基部16は、固定基部15と同軸の環状に形成されてもよい。
【0028】
ガイドピン20は、スリット19に挿通されるピン軸部21と、ピン軸部21の後端に一体に設けられるピン頭部22とを備える。
図3及び
図8に示すように、ピン軸部21は、スリット19に沿って移動することでロータリー基部16の移動をガイドする。また、ピン軸部21は、スリット19の延長方向の端に当たることでロータリー基部16の移動範囲を規制する。これにより、ロータリー基部16は所定の位置で停止させられる。具体的には、所定の位置とは、周方向における第1カバー12の位置が軸Cの上方及び左方である周方向遮蔽位置(
図1及び
図3参照)と、周方向における第1カバー12の位置が軸Cの下方及び右方である周方向開放位置(
図7及び
図8参照)である。すなわち、スリット19の一端には、ロータリー基部16を周方向遮蔽位置で停止させる周方向遮蔽用ストッパ23が形成され、スリット19の他端には、ロータリー基部16を周方向開放位置で停止させる周方向開放用ストッパ24が形成される。
【0029】
また
図4に示すように、ピン軸部21の前端部には、ベアリング25が設けられる。ベアリング25はラジアルベアリングで構成される。ベアリング25は、ピン軸部21の外周に固定されるインナーリング26と、インナーリング26の外周に配置されるアウターリング27と、インナーリング26及びアウターリング27間に設けられる複数のボール28とを備える。アウターリング27の外周面27aは、内周部17の外周面17bに当接される。これにより、ピン軸部21がスリット19に沿って移動されるとき、ベアリング25が内周部17の外周面17bに沿って走行する。これにより、ロータリー基部16が固定基部15に対して滑らかにスライドされる。
【0030】
ピン頭部22は、ピン軸部21より大径の円盤状に形成され、外周部18の後端面18bに当接される。ピン頭部22は、後端面18bに当接することで抜け止めとして機能する。これにより、固定基部15に対するロータリー基部16の前方への移動が規制される。
【0031】
図1及び
図2に示すように、第1カバー12は、回転部8及び回転部8に把持された刃具9を覆うためのものであり、ロータリー基部16から前方(軸方向)に延びると共に、軸Cを中心とする円の周方向に延びる柵状に形成される。具体的には、第1カバー12は、軸方向に複数平行に延びる棒部材12aと、これら棒部材12aの基端間に掛け渡して設けられる基端側支持枠12bと、棒部材12aの先端間に掛け渡して設けられる先端側支持枠12cとを備える。基端側支持枠12b及び先端側支持枠12cは、円弧状に形成されると共に、断面矩形に形成される。基端側支持枠12b及び先端側支持枠12cの内径及び外径は、ロータリー基部16と概ね同じに設定される。また、第1カバー12の前後方向の長さL1は、回転部8に把持させることができる刃具9のうち、軸方向の長さが最も短い刃具9より短くなるように設定される。これにより、刃具9が前方の被切削加工物3をフライス加工するとき等に、第1カバー12が邪魔になることを抑制できる。
【0032】
また、接続部11は、ブレーキ付きヒンジ(トルクヒンジ)で構成される。
図9及び
図10に示すように、接続部11は、第1カバー12を回転部8の径方向外方に展開可能に支持する。具体的には、接続部11は、ロータリー基部16が周方向遮蔽位置にあるとき、第1カバー12を跳ね上げ可能(上方に展開可能)に支持する。また、接続部11は、第1カバー12を特定の姿勢で保持できるように構成されている。ここで特定の姿勢とは、第1カバー12の先端及び基端の高さが概ね同じとなる遮蔽姿勢(
図1参照)と、第1カバー12の先端が基端より上方かつ後方となる開放姿勢(
図9参照)である。すなわち、第1カバー12は、ロータリー基部16が周方向遮蔽位置にあるとき、遮蔽姿勢及び開放姿勢のいずれかに切り替え可能となっている。なお、開放姿勢は、第1カバー12の先端が基端の鉛直上方となる姿勢であってもよい。
【0033】
また、第1カバー12は、ロータリー基部16の周方向の一端に設けられたロック機構29により接続部11を中心とする回動をロックされる。
図3に示すように、ロック機構29は、ロータリー基部16の周方向の一端に前方に延びて設けられるロック基部30と、ロック基部30にロータリー基部16の周方向に貫通して設けられるロックピン31と、ロック基部30に設けられロックピン31を基端側支持枠12b側に突出した状態に弾性支持するスプリング(図示せず)と、基端側支持枠12bに形成されロックピン31を挿入させるピン穴32とを備える。ロックピン31がピン穴32に挿入されているとき、第1カバー12は遮蔽姿勢(
図1参照)にロックされ、ロックピン31がピン穴32から抜かれたとき、第1カバー12は遮蔽姿勢からの姿勢変化を許容される。
【0034】
図1及び
図2に示すように、第2カバー14は、回転部8に把持された刃具9を覆うためのものであり、第1カバー12の径方向外方に配置される。第2カバー14は、前方(軸方向)に延びると共に、軸Cを中心とする円の周方向に延びる柵状に形成される。具体的には、第2カバー14は、軸方向に複数平行に延びる棒部材14aと、これら棒部材14aの基端間に掛け渡して設けられる基端側支持枠14bと、棒部材14aの先端間に掛け渡して設けられる先端側支持枠14cと、棒部材14aの中間部間に掛け渡して設けられる中間支持枠14dとを備える。基端側支持枠14b、先端側支持枠14c及び中間支持枠14dは、円弧状に形成されると共に、断面矩形に形成される。基端側支持枠14b、先端側支持枠14c及び中間支持枠14dの内周面の半径r2は、第1カバー12の外周面の半径r1と概ね同じに設定される。また、第2カバー14の前後方向の長さL2は、第1カバー12の前後方向の長さL1と概ね同じに設定される。
【0035】
また、軸方向スライド機構13は、第1カバー12の基端側支持枠12b及び先端側支持枠12c間に掛け渡して設けられるレール33と、第2カバー14の基端側に設けられレール33に沿って走行するスライダ34とを備える。レール33は、第1カバー12にその周方向に離間して一対設けられる。レール33は、断面C字状に形成され、スライダ34を嵌入させるためのスリット33aを備える。スライダ34は、第2カバー14の基端側支持枠14b及び中間支持枠14d間に跨がって設けられると共に、第2カバー14の周方向においてそれぞれのレール33に対応する位置に配置される。スライダ34は、レール33内に嵌入された後、レール33に対して外れないように係合されている。また、スライダ34は、レール33の内面に摺動可能に圧接される。これにより、スライダ34は、レール33に沿う力Fを受けたとき、レール33に沿って走行し、前記力Fを受けなくなったとき、レール33の内面から受ける摩擦力でロックされる。すなわち、スライダ34は、レール33に沿って走行可能、かつ、レール33の任意の位置でロック可能に構成されている。なお、スライダ34は、これに限られない。例えばスライダ34は、レール33に係脱自在なロック機構を備えるものであってもよい。
【0036】
次に本実施の形態の作用について述べる。
【0037】
回転部8に把持された刃具9でテーブル4上に載置された被切削加工物3をフライス加工する場合、
図1及び
図2に示すように、ロータリー基部16を周方向遮蔽位置に位置させ、第1カバー12を遮蔽姿勢にする。この後、第2カバー14の前端が刃具9の前端より後方に位置されるように第2カバー14の前後方向の位置を調整する。軸方向スライド機構13は、第2カバー14を前後方向にスライド自在に支持すると共に、任意の位置でロック可能に支持する。このため、第1カバー12及び第2カバー14で構成される覆いの長さを刃具9の前後方向の長さや被切削加工物3の前後方向のサイズに応じて自在に調整できる。例えば、刃具9の前後方向の長さが短い場合、
図5及び
図6に示すように、第2カバー2を後方にスライドさせる。これにより、刃具9の先端を第2カバー14の前端より前方に突出させることができる。
【0038】
この後、回転部8を回転させつつ可動本体部7を前方に移動させる。刃具9が被切削加工物3に当たることでフライス加工が開始される。このとき、回転部8及び刃具9は上方及び左方を第1カバー12及び第2カバー14で覆われている。このため、作業者が誤って回転部8や刃具9に触れることは防止又は抑制される。また、第1カバー12及び第2カバー14は、柵状に形成されるため、例えば第1カバー12及び第2カバー14が透明な樹脂で形成されている場合のように、油で汚れたり、破片で傷ついたりして刃具9の周辺が見えなくなることはない。このため、第1カバー12及び第2カバー14は、長期間に亘って視認性を良好に維持できる。
【0039】
図7及び
図8に示すように、刃具9を大型のものや重いものに交換する場合、ロックピン31をピン穴32に挿入させた状態のままロータリー基部16を右方に回動させる。このとき、ガイドピン20のピン軸部21はスリット19に沿って案内され、ベアリング25は内周部17の外周面17bに沿って走行する。このため、ロータリー基部16は滑らかに回動される。そして、ガイドピン20のピン軸部21が周方向開放用ストッパ24に当接することでロータリー基部16は周方向開放位置で停止される。これにより、回転部8の上方及び左方を大きく開放することができる。そして、刃具9が大型のものであっても容易に交換できる。また、刃具9が重くクレーン(図示せず)を用いた交換が必要となる場合であっても、第1カバー12及び第2カバー14が、玉掛け作業の邪魔になるのを抑制でき、クレーンのワイヤ等に干渉するのを抑制できる。
【0040】
図9及び
図10に示すように、刃具9を人手で交換する場合、第2カバー14を
図1及び
図2に示す状態から後方にスライドさせ、ロックピン31をピン穴32から引き抜き、接続部11を中心として第1カバー12を跳ね上げる(上方に回動させる)。このとき、第2カバー14が後方にスライドされることから、第1カバー12及び第2カバー14で構成される覆いの跳ね上げ中の最大高さH1を抑制できると共に、覆いの跳ね上げ後の高さH2を抑制できる。これにより、覆いの跳ね上げ作業に要する力を低減できる。そして、第1カバー12は簡単な操作で開放姿勢となり、回転部8の上方及び左方が開放される。これにより、回転部8から容易に刃具9を取り外せると共に、回転部8に新たな刃具9を容易に取り付けることができる。
【0041】
このように、本実施の形態におけるカバー装置2は、基部10に接続部11を介して設けられる第1カバー12と、第1カバー12に軸方向スライド機構13を介して軸方向にスライド自在に設けられる第2カバー14とを備える。そして、接続部11は、第1カバー12を回転部8の径方向外方に展開可能に支持する。このため、加工時には、刃具9の前後方向の長さや被切削加工物3の前後方向のサイズに応じて第2カバー14の前後方向の位置を調整でき、工具交換時には、第1カバー12を開放姿勢にできる。このため、カバー装置2が切削作業や工具交換作業の作業性を損なう可能性を抑制できる。
【0042】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示は以下のような他の実施形態も可能である。
【0043】
(1)基部10は、固定基部15とロータリー基部16とを備えるものとしたが、ロータリー基部16は必要に応じて省略されてもよい。この場合、第1カバー12は固定基部15に接続部11を介して設けられるとよい。
【0044】
(2)固定基部15は環状に形成され本体軸部7aに設けられるものとしたが、これに限られない。固定基部15は、回転部8を支持する本体部(本実施の形態においては可動本体部7)に設けられるものであればよく、例えばU字状等の他の形状に形成されてもよい。
【0045】
(3)第1カバー12は、回転部8及び刃具9を覆うものとしたが、これに限られない。第1カバー12は、回転部8のみを覆うものであってもよい。この場合、第2カバー14で刃具9を覆うとよい。
【0046】
(4)第1カバー12及び第2カバー14は柵状に形成されるものとしたが、これに限られない。第1カバー12及び第2カバー14に油や傷が付かない場合、第1カバー12及び第2カバー14は透明な樹脂等で形成されてもよい。また、必要に応じて第1カバー12及び第2カバー14のいずれか一方のみが柵状に形成され、他方が透明な樹脂等で形成されてもよい。
【0047】
(5)第1カバー12及び第2カバー14は、軸Cを中心とする円の周方向に延びるものとしたが、これに限られない。例えば、第1カバー12及び第2カバー14は、前面視L字状に形成されてもよい。
【0048】
(6)第2カバー14は、第1カバー12の径方向外方に配置されるものとしたが、第1カバー12の径方向内方に配置されてもよい。
【0049】
(7)接続部11は、第1カバー12を特定の姿勢で保持できるように構成されているものとしたが、これに限られない。接続部11は、第1カバー12を任意の姿勢で保持できるように構成されてもよく、ブレーキ機能を有しないヒンジで構成されてもよい。
【0050】
(8)周方向遮蔽用ストッパ23はスリット19の一端に形成され、周方向開放用ストッパ24はスリット19の他端に形成されるものとしたが、これに限られない。周方向遮蔽用ストッパ23及び周方向開放用ストッパ24は、外周部18に別途形成されてもよい。例えば、周方向遮蔽用ストッパ23及び周方向開放用ストッパ24は、外周部18の前面18aから前方に突出される突起で構成されてもよい。
【0051】
(9)回転加工機1は、横型フライス盤、横型ボール盤等の他の種類の横型の加工機で構成されてもよい。また、回転部8は、被加工物を把持するものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 回転加工機
2 カバー装置
5 加工機本体
8 回転部
10 基部
11 接続部
12 第1カバー
13 軸方向スライド機構
14 第2カバー
C 軸