(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】流動性組成物セット及び流動性組成物
(51)【国際特許分類】
B22F 10/43 20210101AFI20221101BHJP
B22F 10/16 20210101ALI20221101BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20221101BHJP
B29C 64/336 20170101ALI20221101BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20221101BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221101BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221101BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20221101BHJP
B22F 12/55 20210101ALN20221101BHJP
【FI】
B22F10/43
B22F10/16
B29C64/106
B29C64/336
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/10
B22F12/55
(21)【出願番号】P 2021092286
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2015203485の分割
【原出願日】2015-10-15
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英司
(72)【発明者】
【氏名】石田 方哉
(72)【発明者】
【氏名】平井 利充
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056230(WO,A1)
【文献】特表平09-506553(JP,A)
【文献】特開平08-057967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/43
B22F 10/16
B29C 64/106
B29C 64/336
B29C 64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 70/10
B22F 12/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形物の製造方法であって、
構成材料粒子及び熱可塑性樹脂を含む構成用材料をステージに向けて吐出して構成層を形成する構成層形成工程と、
支持部形成粒子及び熱可塑性樹脂を含む支持用材料を前記ステージに向けて吐出して、
前記構成層を支持する支持層を形成する支持層形成工程と、
前記構成材料粒子の焼結温度以上であって前記支持部形成粒子の焼結温度未満の温度で、恒温槽において加熱する加熱工程と、を有し、
前記支持部形成粒子の焼結温度は、前記構成材料粒子の焼結温度よりも高く、
前記構成層形成工程及び前記支持層形成工程は、前記構成用材料に含まれる前記熱可塑性樹脂、及び、前記支持用材料に含まれる前記熱可塑性樹脂を可塑化することによって、前記構成用材料及び前記支持用材料を連続体の形状で吐出する工程を有する、
ことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記支持部形成粒子は、セラミックス粒子を含むことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記構成材料粒子は、金属粒子を含むことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記支持部形成粒子は、金属粒子及びセラミックス粒子の少なくとも一方を含み、
前記構成材料粒子は、樹脂粒子を含むことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項2又は4に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記セラミックス粒子は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム及び酸化ナトリウムの少なくともいずれか1つの成分を含む粒子であることを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記金属粒子は、アルミ、チタン、鉄、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、マルエージング鋼、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム及び酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム及びホウ酸マグネシウムの少なくともいずれか1つの成分を含む粒子であることを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載された三次元造形物の製造方法において、
前記支持部形成粒子の焼結温度は1350℃以上1600℃以下であり、前記構成材料粒子の焼結温度は1100℃以上1400℃以下であることを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
三次元造形装置と、前記三次元造形装置とは別体の加熱装置とを有し、三次元造形物を形成する三次元造形システムであって、
前記三次元造形装置は、
構成材料粒子及び熱可塑性樹脂を含む構成用材料を
、ステージに向けて吐出する第1吐出部と、
支持部形成粒子及び熱可塑性樹脂を含む支持用材料を
、前記ステージに向けて吐出する第2吐出部と、を備え、
前記第1吐出部は、前記構成用材料に含まれる前記熱可塑性樹脂を可塑化することによって、連続体の形状で前記ステージに向けて吐出し、
前記第2吐出部は、前記支持用材料に含まれる前記熱可塑性樹脂を可塑化することによって、連続体の形状で前記ステージに向けて吐出し、
前記第1吐出部から吐出される前記構成用材料で形成される構成層の形成と、前記第2吐出部から吐出される前記支持用材料で形成される支持層の形成とを繰り返し実行して、複数の前記構成層及び複数の前記支持層を含む積層体を形成し、
前記支持部形成粒子の焼結温度は、前記構成材料粒子の焼結温度よりも高く、
前記加熱装置は、
前記構成材料粒子の焼結温度以上であって前記支持部形成粒子の焼結温度未満の温度で、前記積層体を加熱する、
ことを特徴とする三次元造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物を形成する際に使用する流動性組成物セット及び流動性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、三次元造形物を製造する様々な方法が実施されている。このうち、流動性組成物を使用して三次元造形物を形成する方法が開示されている。
例えば、特許文献1には、流動性組成物としての金属ペーストを用いて層を形成し、三次元造形物の対応領域にレーザーを照射して焼結又は溶融しながら三次元造形物を製造する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、三次元造形物の対応領域を焼結又は溶融しながら三次元造形物を製造する場合、焼結又は溶融する際の熱により、該三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結又は溶融してしまい、三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きい場合があった。すなわち、三次元造形物を製造する従来の製造方法では、製造される三次元造形物の後処理工程を減らすことが十分にできていなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の流動性組成物セットは、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物と、前記三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物と、を含む流動性組成物セットであって、前記支持部形成粒子の焼結温度は、前記構成材料粒子の焼結温度よりも高いことを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、支持部形成粒子の焼結温度は、構成材料粒子の焼結温度よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を焼結させつつ支持部の焼結を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0008】
本発明の第2の態様の流動性組成物セットは、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物と、前記三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物と、を含む流動性組成物セットであって、前記支持部形成粒子の融点は、前記構成材料粒子の融点よりも高いことを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、支持部形成粒子の融点は、構成材料粒子の融点よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を溶融させつつ支持部の溶融を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も溶融させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0010】
本発明の第3の態様の流動性組成物セットは、前記第1又は第2の態様において、前記構成材料粒子を含む流動性組成物及び前記支持部形成粒子を含む流動性組成物の少なくとも一方は、溶媒及びバインダーの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、構成材料粒子を含む流動性組成物及び前記支持部形成粒子を含む流動性組成物の少なくとも一方は、溶媒及びバインダーの少なくとも一方を含む。流動性組成物が溶媒を含むことで固体粒子の飛散などが抑制でき、流動性組成物がバインダーを含むことで三次元造形物の構成材料を焼結や溶融する前に形が崩れるということを抑制できる。このため、三次元造形物を製造する際の作業性を向上することができる。
【0012】
本発明の第4の態様の流動性組成物セットは、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記支持部形成粒子は、セラミックス粒子を含むことを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、支持部形成粒子はセラミックス粒子を含む。セラミックスは焼結温度や融点が高いので、簡単に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できる。
【0014】
本発明の第5の態様の流動性組成物セットは、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記構成材料粒子は、金属粒子を含むことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、構成材料粒子は金属粒子を含む。このため、頑丈な三次元造形物を製造することができる。
なお、「金属粒子」とは、純金属の他、合金や金属化合物も含み、半金属やその化合物も含む意味である。
【0016】
本発明の第6の態様の流動性組成物セットは、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記支持部形成粒子は、セラミックス粒子を含み、前記構成材料粒子は、金属粒子を含むことを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、支持部形成粒子はセラミックス粒子を含み、構成材料粒子は金属粒子を含む。このため、簡単に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できるとともに、頑丈な三次元造形物を製造することができる。
【0018】
本発明の第7の態様の流動性組成物セットは、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記支持部形成粒子は、金属粒子及びセラミックス粒子の少なくとも一方を含み、前記構成材料粒子は、樹脂粒子を含むことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、支持部形成粒子は金属粒子及びセラミックス粒子の少なくとも一方を含み、構成材料粒子は樹脂粒子を含む。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制しつつ、樹脂製の三次元造形物を製造することができる。
【0020】
本発明の第8の態様の流動性組成物セットは、前記第4、第6乃至第7のいずれか1つの態様において、前記セラミックス粒子は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム及び酸化ナトリウムの少なくともいずれか1つの成分を含む粒子であることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、効果的に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できる。
【0022】
本発明の第9の態様の流動性組成物セットは、前記第5から第7のいずれか1つの態様において、前記金属粒子は、アルミ、チタン、鉄、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、マルエージング鋼、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム及び酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム及びホウ酸マグネシウムの少なくともいずれか1つの成分を含む粒子であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、特に頑丈な三次元造形物を製造することができる。
【0024】
本発明の第10の態様の流動性組成物は、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物と共に使用され、前記三次の構成材料粒子を含む流動性組成物であって、前記支持部形成粒子の焼結温度は、前記構成材料粒子の焼結温度よりも高いことを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、支持部形成粒子の焼結温度は、構成材料粒子の焼結温度よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を焼結させつつ支持部の焼結を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0026】
本発明の第11の態様の流動性組成物は、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物と共に使用され、前記三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物であって、前記支持部形成粒子の焼結温度は、前記構成材料粒子の焼結温度よりも高いことを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、支持部形成粒子の焼結温度は、構成材料粒子の焼結温度よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を焼結させつつ支持部の焼結を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0028】
本発明の第12の態様の流動性組成物は、前記第10又は第11の態様において、前記支持部形成粒子の焼結温度は1350℃以上1600℃以下であり、前記構成材料粒子の焼結温度は1100℃以上1400℃以下であることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、効果的に三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。
【0030】
本発明の第13の態様の流動性組成物は、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物と共に使用され、前記三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物であって、前記支持部形成粒子の融点は、前記構成材料粒子の融点よりも高いことを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、支持部形成粒子の融点は、構成材料粒子の融点よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を溶融させつつ支持部の溶融を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も溶融させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0032】
本発明の第14の態様の流動性組成物は、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物と共に使用され、前記三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物であって、前記支持部形成粒子の融点は、前記構成材料粒子の融点よりも高いことを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、支持部形成粒子の融点は、構成材料粒子の融点よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を溶融させつつ支持部の溶融を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も溶融させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0034】
本発明の第15の態様の流動性組成物は、前記第13又は第14の態様において、前記支持部形成粒子の融点は1700℃以上2730℃以下、焼結温度は1300℃以上1600℃以下であり、前記構成材料粒子の融点は1500℃以上1600℃以下であることを特徴とする。
【0035】
本態様によれば、効果的に三次元造形物の対応領域以外の部分を溶融または過度に焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。
【0036】
本発明の第16の態様の流動性組成物は、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を加熱して固める三次元造形物の製造装置で使用される流動性組成物であって、三次元造形物の形成に伴って該三次元造形物を固める際の焼結温度及び融点の少なくとも一方が表示されていることを特徴とする。
【0037】
本態様によれば、三次元造形物を固める際の加熱温度を判断するための焼結温度及び融点の少なくとも一方が表示されている。このため、例えば、該流動性組成物が構成材料粒子を含む流動性組成物及び支持部形成粒子を含む流動性組成物の両方を使用する三次元造形物の製造装置で使用された場合において、該流動性組成物を、構成材料粒子を含む流動性組成物として使用する場合であっても、支持部形成粒子を含む流動性組成物として使用する場合であっても、効果的に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できる。
なお、「三次元造形物を固める際の焼結温度及び融点の少なくとも一方が表示されている」とは、流動性組成物の収容部などに、直接的に焼結温度や融点が表示されている場合のほか、推奨される加熱温度の範囲が表示されていることにより間接的に焼結温度や融点が表示されている場合も含む意味である。さらには、使用可能な三次元造形物の製造装置として、加熱温度範囲が限定された三次元造形物の製造装置の機種名などが表示されていることで、間接的に焼結温度や融点が表示されている場合も含む意味である。また、流動性組成物の容器や包装体に直接的に表示されている場合のほか、これらと関連付けられた別のもの(例えば説明書や、Material Safety Data Sheet、略称MSDSなど)に表示されている場合も含む意味である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】(a)は本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置の構成を示す概略構成図、(b)は(a)に示すC部の拡大図。
【
図2】(a)は本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置の構成を示す概略構成図、(b)は(a)に示すC’部の拡大図。
【
図3】本発明の一の実施形態に係るヘッドベースの
図1(b)に示すD方向からの外観図。
【
図5】本発明の一の実施形態に係るヘッドユニットの配置と、着弾部の形成形態と、の関係を概念的に説明する平面図。
【
図6】本発明の一の実施形態に係るヘッドユニットの配置と、着弾部の形成形態と、の関係を概念的に説明する平面図。
【
図7】本発明の一の実施形態に係るヘッドユニットの配置と、着弾部の形成形態と、の関係を概念的に説明する平面図。
【
図8】ヘッドベースに配置されるヘッドユニットの、その他の配置の例を示す模式図。
【
図9】本発明の一実施例に係る三次元造形物の製造過程を表す概略図。
【
図10】本発明の一実施例に係る三次元造形物の製造方法のフローチャート。
【
図11】本発明の一実施例に係る三次元造形物の製造過程を表す概略図。
【
図12】本発明の一実施例に係る三次元造形物の製造方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
図1及び
図2は本発明の一の実施形態に係る三次元造形物の製造装置の構成を示す概略構成図である。
ここで、本実施形態の三次元造形物の製造装置は、2種類の材料供給部(ヘッドベース)を備えているが、
図1及び
図2は、各々、一方の材料供給部のみを表した図であり、他方の材料供給部は省略して表している。また、
図1の材料供給部は、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物(構成材料)を供給する材料供給部である。そして、
図2の材料供給部は、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物(支持部形成用材料)を供給する材料供給部である。なお、本実施例の構成材料粒子を含む流動性組成物及び支持部形成粒子を含む流動性組成物は、何れも溶媒とバインダーとを含むものであるが、これらを含まないものを使用してもよい。
なお、本明細書における「三次元造形」とは、いわゆる立体造形物を形成することを示すものであって、例えば、平板状、いわゆる二次元形状の形状であっても厚みを有する形状を形成することも含まれる。また、「支持する」とは、下側から支持する場合の他、横側から支持する場合や、場合によっては上側から支持する場合も含む意味である。
【0040】
図1及び
図2に示す三次元造形物の製造装置2000(以下、形成装置2000という)は、基台110と、基台110に備える駆動手段としての駆動装置111によって、図示するX,Y,Z方向の移動、あるいはZ軸を中心とする回転方向に駆動可能に備えられたステージ120を備えている。
そして、
図1で表されるように、一方の端部が基台110に固定され、他方の端部に構成材料を吐出する構成材料吐出部を備えるヘッドユニット1400を複数保持するヘッドベース1100が保持固定される、ヘッドベース支持部130を備えている。
また、
図2で表されるように、一方の端部が基台110に固定され、他方の端部に支持部形成用材料を吐出する支持部形成用材料吐出部を備えるヘッドユニット1400’を複数保持するヘッドベース1100’が保持固定される、ヘッドベース支持部130’を備えている。
ここで、ヘッドベース1100及びヘッドベース1100’は、XY平面において並列に設けられている。
なお、構成材料吐出部1230及び支持部形成用材料吐出部1230’は、吐出される材料(構成材料及び支持部形成用材料)が異なること以外は同様の構成のものである。ただし、このような構成に限定されない。
【0041】
ステージ120上には、三次元造形物500が形成される過程での層501、502及び503が形成される。また、ステージ120に対向する領域には、後述する制御ユニット400に接続された加熱部コントローラー1710によって熱エネルギーの照射のオン・オフが制御され、ステージ120全体の領域を加熱可能な加熱部1700が設けられている。
三次元造形物500の形成には、加熱部1700による熱エネルギーの照射がなされるため、ステージ120の熱からの保護のため、耐熱性を有する試料プレート121を用いて、試料プレート121の上に三次元造形物500を形成してもよい。試料プレート121としては、例えばセラミック板を用いることで、高い耐熱性を得ることができ、更に溶融(あるいは焼結されてもよい)される三次元造形物の構成材料との反応性も低く、三次元造形物500の変質を防止することができる。なお、
図1(a)及び
図2(a)では、説明の便宜上、層501、502及び503の3層を例示したが、所望の三次元造形物500の形状まで(
図1(a)及び
図2(a)中の層50nまで)積層される。
ここで、層501、502、503、・・・50nは、各々、支持部形成用材料吐出部1230’から吐出される支持部形成用材料で形成される支持層300と、構成材料吐出部1230から吐出される構成材料で形成される構成層310(三次元造形物500の構成領域に対応する層)と、で構成される。また、構成材料吐出部1230から吐出された構成材料と、支持部形成用材料吐出部1230’から吐出された支持部形成用材料とで、1層分の層を形成した後に、該層全体に加熱部1700から熱エネルギーを照射して、層毎に溶融あるいは焼結させることができる。さらには、構成層310と支持層300とを複数層形成することで三次元造形物の形状を完成させて、これを形成装置2000とは別体で設けられた恒温槽(加熱部)において溶融又は焼結させることも可能である。
【0042】
また、
図1(b)は、
図1(a)に示すヘッドベース1100を示すC部拡大概念図である。
図1(b)に示すように、ヘッドベース1100は、複数のヘッドユニット1400が保持されている。詳細は後述するが、1つのヘッドユニット1400は、構成材料供給装置1200に備える構成材料吐出部1230が保持治具1400aに保持されることで構成される。構成材料吐出部1230は、吐出ノズル1230aと、材料供給コントローラー1500によって吐出ノズル1230aから構成材料を吐出させる吐出駆動部1230bと、を備えている。
【0043】
また、
図2(b)は、
図2(a)に示すヘッドベース1100’を示すC’部拡大概念図である。
図2(b)に示すように、ヘッドベース1100’は、複数のヘッドユニット1400’が保持されている。ヘッドユニット1400’は、支持部形成用材料供給装置1200’に備える支持部形成用材料吐出部1230’が保持治具1400a’に保持されることで構成される。支持部形成用材料吐出部1230’は、吐出ノズル1230a’と、材料供給コントローラー1500によって吐出ノズル1230a’から支持部形成用材料を吐出させる吐出駆動部1230b’と、を備えている。
【0044】
加熱部1700は、本実施形態では熱エネルギーとして電磁波を照射するエネルギー照射部により説明する。照射される熱エネルギーに電磁波を用いることにより、ターゲットとなる供給材料に効率よくエネルギーを照射することができ、品質の良い三次元造形物を形成することができる。また、例えば吐出される材料の種類に合わせて、照射エネルギー量(パワー、走査速度)を制御することが容易に行うことができ、所望の品質の三次元造形物を得ることができる。ただし、このような構成に限定されず、他の方法で加熱する構成としてもよい。また、電磁波により溶融及び焼結されることに限るものではないことは言うまでもない。すなわち、吐出される材料は、場合によってはこれが焼結材料であったり、溶融材料であったり、その他の方法によって固化する固化材料であったりする。
【0045】
図1で表されるように、構成材料吐出部1230は、ヘッドベース1100に保持されるヘッドユニット1400それぞれに対応させた構成材料を収容した構成材料供給ユニット1210と供給チューブ1220により接続されている。そして、所定の構成材料が構成材料供給ユニット1210から構成材料吐出部1230に供給される。構成材料供給ユニット1210には、本実施形態に係る形成装置2000によって造形される三次元造形物500の原料を含む材料(金属粒子(構成材料粒子)を含むペースト状の構成材料)が供給材料として構成材料収容部1210aに収容され、個々の構成材料収容部1210aは、供給チューブ1220によって、個々の構成材料吐出部1230に接続されている。このように、個々の構成材料収容部1210aを備えることにより、ヘッドベース1100から、複数の異なる種類の材料を供給することができる。
【0046】
図2で表されるように、支持部形成用材料吐出部1230’は、ヘッドベース1100’に保持されるヘッドユニット1400’それぞれに対応させた支持部形成用材料を収容した支持部形成用材料供給ユニット1210’と供給チューブ1220’により接続されている。そして、所定の支持部形成用材料が支持部形成用材料供給ユニット1210’から支持部形成用材料吐出部1230’に供給される。支持部形成用材料供給ユニット1210’は、三次元造形物500を造形する際の支持部を構成する支持部形成用材料(セラミックス粒子(支持部形成粒子)を含むペースト状の支持部形成用材料)が供給材料として支持部形成用材料収容部1210a’に収容され、個々の支持部形成用材料収容部1210a’は、供給チューブ1220’によって、個々の支持部形成用材料吐出部1230’に接続されている。このように、個々の支持部形成用材料収容部1210a’を備えることにより、ヘッドベース1100’から、複数の異なる種類の支持部形成用材料を供給することができる。
【0047】
構成材料としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単体粉末、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金(マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金)などの混合粉末を、溶剤と、バインダーとを含むスラリー状(あるいはペースト状)の混合材料などにして用いることが可能である。
また、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチックを用いることが可能である。その他、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチックも用いることが可能である。
このように、構成材料に特に限定はなく、上記金属以外の金属やセラミックスや樹脂等も使用可能である。
溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)或いはその他の熱可塑性樹脂である。
【0048】
本実施形態においては、支持部形成用材料は、セラミックスを含有している。該支持部形成用材料としては、例えば金属酸化物、金属アルコキシド、金属などの混合粉末を、溶剤と、バインダーとを含むスラリー状(あるいはペースト状)の混合材料などにして用いることが可能である。
ただし、支持部形成用材料に特に限定はなく、上記の構成材料の例のような、セラミックス以外の金属や樹脂等も使用可能である。
【0049】
形成装置2000には、図示しない、例えばパーソナルコンピューター等のデータ出力装置から出力される三次元造形物の造形用データに基づいて、上述したステージ120、構成材料供給装置1200に備える構成材料吐出部1230、加熱部1700、並びに、支持部形成用材料供給装置1200’に備える支持部形成用材料吐出部1230’を制御する制御手段としての制御ユニット400を備えている。そして、制御ユニット400には、図示しないが、ステージ120及び構成材料吐出部1230、並びに、ステージ120及び支持部形成用材料供給装置1200’が連携して駆動及び動作するよう制御する制御部を備えている。
【0050】
基台110に移動可能に備えられているステージ120は、制御ユニット400からの制御信号に基づき、ステージコントローラー410においてステージ120の移動開始と停止、移動方向、移動量、移動速度などを制御する信号が生成され、基台110に備える駆動装置111に送られ、図示するX,Y,Z方向にステージ120が移動する。ヘッドユニット1400に備える構成材料吐出部1230では、制御ユニット400からの制御信号に基づき、材料供給コントローラー1500において構成材料吐出部1230に備える吐出駆動部1230bにおける吐出ノズル1230aからの材料吐出量などを制御する信号が生成され、生成された信号により吐出ノズル1230aから所定量の構成材料が吐出される。
同様に、ヘッドユニット1400’に備える支持部形成用材料吐出部1230’では、制御ユニット400からの制御信号に基づき、材料供給コントローラー1500において支持部形成用材料吐出部1230’に備える吐出駆動部1230b’における吐出ノズル1230a’からの材料吐出量などを制御する信号が生成され、生成された信号により吐出ノズル1230a’から所定量の支持部形成用材料が吐出される。
【0051】
また、加熱部1700は、制御ユニット400から制御信号が加熱部コントローラー1710に送られ、加熱部コントローラー1710から、加熱部1700に電磁波を照射させる出力信号が送られる。
【0052】
次に、ヘッドユニット1400についてさらに詳細に説明する。なお、ヘッドユニット1400’は、構成材料吐出部1230の代わりに支持部形成用材料吐出部1230’が同様の配置で構成されており、ヘッドユニット1400と同様の構成である。このため、ヘッドユニット1400’についての詳細な構成の説明は省略する。
図3及び
図4は、ヘッドベース1100に複数保持されるヘッドユニット1400及びヘッドユニット1400に保持される構成材料吐出部1230の保持形態の一例を示し、
図3は
図1(b)に示す矢印D方向からのヘッドベース1100の外観図、
図4は
図3に示すE-E’部の概略断面図である。
【0053】
図3に示すように、ヘッドベース1100に複数のヘッドユニット1400が、図示しない固定手段によって保持されている。本実施形態に係る形成装置2000のヘッドベース1100では、図下方より第1列目のヘッドユニット1401及び1402、第2列目のヘッドユニット1403及び1404、第3列目のヘッドユニット1405及び1406、そして第4列目のヘッドユニット1407及び1408の、8ユニットのヘッドユニット1400を備えている。そして、図示しないが、それぞれのヘッドユニット1401~1408に備える構成材料吐出部1230は、吐出駆動部1230bを介して構成材料供給ユニット1210に供給チューブ1220で繋がれ、保持治具1400aに保持される構成となっている。
【0054】
図4に示すように、構成材料吐出部1230は吐出ノズル1230aから、ステージ120上に載置された試料プレート121上に向けて三次元造形物の構成材料である材料Mが吐出される。ヘッドユニット1401では、材料Mが液滴状で吐出される吐出形態を例示し、ヘッドユニット1402では、材料Mが連続体状で供給される吐出形態を例示している。本実施形態の形成装置2000における材料Mの吐出形態は液滴状である。しかしながら、吐出ノズル1230aが連続体状で構成材料を供給可能なものも使用可能である。
【0055】
吐出ノズル1230aから液滴状に吐出された材料Mは、略重力方向に飛翔し、試料プレート121上に着弾する。そして、着弾した材料Mは着弾部50を形成する。この着弾部50の集合体が、試料プレート121上に形成される三次元造形物500の構成層310(
図1参照)として形成される。
【0056】
図5、
図6及び
図7は、ヘッドユニット1400の配置と、着弾部50の形成形態と、の関係を概念的に説明する平面図(
図1に示すD方向矢視)である。先ず、
図5(a)に示すように試料プレート121上の造形起点q1において、ヘッドユニット1401及び1402の吐出ノズル1230aから材料Mが吐出され、試料プレート121に着弾した材料Mにより、着弾部50a及び50bが形成される。なお、説明の便宜上、平面図であるが着弾部50にはハッチングを施し、試料プレート121の上面に形成される1層目の層501の構成層310を例示して説明する。
【0057】
先ず、
図5(a)に示すように試料プレート121上の層501の構成層310の造形起点q1において、図示下方の第1列目のヘッドユニット1401及び1402に備える構成材料吐出部1230から、材料Mが吐出される。吐出された材料Mにより、着弾部50a及び50bが形成される。
【0058】
ヘッドユニット1401及び1402の構成材料吐出部1230からの材料Mの吐出を継続しながら、試料プレート121を、ヘッドベース1100に対して相対的にY(+)方向の、
図5(b)に示す造形起点q1が2列目のヘッドユニット1403及び1404に対応する位置まで、移動させる。これによって、着弾部50a及び50bは、造形起点q1から試料プレート121の相対移動後の位置q2まで幅tを保持して延設される。さらに、造形起点q1に対応した2列目のヘッドユニット1403及び1404から材料Mが吐出され、着弾部50c及び50dが形成され始める。
【0059】
図5(b)に示すように着弾部50c及び50dが形成され始め、ヘッドユニット1403及び1404の構成材料吐出部1230からの材料Mの吐出を継続しながら、試料プレート121を、ヘッドベース1100に対して相対的にY(+)方向の、
図5(c)に示す造形起点q1が3列目のヘッドユニット1405及び1406に対応する位置まで、移動させる。これによって、着弾部50c及び50dは、造形起点q1から試料プレート121の移動後の位置q2まで幅tを保持して延設される。同時に、着弾部50a及び50bは、造形起点q1から試料プレート121の相対移動後の位置q3まで幅tを保持して延設される。造形起点q1に対応した3列目のヘッドユニット1405及び1406から材料Mが吐出され、着弾部50e及び50fが形成され始める。
【0060】
図5(c)に示すように着弾部50e及び50fが形成され始め、ヘッドユニット1405及び1406の構成材料吐出部1230からの材料Mの吐出を継続しながら、試料プレート121を、ヘッドベース1100に対して相対的にY(+)方向の、
図6(d)に示す造形起点q1が4列目のヘッドユニット1407及び1408に対応する位置まで、移動させる。これによって、着弾部50e及び50fは、造形起点q1から試料プレート121の移動後の位置q2まで幅tを保持して延設される。同時に、着弾部50a及び50bは造形起点q1から試料プレート121の相対移動後の位置q4まで、着弾部50c及び50dは造形起点q1から試料プレート121の相対移動後の位置q3まで、幅tを保持して延設される。造形起点q1に対応した4列目のヘッドユニット1407及び1408から材料Mが吐出され、着弾部50g及び50hが形成され始める。
【0061】
位置q5を造形終了位置とした場合(以下、位置q5を造形終点q5という)、
図6(e)に示すように、試料プレート121を相対的にヘッドユニット1401及び1402が造形終点q5に到達するまで移動させることで、着弾部50g及び50hは延設される。そして、造形終点q5に到達したヘッドユニット1401及び1402では、ヘッドユニット1401及び1402の構成材料吐出部1230からの材料Mの吐出が停止される。さらに、相対的に試料プレート121をY(+)方向に移動させながら、ヘッドユニット1403、1404、1405、1406、1407及び1408が造形終点q5に到達するまで構成材料吐出部1230から材料Mが吐出される。すると、
図7に示すように、着弾部50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g及び50hは、幅tを保持して造形起点q1から造形終点q5まで形成される。このようにして、造形起点q1から造形終点q5まで試料プレート121を移動させながら、ヘッドユニット1401、1402、1403、1404、1405、1406、1407及び1408から順次、材料Mの吐出供給をさせることで、幅T、長さJの、本実施形態の例示では略矩形の着弾部50を形成することができる。そして、着弾部50の集合体として第1層目の層501の構成層310を成形、構成することができる。
【0062】
上述したように、本実施形態に係る形成装置2000は、試料プレート121を備えるステージ120の移動に同期させ、ヘッドユニット1401、1402、1403、1404、1405、1406、1407及び1408に備える構成材料吐出部1230からの材料Mの吐出供給を選択的に行うことで、試料プレート121上に所望の形状の構成層310を形成することができる。また、上述したように、ステージ120の移動は、本例ではY軸方向に沿った一方向へ移動させるだけで、
図7に示す幅T×長さJの領域内で所望の形状の着弾部50、そして着弾部50の集合体としての構成層310を得ることができる。
【0063】
また、構成材料吐出部1230から吐出される材料Mを、ヘッドユニット1401、1402、1403、1404、1405、1406、1407及び1408のいずれか1ユニット、あるいは2ユニット以上からその他ヘッドユニットと異なる構成材料を吐出供給することもできる。従って、本実施形態に係る形成装置2000を用いることによって、異種材料から形成される三次元造形物を得ることができる。
【0064】
なお、第1層目の層501において、上述したように構成層310を形成する前或いは後に、支持部形成用材料吐出部1230’から支持部形成用材料を吐出させて、上記と同様の方法で、支持層300を形成することができる。そして、層501に積層させて層502、503、・・・50nを形成する際にも、同様に、構成層310及び支持層300を形成することができる。
【0065】
上述の本実施形態に係る形成装置2000が備えるヘッドユニット1400及び1400’の数及び配列は、上述した数及び配列に限定されない。
図8に、その例として、ヘッドベース1100に配置されるヘッドユニット1400の、その他の配置の例を模式図的に示す。
【0066】
図8(a)は、ヘッドベース1100にヘッドユニット1400をX軸方向に複数、並列させた形態を示す。
図8(b)は、ヘッドベース1100にヘッドユニット1400を格子状に配列させた形態を示す。なお、いずれも配列されるヘッドユニットの数は、図示の例に限定されない。
【0067】
次に、上述の本実施形態に係る形成装置2000を用いて行う三次元造形物の製造方法の一実施例について説明する。
図9は、形成装置2000を用いて行う三次元造形物の製造過程の一例を表す概略図である。なお、本例は、形成装置2000が備える加熱部1700を用いて、構成材料吐出部1230及び支持部形成用材料吐出部1230’から構成材料及び支持部形成用材料を吐出させて1層分の層を形成する毎に、該層を加熱して三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法の例である。また、本実施例の三次元造形物の製造方法では、溶融された状態の三次元造形物を製造するが、加熱温度を低下させ、焼結された状態の三次元造形物を製造してもよいことは言うまでもない。
【0068】
最初に、
図9(a)で表されるように、構成材料吐出部1230から構成材料を吐出させ、支持部形成用材料吐出部1230’から支持部形成用材料を吐出させて、第1層目の層501において、構成層310及び支持層300を形成する。ここで、支持層300は、該層における三次元造形物の形成領域(構成層310に対応する領域)以外の領域に形成される。
次に、
図9(b)で表されるように、第1層目の層501を加熱部1700により加熱し、該層の構成層310を溶融させるとともに支持層300を焼結する。なお、本実施例における加熱部1700の加熱温度は、構成材料に含有される金属粒子(構成材料粒子)が溶融する温度であり、かつ、支持部形成用材料に含有されるセラミックス粒子(支持部形成粒子)が焼結する温度に設定してある。
【0069】
以下、
図9(a)で表される動作と
図9(b)で表される動作とを繰り返し、三次元造形物を完成させる。
具体的には、
図9(c)で表されるように、構成材料吐出部1230から構成材料を吐出させ、支持部形成用材料吐出部1230’から支持部形成用材料を吐出させて、第2層目の層502において、構成層310及び支持層300を形成する。そして、
図9(d)で表されるように、第2層目の層501を加熱部1700により加熱する。
さらに、
図9(e)で表されるように第3層目の層502において構成層310及び支持層300を形成し、
図9(f)で表されるように第3層目の層501を加熱部1700により加熱し、
図9(g)で表されるように第4層目の層502において構成層310及び支持層300を形成し、
図9(h)で表されるように第4層目の層501を加熱部1700により加熱して三次元造形物(溶融された状態の構成層310)を完成させる。
【0070】
次に、
図9で表される三次元造形物の製造方法の一実施例についてフローチャートを用いて説明する。
ここで、
図10は、本実施例に係る三次元造形物の製造方法のフローチャートである。
【0071】
図10で表されるように、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、最初にステップS110で、三次元造形物のデータを取得する。詳細には、例えばパーソナルコンピューターにおいて実行されているアプリケーションプログラム等から、三次元造形物の形状を表すデータを取得する。
【0072】
次に、ステップS120で、層毎のデータを作成する。詳細には、三次元造形物の形状を表すデータにおいて、Z方向の造形解像度に従ってスライスし、断面毎にビットマップデータ(断面データ)を生成する。
この際、生成されるビットマップデータは、三次元造形物の形成領域と三次元造形物の非形成領域とで区別されたデータになっている。
【0073】
次に、ステップS130で、三次元造形物の形成領域を形成するデータに基づいて構成材料吐出部1230から構成材料を吐出(供給)させ、構成層310を形成する。
【0074】
次に、ステップS140で、三次元造形物の非形成領域を形成するデータに基づいて支持部形成用材料吐出部1230’から支持部形成用材料を吐出(供給)させ、ステップS130で構成される構成層310と同じ層に対応する支持層300を形成する。
なお、ステップS130とステップS140の順番は、逆でもよく、また、同時でもよい。
【0075】
次に、ステップS150で、ステップS130で構成される構成層310及びステップS140で構成される支持層300に対応する層に対して、加熱部1700から電磁波を照射(熱エネルギーを付与)させ、該層における構成層310を溶融するとともに支持層300を焼結する。
なお、本ステップでは、構成層310を溶融させ支持層300を焼結させたが、構成層310を溶融させ支持層300を溶融も焼結もさせなくてもよいし、構成層310を焼結させ支持層300を溶融も焼結もさせなくてもよい。
【0076】
そして、ステップS160により、ステップS120において生成された各層に対応するビットマップデータに基づく三次元造形物の造形が終了するまで、ステップS130からステップS160までが繰り返される。
【0077】
そして、三次元造形物の造形が終了すると、ステップS170で、三次元造形物の現像(三次元造形物の形成領域である構成層310に対応する部分から三次元造形物の非形成領域である支持層300に対応する部分を取り除くこと)を行い、本実施例の三次元造形物の製造方法を終了する。
【0078】
次に、上述の本実施形態に係る形成装置2000を用いて行う三次元造形物の製造方法の別の一実施例について説明する。
図11は、形成装置2000を用いて行う三次元造形物の製造過程の一例を表す概略図である。なお、本例は、形成装置2000が備える加熱部1700を用いず、形成装置2000とは別体で設けられた不図示の恒温槽(加熱部)において、構成材料吐出部1230及び支持部形成用材料吐出部1230’から構成材料及び支持部形成用材料を吐出させて三次元造形物の形状の形成が終了してから、該三次元造形物の形成物を加熱して三次元造形物を製造(溶融)する三次元造形物の製造方法の例である。また、本実施例の三次元造形物の製造方法では、溶融された状態の三次元造形物を製造するが、加熱温度を低下させ、焼結された状態の三次元造形物を製造してもよいことは言うまでもない。
【0079】
最初に、
図11(a)で表されるように、構成材料吐出部1230から構成材料を吐出させ、支持部形成用材料吐出部1230’から支持部形成用材料を吐出させて、第1層目の層501において、構成層310及び支持層300を形成する。ここで、支持層300は、該層における三次元造形物の形成領域(構成層310に対応する領域)以外の領域に形成される。
次に、
図11(b)で表されるように、構成材料吐出部1230から構成材料を吐出させ、支持部形成用材料吐出部1230’から支持部形成用材料を吐出させて、第2層目の層502において、構成層310及び支持層300を形成する。
そして、
図11(c)及び
図11(d)で表されるように、
図11(a)及び
図11(b)で表される動作を繰り返し、三次元造形物の形状を完成させる。
そして、
図11(e)で表されるように、該三次元造形物の形成物を不図示の恒温槽において加熱し、該三次元造形物の形成物の構成層310を溶融させるとともに支持層300を焼結させて、三次元造形物(溶融された状態の構成層310)を完成させる。なお、本実施例における該恒温槽における加熱温度は、構成材料に含有される金属粒子(構成材料粒子)が溶融する温度であり、かつ、支持部形成用材料に含有されるセラミックス粒子(支持部形成粒子)が焼結する温度に設定してある。
【0080】
次に、
図11で表される三次元造形物の製造方法の一実施例についてフローチャートを用いて説明する。
ここで、
図12は、本実施例に係る三次元造形物の製造方法のフローチャートである。
なお、
図12のステップS110からステップS140までとステップS170は、
図9のステップS110からステップS140までとステップS170と同様であるので説明は省略する。
【0081】
図12で表されるように、本実施例の三次元造形物の製造方法においては、ステップS140の終了後、ステップS160に進む。
そして、ステップS160により、ステップS120において生成された各層に対応するビットマップデータに基づく三次元造形物の形成物の造形が終了するまで、ステップS130からステップS160までが繰り返され、三次元造形物の形成物の造形が終了すると、ステップS165に進む。
ステップS165では、ステップS130からステップS160までが繰り返されて形成された三次元造形物の形成体を、不図示の恒温槽において、構成層310を溶融するとともに支持層300を焼結する。なお、本ステップでは、構成層310を溶融させ支持層300を焼結させたが、構成層310を溶融させ支持層300を溶融も焼結もさせなくてもよいし、構成層310を焼結させ支持層300を溶融も焼結もさせなくてもよい。そして、本ステップの終了後、ステップS170に進む。
【0082】
ここで、上記形成装置2000で使用される、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物と、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部(支持層300)を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物と、を含む流動性組成物セットは、支持部形成粒子の焼結温度が構成材料粒子の焼結温度よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を焼結させつつ支持部の焼結を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0083】
また、本実施例の流動性組成物セットは、支持部形成粒子の融点が構成材料粒子の融点よりも高い。このため、三次元造形物の構成材料を溶融させつつ支持部の溶融を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も溶融させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0084】
ここで、構成材料粒子を含む流動性組成物及び前記支持部形成粒子を含む流動性組成物の少なくとも一方は、溶媒及びバインダーの少なくとも一方を含むことが好ましい。流動性組成物が溶媒を含むことで固体粒子の飛散などが抑制でき、流動性組成物がバインダーを含むことで三次元造形物の構成材料を焼結や溶融する前に形が崩れるということを抑制できるためである。このため、このような流動性組成物セットとすることで、三次元造形物を製造する際の作業性を向上することができる。
【0085】
また、本実施例の支持部形成粒子はセラミックス粒子を含む。セラミックスは焼結温度や融点が高いので、簡単に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できる。
【0086】
また、本実施例の構成材料粒子は金属粒子を含む。このため、頑丈な三次元造形物を製造することができる。
なお、「金属粒子」とは、純金属の他、合金や金属化合物も含み、半金属やその化合物も含む意味である。
【0087】
すなわち、本実施例の支持部形成粒子は、セラミックス粒子を含み、本実施例の構成材料粒子は金属粒子を含む。このため、簡単に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できるとともに、頑丈な三次元造形物を製造することができる。
【0088】
一方、支持部形成粒子が金属粒子及びセラミックス粒子の少なくとも一方を含み、構成材料粒子が樹脂粒子を含む構成としてもよい。このような構成とすることで、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制しつつ、樹脂製の三次元造形物を製造することができる。
【0089】
また、支持部形成粒子としてのセラミックス粒子は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム及び酸化ナトリウムの少なくともいずれか1つの成分を含む粒子であることが好ましい。効果的に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できるためである。
【0090】
また、構成材料粒子としての金属粒子は、アルミ、チタン、鉄、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、マルエージング鋼、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム及び酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、窒化ケイ素、窒化チタン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム及びホウ酸マグネシウムの少なくともいずれか1つの成分を含む粒子であることが好ましい。特に頑丈な三次元造形物を製造することができるためである。
【0091】
また、本実施例の三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物は、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物と共に使用され、支持部形成粒子の焼結温度が構成材料粒子の焼結温度よりも高いと表現することができる。構成材料粒子を含む流動性組成物をこのような流動性組成物とすることで、三次元造形物の構成材料を焼結させつつ支持部の焼結を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0092】
また、本実施例の三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物は、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物と共に使用され、支持部形成粒子の焼結温度が構成材料粒子の焼結温度よりも高いと表現することができる。支持部形成粒子を含む流動性組成物をこのような流動性組成物とすることで、三次元造形物の構成材料を焼結させつつ支持部の焼結を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0093】
ここで、支持部形成粒子の焼結温度が1350℃以上1600℃以下であり、構成材料粒子の焼結温度が1100℃以上1400℃以下であると、効果的に三次元造形物の対応領域以外の部分も焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。
【0094】
また、本実施例の三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物は、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物と共に使用され、支持部形成粒子の融点が構成材料粒子の融点よりも高いと表現することができる。構成材料粒子を含む流動性組成物をこのような流動性組成物とすることで、三次元造形物の構成材料を溶融させつつ支持部の溶融を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も溶融させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0095】
また、本実施例の三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を支持する支持部を形成する支持部形成粒子を含む流動性組成物は、三次元造形物の構成材料粒子を含む流動性組成物と共に使用され、支持部形成粒子の融点が構成材料粒子の融点よりも高いと表現することができる。支持部形成粒子を含む流動性組成物をこのような流動性組成物とすることで、三次元造形物の構成材料を溶融させつつ支持部の溶融を抑制することができる。このため、三次元造形物の対応領域以外の部分も溶融させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。したがって、三次元造形物を形成した後の後処理工程を減らすことができる。
【0096】
ここで、支持部形成粒子の融点は1700℃以上2730℃以下、焼結温度は1300℃以上1600℃以下であり、構成材料粒子の融点は1500℃以上1600℃以下であると、効果的に三次元造形物の対応領域以外の部分を溶融または過度に焼結させてしまうことで三次元造形物を取り外す際の分離作業や取り外した後の成形作業などの負荷が大きくなるということを抑制できる。
【0097】
上記のことから、三次元造形物を形成する際に該三次元造形物を加熱して固める三次元造形物の製造装置で使用される流動性組成物は、三次元造形物の形成に伴って該三次元造形物を固める際の焼結温度及び融点の少なくとも一方が表示されていることが好ましい。
流動性組成物に、三次元造形物を固める際の加熱温度を判断するための焼結温度及び融点の少なくとも一方が表示されていれば、例えば、該流動性組成物が構成材料粒子を含む流動性組成物及び支持部形成粒子を含む流動性組成物の両方を使用する三次元造形物の製造装置で使用された場合において、該流動性組成物を、構成材料粒子を含む流動性組成物として使用する場合であっても、支持部形成粒子を含む流動性組成物として使用する場合であっても、効果的に、三次元造形物の対応領域以外の部分を焼結又は溶融させてしまうことを抑制できるためである。
なお、「三次元造形物を固める際の焼結温度及び融点の少なくとも一方が表示されている」とは、流動性組成物の収容部などに、直接的に焼結温度や融点が表示されている場合のほか、推奨される加熱温度の範囲が表示されていることにより間接的に焼結温度や融点が表示されている場合も含む意味である。さらには、使用可能な三次元造形物の製造装置として、加熱温度範囲が限定された三次元造形物の製造装置の機種名などが表示されていることで、間接的に焼結温度や融点が表示されている場合も含む意味である。また、流動性組成物の容器や包装体に直接的に表示されている場合のほか、これらと関連付けられた別のもの(例えば説明書など)に表示されている場合も含む意味である。
また、焼結温度及び融点の少なくとも一方の代わりに、或いは、焼結温度及び融点の少なくとも一方と共に、その用途(三次元造形物の構成材料として使用するものか支持部形成用材料として使用するものかなど)を表示することも好ましい。
【0098】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
50、50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g及び50h着弾部、
110 基台、111 駆動装置、120 ステージ(支持体)、
121 試料プレート、130、130’ ヘッドベース支持部、
300 支持層(支持部)、310 構成層、400 制御ユニット(制御部)、
410 ステージコントローラー、430 レーザーコントローラー、
500 三次元造形物、501、502及び503 層、
1100、1100’ ヘッドベース、
1200 構成材料供給装置、1200’ 支持部形成用材料供給装置、
1210 構成材料供給ユニット、1210’ 支持部形成用材料供給ユニット、
1210a 構成材料収容部、1210a’ 支持部形成用材料収容部、
1220、1220’ 供給チューブ、
1230 構成材料吐出部、1230’ 支持部形成用材料吐出部、
1230a、1230a’ 吐出ノズル、1230b、1230b’ 吐出駆動部、
1400、1400’ ヘッドユニット、
1401、1402、1403、1404、1405、1406、1407及び1408 ヘッドユニット、
1400a、1400a’ 保持治具、1500 材料供給コントローラー、
1600、1600’ ヘッドベース、1700 加熱部、
1710 加熱部コントローラー、2000 形成装置(三次元造形物の製造装置)、
L レーザー、M 材料(構成材料)