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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
A01C11/02 350G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021025214
(22)【出願日】2021-02-19
(62)【分割の表示】P 2018068750の分割
【原出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2021072873
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-142060(JP,A)
【文献】特開2012-085611(JP,A)
【文献】特開2013-226107(JP,A)
【文献】特開2008-067666(JP,A)
【文献】特開2014-073138(JP,A)
【文献】特開2007-236256(JP,A)
【文献】特開2007-054082(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103749052(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)に設けた支持機枠(49)に苗箱(68)又は苗を載置する複数の予備苗枠(38)を備える苗移植機において、
前記複数の予備苗枠(38)に苗箱(68)を載置する苗箱載せ部材(101)を設け、前記苗箱載せ部材(101)は、前記予備苗枠(38)の機体外側または機体内側に設け、前記苗箱載せ部材(101)に載置される苗箱(68)は、機体外側に向かって斜め姿勢で支持され、苗箱載せ部材(101)の構成部材のうち、苗箱(68)を支持する底部の機体前側と後側を上方に屈曲させ、
前記苗箱載せ部材(101)を複数の予備苗枠(38)にそれぞれ備え、前記苗箱載せ部材(101)同士が機体の上下方向に並ぶように構成し、上方に位置する苗箱載せ部材(101)が下方の苗箱載せ部材(101)に載置されている苗箱(68)に対して落下防止の役割を果たすことを特徴とする苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける植付装置を車体の後部に連結した苗移植機などの作業車両に関するものであり、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
苗植付装置を機体後部に備えた苗移植機において、機体の側部に、複数の予備の苗載せ台からなる予備苗載部を備えた苗移植機が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、複数の予備苗載せ台が上下多段となって平面視で重複した積層状態と、前記複数の予備苗載せ台が前後向きに略一直線状になって展開した展開状態とに、前記複数の予備苗載せ台を切り替え可能に構成した苗移植機が開示されている。この切り替え機構は、1本の長い移動リンク部材と2本の短い移動リンク部材からなる平行リンク機構に複数の予備苗載台を取り付け、平行リンク機構の回動によって上下方向に重なり合う状態(平面視で重なる積層状態)と前後方向に略一直線上に並ぶ状態(水平方向に並ぶ展開状態)とに予備苗載せ台の状態を切り替え可能な構成である。
【0004】
そして、積層状態から複数の予備苗載せ台のうちのいずれか一つの可動予備苗載せ台を、固定予備苗載せ台に対して展開状態の姿勢に変更すると、複数の予備苗載せ台が展開状態に切り替えられ、逆に、展開状態から複数の予備苗載せ台のうちのいずれか一つの可動予備苗載せ台を、固定予備苗載せ台に対して積層状態の姿勢に変更すると、複数の予備苗載せ台が重複状態に切り替えられる構成である。
【0005】
したがって、特許文献1記載の構成は複数の予備苗載せ台の状態の切り替えを簡易迅速に行うことができ、複数の予備苗載せ台の状態の切り替え作業性を従来技術より向上させることができる。
【0006】
また、特許文献2記載に記載の苗箱を一時的に載置できるケースが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-205504号公報
【文献】特開2014-87276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
苗箱を載置できるようにケースを設け、振動や風で機体から落下しないように構成されている。
【0009】
しかしながら、ケースに苗箱を頻繁に出し入れすることを考慮されていない。
【0010】
また、補助作業者が畦際から補充作業等を行うが、ケースに載置された苗箱は畦際から回収しにくい問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の作業車両のこの様な課題に鑑み、出し入れしやすいケースを設けると共に、畦際からでもケースに載置された苗箱を回収できる苗移植機を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、走行車体(2)に設けた支持機枠(49)に苗箱(68)又は苗を載置する複数の予備苗枠(38)を備える苗移植機において、前記複数の予備苗枠(38)に苗箱(68)を載置する苗箱載せ部材(101)を設け、前記苗箱載せ部材(101)は、前記予備苗枠(38)の機体外側または機体内側に設け、前記苗箱載せ部材(101)に載置される苗箱(68)は、機体外側に向かって斜め姿勢で支持され、苗箱載せ部材(101)の構成部材のうち、苗箱(68)を支持する底部の機体前側と後側を上方に屈曲させ、前記苗箱載せ部材(101)を複数の予備苗枠(38)にそれぞれ備え、前記苗箱載せ部材(101)同士が機体の上下方向に並ぶように構成し、上方に位置する苗箱載せ部材(101)が下方の苗箱載せ部材(101)に載置されている苗箱(68)に対して落下防止の役割を果たすことを特徴とする苗移植機とした。
【0013】
(削除)
【0014】
(削除)
【0015】
(削除)
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、苗箱(68)載置する苗箱載せ部材(101)を予備苗枠(38)の側方に設けることで、機体外側から苗箱(68)を出し入れしやすいため、畦際で作業する圃場作業者が苗箱を回収することができる。
【0017】
また、苗箱(68)は、機体外側に向かって斜め姿勢で支持されることで苗箱載せ部材(101)に接触することを防止できるため、苗箱(68)の破損を防止することができる。
【0018】
また、苗箱(68)を支持する底部の機体前側と後側を上方に屈曲させたことにより、機体の振動や傾斜地を走行中に苗箱(68)が苗箱載せ部材(101)から落下することを防止できる。
【0019】
また、苗箱(68)が機体の振動や傾斜地を走行中に滑り落ちないようになる。
【0020】
(削除)
【0021】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の乗用型田植機の側面図である。
図2図1の乗用型田植機の平面図である。
図3図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を上下三段に配置した場合(積層状態)の側面図である。
図4図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を上下三段に配置した場合(積層状態)の側面簡略図である。
図5図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を同一平面に配置した場合(展開状態)の側面図である。
図6図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を同一平面に配置した場合(展開状態)の側面簡略図である。
図7図1の乗用型田植機の予備苗載せ台を同一平面に配置した場合(展開状態)の平面図である。
図8図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の作動制御ブロック図である。
図9図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の積層状態(図9(a))と展開状態(図9(b))を示す側面簡略図である。
図10図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の切替駆動装置の平面図(図10(a))と切替駆動装置の内部構造図(図10(b))である。
図11図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の切替駆動装置の平面図である。
図12図1の乗用型田植機の予備苗載せ台の側面図(図12(a),図12(b))と平面図(図12(c))及び予備苗載せ台の前側突出部の拡大図(図12(d))である。
図13】苗箱載せ部材の全体移動状態を示す側面図(図13(a))と苗箱載せ部材の個別移動状態を示す側面図(図13(b))
図14】苗箱載せ部材の個別移動状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0024】
図1及び図2は本発明の苗移植機の典型例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。搭乗オペレータが乗用型田植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0025】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11(走行装置)を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0026】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧無段変速装置(HST)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0027】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられており、この領域を操縦部33とする。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0028】
昇降リンク装置3は平行リンク機構であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0029】
メインフレーム15に固着した支持部材(図示せず)と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧式シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0030】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ75(図1)等を備えている。
【0031】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植え付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧式シリンダ46を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0032】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体76(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0033】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(第1ロータ27aと第2ロータ27bの組み合わせを単にロータ27ということがある)が取り付けられている。また、苗載せ台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0034】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗載せ台38,38が機体の前後に張り出す位置と上下に並んだ位置とに回動可能に設けられている。
【0035】
一方の機体側面にある第1予備苗載せ台38a,第2予備苗載せ台38b,第3予備苗載せ台38cを上下三段に配置した場合の側面図を図3に示し、側面簡略図を図4に示す。また、第1予備苗載せ台38a,第2予備苗載せ台38b,第3予備苗載せ台38cを同一平面に配置した場合の側面図を図5に示し、側面簡略図を図6に示す。
【0036】
予備苗載せ台38は走行車体2のフロアステップ35の下部に基部側を配置した支持機枠49に支持され、移動リンク部材39a,39b,39cを介してそれぞれ上下三段に構成され、第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cからなっている。
【0037】
これら第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cの底面にはそれぞれ一体的に第1支持枠体37a、第2支持枠体37b及び第3支持枠体37cが取り付けられており、第1支持枠体37aの中央部と第2支持枠体37bの前端部には第1移動リンク部材39aの両端の回動軸39a1,39a2がそれぞれ回動自在に連結し、第1支持枠体37aの後端部と第3支持枠体37cの前端部には第2移動リンク部材39bの両端の回動軸39b1,39b2がそれぞれ回動自在に連結し、さらに第2支持枠体37bの後端部と第3支持枠体37cの中央部には第3移動リンク部材39cの両端の回動軸39c1,39c2とが回動自在に連結している。
【0038】
回動軸39a2,39b1,39b2,39c1の外周部は、支持枠体37a,37b,37cに溶接して取り付けてられている。そして、支持枠体37a,37b,37cに溶着された回動軸39a2,39b1,39b2,39c1の挿入部(図示せず)に、移動リンク部材39a,39b,39cの支持片(図示せず)を挿し込んで装着する。
【0039】
また、第2移動リンク部材39bのほぼ中央部と第2支持枠体37bのほぼ中央部には回動支点37b1が設けられ、互いに回動自在となっている。
【0040】
また支持機枠49には前後2つの分岐支柱49a,49bが設けられ、分岐支柱49a,49bの頂部は第2支持枠体37bの下面近くまで達している。そして前側分岐支柱49aの頂部付近には第2移動リンク部材39bの中央部付近に設けられた回動軸39b3が設けられ、該回動軸39b3を中心として第2移動リンク部材39bが前側分岐支柱49aの周りを回動自在となっている。前記回動軸39b3は回動支点37b1より下側の第2移動リンク部材39bに設けられている。また後側分岐支柱49bの頂部付近には第3移動リンク部材39cの後端部付近に設けられた回動軸39c3が設けられ、該回動軸39c3を中心として第3移動リンク部材39bが後側分岐支柱49bの周りを回動自在となっている。前記回動軸39c3は回動軸39c1より下側の第3移動リンク部材39cに設けられている。
【0041】
第2予備苗載せ台38bは機体部材である前側分岐支持機枠49aと後側支持機枠49bに固定されておらず、第2移動リンク部材39bが図3に示す状態から回動支点39b3を中心に回動して図5に示す状態になる場合には回動支点39b3が第2予備苗載せ台38bの中央部側面の回動軸37b1より下方にあるため、図3に示す位置より前寄りに第2予備苗載せ台38bが配置される。このとき、第3移動リンク部材39cも図3に示す状態から回動支点39c3を中心に回動して図5に示す状態になる場合には同様に第2予備苗載せ台38cも図3に示す位置より前寄りに配置される。
【0042】
したがって、図7の平面図に示すように第1予備苗載せ台38a、第2予備苗載せ台38b及び第3予備苗載せ台38cをほぼ同一平面上に展開形態とすると、広い苗箱68などの載置平面を得ようとする場合にはこれら3つの予備苗載せ台38a,38b,38cが従来より前寄りに移動して、機体前側端部を圃場の外に突出させることができるので、例えば、畦際でトラックなどから苗を予備苗載せ台38a,38b,38c上に積載する作業が容易となる。
【0043】
また図7の平面図に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの前側両端部に前方に向かって突出する一対の前側突出部38a1,38b1,38c1をそれぞれ形成し、後側端部中央に後方に向かって突出する後側突出部38a2,38b2,38c2をそれぞれ形成している。したがって第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを展開形態にした場合に、機体前側に位置する予備苗載せ台38a,38bの後部突出部38a2,38b2が機体後側に位置する予備苗載せ台38b,38cの前側突出部38b1,38c1と側面視で重複する位置に配置されることになる。このため第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後方向に並ぶ展開形態にあるときには、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを前後方向に部分的に嵌め込み状態で並べることができるので、予備苗載せ台38a,38b,38cに積み込む苗箱68を円滑に後側に移動させることができ、作業能率が従来より向上する。
【0044】
また図3図5の側面図に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの前側突出部38a1,38b1,38c1を後上り傾斜形状(後上り傾斜部)にし、該傾斜形状の上面を各予備苗載せ台38a,38b,38cの苗載せ面よりも高くしている。また第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの後側突出部38a2,38b2,38c2を各予備苗載せ台38a,38b,38cの苗載せ面よりも高くし、且つ前側突出部38a1,38b1,38c1の上面と同じか又は前記上面より低くしている。
【0045】
このように前側突出部38a1,38b1,38c1を後上り傾斜部としたので、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態にしたとき、前側の予備苗載せ台38a,38bから後側の予備苗載せ台38b,38cに苗箱68(図12参照)などを移動させるときに、後上り傾斜部に載り上げて後方に移動することができるので、苗箱68などの移動が容易となり、作業能率が従来より向上する。また、前側突出部38a1,38b1,38c1と後側突出部38a2,38b2,38c2の上面を各予備苗載せ台38a,38b,38cの苗載せ面よりも高くしたことにより、第1~第3予備苗載せ台38a,38b,38cを収納形態にしたときに、前側突出部38a1,38b1,38c1と後側突出部38a2,38b2,38c2で各予備苗載せ台38a,38b,38cに載置した苗箱68などの前後移動を防止することができるので、各予備苗載せ台38a,38b,38cから苗箱68等が下方に落下することが防止され、落下した苗箱68等を拾う必要が無くなり、作業能率が従来より向上する。
【0046】
各予備苗載せ台38a,38b,38cの一対の前側突出部38a1,38b1,38c1の左右間で、且つ当該予備苗載せ台38a,38b,38cの底部に前側の予備苗載せ台38a,38bの後側突出部38a2,38b2などを受けるための受け部材38a3,38b3,38c3をそれぞれ設け、該受け部材38a3,38b3,38c3は一対の前側突出部38a1,38b1,38c1同士の間の空間部に突出して形成している。
【0047】
こうして、各予備苗載せ台38b,38cの前側突出部38b1,38c1の左右間に受け部材38b3,38c3で、それぞれの前側の予備苗載せ台38a,38bの後側突出部38a2,38b2を受け止めることができるので、各予備苗載せ台38a,38b,38cが下がり過ぎることがなく、展開状態の各予備苗載せ台38a,38b,38cが確実にほぼ同一平面上に並ぶ姿勢となるため、苗箱68などの積み込み作業が容易となり、作業能率が従来より向上する。
【0048】
また、予備苗載せ台38a,38b,38cの底部に受け部材38a3,38b3,38c3を設けたことにより、後側突出部38a2,38b2,38c2の上端部は前側突出部38a1,38b1,38c1の上端部と略同じ高さ、または下側に位置するので、後上り傾斜部を有する前側突出部38a1,38b1,38c1に載り上げる苗箱68などの移動が円滑に行われるため、作業能率が従来より向上する。
【0049】
また、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの左右側面の前後の合計4箇所に苗箱68などの落下を防ぐ第1,第2,第3仕切壁38a4,38b4,38c4をそれぞれ配置している。
【0050】
また、第2移動リンク部材39bの回動支点39b3を第2予備苗載せ台38bの回動軸37b1と同軸上に設けても良い。この場合は、中央の第2予備苗載せ台38bが前後に移動しない。
【0051】
上述のように、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cの作動(回動)により、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後方向に並ぶ展開状態と各予備苗載せ台38a,38b,38cが上下方向に並ぶ積層状態とに切り替えられるが、この切り替えは、電動モータ71で駆動する切替駆動装置70とによって行うことができる。切替駆動装置70には、電動モータ71の図示しない回転軸に取り付けられた駆動ギヤ71aと該駆動ギヤ71aに噛合する移動リンク部材39bの回動軸39b3と一体回転する円盤状、半円状または半月状の切替ギヤ70aが設けられている。
【0052】
該切替ギヤ70aは前側分岐支柱49aに設けられた移動リンク部材39bの回動軸39b3と同心円状に設けられ、該回動軸39b3と一体回転するので、電動モータ71の駆動で回動軸39b3が回動し、同時に該回動軸39b3と一体の第2移動リンク部材39bが回動することで、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが積層状態と展開状態に切り替えられる。
【0053】
図8に予備苗載せ台38a,38b,38cの作動制御ブロック図を示す。
【0054】
切替駆動装置70により予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態と積層状態とに切り替え操作する切替操作手段として切替スイッチ73(ボタン、レバーでもよい)(図1図2)を座席31近傍に設け、さらに、図4図6の簡略図に示すように、この切替スイッチ73の操作により展開状態または積層状態に予備苗載せ台38a,38b,38cで回動するときに、これら予備苗載せ台38a,38b,38cを停止させる停止プレート73a1,73a2を第3予備苗載せ台38bと第2予備苗載せ台38cの側面にそれぞれ設けた。停止プレート73a1は予備苗載せ台38a,38b,38cが積層状態になると、停止プレート73a1に第2移動リンク部材39bが当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材であり、停止プレート73a2は予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態になると第2移動リンク部材39bに当たり、電動モータ71に過負荷をかけて過度の電圧を生じさせる、または過熱させて作動を停止させる部材である。
【0055】
また、第2移動リンク部材39bに停止プレート73a1,73a2が接触し続けると負荷(第2移動リンク部材39bが停止プレート73a1又は73a2に接触し、それ以上回動できなくなったにもかかわらず駆動し続ける電動モータ71の負荷のことであり、電動モータ71の内部には、バイメタル85を用いた通電経路が配置されており、負荷により加熱する、または過度の電圧がかかるとバイメタル85が曲がり(退避し)、通電が停止して電動モータ71の回転が止まる構成である。電圧式の場合は、停止後すぐに再操作できる。また、加熱式の場合はバイメタル85の熱が低下して元に戻るまでは作動しない。)で電動モータ71が停止する構成であり、作業者は電動モータ71の停止操作を行わなくてもよいので、他の操作に集中することができ、作業能率が従来以上に向上する。
【0056】
また、予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態または積載状態になると、第2移動リンク部材39bが停止プレート73a1又は73a2に接触する構成となるので、機体の振動で第2移動リンク部材39bが動いて第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後に揺れることが防止され、苗の落下が防止されると共に、揺れによる第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38c及びその他の予備苗載せ用の構成部材の摩耗が軽減される。
【0057】
さらに、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを展開状態または積載状態になると電動モータ71を停止させるためのスイッチ等の構成部材及び回路を省略することができるので、部品点数が大幅に削減されると共に、構成が簡潔になる。
【0058】
従来のようなリミットスイッチを用いると、スイッチに移動リンク部材39b,39cが接触と同時に停止信号を送るケーブルや回路が必要なため、部品点数が多く、構造が複雑になっていた。しかも、展開状態で止めるリミットスイッチと積載状態で止めるリミットスイッチが必要であるため、さらに部品数が増え、構造が複雑になっていた。
【0059】
これに比べ、本願発明では、電動モータ71内のバイメタル85が過電圧または過熱によって退避する(曲がる)と電動モータ71は自動停止するので、停止信号を伝動する経路が不要となるので、電動モータ71を展開状態及び積載状態に操作するスイッチを設け、スイッチと電動モータをケーブルで繋ぐだけでよいため、部品点数の減少、構造の簡略化が図られる。
【0060】
また、図5に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態にあるときに、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cの動きを停止させる停止プレート73a1を中央段の第2予備苗載せ台38bに配置すると共に、図3に示すように、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの積載状態で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cを停止させる停止プレート73a2を下段の第3予備苗載せ台38cに配置したことにより、前記展開状態または積載状態になる位置で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが接触する構成となるので、簡潔な構成とすることができる。
【0061】
そして、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが停止プレート73a1,73a2に接触して止まる構成となるので、機体の振動で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが動いて第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後に揺れることが防止され、苗の落下が防止されると共に、揺れによる第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cとその周りの部材の摩耗が軽減される。
【0062】
さらに、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cと停止プレート73a1,73a2の接触により電動モータ71に負荷がかかりやすくなるので、電動モータ71の停止が速くなり、電力の消費量が軽減される。
【0063】
また本発明の他の実施例である第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの積載状態と展開状態の簡略図を図9(a)と図9(b)にそれぞれ示す。この場合の停止プレート73a1,73a2は第2予備苗載せ台38bの前後側面にそれぞれ設けている。
【0064】
この場合には、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを積載状態にすると、第2移動リンク部材39bの上下端部がそれぞれ停止プレート73a1,73a2に当接して、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが停止した状態となるので、機体の振動で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが動いて第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが前後に揺れることが防止され、苗の落下が防止されると共に、揺れによる第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cを始めとする構成部材の摩耗が軽減される。
【0065】
また、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが積載状態から展開状態に切り替わると、図9(b)の丸枠A,Bに一部拡大図を示すように第2移動リンク部材39bと第1,第3移動リンク部材39a,39cがそれぞれ停止プレート73a1,73a2を挟む構成となるので、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cがロックされた状態となり、機体の振動で第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが動いて前後に揺れることが防止され、苗の落下が防止されると共に、揺れによる予備苗載せ台の構成部材の摩耗が軽減される。
【0066】
図10(a)の切替駆動装置70の平面図と図10(b)の切替駆動装置70の内部構造図に示すように、本実施例では切替駆動装置70を構成するカバープレート78に第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cを動かす切替ギヤ70aの回動軸81とは位相をずらして電動モータ71の駆動ギヤ71aの回動軸71a1を設けた補助プレート79を装着する。そして、カバープレート78と補助プレート79に亘ってモータ取付プレート(保持プレート)80を装着し、さらに保持プレート80に前記回動ギヤ70aを回動させる電動モータ71を装着する構成を採用している。
【0067】
上記構成からなる切替駆動装置70では、カバープレート78と補助プレート79に亘って保持プレート80を設け、この保持プレート80に電動モータ71を装着しているので、第1,第2,第3移動リンク部材39a,39b,39cが停止プレート73a1,73a2に接触して負荷がかかる際、電動モータ71が逃げる力が保持プレート80に加えられ、その力をカバープレート78が受けるので、保持プレート80が曲がりにくくなる。
【0068】
また、前記負荷により電動モータ71には力が掛からないので、電動モータ71の逃げを防止し、電動モータ71と切替ギヤ70aの距離が離れることが防止されるので、切替駆動装置70の調整作業が省略され、作業者の労力が軽減される。
【0069】
図11に第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの切替駆動装置の平面図を示すように、第2予備苗載せ台38bの側面部を中心に切替駆動装置70を覆うガイドカバー88を設け、該ガイドカバー88を電動モータ71の駆動ギヤ71aを覆うメインカバー83と電動モータ71を覆う補助カバー82に分割し、メインカバー83をカバープレート78と連結し、補助カバー82をメインカバー83及びカバープレート78と連結する構成とした。
【0070】
図11に示す構成により、補助カバー82を外すと電動モータ71及び保持プレート80が露出するので、ガイドカバー88全体をメンテナンスのたびに外すことなく調整や掃除ができ、メンテナンス性が今まで以上に向上する。
【0071】
前記電動モータ71には、負荷がかかり所定温度以上の熱が発生すると変形して通電状態を停止するバイメタル85(図8にのみ図示)を内装してもよい。こうして、もし電動モータ71に過負荷が掛かり、過電圧が発生する、または過熱が発生して所定温度以上になるとバイメタル85が変形して通電を停止させるので、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが展開状態または積載状態になった際に、電動モータ71に過電圧がかかる、過熱されると停止するので、電動モータ71の停止操作を行う必要がなくなる。
【0072】
また、図12(a),図12(b)の予備苗載せ台の側面図と図12(c)の平面図及び図12(d)の予備苗載せ台の前側突出部の拡大図に示すように第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの前側端部には、それぞれ前方に向かって突出する前側突出部38b1,38c1が形成されているが、これら前側突出部38b1,38c1には後上り傾斜面を形成し、各前側突出部38b1,38c1に遊転して苗の搬送を補助する搬送補助ローラ47b,47cをそれぞれ配置する。また搬送補助ローラ47b,47cの上面が前記前側突出部38b1,38c1の後上り傾斜面の上部よりも上方に突出する構成としている。
【0073】
また、図13図14に示す苗箱載せ部材101について説明する。
【0074】
第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cの機体外側に苗箱68を載置する苗箱載せ部材101が各々設けられている。この苗箱載せ部材101は予備苗載せ台に固定されているため、予備苗載せ台と一緒に移動する構成としている。
【0075】
また、線材で構成し機体前後方向と上方は開放しており、苗箱載せ部材101の前後端部に傾斜を設けている。このため、機体の前後方向及び上方から苗箱68を出し入れでき、傾斜により苗箱68を苗箱載せ部材101に載置したときに機体の振動で落下しないようになっている。
【0076】
また、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが積載状態から展開状態に切り替わると苗場箱載せ部材101も同じように苗箱載せ部材101が機体の上下方向に並ぶ全体移動状態101aから機体前後方向に並ぶ取り出し状態101bに切り替わる。
【0077】
取出し状態101bは、苗箱載せ部材101が機体の前後方向に並ぶことで、苗箱載せ部材101同士が隣接するレール状になり、機体から圃場へ苗箱68を積み下ろししやすい。
【0078】
また、圃場側からも苗箱載せ部材101に載置された苗箱68を取出しやすいため、作業性が向上する。
【0079】
また、取出し状態101bの際に、機体の後方に位置する苗箱載せ部材101の方が機体前方に位置する苗箱載せ部材101より上方に位置することで、苗箱68をスムーズに機体前方へ送ることができる。
【0080】
また、苗箱載せ部材101は苗箱68を機体外側に向けて斜め姿勢に載置するよう構成されている。そうすることで、第1,第2,第3予備苗載せ台38a,38b,38cが積載状態(全体移動状態101a)であるとき、苗箱68が機体内側へ傾き予備苗載せ台と接触することが防止できる。
【0081】
また、苗箱68を苗箱載せ部材101に載置した状態で全体移動状態101aと取出し状態101bに切り替え可能である。全体移動状態101aでは、苗箱載せ部材101同士が離間し、機体の上下方向に並ぶことで、上方に位置する苗箱載せ部材101が下方に位置する苗箱68を固定する役割を果たしている。尚、最上部に載置する苗箱68は別固定部材(図示省略)により機体からの落下を防止することができる。
【0082】
また、苗箱載せ部材101の前端部と後端部が機体上方に向かって曲げ形状が設けられている。これにより、苗箱68が機体の振動や傾斜地を走行中に滑り落ちないようになる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明にかかる苗移植機は、田植機に限らず、野菜苗などのその他の苗を植え付ける苗移植機として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0084】
2 走行車体
38a,38b,38c 複数の予備苗載せ部材
39a,39b,39c 複数の移動リンク部材
49 支持機枠
68 苗箱
101 苗箱載せ部材
101a 全体移動状態
101b 個別移動状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14