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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】配線部材及び配線部材の配設構造
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/40 20060101AFI20221101BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01B7/40 307Z
H01B7/00 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020569290
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2019003447
(87)【国際公開番号】W WO2020157929
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】蒲 拓也
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190696(JP,A)
【文献】特開2006-222059(JP,A)
【文献】谷角光生,リード線,発明協会公開技報,公枝番号94-9311号,日本,公益社団法人発明協会,1994年05月02日,第1頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/40
H01B 7/00
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定されたベース部材と、を含む配線体と、
前記配線体が前記線状伝送部材の延在方向中間部で折曲げられた状態で、前記配線体において折曲げ箇所から相互に反対側に延びる第1部分及び第2部分が重なる部分を留めて前記配線体の折曲げ状態を維持しているとともに、前記第1部分及び前記第2部分の相対的な離間移動によって前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態を解消可能に形成されている仮留め部と、
を備え、
前記仮留め部は、前記第1部分における前記ベース部材と、前記第2部分における前記ベース部材とが直接固定された直接固定部を含み、
前記ベース部材として、主面上に前記線状伝送部材が固定されたシート部材と、前記シート部材とは反対側から前記線状伝送部材を覆うカバーとを含み、
前記カバーは、前記シート部材に固定され、前記線状伝送部材には固定されておらず、
前記第1部分及び前記第2部分の少なくとも一方において、前記仮留め部は、前記カバーを留めている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記仮留め部は、前記第1部分及び前記第2部分の間に介在し、前記第1部分及び前記第2部分に接着された接着部を含む、配線部材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記仮留め部は、前記シート部材と前記線状伝送部材との保持力よりも弱い力で前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態を解消可能に形成されている、配線部材。
【請求項6】
請求項1、請求項2又は請求項4に記載の配線部材であって、
前記仮留め部は、前記シート部材と前記カバーとの保持力よりも弱い力で前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態を解消可能に形成されている、配線部材。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項4又は請求項6に記載の配線部材と、
前記仮留め部が前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態が解消されて前記第1部分及び前記第2部分が展開された状態で前記配線部材が配設されている配設対象と、
を備える、配線部材の配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材と、長手方向に沿った少なくとも一部の領域で前記機能性外装部材に重なるように配設された電線と、を備え、前記電線の絶縁被覆と前記機能性外装部材とが重なる部分の少なくとも一部が溶着されている、ワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたワイヤーハーネスは、梱包、搬送時等において、シート状に形成された機能性外装部材を折曲げることで、コンパクトな形態にすることができる。このワイヤーハーネスの折曲げ形態を維持するには、例えばテープ巻き等が考えられる。
【0005】
しかしながら、テープ巻きによってワイヤーハーネスの折曲げ形態を維持すると、展開するときにテープ巻き部分を取り外すのが面倒である。
【0006】
そこで本発明は、配線体が折曲げられた配線部材において、展開容易に折曲げ形態を維持する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る配線部材は、線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定されたベース部材と、を含む配線体と、前記配線体が前記線状伝送部材の延在方向中間部で折曲げられた状態で、前記配線体において折曲げ箇所から相互に反対側に延びる第1部分及び第2部分が重なる部分を留めて前記配線体の折曲げ状態を維持しているとともに、前記第1部分及び前記第2部分の相対的な離間移動によって前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態を解消可能に形成されている仮留め部と、を備える。
【0008】
第2の態様に係る配線部材は、第1の態様に係る配線部材であって、前記仮留め部は、前記第1部分及び前記第2部分の間に介在し、前記第1部分及び前記第2部分に接着された接着部を含む。
【0009】
また第1の態様に係る配線部材において、前記仮留め部は、前記第1部分における前記ベース部材と、前記第2部分における前記ベース部材とが直接固定された直接固定部を含む。
【0010】
第4の態様に係る配線部材は、第1又は第2の態様に係る配線部材であって、前記仮留め部は、前記シート部材と前記線状伝送部材との保持力よりも弱い力で前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態を解消可能に形成されている。
【0011】
また第1の態様に係る配線部材において、前記ベース部材として、主面上に前記線状伝送部材が固定されたシート部材と、前記シート部材とは反対側から前記線状伝送部材を覆うカバーとを含み、前記カバーは、前記シート部材に固定され、前記線状伝送部材には固定されておらず、前記第1部分及び前記第2部分の少なくとも一方において、前記仮留め部は、前記カバーを留めている。
【0012】
第6の態様に係る配線部材は、第1、第2又は第4の態様に係る配線部材であって、前記仮留め部は、前記シート部材と前記カバーとの保持力よりも弱い力で前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態を解消可能に形成されている。
【0013】
第7の態様に係る配線部材の配設構造は、第1、第2、第4又は第6の態様に係る配線部材と、前記仮留め部が前記第1部分及び前記第2部分を留めた状態が解消されて前記第1部分及び前記第2部分が展開された状態で前記配線部材が配設されている配設対象と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
各態様によると、仮留め部は、第1部分及び第2部分が相対的な離間移動によって第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されているため、展開動作によって、仮留め部による仮留め状態を解消可能となる。これにより、配線体が折曲げられた配線部材において、展開容易に折曲げ形態を維持可能となる。
【0015】
第2の態様によると、例えば接着剤又は両面粘着テープなどの介在物によって、簡易に仮留め部を形成することができる。
【0016】
また各態様によると、仮留め部として他の部材を設けずに済む。
【0017】
第4の態様によると、仮留め部による仮留め状態を解消する際、シート部材から線状伝送部材がはがれることを抑制できる。
【0018】
また各態様によると、線状伝送部材が固定されていないカバー部を留めることによって、仮留め部による仮留め状態を解消する際、シート部材から線状伝送部材がはがれることを抑制できる。
【0019】
第6の態様によると、仮留め部による仮留め状態を解消する際、シート部材からカバーがはがれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る配線部材を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿って切断した概略断面図である。
図3図2のIII-III線に沿って切断した概略断面図である。
図4】仮留め部の変形例を示す概略断面図である。
図5】接着部を有する配線部材が展開される様子を示す説明図である。
図6】直接固定部を有する配線部材が展開される様子を示す説明図である。
図7】実施形態に係る配線部材の配設構造を示す概略断面図である。
図8】配線部材の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
{実施形態}
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。図1は、実施形態に係る配線部材10を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿って切断した概略断面図である。図3は、図2のIII-III線に沿って切断した概略断面図である。なお、図1に示す配線部材10において、紙面左側部分は配線体12が折曲げられる前の状態を示し、紙面右側は配線体12が折曲げられた後の状態を示している。
【0022】
配線部材10は、配線体12と、配線体12の折曲げ状態を維持する仮留め部40と、を備える。例えば配線部材10は、配線体12の梱包形態などである。
【0023】
配線体12は、車両に搭載されて、車両の各機器に電力を供給したり、信号の授受をしたりするための部材である。配線体12は、線状伝送部材20と、線状伝送部材20が固定されたベース部材30と、を含む。
【0024】
線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材20は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、裸電線、光ファイバ等であってもよい。
【0025】
電気を伝送する線状伝送部材20としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材20は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0026】
また線状伝送部材20は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0027】
線状伝送部材20の端部には、線状伝送部材20と相手部材との接続形態に応じて、適宜端子、コネクタC等が設けられる。
【0028】
図3に示す例では、線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する伝送線本体22と、伝送線本体22を覆う被覆24とを含む。線状伝送部材20が一般電線である場合、伝送線本体22は芯線であり、被覆24は絶縁被覆である。また図3に示す例では、一のシート部材32に同じ径、構造の線状伝送部材20が複数本配設されているが、複数本の線状伝送部材20の径、構造等は適宜設定されていればよく、径、構造等の異なる線状伝送部材20が同じシート部材32に配設されていてもよい。
【0029】
ベース部材30は、線状伝送部材20を2次元的に位置決めした状態で保持する部材である。ここでは、ベース部材30は、シート部材32と、カバー34とを含む。
【0030】
シート部材32の一方主面上に線状伝送部材20が配設されている。シート部材32は、複数の線状伝送部材20を並んだ状態に保持する。シート部材32は、湾曲しつつ複数の線状伝送部材20を平面的に位置決めした状態で保持できる程度の剛性を有する部材であってもよいし、平らな状態を保った状態で複数の線状伝送部材20を2次元的に位置決めした状態で保持できる程度の剛性を有する部材であってもよい。シート部材32は、部分的に壁が立設される等、立体的な形状部分を有していてもよい。ここではシート部材32は曲げ可能な部材であるものとして説明する。
【0031】
シート部材32を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材32は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成される。シート部材32は、不織布、織地、編地など繊維を有する繊維材等であってもよいし、非繊維材であってもよい。非繊維材としては、内部が一様に埋った充実状のシート材、または樹脂が発泡成形された発泡体などであってもよい。シート部材32は、金属などの材料を含むこともあり得る。
【0032】
シート部材32は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。また例えば、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。また、シート部材32は、非繊維材層と非繊維材層とが重ねられたものであってもよいし、非繊維材層と繊維材層が重ねられたものであってもよいし、繊維材層と繊維材層とが重ねられたものであってもよい。
【0033】
シート部材32に線状伝送部材20が固定されている。線状伝送部材20は、シート部材32の主面上において、所定の経路に沿って配設された状態で、シート部材32に固定されている。シート部材32は、線状伝送部材20の経路に沿って延びる帯状に形成されている。シート部材32上における線状伝送部材20の経路は適宜設定されていればよく、線状伝送部材20は、シート部材32上で直線状に配設されていてもよいし、曲がって配設されていてもよい。線状伝送部材20がシート部材32上で曲がって配設されている場合、シート部材32も曲がって形成されていてもよい。複数本の線状伝送部材20は、シート部材32上で分岐したり、交差したりするように異なる経路で配設されていてもよい。この場合、シート部材32も分岐したり、交差したりするように形成されていてもよい。
【0034】
図1に示す例では、複数の線状伝送部材20が途中で分岐しつつ、H字状に配設されている。シート部材32は、複数の線状伝送部材20の経路に沿うH字状に形成されている。シート部材32が複数の線状伝送部材20の経路に沿った形状に形成されることで、シート部材32と他部品との干渉抑制、軽量化等が可能となる。もちろんシート部材32が複数の線状伝送部材20の経路に沿った形状に形成されていることは必須ではなく、方形状等、他の形状に形成されていてもよい。
【0035】
線状伝送部材20とシート部材32とは、固定されている。係る固定態様として、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、線状伝送部材20とシート部材32とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様である。例えば、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、線状伝送部材20をシート部材32に向けて押え込んだり、縫糸、別のシート材、粘着テープなどが、線状伝送部材20とシート部材32とを囲む状態などとなって、線状伝送部材20とシート部材32とを挟み込んだりして、線状伝送部材20とシート部材32とが固定された状態に維持するものである。以下では、線状伝送部材20とシート部材32とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。接触部位固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、非接触部位固定にも適用可能である。
【0036】
係る接触部位固定の態様として、間接固定であってもよいし、直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで間接固定とは、線状伝送部材20とシート部材32とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープ、面ファスナなどの介在部材を介して間接的にくっついて固定されているものである。また直接固定とは、線状伝送部材20とシート部材32とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。直接固定では、例えば線状伝送部材20とシート部材32とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。以下では、線状伝送部材20とシート部材32とが、直接固定の状態にあるものとして説明する。直接固定に関する各説明は、適用不可能な構成でない限り、間接固定にも適用可能である。
【0037】
係る直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、直接固定の状態としては、熱による直接固定の状態であってもよいし、溶剤による直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による直接固定の状態であるとよい。
【0038】
このとき直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を含む各種手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材20とシート部材32とは、その手段による直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって直接固定の状態が形成されると、線状伝送部材20とシート部材32とは、超音波溶着による直接固定の状態とされる。溶着によって熱による直接固定の状態を形成した部分(線状伝送部材20とシート部材32との固定部分)を溶着部、このうち、超音波溶着による固定部分を超音波溶着部、加熱加圧溶着による固定部分を加熱加圧溶着部等と称してもよい。
【0039】
直接固定の場合、線状伝送部材20の被覆24に含まれる樹脂のみが溶けていてもよいし、シート部材32に含まれる樹脂のみが溶けていてもよい。これらの場合において、溶けた方の樹脂が他方の外面にくっついた状態となり、比較的はっきりした界面が形成されることがある。また、直接固定の場合、線状伝送部材20の被覆24に含まれる樹脂とシート部材32に含まれる樹脂の両方が溶けていてもよい。この場合、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。特に、線状伝送部材20の被覆24とシート部材32とが、同じ樹脂材料など相溶しやすい樹脂を含む場合などに、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。
【0040】
カバー34は、シート部材32に固定されている。カバー34は、シート部材32とは反対側から線状伝送部材20を覆う。カバー34は、線状伝送部材20と固定されていないが、固定されていてもよい。
【0041】
シート部材32とカバー34との固定態様として、図3に示す例では、接着剤などの介在物36を用いた間接固定が示されている。もちろんシート部材32とカバー34との固定態様は、間接固定に限定されるものではなく、シート部材32と線状伝送部材20との固定態様で説明した各種固定態様を用いることができる。
【0042】
シート部材32とカバー34とに同じシート状部材が用いられていてもよいし、異なるシート状部材が用いられていてもよい。ここでは、シート部材32とカバー34とに異なるシート状部材が用いられている。ここではシート部材32に用いられるシート状部材は、カバー34に用いられるシート状部材よりも、線状伝送部材20との固定に適している。カバー34に用いられるシート状部材は、シート部材32に用いられるシート状部材よりも、剛性が高く、形状維持性に優れている。例えばシート部材32は、線状伝送部材20の被覆24と同材料によって充実シート状に形成されて電線が固定される第1層と、不織布によって形成されて第1層に重なる第2層とを有する部材であり、カバー34はナイロンなどによって充実シート状に形成された部材である。
【0043】
カバー34は、例えば折曲げ困難な剛性を有するように形成される。この場合、配線部材10には折曲げ容易となる折曲げ容易部が付与されているとよい。図2に示す例では、係る折曲げ容易部として、2つの折曲げ容易部16、17が設けられている。折曲げ容易部16は、山、谷が交互に連続する蛇腹構造部35がカバー34に設けられた部分である。折曲げ容易部17は、部分的にカバー34が設けられていない部分である。特にここでは折曲げ容易部17は、カバー34が間隔をあけて設けられた部分である。配線体12は、折曲げ容易部16、17の部分でそれぞれ折曲げられている。
【0044】
仮留め部40は、配線体12が線状伝送部材20の延在方向中間部で折曲げられた状態で、配線体12の折曲げ状態を維持している。仮留め部40は、配線体12において折曲げ箇所から相互に反対側に延びる第1部分及び第2部分が重なる部分を留めて配線体12の折曲げ状態を維持している。
【0045】
また仮留め部40は、第1部分及び第2部分の相対的な離間移動によって第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されている。このとき第1部分及び第2部分の相対的な離間移動の方向としては、特に限定されるものではない。例えば、第1部分及び第2部分の重なる方向(図2の紙面における上下方向)への移動であってもよいし、これに直交する方向(図2の紙面における左右方向又は図2の紙面に対する法線方向)への移動であってもよい。
【0046】
仮留め部40は、第1部分及び第2部分を仮留め可能であればよく、その構成は、特に限定されるものではない。例えば、図2図3に示す例では、仮留め部40として接着部42が設けられている。接着部42は、間接固定部の一例であるととらえることができる。
【0047】
接着部42は、第1部分及び第2部分の間に介在し、第1部分及び第2部分に接着されている介在物44を有する。介在物44は、粘着剤であってもよいし、粘着剤以外の接着剤であってもよい。粘着剤以外の接着剤としては、ホットメルト、熱硬化型接着剤、湿気硬化型接着剤、2液硬化型接着剤などを用いることができる。粘着剤以外の接着剤が用いられた場合、はがされた状態そのままでは、再接着不可となる。
【0048】
仮留め部40として、接着部42以外の間接固定部が設けられていてもよい。例えば、接着部42以外の間接固定部として面ファスナが設けられていてもよい。
【0049】
図4は、仮留め部40の変形例を示す概略断面図である。図4に示す例では、仮留め部40として直接固定部46が設けられている。
【0050】
直接固定部46は、第1部分におけるベース部材30と、第2部分におけるベース部材30とが直接固定されて形成されている。特に図4に示す例では、直接固定部46は、第1部分におけるカバー34と、第2部分におけるカバー34とが直接固定されて形成されている。ここでいう直接固定とは、シート部材32と線状伝送部材20との固定態様で説明した直接固定と同様のものである。
【0051】
図2に示す例では、配線体12が3重に重なるように折曲げられた状態を、仮留め部40a、40bが維持している。具体的には、配線部材10において、配線体12は、基部13と、第1折曲げ部14と、第2折曲げ部15とを有する。第1折曲げ部14は、基部13の一の端部から延出して基部13に重なるように折曲げられた部分である。第2折曲げ部15は、基部13の他の端部から延出して第1折曲げ部14に重なるように折曲げられた部分である。そして仮留め部40aは、基部13と第1折曲げ部14とを留めている。また仮留め部40bは、第1折曲げ部14と第2折曲げ部15とを留めている。従って仮留め部40aに係る部分では、基部13及び第1折曲げ部14が、第1部分及び第2部分である。また仮留め部40bに係る部分では、第1折曲げ部14及び第2折曲げ部15が、第1部分及び第2部分である。
【0052】
もちろん配線部材10が、3重に重なるように配線体12が折曲げられた部分を含むことは必須の構成ではない。配線部材は、2重に重なるように配線体12が折曲げられた部分を含んでいてもよいし、4重以上に重なるように配線体12が折曲げられた部分を含んでいてもよい。また配線部材は、2重に重なるように配線体12が折曲げられた部分のみを含んでいてもよい。
【0053】
ベース部材30がシート部材32とカバー34とを有する場合において、仮留め部40は、シート部材32同士を留めてもよいし、カバー34同士を留めてもよいし、シート部材32とカバー34とを留めてもよい。図2に示す例では、仮留め部40aは、カバー34同士を留めている。また仮留め部40bは、シート部材32とカバー34とを留めている。
【0054】
仮留め部40が複数設けられる場合、複数の仮留め部40は、同じ仮留め態様であってもよいし、異なる仮留め態様であってもよい。例えば、図2に示す例では、仮留め部40a、40bは、共に接着部42であるが、一方は直接固定部46などであってもよい。
【0055】
複数の仮留め部40が同じ仮留め態様である場合、複数の仮留め部40を構成する材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ここで図2に示す例では、仮留め部40aが接着する部材の組み合わせと、仮留め部40bが接着する部材の組み合わせとが異なる。この場合、仮留め部40a、40bは同じ材料であってもよいし、それぞれの材料の組み合わせに合うように異なる材料であってもよい。
【0056】
仮留め部40は、シート部材32と線状伝送部材20との保持力よりも弱い力で第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されているとよい。これにより、仮留め部40による仮留め状態を解消する際、シート部材32と線状伝送部材20とがはがれることを抑制できる。特に、シート部材32を仮留めしている仮留め部40bが、シート部材32と線状伝送部材20との保持力よりも弱い力で第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されているとよい。
【0057】
第1部分及び第2部分の少なくとも一方において、仮留め部40は、カバー34を留めている。仮留め部40aに関し、基部13及び第1折曲げ部14の両方において、つまり第1部分及び第2部分の両方において、仮留め部40は、カバー34を留めている。仮留め部40bに関し、第2折曲げ部15において、つまり第1部分及び第2部分の一方において、仮留め部40は、カバー34を留めている。このように仮留め部40がカバー34を留めている場合、仮留め部40は、シート部材32とカバー34との保持力よりも弱い力で第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されているとよい。これにより、仮留め部40による仮留め状態を解消する際、シート部材32とカバー34とがはがれることを抑制できる。
【0058】
接着部42の場合、例えば、接着力の弱い介在物44を用いることなどによって、仮留め部40の保持力を弱くすることができる。直接固定部46の場合、例えば、直接固定部46の形成時に付与するエネルギーを小さくすることなどによって、仮留め部40の保持力を弱くすることができる。より具体的には、超音波溶着による直接固定部46の場合、振幅を小さくしたり、加圧力を小さくしたり、溶着時間を短くしたりすることによって、直接固定部46の形成時に付与するエネルギーを小さくすることができる。
【0059】
直接固定部46の場合、例えば、直接固定部46の形成時に付与するエネルギーが同じであっても、その材料の組み合わせによって、保持力が変わることがあり得る。直接固定部46の形成時に付与するエネルギーが同じ場合、通常、異種材料間での保持力は、同種材料間での保持力よりも弱くなりやすい。そこで、シート部材32とカバー34とを留めている仮留め部40bにおいて直接固定部46を採用し、カバー34同士を留めている仮留め部40aにおいて接着部42を採用してもよい。
【0060】
<展開動作>
図5は、接着部42を有する配線部材10が展開される様子を示す説明図である。なお図5に示す例では、第1部分及び第2部分が重なる方向に相対的に離間移動して、配線部材10が展開されている。後述する図6に示す例でも同様である。
【0061】
接着部42を有する配線部材10が展開される場合、接着部42による仮留め状態が解消されると、その痕跡は、例えば次のいずれか又はその複数が組み合わさった状態となることが考えられる。第1の状態は、第1部分又は第2部分と接着部42との界面がはがれた状態である。第2の状態は、第1部分又は第2部分のうち一方の一部又は全部が他方にくっついた状態である。第2の状態の典型例として、例えば、第1部分又は第2部分のうち一方の内部において接着部42との界面をなす部分と、その周囲の部分との間で層間剥離が生じ、一部が第1部分又は第2部分のうち他方にくっつく状態が挙げられる。第3の状態は、接着部42の内部において第1部分側の部分と第2部分側の部分との間で層間剥離が生じた状態である。図5に示す例では、この第3の状態が示されている。
【0062】
粘着剤などのように相手側部材との界面できれいに剥離した場合に再接着性を有する介在物44による接着部42の場合、接着部42を有する配線部材10が展開されて第1の状態になった場合、再接着性を有しうる。また粘着剤による接着部42の場合、接着部42を有する配線部材10が展開されて第2又は第3の状態になった部分は、再接着性を有さなくなるか、接着性が低下する。例えば、粘着剤による接着部42の接着面に相手部材が付着せずに第1の状態となった部分は、再接着性を有する状態となり得る。ただし、相手側部材の表面のゴミ、汚れ等が粘着剤による接着部42の接着面に付着した場合、再接着性を有しないか、接着性が低下した状態となり得る。また例えば、繊維材と粘着剤による接着部42との界面がはがれて粘着剤による接着部42の接着面に繊維材が付着して第2の状態となった部分は、再接着性を有しないか、接着性が低下した状態となり得る。
【0063】
ホットメルト接着剤のように加工しなければ再接着性を有しない介在物44による接着部42、又は熱硬化型接着剤のように加工しても再接着性を有しない介在物44による接着部42の場合、接着部42を有する配線部材10が展開されて第1から第3の状態のいずれの状態になった場合でも、その接着部42の痕跡は、少なくともそのままでは再接着性を有さなくなる。
【0064】
図6は、直接固定部46を有する配線部材10が展開される様子を示す説明図である。
【0065】
直接固定部46を有する配線部材10が展開される場合、直接固定部46による仮留め状態が解消されると、その痕跡50は、上記第1又は第2のいずれかの状態となると考えられる。すなわち第1の状態は、直接固定部46における第1部分及び第2部分の界面がはがれた状態である。第1の状態は、例えば異種材料間などで一方の樹脂のみが溶けて直接固定部46が形成された場合などに生じうる。第2の状態は、第1部分又は第2部分のうち一方の一部又は全部が他方にくっついた状態である。第2の状態は、例えば同種材料間などで両方の樹脂が溶けて直接固定部46が形成された場合などに生じうる。第2の状態の典型例として、第1部分又は第2部分の一方の内部において直接固定部46の界面を含む部分と、その周囲の部分との間で層間剥離が生じ、一部が第1部分又は第2部分のうち他方にくっつく状態が挙げられる。図6に示す例では、この第2の状態が示されている。
【0066】
直接固定部46を有する配線部材10が展開された場合、第1、第2の状態のいずれの状態になった場合でも、その直接固定部46の痕跡50は、少なくともそのままでは再接着性を有さなくなる。
【0067】
仮留め部40としては、第1部分及び第2部分の仮留め状態が一旦解消されると、その仮留め部40の痕跡がそのままでは再接着性を有しないものであることが好ましい。
【0068】
<配線部材の配設構造100>
図7は、実施形態に係る配線部材の配設構造100を示す概略断面図である。
【0069】
上記配線部材10が展開されて配設対象80に配設されることによって、配線部材の配設構造100とされている。
【0070】
配設対象80は、特に限定されるものではない。配設対象80は、車両におけるルーフ、フロア、インストルメントパネル、リインフォースメントなど車両の各部である。
【0071】
以下では、配線部材10において展開前と後とで区別が必要な場合、展開後の配線部材10について配線部材10Aと称する。配線部材10Aでは、仮留め部40が第1部分及び第2部分を留めた状態が解消されて第1部分及び第2部分が展開された状態とされている。配線部材10が展開されて仮留め部40が解消されると、展開後の配線部材10Aにおいて仮留め部40の痕跡50が残ることが考えられる。配線部材の配設構造100において、仮留め部40の痕跡50は、配設対象80への固定に使用されていない。
【0072】
配線部材の配設構造100において、仮留め部40の痕跡50は、そのまま加工しない状態では、再度の接合が不可であるとよい。これにより、展開後に仮留め部40の痕跡50が周囲の部材に付着して配線部材10の配設作業の邪魔となることを抑制できる。例えば、第1部分及び第2部分の仮留め状態が一旦解消されると、そのままでは再接着性を有しない仮留め部40が採用され、この仮留め部40を有する配線部材10が展開されることによって、仮留め部40の痕跡50は、そのまま加工しない状態では、再度の接合が不可となる。
【0073】
配線部材10において、配線体12は、基部13のうち配設対象80側を向く面とは反対側の面上に折曲げ部14、15が重なるように曲げられている。このため、配線部材の配設構造100において、仮留め部40aの痕跡50aは、配設対象80側に位置していない。なお、仮留め部40bは、第1折曲げ部14と第2折曲げ部15とを留めている。このとき、仮留め部40bの痕跡50bが第1折曲げ部14に残る場合は、仮留め部40bの痕跡50bは、配設対象80側に位置するが、仮留め部40bの痕跡50bが第1折曲げ部14に残らない場合は、仮留め部40bの痕跡50bは、配設対象80側に位置しない。展開後に仮留め部40の痕跡50が配設対象80側に位置しない場合、仮留め部40の痕跡50が配設対象80に意図しない箇所に付着して配線部材10の配設作業の邪魔となることを抑制できる。
【0074】
以上のように構成された配線部材10によると、仮留め部40は、第1部分及び第2部分が相対的な離間移動によって第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されているため、展開動作によって、仮留め部40による仮留め状態を解消可能となる。これにより、配線部材10において、展開容易に折曲げ形態を維持可能となる。
【0075】
また仮留め部40が接着部42を含む場合、例えば接着剤又は両面粘着テープなどの介在物44によって、簡易に仮留め部40を形成することができる。また仮留め部40が直接固定部46を含む場合、仮留め部40として他の部材を設けずに済む。
【0076】
また仮留め部40は、シート部材32と線状伝送部材20との保持力よりも弱い力で第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されているため、仮留め部40による仮留め状態を解消する際、シート部材32から線状伝送部材20がはがれることを抑制できる。
【0077】
また仮留め部40は、線状伝送部材20が固定されていないカバー34部を留めている。これにより、仮留め部40による仮留め状態を解消する際、シート部材32から線状伝送部材20がはがれることを抑制できる。
【0078】
また仮留め部40は、シート部材32とカバー34との保持力よりも弱い力で第1部分及び第2部分を留めた状態を解消可能に形成されているため、仮留め部40による仮留め状態を解消する際、シート部材32からカバー34がはがれることを抑制できる。
【0079】
{変形例}
図8は、配線部材10の変形例を示す概略断面図である。
【0080】
これまで配線部材10においてベース部材30がカバー34を含むものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。図8に示す配線部材110のようにベース部材130がカバー34を含まない場合もあり得る。この場合、仮留め部40dは、シート部材32同士を留めている。
【0081】
またこれまで仮留め部40は、ベース部材30のうち線状伝送部材20と重なる部分を留めるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。図8に示す例のように、仮留め部40dは、線状伝送部材20と重ならない部分(線状伝送部材20の側方部分)を留めていてもよい。
【0082】
なお、図8に示す例では、配線体112は、線状伝送部材20同士が向かい合うように折曲げられている。別の見方をすると、配線体112は、シート部材32において線状伝送部材20が固定される面同士が向かい合うように折曲げられているが、このことは必須の構成ではない。配線体は、シート部材32において線状伝送部材20が固定されない面同士が向かい合うように折曲げられていてもよい。また配線体は、シート部材32において線状伝送部材20が固定される面と、線状伝送部材20が固定されない面とが向かい合うように折曲げられていてもよい。
【0083】
このほか配線体12において、ベース部材30としてのシート部材32上に線状伝送部材20が固定されるものとして説明してきたが、このことは必須の構成ではない。例えば配線体において、ベース部材の内部に線状導体が固定されていてもよい。係る配線体として、2枚のフィルムによって複数の線状導体が挟まれたり、複数の線状導体の周囲に樹脂材料が押出成形されたりして形成された、いわゆるFFC(フレキシブルフラットケーブル)などであってもよい。
【0084】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0085】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0086】
10 配線部材
12 配線体
13 基部
14、15 折曲げ部
16、17 折曲げ容易部
20 線状伝送部材
30 ベース部材
32 シート部材
34 カバー
40 仮留め部
42 接着部
44 介在物
46 直接固定部
50 痕跡
80 配設対象
100 配線部材の配設構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8