(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】プロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/00 20060101AFI20221101BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20221101BHJP
G03B 21/28 20060101ALI20221101BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G03B21/00 D
G03B21/14 D
G03B21/28
H04N5/74 A
(21)【出願番号】P 2021053457
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大月 伸行
(72)【発明者】
【氏名】平野 整
(72)【発明者】
【氏名】福山 孝典
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0079733(US,A1)
【文献】特開2008-102536(JP,A)
【文献】特開2016-014761(JP,A)
【文献】特開2014-029549(JP,A)
【文献】特開2020-024359(JP,A)
【文献】特開2010-122574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
H04N 5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に光を出射する光源装置と、
入射する光を変調する光変調装置を有し、前記光源装置から前記第1方向に入射する光を変調して画像光を生成し、前記第1方向と交差する第2方向に前記画像光を出射する画像生成装置と、
前記画像生成装置から前記第2方向に沿って入射する前記画像光を投射する投射光学装置と、
前記光源装置、前記画像生成装置及び前記投射光学装置を収容する外装筐体と、を備え、
前記投射光学装置は、
前記画像生成装置から前記画像光が前記第2方向に沿って入射する入射側光路と、
前記入射側光路を通過した前記画像光を前記第1方向とは反対方向に屈曲させる屈曲部材と、
前記屈曲部材によって屈曲された前記画像光が前記第1方向とは反対方向に沿って入射し、前記第2方向において前記光源装置と並ぶ出射側光路と、
前記出射側光路に設けられ、入射する前記画像光を反射して、前記外装筐体の外部に投射する反射素子と、を備え、
前記光変調装置に結像し、前記画像光を投射する前記投射光学装置の焦点距離をf1とし、前記反射素子の焦点距離をf2としたとき、f2/f1の絶対値は、
4.0 < |f2/f1| < 20.0
を満たすことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記反射素子の焦点距離は、前記画像光の投射範囲において前記外装筐体側の端縁に入射する光線の焦点距離であることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記外装筐体は、
前記反射素子による前記画像光の反射方向に配置される第1面と、
前記第1面とは反対側に配置される第2面と、
前記第1面に設けられ、前記投射光学装置によって投射された前記画像光が通過する投射口と、を有し、
前記第2面から前記第1面に向かう方向を第3方向とすると、前記光源装置において前記第3方向の端部は、前記投射口の端縁のうち、前記第3方向とは反対方向の端縁よりも前記第3方向に配置されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプロジェクターにおいて、
f2/f1の絶対値は、
7.0 < |f2/f1| < 15.0
を満たすことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプロジェクターにおいて、
前記投射光学装置は、
前記出射側光路において前記屈曲部材と前記反射素子との間に配置される出射側屈折系レンズ群と、
前記入射側光路に配置される入射側屈折系レンズ群と、を有し、
前記出射側屈折系レンズ群のレンズ長をL1とし、
前記入射側屈折系レンズ群のレンズ長をL2としたとき、
L1/L2は、
0.85 < L1/L2 < 1.5
を満たすことを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクターにおいて、
前記第2方向において前記光源装置と前記投射光学装置との間に配置され、前記第1方向に沿って延在するレバー部材を備え、
前記出射側屈折系レンズ群と前記入射側屈折系レンズ群とのうち一方の屈折系レンズ群は、前記一方の屈折系レンズ群の光軸に沿って移動する光学調整レンズを含み、
前記レバー部材は、前記光学調整レンズを前記一方の屈折系レンズ群の光軸に沿って移動させることを特徴とするプロジェクター。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプロジェクターにおいて、
前記外装筐体内に配置され、前記光源装置、前記画像生成装置及び前記投射光学装置を支持する1つの支持部材を備えることを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源、折り返しミラー、映像表示素子及び投射光学ユニットを備える投射型表示装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載の投射型表示装置では、投射光学ユニットは、前方レンズ群、後方レンズ群及び自由曲面ミラーを備え、折り返しミラーは、前方レンズ群と後方レンズ群との間に配置されている。光源から出射された光は、映像表示素子に入射されて変調される。映像表示素子にて変調された画像光は、前方レンズ群を通過した後、折り返しミラーにて屈曲される。折り返しミラーにて屈曲された画像光は、後方レンズ群を通過し、自由曲面ミラーに入射する。自由曲面ミラーは、入射する画像光を反射して投射する。自由曲面ミラーによって反射された画像光は、例えば投射型表示装置が載置される載置面と同一面に投射可能である。このような画像光の投射距離が短くても大きな画像を表示可能な投射型表示装置を短焦点型プロジェクターと呼称する。
【0003】
また、光源及び光学系ユニットが並設され、光源から出射された光が蛇行する光路が内部に設けられたプロジェクターが知られている(例えば特許文献2参照)。
特許文献2に記載のプロジェクターでは、光源は、青色光源及び赤色光源を有する。青色光源から出射された青色励起光は、反射ミラー群によって正面側に反射された後、第1ダイクロイックミラーを通過して蛍光発光装置に入射する。蛍光発光装置から出射された青色光及び緑色光のうち、青色光は、蛍光発光装置を通過した後、第1反射ミラー及び第2反射ミラーによって背面側に反射された後、第2ダイクロイックミラーを通過する。緑色光は、第1ダイクロイックミラーにて反射され、第2ダイクロイックミラーにて背面側に反射される。赤色光源装置から出射されて第1ダイクロイックミラーを透過した赤色光は、第2ダイクロイックミラーによって背面側に反射される。第2ダイクロイックミラーを背面側に通過した青色光と、第2ダイクロイックミラーにて背面側に反射された緑色光及び赤色光とは、光軸変換ミラー及び集光レンズを介して照射ミラーに入射され、照射ミラーを介して表示素子に入射される。表示素子から正面側に出射された画像光は、光学系ユニットによって、プロジェクターの外部に投射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-8044号公報
【文献】特開2011-75898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、プロジェクターについて小型化が要望されている。
これに対し、短焦点型プロジェクターを構成する光源装置及び投射光学装置を、特許文献2に記載のプロジェクターの光源及び光学系ユニットのように並設することよって、短焦点型プロジェクターの小型化を図ることが考えられる。
しかしながら、光源装置は、プロジェクターの構成装置の中でも比較的大きい装置である。このため、プロジェクターを小型化した場合、投射光学装置による画像光の投射範囲内に光源装置の一部が入りやすく、画像光の一部が光源装置によって遮蔽されやすい。このことから、光源装置を投射光学装置から離して配置する必要があり、プロジェクターを小型化しづらいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るプロジェクターは、第1方向に光を出射する光源装置と、入射する光を変調する光変調装置を有し、前記光源装置から前記第1方向に入射する光を変調して画像光を生成し、前記第1方向と交差する第2方向に前記画像光を出射する画像生成装置と、前記画像生成装置から前記第2方向に沿って入射する前記画像光を投射する投射光学装置と、前記光源装置、前記画像生成装置及び前記投射光学装置を収容する外装筐体と、を備え、前記投射光学装置は、前記画像生成装置から前記画像光が前記第2方向に沿って入射する入射側光路と、前記入射側光路を通過した前記画像光を前記第1方向とは反対方向に屈曲させる屈曲部材と、前記屈曲部材によって屈曲された前記画像光が前記第1方向とは反対方向に沿って入射し、前記第2方向において前記光源装置と並ぶ出射側光路と、前記出射側光路に設けられ、入射する前記画像光を反射して、前記外装筐体の外部に投射する反射素子と、を備え、前記光変調装置に結像し、前記画像光を投射する前記投射光学装置の焦点距離をf1とし、前記反射素子の焦点距離をf2としたとき、f2/f1の絶対値は、
4.0 < |f2/f1| < 20.0
を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態におけるプロジェクターを示す斜視図。
【
図2】一実施形態におけるプロジェクターを示す斜視図。
【
図4】一実施形態におけるプロジェクターの内部構成を示す平面図。
【
図5】一実施形態における画像投射装置の構成を示す模式図。
【
図7】一実施形態における光源装置と開口部との位置関係を示す図。
【
図8】一実施形態における反射素子によって反射される画像光を示す光線図。
【
図9】実施例における投射光学装置の焦点距離に対する反射素子の焦点距離の比率と光線高さとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
[プロジェクターの概略構成]
図1及び
図2は、本実施形態に係るプロジェクター1の外観を示す斜視図である。詳述すると、
図1は、プロジェクター1を正面23側から見た斜視図であり、
図2は、プロジェクター1を背面24側から見た斜視図である。
本実施形態に係るプロジェクター1は、光源から出射された光を変調して画像情報に応じた画像光を生成し、生成した画像光をスクリーン等の被投射面に投射する投射装置である。プロジェクター1は、
図1及び
図2に示すように、プロジェクター1の外装を構成する外装筐体2を備える。
【0009】
[外装筐体の構成]
外装筐体2は、後述する制御装置CD、電源装置PS、画像投射装置3、支持部材7、位置調節装置8及び図示しない冷却装置を内部に収容する。外装筐体2は、略直方体形状に形成されており、天面21、底面22、正面23、背面24、左側面25及び右側面26を有する。
以下の説明では、互いに直交する三方向を、+X方向、+Y方向及び+Z方向とする。+X方向を、左側面25から右側面26に向かう方向とし、+Y方向を底面22から天面21に向かう方向とし、+Z方向を正面23から背面24に向かう方向とする。また、図示を省略するが、+X方向とは反対方向を-X方向とし、+Y方向とは反対方向を-Y方向とし、+Z方向とは反対方向を-Z方向とする。
【0010】
天面21と底面22とは、+Y方向において互いに反対側となる面である。
天面21は、後述する反射素子67による画像光の反射方向に配置される第1面に相当する。天面21は、プロジェクター1が載置面に載置されたときに、上方向を向く面である。天面21は、底面22側に凹む凹部211と、凹部211の底部に設けられた投射口212と、を有する。投射口212は、後述する投射光学装置6から投射された画像光が通過する開口部である。
底面22は、天面21とは反対側に配置される第2面に相当する。底面22は、設置面に接触する複数の脚部221を有する。なお、天面21が上方を向くように載置されたプロジェクター1が、天面21から背面24側かつ上方に画像光を投射するときのプロジェクター1の姿勢を、第1投射姿勢という。
【0011】
正面23と背面24とは、+Z方向において互いに反対側となる面である。
背面24は、
図2に示すように、正面23側に凹む凹部241と、凹部241の底部に設けられた複数の端子242と、を有する。
左側面25と右側面26とは、+X方向において互いに反対側となる面である。
左側面25は、開口部251を有する。本実施形態では、開口部251は、外装筐体2内の冷却対象を冷却した冷却気体を排出する排気口として機能する。
右側面26は、
図1に示すように、開口部261を有する。本実施形態では、開口部261は、外装筐体2の外部の気体を冷却気体として外装筐体2の内部に導入する導入口として機能する。なお、図示を省略するが、開口部261には、開口部261を通過する空気に含まれる塵埃を除去するフィルターが設けられる。
【0012】
図3は、正面23に設けられた操作部233を拡大して示す斜視図である。詳述すると、
図3は、カバー部材232が回動されて露出された操作部233を示す斜視図である。
正面23は、
図1及び
図3に示すように、背面24側に凹む凹部231と、カバー部材232とを有する他、
図3に示すように、凹部231の底部に設けられる操作部233と、を備える。
【0013】
カバー部材232は、+X方向に沿う軸を中心として回動可能に設けられている。カバー部材232は、一方に回動されることによって凹部231を開放し、他方に回動されることによって凹部231を閉塞する。
操作部233は、凹部231が開放されることによって露出される。操作部233は、複数の操作ボタン234と、操作用開口部235,236と、を備える。
複数の操作ボタン234は、ユーザーによって押下されると、予め操作ボタン234に割り当てられた操作信号を、後述する制御装置CDに出力する。
操作用開口部235は、操作部233において+X方向の位置に、+Y方向に長い矩形状に設けられている。操作用開口部235は、後述する位置調節装置8を構成する第2操作部材84の操作部842を露出させる。
操作用開口部236は、操作部233において-X方向の位置に、+Y方向に長い矩形状に設けられている。操作用開口部236は、後述する位置調節装置8を構成する第1操作部材83の操作部832を露出させる。
【0014】
[プロジェクターの内部構成]
図4は、プロジェクター1の内部構成を+Y方向から見た平面図である。
プロジェクター1は、
図4に示すように、外装筐体2内に収容される制御装置CD、電源装置PS、画像投射装置3、支持部材7及び位置調節装置8を備える。この他、図示を省略するが、プロジェクター1は、制御装置CD、電源装置PS及び画像投射装置3等の冷却対象を冷却する冷却装置を備える。
【0015】
[制御装置及び電源装置の構成]
制御装置CDは、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理回路が設けられた回路基板であり、プロジェクター1の動作を制御する。
電源装置PSは、プロジェクター1を構成する電子部品に電力を供給する。電源装置PSは、外部から供給される電力を変圧し、変圧した電力を電子部品に供給する。本実施形態では、電源装置PSは、トランス等の回路素子が設けられた回路基板として構成されている。
【0016】
制御装置CD及び電源装置PSは、外装筐体2の内部において外装筐体2の中央に位置する投射光学装置6に対して+X方向に隣り合って配置されている。すなわち、制御装置CD及び電源装置PSは、外装筐体2の内部において投射光学装置6に対して画像投射装置3を構成する光源装置4及び画像生成装置5とは反対側に設けられている。このため、後述する光源装置4と、投射光学装置6と、制御装置CD及び電源装置PSとは、+X方向に並んでいる。換言すると、光源装置4と、投射光学装置6と、制御装置CD及び電源装置PSとが並ぶ方向は、+X方向に沿う方向である。
【0017】
[画像投射装置の構成]
図5は、画像投射装置3の構成を示す模式図である。なお、
図5においては、位置調節装置8の図示を省略している。
画像投射装置3は、制御装置CDから入力される画像信号に応じた画像を生成し、生成した画像光を投射する。画像投射装置3は、
図4及び
図5に示すように、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を備える。
光源装置4及び画像生成装置5は、外装筐体2の内部において外装筐体2の中央に位置する投射光学装置6に対して-X方向に隣り合って配置されている。すなわち、光源装置4と投射光学装置6とは、+X方向において隣り合っている。
【0018】
[光源装置の構成]
光源装置4は、照明光を画像生成装置5に出射する。光源装置4は、
図5に示すように、光源用筐体41、光源部42、拡散透過部43、光分離部44、第1集光素子45、波長変換素子46、第2集光素子47、拡散反射素子48及び位相差部49を備える。
【0019】
[光源用筐体の構成]
光源用筐体41は、光源部42、拡散透過部43、光分離部44、第1集光素子45、波長変換素子46、第2集光素子47、拡散反射素子48及び位相差部49を収容する。光源用筐体41には、+X方向に沿う照明光軸Ax1と、+Z方向に沿う照明光軸Ax2とが設けられている。照明光軸Ax1と照明光軸Ax2とは交差する。
光源部42、拡散透過部43、光分離部44、第1集光素子45及び波長変換素子46は、照明光軸Ax1上に配置されている。
拡散反射素子48、第2集光素子47、光分離部44及び位相差部49は、照明光軸Ax2上に配置されている。すなわち、光分離部44は、照明光軸Ax1と照明光軸Ax2との交差部に配置されている。
【0020】
[光源部の構成]
光源部42は、-X方向に光を出射する。光源部42は、支持部材421と、光源である複数の固体発光素子422と、複数のコリメーターレンズ423と、を備える。
支持部材421は、照明光軸Ax1に直交する平面にそれぞれアレイ状に配置された複数の固体発光素子422を支持する。支持部材421は、金属製部材であり、支持部材421には、複数の固体発光素子422の熱が伝達される。
複数の固体発光素子422のそれぞれは、s偏光の青色光を+Z方向に出射する。固体発光素子422は、半導体レーザーであり、固体発光素子422が出射する青色光は、例えばピーク波長が440nmのレーザー光である。
複数のコリメーターレンズ423は、複数の固体発光素子422に応じて設けられる。複数のコリメーターレンズ423は、複数の固体発光素子422から出射された青色光を平行光束に変換して、拡散透過部43に入射させる。
このように、光源部42は、偏光方向が同じ直線偏光光である青色光を出射する。しかしながら、これに限らず、光源部42は、p偏光の青色光を出射する構成としてもよく、s偏光の青色光と、p偏光の青色光とを出射する構成としてもよい。
【0021】
図6は、光源装置4を示す側面図である。
光源部42は、上記構成の他、
図6に示すように、受熱部材424、ヒートパイプ425及び放熱部材426を有する。
受熱部材424は、複数の固体発光素子422の発光側とは反対側、すなわち、複数の固体発光素子422に対して+X方向に設けられている。受熱部材424は、支持部材421と熱伝達可能に接続され、支持部材421に伝達された複数の固体発光素子422の熱を受ける。
ヒートパイプ425は、受熱部材424と放熱部材426とを熱伝達可能に接続し、受熱部材424に伝達された熱を放熱部材426に伝達する。なお、ヒートパイプ425の数は、3に限らず、適宜変更可能である。
放熱部材426は、複数のフィンを有するヒートシンクである。放熱部材426は、ヒートパイプ425を介して受熱部材424から伝達される熱を放熱する。放熱部材426は、図示しない冷却装置を構成するファンによって流通する冷却気体によって冷却され、これにより、複数の固体発光素子422が冷却される。なお、本実施形態では、放熱部材426は、光源用筐体41に対して-Y方向に設けられている。すなわち、放熱部材426は、光源である固体発光素子422に対して-Y方向に設けられている。しかしながら、放熱部材426は、光源用筐体41に対して+Y方向に設けられていてもよい。
【0022】
[拡散透過部の構成]
図5に示す拡散透過部43は、入射された光を拡散させて、出射される光の照度分布を均一化する。拡散透過部43は、ホログラムを有する構成、複数の小レンズが光軸直交面に配列された構成、及び、光が通過する面が粗面である構成を例示できる。
なお、拡散透過部43に代えて、一対のマルチレンズアレイを有するホモジナイザー光学素子を光源装置4に採用してもよい。一方、拡散透過部43が採用される場合には、ホモジナイザー光学素子が採用される場合に比べて、光源部42から光分離部44までの距離を短くできる。また、光源部42と拡散透過部43との間にアフォーカル光学素子が設けられていてもよい。アフォーカル光学素子は、光源部42から入射する光束を縮径した後、平行化して出射する。
【0023】
[光分離部の構成]
拡散透過部43から出射された光は、光分離部44に入射する。
光分離部44は、光源部42から拡散透過部43を介して入射される光のうち、一部の光を通過させ、他の光を反射させるハーフミラーの機能を有する。光分離部44は、拡散反射素子48から入射される青色光を通過させ、波長変換素子46から入射され、青色光の波長よりも長い波長を有する光を反射させるダイクロイックミラーの機能を有する。
詳述すると、光分離部44は、拡散透過部43から入射される青色光のうち、一部の青色光である第1部分光を通過させて第1集光素子45に入射させ、他の青色光である第2部分光を反射させて第2集光素子47に入射させる。
本実施形態では、波長変換素子46における光の吸収を考慮して、光分離部44は、波長変換素子46に入射する第1部分光の光量を、拡散反射素子48に入射する第2部分光の光量よりも大きくしている。しかしながら、これに限らず、第1部分光の光量は、第2部分光の光量と同じでもよく、第2部分光の光量よりも小さくてもよい。
なお、光分離部44は、入射される光のうち、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過させる偏光分離素子としての機能と、青色光を透過し、青色光の波長よりも長い波長の色光を反射するダイクロイックミラーとしての機能とを有するものであってもよい。
【0024】
[第1集光素子の構成]
第1集光素子45は、光分離部44を通過した第1部分光を波長変換素子46に集光する。また、第1集光素子45は、波長変換素子46から入射される光を平行化する。
本実施形態では、第1集光素子45は、2つのレンズを有するが、第1集光素子45を構成するレンズの数は、2に限定されない。
【0025】
[波長変換素子の構成]
波長変換素子46は、入射される光の波長を変換した光を、入射される光の入射方向とは反対方向に拡散させて出射する。詳述すると、波長変換素子46は、青色光が入射されることによって励起されて、入射された青色光よりも波長が長い蛍光を第1集光素子45に向けて拡散させて出射する。すなわち、波長変換素子46は、光源部42から出射された第1波長帯を有する光を、第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する光に変換する。波長変換素子46から出射される光は、例えば、ピーク波長が500~700nmの蛍光である。
【0026】
波長変換素子46は、基板461、波長変換層462及び反射層463を有する。
基板461は、金属によって形成された板状体であり、波長変換層462及び反射層463を支持する。基板451は、光源用筐体41に固定され、波長変換層462から伝達される熱を光源用筐体41に伝達する。
波長変換層462は、基板461において第1集光素子45に対向する位置に設けられている。波長変換層462は、第1集光素子45から入射される青色光の波長を変換した非偏光光である蛍光を拡散して出射する蛍光体を含む蛍光体層である。
反射層463は、波長変換層462に対して青色光の入射側とは反対側に位置し、波長変換層462から入射される蛍光を波長変換層462側に反射させる。
波長変換素子46から出射された蛍光は、照明光軸Ax1に沿って第1集光素子45を+X方向に通過した後、光分離部44に入射される。光分離部44に入射された蛍光は、光分離部44にて+Z方向に反射されて、位相差部49に入射される。
【0027】
[第2集光素子の構成]
第2集光素子47は、光分離部44にて反射されて入射される第2部分光を拡散反射素子48に集光する。また、第2集光素子47は、拡散反射素子48から入射される青色光を平行化する。
本実施形態では、第2集光素子47は、第1集光素子45と同様に、2つのレンズを有するが、第2集光素子47を構成するレンズの数は、2に限定されない。
【0028】
[拡散反射素子の構成]
拡散反射素子48は、基板481と、基板481において第2集光素子47に対向する位置に設けられる拡散反射層482と、を有する。
拡散反射層482は、波長変換素子46から出射される蛍光と同様の拡散角で、第2集光素子47から入射される青色光を反射して拡散させる。すなわち、拡散反射層482は、入射された光の波長を変換せずに、入射される光を反射して拡散させる。
拡散反射層482にて反射された青色光は、第2集光素子47を通過した後、光分離部44を通過して、位相差部49に入射される。すなわち、光分離部44から位相差部49に入射される光は、青色光及び蛍光が混在した白色光である。
【0029】
[位相差部の構成]
位相差部49は、光分離部44から入射される白色光をs偏光及びp偏光が混在する光に変換する。このように変換された白色の照明光は、上記した均一化装置52に入射される。すなわち、光源装置4は、照明光を+Z方向に出射する。+Z方向は、第1方向に相当する。
【0030】
[画像生成装置の構成]
画像生成装置5は、光源装置4から入射される照明光から画像を生成する。詳述すると、画像生成装置5は、光源装置4から入射される光を変調して、制御装置CDから入力される画像信号に応じた画像光を生成する。
画像生成装置5は、筐体51、均一化装置52、色分離装置53、リレー装置54、光変調装置55及び色合成素子56を備える。
【0031】
[筐体及び均一化装置の構成]
筐体51は、均一化装置52、色分離装置53及びリレー装置54を収容する。画像生成装置5には、設計上の光軸である照明光軸が設定されており、筐体51は、照明光軸上に均一化装置52、色分離装置53及びリレー装置54を保持する。また、光変調装置55及び色合成素子56は、照明光軸上に配置される。
均一化装置52は、光源装置4から入射された照明光の照度を均一化するとともに、照明光の偏光状態を揃える。均一化装置52によって照度が均一化された照明光は、色分離装置53及びリレー装置54を経て、光変調装置55の変調領域を照明する。均一化装置52は、詳しい図示を省略するが、照度を均一化する一対のレンズアレイと、偏光状態を備える偏光変換素子と、一対のレンズアレイによって分割された複数の部分光束を変調領域に重畳する重畳レンズと、を有する。均一化装置52を通過した照明光は、例えばs偏光の直線偏光である。
【0032】
[色分離装置の構成]
色分離装置53は、均一化装置52から入射する照明光を青色光、緑色光及び赤色光に分離する。色分離装置53は、第1色分離素子531、第1反射素子532及び第2色分離素子533を有する。
第1色分離素子531は、均一化装置52に対して+Z方向に配置されている。第1色分離素子531は、均一化装置52から入射する照明光に含まれる青色光を+X方向に反射し、照明光に含まれる緑色光及び赤色光を+Z方向に透過して、青色光と緑色光及び赤色光とを分離する。
第1反射素子532は、第1色分離素子531にて+X方向に反射された青色光を+Z方向に反射する。第1反射素子532にて反射された青色光は、青用光変調素子55Bに入射する。
【0033】
第2色分離素子533は、第1色分離素子531に対して+Z方向に配置されている。第2色分離素子533は、第1色分離素子531を透過した緑色光及び赤色光のうち、緑色光を+X方向に反射し、赤色光を+Z方向に透過させて、緑色光と赤色光とを分離する。
第2色分離素子533にて分離された緑色光は、緑用光変調素子55Gに入射する。第2色分離素子533にて分離された赤色光は、リレー装置54に入射する。
【0034】
[リレー装置の構成]
リレー装置54は、青色光の光路及び緑色光の光路より長い赤色光の光路に設けられ、赤色光の損失を抑制する。リレー装置54は、第2反射素子541、第3反射素子542、入射側レンズ543、リレーレンズ544及び出射側レンズ545を備える。
第2反射素子541は、第2色分離素子533を+Z方向に透過した赤色光を+X方向に反射する。第3反射素子542は、第2反射素子541にて反射された赤色光を-Z方向に反射する。入射側レンズ543は、第2色分離素子533と第2反射素子541との間に配置されている。リレーレンズ544は、第2反射素子541と第3反射素子542との間に配置されている。出射側レンズ545は、第2反射素子541と赤用光変調素子55Rとの間に配置されている。
なお、本実施形態では、赤色光の光路にリレー装置54を設けているが、これに限らず、例えば他の色光より光路が長い色光を青色光とし、青色光の光路上にリレー装置54を設ける構成としてもよい。
【0035】
[光変調装置の構成]
光変調装置55は、入射する光を画像信号に応じて変調する。光変調装置55は、青用光変調素子55B、緑用光変調素子55G、及び、赤用光変調素子55Rを有する。
青用光変調素子55Bは、第1反射素子532から+Z方向に入射する青色光を変調する。青用光変調素子55Bによって変調された青色光は、+Z方向に進行して色合成素子56に入射する。
緑用光変調素子55Gは、第2色分離素子533から+X方向に入射する緑色光を変調する。緑用光変調素子55Gによって変調された緑色光は、+X方向に進行して色合成素子56に入射する。
赤用光変調素子55Rは、出射側レンズ545から-Z方向に入射する赤色光を変調する。赤用光変調素子55Rによって変調された赤色光は、-Z方向に進行して色合成素子56に入射する。
本実施形態では、各光変調素子55B,55G,55Rは、透過型液晶パネルと、透過型液晶パネルを挟む一対の偏光板とを備えて構成されている。
【0036】
[色合成素子の構成]
色合成素子56は、青用光変調素子55Bによって変調された青色光、緑用光変調素子55Gによって変調された緑色光、及び、赤用光変調素子55Rによって変調された赤色光を合成して画像光を生成する。具体的に、色合成素子56は、青用光変調素子55Bから+Z方向に入射される青色光を+X方向に反射し、緑用光変調素子55Gから+X方向に入射される緑色光を+X方向に透過し、赤用光変調素子55Rから-Z方向に入射される赤色光を+X方向に反射する。色合成素子56によって合成された合成光である画像光は、色合成素子56の光出射光軸、すなわち、画像生成装置5の光出射光軸に沿って+X方向に出射され、投射光学装置6に入射される。
本実施形態では、色合成素子56は、クロスダイクロイックプリズムによって構成されている。しかしながら、これに限らず、色合成素子56は、例えば複数のダイクロイックミラーによって構成することも可能である。
このように、画像生成装置5は、光源装置4から+Z方向に入射する光を変調して画像光を生成し、+Z方向と交差する+X方向に画像光を出射する。+X方向は、第2方向に相当する。
【0037】
[投射光学装置の構成]
投射光学装置6は、画像生成装置5によって生成されて画像生成装置5から入射する画像光を上記被投射面に投射する。すなわち、投射光学装置6は、光変調装置55によって変調された光を投射する。
投射光学装置6は、レンズ筐体61、入射側光路62、入射側レンズ群63、屈曲部材64、出射側光路65、出射側レンズ群66及び反射素子67を備える投射光学系である。
【0038】
レンズ筐体61は、投射光学装置用筐体に相当する。レンズ筐体61は、入射部611側から+X方向に延出した後、屈曲部612にて-Z方向に屈曲するように+Y方向からレンズ筐体61を見て逆向きのL字状に構成された鏡筒である。レンズ筐体61は、入射部611、屈曲部612、出射部613及び突出部616を有する。
【0039】
入射部611は、
図5に示すように、レンズ筐体61において+X方向に延出する部位である。入射部611の内部には、入射側光路62が設けられる。
入射側光路62は、画像生成装置5から画像光が+X方向に入射する光路である。入射側光路62には、入射側レンズ群63が設けられている。すなわち、投射光学装置6は、入射側光路62に配置される入射側レンズ群63を有する。なお、入射側レンズ群63を構成するレンズの数は、適宜設定可能である。
入射側レンズ群63は、入射側屈折系レンズ群に相当する。本実施形態では、入射側レンズ群63は、光学調整レンズとしてのフォーカスレンズ63Aを含む。フォーカスレンズ63Aは、被投射面に投射された画像のフォーカス状態を調整する。フォーカスレンズ63Aは、ユーザーによって後述する第1操作部材83が操作されることによって、入射側レンズ群63の光軸に沿って移動される。
【0040】
屈曲部612は、入射部611と出射部613とを接続する部位であり、入射部611内の入射側光路62を+X方向に通過する画像光の進行方向を-Z方向に屈曲させる部位である。屈曲部612の内部には屈曲部材64が設けられている。
屈曲部材64は、入射側光路62を+X方向に通過した画像光の進行方向を-Z方向に90°屈曲させる。屈曲部材64は、例えば反射ミラーによって構成される。
【0041】
出射部613は、屈曲部612から-Z方向に延出する部位であり、出射側光路65を構成する他、内部に出射側レンズ群66を収容する部位である。すなわち、出射部613は、レンズ筐体61において出射側光路65に応じた部位である。出射部613における+Y方向の部位には、
図4に示すように、反射素子67にて進行方向が変換された画像光が通過する開口部614が設けられている。開口部614は、ガラス等の透光性基板TMによって閉塞されている。
なお、開口部614及び投射口212と光源装置4における+Y方向の端部との位置関係は、後に詳述する。
【0042】
突出部616は、出射部613に対して-Z方向の部位に設けられている。突出部616は、
図4に示すように、出射部613よりも+X方向及び-X方向に突出した部位であり、反射素子67を収容する。すなわち、突出部616の外形は、出射部613の外形よりも大きい。なお、+X方向及び-X方向は、光源装置4と投射光学装置6とが並ぶ方向でもある。
【0043】
出射側光路65は、
図5に示すように、-Z方向に沿う出射部613の内部及び突出部616の内部に設けられており、屈曲部材64から画像光が-Z方向に通過して反射素子67に到達する光路である。すなわち、出射側光路65の光軸は、-Z方向に沿う。出射側光路65には、出射側レンズ群66及び反射素子67が設けられている。すなわち、投射光学装置6は、出射側光路65において屈曲部材64と反射素子67との間に配置される出射側レンズ群66を有する。
出射側レンズ群66は、出射側屈折系レンズ群に相当する。本実施形態では、出射側レンズ群66は、フォーカスレンズ63Aと同様の機能を有するフォーカスレンズ66Aを含む。フォーカスレンズ66Aは、ユーザーによって後述する第2操作部材84が操作されることによって、出射側レンズ群66の光軸に沿って移動される。
【0044】
反射素子67は、出射部613に位置する出射側レンズ群66に対して画像光の出射側に配置されている。すなわち、反射素子67は、出射側レンズ群66から出射された画像光が入射する位置に配置されている。反射素子67は、出射側レンズ群66から入射される画像光を+Y方向かつ+Z方向に反射して、画像光を拡散して投射する非球面ミラーである。反射素子67にて反射された画像光は、開口部614及び透光性基板TM(
図4参照)を通過し、+Z方向に進行するに従って+Y方向に進行しつつ拡散する。これにより、プロジェクター1と被投射面との距離が短くても被投射面に大画面の画像を表示可能である。すなわち、プロジェクター1は、焦点距離が短い短焦点型プロジェクターである。
【0045】
[投射光学装置の詳細な構成]
図7は、光源装置4と投射光学装置6の開口部614との位置関係を示す図である。換言すると、
図7は、XY平面に沿う光源装置4及び投射光学装置6の断面を示す図である。なお、
図7では、画像生成装置5及び支持部材7等の図示を省略している。
ここで、
図7に示すように、投射光学装置6のレンズ筐体61(投射光学装置用筐体)に設けられた開口部614は、出射方向に拡大する傾斜面を有する凹部を構成している。開口部614を形成する端縁のうち-Y方向の端縁615は、光源装置4における+Y方向の端部411よりも-Y方向に配置されている。換言すると、光源装置4の光源用筐体41における+Y方向の端部411は、開口部614を形成する端縁のうち-Y方向の端縁615よりも+Y方向に配置されている。なお、開口部614を形成する端縁のうち-Y方向の端縁615は、開口部614の反射素子67側の端縁であると定義できる。更に、外装筐体2の天面21に設けられた投射口212は、投射光学装置6の開口部614から出射方向に拡大する傾斜面を有する凹部211を構成している。光源装置4の端部411は、外装筐体2の天面21に設けられた投射口212の端縁のうち-Y方向の端縁213よりも+Y方向に配置されている。投射口212の端縁のうち-Y方向の端縁213は、レンズ筐体61(投射光学装置用筐体)の開口部614側の端縁であると定義できる。なお、+Y方向は、第2面としての底面22から第1面としての天面21に向かう第3方向に相当する。
このため、開口部614から出射されて、投射口212を介してプロジェクター1の外部に投射される画像光は、光源装置4の端部411によって遮蔽されるおそれがある。
【0046】
図8は、反射素子67によって反射される画像光を示す光線図である。
ここで、
図8に示すように、反射素子67の反射面67Aにおいて反射素子67の光軸X1から-Y方向に離れた位置に入射する画像光を画像光P1とし、反射面67Aにおいて反射素子67の光軸X1に近い位置に入射する画像光を画像光P2とする。反射面67Aにて反射された画像光P1の進行方向と光軸X1との交差角は大きく、反射面67Aにて反射された画像光P2の進行方向と光軸X1との交差角は小さい。このため、例えば光源装置4の端部411のように、開口部614よりも+Y方向に配置される物体によって、画像光P2は遮蔽されやすい。なお、画像光P2は、画像光の投射範囲において外装筐体2側の端縁、すなわち、-Y方向の端縁に入射する画像光の一例である。
【0047】
これに対し、本実施形態に係る投射光学装置6では、光変調装置55に結像し、画像光を投射する投射光学装置6の焦点距離をf1とし、反射素子67の焦点距離をf2としたとき、「f2/f1」の絶対値は、以下の式1を満たす。
このとき、反射素子67の焦点距離f2は、画像光の投射範囲において外装筐体2側の端縁に入射する光線の焦点距離とすることが好ましい。すなわち、焦点距離f2は、画像の投射範囲において-Y方向の端縁に入射する光線の焦点距離とすることが好ましい。
なお、投射光学装置6の焦点距離は、反射素子67を含む投射光学装置6全体の焦点距離である。
【0048】
[数1]
4.0 < |f2/f1| < 20.0 …(1)
【0049】
これによれば、投射光学装置6による画像の投射範囲を+Y方向にシフトさせることができる。このため、光源装置4において、開口部614の端縁615及び投射口212の端縁213よりも+Y方向に配置される端部411によって、開口部614から投射される画像光の一部が遮蔽されることを抑制できる。このように、投射光学装置6と光源装置4との距離が小さくても、投射される画像光の一部が遮蔽されることを抑制できるので、投射光学装置6と、投射光学装置6に対して-X方向に配置される光源装置4との距離を小さくできる。これにより、+X方向におけるプロジェクター1の寸法を小さくできる。
一方、上記式1が満たされることによって、投射光学装置6の結像性能の低下を抑制できる。これにより、被投射面に画像光が投射されることによって表示される画像の劣化を抑制でき、ユーザーによる画像の視認性を確保できる。
従って、画像光の一部の遮蔽と、投射光学装置6の結像性能の低下とのそれぞれを抑制しつつ、プロジェクター1の小型化を図ることができる。
なお、「f2/f1」の絶対値が以下の式2を満たすことによって、上記効果をより好適に奏することができる。すなわち、以下の式2が満たされることが好ましい。
【0050】
[数2]
7.0 < |f2/f1| < 15.0 …(2)
【0051】
更に、投射光学装置6では、
図5に示すように、出射側レンズ群66のレンズ長をL1とし、入射側レンズ群63のレンズ長をL2としたとき、「L1/L2」は、以下の式3を満たすことが好ましい。
なお、出射側レンズ群66のレンズ長L1は、出射側レンズ群66において最も画像光の入射側に設けられたレンズにおける光入射面から、出射側レンズ群66において最も画像光の出射側に設けられたレンズにおける光出射面までの出射側レンズ群66の光軸に沿う寸法である。
また、入射側レンズ群63のレンズ長L2は、入射側レンズ群63において最も画像光の入射側に設けられたレンズにおける光入射面から、入射側レンズ群63において最も画像光の出射側に設けられたレンズにおける光出射面までの入射側レンズ群63の光軸に沿う寸法である。
【0052】
[数3]
0.85 < L1/L2 < 1.5 …(3)
【0053】
上記式3が満たされることによって、出射側レンズ群66の屈折力と入射側レンズ群63の屈折力とのバランスを維持できる。これによれば、出射側レンズ群66の屈折力と入射側レンズ群63の屈折力との差が大きくなる等して、収差が発生することを抑制できる。このため、投射光学装置6の結像性能の低下を効果的に抑制でき、被投射面に表示される画像の劣化を抑制できる。
また、式3が満たされる状態にて、出射側レンズ群66のレンズ長L1を、入射側レンズ群63のレンズ長L2よりも大きくすることによって、+X方向における外装筐体2の寸法を小さくできる。一方、式3が満たされる状態にて、出射側レンズ群66のレンズ長L1を、入射側レンズ群63のレンズ長L2よりも小さくすることによって、+Z方向における外装筐体2の寸法を小さくできる。従って、プロジェクター1の小型化を図ることができる。
なお、これらに関する実施例は、後に詳述する。
【0054】
[支持部材の構成]
支持部材7は、
図4に示すように、外装筐体2の内部に設けられて、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を支持する基板である。支持部材7は、+Y方向から見て、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を有する画像投射装置3の全体が含まれる程度の面積を有する。このような支持部材7によって、画像投射装置3の荷重の偏りを抑制でき、画像投射装置3を安定して支持できる。
【0055】
[位置調節装置の構成]
位置調節装置8は、入射側レンズ群63を構成するフォーカスレンズ63Aの位置、及び、出射側レンズ群66を構成するフォーカスレンズ66Aの位置を調節する。位置調節装置8は、
図4に示すように、第1移動枠体81、第2移動枠体82、第1操作部材83及び第2操作部材84を備える。
【0056】
[第1移動枠体及び第2移動枠体の構成]
第1移動枠体81は、フォーカスレンズ63Aを支持し、レンズ筐体61の入射部611に設けられている。第1移動枠体81は、入射側レンズ群63の光軸と平行な回動軸を中心として回動されることによって、入射側レンズ群63の光軸に沿ってフォーカスレンズ63Aを±X方向に移動させる。
第2移動枠体82は、フォーカスレンズ66Aを支持し、レンズ筐体61の出射部613に設けられている。第2移動枠体82は、出射側レンズ群66の光軸と平行な回動軸を中心として回動されることによって、出射側レンズ群66の光軸に沿ってフォーカスレンズ66Aを±Z方向に移動させる。
【0057】
[第1操作部材の構成]
第1操作部材83は、レバー部材に相当する。第1操作部材83は、フォーカスレンズ63Aを入射側レンズ群63の光軸に沿って移動させる。第1操作部材83は、+X方向において光源装置4と投射光学装置6との間に配置され、+Z方向に沿って延在している。第1操作部材83は、軸部831、操作部832及び係合部833を有する。
軸部831は、第1操作部材83において+Z方向の略中央に設けられている。軸部831は、+X方向に突出する円柱状に形成されており、第1操作部材83の+X方向に沿う回動軸を構成する。なお、軸部831は、レンズ筐体61に支持されてもよく、支持部材7によって支持されてもよい。
【0058】
操作部832は、第1操作部材83において-Z方向に設けられ、操作用開口部236を介して露出される。操作部832を±Y方向に移動させることによって、第1操作部材83が軸部831を中心として回転されて、係合部833を±Y方向に移動させる。
係合部833は、第1移動枠体81と係合しており、第1移動枠体81を入射側レンズ群63の光軸に沿って移動させる。具体的に、操作部832が-Y方向に操作されて、係合部833が+Y方向に移動されると、第1移動枠体81とともにフォーカスレンズ63Aが、入射側レンズ群63の光軸に沿って+X方向及び-X方向のうち一方に移動される。操作部832が+Y方向に操作されて、係合部833が-Y方向に移動されると、第1移動枠体81とともにフォーカスレンズ63Aが、入射側レンズ群63の光軸に沿って+X方向及び-X方向のうち他方に移動される。
光学調整レンズとしてのフォーカスレンズ63Aが、上記のように移動されることによって、被投射面に表示される画像のフォーカス状態が調整される。
【0059】
[第2操作部材の構成]
第2操作部材84は、フォーカスレンズ66Aを出射側レンズ群66の光軸に沿って±Z方向に移動させる。第2操作部材84は、+X方向において投射光学装置6と制御装置CD及び電源装置PSとの間に配置され、+Z方向に沿って延在している。第2操作部材84は、第1操作部材83の軸部831、操作部832及び係合部833と同様の軸部841、操作部842及び係合部843を有する。第2操作部材84は、第1操作部材83と同様に作用して、第2移動枠体82を移動させて、出射側レンズ群66の光軸に沿ってフォーカスレンズ66Aを移動させる。これにより、被投射面に表示される画像のフォーカス状態が調整される。
【0060】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係るプロジェクター1は、以下の効果を奏する。
プロジェクター1は、外装筐体2、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を備える。外装筐体2は、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を収容する。光源装置4は、+Z方向に光を出射する。+Z方向は、第1方向に相当する。画像生成装置5は、入射する光を変調する光変調装置55を有する。画像生成装置5は、光源装置4から+Z方向に入射する光を変調して画像光を生成し、+Z方向と交差する+X方向に画像光を出射する。+X方向は、第2方向に相当する。
投射光学装置6は、画像生成装置5から+X方向に沿って入射する画像光を投射する。投射光学装置6は、入射側光路62、屈曲部材64、出射側光路65及び反射素子67を備える。入射側光路62には、画像生成装置5から画像光が+X方向に沿って入射する。屈曲部材64は、入射側光路62を通過した画像光を-Z方向に屈曲させる。-Z方向は、第1方向とは反対方向である。出射側光路65は、+X方向において光源装置と並んで配置される。出射側光路65には、屈曲部材64によって屈曲された画像光が-Z方向に沿って入射する。反射素子67は、出射側光路65に設けられ、入射する画像光を反射して、外装筐体2の外部に投射する。
光変調装置55に結像し、画像光を投射する投射光学装置6の焦点距離をf1とし、反射素子67の焦点距離をf2としたとき、「f2/f1」の絶対値は上記式1を満たす。
【0061】
このような構成によれば、投射光学装置6の結像性能の低下を抑制しつつ、投射光学装置6による画像の投射範囲を外装筐体2から離間させることができる。例えば、上記第1投射姿勢では、「f2/f1」の絶対値が上記式1を満たすことにより、投射光学装置6の結像性能の低下を抑制しつつ、画像光の投射範囲を上側にシフトさせることができる。このため、プロジェクター1を構成する装置及び部材によって、画像光が遮蔽されることを抑制できる。これにより、画像光を遮蔽しないように、投射光学装置6に対して光源装置4を投射光学装置6から大きく離す必要がない。従って、画像光の遮蔽と投射光学装置6の結像性能の低下とのそれぞれを抑制できる他、+X方向におけるプロジェクター1の寸法を小さくできる。
【0062】
プロジェクター1では、反射素子67の焦点距離f1は、画像光の投射範囲において外装筐体2側の端縁に入射する光線の焦点距離である。具体的に、第1投射姿勢では、反射素子67の焦点距離f1は、画像光の投射範囲において-Y方向の端縁に入射する光線の焦点距離である。
このような構成によれば、画像光の投射範囲において-Y方向の端縁に入射する画像光P2が、光源装置4の端部411によって遮蔽されることを抑制できる。
【0063】
プロジェクター1では、外装筐体2は、天面21、底面22及び投射口212を有する。天面21は、反射素子67による画像光の反射方向に配置される。天面21は、第1面に相当する。底面22は、天面21とは反対側に配置される。底面22は、第2面に相当する。投射口212は、天面21に設けられ、投射光学装置6よって投射された画像光が通過する。+Y方向は、底面22から天面21に向かう方向であり、第3方向に相当する。光源装置4において+Y方向の端部411は、投射口212の端縁のうち-Y方向の部分よりも+Y方向に配置されている。
【0064】
ここで、通常のプロジェクターでは、投射口における-Y方向の部分よりも+Y方向に光源装置の一部が配置されていると、投射口から投射された画像光の一部が光源装置の一部によって遮蔽されやすい。
これに対し、上記式1が満たされることによって、投射口212から投射された画像光の一部が光源装置4の端部411によって遮蔽されることを抑制できる。従って、プロジェクター1の小型化を図りやすくすることができる他、外装筐体2内における光源装置4のレイアウト自由度を高めることができる。
【0065】
プロジェクター1では、「f2/f1」の絶対値は、上記式2を満たす。
このような構成によれば、投射光学装置6の結像性能の低下を抑制しつつ、画像光の投射範囲を効果的にシフトさせることができる。従って、上記効果を好適に奏することができる。
【0066】
プロジェクター1では、投射光学装置6は、入射側レンズ群63及び出射側レンズ群66を有する。入射側レンズ群63は、入射側光路62に配置されるレンズ群であり、入射側屈折系レンズ群に相当する。出射側レンズ群66は、出射側光路65において屈曲部材64と反射素子67との間に配置されるレンズ群であり、出射側屈折系レンズ群に相当する。出射側レンズ群66のレンズ長をL1とし、入射側レンズ群63のレンズ長をL2としたとき、「L1/L2」は、上記式3を満たす。
このような構成によれば、出射側レンズ群66の屈折力と入射側レンズ群63の屈折力とのバランスを維持でき、収差の発生を抑制できる。また、上記式3が満たされる状態にて、出射側レンズ群66のレンズ長L1を、入射側レンズ群63のレンズ長L2よりも大きくすることによって、+X方向における外装筐体2の寸法を小さくできる。一方、上記式2が満たされる状態にて、出射側レンズ群66のレンズ長L1を、入射側レンズ群63のレンズ長L2よりも小さくすることによって、+Z方向における外装筐体2の寸法を小さくできる。従って、プロジェクター1の小型化を図ることができる。
【0067】
プロジェクター1では、+X方向において光源装置4と投射光学装置6との間に配置され、+Z方向に沿って延在する第1操作部材83を備える。第1操作部材83は、レバー部材に相当する。入射側レンズ群63は、入射側レンズ群63の光軸に沿って移動するフォーカスレンズ63Aを含む。フォーカスレンズ63Aは、光学調整レンズに相当する。第1操作部材83は、フォーカスレンズ63Aを入射側レンズ群63の光軸に沿って移動させる。
このような構成によれば、光源装置4と投射光学装置6との間の空間を利用して、フォーカスレンズ63Aを移動させる第1操作部材83を配置できる。従って、第1操作部材83が他の場所に配置される場合に比べて、外装筐体2内の空間を有効に利用でき、プロジェクター1の小型化を図ることができる。
【0068】
プロジェクター1では、外装筐体2内に配置され、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を支持する1つの支持部材7を備える。
ここで、反射素子67は、投射光学装置6において比較的大きな部材となることから、投射光学装置6の重心は、投射光学装置6における反射素子67側に偏りやすい。
これに対し、1つの支持部材7が、投射光学装置6だけでなく、光源装置4及び画像生成装置5を支持することによって、外装筐体2に作用する荷重の偏りを抑制できる。これにより、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を安定して支持できる。
この他、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を設計上の位置に配置しやすくすることができる。従って、プロジェクター1の組立工程を簡略化できる。
【0069】
[実施形態の変形]
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形及び改良等は、本開示に含まれるものである。
上記実施形態では、反射素子67の焦点距離f2は、投射光学装置6によって投射される画像光の投射範囲において外装筐体2側の端縁に入射する光線の焦点距離であるとした。例えば、反射素子67の焦点距離f2は、投射光学装置6によって投射される画像光の投射範囲において-Y方向の端縁に入射する光線の焦点距離であるとした。しかしながら、これに限らず、例えば反射素子67の焦点距離f2は、画像光の投射範囲における中央に入射する光線の焦点距離であってもよい。すなわち、反射素子67の焦点距離f2は、画像光の投射範囲においてどの位置に入射する光線の焦点距離であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、投射口212は、第1面としての天面21に設けられた凹部211の底部に設けられているとした。しかしながら、これに限らず、投射口212が設けられていれば、凹部211は無くてもよい。
また、投射口212は、底面22とは反対側の天面21に設けられているとした。しかしながら、外装筐体2において投射口212が設けられる面は、天面21以外の面であってもよい。
また、光源装置4において+Y方向の端部411は、投射口212の端縁のうち、-Y方向の端縁213よりも+Y方向に配置されているとした。しかしながら、これに限らず、端部411は、端縁213よりも-Y方向に配置されていてもよい。同様に、端部411は、開口部614の端縁のうち、-Y方向の端縁615よりも+Y方向に配置されているとした。しかしながら、これに限らず、端部411は、端縁615よりも-Y方向に配置されていてもよい。
更に、投射口212の端縁213よりも+Y方向に端部が位置する部材は、光源装置4に限らず、他の部材であってもよい。外装筐体2の内部には、端縁213よりも+Y方向に設けられる部材が無くてもよい。
【0071】
上記実施形態では、投射光学装置6は、入射側レンズ群63及び出射側レンズ群66を有するとした。しかしながら、これに限らず、入射側レンズ群63及び出射側レンズ群66のうち一方のレンズ群は無くてもよい。また、入射側レンズ群63を構成するレンズの数と、出射側レンズ群66を構成するレンズの数は、適宜設定可能である。
【0072】
上記実施形態では、入射側レンズ群63のレンズ長L2に対する出射側レンズ群66のレンズ長L1の割合、すなわち、「L1/L2」は、上記式3を満たすとした。しかしながら、これに限らず、上記式3は満たされなくてもよい。
【0073】
上記実施形態では、プロジェクター1は、レバー部材としての第1操作部材83を備え、第1操作部材83は、入射側レンズ群63に含まれるフォーカスレンズ63Aを、入射側レンズ群63の光軸に沿って移動させるとした。しかしながら、これに限らず、第1操作部材83は無くてもよい。例えば、位置調節装置8は無くてもよい。また、第1操作部材83は、第2操作部材84と同様に、投射光学装置6に対して+X方向に配置されていてもよい。一方、第1操作部材83とともに、第2操作部材84も光源装置4と投射光学装置6との間に設けられていてもよい。
【0074】
上記実施形態では、第1操作部材83は、入射側レンズ群63に含まれるフォーカスレンズ63Aを、入射側レンズ群63の光軸に沿って移動させるとした。しかしながら、これに限らず、第1操作部材83が移動させるレンズは、出射側レンズ群66に含まれるフォーカスレンズ66Aであってもよい。すなわち、第1操作部材83は、第2移動枠体82と係合してもよい。
また、本開示のレバー部材が移動させる光学調整レンズは、フォーカスレンズに限らず、ズームレンズ等の他の光学レンズであってもよい。
【0075】
上記実施形態では、プロジェクター1は、外装筐体2内に配置され、光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を支持する1つの支持部材7を備えるとした。しかしながら、支持部材7は無くてもよい。また、支持部材7が光源装置4、画像生成装置5及び投射光学装置6を支持できれば、支持部材7の形状は、基板状でなくてもよい。
【0076】
上記実施形態では、光変調装置55は、3つの光変調素子55B,55G,55Rを備えるとした。しかしながら、これに限らず、光変調装置が備える光変調素子の数は、3に限らず、適宜変更可能である。
また、各光変調素子55B,55G,55Rは、光入射面と光出射面とが異なる透過型液晶パネルを有するとした。しかしながら、これに限らず、光入射面と光出射面とが同一となる反射型液晶パネルを有する構成としてもよい。また、入射光束を変調して画像情報に応じた画像を形成可能な光変調装置であれば、マイクロミラーを用いたデバイス、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)等を利用したものなど、液晶以外の光変調装置を用いてもよい。
【0077】
[実施例]
以下、本件発明者が実施した実施例について説明する。
【0078】
[投射光学装置の焦点距離に対する反射素子の焦点距離の比率の範囲]
本件発明者は、プロジェクターを小型化するにあたり、外装筐体内のレイアウトを検討した。このとき、光源装置と投射光学装置とを画像生成装置からの画像光の出射方向である+X方向に並設することを検討した。
しかしながら、光源装置と投射光学装置とを+X方向に並設した場合、光源装置における+Y方向の端部が、投射光学装置のレンズ筐体に設けられた開口部から投射される画像光の一部を遮蔽する可能性が考えられた。
これに対し、画像光の一部が遮蔽されないように、反射素子による屈折を大きくして、反射素子からの画像光の投射範囲、すなわち、投射光学装置による画像の投射範囲を+Y方向にシフトさせると、投射光学装置の結像性能が低下することが考えられた。
これらのことから、本件発明者は、鋭意研究の末、光変調装置55に結像し、画像光を投射する投射光学装置6全体の焦点距離f1に対する反射素子67の焦点距離f2の比率、すなわち、「f2/f1」の絶対値が、上記式1を満たすことによって、画像光の遮蔽と投射光学装置の結像性能の低下とを抑制できることが分かった。
【0079】
図9は、「f2/f1」の絶対値と光線高さとの関係を示すグラフである。
まず、本件発明者は、「f2/f1」の絶対値に応じて、光線高さがどのように変化するかの検証を行った。光線高さの算出については、投射光学装置6と同様の構成を備え、かつ、「f2/f1」の絶対値が3.9、7.0、8.8、11.2、13.5、14.5及び20.1である投射光学装置をサンプルとし、各投射光学装置の光線高さを算出した。なお、光線高さは、投射光学装置から所定距離離れた被投射面における投射光学装置からの投射光の中心位置と投射光学装置との間の高さであり、単位はmmである。
図9に示されるように、「f2/f1」の絶対値が大きくなるに従って、光線高さは小さくなり、「f2/f1」の絶対値が小さくなるに従って、光線高さは大きくなることが分かった。例えば「f2/f1」の絶対値が3.9であるときには、光線高さは略74mmであり、「f2/f1」の絶対値が11.2であるときには、光線高さは略57mmであり、「f2/f1」の絶対値が20.1であるときには、光線高さは略36mmであった。このため、光線高さを大きくして、画像光等の投射光が遮蔽されないようにするためには、「f2/f1」の絶対値をなるべく小さくする必要があることが分かった。
【0080】
次に、本件発明者は、「f2/f1」の絶対値に応じて、投射光学装置の結像性能がどのように変化するかの検証を行った。投射光学装置の結像性能については、MTF(Modulation Transfer Function)を測定することによって評価した。結像性能の評価対象は、光線高さのサンプルと同様に、「f2/f1」の絶対値が3.9、7.0、8.8、11.2、13.5、14.5及び20.1である投射光学装置である。この検証では、MTFが所定値以上であれば、投射光学装置の結像性能は十分であり、MTFが所定値未満であれば、投射光学装置の結像性能は不十分であるとした。
なお、MTFの測定については、既知の測定方法を採用できる。本実施例では、「f2/f1」の絶対値が異なる投射光学装置ごとにチャート画像を投射し、投射されたチャート画像をカメラによって撮像して得られる撮像画像に基づいてMTFを測定した。
【0081】
測定したMTFに基づく各投射光学装置の結像性能の評価結果を、以下の表1に示す。
表1の「結像性能」欄において「A」は、投射光学装置のMTFが所定値を大きく超えており、投射光学装置の結像性能が十分に良好であることを示す。「B」は、MTFが所定値以上であり、投射光学装置の結像性能が良好であることを示す。「C」は、MTFが所定値以上であり、投射光学装置としての基準は満たすものの、投射光学装置の結像性能が「A」及び「B」の場合に比べて低いことを示している。
表1の「光線高さ」欄において「A」は、算出された光線高さが基準値に対して十分に高いことを示し、「B」は、算出された光線高さが基準値よりも高いことを示し、「C」は、算出された光線高さが基準値よりも僅かに高いものの、「A」及び「B」の場合に比べて低いことを示している。
【0082】
【0083】
このような検証によると、表1に示すように、結像性能が十分となる「f2/f1」の絶対値の範囲があることが分かった。例えば、「f2/f1」の絶対値が11.2以上、14.5以下であると、投射光学装置の結像性能は十分に良好であった。また「f2/f1」の絶対値が8.8以上、11.2未満であると、投射光学装置の結像性能は良好であった。更に「f2/f1」の絶対値が3.9以上、7.0以下である場合、及び、20.1以上である場合には、投射光学装置としての基準は満たすものの、投射光学装置の結像性能は低かった。
【0084】
以上のことから、「f2/f1」の絶対値が4.0を超え、20.0未満であることを示す上記式1が満たされることによって、プロジェクター1に適用されたときに、画像光の遮蔽及び結像性能の低下を抑制できる投射光学装置を構成できることが分かった。
また、このような投射光学装置をプロジェクター1に適用することによって、画像光が遮蔽されないように、投射光学装置の出射側光路に対して-X方向に配置される光源装置を投射光学装置から大きく離す必要がない。従って、画像光の遮蔽と投射光学装置の結像性能の低下とのそれぞれを抑制でき、更に+X方向におけるプロジェクターの寸法を小さくできることが分かった。
更に「f2/f1」の絶対値が7.0を超え、15.0未満であることを示す上記式2が満たされることによって、画像光の遮蔽と投射光学装置の結像性能の低下とのそれぞれを効果的に抑制でき、かつ、プロジェクターの小型化を図れることが分かった。
【0085】
[入射側レンズ群のレンズ長に対する出射側レンズ群のレンズ長の比率の範囲]
次に、本件発明者は、入射側レンズ群のレンズ長L2に対する出射側レンズ群のレンズ長L1の比率、すなわち、「L1/L2」に応じて、投射光学装置の結像性能がどのように変化するのかを検証した。結像性能の評価対象は、「f2/f1」の絶対値が上記式1を満たし、かつ、「L1/L2」が0.84、1.00、1.20、1.35及び1.52である投射光学装置である。なお、投射光学装置の結像性能については、MTFを測定することによって評価した。L1の単位及びL2の単位はmmである。
【0086】
測定したMTFに基づく各投射光学装置の結像性能の評価結果を、以下の表2に示す。
表2の「結像性能」欄において「A」及び「B」は、上記と同様である。
表2の「長さ」欄において「A」は、投射光学装置全体の長さが小さく、投射光学装置の小型化が図れていることを示し、「B」は、「A」に対して投射光学装置全体の長さが大きいことを示している。
なお、全体長は、投射光学装置内を通過する光束の光路において、入射側レンズ群において最も光入射側に配置されるレンズの光入射面から、出射側レンズ群において最も光出射側に配置されるレンズの光出射面までの長さであり、単位はmmである。
【0087】
【0088】
このような検証によると、投射光学装置の結像性能は、表2に示すように、結像性能が良好で、かつ、投射光学装置の小型化を図れる「L1/L2」の範囲が存在することが分かった。例えば、「L1/L2」が略1.00以上、略1.35以下の範囲で、投射光学装置の結像性能は十分に良好であり、かつ、投射光学装置の全体長を小さくできることが分かった。なお、「L1/L2」が0.84以下であると、投射光学装置の結像性能は良好であったが、投射光学装置の全体長はあまり小さくならなかった。また、「L1/L2」が1.52以上であると、投射光学装置の結像性能は十分に良好であったが、投射光学装置の全体長はあまり小さくならなかった。
以上のことから、「L1/L2」が0.85を超え、1.5未満であることを示す上記式3が満たされることによって、プロジェクター1に適用されたときに、結像性能が良好で、かつ、小型化を図れる投射光学装置を構成できることが分かった。
【0089】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
本開示の一態様に係るプロジェクターは、第1方向に光を出射する光源装置と、入射する光を変調する光変調装置を有し、前記光源装置から前記第1方向に入射する光を変調して画像光を生成し、前記第1方向と交差する第2方向に前記画像光を出射する画像生成装置と、前記画像生成装置から前記第2方向に沿って入射する前記画像光を投射する投射光学装置と、前記光源装置、前記画像生成装置及び前記投射光学装置を収容する外装筐体と、を備え、前記投射光学装置は、前記画像生成装置から前記画像光が前記第2方向に沿って入射する入射側光路と、前記入射側光路を通過した前記画像光を前記第1方向とは反対方向に屈曲させる屈曲部材と、前記屈曲部材によって屈曲された前記画像光が前記第1方向とは反対方向に沿って入射し、前記第2方向において前記光源装置と並ぶ出射側光路と、前記出射側光路に設けられ、入射する前記画像光を反射して、前記外装筐体の外部に投射する反射素子と、を備え、前記光変調装置に結像し、前記画像光を投射する前記投射光学装置の焦点距離をf1とし、前記反射素子の焦点距離をf2としたとき、f2/f1の絶対値は、
4.0 < |f2/f1| < 20.0
を満たす。
【0090】
なお、上記のように、設置面に載置されたプロジェクターが、外装筐体において上側に配置される天面から背面側かつ上方に画像光を投射するときのプロジェクターの姿勢を、第1投射姿勢という。また、投射光学装置の焦点距離は、反射素子を含む投射光学装置全体の焦点距離である。
上記構成によれば、投射光学装置の焦点距離f1に対する反射素子の焦点距離f2の比率、すなわち、「f2/f1」の絶対値が、上記条件式を満たすことにより、投射光学装置の結像性能の低下を抑制しつつ、投射光学装置による画像の投射範囲を外装筐体から離間させることができる。例えば、上記第1投射姿勢では、「f2/f1」の絶対値が上記条件式を満たすことにより、投射光学装置の結像性能の低下を抑制しつつ、画像光の投射範囲を上側にシフトさせることができる。このため、プロジェクターを構成する装置及び部材によって、画像光が遮蔽されることを抑制できる。これにより、画像光が遮蔽されないように、投射光学装置の出射側光路に対して第2方向とは反対方向に配置される光源装置を投射光学装置から大きく離す必要がない。従って、画像光の遮蔽と投射光学装置の結像性能の低下とのそれぞれを抑制できる他、第2方向におけるプロジェクターの寸法を小さくできる。
【0091】
上記一態様では、前記反射素子の焦点距離は、前記画像光の投射範囲において前記外装筐体側の端縁に入射する光線の焦点距離であってもよい。
具体的に、第1投射姿勢では、画像光の投射範囲において外装筐体側の端縁に入射する光線は、画像光の投射範囲において下側の端縁に入射する光線である。
上記構成によれば、画像光の投射範囲において外装筐体側の端縁に入射する光線が、例えば光源装置によって遮蔽されることを抑制できる。
【0092】
上記一態様では、前記外装筐体は、前記反射素子による前記画像光の反射方向に配置される第1面と、前記第1面とは反対側に配置される第2面と、前記第1面に設けられ、前記投射光学装置によって投射された前記画像光が通過する投射口と、を有し、前記第2面から前記第1面に向かう方向を第3方向とすると、前記光源装置において前記第3方向の端部は、前記投射口の端縁のうち、前記第3方向とは反対方向の端縁よりも前記第3方向に配置されていてもよい。
ここで、通常のプロジェクターでは、投射口における上記第3方向とは反対方向の部分よりも第3方向に光源装置の一部が配置されていると、投射口から投射された画像光の一部が光源装置の一部によって遮蔽されやすい。
これに対し、「f2/f1」の絶対値が上記条件式を満たすことによって、投射口から投射された画像光の一部が光源装置の一部によって遮蔽されることを抑制できる。例えば、上記第1投射姿勢では、第3方向は上方向となるので、光源装置における上側の端部が、投射口の端縁のうち下方向の部分よりも上方向に配置されていても、光源装置における上側の端部によって画像光の一部が遮蔽されることを抑制できる。従って、プロジェクターの小型化を図りやすくすることができる他、外装筐体内における光源装置のレイアウト自由度を高めることができる。
【0093】
上記一態様では、f2/f1の絶対値は、
7.0 < |f2/f1| < 15.0
を満たしてもよい。
このような構成によれば、投射光学装置の結像性能の低下を抑制しつつ、画像光の投射範囲を効果的にシフトさせることができる。従って、上記効果を好適に奏することができる。
【0094】
上記一態様では、前記投射光学装置は、前記出射側光路において前記屈曲部材と前記反射素子との間に配置される出射側屈折系レンズ群と、前記入射側光路に配置される入射側屈折系レンズ群と、を有し、前記出射側屈折系レンズ群のレンズ長をL1とし、前記入射側屈折系レンズ群のレンズ長をL2としたとき、L1/L2は、
0.85 < L1/L2 < 1.5
を満たしてもよい。
なお、出射側屈折系レンズ群のレンズ長L1とは、出射側屈折系レンズ群において最も光入射側に配置されるレンズの光入射面から、最も光出射側に配置されるレンズの光出射面までの出射側屈折系レンズ群の光軸に沿う寸法である。また、入射側屈折系レンズ群のレンズ長L2とは、入射側屈折系レンズ群において最も光入射側に配置されるレンズの光入射面から、最も光出射側に配置されるレンズの光出射面までの出射側屈折系レンズ群の光軸に沿う寸法である。
L1/L2についての上記条件式が満たされることによって、出射側屈折系レンズ群の屈折力と入射側屈折系レンズ群の屈折力とのバランスを維持でき、収差の発生を抑制できる。また、L1/L2についての上記条件式が満たされる状態にて、出射側屈折系レンズ群のレンズ長L1を、入射側屈折系レンズ群のレンズ長L2よりも大きくすることによって、第2方向における外装筐体の寸法を小さくできる。一方、L1/L2についての上記条件式が満たされる状態にて、出射側屈折系レンズ群のレンズ長L1を、入射側屈折系レンズ群のレンズ長L2よりも小さくすることによって、第1方向における外装筐体の寸法を小さくできる。従って、プロジェクターの小型化を図ることができる。
【0095】
上記一態様では、前記第2方向において前記光源装置と前記投射光学装置との間に配置され、前記第1方向に沿って延在するレバー部材を備え、前記出射側屈折系レンズ群と前記入射側屈折系レンズ群とのうち一方の屈折系レンズ群は、前記一方の屈折系レンズ群の光軸に沿って移動する光学調整レンズを含み、前記レバー部材は、前記光学調整レンズを前記一方の屈折系レンズ群の光軸に沿って移動させてもよい。
このような構成によれば、光源装置と投射光学装置との間の空間を利用して、光学調整レンズを移動させるレバー部材を配置できる。従って、レバー部材が他の場所に配置される場合に比べて、外装筐体内の空間を有効に利用でき、プロジェクターの小型化を図ることができる。
【0096】
上記一態様では、前記外装筐体内に配置され、前記光源装置、前記画像生成装置及び前記投射光学装置を支持する1つの支持部材を備えてもよい。
ここで、反射素子は、投射光学装置において比較的大きな部材となることから、投射光学装置の重心は、投射光学装置における反射素子側に偏りやすい。
これに対し、1つの支持部材が、投射光学装置だけでなく、光源装置及び画像生成装置を支持することによって、外装筐体に作用する荷重の偏りを抑制できる。これにより、光源装置、画像生成装置及び投射光学装置を安定して支持できる。
この他、光源装置、画像生成装置及び投射光学装置を設計上の位置に配置しやすくすることができる。従って、プロジェクターの組立工程を簡略化できる。
【符号の説明】
【0097】
1…プロジェクター、2…外装筐体、21…天面(第1面)、211…凹部、212…投射口、213…端縁、22…底面(第2面)、4…光源装置、41…光源用筐体、42…光源部、421…支持部材、422…固体発光素子、423…コリメーターレンズ、43…拡散透過部、44…光分離部、45…第1集光素子、46…波長変換素子、461…基板、462…波長変換層、463…反射層、47…第2集光素子、48…拡散反射素子、481…基板、482…拡散反射層、49…位相差部、5…画像生成装置、51…筐体、52…均一化装置、53…色分離装置、531…第1色分離素子、532…第1反射素子、533…第2色分離素子、54…リレー装置、541…第2反射素子、542…第3反射素子、543…入射側レンズ、544…リレーレンズ、545…出射側レンズ、55…光変調装置、55B…青用光変調素子、55G…緑用光変調素子、55R…赤用光変調素子、56…色合成素子、6…投射光学装置、61…レンズ筐体、614…開口部、615…端縁、62…入射側光路、63…入射側レンズ群(入射側屈折系レンズ群)、63A…フォーカスレンズ(光学調整レンズ)、64…屈曲部材、65…出射側光路、66…出射側レンズ群(出射側屈折系レンズ群)、66A…フォーカスレンズ、67…反射素子、7…支持部材、8…位置調節装置、83…第1操作部材(レバー部材)、+X…方向(第2方向)、+Y…方向(第3方向)、+Z…方向(第1方向)。