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特許7167995オーディオ装置およびオーディオ信号出力方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】オーディオ装置およびオーディオ信号出力方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20221101BHJP
   H04S 1/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H04S7/00 300
H04S1/00 700
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020549919
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2018038041
(87)【国際公開番号】W WO2020075286
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 修二
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-111519(JP,A)
【文献】特開2001-204100(JP,A)
【文献】特開平7-203595(JP,A)
【文献】特開平1-144900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 7/00
H04S 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するためのオーディオ装置であって、
入力された前記マルチチャネル信号を立体音響処理して出力する立体音響処理部と、
前記マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する相関導出部と、
前記少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように前記立体音響処理部を制御する制御部と
を備えるオーディオ装置。
【請求項2】
前記相関導出部は、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関係数を求めることで前記相関を導出する
請求項1に記載のオーディオ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記一方のチャネルペアの信号の相関が前記他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの信号の増幅率を、前記他方のチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくするように、前記立体音響処理部を制御する
請求項1または2に記載のオーディオ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記一方のチャネルペアの信号の相関が前記他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの前記出音部の音像を、当該チャネルペアのセンターラインに近づけて定位するように、前記立体音響処理部を制御する
請求項1または2に記載のオーディオ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記一方のチャネルペアの信号を処理するための伝達関数を変更することで、前記出音部の音像が前記チャネルペアのセンターラインに近づくように定位させる
請求項4に記載のオーディオ装置。
【請求項6】
前記立体音響処理部を複数備え、
さらに、
複数の前記立体音響処理部と複数のスピーカのうち1つのスピーカとを結ぶ経路上に配置され、複数の前記立体音響処理部のそれぞれから出力された前記チャネルペアの信号のうちの第1信号を加算して、前記1つのスピーカに出力する第1の加算部と、
複数の前記立体音響処理部と前記複数のスピーカのうち前記1つのスピーカと異なる他のスピーカとを結ぶ経路上に配置され、複数の前記立体音響処理部のそれぞれから出力された前記チャネルペアの信号のうちの第2信号を加算して、前記他のスピーカに出力する第2の加算部と
を備える請求項1~5のいずれか1項に記載のオーディオ装置。
【請求項7】
2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを8組含む16チャネルのマルチチャネル信号を、2チャネルの信号にダウンミックスして2つのスピーカに出力するためのオーディオ装置であって、
入力された前記マルチチャネル信号を立体音響処理して出力する8つの立体音響処理部と、
前記マルチチャネル信号に含まれる8組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する8つの相関導出部と、
前記8組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように前記8つの立体音響処理部を制御する制御部と、
前記8つの立体音響処理部と前記2つのスピーカのうちの第1のスピーカとを結ぶ経路上に配置され、前記8つの立体音響処理部のそれぞれから出力された前記チャネルペアの信号のうちの第1信号を加算して、前記第1のスピーカに出力する第1の加算部と、
前記8つの立体音響処理部と前記2つのスピーカのうちの第2のスピーカとを結ぶ経路上に配置され、前記8つの立体音響処理部のそれぞれから出力された前記チャネルペアの信号のうちの第2信号を加算して、前記第2のスピーカに出力する第2の加算部と
を備えるオーディオ装置。
【請求項8】
2つのスピーカが左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するためのオーディオ装置であって、
入力された前記マルチチャネル信号を音響処理して出力する音響処理部と、
前記マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する相関導出部と、
前記少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように前記音響処理部を制御する制御部と
を備えるオーディオ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記一方のチャネルペアの信号の相関が前記他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの信号の増幅率を、前記他方のチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくするように、前記音響処理部を制御する
請求項8に記載のオーディオ装置。
【請求項10】
2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するためのオーディオ信号出力方法であって、
入力された前記マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出し、
前記少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように、入力された前記マルチチャネル信号を立体音響処理して出力する
オーディオ信号出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチチャネル信号を再生するオーディオ装置およびオーディオ信号出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチチャネル信号をマルチチャネル信号の数よりも少ない数の信号にダウンミックスして出力するオーディオ信号出力方法が知られている。この種のオーディオ信号出力方法の一例として、非特許文献1には、ARIB標準規格STD-B32に準拠した22.2ch(チャネル)のマルチチャネル信号を5.1chにダウンミックスし、さらに、5.1chのマルチチャネル信号を2chにダウンミックスする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】杉本岳大、外2名、「MPEG-4 AACを用いた22.2ch音声符号化・復号装置の開発」、NHK技研 R&D/No.155/2016.1、p.40―46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示された方法だけでは、立体感のある音を十分に出力することができない場合がある。
【0005】
本開示は、上記の事情を鑑みてなされたもので、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができるオーディオ装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態におけるオーディオ装置は、2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するためのオーディオ装置であって、入力された前記マルチチャネル信号を立体音響処理して出力する立体音響処理部と、前記マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する相関導出部と、前記少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように前記立体音響処理部を制御する制御部とを備える。
【0007】
本開示の一形態におけるオーディオ装置は、2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを8組含む16チャネルのマルチチャネル信号を、2チャネルの信号にダウンミックスして2つのスピーカに出力するためのオーディオ装置であって、入力された前記マルチチャネル信号を立体音響処理して出力する8つの立体音響処理部と、前記マルチチャネル信号に含まれる8組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する8つの相関導出部と、前記8組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように前記8つの立体音響処理部を制御する制御部と、前記8つの立体音響処理部と前記2つのスピーカのうちの第1のスピーカとを結ぶ経路上に配置され、前記8つの立体音響処理部のそれぞれから出力された前記チャネルペアの信号のうちの第1信号を加算して、前記第1のスピーカに出力する第1の加算部と、前記8つの立体音響処理部と前記2つのスピーカのうちの第2のスピーカとを結ぶ経路上に配置され、前記8つの立体音響処理部のそれぞれから出力された前記チャネルペアの信号のうちの第2信号を加算して、前記第2のスピーカに出力する第2の加算部とを備える。
【0008】
本開示の一形態におけるオーディオ装置は、2つのスピーカが左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するためのオーディオ装置であって、入力された前記マルチチャネル信号を音響処理して出力する音響処理部と、前記マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する相関導出部と、前記少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように前記音響処理部を制御する制御部とを備える。
【0009】
本開示の一形態におけるオーディオ信号出力方法は、2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するためのオーディオ信号出力方法であって、入力された前記マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、前記チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出し、前記少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、前記一方のチャネルペアの立体音響効果を前記他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように、入力された前記マルチチャネル信号を立体音響処理して出力する。
【0010】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示のオーディオ装置等によれば、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、22.2ch規格における出音部のそれぞれの配置を示す図である。
図1B図1Bは、22.2chのうち上層に配置された出音部のチャネルラベルを示す図である。
図1C図1Cは、22.2chのうち中層に配置された出音部のチャネルラベルを示す図である。
図1D図1Dは、22.2chのうち下層に配置された出音部のチャネルラベルを示す図である。
図2図2は、22.2chのそれぞれのチャネルの信号の圧縮符号化法を示す図である。
図3図3は、22.2chの圧縮符号化信号のデコードプロセスを示す図である。
図4図4は、22.2chのデコード信号を2chのスピーカで出音するための比較例のダウンミックスプロセスを示す図である。
図5図5は、2chのスピーカで出音する音が仮想的な出音部から聞こえるようにするための処理を示す図である。
図6図6は、2chのスピーカで出音する音が左右2つの仮想的な出音部から聞こえるようにするための処理を示す図である。
図7図7は、実施の形態1におけるオーディオ装置を含むオーディオシステムを示す模式図であって、現実のスピーカの配置ならびに仮想的な出音部を示す図である。
図8図8は、実施の形態1におけるオーディオ装置に入力されるマルチチャネル信号のチャネルペア内の信号の相関の一例を示す図である。
図9図9は、従来の仮想音像定位技術を用いるオーディオ装置を含むオーディオシステムにて、仮想的な出音部の音像を模式的に示す図である。
図10図10は、実施の形態1におけるオーディオ装置を含むオーディオシステムにて、仮想的な出音部の音像を模式的に示す図である。
図11図11は、実施の形態1に係るオーディオ装置を含むオーディオシステムのブロック構成図である。
図12図12は、実施の形態1におけるオーディオ装置の第1の立体音響処理部の構成を示す図である。
図13図13は、実施の形態1におけるオーディオ装置の第2の立体音響処理部の構成を示す図である。
図14図14は、実施の形態1におけるオーディオ信号出力方法を示すフローチャートである。
図15図15は、実施の形態1におけるオーディオ装置の機能をソフトウェアにより実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図16図16は、実施の形態1の変形例1におけるオーディオ信号出力方法を示すフローチャートである。
図17図17は、実施の形態1の変形例1におけるオーディオ装置を含むオーディオシステムにて、仮想的な出音部の音像を模式的に示す図である。
図18図18は、実施の形態1の変形例2におけるオーディオ装置を含むオーディオシステムのブロック構成図である。
図19図19は、実施の形態2におけるオーディオ装置を含むオーディオシステムを示す模式図であって、現実のスピーカの配置を示す図である。
図20図20は、実施の形態2に係るオーディオ装置を含むオーディオシステムのブロック構成図である。
図21図21は、実施の形態2におけるオーディオ装置の第1の音響処理部の構成を示す図である。
図22図22は、実施の形態2におけるオーディオ装置の第2の音響処理部の構成を示す図である。
図23図23は、実施の形態2におけるオーディオ装置を含むオーディオシステムにて、現実のスピーカから出力される音を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
ARIB標準規格STD-B32では、22.2chの音声圧縮符号化方式が規格化されている。この規格は、8Kスーパーハイビジョン放送における音声方式として実用化される予定である。
【0014】
本開示のオーディオ装置は、マルチチャネル信号を2chのスピーカから出音するためのダウンミックス処理に関する。具体的には、本開示は、22.2chのコンテンツのように、2つの出音部(例えばスピーカ)が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを複数有するマルチチャネル信号を2chの信号にダウンミックスして出力するオーディオ装置に関する。
【0015】
図1Aは、22.2ch規格における出音部のそれぞれの配置を示す図である。図1Bは、22.2chのうち上層に配置された出音部のチャネルラベルを示す図である。図1Cは、22.2chのうち中層に配置された出音部のチャネルラベルを示す図である。図1Dは、22.2chのうち下層に配置された出音部のチャネルラベルを示す図である。
【0016】
図1A図1Dに示すように、22.2ch規格における出音部は、22個の通常の出音部(スピーカ)と、2個のサブウーファ(重低音用スピーカ)とによって構成されている。22個の通常の出音部は、天井に相当する上層に配置された9個の出音部、リスナー(受聴者)の視点に相当する中層に配置された10個の出音部、および、床に相当する下層に配置された3個の出音部によって構成されている。2個のサブウーファは、下層に配置されている。また、図1B図1Dには、各出音部のチャネルラベルが示されている。
【0017】
図2は、22.2chのそれぞれのチャネルの信号の圧縮符号化方法を示す図である。
【0018】
図2の右列に示した圧縮符号化法のうち、SCE(Single Channel Element)は、モノラル信号をMPEG4オーディオAAC方式で圧縮することを示している。CPE(Channel Pair Element)は、ステレオ信号をMPEG4オーディオAAC方式で圧縮することを示している。LFE(Low Frequency Effect)は、モノラルの重低音信号をMPEG4オーディオAAC方式で圧縮することを示している。
【0019】
図1A図1Dおよび図2に示すように、SCEで圧縮符号化される信号のチャネルラベルは、リスナーから見てセンターラインCL上に配置され、CPEで圧縮符号化される信号のチャネルラベルは、センターラインCLを基準として左右対称に配置されている。なお、LFEで圧縮符号化される信号のチャネルラベルは、重低音専用チャネルである。
【0020】
図3は、22.2chの圧縮符号化信号70のデコードプロセスを示す図である。図3には、22.2chの圧縮符号化信号70が、MPEG4AACデコーダ71でデコードされ、PCM格納用メモリ72に格納される様子が示されている。
【0021】
オーディオ装置には、圧縮符号化されている音声のサンプリング周波数が48kHzである場合、21.33msec(=1024/48kHz)単位で、22.2ch分の信号がフレーム化されて伝送入力される。
【0022】
各フレーム内のチャネルの信号は、例えば、FC(Front Center)チャネルの信号が、SCEで圧縮符号化されている。また、FLc(Front Left Center)チャネルとFRc(Front Right Center)チャネルのチャネルペアの信号が、CPEで圧縮符号化されている。また、FL(Front Left)チャネルとFR(Front Right)チャネルのチャネルペアの信号が、CPEで圧縮符号化されている。以下図3に示すように、各フレーム内のチャネルの信号が圧縮符号化されている。
【0023】
圧縮符号化された信号はエレメントごとに順次読み出され、MPEG4AACデコーダ71でデコードされ、デコード後のPCM信号は、PCM格納用メモリ72に格納される。MPEG4AACデコーダ71は、SCEデコーダ、CPEデコーダおよびLFEデコーダを有している。例えば、FCのチャネルの信号はSCEデコーダでデコードされ、デコード後のモノラル信号がPCM格納用メモリ72の所定の領域に格納される。また、FLc、FRcのチャネルペア信号はCPEデコーダでデコードされ、デコード後のステレオ信号がPCM格納用メモリ72の所定の領域に格納される。また、FL、FRのチャネルペア信号はCPEデコーダでデコードされ、デコード後のステレオ信号がPCM格納用メモリ72の所定の領域に格納される。以下図3に示すように、圧縮符号化された各信号がデコードされ、デコード後の各信号がメモリに格納される。
【0024】
ここで、比較例のダウンミックスプロセスについて説明する。図4は、22.2chのデコード信号を2chのスピーカで出音するための比較例のダウンミックスプロセスを示す図である。
【0025】
図4に示すように、比較例の2chダウンミックス処理部180は、PCM格納用メモリ72から22.2chの信号を受け取り、2chになるようにダウンミックス処理する。ダウンミックス処理を行う際、22.2chの各信号は、2chダウンミックス処理部180の枠内に示した計算式で重みづけおよび加算されて2chの信号となる。この2chの信号は、LchスピーカおよびRchスピーカからなる左右2つのスピーカから出音される。
【0026】
しかしながら、図4に示すプロセスは、単純な重みづけおよび加算による2chダウンミックス処理であるので、全ての信号の音像が、LchスピーカおよびRchスピーカのいずれかの位置に定位し、22.2chのスピーカで再生する場合に比べると立体感が損なわれる。そこで、マルチチャネル信号を2chのスピーカで再生する場合に、現実のスピーカの位置以外の位置に仮想的に音像を定位させる処理技術(仮想音像定位技術)により、後述する図9に示すように立体感が損なわれることを抑制する方法が知られている。
【0027】
図5は、2chのスピーカで出音する音が仮想的な出音部Xから聞こえるようにするための処理を示す図である。
【0028】
図5に示す伝達関数行列HXは、仮想的な出音部Xからリスナー90の左耳に至る伝達関数LVxと、仮想的な出音部Xからリスナー90の右耳に至る伝達関数RVxとの組によって構成される。空間の伝達関数行列Mは、現実のLchスピーカおよびRchスピーカからリスナー90の左右の耳に至る4つの伝達関数(hFL、hCR、hCL、hFR)の行列によって構成される。LchスピーカおよびRchスピーカから出音する音が、あたかも仮想的な出音部Xから出音されたかのようにするためには、入力信号Sと、入力信号Sを処理するための伝達関数TL、TRと、伝達関数行列HXと、伝達関数行列Mとの関係が、(式1)に示す関係を満たせばよい。
【0029】
【数1】
【0030】
これにより、伝達関数TL、TRは以下の(式2)で表される。
【0031】
【数2】
【0032】
すなわち、入力信号Sに伝達関数行列HXを掛け、かつ、クロストークキャンセル処理する(伝達関数行列Mの逆行列を掛ける)ことで、仮想的な出音部Xから音が聞こえるような現象を実現できる。
【0033】
次に、2chのスピーカで出音する音が左右2つの仮想的な出音部X、Yから聞こえるようにする仮想音像定位技術について説明する。図6は、2chのスピーカで出音する音が左右2つの仮想的な出音部X、Yから聞こえるようにするための処理を示す図である。図6に示す入力信号Slおよび入力信号Srは、マルチチャネル信号のうちの1組のチャネルペアに相当する。
【0034】
まず、入力信号Slに対する処理の説明を行う。図6の左側に示す伝達関数行列HXは、仮想的な出音部Xからリスナー90の左耳に至る伝達関数LVxと、仮想的な出音部Xからリスナー90の右耳に至る伝達関数RVxとの組によって構成される。空間の伝達関数行列Mは、4つの伝達関数(hFL、hCR、hCL、hFR)の行列によって構成される。LchスピーカおよびRchから出音する音が、あたかも仮想的な出音部Xから出音されたかのようにするためには、入力信号Slと、入力信号Slを処理するための伝達関数TLl、TRlと、伝達関数行列HXと、伝達関数行列Mとの関係が、(式3)に示す関係を満たせばよい。
【0035】
【数3】
【0036】
これにより、伝達関数TLl、TRlは以下の(式4)で表される。
【0037】
【数4】
【0038】
次に、入力信号Srに対する処理の説明を行う。図6の右側に示す伝達関数行列HYは、仮想的な出音部Yからリスナー90の左耳に至る伝達関数LVyと、仮想的な出音部Yからリスナー90の右耳に至る伝達関数RVyとの組によって構成される。空間の伝達関数行列Mは、4つの伝達関数(hFL、hCR、hCL、hFR)の行列によって構成される。現実のLchスピーカおよびRchから出音する音が、あたかも仮想的な出音部Yから出音されたかのようにするためには、入力信号Srと、入力信号Srを処理するための伝達関数TLr、TRrと、伝達関数行列HYと、伝達関数行列Mとの関係が、(式5)に示す関係を満たせばよい。
【0039】
【数5】
【0040】
これにより、伝達関数TLr、TRrは以下の(式6)で表される。
【0041】
【数6】
【0042】
そして、入力信号Slに伝達関数TLlを掛けて出力された信号と、入力信号Srに伝達関数TLrを掛けて出力された信号とを左側加算部で加算して、Lchスピーカから出音する。また、入力信号Slに伝達関数TRlを掛けて出力された信号と、入力信号Srに伝達関数TRrを掛けて出力された信号とを右側加算部で加算して、Rchスピーカから出音する。これらにより、現実のスピーカLchおよびRchを用いて音を再生した場合に、仮想的な出音部X、Yのそれぞれから音が聞こえてくるかのような現象を実現できる。このような仮想音像定位技術を22.2chのそれぞれのチャネル(仮想的な出音部)に適用することで、2chのスピーカで再生した場合の音の立体感を高めることができる。
【0043】
しかしながら、これらの仮想音像定位技術を用いても、22.2chのそれぞれの位置に音像をはっきりと定位させることは困難である。
【0044】
その理由は、下記の様なことである。すなわち、22.2ch規格は、左右対称に配置されたチャネルペアが8組(FL/FR、FLc/FRc、BL/BR、SL/SR、TpFL/TpFR、TpSL/TpSR、TpBL/TpBR、BtL/BtR)あるが、一方で、センターラインCL上のチャネルも6か所(FC、BC、TpFC、TC、BtFC、TpBC)と非常に多く、結果的に、センター成分が強く知覚される。従って、チャネルペアの信号成分がセンターラインCLに位置するチャネルの信号成分に埋もれ、チャネルペアの出音部の音像が際立ちにくいという点が挙げられる。
【0045】
本開示のオーディオ装置は、22.2chのように、多数のチャネルペアからなるマルチチャネル信号を2chにダウンミックスする際に、立体感の強い2ch信号を生成することができる。
【0046】
ここで本開示のオーディオ装置1の概要について、図7図10を参照しながら説明する。なお、ここでは理解を容易にするため、入力信号が2組のチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を2チャネルの信号にダウンミックスして出力する例について説明する。
【0047】
図7は、実施の形態1のオーディオ装置1を含むオーディオシステム5を示す模式図であって、現実のスピーカ61、62の配置ならびに仮想的な出音部X1、X2、Y1およびY2を示す図である。
【0048】
図7に示すように、オーディオシステム5は、オーディオ装置1と、第1のスピーカ61と、第2のスピーカ62とを備えている。第1のスピーカ61および第2のスピーカ61のそれぞれは、オーディオ装置1に有線または無線で接続されている。
【0049】
第1のスピーカ61は、リスナー90から見て左側に位置し、第2のスピーカ62は、リスナー90から見て右側に位置している。第1のスピーカ61および第2のスピーカ62は左右対称に配置され、リスナー90は、第1のスピーカ61および第2のスピーカ62のセンターラインCL上に位置している。
【0050】
図7には、2組のチャネルペアであるフロントチャネルペアおよびサラウンドチャネルペアが示されている。フロントチャネルペアは、出音部X1(フロントLチャネル)および出音部Y1(フロントRチャネル)によって構成されている。サラウンドチャネルペアは、出音部X2(サラウンドLチャネル)および出音部Y2(サラウンドRチャネル)によって構成されている。リスナー90は、フロントチャネルペアのセンターラインCL上、および、サラウンドチャネルペアのセンターラインCL上に位置している。
【0051】
図8を参照しながら、オーディオ装置1に入力されるマルチチャネル信号について説明する。図8は、オーディオ装置1に入力されるマルチチャネル信号のチャネルペア内の信号の相関を示す図である。
【0052】
例えば図8には、フロントチャネルペアの出音部X1、Y1に対応する信号波形、および、サラウンドチャネルペアの出音部X2、Y2に対応する信号波形が示されている。図8に示すように、所定の期間T1で比べると、フロントチャネルペアの信号波形よりもサラウンドチャネルペアの信号波形のほうが、チャネルペア内の信号の左右の異なり度合が大きく(相関が小さく)なっている。このような場合、互いに似ているフロントチャネルペアの信号を強調しても違いが出にくいので、異なり度合が大きいサラウンドチャネルペアの信号を今よりも(元々の信号よりも)強調する。言い換えると、図8に示すように、サラウンドチャネルペアの信号の相関が、フロントチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合は、サラウンドチャネルペアの立体音響効果を強める処理を行う。
【0053】
図9は、従来の仮想音像定位技術を用いるオーディオ装置101を含むオーディオシステム105にて、仮想的な出音部X1、X2、Y1、Y2の音像を模式的に示す図である。図10は、実施の形態1のオーディオ装置1を含むオーディオシステム5にて、仮想的な出音部X1、X2、Y1、Y2の音像を模式的に示す図である。
【0054】
図9に示すように、従来の仮想音像定位技術を用いるオーディオ装置101では、出音部X1、X2、Y1、Y2のそれぞれに音像を定位させることもできるが、チャネルペアの信号成分が他のチャネルの信号成分に埋もれ、チャネルペアの出音部の音像が際立ちにくい。
【0055】
それに対し、実施の形態1のオーディオ装置1では、サラウンドチャネルペアの信号の相関がフロントチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、サラウンドチャネルペアの立体音響効果をフロントチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行う。これにより、図10に示すように、サラウンドチャネルペアの出音部X2、Y2の音像を際立たせることができる。このように、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うことで、マルチチャネル信号をダウンミックスして出力する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0056】
以下、本実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、使用手順、通信手順等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0057】
(実施の形態1)
[1-1.オーディオ装置の構成]
実施の形態1のオーディオ装置1の構成について、図11図13を参照しながら説明する。
【0058】
本実施の形態のオーディオ装置は、例えば、22.2chのコンテンツのように、左右対称に配置された2つの出音部によって定義されるチャネルペアを複数有するマルチチャネル信号を再生するための装置である。なお、再生は、記録した信号を処理して出力することに限られず、放送等により受信した信号を処理して出力することも含む。
【0059】
本実施の形態も図7と同様に、入力信号が2組のチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を2チャネルの信号にダウンミックスして出力する例について説明する。
【0060】
図11は、オーディオ装置1を含むオーディオシステム5のブロック構成図である。
【0061】
オーディオ装置1は、第1の立体音響処理部21、第2の立体音響処理部22、第1の相関導出部31、第2の相関導出部32および制御部40を備えている。また、オーディオ装置1は、第1の加算部51および第2の加算部52を備えている。オーディオ装置1は、オーディオ装置1に入力された音響信号を信号処理して、第1のスピーカ61および第2のスピーカ62に出力する。
【0062】
図11には、フロントLチャネルおよびフロントRチャネルで構成される第1のチャネルペアの各信号を伝送する第1のチャネルペア伝送経路11と、サラウンドLチャネルおよびサラウンドRチャネルで構成される第2のチャネルペアの各信号を伝送する第2のチャネルペア伝送経路12とが示されている。
【0063】
以下において、第1のチャネルペア内の各信号を「フロントLの信号」および「フロントRの信号」と呼び、第2のチャネルペア内の各信号を「サラウンドLの信号」および「サラウンドRの信号」と呼ぶ場合がある。また、本実施の形態において、立体音響処理部、相関導出部、加算部、スピーカ、チャネルペア伝送経路のそれぞれについて、「第1の」および「第2の」という記載を省略する場合がある。
【0064】
オーディオ装置1は、チャネルペア伝送経路11を介して第1のチャネルペアの信号であるフロントLの信号およびフロントRの信号を受信する。フロントLの信号およびフロントRの信号のそれぞれは、リスナーの前方の左右に配置されたスピーカから出音するように定義された信号である。図7に示すようにリスナー90の前方の左右に配置された仮想的な出音部X1、Y1からあたかも出音されるように処理される。
【0065】
また、オーディオ装置1は、チャネルペア伝送経路12を介して第2のチャネルペアの信号であるサラウンドLの信号およびサラウンドRの信号を受信する。サラウンドLの信号およびサラウンドRの信号のそれぞれは、リスナーの後方の左右に配置されたスピーカから出音するように定義された信号である。図7に示すようにリスナー90の後方の左右に配置された仮想的な出音部X2、Y2からあたかも出音されるように処理される。
【0066】
立体音響処理部21、22のそれぞれは、マルチチャネル信号を立体音響処理して出力する。立体音響処理部21は、チャネルペア伝送経路11に接続され、第1のチャネルペアの信号に対して立体音響処理を行う。立体音響処理部22は、チャネルペア伝送経路12に接続され、第2のチャネルペアの信号に対して立体音響処理を行う。なお、立体音響処理とは、例えば音を再生する際に、3次元的な音の方向、距離、広がりなどを再生することをいう。立体音響処理部21、22の処理については、後で詳しく説明する。
【0067】
相関導出部31はチャネルペア伝送経路11に接続され、相関導出部32はチャネルペア伝送経路12に接続されている。相関導出部31、32のそれぞれは、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する。この相関は、例えば、チャネルペア内のそれぞれの信号の波形または周波数スペクトルに基づいて求めることができる。
【0068】
具体的には、相関導出部31は、第1のチャネルペアの信号の相関を示す値として、フロントLの信号およびとフロントRの信号の相関係数rfを算出する。相関係数rfは、所定のサンプリング期間におけるi番目のフロントLの信号をFL[i]とし、i番目のフロントRの信号をFR[i]としたとき、次の(式7)にて求めることができる。
【0069】
【数7】
【0070】
相関係数rfは、フロントLの信号とフロントRの信号とが、同じ信号である場合に1.0となり、全く関係ない信号である場合に0となり、同じ信号であるが符号が異なる場合に-1.0となる。つまり、相関係数rfの絶対値が1に近い場合、ステレオ的な信号でありながら実質的にはモノラル的な信号となり、相関係数rfの絶対値が0に近い場合、左右のステレオ感が著しい信号、すなわち、左右から聞こえる音が大きく異なる信号となる。相関導出部31は、算出した相関係数rfを制御部40に出力する。
【0071】
一方、相関導出部32は、第2のチャネルペアの信号の相関を示す値として、サラウンドLの信号およびサラウンドRの相関係数rsを算出する。相関係数rsは、上記と同じ所定のサンプリング期間におけるi番目のサラウンドLの信号をSL[i]とし、i番目のサラウンドRの信号をSR[i]としたとき、次の(式8)にて求めることができる。
【0072】
【数8】
【0073】
相関係数rsは、サラウンドLの信号とサラウンドRの信号とが、同じ信号である場合に1.0となり、全く関係ない信号である場合に0となり、同じ信号であるが符号が異なる場合に-1.0となる。つまり、相関係数rsの絶対値が1に近い場合、ステレオ的な信号でありながら実質的にはモノラル的な信号となり、相関係数rsの絶対値が0に近い場合、左右のステレオ感が著しい信号、すなわち、左右から聞こえる音が大きく異なる信号となる。相関導出部32は、算出した相関係数rsを制御部40に出力する。
【0074】
制御部40は、相関導出部31、32、および、立体音響処理部21、22のそれぞれに接続されている。制御部40は、2組のチャネルペアのうち、一方のチャネルペアの信号の相関と他方のチャネルペアの信号の相関とを比較する。そして、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように、立体音響処理部21、22を制御する。
【0075】
例えば、図8に示すように、第2のチャネルペアの信号(サラウンドLの信号およびサラウンドRの信号)の相関が第1のチャネルペアの信号(フロントLの信号およびフロントRの信号)の相関よりも小さい場合、制御部40は、第2のチャネルペアの信号の立体音響効果が第1のチャネルペアの信号の立体音響効果よりも強くなるように、立体音響処理部21、22を制御する。この場合、制御部40は、第2のチャネルペアの信号の立体音響効果を強めること、および、第1のチャネルペアの信号の立体音響効果を弱めることの少なくとも一方を実行する。
【0076】
なお、立体音響効果は、左右の耳が得る音の違いによって音を立体的に知覚する効果であり、複数のスピーカ61、62のセンターラインCLに位置するリスナー90が得る音を変えることで、変化させることができる。
【0077】
すなわち、上記の立体音響効果は、チャネルペアの信号の増幅率を変えることで、変化させることができる。本実施の形態の制御部40は、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの信号の増幅率を、他方のチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくするように、立体音響処理部21、22を制御する。
【0078】
相関係数が小さいチャネルペアの信号の増幅率を、相関係数が大きいチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくする場合、増幅率αは、例えば(式9)に示すように、所定の単調減少関数に相関係数rを代入することで求めることができる。
【0079】
α=min(4.0,0.5/abs(r))・・・(式9)
【0080】
ただし、(式9)において、「min(x,y)」は、(x,y)の内の小さい方の値を取ることを意味し、「abs(r)」は、相関係数rの絶対値を取ることを意味している。
【0081】
本実施の形態では、制御部40は、相関導出部31から受け取った相関係数rfを(式10)に代入して、増幅率αfを求める。
【0082】
αf=min(4.0,0.5/abs(rf))・・・(式10)
【0083】
また、制御部40は、相関導出部32から受け取った相関係数rsを(式11)に代入して、増幅率αsを求める。
【0084】
αs=min(4.0,0.5/abs(rs))・・・(式11)
【0085】
なお、上記演算では、直接的に相関係数rfと相関係数rsとを比較していないが、(式9)のような、相関係数の絶対値を変数とする単調減少関数を用いて増幅率を設定することにより、結果的に相関係数が大きいチャネルペアよりも相関係数が小さいチャネルペアの信号の増幅率を大きくしており、実質的に相関係数rf、rsの大小関係に基づいて増幅率の大小、すなわち立体音響効果の強弱を決めていることになる。
【0086】
一方、上記演算とは異なる方法として、制御部40は、直接的に相関係数rfと相関係数rsとを比較し、相関係数が大きいチャネルペアよりも相関係数が小さいチャネルペアの信号の増幅率を大きくしてもよい。例えば、相関係数が小さいチャネルペアは、(式9)を用いて増幅率を設定し、相関係数が大きいチャネルペアは、(式9)で求めた増幅率の1/2の値に設定するようにしてもよい。
【0087】
次に、立体音響処理部21、22について図12および図13を参照しながら説明する。
【0088】
図12は、第1の立体音響処理部21の構成を示す図である。立体音響処理部21は、第1のチャネルペアの信号に対して立体音響処理を行い、増幅率αfを掛けて出力する。
【0089】
図12において、フロントLの信号を処理するための伝達関数TDf、TCfは、スピーカ61、62から出音する音が、出音部X1(図7参照)から聞こえるようにするための伝達関数である。また、フロントRの信号を処理するための伝達関数TCf、TDfは、スピーカ61、62から出音する音が、出音部Y1から聞こえるようにするための伝達関数である。これらの伝達関数は、図7を用いて説明した方法と同様に求めることができる。なお、フロントRの信号を処理するための伝達関数は、左右の配置が異なる以外は、フロントLの信号を処理するための伝達関数と同じものに設定されている。これは、フロントLに対応する出音部X1の位置とフロントRに対応する出音部Y1の位置とが、リスナー90から見て左右対称であるからである。
【0090】
このように立体音響処理部21による処理を行った後、それぞれの出力信号を図12に示すように加算する。具体的には、フロントLの信号に伝達関数TDfを掛けて出力された信号と、フロントRの信号に伝達関数TCfを掛けて出力された信号とを左側加算部にて加算し、加算後の値に増幅率αfを掛けて第1の加算部51に出力する。また、フロントLの信号に伝達関数TCfを掛けて出力された信号と、フロントRの信号に伝達関数TDfを掛けて出力された信号とを右側加算部にて加算し、加算後の値に増幅率αfを掛けて第2の加算部52に出力する。
【0091】
図13は、第2の立体音響処理部22の構成を示す図である。立体音響処理部22は、第2のチャネルペアの信号に対して立体音響処理を行い、増幅率αsを掛けて出力する。
【0092】
図13において、サラウンドLの信号を処理するための伝達関数TDs、TCsは、スピーカ61、62から出音する音が、出音部X2(図7参照)から聞こえるようにするための伝達関数である。また、サラウンドRの信号を処理するための伝達関数TCs、TDsは、スピーカ61、62から出音する音が、出音部Y2から聞こえるようにするための伝達関数である。これらの伝達関数は、図7を用いて説明した方法と同様に求めることができる。なお、サラウンドRの信号を処理するための伝達関数は、左右の配置が異なる以外は、サラウンドLの信号を処理するための伝達関数と同じものに設定されている。これは、サラウンドLに対応する出音部X2の位置とサラウンドRに対応する出音部Y2の位置とが、リスナー90から見て左右対称であるからである。
【0093】
このように立体音響処理部22にて処理を行った後、それぞれの出力信号を図13に示すように加算する。具体的には、サラウンドLの信号に伝達関数TDsを掛けて出力された信号と、サラウンドRの信号に伝達関数TCsを掛けて出力された信号とを左側加算部にて加算し、加算後の値に増幅率αsを掛けて第1の加算部51に出力する。また、サラウンドLの信号に伝達関数TCsを掛けて出力された信号と、サラウンドRの信号に伝達関数TDsを掛けて出力された信号とを右側加算部にて加算し、加算後の値に増幅率αsを掛けて第2の加算部52に出力する。
【0094】
第1の加算部51は、各立体音響処理部21、22と第1のスピーカ61とを結ぶ経路上に配置されている。第1の加算部51は、立体音響処理部21、22のそれぞれから出力されたチャネルペアの信号のうちの片方である第1信号s1を加算して、第1のスピーカ61に出力する。なお、ここでいう第1信号s1は、立体音響処理部21の左側加算部にて加算された後、増幅率αfを掛けて出力された信号、または、立体音響処理部22の左側加算部にて加算された後、増幅率αsを掛けて出力された信号を指す。
【0095】
第2の加算部52は、各立体音響処理部21、22と第2のスピーカ62とを結ぶ経路上に配置されている。第2の加算部52は、立体音響処理部21、22のそれぞれから出力されたチャネルペアの信号のうちのもう片方である第2信号s2を加算して、第2のスピーカ62に出力する。なお、ここでいう第2信号s2は、立体音響処理部21の右側加算部にて加算された後、増幅率αfを掛けて出力された信号、または、立体音響処理部22の右側加算部にて加算された後、増幅率αsを掛けて出力された信号を指す。
【0096】
このようにして、立体音響処理部21および22のそれぞれの出力信号を、第1の加算部51および第2の加算部52のそれぞれで加算し、第1の加算部51から出力された信号を第1のスピーカ61で出音し、第2の加算部52から出力された信号を第2のスピーカ62で出音する。
【0097】
このように、本実施の形態のオーディオ装置1は、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、制御部40が、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように立体音響処理部21、22を制御する。これにより、マルチチャネル信号をダウンミックスして出力する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0098】
[1-2.オーディオ信号出力方法]
次に、本実施の形態のオーディオ信号出力方法について説明する。ここでも図7と同様に、フロントチャネルペアおよびサラウンドチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を2チャネルの信号にダウンミックスして出力する例について説明する。
【0099】
図14は、オーディオ信号出力方法を示すフローチャートである。
【0100】
まず、チャネルペア内の信号の相関を導出する(ステップS10)。具体的には、相関導出部31にて、フロントチャネルペアであるフロントLの信号およびフロントRの信号の相関係数rfを算出する。また、相関導出部32にて、サラウンドチャネルペアであるサラウンドLの信号およびサラウンドRの信号の相関係数rsを算出する。
【0101】
次に、各チャネルペアの相関を比較する(ステップS20)。具体的には、制御部40にて、ステップS10で求めた相関係数rfおよび相関係数rsを比較する。この相関係数の比較は、直接的な比較であってもよいし、間接的な比較であってもよい。間接的な比較とは、例えば相関係数rf、rsのそれぞれを、結果的に大小関係が生じるように所定の関数に代入して変換することも含む。
【0102】
次に、制御部40は、相関が小さいチャネルペアの立体音響効果を強くする(ステップS30)。例えば制御部40は、サラウンドチャネルペアの信号の相関がフロントチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、サラウンドチャネルペアの信号の増幅率が、フロントチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくなるようにする。制御部40は、例えば、(式10)および(式11)を用いて各相関係数rf、rsから各増幅率αf、αsを求める。そして、立体音響処理部21にて処理されたサラウンドチャネルペアの信号に増幅率αfを掛けて第1信号s1および第2信号s2を出力し、立体音響処理部22にて処理されたフロントチャネルペアの信号に増幅率αsを掛けて第1信号s1および第2信号s2を出力する。
【0103】
そして、立体音響処理部21、22のそれぞれから出力された第1信号s1を第1加算部51にて加算した後、第1のスピーカ61に出力し、立体音響処理部21、22のそれぞれから出力された第2信号s2を第2の加算部52にて加算した後、第2のスピーカ62に出力する。
【0104】
このように、本実施の形態のオーディオ信号出力方法では、フロントチャネルペアおよびサラウンドチャネルペアについて、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を求め、例えば、サラウンドチャネルペアの信号の相関がフロントチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、サラウンドチャネルペアの立体音響効果をフロントチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行う。これにより、マルチチャネル信号をダウンミックスして出力する際に、サラウンドチャネルペアの信号が強調され、立体感のある音を出力することができる。
【0105】
なお、図14に示すオーディオ信号出力方法は、図15に示すオーディオ装置1のハードウェア構成にて実現してもよい。図15は、オーディオ装置1の機能をソフトウェアにより実現するコンピュータ1000のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0106】
コンピュータ1000は、図15に示すように、入力装置1001、出力装置1002、CPU1003、内蔵ストレージ1004、RAM1005、およびバス1009を備えるコンピュータである。入力装置1001、出力装置1002、CPU1003、内蔵ストレージ1004、およびRAM1005は、バス1009により接続される。
【0107】
入力装置1001は入力ボタン、タッチパッド、タッチパネルディスプレイなどといったユーザインタフェースとなる装置であり、ユーザの操作を受け付ける。なお、入力装置1001は、ユーザの接触操作を受け付ける他、音声での操作、リモコン等での遠隔操作を受け付ける構成であってもよい。
【0108】
内蔵ストレージ1004は、フラッシュメモリなどである。また、内蔵ストレージ1004は、オーディオ装置1の機能を実現するためのプログラムおよび/またはオーディオ装置1の機能構成を利用したアプリケーションが、予め記憶されているとしてもよい。
【0109】
RAM1005は、Random Access Memoryであり、プログラムまたはアプリケーションの実行に際してデータ等の記憶に利用される。
【0110】
CPU1003は、Central Processing Unitであり、内蔵ストレージ1004に記憶されたプログラムやアプリケーションをRAM1005にコピーし、そのプログラムやアプリケーションに含まれる命令をRAM1005から順次読み出して実行する。
【0111】
なお、本実施の形態では、入力信号が2組のチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を再生する例について説明したが、それに限られず、本実施の形態は、3組以上のチャネルペアからなる6チャネル以上のマルチチャネル信号を再生する場合にも応用することができる。
【0112】
[1-3.効果等]
本実施の形態のオーディオ装置1は、2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生(リプロデュース)する装置である。オーディオ装置1は、入力されたマルチチャネル信号を立体音響処理して出力する立体音響処理部(例えば立体音響処理部21、22)と、マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する相関導出部(例えば相関導出部31、32)と、少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように立体音響処理部21、22を制御する制御部40とを備える。
【0113】
このように、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、制御部40が、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように立体音響処理部21、22を制御することで、オーディオ装置1は、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0114】
また、相関導出部31、32は、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関係数を求めることで上記相関を導出してもよい。
【0115】
この構成によれば、相関係数を用いて相関の大小関係を求めることができるので、少なくとも2組のチャネルペアのうち、立体音響効果を強めるべきチャネルペアを的確に選ぶことができる。これにより、オーディオ装置1は、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0116】
また、制御部40は、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの信号の増幅率を、他方のチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくするように、立体音響処理部21、22を制御してもよい。
【0117】
このように、少なくとも2組のチャネルペアのうち、チャネルペアの信号の相関が小さいほうのチャネルペアの増幅率を大きくすることで、当該チャネルペアの出音部の音像を際立たせることができる。これにより、オーディオ装置1は、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0118】
また、オーディオ装置1は、立体音響処理部を複数備え、さらに、複数の立体音響処理部21、22と複数のスピーカ61、62のうち1つのスピーカ61とを結ぶ経路上に配置され、複数の立体音響処理部21、22のそれぞれから出力されたチャネルペアの信号のうちの第1信号s1を加算して、1つのスピーカ61に出力する第1の加算部51と、複数の立体音響処理部21、22と複数のスピーカ61、62のうち1つのスピーカ61と異なる他のスピーカ62とを結ぶ経路上に配置され、複数の立体音響処理部21、22のそれぞれから出力されたチャネルペアの信号のうちの第2信号s2を加算して、他のスピーカ62に出力する第2の加算部52とを備えていてもよい。
【0119】
このように、オーディオ装置1が第1の加算部51および第2の加算部52を備えることで、立体音響処理部21、22のそれぞれから出力された第1信号s1を加算してスピーカ61に出力し、立体音響処理部21、22のそれぞれから出力された第2信号s2を加算してスピーカ62に出力することができる。これにより、オーディオ装置1は、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0120】
本実施の形態のオーディオ信号出力方法は、2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するための方法である。オーディオ信号出力方法は、入力されたマルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出し、少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように、入力されたマルチチャネル信号を立体音響処理して出力する。
【0121】
このように、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うことで、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0122】
[1-4.実施の形態1の変形例1]
次に、実施の形態1の変形例1のオーディオ装置1Aについて説明する。変形例1では、増幅率を大きくするのではなく、出音部の音像をリスナー90に近づけて定位することで立体音響効果を強める例について説明する。なお、ここでも図7と同様に、フロントチャネルペアおよびサラウンドチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を2チャネルの信号にダウンミックスして出力する例について説明する。
【0123】
図16は、変形例1のオーディオ信号出力方法を示すフローチャートである。図17は、変形例1におけるオーディオ装置1Aを含むオーディオシステム5Aにて、仮想的な出音部X1、X2、Y1、Y2の音像を模式的に示す図である。
【0124】
まず、チャネルペア内の信号の相関を導出する(ステップS10)。具体的には、相関導出部31にて、フロントチャネルペアであるフロントLの信号およびフロントRの信号の相関係数rfを算出する。また、相関導出部32にて、サラウンドチャネルペアであるサラウンドLの信号およびサラウンドRの信号の相関係数rsを算出する。
【0125】
次に、各チャネルペアの相関を比較する(ステップS20)。具体的には、制御部40にて、ステップS10で相関係数rfおよび相関係数rsを比較する。
【0126】
次に、制御部40は、相関が小さいチャネルペアの立体音響効果を強くする(ステップS30A)。制御部40は、例えばサラウンドチャネルペアの信号の相関がフロントチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、サラウンドチャネルペアの出音部X2、Y2の音像を現状の音像の位置よりも、チャネルペアのセンターラインCLに近づけて定位するように、立体音響処理部21、22を制御する。具体的には、制御部40は、サラウンドチャネルペアの信号を処理するための伝達関数を変更することで、図17に示すように、出音部X2、Y2の音像がチャネルペアのセンターラインCLに近づくように定位させる。なお、制御部40は、出音部X2、Y2の音像をセンターラインCLに近づけて定位させる場合、リスナー90に近づけて定位することが望ましい。
【0127】
変形例1のオーディオ装置1Aでも、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、制御部40が、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように立体音響処理部21、22を制御する。これにより、オーディオ装置1Aは、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0128】
また、制御部40は、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの出音部の音像を、当該チャネルペアのセンターラインCLに近づけて定位するように、立体音響処理部21、22を制御してもよい。
【0129】
このように、少なくとも2組のチャネルペアのうち、チャネルペアの信号の相関が小さいチャネルペアの出音部の音像をセンターラインCLに近づけることで、当該チャネルペアの出音部の音像を際立たせることができる。これにより、オーディオ装置1Aは、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0130】
また、制御部40は、一方のチャネルペアの信号を処理するための伝達関数を変更することで、出音部の音像がチャネルペアのセンターラインCLに近づくように定位させてもよい。
【0131】
このように、伝達関数を変更することで、一方のチャネルペアの出音部の音像の位置を変更し、一方のチャネルペアの出音部の音像を際立たせることができる。これにより、オーディオ装置1Aは、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0132】
[1-5.実施の形態1の変形例2]
前述した実施の形態1では、2組のチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を処理する例について示したが、実施の形態1の変形例2では、実施の形態1に示す技術的思想をARIB標準規格STD-B32の22.2chの音声圧縮符号化規格に適用した例について説明する。
【0133】
図18は、変形例2におけるオーディオ装置1Bを含むオーディオシステム5Bのブロック構成図である。なお、変形例2では、立体音響処理部、相関導出部、加算部、スピーカ、チャネルペア伝送経路のそれぞれについて、「第1の」~「第8の」という記載を省略する場合がある。
【0134】
図18に示すように、ARIB標準規格STD-B32の22.2chの音声圧縮符号化規格には、8組のチャネルペアが含まれている。各チャネルペアの内訳は、第1のチャネルペアがFront CenterLおよびFront CenterRであり、第2のチャネルペアがFrontLおよびFrontRであり、第3のチャネルペアがSideLおよびSideRであり、第4のチャネルペアがBackLおよびBackRであり、第5のチャネルペアがTop FrontLおよびTop FrontRであり、第6のチャネルペアがTop SideLおよびTop SideRであり、第7のチャネルペアがTop BackLおよびTop BackRであり、第8のチャネルペアがBottom FrontLおよびBottom FrontRである。
【0135】
オーディオ装置1Bは、8つの立体音響処理部21、22、23、24、25、26、27、28と、8つの相関導出部31、32、33、34、35、36、37、38と、制御部40と、第1の加算部51および第2の加算部52とを備えている。図18では、8つの制御部40が示されているが、実際は1つの制御部40によって構成されている。また、図18には、8組のチャネルペアに対応する8つのチャネルペア伝送経路11、12、13、14、15、16、17、18が示されている。
【0136】
8組のチャネルペアの信号は、PCM格納用メモリ72(図3参照)から出力され、8つのチャネルペア伝送経路11~18を介して対応する8つの相関導出部31~38に入力される。各相関導出部31~38では、8組のチャネルペア内の信号の相関を示す値が導出される。具体的には、各相関導出部31~38は、相関を示す値として、相関係数r1、r2、r3、r4、r5、r6、r7、r8を導出する。制御部40は、導出された相関係数r1~r8を受け取り、各相関係数r1~r8を(式9)に代入して増幅率α1、α2、α3、α4、α5、α6、α7、α8に変換する。
【0137】
なお、上記相関を示す値を増幅率に変換する方法は、相関を示す値が小さいほど増幅率が大きくなるような変換方法であれば、他のどのような方法であってもよい。例えば、相関係数r1~r8に対して、それぞれ同じ単調減少関数を掛けて得られる値を増幅率α1~α8としてもよい。あるいは、相関係数が0.5以下のチャネルペアに対しては(式9)を用いて増幅率を求め、相関係数が0.5を超えるチャネルペアに対しは、増幅率を1.0に固定するという方法であってもよい。
【0138】
上記の2つの例では、直接的に相関係数r1~r8を比較しているわけではないが、結果的に、相関係数が小さいチャネルペアの増幅率が、相関係数が大きいチャネルペアの増幅率より大きくなる。
【0139】
一方、相関係数r1~r8を直接的に比較し、相関係数が小さいチャネルペアの増幅率を、相関係数が大きいチャネルペアの増幅率より大きくするように制御してもよい。例えば、相関係数r1~r8の中の小さい方から3番目までのチャネルペアについては上記のような変換処理を行い、残りの5個のチャネルペアについては足きりを行って、増幅率を1.0とするなど所定の値に固定してもよい。
【0140】
制御部40は、求められた増幅率α1~α8を、対応する立体音響処理部21~28に出力する。
【0141】
各立体音響処理部21~28は、8組のチャネルペアの信号に対して立体音響処理を行った後、増幅率α1~α8のそれぞれを掛けて出力する。なお、各立体音響処理部21~28にて立体音響処理を行う際の伝達関数は、現実のスピーカ61、62から出音する音が、図1に示す22.2chの出音部の対象となる位置からあたかも聞こえるように制御する伝達関数である。
【0142】
立体音響処理部21~28から出力された信号のうち、各チャネルペアの片方の信号である第1信号s1は第1の加算部51にて加算されて、第1のスピーカ61から出音される。また、立体音響処理部21~28から出力された信号のうち、各チャネルペアのもう片方の信号である第2信号s2は、第2の加算部52にて加算されて、第2のスピーカ62から出音される。
【0143】
変形例2のオーディオ装置1Bは、2つの出音部が左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを8組含む16チャネルのマルチチャネル信号を、2チャネルの信号にダウンミックスして2つのスピーカ61、62に出力するための装置である。オーディオ装置1Bは、入力されたマルチチャネル信号を立体音響処理して出力する8つの立体音響処理部21~28と、マルチチャネル信号に含まれる8組のチャネルペアについて、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する8つの相関導出部31~38と、8組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように、8つの立体音響処理部を制御する制御部40と、8つの立体音響処理部21~28と2つのスピーカ61、62のうちの第1のスピーカ61とを結ぶ経路上に配置され、8つの立体音響処理部21~28のそれぞれから出力されたチャネルペアの信号のうちの第1信号s1を加算して、第1のスピーカ61に出力する第1の加算部51と、8つの立体音響処理部21~28と2つのスピーカ61、62のうちの第2のスピーカ62とを結ぶ経路上に配置され、8つの立体音響処理部21~28のそれぞれから出力されたチャネルペアの信号のうちの第2信号s2を加算して、第2のスピーカ62に出力する第2の加算部52とを備える。
【0144】
この構成によれば、22.2ch規格のマルチチャネル信号を2chにダウンミックスする際に、立体感の高い、華やかで、楽しい2ch信号を生成することができる。
【0145】
(実施の形態2)
実施の形態2のオーディオ装置1Cの構成について、図19図23を参照しながら説明する。
【0146】
実施の形態2のオーディオ装置1Cは、例えば、22.2chのコンテンツのように、左右対称に配置された2つのスピーカによって定義されるチャネルペアを複数有するマルチチャネル信号を再生するための装置である。
【0147】
図19は、オーディオ装置1Cを含むオーディオシステム5Cを示す模式図であって、現実のスピーカの配置を示す図である。実施の形態2では、入力信号が2組のチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を処理して、図19に示すように4つのスピーカに出力する例について説明する。
【0148】
図20は、オーディオ装置1Cを含むオーディオシステム5Cのブロック構成図である。
【0149】
オーディオ装置1Cは、第1の音響処理部21a、第2の音響処理部22a、第1の相関導出部31、第2の相関導出部32および制御部40を備えている。オーディオ装置1Cは、オーディオ装置1Cに入力された音響信号を信号処理して、第1のスピーカ66、第2のスピーカ67、第3のスピーカ68および第4のスピーカ69に出力する。なお、第1のスピーカ66、第2のスピーカ67、第3のスピーカ68および第4のスピーカ69のそれぞれは、オーディオ装置1Cに有線または無線で接続されている。オーディオ装置1Cは、実施の形態1に示したような加算部51、52を備えていない。
【0150】
図20には、フロントLチャネルおよびフロントRチャネルで構成される第1のチャネルペアの各信号を伝送する第1のチャネルペア伝送経路11と、サラウンドLチャネルおよびサラウンドRチャネルで構成される第2のチャネルペアの各信号を伝送する第2のチャネルペア伝送経路12とが示されている。
【0151】
なお実施の形態2において、音響処理部、相関導出部、チャネルペア伝送経路のそれぞれについて、「第1の」および「第2の」という記載を省略する場合がある。また、スピーカについて、「第1の」~「第4の」という記載を省略する場合がある。
【0152】
オーディオ装置1Cは、チャネルペア伝送経路11を介して第1のチャネルペアの信号であるフロントLの信号およびフロントRの信号を受信する。フロントLの信号およびフロントRの信号のそれぞれは、リスナーの前方の左右に配置されたスピーカ66、67から出音するように定義された信号である(図19参照)。
【0153】
また、オーディオ装置1Cは、チャネルペア伝送経路12を介して第2のチャネルペアの信号であるサラウンドLの信号およびサラウンドRの信号を受信する。サラウンドLの信号およびサラウンドRの信号のそれぞれは、リスナーの後方の左右に配置されたスピーカ68、69から出音するように定義された信号である(図19参照)。
【0154】
音響処理部21a、22aのそれぞれは、マルチチャネル信号を音響処理して出力する。音響処理部21aは、チャネルペア伝送経路11に接続され、第1のチャネルペアの信号に対して音響処理を行う。音響処理部22aは、チャネルペア伝送経路12に接続され、第2のチャネルペアの信号に対して音響処理を行う。
【0155】
相関導出部31はチャネルペア伝送経路11に接続され、相関導出部32はチャネルペア伝送経路12に接続されている。相関導出部31、32のそれぞれは、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する。
【0156】
相関導出部31は、算出した相関係数rfを制御部40に出力する。相関導出部32は、算出した相関係数rsを制御部40に出力する。なお、これらの相関係数rf、rsの求め方は、実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0157】
制御部40は、相関導出部31、32、および、音響処理部21a、22aのそれぞれに接続されている。制御部40は、2組のチャネルペアのうち、一方のチャネルペアの信号の相関と他方のチャネルペアの信号の相関とを比較する。そして、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように、音響処理部21a、22aを制御する。
【0158】
例えば、第2のチャネルペアの信号(サラウンドLの信号およびサラウンドRの信号)の相関が第1のチャネルペアの信号(フロントLの信号およびフロントRの信号)の相関よりも小さい場合、制御部40は、第2のチャネルペアの信号の立体音響効果が第1のチャネルペアの信号の立体音響効果よりも強くなるように、音響処理部21a、22aを制御する。この場合、制御部40は、第2のチャネルペアの信号の立体音響効果を強めること、および、第1のチャネルペアの信号の立体音響効果を弱めることの少なくとも一方を実行する。
【0159】
なお、立体音響効果は、左右の耳が得る音の違いによって音を立体的に知覚する効果であり、スピーカ66、67のセンターラインCL、または、スピーカ68、69のセンターラインCLに位置するリスナー90が得る音を変えることで、変化させることができる。
【0160】
上記の立体音響効果は、チャネルペアの信号の増幅率を変えることで、変化させることができる。本実施の形態の制御部40は、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの信号の増幅率を、他方のチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくするように、音響処理部21a、22aを制御する。
【0161】
相関係数が小さいチャネルペアの信号の増幅率を、相関係数が大きいチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくする場合、増幅率αf、αsは、例えば(式10)および(式11)に示すように、所定の単調減少関数に相関係数rf、rsを代入することで求めることができる。なお、なお、増幅率αf、αsの求め方は、実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0162】
次に、音響処理部21a、22aについて、図20図21および図22を参照しながら説明する。
【0163】
図21は、オーディオ装置1Cの第1の音響処理部21aの構成を示す図である。音響処理部21aは、第1のチャネルペアの信号に対して音響処理を行い、増幅率αfを掛けて出力する。このように音響処理部21aによる処理を行って出力された出力信号s1をスピーカ66に出力し、出力信号s2をスピーカ67に出力する(図20参照)。
【0164】
図22は、オーディオ装置1Cの第2の音響処理部22aの構成を示す図である。音響処理部22aは、第2のチャネルペアの信号に対して音響処理を行い、増幅率αsを掛けて出力する。このように音響処理部22aによる処理を行って出力された出力信号s1をスピーカ68に出力し、出力信号s2をスピーカ69に出力する(図20参照)。
【0165】
図23は、オーディオ装置1Cを含むオーディオシステム5Cにて、現実のスピーカ66~69から出力される音を模式的に示す図である。例えば、第2のチャネルペアの信号の相関が第1のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合、図23に示すように、制御部40は、第2のチャネルペアの立体音響効果を第1のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように音響処理部21a、22aを制御する。これにより、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0166】
なお、実施の形態2では、入力信号が2組のチャネルペアからなる4チャネルのマルチチャネル信号を再生する例について説明したが、それに限られず、実施の形態2は、3組以上のチャネルペアからなる6チャネル以上のマルチチャネル信号を再生する場合にも応用することができる。
【0167】
このように、実施の形態のオーディオ装置1Cは、2つのスピーカが左右対称に配置されるように定義されるチャネルペアを少なくとも2組含む4チャネル以上のマルチチャネル信号を再生するためのオーディオ装置1Cであって、入力されたマルチチャネル信号を音響処理して出力する音響処理部(例えば音響処理部21a、22a)と、マルチチャネル信号に含まれる少なくとも2組のチャネルペアについて、チャネルペア内のそれぞれの信号の相関を導出する相関導出部(例えば相関導出部31、32)と、少なくとも2組のチャネルペアのうち一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように音響処理部21a、22aを制御する制御部40とを備える。
【0168】
このように、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、制御部40が、一方のチャネルペアの立体音響効果を他方のチャネルペアの立体音響効果よりも強める処理を行うように音響処理部21a、22aを制御することで、オーディオ装置1Cは、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0169】
また、制御部40は、一方のチャネルペアの信号の相関が他方のチャネルペアの信号の相関よりも小さい場合に、一方のチャネルペアの信号の増幅率を、他方のチャネルペアの信号の増幅率よりも大きくするように、音響処理部21a、22aを制御してもよい。
【0170】
このように、少なくとも2組のチャネルペアのうち、チャネルペアの信号の相関が小さいほうのチャネルペアの増幅率を大きくすることで、例えば、当該チャネルペアに対応するスピーカから出力される音を際立たせることができる。これにより、オーディオ装置1Cは、マルチチャネル信号を再生する際に、立体感のある音を出力することができる。
【0171】
以上、本開示の態様に係るオーディオ装置等について、実施の形態等に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0172】
また、以下に示す形態も、本開示の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0173】
(1)上記のオーディオ装置を構成する構成要素の一部は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムであってもよい。前記RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0174】
(2)上記のオーディオ装置を構成する構成要素の一部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0175】
(3)上記のオーディオ装置を構成する構成要素の一部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカードまたは前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカードまたは前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカードまたは前記モジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0176】
(4)また、上記のオーディオ装置を構成する構成要素の一部は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号をコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0177】
また、上記のオーディオ装置を構成する構成要素の一部は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0178】
(5)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0179】
(6)また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【0180】
(7)また、前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、または前記プログラムまたは前記デジタル信号を、前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0181】
(8)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本開示のオーディオ装置は、テレビ受信機、または、DVD/BDRなどの再生機器に利用できる。
【符号の説明】
【0183】
1、1A、1B、1C オーディオ装置
5、5A、5B、5C オーディオシステム
11、12、13、14、15、16、17、18 チャネルペア伝送経路
21、22、23、24、25、26、27、28 立体音響処理部
21a、22a 音響処理部
31、32、33、34、35、36、37、38 相関導出部
40 制御部
51 第1の加算部
52 第2の加算部
61、66 第1のスピーカ
62、67 第2のスピーカ
68 第3のスピーカ
69 第4のスピーカ
70 22.2chの圧縮符号化信号
71 MPEG4AACデコーダ
72 PCM格納用メモリ
90 リスナー
1000 コンピュータ
1001 入力装置
1002 出力装置
1003 CPU
1004 内蔵ストレージ
1005 RAM
1009 バス
CL センターライン
M、HX、HY 伝達関数行列
TL、TR、TLl、TRl、TLr、TRr、TDf、TCf、TDs、TCs 伝達関数
rf、rs、r1、r2、r3、r4、r5、r6、r7、r8 相関係数
αf、αs、α1、α2、α3、α4、α5、α6、α7、α8 増幅率
s1 第1信号
s2 第2信号
X1、X2、Y1、Y2 出音部
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23