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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221101BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/165 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021122326
(22)【出願日】2021-07-27
(62)【分割の表示】P 2020028894の分割
【原出願日】2015-06-26
(65)【公開番号】P2021169222
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小橋 勝
(72)【発明者】
【氏名】野澤 泉
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103457(JP,A)
【文献】特開2011-194888(JP,A)
【文献】特開2011-068092(JP,A)
【文献】特開2013-078948(JP,A)
【文献】特開2005-067051(JP,A)
【文献】特開2007-245511(JP,A)
【文献】特開2012-213871(JP,A)
【文献】特開2014-144586(JP,A)
【文献】特開平04-279373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って搬送される媒体を支持可能な媒体支持部と、
前記媒体支持部に支持されている前記媒体に対してノズルから液体を噴射して印刷を行
う液体噴射ヘッドと、
前記印刷が行われた前記媒体を反転可能な反転経路と、を備え、
前記印刷が行われた前記媒体が加熱される位置を加熱位置とした場合、前記反転経路は
、一部が前記液体噴射ヘッドの鉛直上方を通過するように設けられるとともに、前記一部
が前記加熱位置よりも高い位置に設けられ、
前記媒体が搬送される搬送方向と交差する方向から見た場合、
前記液体噴射ヘッドは、前記搬送経路の一部および前記反転経路で囲まれた領域内に
配置されており、
前記加熱位置は、前記領域を構成する前記搬送経路の一部および前記反転経路から水
平方向に離れた位置に設定される
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ノズルが開口する閉空間を形成可能な空間形成部を備え、
前記空間形成部は、鉛直方向および水平方向に移動することによって、前記閉空間を形
成する空間形成位置と、該空間形成位置より下方の第1退避位置と、の間で移動可能であ
り、
前記加熱位置と前記第1退避位置との間の鉛直方向における距離は、前記加熱位置と前
記空間形成位置との間の鉛直方向における距離よりも大きく設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記空間形成部が前記閉空間を形成する際に、前記媒体支持部は、前記第1退避位置よ
りも低い位置であり、且つ、前記空間形成位置にある前記空間形成部と鉛直方向において
重なる位置である第2退避位置に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ノズルが形成されるノズル形成面を払拭可能な払拭部を備え、
前記印刷が行われる際に、前記払拭部は、前記第1退避位置にある前記空間形成部と鉛
直方向に重なる位置である第3退避位置に配置される
ことを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記空間形成部が前記閉空間を形成する際に、前記媒体支持部は、前記第3退避位置よ
りも低い位置である前記第2退避位置に配置される
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記媒体支持部および前記空間形成部をそれぞれ個別の移動装置によって移動させる
ことを特徴とする請求項~請求項のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷が行われる際に、前記媒体支持部は、前記加熱位置よりも低い位置である媒体
支持位置に前記媒体を支持するように配置される
ことを特徴とする請求項1~請求項のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記媒体支持部は、複数のローラー間に巻き掛けられて回転駆動されるベルトを有し、
前記ベルトで搬送される前記媒体に対して前記印刷が行われる
ことを特徴とする請求項1~請求項のうち何れか一項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を加熱して乾燥させる液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体噴射装置として、例えば特許文献1に記載される画像形成装置が提案されている。この画像形成装置は、所定の搬送経路に沿って搬送される媒体に対して画像を形成する液体噴射ヘッドと、同液体噴射ヘッドよりも搬送方向下流に配置される乾燥部とを備えている。液体噴射ヘッドにはノズル形成面に開口する複数のノズルが設けられており、このノズルから媒体に向けてインクなどの液体を噴射する。また、乾燥部は、媒体を加熱することで液体が付着した媒体を乾燥させる。そして、このように液体が付着した媒体を乾燥部によって強制的に乾燥させることにより、搬送経路に配置されているローラーなどの各種の部品への媒体を介した液体の付着を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-119283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の液体噴射装置にあっては、液体噴射ヘッドによる液体の噴射精度の低下を抑制するために各種のメンテナンスを実施するようにしている。こうしたメンテナンスに使用される部材であるメンテナンス部材は、液体噴射ヘッドの近傍の作業位置と、同液体噴射ヘッドよりも離れた退避位置との間を移動可能に構成されていることがある。なお、メンテナンス部材としては、液体噴射ヘッドのノズルが開口する閉空間を形成するキャップなどの空間形成部材、液体噴射ヘッドに付着している液体を吸収する吸収部材、液体噴射ヘッドにおいてノズルが開口する領域を払拭する払拭部材などを挙げることができる。
【0005】
そして、特許文献1には、上記の乾燥部の配置と、こうしたメンテナンス部材の退避位置との位置関係について何ら開示乃至示唆されていない。
本発明の目的は、メンテナンス部材の退避位置を、乾燥部の配置を考慮した適切な位置に設定することができる液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための液体噴射装置は、搬送経路に沿って搬送される媒体を支持する媒体支持部と、前記媒体支持部に支持されている媒体に対して液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、液体が付着した媒体を加熱により乾燥させる乾燥部と、前記ノズルが開口する閉空間を形成する空間形成部材と、を備え、前記空間形成部材は、前記閉空間を形成する際に配置される空間形成位置と、同空間形成位置よりも前記乾燥部から離れた退避位置との間で移動するように構成されている。
【0007】
上記構成によれば、媒体支持部とは異なる空間形成部材を空間形成位置に配置することで、ノズルが開口する閉空間を形成することができる。そして、空間形成部材に保湿用の液体を保持させるなどして閉空間内の湿度を高く保つことで、ノズル内の液体の蒸発を抑え、ノズル内での液体の粘度の上昇を抑制することができる。また、当該閉空間内に液体を強性的に排出させるクリーニングを行うこともできる。
【0008】
ここで、ノズル内の液体の粘度の上昇を抑制するためには、空間形成部材が退避位置にある間に、空間形成部材に保持された液体が蒸発しないようにすることが望ましい。この点、上記構成では、空間形成部材の退避位置は空間形成位置よりも乾燥部から離れている。そのため、空間形成部材が退避位置にある間に、乾燥部が発する熱の影響を同空間形成部材が受けにくく、同空間形成部材に保持された液体の蒸発が抑制される。これにより、こうした空間形成部材が空間形成位置に移動して閉空間を形成した場合、同空間形成部材が保持する液体によって閉空間内の湿度を高くすることができ、結果として、ノズル内の液体が蒸発しにくくなり、ノズル内の液体の粘度の上昇を抑制しやすくなる。したがって、メンテナンス部材の一例である空間形成部材の退避位置を、乾燥部の配置を考慮した適切な位置に設定することができる。
【0009】
上記目的を達成するための液体噴射装置は、搬送経路に沿って搬送される媒体に対して液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、液体が付着した媒体を加熱により乾燥させる乾燥部と、前記液体噴射ヘッドに付着している液体を吸収する吸収部材と、を備え、前記吸収部材は、前記液体噴射ヘッドに接触する接触位置と、前記液体噴射ヘッドから離れ、且つ前記接触位置よりも前記乾燥部に近い退避位置との間で移動するように構成されている。
【0010】
上記構成によれば、吸収部材が液体噴射ヘッドに接触することにより、同液体噴射ヘッドに付着している液体を吸収部材によって吸収することができる。そして、液体噴射ヘッドから液体を吸収した吸収部材は、接触位置から退避位置に移動する。
【0011】
ここで、吸収部材による液体の吸収効率の低下を抑制するためには、吸収部材の液体の含有量を極力少なくすることが望ましい。この点、上記構成では、吸収部材の退避位置を、接触位置よりも乾燥部の近くに設定している。そのため、吸収部材が退避位置にあるときには、乾燥部が発する熱の影響によって同吸収部材から液体が蒸発しやすくなる。その結果、吸収部材が接触位置に移動する時点での同吸収部材の液体の含有量が少なくなり、液体噴射ヘッドに付着している液体が吸収部材に吸収されやすくなる。したがって、メンテナンス部材の一例である吸収部材の退避位置を、乾燥部の配置を考慮した適切な位置に設定することができる。
【0012】
上記目的を達成するための液体噴射装置は、搬送経路に沿って搬送される媒体に対して液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、液体が付着した媒体を加熱により乾燥させる乾燥部と、前記液体噴射ヘッドに対して相対移動することで前記液体噴射ヘッドにおいて前記ノズルが開口する領域を払拭する部材であって、湿潤状態の払拭部材と、を備え、前記払拭部材は、前記領域を払拭する際に配置される払拭位置と、前記払拭位置よりも前記液体噴射ヘッド及び前記乾燥部から離れた退避位置との間で移動するように構成されている。
【0013】
上記構成によれば、液体噴射ヘッドに対して払拭部材を相対移動させることで、同液体噴射ヘッドにおいてノズルが開口する領域の払拭を行うことができる。そして、当該領域の払拭が完了すると、払拭部材は、払拭位置から退避位置に移動する。
【0014】
ここで、払拭部材による当該領域の払拭性能の低下を抑制するためには、払拭部材の湿潤状態を維持することが望ましい。この点、上記構成では、払拭部材の退避位置が接触位置よりも乾燥部から離れている。そのため、払拭部材が退避位置にあるときには、乾燥部が発する熱の影響を同払拭部材が受けにくく、同払拭部材の湿潤状態を維持しやすくなる。その結果、払拭部材による当該領域の払拭性能の低下を抑制することができる。したがって、メンテナンス部材の一例である払拭部材の退避位置を、乾燥部の配置を考慮した適切な位置に設定することができる。
【0015】
上記液体噴射装置において、前記媒体支持部は、前記液体噴射ヘッドよりも下方となる位置であって且つ搬送される媒体を支持する支持位置と、前記搬送経路から外れた退避位置との間を移動するように構成され、前記支持位置に前記媒体支持部が配置され、同媒体支持部が媒体を支持しているときに前記ノズルから噴射された液体が同媒体に付着するようになっており、前記乾燥部は、前記支持位置よりも上方に配置されており、前記空間形成部材の退避位置は、前記支持位置よりも下方に設定されていることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、空間形成部材が空間形成位置に移動する際には、媒体支持部材が支持位置から退避位置に移動する。そして、この状態で空間形成部材が空間形成位置に移動すると、閉空間が形成される。
【0017】
また、上記構成では、乾燥部は媒体支持部の支持位置よりも上方に配置されており、空間形成部材の退避位置は、媒体支持部の支持位置よりも下方である。そのため、媒体支持部が支持位置にあるときには、乾燥部によって加熱された空気が退避位置にある空間形成部材に向けて流れるのを媒体支持部によって遮ることができる。したがって、空間形成部材が退避位置にあるときに、同空間形成部材に保持された液体の蒸発を抑制することができる。
【0018】
上記液体噴射装置において、前記搬送経路は、前記退避位置と前記乾燥部との間を媒体が通過するように構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、媒体が搬送経路に沿って搬送される際には、退避位置にある空間形成部材と乾燥部との間を同媒体が通過する。そのため、乾燥部によって加熱された空気が退避位置にある空間形成部材に向けて流れないように、搬送経路に沿って搬送される媒体によって気体の流れを遮ることができる。したがって、空間形成部材が退避位置にあるときに、同空間形成部材に保持された液体の蒸発の抑制効果を高めることができる。
【0019】
上記液体噴射装置において、前記乾燥部は、前記ノズルの開口よりも上方に配置されていることが好ましい。
乾燥部が発する熱によって暖められた空気は上方に移動しやすい。この点、上記構成では、ノズルの開口が、乾燥部よりも下方に位置しているため、上記暖められた空気が開口を通じてノズル内に入り込みにくい。したがって、ノズル内の液体の蒸発を抑制することができる。
【0020】
上記液体噴射装置は、前記乾燥部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記ノズルから媒体に噴射される液体の量が閾値以上であることを条件に、前記乾燥部による加熱を実施することが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、媒体への液体の付着量が少ないときには、乾燥部によって媒体を加熱しなくてもよいと判断することができるため、乾燥部による媒体の加熱が行われなくなる。そのため、乾燥部の駆動頻度の増大を抑制することができ、ひいては液体噴射装置の消費電力の増大を抑制することができる。
【0022】
上記液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドに供給する液体を収容する液体収容体が装着される装着部を備え、前記装着部は、同装着部に装着された前記液体収容体の少なくとも一部が前記乾燥部の真上に位置するように配置されていることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、乾燥部によって加熱された空気は上方に移動する。すると、当該加熱された空気によって、装着部に装着された液体収容体内の液体の温度が上昇する。このように液体の温度が上昇することで、同液体の粘度が低くなる。したがって、高粘度の液体であっても、液体収容体から液体噴射ヘッドに液体を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】液体噴射装置の第1の実施形態であるプリンターの概略を示す構成図。
図2】同プリンターにおいて、静電搬送部が退避位置に移動した様子を示す構成図。
図3】同プリンターにおいて、キャップが空間形成位置にあるときの模式図。
図4】同プリンターの制御装置が、乾燥部を駆動させる際に実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。
図5】同プリンターにおいて、乾燥部と装着部との位置関係を示す模式図。
図6】液体噴射装置の第2の実施形態であるプリンターの一部を示す模式図。
図7】同プリンターにおいて、キャップが空間形成位置にあるときの模式図。
図8】同プリンターにおいて、吸収部材が接触位置にあるときの模式図。
図9】同プリンターにおいて、払拭部材が払拭位置にあるときの模式図。
図10】同プリンターにおいて、払拭部材がノズル形成面を払拭している様子を示す作用図。
図11】液体噴射装置の別の実施形態であるプリンターにおいて、空間形成部材が退避位置から空間形成位置に移動した様子を示す作用図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、液体噴射装置を具体化した第1の実施形態を図1図5に従って説明する。
図1に示すように、液体噴射装置の一例であるプリンター11の筐体12内には、媒体の一例である用紙Pを搬送経路20に沿って搬送する搬送装置29と、搬送されている用紙Pに印刷を施す印刷ユニット14とが設けられている。図1において紙面と直交する方向を用紙の幅方向とした場合、搬送経路20は、用紙の幅方向と交差する方向、望ましくは幅方向と直交する方向に用紙Pを搬送するように形成されている。
【0026】
印刷ユニット14は、用紙の幅方向の略全域に渡って液体の一例であるインクを同時に噴射可能なラインヘッド型の印刷ヘッド141を備えている。この印刷ヘッド141が、「液体噴射ヘッド」の一例に相当する。そして、この印刷ヘッド141から噴射されたインクが用紙Pに付着することにより、用紙Pに画像が形成される。本実施形態のプリンター11に設けられる印刷ヘッド141は、顔料粒子を含有するインクである顔料インクを噴射するヘッドである。もちろん、印刷ヘッドは、染料インクを噴射するヘッドであってもよい。
【0027】
なお、筐体12内における上方(図1では左上)には、インクを収容する複数の液体収容体61が着脱可能に装着される装着部60が設けられている。具体的には、装着部60は、印刷ユニット14よりも上方に配置されている。こうした装着部60に装着されている液体収容体61からは、供給経路62(図5参照)を通じて印刷ヘッド141にインクが供給される。
【0028】
搬送装置29は、印刷済みとなった用紙Pを筐体12外に排出する排出機構25と、印刷前の用紙Pを搬送経路20に沿って給送する給送機構30とを備えている。
排出機構25は、搬送経路20に沿って配置されている複数の排出ローラー対19を有している。この排出機構25によって搬送される用紙Pは、筐体12に形成されている媒体排出口26から筐体12外に排出される。つまり、この媒体排出口26が、搬送経路20の下流端となっている。そして、媒体排出口26から排出された用紙Pは、図1に二点鎖線で示すように、載置台55上に積層状態で載置される。
【0029】
給送機構30は、第1の媒体供給部21と、第2の媒体供給部22と、第3の媒体供給部23と、静電搬送部50とを有している。静電搬送部50は、印刷ユニット14の図中直下に配置されている。この静電搬送部50には、用紙Pが静電吸着される帯電ベルトが設けられており、帯電ベルトが稼働することで用紙Pが搬送方向下流に搬送される。そして、こうした用紙Pに対し、印刷ヘッド141からインクが噴射される。この点で、静電搬送部50により、搬送経路20に沿って搬送される用紙Pを支持する「媒体支持部」の一例が構成される。
【0030】
なお、図1及び図2に示すように、本実施形態のプリンター11には、静電搬送部50を、図1に示す支持位置と図2に示す退避位置との2位置間で移動させる静電搬送移動装置51が設けられている。用紙Pに印刷を施す際には、静電搬送部50が支持位置に配置される。一方、用紙Pへの印刷要求がなされていない場合やクリーニングなどのメンテナンスが行われる際には、搬送経路20から外れた退避位置に静電搬送部50が配置される。
【0031】
筐体12の一側面(図1では右側面)には開閉可能なカバー12Fが設けられており、このカバー12Fが開放されることにより挿入口12aが露出される。第1の媒体供給部21は、このように露出した挿入口12aから筐体12内に挿入された用紙Pを挟持する第1の給送ローラー対41を備えている。そして、この第1の給送ローラー対41を構成する2つのローラーの回転によって、用紙Pが静電搬送部50に向けて給送される。
【0032】
また、筐体12の図1における下部には、印刷前の用紙Pが積層状態でセットされる媒体カセット12cが設けられている。第2の媒体供給部22は、媒体カセット12cから用紙Pを給送するための供給部である。すなわち、第2の媒体供給部22は、媒体カセット12c内の最上位の用紙Pを媒体カセット12c外に送り出すピックアップローラー16aと、複数枚の用紙Pが重なって搬送されることを抑制する分離ローラー対16bと、分離ローラー対16bを通過した1枚の用紙Pを挟持する第2の給送ローラー対42とを備えている。そして、この第2の給送ローラー対42を構成する2つのローラーの回転によって、用紙Pが静電搬送部50に向けて給送される。
【0033】
第3の媒体供給部23は、用紙Pに対して両側のシート面に印刷する両面印刷を行うときに、片側のシート面が印刷済みとなった用紙Pを、再び静電搬送部50に導くための供給部である。すなわち、静電搬送部50よりも用紙の搬送方向下流には、搬送経路20から分岐する分岐搬送路24が形成されている。そして、第3の媒体供給部23には、静電搬送部50よりも用紙の搬送方向下流に配置され、用紙Pの搬送経路を搬送経路20又は分岐搬送路24に切り替える分岐機構27と、分岐搬送路24に配置され、正逆両方向への回転が可能な分岐搬送路ローラー対44とが設けられている。
【0034】
両面印刷を行う場合、片側のシート面が印刷済みとなった用紙Pは、静電搬送部50から分岐機構27によって分岐搬送路24に導かれる。このとき、分岐搬送路ローラー対44を構成する各ローラーの正方向への回転によって、用紙Pが搬送方向下流に搬送される。そして、用紙Pの後端が分岐搬送路24に導かれると、分岐搬送路ローラー対44を構成する各ローラーが逆方向に回転するようになり、用紙Pが逆方向に搬送されるようになる。すると、用紙Pは、図1において印刷ユニット14よりも上方に位置する反転供給路31に導かれる。そして、この反転供給路31上に配置されている複数の反転搬送ローラー対45の回転によって、用紙Pが反転供給路31に沿って給送される。これにより、用紙Pが、静電搬送部50よりも用紙の搬送方向上流で搬送経路20に合流される。その後、当該用紙Pが静電搬送部50に再び導かれる。このように静電搬送部50に用紙Pが再び導かれると、印刷済みとなったシート面が静電搬送部50に接触し、印刷されていないシート面が印刷ヘッド141に対向することとなる。
【0035】
また、本実施形態のプリンター11には、印刷ヘッド141から噴射されたインクが付着している用紙Pを加熱することで乾燥させる乾燥部65が設けられている。この乾燥部65は、印刷ヘッド141よりも用紙の搬送方向下流(図中左側)となる位置であって、且つ分岐搬送路24に配置される分岐搬送路ローラー対44よりも少し上方となる位置に配置されている。分岐搬送路ローラー対44は、印刷ヘッド141よりも上方に配置されている。そのため、乾燥部65は、印刷ヘッド141よりも上方に配置されているということができる。
【0036】
こうした乾燥部65は、下方に向けて温風を送出する構成となっている。乾燥部65から送出された温風は、分岐搬送路24に沿って搬送される用紙Pだけではなく、排出機構25によって搬送される用紙Pにも到達するようになっている。そして、このように温風が用紙Pに吹き付けられると、同用紙Pが加熱されたり、用紙P周辺の湿度が低下したりすることによって、同用紙Pに付着しているインクの蒸発が促進される。
【0037】
なお、プリンター11が設置される面を設置面1000とした場合、当該設置面1000に沿う方向のうち、印刷ヘッド141と乾燥部65とが並ぶ方向である図中左右方向を「規定方向X」としたとする。この場合、規定方向X及び用紙の幅方向の双方において、乾燥部65の一部と装着部60の一部とが重複している。すなわち、装着部60に装着された液体収容体61の少なくとも一部が、乾燥部65の真上に位置することとなる。
【0038】
図1及び図2に示すように、本実施形態のプリンター11には、空間形成部材の一例であるキャップ70と、キャップ70を移動させるキャップ駆動装置73とが設けられている。キャップ70は、キャップ駆動装置73の駆動によって、図2に示す空間形成位置と図1に示す退避位置との間で移動するように構成されている。
【0039】
図3に示すように、キャップ70は、有底略箱状をなしている。そして、キャップ70が空間形成位置に移動したときに、キャップ70の箱状部の先端(すなわち、図中上端)が、印刷ヘッド141において複数のノズル142が開口する領域であるノズル形成面143に接触する。そして、このようにキャップ70が空間形成位置に移動して印刷ヘッド141に接触したときに、キャップ70は、各ノズル142の開口142Aが臨む空間である閉空間72をノズル形成面143と共に形成する。
【0040】
なお、閉空間72を形成するときにキャップ70が接触するのはノズル形成面143に限らず、ノズル形成面143を構成する板部材を押さえる固定枠であったり、印刷ヘッド141の側面であったりしてもよい。
【0041】
また、キャップ70内には、インクを吸収するインク吸収材71が収容されている。すなわち、キャップ70が空間形成位置に移動して閉空間72を形成したときには、インク吸収材71がインクを保持しているため、閉空間72内の湿度をある程度高くすることができる。そのため、印刷ヘッド141のノズル142内のインクの蒸発が抑えられ、ノズル142内でのインクの粘度の上昇が抑制される。
【0042】
また、キャップ70の空間形成位置は、静電搬送部50の支持位置よりも上方に設定されているのに対し、キャップ70の退避位置は、静電搬送部50の支持位置よりも下方に設定されている。また、キャップ70の退避位置は、上記の規定方向Xにおいて空間形成位置を挟んで乾燥部65の反対側に設定される。そして、用紙Pへの印刷時にあっては、搬送経路20に沿って搬送される用紙Pが、退避位置にあるキャップ70と乾燥部65との間を通過する。
【0043】
なお、キャップ70は、印刷ヘッド141を通じてインクを排出させるクリーニングの際にも空間形成位置に配置される。そのため、キャップ70には、印刷ヘッド141から排出されたインクを廃液回収部74に排出させるための排出経路75が接続されている。図3に示す例では、この排出経路75に吸引ポンプ751が設けられており、この吸引ポンプ751の駆動によって閉空間72内が負圧となる。その結果、印刷ヘッド141からインクが強制的にキャップ70内に排出される。
【0044】
次に、本実施形態のプリンター11の制御構成について説明する。
図1図2及び図3に示すように、プリンター11は、制御部の一例である制御装置100を有しており、この制御装置100は、搬送装置29、印刷ヘッド141、乾燥部65、静電搬送移動装置51及びキャップ駆動装置73を制御する。例えば、用紙Pに形成する画像に関する画像データが印刷要求と共に制御装置100に入力されると、制御装置100は、画像データを印刷用のデータに変換し、同印刷用のデータに基づいて印刷ヘッド141からのインク噴射を制御する。
【0045】
また、用紙Pへの印刷に際し、用紙Pにおいて単位面積あたりのインクの付着量が多いほど、用紙Pが乾くまでの時間が長くなる。そのため、単位面積あたりのインクの付着量が比較的少ない場合、乾燥部65による加熱を行わなくても用紙Pが早期に乾くため、乾燥部65の駆動は不要と判断することができる。一方、単位面積あたりのインクの付着量が比較的多い場合、乾燥部65による加熱をしないと用紙Pが十分に乾かないため、乾燥部65の駆動は必要と判断することができる。
【0046】
そこで次に、図4に示すフローチャートを参照し、用紙Pへの印刷時において乾燥部65を制御する際に制御装置100が実行する処理ルーチンを説明する。なお、この処理ルーチンは、用紙Pへの印刷の開始時に実行されるルーチンである。
【0047】
図4に示すように、制御装置100は、印刷用のデータに基づき、用紙Pにおいて単位面積あたりのインクの噴射量Rを算出し、同噴射量Rが閾値RTH以上であるか否かを判定する(ステップS11)。噴射量Rが閾値RTH未満であるときには、用紙Pにおいて単位面積あたりのインクの付着量が少ないと判断することができる。一方、噴射量Rが閾値RTH以上であるときには、用紙Pにおいて単位面積あたりのインクの付着量が多いと判断することができる。
【0048】
そのため、噴射量Rが閾値RTH未満である場合(ステップS11:NO)、制御装置100は、乾燥部65を駆動させないで(ステップS12)、本処理ルーチンを終了する。一方、噴射量Rが閾値RTH以上である場合(ステップS11:YES)、制御装置100は、乾燥部65を駆動させ(ステップS13)、本処理ルーチンを終了する。すなわち、本実施形態のプリンター11では、制御装置100は、印刷ヘッド141の各ノズル142から用紙Pに噴射されるインクの量である噴射量Rが閾値RTH以上であることを条件に、乾燥部による用紙Pの加熱を実施する。
【0049】
次に、本実施形態のプリンター11の作用について説明する。
図1に示すように、キャップ70が退避位置に位置し、静電搬送部50が支持位置に位置している状況下で、用紙Pへの印刷が行われる。このとき、用紙Pへのインクの付着量が多いと判断されるときには、乾燥部65から用紙Pに向けて温風が送出される。
【0050】
このように用紙Pの印刷が行われているとき、キャップ70は、乾燥部65から離れた退避位置にある。そして、上下方向においてキャップ70と乾燥部65との間には、静電搬送部50が配置されている。さらに、用紙Pの印刷時にあっては、退避位置にあるキャップ70と乾燥部65との間を用紙Pが通過する。そのため、乾燥部65から送出される温風や同温風によって暖められた空気が退避位置にあるキャップ70に向けて流れないように、静電搬送部50や用紙Pによって気体の流れを遮ることができる。これにより、キャップ70内においてインク吸収材71に保持されたインクが蒸発しにくくなる。
【0051】
その後、用紙Pへの印刷が終了し、静電搬送部50が退避位置に移動すると、キャップ70が空間形成位置に移動し、印刷ヘッド141の各ノズル142が開口する閉空間72が形成される。このとき、インク吸収材71に吸収されたインクが徐々に蒸発することによって、閉空間72内の湿度が比較的高い状態に保たれるため、印刷ヘッド141の各ノズル142内でのインクの液体成分の蒸発が抑制される。すなわち、各ノズル142内でのインクの粘度の上昇が抑制される。
【0052】
なお、図5に示すように、乾燥部65が発する熱によって暖められた空気は、上方に移動する。この乾燥部65の上方には、装着部60に装着された液体収容体61が配置されているため、上記の暖められた空気の熱が液体収容体61に伝達される。その結果、液体収容体61に収容されたインクの温度が上昇する。
【0053】
ここで、温度が高いほど粘度が低下するインクを使用するプリンター11では、乾燥部65が発する熱で液体収容体61内のインクが暖められることによって、インクの粘度が低下する。その結果、液体収容体61から供給経路62に流出するインクの流動性を向上させ、低温環境下においても印刷ヘッド141へのインクの供給を効率よく行うことができる。
【0054】
特に、温度の低下に伴って粘度が低下するインクを収容した液体収容体61は、少なくともその一部が乾燥部65の真上に位置するように、装着部60の配置を設定することが好ましい。その他、例えば顔料インクのように、沈降性の成分を含む液体を収容する液体収容体61についても、底部から熱を伝えることによって液体収容体61内における液体の対流を促せば、攪拌により含有成分の沈降が抑制されるので、液体濃度の変化による印刷品質の低下を抑制できる。
【0055】
以上、本実施形態のプリンター11によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のプリンター11では、キャップ70の退避位置は、空間形成位置よりも乾燥部65から離れている。そのため、キャップ70が退避位置に位置しているときにキャップ70に付着しているインク、及びキャップ70内のインク吸収材71が保持しているインクが蒸発しにくくなる。したがって、キャップ70の退避位置を、乾燥部65の配置を考慮した適切な位置に設定することができる。
【0056】
その結果、キャップ70を空間形成位置に配置して閉空間72を形成した場合には、閉空間72内の湿度が低くなりにくいため、印刷ヘッド141の各ノズル142内でインクの粘度が上昇することを抑制することができる。
【0057】
(2)静電搬送部50が支持位置に配置され、キャップ70が退避位置に配置されている場合、静電搬送部50は、乾燥部65よりも下方であって且つキャップ70よりも上方に位置することとなる。そのため、静電搬送部50が支持位置に配置されているときには、乾燥部65によって加熱された空気が退避位置に位置するキャップ70に向けて流れるのを静電搬送部50によって遮ることができる。したがって、キャップ70が退避位置に位置している状況下において、キャップ70に付着しているインク、及びキャップ70内のインク吸収材71が保持しているインクの蒸発を抑制することができる。
【0058】
(3)また、用紙Pの印刷を行っている際には、退避位置に位置するキャップ70と乾燥部65との間を用紙Pが通過することとなる。そのため、乾燥部65によって加熱された空気が退避位置に位置するキャップ70に向けて流れるのを、搬送経路に沿って搬送される用紙Pによって遮ることができる。したがって、キャップ70が退避位置に位置している状況下において、キャップ70に付着しているインク、及びキャップ70内のインク吸収材71が保持しているインクの蒸発を抑制することができる。
【0059】
(4)また、本実施形態のプリンター11では、印刷ヘッド141のノズル形成面143が、すなわちノズル142の開口142Aが、乾燥部65よりも下方に位置している。そのため、乾燥部65によって暖められた空気が、開口142Aを通じてノズル142内に入り込みにくい。そのため、ノズル形成面143に開口するノズル142内でのインクの粘度の上昇を抑制することができる。
【0060】
(5)また、用紙Pへのインクの付着量が少ないときには、乾燥部65によって用紙Pを加熱しなくてもよいと判断することができるため、乾燥部65による用紙Pの加熱が行われなくなる。そのため、乾燥部65の駆動頻度の増大を抑制することができ、ひいてはプリンター11の消費電力の増大を抑制することができる。また、これにより、乾燥部65が発する熱がキャップ70に与える影響を小さくすることもできる。
【0061】
(6)また、乾燥部65によって加熱された空気は上方に移動する。すると、当該加熱された空気によって、装着部60に装着されている液体収容体61内のインクの温度が上昇される。このようにインクの温度が上昇することで、同インクの粘度が低くなる。したがって、高粘度のインクであっても、液体収容体61から印刷ヘッド141にインクを安定して供給することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に、液体噴射装置を具体化した第2の実施形態を図6図10に従って説明する。本実施形態のプリンター11では、メンテナンス部材として、キャップ70の他、吸収部材、払拭部材が設けられている点などが第1の実施形態と相違している。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0063】
図6に示すように、本実施形態のプリンター11は、印刷ヘッド141のノズル形成面143に付着しているインクを吸収する吸収部材80と、吸収部材80の移動を制御する吸収部材駆動装置81とを備えている。また、プリンター11は、ノズル形成面143を払拭する払拭装置90と、払拭装置90の移動を制御する払拭駆動装置95とを備えている。吸収部材80、払拭装置90及びキャップ70は、用紙Pへの印刷時には静電搬送部50に支持されている用紙Pよりも下方に配置されている。
【0064】
そして、図6及び図7に示すように、キャップ70を退避位置から空間形成位置に移動させる際には、静電搬送移動装置51の駆動によって、静電搬送部50が支持位置から退避位置に移動する。なお、図6及び図7に示す例では、静電搬送部50は、支持位置から下方に移動する。
【0065】
静電搬送部50の退避位置への移動が完了したとき、又は移動が完了する直前に、キャップ駆動装置73が駆動を開始し、キャップ70が退避位置から空間形成位置に移動する。そして、空間形成位置に移動したキャップ70は、印刷ヘッド141の各ノズル142が開口する閉空間72を形成する。なお、本実施形態のプリンター11であっても、第1の実施形態の場合と同様に、キャップ70の退避位置は、キャップ70の空間形成位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定されている。
【0066】
図6及び図8に示すように、吸収部材80は、吸収部材駆動装置81の駆動によって、図8に示す接触位置と、図6に示す退避位置との間で移動可能となっている。吸収部材80は、インクを吸収可能な構成となっている。こうした吸収部材80としては、例えば、多数の空隙を有する多孔質部材を挙げることができる。そして、吸収部材80は、印刷ヘッド141のノズル形成面143に接触可能な接触面801を有しており、この接触面801の面積は、ノズル形成面143と同程度となっている。
【0067】
こうした吸収部材80が接触位置に移動すると、吸収部材80の接触面801が印刷ヘッド141のノズル形成面143に接触する。より具体的には、吸収部材80がノズル形成面143に押し付けられる。これにより、ノズル形成面143に付着しているインクが吸収部材80に吸収される。そして、吸収部材80によるノズル形成面143からのインクの吸収が完了すると、吸収部材駆動装置81の駆動によって吸収部材80が接触位置から退避位置に移動する。これにより、吸収部材80とノズル形成面143との接触が解除される。
【0068】
なお、吸収部材80がインクなどの液体を吸収するために接触するのは、ノズル形成面143に限らず、ノズル形成面143を構成する板部材を押さえる固定枠であったり、印刷ヘッド141の側面であったりしてもよい。
【0069】
吸収部材80の退避位置は、吸収部材80の接触位置よりも乾燥部65の近くに設定されている。より具体的には、吸収部材80の退避位置は、上下方向においては接触位置よりも乾燥部65から離れているものの、規定方向Xにおいては接触位置よりも乾燥部65の近くとなる位置に設定されている。すなわち、吸収部材80の退避位置は、乾燥部65よりも鉛直方向における下方に設定され、吸収部材80の退避位置から乾燥部65までの直線距離は、吸収部材80の接触位置から乾燥部65までの直線距離よりも短い。そのため、吸収部材80が退避位置にあるときには、乾燥部65から送出された温風や乾燥部65が発する熱によって、吸収部材80が加熱されやすい。
【0070】
図6及び図9に示すように、払拭装置90は、払拭駆動装置95の駆動によって、印刷ヘッド141においてノズル142が開口する領域を含むノズル形成面143を払拭するための位置であって且つ図9に示す位置と、図6に示す位置との間で移動可能となっている。
【0071】
図9及び図10に示すように、払拭装置90は、装置本体91と、湿潤状態が保持される払拭部材92と、払拭部材92を印刷ヘッド141のノズル形成面143に押し付ける押し付け部材93とを備えている。この場合、払拭部材92は、例えば不織布又は多孔質材のような液体を吸収可能な部材を含み、吸収した液体(含浸液)を含有することによって湿潤状態とすることが好ましい。払拭部材92に含有される液体(含浸液)は、ノズル形成面143に付着しているインク(すなわち、印刷ヘッド141から噴射されるインク)の溶媒(水性インクであれば、水)成分など、固化したインクの含有成分を軟化又は溶解させる成分を含む。また、払拭装置90は、ノズル形成面143だけでなく、ノズル形成面143を構成する板部材を押さえる固定枠なども含めた領域を払拭部材92で払拭可能な構成であってもよい。
【0072】
また、押し付け部材93は、払拭部材92によるノズル形成面143の払拭時に、同ノズル形成面143に沿う方向(例えば、図10では左右方向)に移動するようになっている。このように押し付け部材93が移動することで、払拭部材92は、ノズル形成面143の全域を払拭することができる。したがって、図9に示す払拭部材92の位置が、ノズル形成面143を払拭する際に配置される「払拭位置」に相当し、図6に示す払拭部材92の位置が、ノズル形成面143から離れている「退避位置」に相当する。
【0073】
なお、払拭部材92の退避位置は、払拭部材92の払拭位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定されている。より具体的には、払拭部材92の退避位置は、規定方向Xにおいて払拭位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定されている。すなわち、払拭部材92の退避位置は、規定方向Xにおいて印刷ヘッド141を挟んだ乾燥部65の反対側となっている。
【0074】
次に、本実施形態のプリンター11の作用のうち、吸収部材80及び払拭装置90に関する作用を中心に説明する。なお、キャップ70に関する作用は、上記第1の実施形態の作用と同様であるため、ここでの説明を割愛する。
【0075】
用紙Pへの印刷が行われるときには、静電搬送部50が支持位置に移動する一方で、吸収部材80は同吸収部材の退避位置に移動する。吸収部材の退避位置は、乾燥部65の直下となる位置であって、且つ接触位置よりも乾燥部65の近くである。そのため、乾燥部65から送出された温風や同乾燥部65が発する熱によって、退避位置にある吸収部材80が加熱される。
【0076】
このように吸収部材80が暖められたり、温度上昇によって吸収部材80の周囲の湿度が低下したりすることによって、吸収部材80の表面から吸収されていたインクが蒸発し、吸収部材80の乾燥が促進される。
【0077】
そして、用紙Pへの印刷の終了に伴って静電搬送部50が支持位置から退避位置に移動した後、吸収部材80は接触位置に移動して印刷ヘッド141に接触する。このとき、吸収部材80の表面は乾いているので、その表面に開口する空隙の毛細管力によって、ノズル形成面143に付着したインクが速やかに吸収部材80に吸収される。
【0078】
また、用紙Pへの印刷が行われている場合、払拭部材92は同払拭部材の退避位置に配置されているとともに静電搬送部50は支持位置に配置されているので、乾燥部65が送出した温風や同乾燥部65が発する熱は、静電搬送部50又は搬送経路に沿って搬送される用紙Pによって遮られる。そのため、退避位置にある払拭部材92が加熱されにくい。その結果、払拭部材92が含有する含浸液の蒸発が抑制されるので、払拭部材92の湿潤状態が保持しやすくなる。
【0079】
したがって、用紙Pへの印刷の終了に伴って静電搬送部50が支持位置から退避位置に移動した後、払拭部材92が払拭位置に移動してノズル形成面143の払拭を行う際に、払拭部材92は、自身に含有される含浸液でノズル形成面143を濡らしつつ払拭を行うことができる。これにより、ノズル形成面143に付着した付着物を含浸液に溶解させて効率よく汚れを落とすことができるとともに、乾いた状態で付着物を引きずることによるノズル形成面143の傷つきを抑制することができる。
【0080】
以上、本実施形態のプリンター11によれば、上記第1の実施形態の効果(1)~(6)と同様の効果に加え、以下のような効果をさらに得ることができる。
(7)本実施形態のプリンター11では、吸収部材80の退避位置を、接触位置よりも乾燥部65の近くに設定している。そのため、吸収部材80が退避位置に位置しているときに同吸収部材80からインクが蒸発しやすくなる。その結果、吸収部材80が接触位置に移動する時点での同吸収部材80のインクの含有量が少なくなり、ノズル形成面143に付着しているインクが吸収部材80に吸収されやすくなる。したがって、吸収部材80の退避位置を、乾燥部65の配置を考慮した適切な位置に設定することができる。
【0081】
(8)本実施形態のプリンター11では、払拭部材92の退避位置を、払拭位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定している。そのため、払拭部材92が退避位置に位置しているときに払拭部材92に保持されている液体成分が蒸発しにくくなる。その結果、払拭部材92で印刷ヘッド141のノズル形成面143を払拭する際における払拭性能の低下を抑制することができる。したがって、払拭部材92の退避位置を、乾燥部65の配置を考慮した適切な位置に設定することができる。
【0082】
(9)静電搬送部50が支持位置に配置され、払拭部材92が退避位置に配置されている場合、静電搬送部50は、乾燥部65と払拭部材92(払拭装置90)との間に位置することとなる。そのため、静電搬送部50が支持位置に配置されているときには、乾燥部65によって加熱された空気が退避位置に位置する払拭部材92に向けて流れるのを、静電搬送部50によって遮ることができる。したがって、払拭部材92が退避位置に位置している状況下にあっては、払拭部材92の湿潤状態を維持しやすくなる。
【0083】
(10)また、用紙Pの印刷を行っている際には、退避位置に位置する払拭部材92と乾燥部65との間を用紙Pが通過することとなる。そのため、乾燥部65によって加熱された空気が退避位置に位置する払拭部材92に向けて流れるのを、搬送経路に沿って搬送される用紙Pによって遮ることができる。したがって、払拭部材92が退避位置に位置している状況下にあっては、払拭部材92の湿潤状態を維持しやすくなる。
【0084】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・印刷ヘッド141が噴射する液体として、顔料インクなどの沈降成分を含む液体を用いる場合、含有成分が沈降して液体濃度が変化するおそれがある。そのため、液体収容体61から印刷ヘッド141に至る供給経路に、インクを循環させるための循環流路を設けてもよい。循環流路は、例えば、印刷ヘッド141と液体収容体61の供給流路の途中に設けてもよいし、供給流路の途中から液体収容体61にインクを戻す返送流路としてもよいし、印刷ヘッド141から供給流路の途中にインクを戻す返送流路としてもよいし、印刷ヘッド141から液体収容体61にインクを戻す返送流路としてもよい。
【0085】
この場合、循環流路の少なくとも一部を、乾燥部65の直上に配置すれば、乾燥部65が発する熱によって循環流路を流動するインクの温度を上昇させることができる。これにより、インクの流動性を高めたり、対流により攪拌を促したりすることができるので、結果として、インクの循環に要する動力の増大を抑制することができる。
【0086】
すなわち、液体収容体61に限らず、液体収容体61から印刷ヘッド141に至るインクの供給経路(循環流路を含む)の一部、又は、その供給経路の途中でインクを一時貯留するサブタンクを乾燥部65の熱が伝わりやすい位置(例えば、乾燥部65の真上又は温風のあたる位置)に配置すれば、インクの流動性の向上や含有成分の沈降抑制が期待できる。
【0087】
その他、供給経路の途中に異物や気泡を除去するためのフィルターを配置した場合、そのフィルターを含む部分を乾燥部65の熱が伝わりやすい位置(例えば、乾燥部65の真上又は温風のあたる位置)に配置すると、乾燥部65の熱でインクの粘度が低下することで、フィルターをインクが通過する際の圧力損失を小さくすることができるとともに、フィルターに付着した付着物の固化が抑制できるので、好ましい。
【0088】
・供給経路62の一部が乾燥部65の直上に位置するのであれば、装着部60を、規定方向Xにおいて乾燥部65とは異なる位置に配置してもよい。
・ラインヘッド型の印刷ヘッド141を備えるプリンターなどでは、インクを収容する液体収容体61が筐体12の外部に設けられているものもある。こうしたプリンターでは、乾燥部65の上方域(すなわち、直上)を、液体収容体61から印刷ヘッド141にインクを供給するための供給経路62の一部が位置するようにしてもよい。例えば、液体収容体61からインクが供給されるサブタンクを、乾燥部65の上方位置に配置してもよい。
【0089】
・第2の実施形態において、湿潤状態の払拭部材92によるノズル形成面143の払拭が終わった後に、吸収部材80をノズル形成面143に接触させるようにしてもよい。この構成によれば、湿潤状態の払拭部材92による濡れ拭きによってノズル形成面143に固着した異物や液体をノズル形成面143の隅に掻き寄せた後、その寄せられた異物や液体を乾燥した吸収部材80で乾拭きして除去することができる。
【0090】
・乾燥部は、用紙P又はその周囲の気体を加熱することができるのであれば、温風を送出するもの以外の他の構成であってもよい。例えば、乾燥部は、加熱ローラーを備えた構成であってもよい。この場合、加熱ローラーを用紙Pに押し付けることで用紙Pを加熱することができる。
【0091】
・乾燥部として、分岐搬送路24に沿って搬送される用紙専用の乾燥部と、排出機構25によって搬送される用紙専用の乾燥部とを別々に設けてもよい。この場合、印刷ヘッド141によって印刷された用紙Pの搬送態様によって、2種類の乾燥部を使い分けることが好ましい。
【0092】
・用紙Pの単位面積あたりのインクの付着量に拘わらず、用紙Pへの印刷時には乾燥部65を駆動させるようにしてもよい。
・規定方向Xにおける乾燥部65と印刷ヘッド141との間の距離がある程度長い場合には、乾燥部65を、その一部がノズル形成面143よりも下方に位置するように配置してもよい。
【0093】
・キャップ70の退避位置は、空間形成位置よりも乾燥部65から離れた位置であれば、任意の位置に設定することができる。例えば、キャップ70の退避位置を、同退避位置と乾燥部65との間を用紙Pが通過しないような位置としてもよい。
【0094】
・キャップ70内には、インク吸収材71を設けなくてもよい。この場合であっても、キャップ70の内壁にインクを付着させたり、底壁に形成した溝などにインクを溜めたりしてキャップ70がインクを保持することにより、キャップ70が閉空間72を形成したときに、ノズル142の乾燥を抑制することが可能となる。
【0095】
・空間形成部材は、液体を保持することができるのであれば、キャップ70以外の他の構成であってもよい。例えば、図11に示すように、空間形成部材70Aは板状であってもよい。この場合、印刷ヘッド141には、ノズル142の開口142Aを囲むように環状をなすシール部材145を設けてもよい。この構成では、空間形成部材70Aが空間形成位置に移動してシール部材145に接触することで、各ノズル142が開口する閉空間72を形成することができる。この構成においても、例えば板状の空間形成部材70Aの上面に溝又は凹部を形成し、その溝又は凹部に液体を保持させることができる。
【0096】
・各実施形態では、閉空間72内に負圧を発生させることで印刷ヘッド141からインクを強制的に排出させるクリーニングを行うようにしているが、これに限らず、他の方式のクリーニングを行うようにしてもよい。例えば、ノズル142よりも上流に加圧ポンプを設け、同加圧ポンプの駆動によって閉空間72内にインクを排出させるクリーニングを実施するようにしてもよい。あるいは、液体収容体61から印刷ヘッド141に至る供給経路に循環流路を設ける場合には、その循環流路において液体を循環させるためのポンプの駆動力によって、ノズル142から液体を排出させるクリーニングを実施するようにしてもよい。
【0097】
・キャップ70内に保持されたインクが蒸発した場合には、印刷ヘッド141からインクをキャップ70内に噴射させることにより、キャップ70内にインクを補充することができる。同様に、払拭部材92が乾燥した場合には、払拭部材92にインクを噴射して湿潤状態に戻すこともできるが、払拭部材92はノズル形成面143に摺接するので、乾燥により固化したインクの含有成分がノズル形成面143を傷つけるおそれがある。その点、キャップ70によるノズル142の保湿に用いられるのは蒸発したインクの溶媒成分であるため、印刷に使用するインクが減ってしまうものの、保湿を行うことはできる。そこで、第2の実施形態では、払拭部材92の退避位置を、キャップ70の退避位置よりも乾燥部65から遠い位置に設定するようにしてもよい。
【0098】
・第2の実施形態において、印刷ヘッド141のノズル形成面143の払拭時には、払拭部材92をノズル形成面143に接触させた状態で払拭装置90を、同ノズル形成面143に沿う方向に移動させるようにしてもよい。この場合には、印刷ヘッド141及び払拭部材92に対して相対移動する押し付け部材93を設けなくてもよい。また、この場合の払拭部材92は、液体(含浸液)を吸収可能なスポンジや、外周面が液体(含浸液)を吸収可能な多孔質材からなるローラーなどに変更してもよい。また、この場合には、スポンジの基端部分に含浸液を貯留した貯留部を配置したり、ローラーを回転させることによってノズル形成面143に接触する部分を変更可能な構成にしたりすることもできる。
【0099】
・第2の実施形態において、払拭部材92の退避位置は、払拭位置よりも乾燥部65から離れた位置であれば、任意の位置に設定してもよい。例えば、払拭部材92の退避位置を、同退避位置と乾燥部65との間を用紙Pが通過しないような位置としてもよい。
【0100】
・第2の実施形態では、ノズル形成面143における払拭部材92の接触位置を規定方向Xにおける一方から他方に変位させることでノズル形成面143の払拭を行っている。しかし、これに限らず、例えば、当該接触位置を、用紙の幅方向に変位させることでノズル形成面143の払拭を行うようにしてもよい。
【0101】
・第2の実施形態において、吸収部材80の退避位置は、接触位置よりも乾燥部65に近い位置であれば、任意の位置に設定してもよい。例えば、吸収部材80の退避位置を、乾燥部65の直上となる位置としてもよい。
【0102】
・第2の実施形態において、吸収部材80を設けているのであれば、払拭装置90及びキャップ70の少なくとも一方を備えない構成であってもよい。また、吸収部材の退避位置が、吸収部材の接触位置よりも乾燥部65の近くに設定されているのであれば、払拭部材の退避位置を、払拭部材の払拭位置よりも乾燥部65の近くに設定してもよい。また、吸収部材の退避位置が、吸収部材の接触位置よりも乾燥部65の近くに設定されているのであれば、キャップの退避位置を、キャップの空間形成位置よりも乾燥部65の近くに設定してもよい。
【0103】
・第2の実施形態において、払拭装置90を設けているのであれば、吸収部材80及びキャップ70の少なくとも一方を備えない構成であってもよい。また、払拭部材の退避位置が、払拭部材の払拭位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定されているのであれば、吸収部材の退避位置を、吸収部材の接触位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定してもよい。また、払拭部材の退避位置が、払拭部材の払拭位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定されているのであれば、キャップの退避位置を、キャップの空間形成位置よりも乾燥部65の近くに設定してもよい。
【0104】
・第2の実施形態において、キャップの退避位置が、キャップの空間形成位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定されているのであれば、吸収部材の退避位置を、吸収部材の接触位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定してもよい。また、キャップの退避位置が、キャップの空間形成位置よりも乾燥部65から離れた位置に設定されているのであれば、払拭部材の退避位置を、払拭部材の払拭位置よりも乾燥部65の近くに設定してもよい。
【0105】
・媒体支持部は、印刷ヘッド141のノズル形成面143と対向する位置に配置され、搬送経路に沿って搬送される用紙Pなどの媒体を支持可能な構成であれば、帯電ベルトを備えない任意の構成の支持部であってもよい。
【0106】
・印刷ユニット14は、ラインヘッド型の印刷ヘッドとして、用紙の幅方向に延びる長尺状のヘッドであってもよいし、複数の印刷ヘッドを備える構成であってもよい。そして、印刷ユニット14が複数の印刷ヘッドを有する構成である場合、キャップ70などの空間形成部材を、印刷ヘッド毎、あるいは、各印刷ヘッドにおいて同じ液体を噴射するノズル群毎に設けるようにしてもよい。
【0107】
また、印刷ユニット14が複数の印刷ヘッドを有する構成である場合、吸収部材80は、全ての印刷ヘッドのノズル形成面に接触可能な大きな接触面801を有する構成であってもよい。また、吸収部材80を、印刷ヘッド毎、あるいは、各印刷ヘッドにおいて同じ液体を噴射するノズル群毎に設けるようにしてもよい。
【0108】
また、印刷ユニット14が複数の印刷ヘッドを有する構成である場合、払拭装置90は、全ての印刷ヘッドのノズル形成面を払拭可能な大きな払拭部材を備えた構成であってもよい。また、払拭部材がノズル形成面を払拭する払拭方向と交差する方向に複数の印刷ヘッド又は同じ液体を噴射するノズル群毎が並ぶ場合、その交差する方向に並ぶ印刷ヘッド毎又はノズル群毎に払拭装置90を設けるようにしてもよい。
【0109】
・プリンター11を、プラスチックフィルムなどのように用紙P以外の他の媒体にインクを噴射する装置に具体化してもよい。
・液体噴射装置は、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。例えば、液体噴射装置は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液状体を噴射する装置であってもよい。また、液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する装置であってもよい。さらに、液体噴射装置は、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する装置であってもよい。また、液体噴射装置は、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する装置であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
11…液体噴射装置の一例であるプリンター、12…筐体、14…印刷ユニット、141…液体噴射ヘッドの一例である印刷ヘッド、142…ノズル、142A…開口、143…ノズル形成面、145…シール部材、20…搬送経路、21…第1の媒体供給部、22…第2の媒体供給部、23…第3の媒体供給部、24…分岐搬送路、25…排出機構、26…媒体排出口、27…分岐機構、29…搬送装置、30…給送機構、31…反転供給路、50…媒体支持部の一例である静電搬送部、51…静電搬送移動装置、55…載置台、60…装着部、61…液体収容体、62…供給経路、65…乾燥部、70…空間形成部材の一例であるキャップ、70A…空間形成部材、71…インク吸収材、72…閉空間、73…キャップ駆動装置、74…廃液回収部、75…排出経路、751…吸引ポンプ、80…吸収部材、801…接触面、81…吸収部材駆動装置、90…払拭装置、91…装置本体、92…払拭部材、93…押し付け部材、95…払拭駆動装置、100…制御装置、1000…設置面。
図1
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