(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20221101BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20221101BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20221101BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221101BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20221101BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221101BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L29/78 652T
H01L29/78 657D
H01L29/78 655Z
H01L29/78 652Q
H01L21/60 301A
H01L21/60 321E
H01L23/48 G
(21)【出願番号】P 2021511274
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009109
(87)【国際公開番号】W WO2020203001
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019069846
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲一郎
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130909(JP,A)
【文献】特開2016-021652(JP,A)
【文献】特開2016-012647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07、25/18
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/60
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC半導体材料によるMOSFETとSi半導体材料によるIGBTとを並列に接続して構成される半導体モジュールにおいて、
前記IGBTは、Si半導体材料によるRC-IGBTであり、
前記RC-IGBTの還流ダイオードの順方向電圧を前記MOSFETのボディダイオードの格子欠陥が成長する電流に相当する順方向電圧以下に
し、前記RC-IGBTのエミッタは、リードフレームによって主電流を流す外部端子に接続され、前記MOSFETのソースは、ボンディングワイヤによって前記リードフレームに接続された、半導体モジュール。
【請求項2】
前記ボンディングワイヤが接続される前記リードフレームの位置は、前記RC-IGBTのエミッタの直上とした、請求項
1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記MOSFETのチップ面積は、前記RC-IGBTのチップ面積より小さい、請求項1
または2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記MOSFETのチップ厚さは、前記RC-IGBTのチップ厚さより大きい、請求項1
または2に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記RC-IGBTは、温度センス素子および電流センス素子の少なくとも一方を有している、請求項1
または2に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
SiC半導体材料およびSi半導体材料による電圧制御型の半導体チップを並列に接続して構成される半導体モジュールにおいて、
前記SiC半導体材料による電圧制御型の半導体チップは、SiC-MOSFETであり、
前記Si半導体材料による電圧制御型の半導体チップは、Si-MOSFETであり、前記Si-MOSFETのボディダイオードは、前記SiC-MOSFETのボディダイオードの格子欠陥が成長する電流に相当する順方向電圧以下の順方向電圧を有
し、前記Si-MOSFETのソースは、リードフレームによって主電流を流す外部端子に接続され、前記SiC-MOSFETのソースは、ボンディングワイヤによって前記リードフレームに接続された、半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性の異なる複数の半導体チップを並列に接続して構成される半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置には、半導体スイッチング素子を縦続接続して構成したハーフブリッジ回路が用いられている。半導体スイッチング素子としては、特性の異なる複数の電圧制御型の半導体チップを組み合わせて所望の特性を得るように構成した半導体モジュールが知られている(たとえば、特許文献1参照)。ここで、特許文献1に記載の半導体モジュールの構成例について説明する。
【0003】
図9は従来の半導体モジュールの構成例を示す回路図、
図10は従来の半導体モジュールの特性例を示す図、
図11はSiC-MOSFETを用いた場合に格子欠陥が成長することによる特性劣化に対応した従来の半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【0004】
図9に示す半導体モジュール100は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)101とIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102とを並列に接続して構成されている。すなわち、MOSFET101のドレインは、IGBT102のコレクタに接続され、MOSFET101のソースは、IGBT102のエミッタに接続されている。MOSFET101に逆並列に接続されているダイオードは、MOSFET101が内蔵するボディダイオード101aである。
【0005】
このような半導体モジュール100は、
図10に示したように、MOSFET101が持つオン抵抗特性110とIGBT102が持つ特性120とを合成した特性130を有している。なお、
図10において、横軸は、MOSFET101のドレイン・ソース間電圧VdsまたはIGBT102のコレクタ・エミッタ間電圧Vceを示し、縦軸は、MOSFET101のドレイン電流IdsまたはIGBT102のコレクタ電流Iceを示している。ここで、MOSFET101のオン抵抗特性110は、電圧に比例した電流を流すことができる定抵抗特性であるので、傾きが一定の直線で表されている。IGBT102が持つ特性120は、低電圧領域で電流が流れず、大電流領域では電圧降下が小さい特性を有しており、ダイオードに近い特性になっている。これらオン抵抗特性110および特性120を組み合わせると、半導体モジュール100は、特性130で示す特性になり、小電流領域から大電流領域に亘り低損失な半導体スイッチング素子を構成することができる。
【0006】
近年、SiC半導体材料によるMOSFET(以下、SiC-MOSFETという)が登場している。このSiC-MOSFETは、オン抵抗がSi半導体材料によるMOSFETよりも低抵抗化している。このため、半導体モジュール100のSi半導体材料によるMOSFET101をSiC-MOSFETで構成すれば、さらに損失低減の半導体モジュールが実現される。また、同じオン抵抗を有するMOSFETであれば、SiC-MOSFETは、チップサイズをさらに小さくすることができる。
【0007】
図11に示す半導体モジュール105は、SiC-MOSFET106およびIGBT102を並列に接続して構成したものである。SiC-MOSFET106は、逆並列に接続されたボディダイオード106aが内蔵されており、さらに、ショットキーバリアダイオード107が逆並列に接続されている。このショットキーバリアダイオード107は、MOSFET106のボディダイオード106aを保護するためのものであり、以下、その保護が必要な理由について説明する。
【0008】
半導体モジュール105は、たとえばスイッチング電源装置のハーフブリッジ回路を構成する半導体スイッチング素子として使用されることがある。ハーフブリッジ回路がそのローサイドの半導体スイッチング素子に並列に接続されたモータやトランスなどの誘導性負荷を駆動する構成では、MOSFET106のボディダイオード106aに電流が流れることがある。すなわち、ハーフブリッジ回路のハイサイドの半導体スイッチング素子がターンオンしてモータやトランスなどの誘導性負荷に電流を供給した後、ハイサイドの半導体スイッチング素子をターンオフすると、この誘導性負荷を流れていた電流は、流れを維持しようとする。このとき、誘導性負荷を流れていた電流は、ローサイドの半導体スイッチング素子のボディダイオードを通して逆方向に転流することになる。
【0009】
SiC-MOSFET106のボディダイオード106aに順方向の電流が流れると、MOSFETの格子欠陥が成長することが知られている(たとえば、特許文献2参照)。ボディダイオード106aの通電により欠陥が成長すると、ボディダイオード106aの順方向電圧特性およびMOSFETのオン抵抗特性が劣化し、MOSFETの寿命、ひいては半導体モジュールの寿命が短くなる。
【0010】
ボディダイオード106aの通電による欠陥成長を抑制するには、ボディダイオード106aに通電しないようにすれば良いので、特許文献2では、MOSFETにショットキーバリアダイオードを逆並列に接続する構成を採っている。半導体モジュール105が有するショットキーバリアダイオード107は、特許文献2に記載のショットキーバリアダイオードに相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平4-354156号公報
【文献】特開2014-195082号公報(段落〔0002〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、SiC-MOSFETに逆並列にショットキーバリアダイオードを接続する構成を採ると、半導体モジュールに搭載される半導体チップをもう1種類追加する必要があり、チップ数増加およびモジュール体積増加によるコストアップの懸念がある。もちろん、SiC-MOSFETのボディダイオードに電流が流れるタイミングでMOSFETをターンオンさせる、いわゆる同期整流動作をさせることで、ボディダイオードに流れる電流を軽減させることはできる。しかし、たとえば、MOSFETがオンするまでのデッドタイム期間や異常動作時にMOSFETをターンオンさせることは困難であるという問題がある。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、チップ数およびモジュール体積を増加することなくSiC-MOSFETのボディダイオードの通電による欠陥成長が抑制される半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、上記の課題を解決するために、1つの案では、SiC半導体材料によるMOSFETとSi半導体材料によるIGBTとを並列に接続して構成される半導体モジュールが提供される。この半導体モジュールでは、IGBTは、Si半導体材料によるRC-IGBTであり、RC-IGBTの還流ダイオードの順方向電圧をMOSFETのボディダイオードの格子欠陥が成長する電流に相当する順方向電圧以下にした。また、RC-IGBTのエミッタは、リードフレームによって主電流を流す外部端子に接続され、MOSFETのソースは、ボンディングワイヤによってリードフレームに接続される。
さらに1つの案では、SiC半導体材料およびSi半導体材料による電圧制御型の半導体チップを並列に接続して構成される半導体モジュールが提供される。この半導体モジュールでは、SiC半導体材料による電圧制御型の半導体チップは、SiC-MOSFETであり、Si半導体材料による電圧制御型の半導体チップは、Si-MOSFETであり、Si-MOSFETのボディダイオードは、SiC-MOSFETのボディダイオードの格子欠陥が成長する電流に相当する順方向電圧以下の順方向電圧を有する。また、Si-MOSFETのソースは、リードフレームによって主電流を流す外部端子に接続され、SiC-MOSFETのソースは、ボンディングワイヤによってリードフレームに接続される。
【発明の効果】
【0015】
上記構成の半導体モジュールは、温度や製造プロセスの公差によらず、SiC-MOSFETのボディダイオードに流れる電流をほぼ0にできるので、SiC-MOSFETの格子欠陥が成長するのを抑制できるという利点がある。
【0016】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る半導体モジュールの内部構造の例を示す断面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る半導体モジュールの内部構造の例を示す平面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【
図6】第3の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【
図7】第4の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【
図8】第5の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【
図9】従来の半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【
図10】従来の半導体モジュールの特性例を示す図である。
【
図11】SiC-MOSFETを用いた場合に格子欠陥が成長することによる特性劣化に対応した従来の半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図中、同一の符号で示される部分は、同一の構成要素を示している。
図1は第1の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図、
図2は半導体モジュールの特性例を示す図である。なお、
図2は、半導体モジュールを逆方向に流れる電流・電圧特性である。
【0019】
第1の実施の形態に係る半導体モジュール10は、SiC-MOSFET11とSi半導体材料によるRC-IGBT(逆導通IGBT)12とを並列に接続して構成されている。SiC-MOSFET11は、ボディダイオード11aを内蔵している。RC-IGBT12は、IGBT13および還流ダイオード(Free Wheeling Diode)14をワンチップ化したものである。したがって、半導体モジュール10は、2種類の半導体チップによって構成されている。
【0020】
この半導体モジュール10において、SiC-MOSFET11のドレインは、RC-IGBT12のコレクタに接続され、主電流が流れる端子を構成している。SiC-MOSFET11のソースは、RC-IGBT12のエミッタに接続され、主電流が流れる別の端子を構成している。
【0021】
この半導体モジュール10では、SiC-MOSFET11のボディダイオード11aを順方向に流れる電流をRC-IGBT12の還流ダイオード14に流すようにすることで、ボディダイオード11aの劣化を還流ダイオード14が防止している。このためには、
図2に示したように、半導体モジュール10が動作する条件(温度、電流)において、RC-IGBT12の還流ダイオード14の順方向電圧
を常にSiC-MOSFET11のボディダイオード11aの格子欠陥が成長する電流に相当する順方向電圧
以下にする特性にしている。これにより、温度や製造プロセスの公差によらず、SiC-MOSFET11のボディダイオード11aに流れる電流を0近傍まで低減することができるので、SiC-MOSFET11の格子欠陥が成長するのを抑制することができる。
【0022】
なお、
図2において、横軸は、SiC-MOSFET11のソース・ドレイン間電圧VsdおよびRC-IGBT12のエミッタ・コレクタ間電圧Vecを示している。
図2の縦軸は、SiC-MOSFET11のボディダイオード11aを流れる電流IbdおよびRC-IGBT12の還流ダイオード14を流れる電流Ifdを示している。
【0023】
図2には、SiC-MOSFET11のオン抵抗特性Ron_MOS、RC-IGBT12の還流ダイオード14の順方向電圧特性Vf_FDおよびSiC-MOSFET11のボディダイオード11aの順方向電圧特性Vf_BDの曲線が示されている。ここで、SiC-MOSFET11のボディダイオード11aの格子欠陥を成長させてしまう電流Ibdが、たとえば、5アンペア(A)以上だと仮定する。
図2に示した数値例によれば、このときのソース・ドレイン間電圧Vsdは、約2.1ボルト(V)であるので、エミッタ・コレクタ間電圧Vec=2.1Vのときの還流ダイオード14の電流Ifdは、約72Aとなる。このことから、半導体モジュール10に流すことができる逆方向の使用最大電流を72Aとすれば、ボディダイオード11aに5Aを超える電流が流れることがないので、ボディダイオード11aの通電による特性劣化を抑制できることが分かる。
【0024】
また、この半導体モジュール10では、SiC-MOSFETは、オン抵抗が小さく、ボディダイオード11aが小電流領域で動作するため、チップサイズを小さくすることができる。また、高価なSiC-MOSFETに比較して安価なSi半導体材料によるスイッチング素子に還流ダイオード14の機能を追加したので、この半導体モジュール10は、機能追加によるコストアップを抑えることができる。
【0025】
図3は第1の実施の形態に係る半導体モジュールの内部構造の例を示す断面図、
図4は第1の実施の形態に係る半導体モジュールの内部構造の例を示す平面図である。
半導体モジュール10は、セラミック製の絶縁基板21を有している。この絶縁基板21のおもて面(
図3の上方の面)は、銅パターン22が接合され、絶縁基板21の裏面は、銅箔35が全面に接合されている。銅パターン22の表面には、所定位置にSiC-MOSFET11のSiCチップ23およびRC-IGBT12のSiチップ24がはんだによってそれぞれ接合されている。SiCチップ23の厚さは、Siチップ24の厚さよりも厚いので、それぞれのチップ高さが異なっている。銅パターン22は、また、ケース25に固定された外部端子26にリードフレーム27によって接続されている。これにより、SiC-MOSFET11のドレインおよびRC-IGBT12のコレクタが銅パターン22に電気的に接続され、銅パターン22がリードフレーム27によって主電流が流れる外部端子26に電気的に接続されることになる。
【0026】
Siチップ24の上面の主電極は、リードフレーム28によってケース25に固定された外部端子29に接続され、制御パッドは、ボンディングワイヤ30によってケース25に固定された外部端子31に接続されている。SiCチップ23の上面の主電極は、複数のボンディングワイヤ32によってリードフレーム28に接続され、制御パッドは、ボンディングワイヤ33によってケース25に固定された外部端子34に接続されている。ここで、ボンディングワイヤ32は、Siチップ24の直上位置にてリードフレーム28に接続されている。これにより、SiC-MOSFET11のソースおよびRC-IGBT12のエミッタがボンディングワイヤ32およびリードフレーム28によって主電流が流れる外部端子29に電気的に接続されることになる。
【0027】
この半導体モジュール10では、Siチップ24の主電極を電流容量が大きくインダクタンスの小さいリードフレーム28によって配線し、SiCチップ23の主電極をボンディングワイヤ32によって配線している。この場合、外部端子29からSiCチップ23へはリードフレーム28に加えボンディングワイヤ32を経由して電気的に接続される。このため、外部端子29から見たSiCチップ23の配線インダクタンスおよび配線抵抗は、Siチップ24の場合よりも大きくなる。これにより、半導体モジュール10は、逆方向に流れる電流としてSiCチップ23よりもSiチップ24が流れやすくなっている。また、SiCチップ23の主電極の配線をボンディングワイヤ32により行っている。これにより、SiCチップ23がチップサイズの小さいものであっても、ボンディングワイヤ32による配線は、リードフレーム28による配線よりも容易にしている。その理由は、リードフレーム28による配線の場合、SiCチップ23の主電極にガードリングまたは耐圧構造物を避けて精度よく位置決めすることは、チップサイズが小さくなるほど困難になるからである。また、SiCチップ23は、Siチップ24と厚さが異なっているので、リードフレーム28でSiCチップ23とSiチップ24とを配線するとなると、チップの厚さおよびチップ上・下のはんだの実装公差を考慮してリードフレーム28を精度よく位置決めする必要があり、実装が困難となる。
【0028】
なお、絶縁基板21の裏面の全面に接合された銅箔35は、はんだによって金属板(図示しない)に接合される。この金属板は、ヒートシンクに取り付けられて熱結合されることにより、半導体モジュール10で発生した熱を外部に放散することができる。
【0029】
また、この実施の形態では、半導体モジュール10は、SiC-MOSFET11およびRC-IGBT12を1個ずつ搭載しているが、SiC-MOSFET11については、所望の特性に応じて複数個並列に搭載されることもある。
【0030】
図5は第2の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図、
図6は第3の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図、
図7は第4の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図、
図8は第5の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示す回路図である。
【0031】
第2の実施の形態に係る半導体モジュール10aは、
図5に示したように、電流センス機能を有するRC-IGBT12aを有している。半導体モジュール10aでは、RC-IGBT12aが大電流領域を負担しているので、電流センス機能は、RC-IGBT12aにだけに持たせている。
【0032】
このRC-IGBT12aは、メインRC-IGBT(
図1のRC-IGBT12と同じ)のチップに電流センス素子としてセンスIGBTを搭載したものである。センスIGBTは、メインRC-IGBTとコレクタおよびゲートがそれぞれ共通に接続され、メインRC-IGBTのエミッタおよびセンスエミッタ15が外部に独立して設けられている。ただし、
図5では、メインRC-IGBTおよびセンスIGBTは、RC-IGBT12aとして1つのシンボルで示してある。したがって、このRC-IGBT12aでは、主電流用の端子および制御端子に加え、電流検出用の外部端子が1個必要になる。
【0033】
この半導体モジュール10aでは、メインRC-IGBTのコレクタ電流にほぼ比例した電流がセンス電流としてセンスエミッタ15から出力されるので、そのセンス電流を検出することでメインRC-IGBTのコレクタ電流を推定することができる。
【0034】
第3の実施の形態に係る半導体モジュール10bは、
図6に示したように、温度センス機能を有するRC-IGBT12bを有している。半導体モジュール10bでは、RC-IGBT12bが大電流領域を負担していて発熱量が大きいので、温度センス機能は、RC-IGBT12bだけに持たせている。
【0035】
このRC-IGBT12bは、RC-IGBT(
図1のRC-IGBT12と同じ)のチップの一部に温度センス素子としてダイオード16を形成したものである。温度センス機能は、ダイオード16の順方向電圧が有する負の温度係数を利用しており、ダイオード16に流した電流の変化を検出することでRC-IGBT12bの温度を検出することができる。したがって、このRC-IGBT12bでは、主電流用の端子および制御端子に加え、温度検出用の外部端子が2個必要になる。
【0036】
第4の実施の形態に係る半導体モジュール10cは、
図7に示したように、電流センス機能および温度センス機能を有するRC-IGBT12cを有している。このRC-IGBT12cは、メインRC-IGBTおよびセンスIGBTのチップの一部に温度センス素子としてダイオード16が形成されている。これにより、センスエミッタ15から出力されるセンス電流を検出することでメインRC-IGBTのコレクタ電流を推定することができ、ダイオード16に流した電流の変化を検出することでRC-IGBT12cのチップ温度を検出することができる。したがって、このRC-IGBT12cでは、主電流用の端子および制御端子に加え、電流検出用および温度検出用の外部端子が3個必要になる。
【0037】
第5の実施の形態に係る半導体モジュール10dは、
図8に示したように、
図1のSi半導体材料によるRC-IGBT12に代えてSi半導体材料によるMOSFET(以下、Si-MOSFETという)17にしている。すなわち、この半導体モジュール10dは、電圧制御型のSiC-MOSFET11およびSi-MOSFET17を並列に接続した構成にしている。なお、Si-MOSFET17に逆並列に接続されているダイオードは、Si-MOSFET17が内蔵するボディダイオード17aである。
【0038】
この半導体モジュール10dによれば、SiC-MOSFET11のボディダイオード11aに順方向に流れようとする電流を、Si-MOSFET17のボディダイオード17aに流すようにしている。Si-MOSFET17のボディダイオード17aの順方向電圧は、SiC-MOSFET11のボディダイオード11aの格子欠陥が成長する電流に相当する順方向電圧以下である。したがって、SiC-MOSFET11のボディダイオード11aに電流が流れることによるボディダイオード11aの劣化をSi-MOSFET17のボディダイオード17aで防止することができる。しかも、Si-MOSFET17は、第1-4の実施の形態で用いたRC-IGBT12と同様にダイオードの半導体チップをもう1種類追加する必要もない。
【0039】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0040】
10,10a,10b,10c,10d 半導体モジュール
11 SiC-MOSFET
11a ボディダイオード
12,12a,12b,12c RC-IGBT
13 IGBT
14 還流ダイオード
15 センスエミッタ
16 ダイオード
17 Si-MOSFET
17a ボディダイオード
21 絶縁基板
22 銅パターン
23 SiCチップ
24 Siチップ
25 ケース
26 外部端子
27,28 リードフレーム
29 外部端子
30 ボンディングワイヤ
31 外部端子
32,33 ボンディングワイヤ
34 外部端子
35 銅箔