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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】システムスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M3/155 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021505516
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019047983
(87)【国際公開番号】W WO2020183820
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2019046656
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0212138(US,A1)
【文献】特開2000-227808(JP,A)
【文献】特開2012-080744(JP,A)
【文献】特開2017-135812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタとスイッチング回路と個別アナログ制御部とをそれぞれに備える複数の電力変換部と、
前記複数の電力変換回路に対して、発振制御信号を出力する共通制御部と、
前記複数の電力変換部の出力部が並列に接続され、負荷に接続される共通出力端子と、
を備え、
前記個別アナログ制御部は、
アナログ電子回路によって形成され、
前記複数の電力変換部の出力部の状態を検出して、前記複数の電力変換部に帰還させる帰還信号を生成する帰還信号生成部と、
前記帰還信号生成部に備えられ、前記複数の電力変換部のインダクタの電流に基づく個別電流信号を生成する個別電流信号生成部と、
前記スイッチング回路のスイッチング素子を駆動する駆動部と、を備え、
前記共通制御部は、プログラマブルな演算処理を実行できるデジタル電子回路によって形成される、
システムスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記個別アナログ制御部は、パルス幅変調制御ICを備え、
前記共通制御部は、前記複数の電力変換部の個数に応じてスイッチング周波数の位相をプログラマブルに設定できる演算処理により発振信号を生成して、前記個別アナログ制御部に前記発振信号を出力する、
請求項1に記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記帰還信号生成部は、
前記複数の電力変換部を並列に接続する共通ノードと、
前記複数の電力変換部に対する前記個別電流信号から、前記共通ノードに流れる共有バス信号を生成する共有信号生成部と、
前記個別電流信号と前記共有バス信号の差から個別電流帰還信号を生成し、前記帰還信号として出力する個別電流帰還信号生成部と、
を備える、
請求項1または請求項2に記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記共有信号生成部は、
前記複数の電力変換部に対する前記個別電流信号の最大値を用いて、前記共有バス信号を生成する、
請求項3に記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記共有信号生成部は、
前記複数の電力変換部に対する前記個別電流信号の平均値を用いて、前記共有バス信号を生成する、
請求項3に記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記帰還信号生成部は、
前記共通出力端子の電圧から個別電圧帰還信号を生成する個別電圧帰還信号生成部を備え、
前記個別電流帰還信号と前記個別電圧帰還信号とを加算した信号を前記帰還信号として、前記複数の電力変換回路に帰還する、
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記帰還信号生成部は、
前記共有バス信号を、運転数信号として、前記共通制御部に出力し、
前記共通制御部は、
前記運転数信号を用いて前記複数の電力変換部の個別動作を設定し、該個別動作の設定を含む前記発振制御信号を出力する、
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記インダクタの電流を検出するインダクタ電流検出回路を備え、
前記インダクタ電流検出回路は、
前記インダクタが有するスイッチング周波数における特定のインダクタンスと特定の交流抵抗に対して、所定の関係を有するCR時定数を構成する検出用コンデンサと検出用抵抗とを備え、
前記検出用抵抗と前記検出用コンデンサの直列回路は、前記インダクタに並列接続されており、
前記検出用コンデンサの両端電圧から出力信号を生成する、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記共通制御部は、
前記複数の電力変換部に対して互いにスイッチング周波数の位相をずらせた発振信号を含む制御信号を出力する、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記共通制御部は、
前記共通出力端子に接続される外部からの指令信号に応じて信号処理を実行し、前記複数の電力変換部の個別アナログ制御部の動作を設定する、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項11】
前記スイッチング回路と前記個別アナログ制御部は、一体化して集積されたFET内蔵PWM制御ICで構成される、
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のシステムスイッチング電源装置。
【請求項12】
前記共通制御部は、プログラマブルなマイクロプロセッサで構成される、
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のシステムスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれがスイッチング回路を含む複数の電力変換部を並列接続した構成を備えるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、低電圧且つ大電流のスイッチング電源装置が求められている。これを実現するスイッチング電源装置として、例えば、特許文献1および特許文献2には、マルチフェーズコンバータと呼ばれるスイッチング電源回路が記載されている。
【0003】
マルチフェーズコンバータは、複数の電力変換部を有する。複数の電力変換部は、例えば、並列に接続されている。マルチフェーズコンバータは、複数の電力変換部の出力電流を合わせて出力することで、大電流を実現する。また、マルチフェーズコンバータは、複数の電力変換部に対するスイッチング周波数の位相をずらすことによって、見かけ上の動作周波数を高くして出力平滑回路を小型化し、出力電圧や出力電流を安定化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-147269号公報
【文献】特開2013-94058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング電源装置が接続される負荷の状態は、負荷回路の動作等によって時間的に変化し、負荷電流や消費電力は、時間的に変化する。この場合、負荷電流の急激な変化に対しても出力電圧は変化せず、一定に安定させる必要がある。このためには、電力変換回路の出力電圧を検出して、スイッチング動作を制御する制御回路に帰還させ、出力電圧が一定値となるように負帰還制御動作を実現することが必要である。
【0006】
しかしながら、スイッチング動作を制御する制御回路をデジタル電子回路で実現すると、デジタル電子回路では演算処理の時間が必要となり、負荷電流の急激な変化に対応する高速負荷応答を実現して、出力電圧を安定な一定値に制御することが困難となる。また、電力変換回路そのものはアナログ電子回路であることから、アナログの電力変換回路とデジタルの電力変換回路とのインターフェースとして、非常に多くのアナログ-デジタル変換器が必要になる。このため、制御回路が大規模且つ複雑になり、大型化して、非常に高価になるという問題がある。一方、スイッチング動作を制御する制御回路をアナログ電子回路で実現すると、電力変換部の個数に応じたアナログ制御回路が必要となり、制御回路が大規模且つ複雑になり、大型化して、非常に高価になるという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、複数の電力変換回路に対して制御する共通演算制御と出力電圧の高速負荷応答とを両立できるシステムスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のスイッチング電源装置は、複数の電力変換部、共通制御部、および、共通出力端子を備える。
【0009】
複数の電力変換部は、インダクタと、スイッチング回路と、個別アナログ制御部と、をそれぞれに備える。共通制御部は、プログラマブルな演算処理を実行でき、複数の電力変換回路に対して、発振制御信号を出力する。共通出力端子は、複数の電力変換部の出力部が並列に接続され、負荷に接続される。個別アナログ制御部は、アナログ電子回路によって形成され、帰還信号生成部、および、駆動部を備える。帰還信号生成部は、複数の電力変換部の出力部の状態を検出して、複数の電力変換部に帰還させる帰還信号を生成する。駆動部は、スイッチング回路のスイッチング素子を駆動する。
【0010】
この構成では、高速応答性が要求される回路部には、アナログ電子回路が用いられ、プログラマブルな処理が要求される回路部には、デジタル電子回路が用いられる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数の電力変換部に対して全体の動作を集中制御する共通演算制御を行うデジタル制御と、出力電圧の高速負荷応答を実現するアナログ制御が両立でき、複数の電力変換部を備えたシステムスイッチング電源装置の高効率化、小型化、低ノイズ化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置10の回路ブロック図である。
図2図2は、インダクタ電流の測定回路の等価回路図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る帰還信号生成部50の回路図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るMPU20の機能ブロック図である。
図5図5は、運転数の切り替えの概念を説明するための図である。
図6図6は、運転数の切り替え処理を示すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係るスイッチング電源装置10Aの回路ブロック図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る帰還信号生成部50Aの回路図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るMPU20Aの機能ブロック図である。
図10図10は、第3の実施形態に係るスイッチング電源装置10Bの回路ブロック図である。
図11図11は、第4の実施形態に係るスイッチング電源装置の帰還信号生成部50Rの回路ブロック図である。
図12図12は、第5の実施形態に係るスイッチング電源装置のインダクタ電流の検出回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るスイッチング電源装置について、図を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置10の回路ブロック図である。
【0014】
図1に示すように、スイッチング電源装置10は、MPU20、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34を備える。本実施形態では、電力変換部の個数は、4個であるが、複数個であれば、本実施形態の構成を適用できる。また、スイッチング電源装置10は、入力端子Pin、および、出力端子Poutを備える。スイッチング電源装置10が、本発明の「システムスイッチング電源装置」に対応し、出力端子Poutが、本発明の「共通出力端子」に対応し、この出力端子Poutの電圧が、出力電圧Voutである。システムスイッチング電源装置とは、例えば、単に1個の電力変換部を備えたスイッチング電源とは異なり、複数の電力変換部を備え、負荷の状態に応じて複数の電力変換部の運転数、運転状態を適正に制御する電源装置を意味する。
【0015】
入力端子Pinは、外部の直流電圧源に接続されている。スイッチング電源装置10は、入力端子Pinから直流の入力電圧Vinの供給を受けている。出力端子Poutは、図示しない負荷に接続されている。
【0016】
MPU20は、入力端子Pinに接続しており、入力端子Pinを介して電源供給されている。この電源供給ラインは、入力コンデンサCi1を通してグランド基準電位に接続されている。
【0017】
MPU20は、デジタル電子回路からなり、プログラマブルなMicro Processing Unitである。MPU20は、プログラマブルな演算処理を実行可能なデバイスである。MPU20は、プログラマブルな演算処理によって、制御信号(発振制御信号)を生成する。
【0018】
MPU20は、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34に接続する。MPU20は、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34のそれぞれに対して、制御信号を出力する。
【0019】
例えば、MPU20は、複数の電力変換部の内、運転する電力変換部(動作を有効にする電力変換部)に、その電力変換部に応じた制御信号を出力し、運転しない電力変換部(動作を無効にする電力変換部)には制御信号を出力しない。
【0020】
制御信号は、各電力変換部のスイッチング周波数からなる発振信号を含んでいる。各制御信号の発振信号は位相差を有し、この位相差は、運転する電力変換部の個数によって設定されている。これにより、MPU20は、スイッチング電源装置10をマルチフェーズコンバータとして動作させる。
【0021】
この際、MPU20は、端子504からの運転数信号Sopを用いて、運転する電力変換部の個数を決定する。電力変換部31の端子504、電力変換部32の端子504、電力変換部33の端子504、および、電力変換部34の端子504は、共通ノード540に接続しており、共通ノード540は、MPU20に接続する。また、MPU20は、この個数に応じて位相差を決定し、運転する電力変換部への発振信号を設定する。
【0022】
電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34は、入力端子Pinに接続しており、入力端子Pinを介して電源供給されている。電力変換部31の電源供給ラインは、入力コンデンサCi1を通してグランド基準電位に接続されている。電力変換部32の電源供給ラインは、入力コンデンサCi2を通してグランド基準電位に接続されている。電力変換部33の電源供給ラインは、入力コンデンサCi3を通してグランド基準電位に接続されている。電力変換部34の電源供給ラインは、入力コンデンサCi4を通してグランド基準電位に接続されている。
【0023】
電力変換部31の出力端、電力変換部32の出力端、電力変換部33の出力端、および、電力変換部34の出力端は、出力端子Poutに接続されている。
【0024】
電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34は、同じ回路構成を有する。したがって、以下では、電力変換部31のみについて、回路構成を具体的に説明する。
【0025】
図1に示すように、電力変換部31は、インダクタL、出力コンデンサCo1、抵抗RL、コンデンサCL、および、PWM制御IC400、帰還信号生成部50を備える。
【0026】
スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とからなる回路は、本発明の「スイッチング回路」に対応する。PWM制御IC400は、駆動部40、スイッチング素子Q1、および、スイッチング素子Q2を備える。PWM制御IC400は、一体化して集積されたFETによって構成される。すなわち、PWM制御IC400は、アナログICである。PWM制御IC400が、「FET内蔵PWM制御IC」および「パルス幅変調制御IC」に対応する。
【0027】
PWM制御IC400は、入力端子Pinに接続しており、入力端子Pinを介して電源供給されている。
【0028】
駆動部40には、MPU20から制御信号が入力される。駆動部40には、電圧帰還信号と電流帰還信号との合成帰還信号が入力される。駆動部40は、制御信号と合成帰還信号とから、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2に対して、PWM(パルス幅変調)制御を用いたスイッチング制御信号を生成する。
【0029】
スイッチング素子Q2のゲートは、駆動部40に接続しており、ドレインは、入力端子Pinに接続しており、ソースは、スイッチング素子Q1のドレインに接続する。スイッチング素子Q1のゲートは、駆動部40に接続しており、ソースは、グランド基準電位に接続されている。これら、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とからなる回路が、本発明の「スイッチング回路」に対応する。
【0030】
スイッチング素子Q2のゲートには、駆動部40から、スイッチング素子Q2用のスイッチング制御信号が入力される。スイッチング素子Q1のゲートには、駆動部40から、スイッチング素子Q1用のスイッチング制御信号が入力される。
【0031】
インダクタLの一方端は、スイッチング素子Q2のソースとスイッチング素子Q2のドレインとの接続点に接続する。
【0032】
インダクタLの他方端は、出力端子Poutに接続する。インダクタLの他方端は、出力コンデンサCo1を通してグランド基準電位に接続されている。
【0033】
(インダクタ電流iLの検出回路)
抵抗RLとコンデンサCLとの直列回路は、インダクタLに並列接続されている。この回路が、本発明の「インダクタ電流検出回路」に対応する。抵抗RLが、本発明の「交流抵抗」を有する「検出用抵抗」に対応し、コンデンサCLが、本発明の「検出用コンデンサ」に対応する。インダクタLのインダクタンス、インダクタLの等価直列抵抗Rsの抵抗値、抵抗RLの抵抗値、および、コンデンサCLのキャパシタンスを特定の関係にすることで、インダクタLに流れる電流を、無損失で検出できる。
【0034】
具体的には、次の原理によって、インダクタLの電流(インダクタ電流iL)を無損失で検出できる。図2は、インダクタ電流の測定回路の等価回路図である。
【0035】
インダクタLは、等価直列抵抗Rsを有する。したがって、抵抗RLとコンデンサCLとの直列回路は、インダクタLと等価直列抵抗Rsとの直列回路に対して並列接続されているとみなせる。
【0036】
ここで、コンデンサCLの両端電圧をvCとする。この際、コンデンサCLにおける抵抗RLに接続する側を+側に設定する。また、等価直列抵抗Rsの両端電圧をvsとする。この際、等価直列抵抗RsにおけるインダクタLに接続する側を+側に設定する。
【0037】
この場合、インダクタ電流を時間tの関数としてiL(t)とし、この回路への印加電圧をEとすると、vsは、時間tの関数として、式1で表すことができる。
【0038】
vs(t)=iL(t)・Rs=(E/L)・t・Rs -(式1)
一方、vCは、時間tの関数として、t=0付近において、式2で表すことができる。
【0039】
vc(t)=(E/(CL・RL))・t -(式2)
ここで、等価直列抵抗Rsの両端電圧vsは、インダクタ電流iL(t)における電圧降下に等しい。したがって、等価直列抵抗Rsの両端電圧vs(t)と、コンデンサCLの両端電圧vc(t)とを等しくすることができれば、時間的に変化するコンデンサCLの両端電圧vc(t)によって、インダクタ電流iL(t)を無損失で検出できることになる。すなわち、式3を満たすことで、コンデンサCLの両端電圧vc(t)によって、インダクタ電流iL(t)を無損失で検出できる。
【0040】
vs(t)=vc(t) -(式3)
(式3)に(式1)および(式2)を代入すると、次式が得られる。
【0041】
Rs/L=1/(CL・RL) -(式4)
したがって、インダクタLのインダクタンス、インダクタLの等価直列抵抗Rsの抵抗値に対して、コンデンサCLのキャパシタンス、および、抵抗RLの抵抗値、すなわち、コンデンサCLと抵抗RLからなるCR回路の時定数(CR時定数)を、(式4)を満たすように設定することで、時間的に変化するインダクタ電流iL(t)を無損失で検出できる。
【0042】
(帰還信号生成部50)
図1に示すように、帰還信号生成部50は、端子501、端子502、端子503、端子504を備える。端子501は、出力端子Pout、言い換えれば、電力変換部31の出力端、電力変換部32の出力端、電力変換部33の出力端、および、電力変換部34の出力端の並列接続部に接続する。端子502は、抵抗RLとコンデンサCLとの接続点に接続する。端子503は、PWM制御IC400の駆動部40に接続する。
【0043】
端子504は、他の電力変換部の帰還信号生成部50の端子504と並列に接続されている。すなわち、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34の各帰還信号生成部50の端子504は、共通ノード540に接続されている。共通ノード540がMPU20に接続する。
【0044】
帰還信号生成部50は、機能的には、次の構成を備える。図3は、第1の実施形態に係る帰還信号生成部50の回路図である。図3に示すように、帰還信号生成部50は、個別電流信号生成部52、共有信号生成部53、個別電流帰還信号生成部54、および、個別電圧帰還信号生成部500を備える。
【0045】
(個別電流信号生成部52)
図3に示すように、個別電流信号生成部52は、増幅器U51、抵抗R51、抵抗R52、抵抗R53、および、抵抗R54を備える。
【0046】
増幅器U51の反転入力端子は、抵抗R51を介して、端子501に接続する。増幅器U51の非反転入力端子は、抵抗R52を介して、端子502に接続する。抵抗R51の抵抗値と抵抗R52の抵抗値とは同じである。抵抗R53は、非反転入力端子とグランド基準電位との間に接続されている。増幅器U51の出力端子は、抵抗R54を介して、増幅器U51の反転入力端子に接続する。抵抗R53の抵抗値と抵抗R54の抵抗値とは同じである。増幅器U51には、駆動電源VDDが供給されている。この回路構成によって、個別電流信号生成部52は、差動増幅回路を実現する。
【0047】
端子501は、出力端子Poutに接続しており、端子502は、コンデンサCLと抵抗RLとの接続点に接続する。これにより、増幅器U51の非反転入力端子と反転入力端子との間には、インダクタ電流iLに対応した電位差が生じる。そして、増幅器U51の出力端子、すなわち、個別電流信号生成部52の出力端子からは、インダクタ電流iLに基づく信号が所定の増幅率で増幅されて、個別電流信号として出力される。
【0048】
(共有信号生成部53)
図3に示すように、共有信号生成部53は、増幅器U52、および、ダイオードD52を備える。増幅器U52の非反転入力端子は、増幅器U51の出力端子に接続する。増幅器U52の出力端子は、ダイオードD52を介して、増幅器U52の反転入力端子に接続する。この際、ダイオードD52のアノードは、出力端子に接続し、ダイオードD52のカソードは、反転入力端子に接続する。反転入力端子は、端子504、すなわち、共通ノード540に接続する。増幅器U52には、駆動電源VDDが供給されている。
【0049】
この回路構成によって、共有信号生成部53は、複数の電力変換部31-34に対する、個別電流信号の最大値保持回路を実現する。この個別電流信号の最大値からなる信号が、本発明の「共有バス信号」に対応する。そして、この「共有バス信号」が「運転数信号Sop」となる。
【0050】
(個別電流帰還信号生成部54)
個別電流帰還信号生成部54は、増幅器U53、増幅器U54、トランジスタTr55、抵抗R55、抵抗R56、抵抗R57、抵抗R58、抵抗R551、および、抵抗R552を備える。
【0051】
増幅器U53の反転入力端子は、抵抗R55を介して、増幅器U51の出力端子に接続する。増幅器U53の非反転入力端子は、抵抗R56を介して、ダイオードD52のカソード、および、端子504に接続する。抵抗R55の抵抗値と抵抗R56の抵抗値とは同じである。抵抗R57は、増幅器U53の非反転入力端子とグランド基準電位との間に接続されている。増幅器U53の出力端子は、抵抗R58を介して、増幅器U53の反転入力端子に接続する。抵抗R57の抵抗値と抵抗R58の抵抗値とは同じである。増幅器U53には、駆動電源VDDが供給されている。
【0052】
増幅器U54の非反転入力端子は、増幅器U53の出力端子に接続する。増幅器U54の出力端子は、NPN型のトランジスタTr55のベースに接続する。トランジスタTr55のコレクタは、抵抗R551を介して、端子501に接続する。トランジスタTr55のエミッタは、抵抗R552を介してグランド基準電位に接続する。また、トランジスタTr55のエミッタは、増幅器U54の反転入力端子に接続する。さらに、トランジスタTr55のコレクタと抵抗R551との接続点は、抵抗R11と抵抗R12直列回路を介して、グランド基準電位に接続する。
【0053】
抵抗R11と抵抗R12との接続点は、端子503に接続する。抵抗R11と抵抗R12との直列回路によって、個別電圧帰還信号生成部500が構成される。
【0054】
増幅器U53の反転入力端子には、個別電流信号が入力され、非反転入力端子には、共有バス信号が入力される。これにより、増幅器U51の非反転入力端子と反転入力端子との間には、共有バス信号と個別電流信号との電位差が生じる。そして、増幅器U53の出力端子、すなわち、端子503からは、共有バス信号と個別電流信号との電位差に基づく信号が所定の増幅率で増幅されて、増幅器U54に出力される。
【0055】
増幅器U54、トランジスタTr55、および、抵抗R552からなる回路によって、電圧-電流変換回路が実現される。具体的には、この回路では、増幅器U54の非反転入力端子に差分信号(差分電圧)が印加されると、トランジスタTr55のコレクタ-エミッタ間には、差分信号(差分電流Iadj)が流れる。この差分電流が、個別電流帰還信号に相当する。
【0056】
差分電流Iadjが流れることによって、抵抗R551と抵抗R11との接続点(トランジスタTr55のコレクタ)の電圧は、Vout-(Rr551×Iadj)となる。Rr551は、抵抗R551の抵抗値である。
【0057】
この結果、端子503には、Vout-(Rr551×Iadj)の電圧を、抵抗R11と抵抗R12とで分圧した電圧が出力される。すなわち、端子503には、個別電流増幅信号と運転数信号Sop(最大値保持信号)との差分、および、出力電圧Voutに応じた電圧が出力される。言い換えれば、個別電流帰還信号と、抵抗R551、抵抗R11および抵抗R12の抵抗値と出力電圧Voutとに応じて決まる個別電圧帰還信号と、が合成され、個別帰還信号として、端子503に出力される。個別帰還信号は、駆動部40にフィードバックされる。駆動部40は、個別帰還信号に基づいて、PWM制御を行い、スイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q2に、スイッチング制御信号を出力する。
【0058】
これにより、出力電圧の安定化が実現される。そして、上述のように、帰還信号生成部50は、アナログ電子回路によって構成されている。したがって、帰還信号生成部50は、出力電圧の変動に対して高速に応答する個別電流帰還信号および個別電圧帰還信号を出力できる。よって、スイッチング電源装置10は、出力電圧の安定化および変動に対する高速応答性を実現できる。
【0059】
したがって、スイッチング電源装置10は、複数の電力変換部に対して全体の動作を集中制御する共通演算制御を行うデジタルと出力電圧の高速負荷応答を実現するアナログ制御が両立でき、複数の電力変換部を備えたシステムスイッチング電源装置の高効率化、小型化、低ノイズ化を実現できる。
【0060】
さらに、上述のように、共通演算制御にデジタル電子回路を用い、個別の電力変換部にアナログ電子回路を用いることで、ハードでは、電力変換部の個数を変更し、ソフトでは、共通演算制御のファームウェアを変更することのみで、様々な供給電流に応じたシステムスイッチング電源装置のラインナップに対応でき、供給電流の仕様に柔軟に対応できる規模拡大性のあるスケーラブルシステムスイッチング電源装置を実現できる。
【0061】
さらに、スイッチング電源装置10は、個別の電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34において、個別帰還信号を用いたPWM制御を行う。これにより、スイッチング電源装置10は、より精度が高く、安定した出力特性を得ることができる。
【0062】
(運転数の切り替え制御に関する構成)
共有バス信号である運転数信号Sopは、上述のように、MPU20に入力される。MPU20は、運転数信号Sopを用いて、運転する電力変換部の個数を決定し、制御信号を生成する。MPU20は、上述のように、プログラマブルなMicro Processing Unitであり、図4に示す機能を実現する。すなわち、MPU20は、デジタル電子回路によって、図4に示す機能を実現する。
【0063】
図4は、第1の実施形態に係るMPU20の機能ブロック図である。図4に示すように、MPU20は、ADC21、負荷電流算出部22、運転制御信号生成部23、および、記憶部24を備える。
【0064】
記憶部24には、運転数、運転状態、および、切り替え閾値が記憶されている。すなわち、MPU20は、運転数、運転状態、および、切り替え閾値を保持している。運転数nは、現在運転中の電力変換部の個数である。運転状態は、運転中の電力変換部に与える制御信号(発振信号)の位相、例えば、複数の電力変換部が運転中の場合に、複数の電力変換部のそれぞれに出力する制御信号(発振信号)の位相、または、位相差を含む。切り替え閾値は、運転数の切り替えの判定の基準となる負荷電流値である。
【0065】
ADC21は、アナログデジタル変換回路であり、アナログ信号からなる運転数信号Sopを、デジタル信号に変換する。
【0066】
負荷電流算出部22は、運転数信号Sopから負荷電流値を算出する。具体的には、負荷電流算出部22は、運転数nを記憶部24から読み出す。負荷電流算出部22は、運転数信号Sopと運転数nとを乗算することで、負荷電流値Izを算出する。負荷電流算出部22は、負荷電流値Izを、運転制御信号生成部23に出力する。
【0067】
運転制御信号生成部23は、切り替え閾値THを記憶部24から読み出す。運転制御信号生成部23は、負荷電流値Izと切り替え閾値THとを比較し、比較結果に応じて運転数nを決定する。
【0068】
具体的には、運転制御信号生成部23は、次に示す原理に基づいて、運転数nを決定する。
【0069】
図5は、運転数の切り替えの概念を説明するための図である。図5は、複数の電力変換部を並列に接続した回路構成における出力電圧と出力電流との関係を示すグラフである。横軸は出力電流であり、縦軸は出力電圧である。
【0070】
並列接続された電力変換部の運転数n、電力変換部の抵抗r、入力電圧Vinとして、出力電圧Voutと出力電流Ioutとは、式5の関係を有する。
【0071】
Vout=Vin-(r/n)Iout -(式5)
入力電圧Vinは一定である。この関係から、図5に示す点線で示した出力特性が得られる。各点線に示すように、運転数nが多くなるほど、出力電圧Voutの低下量を抑えながら、より大きな出力電流Ioutを得られる。すなわち、運転数nが多くなるほど、安定した所望の出力電圧Voutに対して、低損失で、より大きな負荷電流を得られる。
【0072】
ここで、例えば、図5に示すように、入力電圧Vinを1.85[V]とし、出力電圧の最低値を1.80[V]とする。
【0073】
運転制御信号生成部23は、運転数n毎の出力特性が1.80[V]に達する時の出力電流(負荷電流)Ioutを切り替えの閾値とする。例えば、図4の例であれば、運転数nを1から2に切り替える時の切り替え閾値TH12は、運転数n=1の出力特性において、出力電圧Voutが1.80[V]に達した出力電流Ioutによって設定される。同様に、運転数nを2から3に切り替える時の切り替え閾値TH23は、運転数n=2の出力特性において、出力電圧Voutが1.80[V]に達した出力電流Ioutによって設定される。また、運転数nを3から4に切り替える時の切り替え閾値TH34は、運転数n=3の出力特性において、出力電圧Voutが1.80[V]に達した出力電流Ioutによって設定される。
【0074】
運転制御信号生成部23は、運転数nが「1」の時に、負荷電流値Izが切り替え閾値TH12よりも大きければ、運転数nを「2」に切り替える。同様に、運転制御信号生成部23は、運転数nが「2」の時に、負荷電流値Izが切り替え閾値TH23よりも大きければ、運転数nを「3」に切り替える。また、同様に、運転制御信号生成部23は、運転数nが「3」の時に、負荷電流値Izが切り替え閾値TH23よりも大きければ、運転数nを「4」に切り替える。なお、例えば、負荷電流が急激に変動し、運転数nが「1」の時に、負荷電流値Izが切り替え閾値TH23よりも大きくなれば、運転制御信号生成部23は、運転数nを「1」から「3」に切り替えることも可能である。
【0075】
なお、運転数nを少なくしていく時の切り替え閾値、および、運転数nの切り替えの原理は、上述の運転数nを多くしていく時の原理と同じのものを用いることで実現が可能である。
【0076】
運転制御信号生成部23は、運転数nを決定すると、運転数nに応じて、運転する電力変換部を設定する。この際、例えば、運転制御信号生成部23は、記憶部24から運転状態を読み出して参照し、運転する電力変換部を設定する。
【0077】
具体的な一例として、電力変換部31の1台が運転中であり、他の電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34の3台が停止中(非運転中)の場合において、運転数nが「2」に変更されたとする。運転制御信号生成部23は、運転状態から電力変換部31が運転状態であることを読み出し、運転状態ではない電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34のいずれか1台を運転するように設定する。すなわち、現状、運転中の電力変換部31を停止させることなく、継続的に運転させ、運転状態ではない電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34のいずれか1台の運転を開始する。
【0078】
運転制御信号生成部23は、上述の発振信号を含む制御信号を生成し、運転数nの切り替え後に運転する電力変換部のそれぞれに、制御信号を出力する。この際、運転制御信号生成部23は、運転数nに応じて、各発振信号の位相差を決定する。
【0079】
このように、本実施形態の構成を用いることによって、スイッチング電源装置10は、負荷電流値Iz(出力電流Iout)を計測しながら、負荷電流値Izに応じて、運転数nを適正に変更できる。これにより、スイッチング電源装置10は、安定した出力電圧Voutを維持しながら、所望の出力電流Ioutを出力できるように、自動的に制御することができる。
【0080】
この際、運転数nの決定、切り替えの制御を、デジタル電子回路からなるMPU20によって実現する。したがって、運転数nの決定、切り替えの制御を実行する回路の構成は、アナログ電子回路を用いた場合よりも簡素化される。特に、電力変換部の個数が多くなるほど、簡素化の効果は高くなる。
【0081】
なお、上述の説明では、MPU20を複数の機能ブロックに分けて処理を行う態様を示した。しかしながら、デジタル処理を行う演算装置を用いて図6に示す処理を行うことで、MPU20と同様の処理を行うことができる。
【0082】
図6は、運転数の切り替え処理を示すフローチャートである。なお、各処理の具体的な内容は上述しており、詳細な説明は省略する。また、図6は、運転数を多くする処理のフローチャートである。
【0083】
図6に示すように、演算装置は、運転数信号Sopを取得する(S11)。演算装置は、保持している運転数nを読み出す(S12)。
【0084】
演算装置は、運転数信号Sopと運転数nとを用いて、負荷電流値Izを算出する(S13)。演算装置は、負荷電流値Izが切り替え閾値THよりも大きければ(S14:YES)、運転数nを多くするように切り替える(S15)。演算装置は、切り替え後の運転数nに応じて制御信号を変更する(S16)。
【0085】
演算装置は、負荷電流値Izが切り替え閾値TH以下であれば(S14:NO)、そのままの運転数nを継続し、制御信号もそのまま継続的に出力する。
【0086】
なお、運転数nを少なくする処理は、例えば、負荷電流値Izが切り替え閾値THよりも小さければ、運転数nを少なくするように切り替える等の処理によって実現が可能である。
【0087】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るスイッチング電源装置について、図を参照して説明する。図7は、第2の実施形態にスイッチング電源装置10Aの回路ブロック図である。
【0088】
図7に示すように、第2の実施形態に係るスイッチング電源装置10Aは、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置10に対して、MPU20Aおよび帰還信号生成部50Aの構成において異なる。スイッチング電源装置10Aの他の構成は、スイッチング電源装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0089】
スイッチング電源装置10Aは、MPU20A、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34を備える。電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34は、それぞれに、帰還信号生成部50Aを備える。
【0090】
図8は、第2の実施形態に係る帰還信号生成部の回路図である。図8に示すように、帰還信号生成部50Aは、第1の実施形態に係る帰還信号生成部50に対して、端子505を追加した点で異なる。帰還信号生成部50Aの他の構成は、帰還信号生成部50と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0091】
端子505は、増幅器U51の出力端子に接続する。これにより、端子505からは、個別電流信号CSOが出力される。具体的には、電力変換部31の帰還信号生成部50Aの端子505は、電力変換部31の動作状態に応じた個別電流信号CSO1を出力する。電力変換部32の帰還信号生成部50Aの端子505は、電力変換部32の動作状態に応じた個別電流信号CSO2を出力する。電力変換部33の帰還信号生成部50Aの端子505は、電力変換部33の動作状態に応じた個別電流信号CSO3を出力する。電力変換部34の帰還信号生成部50Aの端子505は、電力変換部34の動作状態に応じた個別電流信号CSO4を出力する。
【0092】
電力変換部31は、個別電流信号CSO1をMPU20Aに出力する。電力変換部32は、個別電流信号CSO2をMPU20Aに出力する。電力変換部33は、個別電流信号CSO3をMPU20Aに出力する。電力変換部34は、個別電流信号CSO4をMPU20Aに出力する。
【0093】
図9は、第2の実施形態に係るMPU20Aの機能ブロック図である。図9に示すように、MPU20Aは、第1の実施形態に係るMPU20に対して、ADC261、ADC262、ADC263、ADC264、比較器271、比較器272、比較器273、比較器274、および、電流バランス判定部28を備える。
【0094】
ADC261、ADC262、ADC263、および、ADC264は、アナログデジタル変換回路である。ADC261は、アナログ信号の個別電流信号CSO1をデジタル信号に変換する。ADC262は、アナログ信号の個別電流信号CSO2をデジタル信号に変換する。ADC263は、アナログ信号の個別電流信号CSO3をデジタル信号に変換する。ADC264は、アナログ信号の個別電流信号CSO4をデジタル信号に変換する。
【0095】
比較器271は、個別電流信号CSO1と運転数信号Sopとを比較して、比較結果を出力する。比較器272は、個別電流信号CSO2と運転数信号Sopとを比較して、比較結果を出力する。比較器273は、個別電流信号CSO3と運転数信号Sopとを比較して、比較結果を出力する。比較器274は、個別電流信号CSO4と運転数信号Sopとを比較して、比較結果を出力する。
【0096】
運転数信号Sopは、上述のように、個別電流信号の最大値を取る信号である。したがって、この処理によって、比較器271、比較器272、比較器273、および、比較器274は、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34の間での個別電流信号のバラツキを得られる。
【0097】
電流バランス判定部28は、比較器271、比較器272、比較器273、および、比較器274の比較結果から、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34の間での個別電流信号のバランスを判定する。この際、電流バランス判定部28は、記憶部24から運転状態を読み出し、運転中の電力変換部に対する比較結果のみを用いて、バランスを判定する。
【0098】
電流バランス判定部28は、例えば、比較器271の比較結果が、他の比較器272、比較器273、および、比較器274の比較結果と大きく異なっていれば、電力変換部31、電力変換部32、電力変換部33、および、電力変換部34の間での個別電流信号のバランスが崩れていると判定する。そして、電流バランス判定部28は、例えば、電力変換部31の動作が異常である可能性があると判定する。電流バランス判定部28は、この判定結果に応じて、例えば、アラート信号を生成して出力する。
【0099】
この構成によって、スイッチング電源装置10Aは、スイッチング電源装置10と同様の作用効果を得られるとともに、運転中の複数の電力変換部の動作状態を判定できる。
【0100】
さらに、この構成では、スイッチング電源装置10Aは、個別電流信号のバランスを判定する回路を、デジタル電子回路によって構成する。したがって、スイッチング電源装置10Aは、複数の電力変換部31-34の出力バランスを判定する機能も含めて、簡素な回路構成によって実現できる。
【0101】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るスイッチング電源装置について、図を参照して説明する。図10は、第3の実施形態にスイッチング電源装置10Bの回路ブロック図である。
【0102】
図10に示すように、第3の実施形態に係るスイッチング電源装置10Bは、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置10に対して、分圧回路60を備える点で異なる。スイッチング電源装置10Bの他の構成は、スイッチング電源装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0103】
分圧回路60は、共通ノード540とMPU20との間に接続されている。分圧回路60は、抵抗R61と抵抗R62とを備える。抵抗R61と抵抗R62とは、直列接続されており、この直列回路は、共通ノード540とグランド基準電位との間に接続されている。抵抗R61と抵抗R62との接続点(分圧点)は、MPU20に接続する。
【0104】
分圧回路60は、運転数信号Sopを分圧して、分圧した運転数信号SopをMPU20に出力する。
【0105】
このような構成によって、MPU20への入力される時の運転数信号Sopの電圧を低くできる。したがって、運転数信号Sopの電圧が、MPU20の電源電圧を超えることを防止できる。これにより、上述のMPU20の動作を確実に実現できる。また、MPU20を低電圧化できる。
【0106】
(第4実施形態)
本発明の第4の実施形態に係るスイッチング電源装置について、図を参照して説明する。図11は、第4の実施形態にスイッチング電源装置の帰還信号生成部50Rの回路ブロック図である。
【0107】
図11に示すように、第4の実施形態に係るスイッチング電源装置の帰還信号生成部50Rは、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置10の帰還信号生成部50に対して、共有信号生成部53Rを用いる点で異なる。帰還信号生成部50Rの他の構成は、帰還信号生成部50と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0108】
共有信号生成部53Rは、抵抗R60を備える。抵抗R60は、増幅器U52の出力端子と反転入力端子との間に接続されている。この構成によって、増幅器U52と抵抗R60とを備える平均値算出回路が実現される。
【0109】
共有信号生成部53Rは、この平均値信号を、運転数信号Sopとして出力する。このように、運転数信号Sopに平均値信号を用いても、上述の最大値信号と同様の処理を実現することが可能である。
【0110】
(第5実施形態)
本発明の第5の実施形態に係るスイッチング電源装置について、図を参照して説明する。図12は、第5の実施形態にスイッチング電源装置のインダクタ電流の検出回路の回路図である。
【0111】
第5の実施形態に係るスイッチング電源装置は、第1の実施形態に係るスイッチング電源装置10に対して、インダクタ電流の検出回路の構成において異なる。第5の実施形態に係るスイッチング電源装置の他の構成は、スイッチング電源装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0112】
図12に示すように、抵抗RL1と抵抗RL2との直列回路は、インダクタLに並列接続されている。抵抗RL2には、コンデンサCLが並列接続されている。
【0113】
このような構成であっても、コンデンサCLの両端電圧を検出することによって、インダクタ電流iLを無損失で検出できる。
【0114】
なお、上述の各実施形態の構成は、運転数信号Sopのみを参照して、運転数の切り替え等を行う態様を示した。しかしながら、スイッチング電源装置が接続し、電力を供給する負荷の装置から指令信号を受信して、当該指令信号も参照して、運転数の切り替え等を行うことも可能である。
【0115】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組合せが可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0116】
10、10A、10B:スイッチング電源装置
20、20A:MPU
21、261、262、263、264:ADC
22:負荷電流算出部
23:運転制御信号生成部
24:記憶部
28:電流バランス判定部
31、32、33、34:電力変換部
40:駆動部
50、50A、50R:帰還信号生成部
52:個別電流信号生成部
53、53R:共有信号生成部
54:個別電流帰還信号生成部
60:分圧回路
271、272、273、274:比較器
400:PWM制御IC
500:個別電圧帰還信号生成部
501、502、503、504、505:端子
540:共通ノード
Ci1、Ci2、Ci3、Ci4:入力コンデンサ
CL:コンデンサ
Co1:出力コンデンサ
D52:ダイオード
L:インダクタ
Pin:入力端子
Pout:共通出力端子
Q1、Q2:スイッチング素子
R11、R12、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R60、R61、R62、RL、RL1、RL2:抵抗
Rs:等価直列抵抗
U51、U52、U53:増幅器
VDD:駆動電源
Vin:入力電圧
Vout:出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12