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特許7167988伝送線路基板、および伝送線路基板の接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】伝送線路基板、および伝送線路基板の接合構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20221101BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20221101BHJP
   H01R 12/73 20110101ALI20221101BHJP
【FI】
H05K1/18 S
H05K1/18 J
H05K1/02 J
H05K1/02 N
H01R12/73
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020538389
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032353
(87)【国際公開番号】W WO2020040108
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2018155303
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 智浩
(72)【発明者】
【氏名】山地 和裕
(72)【発明者】
【氏名】多胡 茂
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199930(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/056496(WO,A1)
【文献】特開2018-046213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/18
H05K 1/02
H01R 12/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材に形成される第1信号線および第2信号線と、
前記絶縁性基材に形成され、前記第1信号線に接続され、容量結合により他の回路基板に接続される第1信号電極と、
前記第1主面に形成され、前記第2信号線に接続され、導電性接合材を介して前記他の回路基板に接続される第2信号電極と、
を備え、
前記第1信号線は、第1周波数帯を伝送する信号線であり、
前記第2信号線は、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を伝送する信号線である、伝送線路基板。
【請求項2】
前記第1主面に配置される複数のグランド電極を備え、
前記複数のグランド電極は、前記第1主面の平面視で、前記第1信号電極および前記第2信号電極の周囲を囲む位置に配置される、請求項1に記載の伝送線路基板。
【請求項3】
前記第1信号線は、層間接続導体を介することなく前記第1信号電極に接続される、請求項1または2に記載の伝送線路基板。
【請求項4】
前記第1信号線、前記第2信号線および前記第1信号電極は、外部に露出していない、請求項1から3のいずれかに記載の伝送線路基板。
【請求項5】
前記絶縁性基材は液晶ポリマーを主材料とし、
前記第1信号線、前記第2信号線および前記第1信号電極は、全体が前記絶縁性基材で覆われる、請求項4に記載の伝送線路基板。
【請求項6】
前記第2信号線の数は複数である、請求項1から5のいずれかに記載の伝送線路基板。
【請求項7】
伝送線路基板と回路基板とが、導電性接合材を介して接合される、伝送線路基板の接合構造であって、
前記伝送線路基板は、
第1主面を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材に形成される第1信号線および第2信号線と、
前記絶縁性基材に形成され、前記第1信号線に接続される第1信号電極と、
前記第1主面に配置され、前記第2信号線に接続される第2信号電極と、
を有し、
前記第1信号線は、第1周波数帯の信号を伝送する信号線であり、
第2信号線は、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を伝送する信号線であり、
前記第1信号電極は、容量結合により前記回路基板に接続され、
前記第2信号電極は、導電性接合材を介して前記回路基板に直接接続される、伝送線路基板の接合構造。
【請求項8】
前記伝送線路基板は、前記第1主面に配置される複数のグランド電極を備え、
前記複数のグランド電極は、前記第1主面の平面視で、前記第1信号電極および前記第2信号電極の周囲を囲む位置に配置され、且つ、導電性接合材を介して前記回路基板に直接接続される、請求項7に記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項9】
前記第1信号線は、層間接続導体を介することなく前記第1信号電極に接続される、請求項7または8に記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項10】
前記第1信号線、前記第2信号線および前記第1信号電極は、外部に露出していない、請求項7から9のいずれかに記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項11】
前記絶縁性基材は液晶ポリマーを主材料とし、
前記第1信号線、前記第2信号線および前記第1信号電極は、全体が前記絶縁性基材で覆われる、請求項10に記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項12】
前記回路基板は、前記第1信号電極に対向して容量結合する第1接続電極と、導電性接合材を介して前記第2信号電極に直接接続される第2接続電極と、をさらに備え、
前記伝送線路基板は前記回路基板に表面実装される、請求項7から11のいずれかに記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項13】
前記第1信号電極および前記第1接続電極のうち、いずれか一方の面積は、他方の面積よりも大きい、請求項12に記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項14】
前記第1信号電極と前記第1接続電極との間には、容量調整部が設けられている、請求項12または13に記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項15】
前記容量調整部は空隙である、請求項14に記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項16】
前記第2信号線の数は複数である、請求項7から15のいずれかに記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項17】
前記伝送線路基板は、前記第1主面に形成される中間グランド電極と、前記絶縁性基材に形成され、前記中間グランド電極に接続されるグランド層間接続導体と、を有し、
前記中間グランド電極は、前記第1主面の平面視で、前記第1信号電極と前記第2信号電極との間に配置され、
前記回路基板は、導電性接合材を介して前記中間グランド電極に直接接続される中間グランド接続電極を備える、請求項7から15のいずれかに記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項18】
前記回路基板は、前記第1信号電極に対向して容量結合する第1接続電極と、導電性接合材を介して前記第2信号電極に直接接続される第2接続電極と、をさらに備え、
前記回路基板は、コネクタを有し、
前記コネクタは、コネクタ第1内部端子およびコネクタ第2内部端子、シールド部材を有し、
前記コネクタ第1内部端子は一端で、前記第1接続電極に接続し、
前記コネクタ第2内部端子は一端で、前記第2接続電極に接続し、
前記シールド部材は、前記中間グランド電極に接続する、
請求項17に記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項19】
前記伝送線路基板は、
前記第1主面の平面視で、前記第1信号線の少なくとも一部及び前記第2信号線の少なくとも一部と重なるグランド導体を、
更に備える、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の伝送線路基板。
【請求項20】
前記第1信号電極と前記第1信号線とは、同じ層に設けられている一つの導体パターンであり、
前記第1信号電極は、前記他の回路基板の第1接続電極と対向することにより、容量結合により前記他の回路基板と接続される、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の伝送線路基板。
【請求項21】
前記他の回路基板は、前記第1信号電極に対向して容量結合する第1接続電極と、導電性接合材を介して前記第2信号電極に直接接続される第2接続電極と、を備え、
前記第1信号電極と前記第1接続電極との距離は、前記第2信号電極と前記第2接続電極との距離より小さい、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の伝送線路基板。
【請求項22】
前記伝送線路基板は、
前記第1主面の平面視で、前記第1信号線の少なくとも一部及び前記第2信号線の少なくとも一部と重なるグランド導体を、
更に備える、
請求項7から請求項18のいずれかに記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項23】
前記第1信号電極と前記第1信号線とは、同じ層に設けられている一つの導体パターンであり、
前記第1信号電極は、前記回路基板の第1接続電極と対向することにより、容量結合により前記回路基板と接続される、
請求項7から請求項18のいずれかに記載の伝送線路基板の接合構造。
【請求項24】
前記絶縁性基材の前記第1主面に形成された保護層をさらに備え、
前記第1信号電極は、前記絶縁性基材、前記保護層及び他の回路基板の一部分の内の少なくとも1つを介して容量結合により他の回路基板に接続される、
請求項1から請求項6、又は、請求項19から請求項21のいずれかに記載の伝送線路基板。
【請求項25】
前記絶縁性基材の前記第1主面に形成された保護層をさらに備え、
前記第1信号電極は、前記絶縁性基材、前記保護層及び回路基板の一部分の内の少なくとも1つを介して容量結合により回路基板に接続される、
請求項7から請求項18、請求項22又は請求項23のいずれかに記載の伝送線路基板の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性基材に複数の伝送線路が設けられた伝送線路基板、および上記伝送線路基板の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性基材に複数の伝送線路が設けられた伝送線路基板が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の基材層からなる絶縁性基材と、絶縁性基材に形成された複数の導体パターン(第1信号線、第2信号線、第1グランド導体、第2グランド導体、第3グランド導体および第4グランド導体)と、を備えた伝送線路基板が示されている。上記伝送線路基板では、第1信号線と、この第1信号線を積層方向に挟む第1グランド導体および第3グランド導体と、を含んだ第1伝送線路が構成されており、第2信号線と、この第2信号線を積層方向に挟む第2グランド導体および第4グランド導体と、を含んだ第2伝送線路が構成されている。上記伝送線路基板は、はんだ等の導電性接合材を介して他の回路基板に接続される。
【0004】
また、近年の電子機器の小型化・高集積化に伴い、伝送線路等を配置するための十分なスペースを電子機器の筐体内に確保することが難しくなっている。そのため、伝送線路基板は、一つのシステムだけでなく、異なるシステムで利用される複数の伝送線路を備えることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/199930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、導電性接合材を用いて伝送線路基板を回路基板に接続する場合に、導電性接合材の量にばらつきがあると接合状態が安定せず、使用周波数帯が高い第1伝送線路の接続部におけるインピーダンスに変動が生じる虞がある。このことは、伝送線路が高周波で利用される場合に特に顕著となる。
【0007】
本発明の目的は、第1周波数帯用の第1信号線と、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用の第2信号線とを備える構成において、第1信号線を含んで構成される伝送線路の接続部におけるインピーダンス不整合を抑制した伝送線路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の伝送線路基板は、
第1主面を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材に形成される第1信号線および第2信号線と、
前記絶縁性基材に形成され、前記第1信号線に接続され、容量結合により他の回路基板に接続される第1信号電極と、
前記第1主面に形成され、前記第2信号線に接続され、導電性接合材を介して前記他の回路基板に接続される第2信号電極と、
を備え、
前記第1信号線は、第1周波数帯の信号を伝送する信号線であり、
前記第2信号線は、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を伝送する信号線であることを特徴とする。
【0009】
本発明の基板接合構造は、
伝送線路基板と回路基板とが、導電性接合材を介して接合される、伝送線路基板の接合構造であって、
前記伝送線路基板は、
第1主面を有する絶縁性基材と、
前記絶縁性基材に形成される第1信号線および第2信号線と、
前記絶縁性基材に形成され、前記第1信号線に接続される第1信号電極と、
前記第1主面に配置され、前記第2信号線に接続される第2信号電極と、
を有し、
前記第1信号線は、第1周波数帯の信号を伝送する信号線であり、
第2信号線は、前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯の信号を伝送する信号線であり、
前記第1信号電極は、容量結合により前記回路基板に接続され、
前記第2信号電極は、導電性接合材を介して前記回路基板に直接接続されることを特徴とする。
【0010】
導電性接合材を介して伝送線路基板を回路基板に接続する場合、導電性接合材の量にばらつきがあると接合状態が安定せず、伝送線路の接続部でインピーダンス不整合が生じる虞がある。この構成によれば、導電性接合材の量による接合状態のばらつきの影響を受けることなく、第1伝送線路を他の回路基板に接続できるため、第1伝送線路の接続部におけるインピーダンス不整合を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1周波数帯用の第1信号線と、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用の第2信号線とを備える構成において、第1信号線を含んで構成される伝送線路の接続部におけるインピーダンス不整合を抑制した伝送線路基板を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブル301の外観斜視図であり、図1(B)はコネクタ付きケーブル301のコネクタ51,52を外した状態を示す外観斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る伝送線路基板101の平面図である。
図3図3は、伝送線路基板101の分解平面図である。
図4図4は、図1(A)におけるA-A断面図である。
図5図5は、第1の実施形態の変形例であるコネクタ付きケーブル301Aの第1接続部CN1の断面図である。
図6図6(A)は第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブル302の外観斜視図であり、図6(B)はコネクタ付きケーブル302のコネクタ51,52を外した状態を示す外観斜視図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る伝送線路基板102の分解平面図である。
図8図8は、図6(A)におけるB-B断面図である。
図9図9(A)は第3の実施形態に係るコネクタ付きケーブル303の外観斜視図であり、図9(B)はコネクタ付きケーブル303のコネクタ51A,52Aを外した状態を示す外観斜視図である。
図10図10は、第3の実施形態に係る伝送線路基板103の分解平面図である。
図11図11(A)は図9(A)におけるC-C断面図であり、図11(B)はコネクタ51Aを外した状態での図9(A)におけるC-C断面図である。
図12図12(A)は第4の実施形態に係るコネクタ付きケーブル304の外観斜視図であり、図12(B)はコネクタ付きケーブル304のコネクタ51B,52Bを外した状態を示す外観斜視図である。
図13図13は、第4の実施形態に係る伝送線路基板104の分解平面図である。
図14図14は、図12(A)におけるD-D断面図である。
図15図15は、第5の実施形態に係るコネクタ付きケーブル305の断面図である。
図16図16(A)は第6の実施形態に係る電子機器401の主要部を示す平面図であり、図16(B)は図16(A)におけるE-E断面図である。
図17図17(A)は第7の実施形態に係るコネクタ付きケーブル307の外観斜視図であり、図17(B)は第7の実施形態に係る伝送線路基板107の平面図である。
図18図18は、伝送線路基板107の分解平面図である。
図19図19は、図17(A)におけるF-F断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用・効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0014】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブル301の外観斜視図であり、図1(B)はコネクタ付きケーブル301のコネクタ51,52を外した状態を示す外観斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る伝送線路基板101の平面図である。図3は、伝送線路基板101の分解平面図である。図4は、図1(A)におけるA-A断面図である。なお、図3では、構造を分かりやすくするため、第1信号線31および第2信号線32をハッチングで示している。
【0015】
コネクタ付きケーブル301は、伝送線路基板101およびコネクタ51,52を備える。本実施形態に係る伝送線路基板101は、例えば、使用周波数帯の異なる複数のシステムに用いられ、複数の回路基板同士を接続するケーブルである。なお、本発明の伝送線路基板は、単一の回路基板上に実装される電子部品であってもよい(「第6の実施形態」参照)。
【0016】
図示省略するが、コネクタ51は他の回路基板(第1回路基板)に設けられたレセプタクルに接続され、コネクタ52は他の回路基板(第2回路基板)に設けられたレセプタクルに接続される。本実施形態では、コネクタ51を第1回路基板の一部とし、コネクタ52を第2回路基板の一部とする。すなわち、図1(A)および図1(B)は、伝送線路基板101と他の回路基板との接合構造を示す図である。
【0017】
伝送線路基板101は、第1接続部CN1、第2接続部CN2および線路部TLを有する。第1接続部CN1および第2接続部CN2は、他の回路基板に接続される部分である。線路部TLには、後に詳述するように、第1接続部CN1と第2接続部CN2との間を繋ぐストリップライン構造の複数の伝送線路が構成されている。図1(A)および図1(B)に示すように、第1接続部CN1および第2接続部CN2の幅(Y軸方向の幅)は、線路部TLの幅よりも広い。
【0018】
伝送線路基板101は、素体1、第1信号電極P11,P12、第2信号電極P21,P22、複数のグランド電極PG1,PG2、第1信号線31、第2信号線32、グランド導体41,42,43、層間接続導体V21,V22および複数のグランド層間接続導体V41,V42等を備える。
【0019】
素体1は、長手方向がX軸方向に一致する略直方体であり、互いに対向する第1面S1および第2面S2を有する。素体1は、絶縁性基材10および保護層20の積層体である。
【0020】
絶縁性基材10は、長手方向がX軸方向に一致する略矩形の平板であり、互いに対向する第1主面VS1および第2主面VS2を有する。絶縁性基材10は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を主材料とする平板である。本実施形態では、絶縁性基材10の第2主面VS2は、素体1の第2面S2に一致している。
【0021】
第2信号電極P21,P22および複数のグランド電極PG1,PG2は、絶縁性基材10の第1主面VS1に形成されている。第1信号電極P11,P12、第1信号線31、第2信号線32、グランド導体41,42,43、層間接続導体V21,V22および複数のグランド層間接続導体V41,V42は、絶縁性基材10の内部に形成されている。
【0022】
絶縁性基材10は、後に詳述するように、熱可塑性樹脂を主材料とする複数の基材層11,12,13をこの順に積層し、積層した複数の基材層11,12,13を加熱プレス(一括プレス)することによって形成される。複数の基材層11,12,13は、長手方向がX軸方向に一致する略矩形の平板である。複数の基材層11,12,13は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を主材料とするシートである。
【0023】
基材層11の表面には、グランド導体41が形成されている。グランド導体41は、基材層11の表面の略全面に形成される導体パターンである。グランド導体41は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0024】
基材層12の表面には、第1信号線31、第2信号線32、第1信号電極P11,P12およびグランド導体42が形成されている。第1信号線31、第2信号線32、第1信号電極P11,P12およびグランド導体42は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0025】
第1信号線31および第2信号線32は、X軸方向に延伸する線状の導体パターンであり、互いに並走している。第1信号線31は、第1周波数帯の信号を伝送する信号線であり、第1周波数帯で利用される第1伝送線路(後に詳述する)の少なくとも一部を構成している。第2信号線32は、第1周波数帯よりも低い第2周波数の信号を伝送する信号線であり、第2周波数帯で利用される第2伝送線路(後に詳述する)の少なくとも一部を構成している。第1周波数帯は10GHz以上の周波数帯(SHF帯またはEHF帯)であり、第2周波数帯は10GHz未満の周波数帯である。第1信号線31(第1伝送線路)は、例えば28GHz帯を利用した5G(第5世代移動通信システム)に用いられる。第2信号線32(第2伝送線路)は、例えば5.8GHz帯を利用したWi-Fi(登録商標)通信に用いられる。
【0026】
第1信号電極P11は、基材層12の第1端(図3における基材層12の左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。第1信号電極P12は、基材層12の第2端(図3における基材層12の右端)付近に配置される導体パターンである。第1信号電極P11は、第1信号線31の一端(図3における第1信号線31の左端)に接続されており、第1信号電極P12は、第1信号線31の他端(図3における第1信号線31の右端)に接続されている。グランド導体42は、基材層12の外周に沿って形成される環状の導体パターンである。
【0027】
また、基材層12には、複数のグランド層間接続導体V41が形成されている。グランド導体42は、複数のグランド層間接続導体V41を介してグランド導体41に接続されている。グランド層間接続導体V41は、例えば、基材層12に形成した貫通孔に導電性ペーストを充填し、加熱プレス処理により導電性ペーストを固化させることにより設けられるビア導体である。
【0028】
基材層13の表面には、第2信号電極P21,P22およびグランド導体43が形成されている。第2信号電極P21は、基材層13の第1端(図3における基材層13の左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。第2信号電極P22は、基材層13の第2端(図3における基材層13の右端)付近に配置される矩形の導体パターンである。グランド導体43は、基材層13の略全面に形成される導体パターンである。第2信号電極P21,P22およびグランド導体43は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0029】
また、基材層13には、層間接続導体V21,V22および複数のグランド層間接続導体V42が形成されている。第2信号電極P21は、層間接続導体V21を介して、第2信号線32の一端(図3における第2信号線32の左端)に接続されている。第2信号電極P22は、層間接続導体V22を介して、第2信号線32の他端(図3における第2信号線32の右端)に接続されている。グランド導体43は、複数のグランド層間接続導体V42を介して、グランド導体42に接続されている。層間接続導体V21,V22およびグランド層間接続導体V42は、例えば、基材層12に形成した貫通孔に導電性ペーストを充填し、加熱プレス処理により導電性ペーストを固化させることにより設けられるビア導体である。
【0030】
保護層20は、基材層13の表面(絶縁性基材10の第1主面VS1)に積層される保護膜であり、平面形状が基材層13と略同じである。保護層20は、開口H21,H22,HG1,HG2を有する。開口H21は第2信号電極P21の位置に応じた位置に形成されており、開口H22は第2信号電極P22の位置に応じた位置に形成されている。そのため、基材層13の表面に保護層20が形成された場合に、上記開口から第2信号電極P21,P22が外部に露出する。また、複数の開口HG1は保護層20の第1端(図3における保護層20の左端)付近に形成されており、複数の開口HG2は保護層20の第2端(図3における保護層20の右端)付近に形成されている。そのため、基材層13の表面に保護層20が形成された場合に、上記開口HG1,HG2からグランド導体43の一部が外部に露出する。本実施形態では、開口HG1,HG2から露出するグランド導体43の一部が、本発明の「グランド電極(PG1,PG2)」に相当する。保護層20は、例えばカバーレイフィルムやソルダーレジスト膜、エポキシ樹脂膜等である。
【0031】
コネクタ51は、第1接続部CN1の第1面S1に実装される。図1(B)等に示すように、コネクタ51の実装面(下面)には、第1接続電極C11、第2接続電極C21および複数のグランド接続電極CG1が形成されている(露出している)。図4等に示すように、コネクタ51の第1接続電極C11は、第1信号電極P11に対向して配置され、第1信号電極P11と容量結合される。コネクタ51の第2接続電極C21は、導電性接合材5を介して第2信号電極P21に接続される。また、コネクタ51のグランド接続電極CG1は、導電性接合材を介してグランド電極PG1に接続される。このようにして、第1信号電極P11は、容量結合によりコネクタ51(第2回路基板)に接続される。また、第2信号電極P21は、導電性接合材5を介してコネクタ51(第2回路基板)に接続される。コネクタ51は、例えば多極コネクタ(複数の内部端子を有するコネクタ)である。
【0032】
コネクタ52は、第2接続部CN2の第1面S1に実装される。図1(B)に示すように、コネクタ52の実装面(下面)には、第1接続電極C12、第2接続電極C22および複数のグランド接続電極CG2が形成されている(露出している)。コネクタ52の第1接続電極C12は、第1信号電極P12に対向して配置され、第1信号電極P12と容量結合される。コネクタ52の第2接続電極C22は、導電性接合材を介して第2信号電極P22に接続される。また、コネクタ52のグランド接続電極CG2は、導電性接合材を介してグランド電極PG2に接続される。このようにして、第1信号電極P12は、容量結合によりコネクタ52(第2回路基板)に接続される。また、第2信号電極P22は、導電性接合材を介してコネクタ52(第2回路基板)に接続される。コネクタ52は、例えば多極コネクタである。
【0033】
本実施形態では、第1信号線31、グランド導体41,43、第1信号線31およびグランド導体41で挟まれる基材層12、第1信号線31およびグランド導体43で挟まれる基材層13、を含んだストリップライン構造の第1伝送線路が構成されている。また、本実施形態では、第2信号線32、グランド導体41,43、第2信号線32およびグランド導体41で挟まれる基材層12、第2信号線32およびグランド導体43で挟まれる基材層13、を含んだストリップライン構造の第2伝送線路が構成されている。
【0034】
なお、本実施形態では、第1周波数帯で利用される第1信号線31が、層間接続導体を介することなく、第1信号電極P11,P12に接続されている。
【0035】
図4等に示すように、第1接続電極C11の面積は、第1接続電極C11に対向する第1信号電極P11の面積よりも大きい。また、図示省略するが、第1接続電極C12の面積は、第1接続電極C12に対向する第1信号電極P12の面積よりも大きい。
【0036】
図2に示すように、複数のグランド電極PG1は、第1主面VS1の平面視で(Z軸方向から視て)、第1信号電極P11および第2信号電極P21の周囲を囲む位置に配置されている。また、複数のグランド電極PG2は、第1主面VS1の平面視で、第1信号電極P12および第2信号電極P22の周囲を囲む位置に配置されている。
【0037】
また、図1(B)および図3等に示すように、第1信号線31、第2信号線32および第1信号電極P11,P12は、外部に露出していない。具体的には、第1信号線31、第2信号線32および第1信号電極P11,P12は、全体が絶縁性基材10で覆われている。
【0038】
本実施形態に係るコネクタ付きケーブル301(伝送線路基板101)によれば、次のような効果を奏する。
【0039】
(a)本実施形態では、第1信号線31に接続された第1信号電極P11,P12が、導電性接合材を用いることなく、容量結合により他の回路基板に接続される。この構成によれば、導電性接合材の量による接合状態のばらつきの影響を受けることなく、第1伝送線路を他の回路基板に接続できるため、第1伝送線路の接続部におけるインピーダンス不整合を抑制できる。
【0040】
また、本実施形態では、第2信号線32が接続された第2信号電極P21,P22が、容量結合ではなく、導電性接合材を介して他の回路基板に接続される。この構成によれば、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯では、容量成分が特性インピーダンスに顕著に影響を及ぼすため、容量結合していない第2伝送線路の接続部でのインピーダンス不整合は抑制される。また、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用の第2伝送線路では、第1伝送線路に比べて、特性インピーダンスに対するインダクタンス成分の影響が小さいため、導電性接合材の量のばらつきによる特性インピーダンスに対する影響は少ない。
【0041】
(b)層間接続導体は貫通孔に導体を充填して形成されるため、貫通孔に充填する導体の量を少なくするために内径の細い孔に形成される場合がある。また、層間接続導体は、貫通孔の壁面のみにめっき膜を成膜して形成するものや、本実施形態のように導体に低温で固化しやすい材料(導電性ペースト)を用いて形成されるものがあり、平面導体と比較して抵抗値が高くなりやすい。そのため、第1信号線31と第1信号電極P11とが、複数の層間接続導体を介して接続されている場合には、導体損失が大きくなってしまう虞がある。一方、本実施形態では、第2周波数帯よりも高い第1周波数帯で利用される第1信号線31が、層間接続導体を介することなく第1信号電極P11,P12に接続されている。この構成によれば、導体損失を低減しつつ、第1信号線31を他の回路基板に接続できる。
【0042】
(c)また、本実施形態では、第1接続電極C11の面積が、第1接続電極C11に容量結合する第1信号電極P11の面積よりも大きい。この構成によれば、第1信号電極P11に対向する第1接続電極C11の位置関係(素体1に対するコネクタ51の実装位置)にばらつきがあったとしても、第1信号電極P11と第1接続電極C11との間に発生する容量の変動が抑制される。同様に、第1接続電極C11の面積が第1信号電極P11の面積よりも小さい場合でも、位置ずれ(第1接続電極と第1信号電極との位置関係のばらつき)による上記容量の変動を抑制できる。このことは、第1信号電極P12と第1接続電極C12との関係についても同様である。
【0043】
(d)本実施形態のように、積層した複数の基材層11,12,13を加熱プレス(一括プレス)して絶縁性基材10を形成する場合、絶縁性基材10を一定の厚みに形成することが難しく、絶縁性基材10の厚みにばらつきが生じることがある。そして、第1信号電極P11と第1接続電極C11と間に存在する絶縁性基材10の厚みにばらつきがあると、第1信号電極P11と第1接続電極C11との間の容量にばらつきが生じる虞がある。一方、本実施形態では、絶縁性基材10の第1主面VS1に形成された保護層20を間に挟んで、第1信号電極P11と第1接続電極C11とが容量結合している。これにより、第1信号電極P11と第1接続電極C11との間の容量に多少のばらつきがあっても、絶縁性基材10の第1主面VS1に形成される保護層20の厚みや材質によって、上記容量を所定の値に調整できる。このことは、第1信号電極P12と第1接続電極C12との関係についても同様である。
【0044】
(e)本実施形態では、複数のグランド電極PG1が、第1主面VS1の平面視で(Z軸方向から視て)、第1信号電極P11および第2信号電極P21の周囲を囲む位置に配置されている。この構成によれば、コネクタ51を伝送線路基板101(素体1)に高い位置精度で実装できる。具体的には、リフロープロセス時に生じる複数のグランド電極PG1および第2信号電極P21でのセルフアライメント作用によって、コネクタ51の実装位置が補正される。これにより、位置ずれに伴う第1信号電極P11と第1接続電極C11との間の容量の変化は抑制され、第2信号電極P21と第2接続電極C21との間の接合不良が抑制される。
【0045】
また、この構成によれば、複数のグランド電極PG1が第1信号電極P11および第2信号電極P21の周囲を囲んでいるため、容量結合による第1信号電極P11と第1接続電極C11との接続箇所や、導電性接合材5を介した第2信号電極P21と第2接続電極C21との接続箇所からの不要輻射を抑制できる。また、この構成によれば、素体1が曲がった場合等の曲げ応力による第2信号電極P21と第2接続電極C21との接合箇所の破損が抑制される。
【0046】
(f)本実施形態では、複数のグランド電極PG2が、Z軸方向から視て、第1信号電極P12および第2信号電極P22の周囲を囲む位置に配置されている。この構成によれば、コネクタ52を伝送線路基板101(素体1)に高い位置精度で実装できる。具体的には、リフロープロセス時に生じる複数のグランド電極PG2および第2信号電極P22でのセルフアライメント作用によって、コネクタ52の実装位置が補正される。これにより、第1信号電極P12と第1接続電極C12との間の容量変化は抑制され、第2信号電極P22と第2接続電極C22との間の接合不良を抑制できる。
【0047】
また、この構成によれば、複数のグランド電極PG2が第1信号電極P12および第2信号電極P22の周囲を囲んでいるため、容量結合による第1信号電極P12と第1接続電極C12との接続箇所や、導電性接合材を介した第2信号電極P22と第2接続電極C22との接続箇所からの不要輻射を抑制できる。また、この構成によれば、素体1が曲がった場合等の曲げ応力による第2信号電極P22と第2接続電極C22との接合箇所の破損が抑制される。
【0048】
(g)本実施形態では、第1信号線31、第2信号線32および第1信号電極P11,P12が外部に露出していない。この構成によれば、外部からの水分による信号導体の腐食等の発生が抑制される。そのため、信号導体の腐食等に起因する伝送線路基板の特性変化を抑制できる。
【0049】
なお、本実施形態では、第1信号線31、第2信号線32および第1信号電極P11,P12全体が、液晶ポリマーを主材料とする絶縁性基材10に覆われている。液晶ポリマーは、他の樹脂材料に比べて吸水性が少ない。そのため、上記構成により、外部からの水分による上記信号導体の腐食等がさらに抑制される。また、液晶ポリマーは、他の樹脂材料に比べて、高周波特性に優れる(誘電体損失が少ない)。そのため、上記構成により、伝送損失の少ない伝送線路基板を実現できる。
【0050】
本実施形態に係る伝送線路基板101は、例えば次の工程で製造される。
【0051】
まず、複数の基材層11,12,13を準備する。基材層11,12,13は、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の熱可塑性樹脂を主材料とするシートである。
【0052】
その後、複数の基材層11,12,13に、第1信号線31、第2信号線32、グランド導体41,42,43、第1信号電極P11,P12、第2信号電極P21,P22を形成する。具体的には、基材層11,12,13の表面に、金属箔(例えばCu箔)をラミネートし、その金属箔をフォトリソグラフィでパターニングする。これにより、基材層11の表面にグランド導体41を形成し、基材層12の表面に第1信号線31、第2信号線32、グランド導体42および第1信号電極P11,P12を形成し、基材層13の表面に第2信号電極P21,P22およびグランド導体43を形成する。
【0053】
また、基材層12には、複数のグランド層間接続導体V41が形成され、基材層13には層間接続導体V21,V22および複数のグランド層間接続導体V42が形成される。これら層間接続導体は、複数の基材層12,13の少なくとも一つに孔(貫通孔)を設けた後、その孔にCu,Snもしくはそれらの合金等の金属粉と樹脂材料とを含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱プレスによって導電性ペーストを固化させることにより設けられる。
【0054】
次に、複数の基材層11,12,13を積層し、積層した複数の基材層11,12,13を加熱プレスすることにより、絶縁性基材10を形成する。
【0055】
次に、絶縁性基材10の第1主面VS1に保護層20を形成して、素体1を得る。その後、素体1の第1面S1にコネクタ51,52を実装して伝送線路基板101を得る。
【0056】
上記製造方法によれば、熱可塑性樹脂を主材料とする複数の基材層11,12,13を積層して加熱プレス(一括プレス)することによって、絶縁性基材10を容易に形成できるため、製造工程が削減され、コストを低く抑えることができる。
【0057】
また、上記製造方法によれば、基材層に設けた孔に導電性ペーストを配設し、加熱プレス(一括プレス)によって導電性ペーストを固化させることができるため、層間接続導体を形成する工程が削減できる。
【0058】
なお、本実施形態では、第1信号線31および第2信号線32が同層(いずれも基材層12の表面)に形成された例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1信号線および第2信号線はそれぞれ異なる層に形成されていてもよい。図5は、第1の実施形態の変形例であるコネクタ付きケーブル301Aの第1接続部CN1の断面図である。
【0059】
コネクタ付きケーブル301Aは、伝送線路基板101Aを備える点で、図4に示すコネクタ付きケーブル301と異なる。コネクタ付きケーブル301Aの他の構成については、コネクタ付きケーブル301と同じである。伝送線路基板101Aは、第1信号線31(第1信号電極P11)が、基材層13の表面に形成されている点で、上述した伝送線路基板101と異なる。なお、第2接続部CN2でも、第1信号電極P12が基材層13の表面に形成されている。伝送線路基板101Aの他の構成については、伝送線路基板101と同じである。
【0060】
伝送線路基板101Aのように、線路部TLに位置する第1信号線31および第2信号線32の線幅を太くする等の目的に応じて、第1信号線31と第2信号線32とを異なる層(Z軸方向の異なる位置)に形成してもよい。なお、第1信号線31と第2信号線32とを異なる層に形成する場合には、第2信号線32よりも第1信号線31を、コネクタ51に近接する位置に配置することが好ましい。第1信号線31をコネクタ51(第1主面VS1)に近接する位置に配置することにより、層間接続導体を用いることなく第1信号電極P11をコネクタ51の第1接続電極C11に近接させることができる。そのため、寄生インダクタンスを増加させることなく、(対向する電極の面積を調整する等によって)第1信号電極P11と第1接続電極C11との間に所定の容量を形成しやすくなり、広い周波数帯域においてインピーダンスの整合が可能な伝送線路基板を実現できる。
【0061】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1信号電極と第1接続電極との間に、空隙が設けられたコネクタ付きケーブルを示す。
【0062】
図6(A)は第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブル302の外観斜視図であり、図6(B)はコネクタ付きケーブル302のコネクタ51,52を外した状態を示す外観斜視図である。図7は、第2の実施形態に係る伝送線路基板102の分解平面図である。図8は、図6(A)におけるB-B断面図である。なお、図7では、構造を分かりやすくするため、第1信号線31および第2信号線32をハッチングで示している。
【0063】
コネクタ付きケーブル302は、伝送線路基板102を備える点で、第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブル301と異なる。伝送線路基板102は、保護層20Aを備える点で、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる。保護層20Aは、開口H11,H12が形成されている点で、第1の実施形態に係る保護層20と異なる。伝送線路基板102の他の構成については、伝送線路基板101と実質的に同じである。
【0064】
以下、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる部分について説明する。
【0065】
保護層20Aが有する開口H11は、第1主面VS1を平面視で(Z軸方向から視て)、第1信号電極P11の位置に応じた位置に形成されている。開口H12は、Z軸方向から視て、第1信号電極P12の位置に応じた位置に形成されている。そのため、基材層13の表面(絶縁性基材10の第1主面VS1)に保護層20Aが形成されることで、素体1Aの第1面S1に凹部が形成される。
【0066】
図8に示すように、第1信号電極P11と第1接続電極C11との間には、空隙(開口H11による凹部)が設けられている。図示省略するが、第1信号電極P12と第1接続電極C12との間にも空隙(開口H12による凹部)が設けられている。本実施形態では、この空隙が本発明における「容量調整部」に相当する。
【0067】
この構成によれば、保護層20Aの厚みや材質だけでなく、開口H11,H12の形状によって、第1信号電極と第1接続電極との間の容量を調整できる。特に、フォトリソグラフィによってパターニングされる保護層20A(レジスト膜)はパターニングの精度が高く、第1信号電極と第1接続電極との間の容量の調整をしやすい。
【0068】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第1接続電極が外部に露出していないコネクタを備えるコネクタ付きケーブルの例を示す。
【0069】
図9(A)は第3の実施形態に係るコネクタ付きケーブル303の外観斜視図であり、図9(B)はコネクタ付きケーブル303のコネクタ51A,52Aを外した状態を示す外観斜視図である。図10は、第3の実施形態に係る伝送線路基板103の分解平面図である。図11(A)は図9(A)におけるC-C断面図であり、図11(B)はコネクタ51Aを外した状態での図9(A)におけるC-C断面図である。なお、図10では、構造を分かりやすくするため、第1信号線31および第2信号線32をハッチングで示している。
【0070】
コネクタ付きケーブル303は、伝送線路基板103およびコネクタ51A,52Aを備える。
【0071】
伝送線路基板103は、素体1B、第1信号電極P11,P12、第2信号電極P21,P22、複数のグランド電極PG1,PG2、第1信号線31、第2信号線32、グランド導体41,42、層間接続導体V11,V12,V21,V22、複数のグランド層間接続導体V41,V42等を備える。伝送線路基板103は、基材層13の表面の略全面に形成されるグランド導体を備えていない点で、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる。また、伝送線路基板103は、保護層を備えていない点で、伝送線路基板101と異なる。伝送線路基板103の他の構成については、伝送線路基板101と実質的に同じである。
【0072】
以下、第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブル301と異なる部分について説明する。
【0073】
本実施形態では、素体1Bが絶縁性基材10Bに一致する。そのため、絶縁性基材10Bの第1主面VS1が素体1Bの第1面S1に一致し、絶縁性基材10Bの第2主面VS2が素体1Bの第2面S2に一致している。
【0074】
第1信号電極P11,P12、第2信号電極P21,P22および複数のグランド電極PG1,PG2は、絶縁性基材10Bの第1主面VS1に形成されている。第1信号線31、第2信号線32、グランド導体41,42、層間接続導体V11,V12,V21,V22および複数のグランド層間接続導体V41,V42は、絶縁性基材10Bの内部に形成されている。
【0075】
絶縁性基材10Bは、複数の基材層11,12,13をこの順に積層して形成される。複数の基材層11,12,13は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
【0076】
基材層11の表面には、グランド導体41が形成されている。グランド導体41は、第1の実施形態で説明したものと同じである。
【0077】
基材層12の表面には、第1信号線31、第2信号線32およびグランド導体42が形成されている。第1信号線31、第2信号線32およびグランド導体42は、第1の実施形態で説明したものと基本的に同じものである。
【0078】
また、基材層12には、複数のグランド層間接続導体V41が形成されている。グランド導体42は、複数のグランド層間接続導体V41を介して、グランド導体41に接続されている。
【0079】
基材層13の表面には、第1信号電極P11,P12、第2信号電極P21,P22および複数のグランド電極PG1,PG2が形成されている。第1信号電極P11、第2信号電極P21および複数のグランド電極PG1は、基材層13の第1端(図10における基材層13の左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。第1信号電極P12、第2信号電極P22および複数のグランド電極PG2は、基材層13の第2端(図10における基材層13の右端)付近に配置される矩形の導体パターンである。
【0080】
また、基材層13には、層間接続導体V11,V12,V21,V22および複数のグランド層間接続導体V42が形成されている。第1信号電極P11は、層間接続導体V11を介して第1信号線31の一端(図10における第1信号線31の左端)に接続され、第1信号電極P12は、層間接続導体V12を介して第1信号線31の他端(図10における第1信号線31の右端)に接続されている。第2信号電極P21は、層間接続導体V21を介して第2信号線32の一端(図10における第2信号線32の左端)に接続され、第2信号電極P22は、層間接続導体V22を介して第2信号線32の他端(図10における第2信号線32の右端)に接続されている。グランド電極PG1は、グランド層間接続導体V42を介して、グランド導体42に接続されている。グランド電極PG2は、グランド層間接続導体V42を介して、グランド導体42に接続されている。
【0081】
図10に示すように、複数のグランド電極PG1は、第1主面を平面視で(Z軸方向から視て)、第1信号電極P11および第2信号電極P21の周囲を囲む位置に配置されている。複数のグランド電極PG2は、Z軸方向から視て、第1信号電極P12および第2信号電極P22の周囲を囲む位置に配置されている。
【0082】
本実施形態では、第1信号線31、グランド導体41、第1信号線31およびグランド導体41で挟まれる基材層12、を含んだマイクロストリップライン構造の第1伝送線路が構成されている。また、本実施形態では、第2信号線32、グランド導体41、第2信号線32およびグランド導体41で挟まれる基材層12、を含んだマイクロストリップライン構造の第2伝送線路が構成されている。
【0083】
コネクタ51Aは、第1接続電極C11、第2接続電極C21および複数のグランド接続電極CG1を有する。第1接続電極C11および第2接続電極C21は、コネクタ51A本体に埋設されている。第1接続電極C11は外部に露出していない。第2接続電極C21および複数のグランド接続電極CG1は、コネクタ51Aの実装面(下面)に形成されている(露出している)。具体的には、コネクタ51Aの実装面には、第2接続電極C21の位置に応じた位置に開口HC21が形成されており、この開口HC21によって第2接続電極C21が外部に露出する。
【0084】
コネクタ51Aの第1接続電極C11は、第1信号電極P11に対向して配置され、第1信号電極P11と容量結合される。コネクタ51Aの第2接続電極C21は、導電性接合材5を介して第2信号電極P21に接続される。また、コネクタ51Aのグランド接続電極CG1は、導電性接合材を介してグランド電極PG1に接続される。このようにして、第1信号電極P11は、容量結合によりコネクタ51A(第1回路基板)に接続される。また、第2信号電極P21は、導電性接合材5を介してコネクタ51A(第1回路基板)に接続される。
【0085】
コネクタ52Aは、第1接続電極C12、第2接続電極C22および複数のグランド接続電極CG2を有する。第1接続電極C12および第2接続電極C22は、コネクタ52A本体に埋設されている。第1接続電極C12は外部に露出していない。第2接続電極C22および複数のグランド接続電極CG2は、コネクタ52Aの実装面(下面)に形成されている(露出している)。具体的には、コネクタ52Aの実装面には、第2接続電極C22の位置に応じた位置に開口HC22が形成されており、この開口HC22によって第2接続電極C22が外部に露出する。
【0086】
コネクタ52Aの第1接続電極C12は、第1信号電極P12に対向して配置され、第1信号電極P12と容量結合される。コネクタ52Aの第2接続電極C22は、導電性接合材を介して第2信号電極P22に接続される。また、コネクタ52Aのグランド接続電極CG2は、導電性接合材を介してグランド電極PG2に接続される。このようにして、第1信号電極P12は、容量結合によりコネクタ52A(第2回路基板)に接続される。また、第2信号電極P22は、導電性接合材を介してコネクタ52A(第2回路基板)に接続される。
【0087】
このように、第1接続電極C11,C12が、コネクタの実装面に形成されていない構成であってもよい。
【0088】
なお、本実施形態では、保護層を備えていない伝送線路基板を示したが、他の実施形態に係る伝送線路基板と同様に、保護層を備えていてもよい。
【0089】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、絶縁性基材が単層である例を示す。
【0090】
図12(A)は第4の実施形態に係るコネクタ付きケーブル304の外観斜視図であり、図12(B)はコネクタ付きケーブル304のコネクタ51B,52Bを外した状態を示す外観斜視図である。図13は、第4の実施形態に係る伝送線路基板104の分解平面図である。図14は、図12(A)におけるD-D断面図である。なお、図13では、構造を分かりやすくするため、第1信号線31および第2信号線32をハッチングで示している。
【0091】
コネクタ付きケーブル304は、伝送線路基板104およびコネクタ51B,52Bを備える。伝送線路基板104は、絶縁性基材10Cが単層である点で、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる。伝送線路基板104の他の構成については、伝送線路基板101と実質的に同じである。
【0092】
以下、第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブル301と異なる部分について説明する。
【0093】
伝送線路基板104が備える素体1Cは、絶縁性基材10Cおよび保護層20の積層体である。本実施形態では、絶縁性基材10Cの第2主面VS2が、素体1Cの第2面S2に一致している。
【0094】
第1信号電極P11,P12、第2信号電極P21,P22、第1信号線31、第2信号線32および複数のグランド電極PG1,PG2は、絶縁性基材10Cの第1主面VS1に形成されている。第1信号電極P11は、第1信号線31の一端(図13における第1信号線31の左端)に接続されており、第1信号電極P12は、第1信号線31の他端(図13における第1信号線31の右端)に接続されている。第2信号電極P21は、第2信号線32の一端(図13における第2信号線32の左端)に接続されており、第2信号線32の他端(図13における第2信号線32の右端)に接続されている。グランド導体42は、絶縁性基材10Cの外周に沿って形成される環状の導体パターンである。
【0095】
保護層20は、絶縁性基材10Cの第1主面VS1に積層される保護膜であり、平面形状が絶縁性基材10Cと略同じである。保護層20は、開口H21,H22,HG1,HG2を有する。開口H21は第2信号電極P21の位置に応じた位置に形成されており、開口H22は、第2信号電極P22の位置に応じた位置に形成されている。そのため、絶縁性基材10Cの第1主面VS1に保護層20が形成された場合に、上記開口から第2信号電極P21,P22が外部に露出する。また、複数の開口HG1は保護層20の第1端(図13における保護層20の左端)付近に形成されており、複数の開口HG2は保護層20の第2端(図13における保護層20の右端)付近に形成されている。そのため、絶縁性基材10Cの第1主面VS1に保護層20が形成された場合に、上記開口HG1,HG2からグランド導体42の一部が外部に露出する。本実施形態では、開口HG1,HG2から露出するグランド導体42の一部が、本発明の「グランド電極(PG1,PG2)」に相当する。
【0096】
コネクタ51Bは、第1接続電極C11、第2接続電極C21および複数のグランド接続電極CG1を有する。第1接続電極C11および第2接続電極C21は、コネクタ51B本体に埋設されている。第1接続電極C11、第2接続電極C21および複数のグランド接続電極CG1は、コネクタ51Bの実装面(下面)に形成されている(露出している)。具体的には、コネクタ51Bの実装面には、第1接続電極C11の位置に応じた位置に開口HC11が形成されており、この開口HC11によって第1接続電極C11が外部に露出する。また、コネクタ51Bの実装面には、第2接続電極C21の位置に応じた位置に開口HC21が形成されており、この開口HC21によって第2接続電極C21が外部に露出する。
【0097】
コネクタ52Bは、第1接続電極C12、第2接続電極C22および複数のグランド接続電極CG2を有する。第1接続電極C12および第2接続電極C22は、コネクタ52B本体に埋設されている。第1接続電極C12、第2接続電極C22および複数のグランド接続電極CG2は、コネクタ52Bの実装面(下面)に形成されている(露出している)。具体的には、コネクタ52Bの実装面には、第1接続電極C12の位置に応じた位置に開口HC12が形成されており、この開口HC12によって第1接続電極C12が外部に露出する。また、コネクタ52Bの実装面には、第2接続電極C22の位置に応じた位置に開口HC22が形成されており、この開口HC22によって第2接続電極C22が外部に露出する。
【0098】
図14に示すように、第1信号電極P11と第1接続電極C11との間には、空隙(開口HC11による凹部)が設けられている。図示省略するが、第1信号電極P12と第1接続電極C12との間にも、空隙(開口HC12による凹部)が設けられている。本実施形態では、これら空隙が本発明における「容量調整部」に相当する。
【0099】
このように、コネクタの実装面に設けられた開口の形状等によって、第1信号電極と第1接続電極との間の容量を調整できる。
【0100】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、コネクタの構造が異なるコネクタ付きケーブルの例を示す。
【0101】
図15は、第5の実施形態に係るコネクタ付きケーブル305の断面図である。より具体的には、図15は、コネクタ付きケーブル305のうち、コネクタが実装された状態での、伝送線路基板102の第1接続部CN1における断面図である。
【0102】
コネクタ付きケーブル305は、コネクタ51Cを備える点で、第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブル302と異なる。コネクタ付きケーブル305の他の構成については、コネクタ付きケーブル302と同じである。
【0103】
以下、第2の実施形態に係るコネクタ付きケーブル302と異なる部分について説明する。
【0104】
コネクタ51Cは、第1接続電極C11および第2接続電極C21等を有する。第1接続電極C11は、コネクタ51C本体に埋設されている。コネクタ51Cの実装面(下面)には、第2接続電極C21が形成されている(露出している)。
【0105】
このように、第1接続電極C11のみがコネクタ51C本体に埋設されていてもよい。
【0106】
なお、本実施形態では、保護層20Aに開口H11が形成された伝送線路基板102を示したが、この構成に限定されるものではない。本発明において、第1信号電極P11と第1接続電極C11との間に設けられる空隙は必須ではない。すなわち、第1信号電極の位置に応じた位置に形成される保護層の開口は、必須の構成ではない。
【0107】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、伝送線路基板が単一の回路基板に面実装される例を示す。
【0108】
図16(A)は第6の実施形態に係る電子機器401の主要部を示す平面図であり、図16(B)は図16(A)におけるE-E断面図である。
【0109】
電子機器401は、伝送線路基板104Aおよび回路基板201等を備える。伝送線路基板104Aは、コネクタ51B,52Bを備えていない点で、第4の実施形態に係る伝送線路基板104と異なる。伝送線路基板104Aの他の構成については、伝送線路基板104と同じである。
【0110】
回路基板201は、絶縁性基材60および保護層70を備える。保護層70は、絶縁性基材60の表面(上面)の略全面に形成される保護膜である。絶縁性基材60の表面には第1接続電極C11、第2接続電極C21および複数のグランド電極(不図示)が形成されている。絶縁性基材60は例えばガラス/エポキシ基板であり、保護層70は例えばカバーレイフィルムやソルダーレジスト膜、エポキシ樹脂膜等である。
【0111】
伝送線路基板104Aは、導電性接合材を介して回路基板201に接合される。図16(B)に示すように、伝送線路基板104Aの第1信号電極P11は、回路基板201の第1接続電極C11と対向して配置され、容量結合により回路基板201に接続される。伝送線路基板104Aの第2信号電極P21は、回路基板201の第2接続電極C21に導電性接合材5を介して直接接続される。また、伝送線路基板104Aのグランド電極は、導電性接合材を介して、回路基板201のグランド接続電極に直接接続される。なお、図示省略するが、第2接続部CN2でも同様である。
【0112】
このようにして、伝送線路基板104Aの第1信号電極は、容量結合により回路基板201に接続され、伝送線路基板104Aの第2信号電極は、導電性接合材を介して回路基板201に直接接続される。
【0113】
また、図16(A)に示すように、回路基板201の上面には、複数の実装部品81,82,83,84,85が伝送線路基板104Aと共に実装されている。実装部品81,82,83,84,85は、例えばチップ型インダクタやチップ型キャパシタ等のチップ部品である。
【0114】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、接続部の第1信号電極と第2信号電極との間に、グランド電極(またはグランド層間接続導体)が配置された伝送線路基板の例を示す。
【0115】
図17(A)は第7の実施形態に係るコネクタ付きケーブル307の外観斜視図であり、図17(B)は第7の実施形態に係る伝送線路基板107の平面図である。図18は、伝送線路基板107の分解平面図である。図19は、図17(A)におけるF-F断面図である。図18では、構造を分かりやすくするため、第1信号線31および第2信号線32をハッチングで示している。
【0116】
コネクタ付きケーブル307は、伝送線路基板107およびコネクタ51D,52Dを備える点で、第1の実施形態に係るコネクタ付きケーブル301と異なる。以下、コネクタ付きケーブル301と異なる部分について説明する。
【0117】
伝送線路基板107は、第1主面VS1に形成される中間グランド電極PG1A,PG2Aと、絶縁性基材10の内部に形成される中間グランド導体44,45と、を備える点で、第1の実施形態に係る伝送線路基板101と異なる。伝送線路基板107の他の構成については伝送線路基板101と実質的に同じである。
【0118】
中間グランド電極PG1Aおよび中間グランド導体44は、第1主面VS1の平面視で(Z軸方向から視て)、第1接続部CN1における第1信号電極P11と第2信号電極P21との間に配置されている。中間グランド電極PG2Aおよび中間グランド導体45は、Z軸方向から視て、第2接続部CN2における第1信号電極P12と第2信号電極P22との間に配置されている。
【0119】
コネクタ51Dは、シールド部材6および中間グランド接続電極CG1Aを備える点で、第1の実施形態で説明したコネクタ51と異なる。シールド部材6は、コネクタ51Dの内部に形成される矩形の面状導体であり、長手方向がX軸方向に一致する(X軸方向に延伸する)長尺状である。中間グランド接続電極CG1Aは、コネクタ51Dの実装面(下面)に形成されている。図19に示すように、シールド部材6および中間グランド接続電極CG1Aは、Z軸方向から視て、第1接続電極C11と第2接続電極C21との間に配置されている。図示省略するが、コネクタ52Dも同様の構成である。
【0120】
伝送線路基板107の中間グランド電極PG1Aは、導電性接合材5を介して、コネクタ51Dの中間グランド接続電極CG1Aに接続される。中間グランド接続電極CG1Aは、シールド部材6に接続されている。図19に示すように、シールド部材6は、中間グランド接続電極CG1A、導電性接合材5、中間グランド電極PG1A、中間グランド導体44およびグランド層間接続導体V41,V42を介して、グランド導体41に接続されている。
【0121】
本実施形態では、Z軸方向から視て、第1信号電極P11と第2信号電極P21との間に、グランド電極PG1、中間グランド導体44およびグランド層間接続導体V41,V42が配置されている。この構成によれば、加熱プレス時の樹脂の流動に伴う信号電極(第1信号電極P11および第2信号電極P21)の位置ずれを抑制でき、信号電極の位置ずれに起因したインピーダンスの変動も抑制できる。
【0122】
また、本実施形態では、第1接続部CN1における第1信号導体(第1信号線31に電気的に接続された導体)と第2信号導体(第2信号線に電気的に接続された導体)との間に、グランド(中間グランド電極PG1A,中間グランド導体44、グランド層間接続導体V41,V42、中間グランド接続電極CG1Aおよびシールド部材6)が配置されている。この構成によれば、第1信号導体と第2信号導体との間に配置されるグランドによって、第1接続部CN1における第1信号導体と第2信号導体とのアイソレーションが確保され、第1信号導体と第2信号導体とのクロストークが抑制される。このことは、第2接続部CN2でも同様である。
【0123】
なお、本実施形態では、シールド部材6が、X軸方向に長手方向を有する長尺状の面状導体である例を示したが、シールド部材6の形状等はこれに限定されるものではない。シールド部材6の個数、形状等は適宜変更が可能である。シールド部材6の形状は、例えば円柱、角柱等でもよい。ただし、シールド部材6は、第1接続電極C11に接続するコネクタ第1内部端子501と、第2接続部CN2に接続するコネクタ第2内部端子502とが有する嵌合相手との接触部との間に位置し、Y軸方向から見て、コネクタ第1内部端子501の接触部と、コネクタ第2内部端子502の接触部とに重なる。
【0124】
また、本実施形態では、伝送線路基板が、中間グランド接続電極CG1Aおよびシールド部材6を有するコネクタ51D,52Dを備える例を示したが、この構成に限定されるものではない。伝送線路基板が単一の回路基板に面実装される場合には、上記回路基板が中間グランド接続電極CG1Aおよびシールド部材6を備えていてもよい。
【0125】
《その他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、第1接続部CN1、第2接続部CN2および線路部TLを有する伝送線路基板の例を示したが、伝送線路基板が有する接続部および線路部の数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。
【0126】
以上に示した各実施形態では、絶縁性基材が略矩形の平板である例を示したが、この構成に限定されるものではない。絶縁性基材の形状は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。絶縁性基材の平面形状は、例えばL字形、クランク形、T字形、Y字形、U字形等でもよい。
【0127】
また、以上に示した第1~3、第5の実施形態では、絶縁性基材が3つの基材層を積層してなる積層体である例を示したが、本発明の絶縁性基材の積層数はこれに限定されるものではない。絶縁性基材を形成する基材層の層数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。
【0128】
以上に示した各実施形態では、絶縁性基材が、熱可塑性樹脂を主材料とする平板である例を示したが、この構成に限定されるものではない。絶縁性基材は熱硬化性樹脂を主材料とする平板であってもよい。また、絶縁性基材は、例えば、低温同時焼成セラミックス(LTCC)の誘電体セラミックであってもよい。また、絶縁性基材は、複数の樹脂の複合積層体であってもよく、例えばガラス/エポキシ基板等の熱硬化性樹脂シートと、熱可塑性樹脂シートとが積層されて形成される構成でもよい。また、絶縁性基材は、複数の基材層を加熱プレス(一括プレス)してその表面同士を融着するものに限らず、各基材層間に接着材層を有する構成でもよい。
【0129】
また、伝送線路基板に形成される回路構成は、以上に示した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。伝送線路基板に形成される回路は、例えば導体パターンで構成されるコイルや、導体パターンで形成されるキャパシタ、各種フィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ)等の周波数フィルタが形成されていてもよい。また、伝送線路基板には、例えば他の各種伝送線路(ミアンダ、コプレーナ等)等が、形成されていてもよい。さらに伝送線路基板には、チップ部品等の各種電子部品が実装または埋設されていてもよい。
【0130】
以上に示した各実施形態では、2つの伝送線路(第1伝送線路および第2伝送線路)が構成された伝送線路基板の例を示したが、この構成に限定されるものではない。伝送線路の数は、伝送線路基板に形成される回路構成によって適宜変更可能であり、3つ以上でもよい。例えば、伝送線路基板が備える第2信号線の数(第2伝送線路の数)が複数でもよい。この場合に複数の第2伝送線路は、それぞれ同一のシステム(同一の周波数帯)で利用されていてもよく、それぞれ異なるシステム(それぞれ異なる周波数帯)で利用されていてもよい。
【0131】
また、以上に示した各実施形態では、各電極(第1信号電極P11,P12、第2信号電極P21,P22、第1接続電極C11,C12、第2接続電極C21,C22および複数のグランド電極PG1,PG2)の平面形状が、矩形である例を示したが、これに限定されるものではない。各電極の平面形状は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能であり、例えば多角形、円形、楕円形、円弧状、リング状、L字形、U字形、T字形、Y字形、クランク形であってもよい。また、各電極の個数・位置は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。なお、伝送線路基板には、これら各電極以外に、回路に接続されないダミー電極等が形成されていてもよい。
【0132】
以上に示した各実施形態では、第1信号線31と第2信号線32とが、絶縁性基材のうち同一層に形成された例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1信号線31と第2信号線32とが、厚み方向(Z軸方向)に異なる層に形成されていてもよい。その場合、第1周波数帯で利用される第1信号線31が、第2信号線よりも第1主面VS1に近接していることが好ましい。これにより、第2周波数帯よりも高い第1周波数帯に用いられる第1信号線31(第1伝送線路)の線路長を短くできるため、効果的に導体損失を抑制できる。
【0133】
なお、以上に示した各実施形態では、第1接続電極C11の面積が、第1信号電極P11の面積よりも大きい構成について示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、第1信号電極P11の面積が、第1接続電極C11の面積よりも大きい場合でも同様の作用・効果を奏する。すなわち、第1信号電極および第1接続電極のうち、いずれか一方の面積が他方の面積よりも大きければ、第1信号電極と第1接続電極の位置ずれが生じても、第1信号電極と第1接続電極との間に発生する容量の変動は抑制される。
【0134】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0135】
C11,C12…第1接続電極
C21,C22…第2接続電極
CG1,CG2…グランド接続電極
CG1A,CG2A…中間グランド接続電極
CN1…第1接続部
CN2…第2接続部
TL…線路部
H11,H12,H21,H22,HG1,HG2…開口
HC11,HC12,HC21,HC22…開口
P11,P12…第1信号電極
P21,P22…第2信号電極
PG1,PG2…グランド電極
PG1A,PG2A…中間グランド電極
S1…素体の第1面
S2…素体の第2面
V11,V12,V21,V22…層間接続導体
V41,V42…グランド層間接続導体
VS1…絶縁性基材の第1主面
VS2…絶縁性基材の第2主面
1,1A,1B,1C…素体
1A…素体
5…導電性接合材
6…シールド部材
10,10B,10C…絶縁性基材
11,12,13…基材層
20,20A…保護層
31…第1信号線
32…第2信号線
41,42,43…グランド導体
44,45…中間グランド導体
51,51A,51B,51C,51D,52,52A,52B,52D…コネクタ
60…回路基板の絶縁性基材
70…回路基板の保護層
81,82,83,84,85…実装部品
101,101A,102,103,104,104A,107…伝送線路基板
201…回路基板
301,301A,302,303,304,305,307…コネクタ付きケーブル
401…電子機器
501…コネクタ第1内部端子
502…コネクタ第2内部端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19